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2021年5月 5日 (水)

教育のアップデート~2022年に向けて(15)World Making 3原則 平方先生との対話

★昨日午後、久しぶりに、平方邦行先生と対話しました。対面でお会いするのは2カ月ぶりでしょうか。パンデミックの状況もあったし、入試や卒業式、入学式などもあったということもあります。そして、お互い4月からの新天地への準備もありました。4月から、平方先生は、工学院大学附属中高の校長を任期満了で退任し、一般財団法人日本私学教育研究所の理事・所長、日本私立中学高等学校連合会常任理事、一般財団法人東京私立中学高等学校協会 常任理事、東京私学教育研究所 所長に就任しています。この意味の大きさと深さは説明するまでもないでしょう。21世紀型教育を工学院で実践し、今度は東京、日本へと視野を広めるのです。一方私は、やはりこの4月に自分の民間教育研究所は閉鎖して、カトリック校に勤務しています。教育の一般原理から具体的実践原理へとシフトしたと言っていいかもしれません。

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★平方先生とは20年以上のコミュニケーションをとらせていただいたし、これからもいただくし、21世紀型教育のウネリを創る作業にもごいっしょさせていただいています。私をこの世界に思い切り巻き込んでいただいた師です。教育法規やそれに準ずるルールに基づきながら、そのメリット・デメリットを丁寧に洞察しながら革新的なことを行っていく手法について、いつもご教示いただいています。

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★ともすると、人は革新的な動きだけになりがちですから、平方先生のような法と現実の平衡感覚を前提にした革新手法は実に重要なのです。今回もそんな対話をしながら、今の時代をどうとらえるか、対話しました。これは、毎回お会いした時の必須のテーマの1つです。今回は、World Making 3原則について対話が盛り上がりました。平方先生は教育研究所で、私は勤務校で、それぞれ具体的な構想では違いがありますが、コンセプトは共有しました。具体的な構想の部分はいずれということで、今回は、抽象的ですが、そのときの対話の覚書を箇条書き風にして以下にご紹介します。

 World Making3原則

1)2022年18歳成人を契機に民主主義の根本に立ち還る。
民主主義の根底である、いかなる制約や困難の中でも自由を創る<自由>を探究し続けるかけがえなのない価値志向型人間が生まれる教育環境づくり

2)普遍的精神を共有する3つの世界公用語の推進
「C1言語」と「STEAMベースのリベラルアーツ言語」と「世界共通のワークショップ言語(ことば以上の新しいことば)」の3言語創出の推進

3)哲学に学び、歴史に学び、理数に学び新しい社会構想力を創る
2089年は、Z世代が創り上げた世界となっている。その世界がデストピアではなくユートピアであるには、Z世代自身が協働し自分たちによる自分たちのためのそして人類のための新しい社会構想を創り実践するプロジェクトを実行する。 

2089年から15世紀を展望して、今を位置づける。

いま 新しい政治経済社会創出期

1989年 ベルリンの壁崩壊 グローバリゼーションの始り
1889年 明治憲法の成立 アジアに近代国家が誕生し、≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫の2つが誕生。つまり2つの民主主義の誕生。
1789年 フランス革命 自由・平等・博愛の誕生
1689年 イギリスで名誉革命 権利の誕生
15世紀・16世紀 ルネサンス・宗教改革の時代 民主主義と資本主義と帝国主義の三つ巴の誕生 近代の始り

補説)
脱偏差値とは、一握りの高偏差値の生徒や知識ベースの才能だけに偏るのではなく、水平的で多様な才能を認めることを意味する。その精神は、≪私学の系譜≫の根本である理想的民主主義に立ち還ることである。

民主主義は多様な才能を受容するために、対話をするが、その対話のツールは一般的な意味でのことばだけではない。それゆえSTEAMベースのリベラルアーツ言語が必要だし、その中でもっとも重要だが、破壊的で恐れられたために合理主義が封印しようとしてきた修辞学を文学的な才能が有る人間から解放して共有するためにワークショップ言語を新しく創出する。

この3つの言語すべてを習得する必要はなく、自分の才能を引き出す言語を選べばよいのである。

誰しも考える力を持っている。自分の才能を限界を超える高みに昇華させるためには、先人の哲学に学び、先人の足跡である歴史に学び、それらを学ぶ方法を理数的に明証できる希望の松明を燃やし続ける必要がある。このことが未来性を意味する。

このような学びはどうして価値があるのかというと、プラトン、アリストテレスの時代から考案され実行されてきた社会構想の改善のために価値があるのである。社会は伝統と革新の連続である。自然と社会と精神の循環は、未だ完成されていないし、意外ではあるが、常に未完である。がしかし、より善くするか、より悪くするかは、人間が合理的に行為すると同時に、豊かさを感じる情念というセンサーを研ぎ澄まし、かけがえのない存在価値を追い求めるかどうかにかかっている。

13世紀に民主主義と資本主義の併存する社会の萌芽があったとされているが、その時以来、民主主義は経済社会の在り方によって、未完の民主主義であり続けた。なぜ未完かというと、民主主義の3原則「自由・平等・博愛」がすべて達成されるということはなかったということは歴史をちょっと振り返れば明らかである。

なぜうまくいかなかったのか。これは経済的につまり食べることに関して、人間は完全に自由になることができず、その点において格差の階層構造が複雑になっていった。

この複雑な階層構造としての格差の中で、自由は小さくなってきたが、それでも「思考」の自由を奪うことは誰もできなかった。それゆえ、今の時代、この「思考力」が重要だと言われているのである。

この「思考力」こそ、不自由の中でも、自由を創る自由の力なのである。この自由を創る自由の翼は、先に挙げた3つの言語である。この3つのうちのいずえかの言語を身に着け、「思考」することによって、民主主義の理想をかなえるウネリを生み出せる。

「自由・平等・博愛」を実現するためには、誰も食べることに心配をしないようになる新しい経済社会の実現である。

そんなことはできるのか?可能である。すでに理論的にはZ世代が創り出せるところまでやってきている。

問題は、それを合法的に阻むオールドパワーの制度だ。新しい社会構想は、このオールドパワーの制度をリセットする知的な闘争であり、その必要性をグローバル市民がシェアし立ち臨もうとする情念を燃やす対話であり、理想が貫徹するまでの間、大企業家が、あのメディチ家がダビンチやミケランジェロ、ラファエロに投資したように、新しい社会構想に投資をすることである。

では、その新しい社会構想とは何か?輪郭はできている。問題は、化石燃料や原発を完全廃棄し、それに代わる新エネルギーの開発である。しかも自給自足ができる。

パソコンが1人1台時代がきた次には、エネルギー産出装置が1人1台の時代だ。これによって、市場経済は、まったくの自由な格差のない市場に変容する。

13世紀以来すべてはエネルギー(最初は奴隷という人的エネルギーだったが産業革命によってその人的エネルギーを生む根っこの化石燃料にいきつく))の覇権をめぐっての闘争史だった。エネルギー産出装置を1人1台有することによって、この歴史的覇権闘争に終止符が打たれることになろう。

ただそこまでのデフォルトができるようになるには、13世紀以降蓄積してきた富裕層の資産を世界の人びとに贈与という美しい形で返却をすることである。

もしこれがうまくいかず、デストピアになったときには、地球は本格的な危機に入る。そのリスクを考え、民間で宇宙に移住する計画がSFの話ではなくなっているのは、昨今の宇宙に関する動きで察知できるであろう。

これらの話を理解するには思考コードの<C3>が身体化される程にPBLが行われる必要がある。このC3とPBLという授業の日常こそ未来性の生成エネルギー態である。物質的エネルギー態であるポータブルエネルギー産出装置は、ここから生まれ持続可能になる。

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