非属の才能教育(14)人生を微積で解く意味?
★立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんは、めちゃくちゃ読書家らしい。ライフネット生命保険株式会社創業者という起業家精神にあふれ、同時に教養にあふれている。知の大航海に常に立ち臨んでいるかのようです。出口さんの著書「哲学と宗教」にはまったく圧倒されます。まだ読み切れていません。
★一方で、出口さんの珠玉の名品は「『教養は児童書で学べ』光文社新書 2017」だと思っています。児童書に教養というかリベラルアーツ的なリソースを見出しているのが起業家精神の面目躍如です。
★「さかさ町」という絵本を通して、産業社会とGAFAの逆転劇を見通している章があります。仕事は辛いから楽しいへ、屋根と空の逆転、子供と老人の逆転など、一貫しているテーマはあらゆるものの反転です。身近な生活や自然現象のミクロの反転の集積が産業社会からGAFA社会へ反転していく。まるで微積のコンセプトではないか。
★そんなような話を勤務校の数学科の先生方とときどきというか、気づいたら毎週話しています。文化人類学の社会構造の組み立て方は、学者によって違いますが、その違いは、数学的に思考したほうがわかりやすい(はずですが、これがまた難問です)のではないかと。
★実際、あの「ノマドランド」という映画の話を高3と対話した時に、現代の遊牧民としてノマドの問題もあるけれど、ロヒンギャのような難民とも共通点はあるよねと言う話になったり、イエスの誕生のシーンに集う羊飼いもまた当時虐げられた弱者で、共通する点があるよねと。その共通点を、論理表を作成して考える生徒もいたりして、やはり数学的思考を活用する生徒もいるのだと妙に感心したりしているわけです。
★いずれにしても、ミクロでは一喜一憂する接線ですが、その描く集積は確実にリソースになっているのです。偏差値批判もわるくないですが、偏差値はその点の位置づけを示す統計学的話であって、その点をめぐって椅子取りゲームに活用する統計学活用の誤謬があるだけです。
★とはいえ、数学的思考が育っていない私たちは、その点を巡る誤謬の集積がデストピアリソースを集積しているわけです。
★もともと時間と空間や宇宙の摂理を証明する方程式としてニュートンやライプニッツが構築したのが微積です。時間と空間という「間」=betweenの諸関係はどうなっているのかというわけでしょう。ならば、そこに「人間」とか「仲間」という「間」も数学的思考で解きほぐせないか。時間と空間は自然のシステムです。人間は精神のシステムです。仲間は社会のシステムです。そのシステムの数学的関数関係はいかなるものかと。
★大学に行くと政治や経済の世界は、数学的思考を実際に使っています。今年の早稲田の政治経済学部のグローバル入試の問題にはその片鱗がみられます。
★それを契機に、数学科の先生方と多様性について数学的思考でどう解き明かすか、解なき世界の話をしています。
★こんな私の妄想に付き合ってくれる数学科の先生方。ただでさえ忙しいのに、ちょっと時間ある?という誘いに腰をあげてくれます。ありがとうございます。
★放課後パーソナルプロジェクトのような学びをしている生徒たちの様子を見に行くと、校長先生、人生を微積で考えるって難問ですよねと声をかけられ、驚きました。化学の勉強をしているようでした。テキストの文章や論文も、集合論的に読み解けるらしいですねとも。他に結びつくようなことありますか?トポロジーっていう発想は意外と大事だよと言うと、別の生徒がフラーレンの立体模型を示して、これですねと。
★英語の教室に行ってみると、C2レベルの英語科の先生が、ロジックですよねと。考えなきゃと。すると、国語の授業で、キーワードのマインドマップを書いて、文章を要約するトレーニングをしていた生徒がいたので、思考のレンズの話と英語のロジックはどうと聞くと、似ていますねとニコニコしていました。
★そんな話は大学受験に関係ないだろうという人もいるかもしれません。しかし、考え方やモノの見方の気づきという日々の反転の試みが、逆転のためのリソースを集積するのだという手ごたえを少しずつ感じ始めています。
★反転の時代。Z世代の時代のテーマです。
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