ダイアローグとシステム思考と哲学(02)聖学院に有る学習する組織を卒業生が語る。「卒業式と卒業文集と、その他諸々の話」
★卒業式シーズン。卒業生が、教師や同窓生とフラットに学校生活についてリフレクティングトークやリフレクティングライティングする行為で満開です。聖学院の今春の卒業生Yasuiさんが、noteで語っているのもそうです。「卒業式と卒業文集と、その他諸々の話」がそれですが、ぜひご覧ください。そのうえで、ピーター・センゲの「学習する組織」のレンズを通してもう一度みてください。聖学院に「学習する組織」が有るのが了解できます。同校は21世紀型教育推進校で、PBLも実践しています。PBLの大前提は、学校が「学習する組織」の顔も有しているということが条件です。
★最近、SDGsについて探究する学校や企業など多くの団体が芽吹いていますが、その行為が「学習する組織」が前提になっているかそうでないかでクオリティの差があるのがわかります。SDGsの出発点は、1972年のローマクラブが編集した「成長の限界」ですが、編者の中心はあのドネラ・メドウズです。
★ここから新しい政治経済社会の構想の議論が世界を席巻します。SDGsにつながっているぐらいです。京都大学や慶応の経済学部の入試問題では、この構想史を未来へ向けて批判的に考える問題を出題していますね。
★彼女の思考様式はシステム思考と呼ばれ、若くして亡くなっても、親友であるピーター・センゲらが継承し、大きく展開しています。センゲは、今はコンパッショネイト・システム思考として「学習する組織」を形成する要素の一つとしてマインドセットしています。
★そして、この学習する組織のシステム思考を活用して思索する問題を、今春慶応義塾大学SFCの総合政策学部が出題しています。大学入試問題に出るから「学習する組織」を学べというくだらないことを言っているわけではありません。
★上述したような大学の入試問題は、学内の研究の最前線の成果が反映しますから、「学習する組織」や「システム思考」は、学問や探究において極めて重要になってきているということを言いたいのです。そしてPBLというのも、中等教育段階での教授法ではなく、中高大や社会につながる学問研究の場そのものだということです。
★PBLのない中等教育学校は、今後大学や社会への探究や政治経済活動をするときトランジションとしてつながりにくくなるおそれがります。Yasuiさんが、同記事でこう語っています。
「聖学院などが推している新しめの教育って勉強みたいに、すぐ成果があがるようなもんでないと思っているのでやっぱり5年後とかわからないけれど成果としてあげなければいけないと思っています。学校とか関係なくて、そういう教育がメインストリームになってほしいからね。」
★鋭い感性がここにはあります。こういう教育が、学校とか関係なく=つまり聖学院だからだとかではなく、メインストリームになってほしいと。それは、Yasuiさん 自身が、「学習する組織」を形成するメンバーだったから直観できることでしょう。
補説)詳しくは、Yasuiさんの記事をお読みください。とはいえどういうところに学習する組織の要素があるかは、示しておきましょう。学習する組織を形成する要素は5つあります。それが複雑系な感じで結びつくわけですね。
Ⅰビジョン共有:「聖学院などが推している新しめの教育って勉強みたいに、すぐ成果があがるようなもんでないと思っているのでやっぱり5年後とかわからないけれど成果としてあげなければいけないと思っています。学校とか関係なくて、そういう教育がメインストリームになってほしいからね。」
Ⅱチームワーク:「13の時から、みんな言いたいこと言って、言葉で済まなくて、思いっきり体でぶつかり合う。15ぐらいになると、この人はこういう性格なんだなとか、分かりはじめる(それでも衝突はあるが)。同時に記念祭とか、プロジェクト、部活のなかで中心的存在になるから、協力し合う。やっと良好な人間関係を築けたと思ったら、もう卒業。」
Ⅲシステム思考:「卒業式が終わって、その日の26時ぐらいから卒業文集を読み始めました。学年の半分ぐらい読んでみたところ、部活や友達のことが多く書かかれてありました。友達の書いているそういう文章と自分の記憶がリンクしてきて、あの時、あんなこと思ってたのか、こんなこと考えていたんだなと分かって最高に自分の中で盛り上がった。普段強気な奴も素直なこと書いてきて、これまた盛り上がった。時間の経過と字面にするのはやっぱりいい。ちょくちょく笑かしにきてる文章もあって書いているその人の個性がブレていないのがこれまた最高。悪ふざけしたことが書いてあって、もう出来ないと思うと寂しさを感じる。締切が過ぎてて、みんな適当に書いたとか言ってたけど、めちゃくちゃマジで書いてあったな。」
Ⅳメンタルモデル:「中学の頃なんてあんだけクソクソ言ってて、6年後には良いと言えるようになるのだからやっぱ聖学院すごい笑。」
Ⅴ自己マスタリー:「最後にこの6年間、お世話になった方には、ヘラヘラしている人間で伝わりにくいかもしれませんが本当に感謝しています。魅力的な6年間という一瞬を過ごさせてもらいました。しっかり社会と母校に、何かしらのインパクトを還元できるようにやっていきます。」
★Yasuiさん、ほんの少しでしたが対話してくれたときのことを思い起こします。ありがとうございました。宮台真司さん的な口調もあり、友を社会を思いやるマインドもあり、ほとばしるパトスとそのあとの疲労から回復する気概ありで、Yasuiさんのキャラは魅力的でした。インパクト還元期待しています!
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