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2021年3月 5日 (金)

大学入試問題とトランジション(12)浜松医科大学の生物 システム思考の有効性。その転用の発想を探究に活かすことができる。<思考スキル→IDEA→システム思考のサーキュレーション> IBを超える学び

★今年の浜松医科大学の生物で、フェニルケトン尿症の発生のメカニズムを考察する記述とそれを治療する方法の開発を論述させる問題が出題されました。遺伝子や塩基のことについて、生物の教科書で学んだ基礎知識は必要ですが、この症状の事実を知らなくても、課題文を読めば、理解できるようになっています。

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★しかしながら、課題文で説明されている内容は、上記の図に描かれているメカニズムであり、なぜある酵素の塩基配列が変化してしまうのかは自分で推理するしかありません。また、この症状の治療方法を開発せよというのも同様です。

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★おもしろい思考問題ですね。しかしながら、これは思考スキルを適用するIDEAと生物の基礎知識を結合することでできます。上記の問4は、置換スキルと不足しているものと不足していないものという比較のスキルがIDEAになります。このIDEAにマッチングする知識を想起すればよいわけです。

★問5の治療の開発は、前回ご紹介した東京医科歯科大学の実験を開発する問題と同様、比較スキルをIDEAとして使います。あとは因果スキルです。これらのIDEAに結びつける知識は、使う語句として設定されているので、それほど多くの知識を動員しなくても大丈夫です。この因果スキルは、循環の弊害(問5では副作用となっていますが)を、見出すシステム思考につながります。

★このような問題が、出来るかどうかは合格するには重要ですが、それだけではなく、探究の入口ではインスパイアクエスチョンになります。

★両方とも、思考スキル→IDEA→ループで見える化するシステム思考のサーキュレーションを考えていきます。この思考のサーキュレーションに気づき自らのものにした生徒は、多様な事象に直面しても、この思考のサーキュレーションを回して追究していくことができます。

★来年から始まる総合の探究の時間について、世間では大いに議論され、テキストサンプルが山積しています。それは大いに結構ですが、事象というコンテンツを何にするかに目をとられすぎ、思考のサーキュレーションをいかに体験の中で気づいていくのかそのプロセスを発見するプログラムデザインはあまり注目されていません。思考のサーキュレーションの講義はあるかもいsれませんが、ワークショップにはなっていないですね。

★IBでは、TOKやパーソナルプロジェクト、コミュニティプロジェクトで活用されるATLスキルは、若干思考のサーキュレーションと重なりますが、あくまで学習のサーキュレーションで、思考の内的な連関サーキュレーションは前面に出てきません。

★それゆえ、IBを参考にしている探究の話も、そこまで深入りしないのでしょう。

★国立大学の一般入試を受験する生徒が、実はすでにこの思考のサーキュレーションを身に着ける可能性が高いわけですね。なんと逆説的な!総合型選抜や探究に偏った指導をしていると、本来探究で最も重要な出発点を見落としてしまうというパラドクスがなきにしもあらずです。もっとも、早慶を除く私大の一般入試は、思考のサーキュレーションは必要としていません。ここが課題ですね。

★中学入試においては、男子御三家の一般入試と聖学院、工学院、かえつ有明、和洋九段女子、大妻中野などの思考力入試は思考のサーキュレーションを大切にしています。

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