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2021年5月21日 (金)

非属の才能教育(16)教育の意味 反転プロジェクト

★人類誕生以来、何らかの社会が生まれていますから、葛藤はつきものです。その葛藤を軍事力(暴力)で収めるか、経済力(資本力)で収めるか、教育力(知力)で収めるか、取捨選択あるいはコンビネーションのときのそれぞれの割合によって、心と身体のダメージが違います。

★近代からはじまって現代の世界は、経済力や軍事力に教育力を直結させています。本来知力そのものは、少し社会と距離を置いて真理を探究するものでしたが、そのような有閑階級的な知力は、今では得難く、なんでもかんでも社会実装と言うことになっています。ですから、自縄自縛で欧米のように教育力を階級構造やメリトクラシーの価値観の枠の中で作動させなければなりません。

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★日本の場合だと学歴社会という価値観の枠の中で作動させているわけです。ですから、子どもたちは社会の葛藤を無視することができず、生まれるや0才からの教育がはじまりたいへんです。その枠の外に飛び出る能力や才能をもてば、葛藤を乗り越えられるのですが、多くは、枠の中の椅子取りゲームの覇者になるか敗者になるかの活動から免れることができません。覇者になったら覇者になったでいつ追い落とされるか不安と恐怖の毎日です。敗者は覇者のその不安の転移としての抑圧に耐えなければなりません。みなダブルバインド状態の中で生きざるを得ません。

★そして、その抑圧に耐えられなくなったとき、自分の殻にこもったり、そのはけ口としてさまざまなネガティブな行動をおこしてしまうときもあります。ほとんどの場合その抑圧に耐え、はねのけようとしますが、いつ耐えられなくなるかわからないギリギリの状態です。中高生の場合、その心的状況を自己肯定感が低いということばで表現されるときがあります。

★勤務校聖パウロに入学してくる生徒は、日本の高1はざっくり100万人いますが、偏差値40から55くらいのいわゆるボリュームゾーンにいる生徒です。自分が抜け出ようとおぼろげながら感じている学歴社会に知らず知らずのうちに抑圧され今にもつぶされそうになりながら、なんとか耐え抜いて希望の光を求めて聖パウロ学園にたどりついた生徒が多いですね。もちろん、そのことを明快に意識しているわけではありません。ですから、その傷を背負ったまま不安を引きずる生徒もいます。

★聖パウロの先生方は、100万人のボリュームゾーンの生徒をすべて守ることはできませんが、パウロにやってきた生徒1人ひとりとまずその現実を受け入れ、自分の傷や弱さに気づき、自分は何をすべきか、どんな価値を大事にしていくのか挑んでいけるmen for othersとしての自己の存在理由を見出し共有していきます。降りかかる不安を払しょくするために毎日のように対話をしているのです。

★聖パウロ自身、弱い者こそ強いのだと語っています。その精神に先生方は勇気づけられ、生徒と日々対話を通して共に希望の松明を燃やしているのです。そして日々の気遣いがその松明を燃やし続ける油になります。

★次に、その共有の輪を広めるために広報をして、聖パウロの教育の価値を発信しています。広報は生徒募集を目的とすると同時に、パウロ以外にもいる同じような境遇の生徒に希望の光を贈ることができるからです。

★聖パウロ学園は、弱さを受け入れられ、それをシェアできる人間関係という連帯を創ることが強さを生み出せるという反転のリソースの豊かな学園です。弱さこそ強さであるという反転プロジェクトが日々作動している学園なのです。

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