wish自由とwill自由(02)前橋のタイガーマスク運動の価値 focメカニズムの発見
★よく学校で、factとopinionを区別するようにと学びます。これは客観と主観を分けるようにという話です。次に、fact(f)とopinion(o)を統合して論述を書きなさいとなります。ここらへんは、何気なく行われているし、言語技術や受験テクニックだとあっさり思われています。
「focメカニズム」
★欧米の教育でも、このfとoは、大切にされているし、言語技術の中で必ずトレーニングされます。この強調というかリマインダーは欧米の教育はたぶん日本に比べて大きいと思います。しかしながら、欧米の場合は、fとは何か?oとは何か?という捉え返しというか、リフレクションがすさまじいわけです。
★アイデンティティとフェイクの問題を、ライティングではかなりつっこんでやるわけです。おそらくIBのTOKはここをしっかりやっているわけですね。知識とは何か?知識とはいかにして成り立つのか?知識とは客観的なのか?主観的なのか?そして。それはいかにして認識できるのか?認識のアプローチが歴史や文化人類学的に行われるのと哲学で行われるのと、政治経済学で行われるのとではいったい何が違うのか?
★実際近代哲学は、この議論を連綿として行ってきたし、捉え方によっては、第二次世界大戦まで引き起こしてしまうという経験をしているので、欧米ではものすごい内省と学問的蓄積があります。そして、それが民主主義と教育という領域で投影され続けています。
★日本も他人ごとではなく、自分たちが明治以降に世界大戦に参戦したし、引き起こしています。にもかかわらず、言語の理解の仕方を間違えるととんでもないことになるという議論はされないし、それが学校で語られることもほとんどありません。不思議です。しかし、fとoについては、語り継がれているわけです。そこから広く深く考えることを誰も禁じてはいません。ですから、すすめればよいだけです。
★なぜ禁じられているかのようなイリュージョンがあるのか?それは昔話と同じ構造なのでしょうが、そこを追究する時間は私にはあまりないので、それより、さっさと広く深くそこを洞察し、fとoが生み出すメカニズムを組み立てることを先に進めたいと思います。
★そんなことが頭の中でぐるぐるまわっていたとき、NHKの番組を見ていたら、前橋で、焼肉店店長栗原さんが、今回のパンデミックで臨時給休業せざるを得ないという事態に直面した時、10年前群馬県で生まれたタイガーマスク運動を思い出し、生ものが故に廃棄しなくてはならない食材で弁当をつくり、無料で困っている方々に配る活動をしようと意志決定したというニュースが流れました。
★あっ、これだと思いました。
★栗原さんが、苦境に陥ったとき、その状況というfactをしっかり認識し、自分なりのopinionをもったわけです。しかし、その苦境は、自分だけではなく、同業の人びとや町の人びとも同じでした。そのような社会の背景(backgraound)で、痛みをシェア(sharing the pain)したわけです。
★それゆえのopinionだったわけです。多くの人々が同じ事態といfactに対してopinionを持つわけですが、痛みをシェアし、この前人未到の状況を乗り越えるにはいかにしたら可能かというBig Questionに行き着いたから、栗原さんは思ってもいなかったタイガーマスク運動が広がり、NHKにも取り上げられるようになったわけです。
★このとき、しかし見過ごしてならないことは、全く違う状況でも、10年前に群馬県からタイガーマスク運動という社会現象が起きていたということです。この運動に栗原さんの行動がつながりました。
★10年前伊達直人と名乗って、子どもたちの困窮した状況というfactを見て、自分のopinionを持った方と栗原さんと仲間はシンクロしたのです。それは、時を超え、情況を超えてつながったわけです。「タイガーマスク運動」というconceptの源泉にたどりついたわけです。
★このconsceptは古くからあるmen for othersというマインドです。NYの国連のギャラリーにも、民族や宗教、人種などの違いを超えて共通するマインドだと考えて、ロックウェルのモザイク画が掲げられていますね。
★このようにfとoは大きな問いにつながり、それはコンセプトにつながります。コンセプトは誰かが与えてくれるものではなく、あくまで多くの人々のfactとopinionのシェアによって、生まれてくるものですが、その生まれたものが普遍的であるとき、大きな運動になるということでしょう。
★かくして徹底的に特殊を追究していくと、いつの間にか普遍に行き着いてしまうのです。ところが、普遍を追究しても、特殊がつながってこないのです。不思議ですね。
★理論と実践の一致とか、理想と現実の一致とか、理性的なものは現実的なものとか、よくいわれますが、そのメカニズムは、ふだんのfactとopinionの学びが出発点だったのです。もちろん、背景がくっつかないと運動はおこりませんが。
★このような学びを「focメカニズム」と呼びたいと思います。wish自由がwill自由にシフトするには、このfocメカニズムが必要なのかもしれません。
| 固定リンク
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(10)富士見丘の突出型グローバル教育 チームワークと自分の言葉としての英語へ(2025.02.15)
- 2026中学入試準備(08)MiddleからCreativeへ ようやく(2025.02.13)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(13)東京私立中高の理数教育の教科横断性 実に深い(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(07)東京都 本来の人間とは何かをどうとらえるか議論が進み始めている(2025.02.12)
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
「入試市場」カテゴリの記事
- イエール大学と音楽国際交流(6)リハーサルのクライマックス(2024.06.04)
- 私学の教育を支える私学財団(2024.05.30)
- 私立学校の教育は経営システム基盤と経営コミュニケーションがレバレッジポイント 事務長の人間力が凄い(2023.10.06)
- 2023年夏の「私学経営研究会 教頭部会」 21世紀型教育と生成AIとリーガルマインド(2023.07.27)
- 東京私学教育研究所情報(05)私学経営研究会(理事長・校長部会)第1回委員会開催(2023.04.23)
「PBL」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功(2024.12.15)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育(2024.12.14)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生(2024.12.12)
- 工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味(2024.12.12)
- 聖書・宗教の授業・礼拝 聖ドミニコ学園・聖学院・桜美林・恵泉・湘南白百合・女子学院・普連土など 自己を見つめ世界の痛みに向き合い対話し言葉を紡ぐ(2024.11.26)
最近のコメント