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2021年3月13日 (土)

GLICC Weekly EDU(26) IB出身者を受け入れる早稲田大学の変容を実感

★昨日12日、GLICC Weekly EDU 第21回「国際バカロレア(IBディプロマ)取得から帰国受験そして日本の大学生活」がありました。ミュンヘンのインターナショナルスクール出身で、現在早稲田大学法学部で学んでいる桑原さんが登壇。GLICC主宰の鈴木さんの教え子で、現在は、GLICCIBプログラムのチューターでも活躍しています。

Kuwabara

★詳しい内容は、ぜひYoutube配信をご覧いただきたいと思います。IBのプロジェクトベースの学びの方法や意味や価値がわかります。そして、その学びが、早稲田の国際寮で生活しながらの学びに直結している様子が明快にわかります。学びのトランジションの典型的なモデルです。

★配信の時間では、国際関係のセンシティブな問題があるので、深くは触れられませんでしたが、桑原さんの民主国家日本の強みも弱みも背負いながら国際関係を調整して、その関係を最適な状態にしたいという気概が静かに響いています。

★本人のメジャーの土台は国際法研究にあるわけですが、ゼミでは国際民事訴訟法を学んでいます。カンボジアやマレーシア、南アフリカ共和国などでもフィールドワークをしながら、現場の市民とのかかわりに、法律的な背景や倫理的根拠を考えるケースメソッドを重ねているようです。

★国際的な視野の背景には、実は、グローバル市民レベルでの葛藤解消の感覚があり、そこに大事なディスカッションという対話活動があるというのが桑原さんの話から了解できます。国によって民法などの市民法が違うわけです。家族法や契約法が、海外と日本では、異なり、問題が起きたときに、どちらの裁判所で行うのか、行えるのか、二重に行ってしまったときにはどうなるのか、国内で行われる訴訟とは全く違う複雑な要素が加わります。

★ある意味、法体系はなく、文化人類学や社会学、国際的な倫理問題の視野も必要です。

★強烈に実務的でありながら、市民どうしの文化の違いや宗教の違いなど価値観の葛藤を調整するにはどうしたらよいのか?桑原さんは、大学に入って倫理を学んだ時に「時間と記憶」をテーマにレポートを書いたそうです。

★倫理で時間というのは、内省やディスカッションの時間が解決の糸口を見出し、当然そこには記憶が関係してくるということでしょうか。今度詳しく聞いてみたいなあと思います。

★ともかく、国内法では法実証主義で解決する問題も、同じ婚姻・離婚・契約などの法的関係は法実証主義そのものがうまくいかないという局面ばかりにぶつかるわけです。もちろん、複雑系を法実証主義で乗り切る以外にいまのところは実務的にはないのです。

★いずれにしても、ヨーロッパで帝国から近代国家が生まれる時に、法実証主義と自然法論がぶつかった理由が、抽象論ではなく、グローバル市民同士の現場にあった実務的な話であり、今もそれは投影されているというのは、日本だけで生活していたら確かにわからないことです。

★グローバル社会の本質を、早稲田大学は当然見抜いて、2015年くらいから思い切りグローバルな環境整備に舵を切ったということでしょう。法学部自体は、まだまだ帰国生や留学生は少ないようですが、国際寮というシステムで、グローバリゼーションに巻き込まれている市民の生活実感を学部横断的に共有できるようにしているようです。

★大学入試改革は減速しつつ進んでいますが、早稲田大学はかなり加速しているという息吹を感じることができました。それにしても、学際的な知を深めかつアーティスティックな感覚を豊かにしている桑原さんは、IBが大事にしている10の学習者像を体現しています。高校時代の学びの経験のあり方が、かなり重要だということも確信できました。ありがとうございました。

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