非属の才能教育(18)数学的思考 デカルト的省察 未来を拓く
★昨夕、Zoomで、ある教育産業のいわゆるAiをつかった個別最適化の学習システムについて対話をしました。要はレクチャーと習熟度別学習の複合で、習熟度の個別最適化段階でAIによる学びのマネージメント(スケジュールなど)がなされ、その都度適切な問題が選択されるよということです。そのときファシリテーターがトレーニングされた正社員で、小まめに声掛けしていくことと、教師と綿密なコミュニケーションをとっていくというシステムです。もちろん、このシステムは当然オンライン学習にも簡単にシフトできるというわけです。
★AIの話がでてくると想定していたので、私だけではなく、数学科の教諭であり、入試広報副部長であり、教務部副部長であり、そしてサーバ室室長の伊東先生に同席してもらいました。
★対話の中で、伊東先生は、少人数教育の聖パウロの実際の学習システム全貌と提案された学習システム全体を比較しながら、共通点や相違点を明快にしながら丁寧に対話をしていました。
★私の方は、その学習システム自体、多くのAI教材制作会社やある意味予備校のシステムも取り入れたコラボシステムになっていたので、想定している前提を尋ねたり、要素還元主義的学習理論がちゃんと前提になっていることを確認したりしながら、どういう価値観をもった学校ならマッチングできるか余計なおせっかいをしていました。
★本間さんのいうことは分からない言葉が多いと指摘され、焦りました。勤務校の評判をおとしてはまずいので、いやいや年寄りの言葉はわかりにくくていけない、ごめんごめんと許してもらいました(許してくれたかどうかはわかりません:汗)。
★その点、伊東先生は、さすがは広報副部長で、丁寧に対話を互いに楽しむ共感的コミュニケーションを展開していました。
★読解の話になって、一人称の視点で読解していくのか三人称の視点で読んでいくかそこを判断するのがやはり難しいですねという問いには、伊東先生は、前提や定義をまずはして、集合論のベン図を使ってことばを分けていくと結構読解もわかりやすくなる場合もありますなどと国語と数学の交差するところを話して盛り上げっていました。
★その話に耳を傾けながら、数学科と日ごろ対話している内容をこうやって外部の方々と共有できるコミュニケーションはすごいなあと思いました。同時に、勤務校の体育科阿部先生が、生徒のアルテミットの練習風景を動画でとってモニタリングし、Googleクラスルームを介してフィードバックしている姿と重なりました。
★どういうことかというと、阿部先生は、現象学的還元、例のフッサールの超越論的現象学の手法を使って、モニタリングをしてフィードバックのメッセージを生徒に送っているということなのです。つまり、デカルト的省察だということです。
★もちろん、ふだんはそんな話を同僚や生徒としているわけではないのですが、なぜか私とはそういう話になります。阿部先生はエンカレッジの体育科の教師でおそらくグリーフケアをきちんと意識しているなあと思ってたずねてみました。
★すると、上智大学のグリーフケア研究所の先生方の中に現象学的手法を活用している有名な教授もいるということで、たぶんつながると思いますということになったわけです。
★またまた、何を言っているかわからないかもしれません。ごめんなさい。
★ともあれ、哲学は難解そうなんだけれど、実は「考えるゆえにわれあり」をめぐる省察がギリシア時代の哲学からずっとつづいているのです。「考えるわれ」と「存在するわれ」という「われ」の二重性をめぐる意味を追い続けています。
★ヨーロッパでこれを決定づけたのはトマス・アクイナスだといわれています。無限の「ある」が現存する「ある」を制約するという定式を明瞭に位置付けたのです。もちろん、トマスにとって「無限のある」は「神」ですが、その後近代の中で、神ではなくいろいろなものにすり替えられていきました。このすりかえられていく「無限のわれ」は何か、「制約されるわれ」とは何か、リフレクションしようというのが、現代学習理論ですが、なんのことはない集合論のお話だったのです。
★これについては、ラッセルやヴィトゲンシュタイン、ベイトソンも述べていたような気がします。もちろん、アリストテレスの「トポス」はこの話です。
★伊東先生をはじめ、勤務校の数学科教師はそこに気づいているわけです。そして、それを外部の方々と対話したり生徒のモチベーションや好奇心を開くときに活用しているのでしょう。
★ですから、首都圏模試の思考コードでいえば、提案された学習システムは、A軸、B軸がベースなのですが、その枠の中にC3が重なるシフトの瞬間が可能だということでしょう。
★またまたわかりにくいですね。ごめんさい。一般には、AをやってBをやって、AIシステムで時短してCを深めようとするわけですが、集合論を意識すると全体と部分を思いめぐらす思考性が知識獲得時においても論理的思考の時においても同時に考えられるわえですから、AとBをやっている中で、実はクリエイティビティは養えるということなのです。
★ただ、普通は、AとBをやっているときには、Cは考えないか、ショートしているか、あえてセパレートしているかなので、こうはいかないということでしょう。
★少人数教育の場合は、リフレクションが小まめに行われるので、これが可能です。そのリフレクションを伊東先生は集合論的な省察でしかけていくし、阿部先生はデカルト的省察でしかけていくということでしょう。
★なおこの省察は、デカルトやフッサールはメディテーションと言っています。あるいは自己意識と言い換える時もあります。
★結局、学びは「私を私とする私は何か?」という気づきを巡る冒険だということです。だから、計算問題のトレーニングもスポーツのトレーニングもワクワクして行えるのです。
★昨日提案してくださったみなさま、そして伊東先生、多くの気づきをありがとうございました。
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