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2021年4月24日 (土)

教育のアップデート~2022年に向けて(06)もうひとつの人新世プロジェクト 田中歩先生と対話

★昨夜というか真夜中、田中歩先生(工学院大学附属中高教務主任)とZoom対話をしました。新しい何かがチラチラしたとき、ご迷惑も顧みず、いつも歩先生にZoomをお願いしてしまいます。少し長くなりますが、今回もこんな経緯がありました。

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★先日NHKの視点・論点で、斎藤幸平(大阪市立大学 准教授)さんが、「人新世」について語っていたのを勤務校に行く準備をしながら聞いていました。勤務校の朝は早いので、NHKをつけると、この時間帯に視点・論点が流れているのです。斎藤さんの「人新世」についての著書はベストセラーですから、このような番組に出るのは当然でしょう。

★「人新世」とは、パウル・クルッツェン(ノーベル化学賞受賞者)さんが、地質学上の歴史区分に新たな「人類の時代」という意味で提案した新名称のようです。それを斎藤さんがわかりやすく説明すると同時にさらに発展させているのだと思います。産業革命以来、ご承知のように、環境破壊が加速度的に進行し、人の力で、地球の地質に影響を与え危機をもたらしている時代です。この破壊しているものが、私たちは気づかなかったのか無視していたのかは判断がつきにくいのですが、社会的共通資本、すなわちコモンといわれるものだと。それを回復する新たな好循環の経済社会をつくることはいかにしたら可能かというのが視点・論点のようです。

★ただ、斎藤さんは、そこにマルクスの考え方を導入するので、ややこしくなります。マルクスの思想や言説は、なかなか今の世代にはわかりにくく、誤解を招きやすく、カトリック精神の勤務校にはダイレクトには適応できません。そもそもコモンの考え方は、パウロに影響を受けたサボナローラやルターというカトリックとプロテスタントの両陣営から起こった宗教改革の時代に遡ります。そして、同時にその時代はルネサンスの時代も重なっています。

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★人新世を考える際には、歴史は産業革命(revolution)だけではなく、ルネサンス(renaissance)、宗教改革(reformation)という3つのRを関連付けることも必要でしょう。ですから、引用するのなら、その辺まで遡っても可能です。ですが、私は、歴史に学ぶコトは重要ですが、いまここでそのような知識がなくても高校生がいまここでまずは語り合える深い学びはどうしたらできるのか、そのうえで、必要であれば歴史をリサーチする。そんな学びができないか、要するに「もうひとつの人新世」の捉え方はないかと思うわけです。どうしたらよいか?そんなとき、いつも対話をお願いするのが、田中歩先生(工学院大学附属中高・教務主任)です。

★歩先生とは、いつも学習指導要領をベースにしながらも、その意図を汲み取り、文科省が日本の教育のアップデートを考えている普遍的な質感をあぶりだす対話をします。

★理論や歴史を学ぶコトは大事ですが、その知識の堆積が、本質的なものを見えにくくするという不条理は、今年の慶応義塾大学環境情報の入試問題ではないですが、あるあるです。

★歴史に学ぶコトは、その堆積された知識が生み出されてきた源泉にいきつくことですが、その源泉は過去にあるのではなく、いまここにもあるのです。そしてそれをいまここでみつけその源泉から新たな知識や概念、意味を見出すことが未来の世界をつくる永遠の瞬間を生徒が手に取ることができるのだと。

★しかしながら、人類は、それを素手で手にすることはできなかったのです。必ず道具を介していました。その新たな道具は何か?もちろん、テクノロジーであることはいうまでもありませんが、落合陽一さんは、民主主義もテクノロジーだととらえるぐらいですから、私たちもICTとそれ以上のテクノロジーを付加価値として見出す必要があります。

★多くの教師が大好きなHTH(ハイテックハイスクール)でも、エンジニアリング以上のテクノロジーの重要性を語っています。テクノロジー以上のテクノロジーとはいかにも腹痛が痛いという自家撞着的、あるいは自己言及的な言い方です。

★まさに、不条理とかダブルバインドでしょう。でも、これはネガティブにとらえるより、そこから新たな創意工夫が生まれるとポジティブに捉えたほうがよさそうです。

★工学院は中野由章新校長を迎え、また新たな展開を生み出していくそうです。いやいるそうです。その点については、5月7日のGLICC Weekly Eduのyoutube番組で詳しく田中歩先生と対話したいと思います。

★いずれにしても、SDGsをさらに発展させたもうひとつの人新世の時代の新しい社会づくりプロジェクトは、1校だけではできません。多くの協力が必要でしょう。またしてもファーストペンギンの仲間との活動が見えてきたわけです。今回は、成城大学の杉本教授にもお知恵をお借りしたいと思っています。かくして「もうひとつの人新世プロジェクト」について、大いに対話が盛り上がりました。具体的な内容は、歩先生や聖学院の児浦先生をはじめとする仲間の先生方と対話しながら進んでいくと思います。またご紹介いたします。田中歩先生、夜中遅くまでありがとうございました。

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