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2021年3月 8日 (月)

大学入試問題とトランジション(14)2022年入試は、カズオ・イシグロ

★「カズオ・イシグロ」。2022年の大学入試(にかぎらず中学入試や高校入試)のテーマの通奏低音。新刊の「クララとお日さま」は、まさにその塊。物語の構造は、宮沢賢治の「よだかの星」を思わせるジレンマ連続のファンタジーかと思えば、その背景にはカフカの「城」を思わす得体のしれない政治経済システムが暗示されています。あるいは、映画マトリックスのような。

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★多面的多重的な構造で、SFミステリー的であり、その物語の原動力が、愛を学習するプロセスを人口知能人間AFに課しています。

★多様な事件や試練を乗り越えた末のハッピーエンドとも読めますが、背景に結局は中央集権的な格差社会の枠組みが語られぬまま暗示されて終わるので、デストピアの掌の上のような雰囲気もただよっています。

★表現としては、そのAFが学習する過程を、人間の視神経の代わりに画面で認識していく「ボックス」に何が映っているかで示すリマインダー表現を多用しています。

★まるで、認知科学の本を読んでいるような感覚も新鮮です。

★しかし、明らかにソサイエティ5.0を超える未来社会の話で、政治経済社会の問題、格差社会の問題、ジェンダー問題、組織問題、メリトクラシーの問題、ハラスメントの問題、生命科学的な問題、環境問題など地球に存在するあらゆる問題を、キャラクターの日常生活の中に埋め込む小説。

★中学入試でも、大学入試でも出題される可能性があるし、総合型選抜の準備に取り組む前提学習として読書会をやる団体もでてくるでしょう。

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