教育のアップデート~2022年に向けて(21)大学入試改革静かに大きな動き始まるか?
★2021年度からの大学入試改革は、大山鳴動してなんとかという様相を呈していましたが、どうやら、静かに大きな動きが始まっている兆しがあります。日経新聞2021年5月27日に「高校在学中、大学の単位取得可能に 教育再生会議提言へ」という記事が掲載されているのがそれです。
★大学入試改革の本意は、高大接続で、一発ペーパー入試ではなく、高校時代どんな学習や探究を広げ深め、それと自分の人生をどのように重ねてきたかを大学入試につなげたかったわけです。つまり、よくいわれるように履修主義から修得主義へ変えたかったのでしょう。
★それで、一方では、IB学校200校計画など同時進行で文科省は推進してきたわけです。私立学校の中でも21世紀型教育を推進する動きも拡大しました。
★しかし、90%の高校は、履修主義をいきなり修得主義には変えられないので、大学入試改革は一見とん挫した形になりました。しかし、文科省もあきらめていないわけですね。履修主義はハードパワーをつくるには、最高に効率が良いのですが、ソフトパワーをつくるには修得主義でなければならないわけです。重化学工業産業社会時代からAI社会時代にシフトするというのは、ハードパーワーからソフトパワーにシフトするということを意味しているので、当然の発想です。
★つまり、専門的学問をなるべくはやく学ぶカリキュラムをつくらなければなりません。その一例がIBですが、これが難しいわけです。イギリスのAレベルも同様の発想ですが、IBより広がりがあるので、工学院や静岡聖光学院は、独自にAレベルのカリキュラムを導入しケンブリッジスクールの仲間入りを果たしています。
★また、米国のアドバンスト・プレイスメント (AP: Advanced Placement)もIBと同様の発想です。そのため、海外協定大学推薦制度(UPAA)のような団体が海外からやってきて、和洋九段女子、八雲学園、聖学院、工学院なども加盟しています。
★しかし、これらは、私立学校が先行して行っているだけで、公立学校には広がってはいません。これらの学校が海外大学進学で大成功を収めていますから、文科省はIBに続いてAP的な発想も接ぎ木しようというのでしょう。
★それが今回の記事に書かれている背景です。記事にはこうあります。
政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫前早稲田大総長)は高校在学中に聴講した大学の授業について、進学先の大学が卒業単位として認定するよう提言する方針を固めた。高校と大学の在籍期間を柔軟にすることで、学力や意欲に応じて留学などの選択肢をとりやすくし、多様な人材の育成につなげる狙いがある。
★履修主義がベースにありながら、できるところから修得主義になってくださいというのが文科省の姿勢です。そんなのうまくいくわけがないと思うかもしれませんが、総合型選抜の広がりは、その準備段階だったのです。しかも、この入試制度が生徒にとっては、なかなか難関なのです。日々、探究していなければならず、短期集中で立ち向かえる一発ペーパー入試のようにはいかないのです。
★果たしてどちらがよいのか?もう一つの背景に、パノプティコンからシノプティコンというAI社会の問題もあります。
★どうやら、どちらの入試の在り方も、制度であることに変わりはありません。制度に対する自分のものの見方・考え方を確立し、制度にからめとられない自主独立した知と精神を鍛錬していくしかなさそうです。これはいつの時代も同じですが。
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