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2021年3月

2021年3月31日 (水)

2021年度の教育動向(03)児浦先生(聖学院)と4月以降のビジョンについて対話

★本日3月31日(水)夜、聖学院の児浦先生と対話しました。21世紀型教育機構の同志として2020年度を一つの節目としようと行動してきて、一定以上の成果(大学進学実績だけではなくもっと骨太の教育の話です)が出たことを確認し、明日4月1日から始まる2021年度の教育のウネリをどう生み出していくか、もっぱらそちらへ話が進みました。

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★新機軸としては、逆転の発想で、21世紀型教育機構で行ってきたエッセンスをベースにしながら、もう一つ新しい教育コミュニティを生み出していこうということになりました。

★そのコミュニティで行っていくのは、全く新しいPBLです。PBLそのものというよりもPBLの新しいツール開発です。軽量化して私立公立問わず先生方も生徒も使えるツールです。とはいえ、新しい学びのソフトパワーを生み出すツールをつくるのであって、ハードパワーとしてのツールではありません。

★デューイの道具主義の継承ですから理念は普遍です。

★もう一つは、高校入試市場の新しい意味の理解をつくろうという新市場創出の啓蒙活動の仕方について対話しました。

★新ソフトパワーと新ソフトパワー市場の創出。

★小学校から高校までの1200万人の生徒が自ら世界を開く問いが生まれる新ソフトパワー。そしてそれを求める新ソフトパワー市場。今までの教育理論の真逆の発想で行っていきたいと。

★1200万人が高度人材になるためのソフトパワーです。今のままでは、高度人材とそうでない人材の新しい格差が生まれます。しかもこの高度人材は日本人とは限りません。そうならないためには、1200万人が高度人材になるソフトパワーの発想が必要です。

★今日では98%が高校に進学するのが当たり前になりました。1200万人全員が高度人材になる可能性は十分にあります。5月の連休明けから動き出そうと児浦先生とは予定しています。

★創り上げてきたものをさらにアップデートする動きからスタートすると思います。1200万人への道のりは12人から始まります。みなさんが参加できるように、2021年度は準備をして参ります。そのプロセスでご協力をお願いすることもあると思います。そのときは宜しくお願い致します。

★先生方には、長い間お世話になりました本間教育研究所は本日を持ちまして閉鎖いたします。開智国際大学の客員教授も本日を持ちまして退任いたしました。21世紀型教育機構の理事はすでに昨年退任しています。

★私の新しい道については4月の半ば過ぎまでお知らせできないことはお許しください。ただ、新しい旅を多くの先生方とまた歩んでいこうと思います。年寄りですからみなさんの足手まといにならぬよう精進してまいります。

★児浦先生、14年前にNTS教育研究所を退社した時も、3・11のときから始まった新しい学びの開発のときも、21世紀型教育機構を立ち上げたときも、そして本日も、いつも新しいウネリが生まれる時、共に歩みながら、エールを贈っていただき、心から感謝申し上げます。

★どうやら旅はまだ続きます。今後も宜しくお願い致します。

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2021年度の教育動向(02)3月のアクセスランキングから見えるコト②聖学院記事の高注目の背景 18歳成年に向けて。

★前回のリストを眺めると、聖学院の記事「New Power School(07)聖学院の大学合格実績が飛躍している理由 好奇心・進歩的学び・グローバルマインド・パトス」は8位にはいっています。50位以内には3つの記事がランクインしています。注目されていることを示唆しています。実際今春の中学入試の出願数も増えました。

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(聖学院の生徒の成長パターンは、脱枠自己変容型。思考コードは知と情の両方を見通すコンパスとして同校では使われています。)

★注目されている理由は、独自のグローバル教育を行い、結果として海外大学進学も目覚ましいというのもあるでしょう。PBL授業やプロジェクト型イベントが多く、生徒自身高いモチベーションを保ちながら社会にある壁や不条理をどうやったら解消・解決できるのか起業する生徒まで出現します。結果として大学合格実績もでてしまうわけです。

★テクノロジーを駆使したPBL授業もなされるし、プログラミングのワークショップも行われています。結果パンデミック下のオンライン授業やハイブリッドなカリキュラムが実施されています。

★いずれも注目される理由です。

★そして、なんといっても大事なことは、<オンリーワン・フォー・アザーズ>という限界を超える成長曲線を描く生徒の燃える姿でしょう。最後は、生徒自身が自ら自分の内なる火をつけるのです。

★こころに火をつけることができる教師がいっぱいいるのですが、教師がつけている段階では、自律したあるいは主体的な構えはできません。人はいろいろな辛い局面に到ったとき、こころの火が消えそうになりますが、なんとか消さないように、そして再びメラメラと燃えるように自分でなんとかできるようになれば、どんな局面に遭遇してもサバイブできます。もちろん、1人では何もできないのはいうまでもありません。

★タイ研修をはじめ、自分とは何者でもない存在だったのかと衝撃を受け、その虚心坦懐にいたったとき世界が急に開けるという青春時代を過ごせることこそ最大の経験です。聖学院では、この最大の経験ができるのです。

★この虚心坦懐の局面で世界が開かれる衝撃的体験は、18歳成年を迎えるにあたり、すべての子供に必要でもあります。

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2021年3月29日 (月)

2021年度の教育動向(01)3月のアクセスランキングから見えるコト①工学院と八雲記事の高注目の背景 18歳成年に向けて。

★2021年の教育動向をウォッチングしていくことは、とても重要です。というのも、2022年4月1日に18歳で成年になると改正された法律が施行されるからです。高校を卒業すると同時に成年です。学習指導要領や大学入試改革の話題がこの点を無視して行われていることはないでしょう。高校を卒業するまでに、単純に学習指導要領で定められた学習項目を達成すればよいということではありません。成年としてどんな人間像を思い描くのかが重要になります。普遍的精神を抱くことと同時に、個人の才能を社会に活かせる能力が必要です。

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★では、いったい成年としての人間像とはどう考えていけばよいのでしょうか。それは、2021年3月の本ブログのアクセスランキング50位までを眺めると、その中にヒントが見え隠れしています。たとえば、工学院と八雲学園が、次のリストの中で注目されています。工学院は、5位にランクインし、八雲学園の記事は6つが50位以内に入っているのです。注目の理由は、両校の共通する点にあると思われます。

1:品川翔英 教師の一体感が溢れでる。国語科拡大研修で。
2:2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加速 三田国際のデュアル・ディプロマ参入の意味
3:東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(02)麻布、西大和、洗足、横浜雙葉、日比谷、横浜翠嵐、浦和
4:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
5:New Power School(04)工学院の進化 多様なPBL&そのわけ
6:東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(01)
7:思考コードがつくる社会(15)総合力の栄光、英語の聖光、安定した進学校浅...
8:New Power School(07)聖学院の大学合格実績が飛躍している理由 好奇心・進歩的学び・グローバルマインド・パトス
9:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
10:2021年中学入試を読み解く準備(6)基礎情報⑥東京男子校の帰国生入試。...
11:思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs...
12:東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(...
13:2021年中学入試情報(07)かえつ有明が躍進するわけ 1月29日、副教頭佐野先生をお招きし対話する予定です。
14:New Power School(04)八雲学園 はやくもUPAAの成果...
15:New Power School(02)進歩主義的で普遍主義的だからこそ...
16:New Power School(03)富士見丘 生徒1人ひとりがグロー...
17:2021年中学入試を読み解く準備(9)今年も、東洋大学京北中学高等学校の...
18:New Power School(05)聖学院 今春の卒業生が贈る言葉「...
19:New Power School(01)八雲学園 豊かで本質的なキャリア...
20:2021年変わる中学入試(02)英語入試広がる。江戸川取手インパクト。実...
21:八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(1)
22:GLICC Weekly EDU(25) 静かに変わる大学入試問題 思考...
23:キャリアガイダンスVol.436 自由の見えない枠組み
24:GLICC Weekly EDU(27) 大妻中野教頭諸橋先生 グローバ...
25:トランジション指標(01)人生の転機を生かす力
26:2020年からの中学入試(23)STEAM教育を実施している学校を探そう...
27:2021年中学入試情報(45)文京隣接地帯に衝撃走る。広尾学園小石川 京...
28:2021年中学入試情報(11)フェリス女学院応募者増の意味
29:「教育とは生き方そのもの」へシフト(01)グレートリカバリーの意味
30:2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に...
31:八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(2): ホ...
32:wish自由とwill自由(01)争い事と交渉事
33:女子美 STEAMが中心の女子校
34:2022年中学入試の展望(02)2月1日から7日間で見えるコト❷
35:New Power School(06)文化学園大学杉並 オンライングロ...
36:GLICC代表鈴木裕之さん なぜグローバルアドミッションの時代なのか?!...
37:ダイアローグとシステム思考と哲学(01)リバタリアン・コミュニタリアニズ...
38:2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私...
39:大学入試問題とトランジション(12)浜松医科大学の生物 システム思考の有...
40:八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(3)
41:大学入試問題とトランジション(13)大学入試問題の意義 2022年から1...
42:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
43:品川翔英 期待値を超える(03)なんでもできる恐れのない学校 受験生への...
44:八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(了)在校生...
45:ポストコロナ時代の教育(17)開智望小学校・中等教育学校の挑戦。
46:ダイアローグとシステム思考と哲学(02)聖学院に有る学習する組織を卒業生...
47:2022年中学入試の展望(01)2月1日から7日間で見えるコト
48:2021年中学入試を読み解く準備(4)基礎情報④東京共学校の集まり方に変...
49:聖パウロ学園の発想と実践(01)ワールドメイキングのためのクリエイティブ...
50:21世紀型教育機構の世界性(02)Zoomセミナー New Power ...

(2021年3月1日から3月28日までのホンマノオト21のアクセスランキングから)

★その共通点とは、両校ともラウンドスクエア加盟校であり、UPAA(海外協定大学推薦制度)の加盟校であり、21世紀型教育機構の加盟校です。

★これは、たんに英語力育成に力を入れているということを意味しません。たしかに両校とも破格の英語教育であることは間違いありませんが、これらのコミュニティはいずれもグローバルクリエイティブ市民を育成することがビジョンとして存在する機関です。学習指導要領では、自律して主体的に行動する姿勢が重視されていますが、高校ではそれはグローバルクリエイティブ市民としての当然の話なのです。

★両校は、これらのコミュニティに学校が参加しているのですから、一部の生徒のみがその恩恵に浴しているわけではないのです。すべての生徒にそのような市民として活動する機会が開かれているのです。ここが大切ですね。

★ですから、すでに両校で学ぶと、自然と18歳で成年になる人間像が、生徒1人ひとりにすでに意識されているというコトを意味します。エッ?!なぜ?と思うかもしれません。ちょっと目線を世界に拡張してみてください。

★世界では、多くの国で18歳は成年なのです。市民として大統領を選挙する権利を認められている国も多いですね。選挙権に関しては、2016年6月からすでに日本も認めらています。

★2022年に高校の社会科が大幅に変わります。法律改正にタイミングがあっているわけですが、いよいよ政治経済社会に対する市民としての意見を知識としてのみ学ぶのではなく、権利実装として学ぶ時代がきたということです。

★両校は、すでに18歳成年の国々の生徒とディスカッションやボランティアなど活動を開始しています。

★本ブログ「ホンマノオト21」をお読みいただいている方々は、このような視点をお持ちの方が多く、進取の気性の精神に富んでいますから、両校のような学校の重要性に気づいているのです。

★当然この動きを実行するには、New Power Schoolでなければなかなか難しいわけです。大学受験勉強をして、MARCH以上の大学に何人合格させるかという教育は、それ自体権利の視点から見れば、妥当性を欠くかもしれなくなっているのです。グローバルクリエイティブ市民としては、格差を広げる活動は見直さなければなりません。学歴社会は経済格差をもたらすだけではなく、その社会を認めること自体が民主主義に反する行為であるかもしれないからです。

★つまり、2022年18歳成年が施行されるにあたり、進路指導やキャリアデザインは本質的なところから見直す必要がでてきます。私の言っていることがおかしいとは、もはや法実証主義者は言わないでしょう。もし言ったなら、法律に反することを言うことになるからです。言論の自由は、民主主義的な法の枠の中でのみ保障されます。

★民主主義的な法律に反する表現の自由は自由というかどうか、説明するまでもないでしょう。

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2021年3月28日 (日)

GLICC Weekly EDU(27) 大妻中野教頭諸橋先生 グローバルアドミッションとクオリティの時代を語る

GLICC Weekly EDU 第23回「New Power Schoolへの道ー大妻中野中学校・高等学校 諸橋先生との対話」は痛快でした。諸橋先生のNew Power Schoolへの想いがさわやかで、大妻中野の強みも直面している課題もオープンに語っていただけたのです。もちろん、直面している課題を解決するための新たな教育のアップデートの話題もでました。

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★そしてこの直面している課題こそ、大妻中野の問題だけではなく、時代の風潮でもあり、その風潮を解消するのもNew Power Schoolでなければできないということに改めて気づきました。そして大妻中野は俊足にそこに対応する教育デザインをしているのです。

★詳しくは、上記の番組配信をご覧いただきたいのですが、この課題が何かは、重要なだけに、何度繰り返してもよいでしょう。それはチャレンジ精神の停滞及び不安の時代ということです。

★大妻中野のグローバリリーダーズコース(GLC)は、6年目をむかえているわけですが、当初は3級くらいの生徒もチャレンジし、合格して、6年間で伸びてきたわけです。来春、GLCの大学合格実績が出ますが、今年も東大に合格した生徒がいますから、それに続きてさらに多くの実績がでると期待できそうです。

★今では、GLCの3分の2が帰国生です。1つの基準である英検で準2級以上の生徒がチャレンジしてきます。14%はすでに準1級を取得しています。そうなってくると、3級4級の生徒の中には、4級でも入れるという英語入試を行っているところに流れて、大妻中野にあえてチャレンジしなくなる生徒もいるというのです。

★諸橋先生は「英語の技術だけではなく、グローバルな文化や多様性の環境を手に入れると考えて頂けると、大妻中野の環境は最適で、チャレンジしないのはもったいないのです」と語ります。しかし、今年はコロナ禍ということもあって、不安が時代の根底に流れています。

★その不安を解消するためにも、大妻中野の教育は最適であるのに、そこに気づかれないのがもったいないのだと。

★そこで、その不安を解消できることを共有する広報活動を行っていくのだけれど、ただ大丈夫ですよと言ってもグッとこないでしょから、教育内容を柔軟に対応できるようにするということです。

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★アドバンストコースに入っても、毎年GLCに行ける英語のレベルに成長し希望すればシフトできるようにしていることをもっとアピールするのですが、そのシフトは個人が1人で頑張るだけではなく、サポートシステムも創ろうということでしょう。

★このきめ細かいサポート体制が個別最適化を生み出していく大妻中野の面目躍如です。

★今年GLCから東大に入った生徒は理科二類に進みました。GLCは当初文系に進む生徒を想定していましたが、その生徒がグローバル=文系は世界の常識ではないのだから、グローバルだからこそ理系も作って欲しいと提案したそうです。先生方は、たしかにと、すぐに動いてGLC理系コースを作ってしまったというのです。なんと柔軟で俊足な!

★今年もGLCから理系に進む生徒が増えているそうです。

★New Power Schoolの醍醐味は、この生徒1人ひとりにいかに柔軟に対応できるかという俊敏力の強さなのですが、大妻中野はその典型的な組織です。

★諸橋先生は「システム」という言葉を頻繁に発します。一般に、学校の先生は、システムということばをあまり使いません。マシーンモデルをイメージするからでしょう。

★しかし、大妻中野のシステムは有機的なつながりや、熱い血が流れている血液循環システムに近いイメージです。このパトスのシステムからこれでもかという量の教育プログラムが行われています。そしてそれが量は質を生むという基礎になっていますが、量が質に転換するには、教員全体が一丸となってビジョンをアップデートしながら共有していく構えがなければなりません。

★大妻中野は、このエネルギーが持続可能になっています。なぜでしょう。それは、今回の番組に出演してくださるときの諸橋先生の準備の姿に現れています。徹底的に学内リサーチをしたそうです。担当の先生にインタビューして、改めて自分の学校のモニタリングをしたのだそうです。モニタリングの対話が柔軟にできる学校組織なのです。そりゃあ発展の速度が速いはずです。

ぜひYoutubeをご覧いただきたいと思います。

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2021年3月26日 (金)

New Power School(07)聖学院の大学合格実績が飛躍している理由 好奇心・進歩的学び・グローバルマインド・パトス

★先ほど、関西の学校の先生から、本間さんが注目している聖学院の大学合格実績の飛躍ぶりが凄い。どうしてそんなに伸びるのですか?と質問がありました。いつも言っている通り、好奇心が旺盛になるPBLベースの授業や行事を先生方が一体感をもっておこなっているし、多くの生徒がそれぞれプロジェクトを立ち上げられるようになっているからですよと。

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◎聖学院の大胆かつ精緻かつ愛が溢れる教育については、上記写真のYoutubeをご覧ください。

★すると、本当にPBLで実績がでているんですかと。人に質問しておいて、それは失礼でしょう。でも信じられないですよね。そちらの箱にはいっていてこちらを見ているのですから。箱から出てこないとわからないかもしれません。

★相変わらず、本間さんはきついなあと。

★もちろん、個人ワーク→ディスカッション→プレゼンがPBLだと思っていたらそれは違いますよ。聖学院の先生方は個人ワークの時の生徒1人ひとりの内面の広がりや深さを見る目を持っています。ディスカッションしているときに小さな変化の兆しに耳を傾けます。プレゼンが世界を生成し、参加している人々を魅せているかについてリフレクションします。

★そして、生徒が成長するためなら、あらゆることをやるし、自分たちだけではなく、社会を巻き込んで生徒を応援します。そのうち、生徒が教師を応援しだします。

★なぜそんなことができるのか。オンリーワン・フォー・アザーズという普遍的な精神を真剣に受け入れ実行しているからです。聖学院の教師と生徒は魂の連帯を柔軟にかつ鍛えぬいています。

★インターエデュのサイトでGMARCH以上の合格者が卒業生に占める割合は約70%です。PBLで急激に伸びるものですかねと再度問われました。たしかに先生のところもPBLとかアクティブラーニングはやっていますが、どの授業でもどの時間でもどの行事でもやっているわけではないですよね。

★しかもやろうと思って聖学院はやっているわけではないのです。生徒が限界を超える学びに挑戦するからそうならざるを得ないのです。

★たぶん、そこが大きな違いだと思います。

★いや、なんか合格必勝法があるのではないかと思って。。。とボソッと言われて、電話はプチンときれました。箱から外には出られなかったようです。

★でも大事なことは、GMARCH以上の実績にこだわっているうちは、生徒中心主義ではないのです。どこをコアにするかが大事で、高校卒業して起業しようが、自分の探究を研究に変えられる大学が見つかったら、そこがGMARCH以上でなくても全く構わないのです。いろいろな世間の声や目に惑わされず、自分で自分の心に火をつけて、そのインパクトが仲間を動かし、世界を巻き込んでいくことが最重要です。

★その覚悟を教師と生徒が共有できているかどうか。それに尽きます。それが聖学院のパトスです。

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2021年3月25日 (木)

トランジション指標(01)人生の転機を生かす力

★この時期は卒業・入学、終業・始業、定年・入社、決算・新年度(会社によって違うが、この時期集中する)など節目のシーズンです。そんなとき、人によっては人生の転機が訪れます。もちろん、転機は、社会的な通過儀礼のような時以外にも訪れます。いや多いかもしれません。

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★今回のような予想もしなかったようなパンデミックや気候変動、自然災害、事故などに遭遇してがらりと人生が変わるコトはあるでしょう。病気というのも突然やってきます。誕生や人生への別れも大事な時です。仕事という点では、イノベーションの波がそれでしょう。

★日本の場合は、高校進学率が98.8%(2020年文科省)ですから、多くの生徒が高校の時のキャリアデザインを通して人生の転機をどう迎えるか、どう自分でつかむのか共通する大きな試練の1つでしょう。

★そのときに大学受験だけにむけた対応策を考えていると、上の表のように、人生の転機を自分でマネジメントできるトランジション力(と呼んでおきましょう)のギャップが生まれます。

★偏差値に関係なく、大学に進んだとしても、就職したとしても、グローバルクリエイティブ市民になろうとする、学びを体験すると、44ポイントのトランジション指標のうち91%を体得します。

★しかしながら、日本の教育では進路先の入試制度のために学ぶ習慣がついているケースが多いので、国公立か私大か、一般入試か総合型選抜か、帰国生・留学生入試かによって、トランジション指標のギャップがでてしまうのです。

★ですから、たとえば、総合型選抜と一般入試の両方の学びを行っていれば、それはグローバルクリエイティブ市民になる学びもカバーしているといえます。

★トランジションパワーが90%くらいのポイントがあると、多様な転機の局面で、危機を回避したりチャンスをゲット出来たりできます。

★もちろん、人生運不運があり成功するかどうかは不確定です。しかしながら、一つだけ言えることは、グローバルクリエイティブ市民であれば、互いにサポートしたりフォローしたりケアしたりする心理的安心安全の場を作るコミュニティシップは身につきます。

★それはこころのウェルビーイングだと私は思います。

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聖パウロ学園の発想と実践(01)ワールドメイキングのためのクリエイティブトレーニグ

★ここのところ聖パウロ学園を訪れては、幾人かの先生方と対話しています。同校は、全日制とエンカレッジという通信制の学校2つを経営しています。生徒1人ひとりが自分のペースで世界を創り、仲間とシェアし、自分の世界を社会とシェアしていける学びをしています。聖パウロはもともとはキリスト教を迫害していたのが、あるときイエスが現われ、パウロを改宗に導きます。そのときから目からウロコがでたという話なのです。

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★最近、トランスフォーメンションという言葉が流行っていますが、まさにこれはパウロの話に重なります。もっともパウロの場合は、コンバージョンという言葉を使います。コンバージョン、クリティカル、クリエイティブはある意味、パウロにとっては大事なCです。コントリビューション、コラボレーションを合わせて5つのCが聖パウロには文化としてあります。

★先生方と話していると、全日制は、どちらかというとGRITダイアローグという対話が行われていると感じています。一方エンカレッジの先生方はオープンダイアローグの手法がベースかなと感じています。

★話の中で、そのような用語はでてきませんが、私のダイアローグレンスにはそう映るのです。

★しかし、どちらにしても目からウロコという状況が生まれるダイアローグであることは共通しています。聖パウロという守護神の精神的影響が暗黙知として染みわたっています。

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★聖パウロの凄いところは、投獄されながらも命をかけて信徒に手紙(それが聖書の一部になっていますね)を書き続け、キリスト教を世界宗教に拡張するパワーです。おそらく、このビジョナリーは先生方は無意識の内に共有しているでしょう。

★教師も生徒も共に自分の世界を創り、仲間と共有し、世界に広げていくという人間になるというのが、同校のモットー“men for others”です。はじめに言葉ありきは、聖ヨハネの福音書ですが、それをパウロは自らの言葉(パウロ自身は真理の言葉を代弁しているだけといっていますが)で、まさに信徒という仲間と共有し、世界へと拡張したのです。それは同学園の教師も生徒にとっても同じなのです。

★そこに内なる火が燃えるわけです。

★そんなことを感じながら、1人ひとりと対話していると、先生方のやっていることは、ワールドメイキングワークショップだなと目からウロコ=eye-openerという事態に私もなりました。

★保険体育科の先生と話せば、ミニメンタルトレーニグアクティビティの話で盛り上がるし、英語や国語の先生と話すとエディティングトレーニグの話や語彙のネットワークトレーニグの話に花が咲きます。社会科の先生方と話すと歴史の智慧や空間と時間の読み解き、ストーリーテラーの話で壮大な時の流れにワープします。理科の先生とはそれこそサッカーボールがフラーレンにコンバージョンするロマンにワクワクしてきます。数学の先生とは、数式と現象のコンバージョンの哲学の話に深まっていきます。エンカレッジの先生とは、心理的安全やオープンダイアローグのトレーニングを先生方がどぅしているのかチーミングの話にまさに目からウロコなのです。

★そして、私自身目が開かれました。今まで私は授業をPBLに変換することで、学校全体の教育活動が有機的に循環し、それぞれの活動で活躍する生徒が、その循環によって、得意分野を広げ深め、他の分野にも横断的に視野を広め、人生の転機を自らうまく生かしながら人生を切り拓いていくことができると思っていました。

★ところが、それには、それぞれの分野を有機的につなぐ接着効果を、生物の遺伝子や神経系、組織がそれぞれ内部で接着する機能が綿密に計算されているように、解明しておかなくてはならないということに気づいたのです。

★PBLをやると、自然とその循環接着機能ができると思っていたのですが、それはどうやら違います。意識してつくらなければなりません。

★教科横断、学際的、インタフェース、融合、統合、越境・・・。化学の領域や生物の領域では、その接合する場所の細部に神が宿っています。

★教育において、授業、探究、部活、行事、研修・・・などなど分断されがちで、なんとかみな有機的につなげようとしています。しかし、意識すれども実践がなかったのだと。

★しかも、その実践は、あらゆる活動のバックグラウンドで行われるものなので、スペースも時間も多くは取れません。極めて短時間でコンパクトに、しかし、のりしろ部分と同じで、あらゆるところにはりめぐらされていなくてはならないのです。そして、すでに先生方は、だれでも無意識の内にやっているのです。そこを発見し、見える化へ転換するというのが私の使命だと感じています。

★私は、ワールドメイキングは、まさにこの接着部分という細部にこそ鍵があると気づきました。ここは夜のうちにかわいい妖精が現れてやってくれるとよいのですが、それは現実的はないのは言うまでもないですね。

★チーミングはまさにここだなと。とりあえず、私の中では、有機的循環の接着部分をトレーニングすることで、ワールドメイキングができるので、コンパクトなワールドメイキングワークショップが出来るようにしようと思っています。すでに、聖学院の児浦先生とか工学院の田中歩先生とかは、シンクロしている(と私の妄想かもしれませんが)ので、聖パウロの先生方や児浦先生、田中歩先生とその仲間のみなさんなどとコラボレーションできればよいなあと思っています。

★ワールドメイキングワークショップは、11のクリエイティブトレーニングで成り立ちます。1分から10分のワークショップ言語を使いながら行っていきます。このワーックショップ言語を駆使しながら目からウロコ対話を行っていく人材は、ファシリテーターでもコーチでもありません。単純にトレーナーです。

★ですから、体験してビジョンを共有すれば、誰でもできます。っこは制度的な組織にはしたくないですね。教師のみならず生徒も。授業や探究や部活、行事を担当する人材は、教師やファシリテータやコーチとして制度的な裏付けが必要ですが、ワールドメイキングトレーナーは、すべての人に開かれています。むしろ自分の世界をつくっていくときの自分へのイニシアチブをとるトレーナーである必要があるでしょう。

★学校という文化の中に、そのワールドメイキングのためのクリエイティブトレーナーが溢れれば、有機的接着が可能になり、シナジー効果が溢れるでしょう。活力が生成されるでしょう。教師も生徒も内燃し続けるでしょう。

★今まで、私はトレーニグという言葉は自分自身には合っていないと思っていました。あくまで、ファシリテーターだと。しかし、実際にやっていたことはワールドメイキングやコミュニティシップのトレーナーとして先生方や生徒(順天での講座や開智国際大学での講座はまさにそうでした)と接していたのだと。私が得意なㇳレーニンは、ダイアローグトレーニグとコンバージョントレーニグとコンパションネイトシステムト思考レーニングなだなと。

★New Power Schoolのさらに新しいタイプの学校が生まれる予感がします。このワールドメイキングワークショップは、極めてシンプルで短時間でできるように開発(テクノロジーは必須ですが、できるだけシンプルに)しようと思うので、楽しみにしていてください。コスパはいいですし(笑)。ワールドメイキングが出来るようになれば、偏差値とか人の眼とか気にならないし、激動の局面に打ちひしがれることもないでしょう。仲間と共にファンタ―ジェンを生み出すことができます。

★4月から始めます。4月半ばまでは、まだ私の仕事の行方を発表できませんが、やろうとしていることはワールドメーキングのためのクリエイティブトレーニングコミュニティを創ることも1つかなと。みなさんよろしくお願いします。児浦先生、田中歩先生、Zoomでまた会いましょう。

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2021年3月24日 (水)

New Power School(06)文化学園大学杉並 オンライングローバル説明会はやくも追加開催の意味

★文化学園大学杉並の染谷先生からメールをいただきました。一昨日の「小学5年生以下対象 オンライングローバル説明会」に約100組の視聴者が参加したということのようです。この時期にはやくも!すごい!。そして、好評だったため、要望にこたえるべく、急遽「4/17(土)オンライングローバル説明会 追加開催決定!」をしたということです。俊敏な動き、文化学園大学杉並(以降「文杉」)の勢いを感じます。さて、その理由はなんでしょう。それは文杉が新しい保護者のニーズにこたえているからです。そして同時に同校自身この新しいニーズを生み出しているという重要な意味があります。

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★というのも、文杉を受験する生徒は、すでに英語の高度な力を持っています。今年の中学入学者の110名のうち55名は、すでに英検取得者です。そのうち2級以上が25名です。

★上智大学をはじめ総合型選抜や公募推薦で求められる資格要件が2級以上ですから、これは驚きです。この英語が得意だという生徒は、将来高校生になったとき、日本で初めて文杉が創設したダブルディプロマ(DD)コース志望者が多いのです。DDコースの大学進学の内訳(大学合格実績の量の話でいえば凄まじいのですが、DDコースを通してどのような大学へ進むかという観点から見てみると)は、海外大学進学者が24%、国公立早慶上理ICUが25%、GMARCH・関関同立が22%です。

★ダブルディグリーですから、一般入試ではなく外国学校入試のような国内にいると気づかない留学生のための入試なども受験できます。当然英語力がなければなりません。その英語力は英検でいえば準1級以上でしょう。

★文杉の中学1年で2級で入学した生徒は、中学の間に準1級は取得できる英語教育環境にあります。何せ、DDコースに進んだ時、すべての授業がオールイングリッシュですから当然です。もちろん、DDコースに入る時点で、英検2級からはじめても卒業時にはほとんどの生徒が準1級以上を取得しているはずです。

★もっとも、英検ではなくTOEFLやIELTSという検定試験で、CEFR基準でB2・C1というところまでいくでしょう。たいていの高校はB1レベルまでを目標にしています。しかし、それでは難しい時代がすぐそこまできています。

★いまここで話している内容は、中学入試において一般入試を考えている受験生にはピンとこない可能性があります。これはしかし、将来リスクの壁が立ちはだかるということに気づいていないと置き換えることができてしまうのです。

★つまり、逆にそのことに気づいている受験生が文杉を受験するということなのです。そして、その文杉志望者数が近年急激に増えています。世界は2050年までに脱炭素社会になります。EV車にどんどん変わっていきます。そのためには、スマートシティ化が進みます。

★AI搭載のインフラやデバイス(IoTですから)に取り囲まれる時代突入に、今回のパンデミックで加速しました。この動きは世界同時的にイノベーション競争になっています。この流れに対応できないと国力は一気に衰退します。他人ごとではなく、私たちの生活が危機に陥ります。

★そうならにように、政府や省庁は高度人材が海外からきてくれるように、環境を整えています。その人材とはこのAI社会をつくる知的高度人材のことを意味します。その動きはすでに始まっていて、今回の2020年の大学入試改革もその一環でした。一般入試の改革の動きは鈍足でしたが、海外の人材を受け入れるための大学の授業の変容や入試の変容は凄まじい動きなのです。残念ながら一般入試の受験生にはその動きははっきりとは気づかれていません。

★高度人材は、英語はあたり前、STEAM教育体験当たり前、クリティカルシンキング・クリエイティブシンキング当たり前です。なおかつリベラルアーツ当たり前です。

★改訂学習指導要領もなんとかその高度人材が体験している中高時代の学習環境に追いつくように動いていますが、間に合いません。それゆえ、文科省は、IB200校計画を、今回の大学入試改革を検討した段階で構想したのです。

★なぜなら、当面必要な50万人の高度人材は、現状の中等教育と国内大学では育成できないということも政府はわかっているからです。高度人材を受け入れるための法整備も行われているぐらいです。

★しかも、生産年齢人口が激減する日本です。準高度人材もどんどん海外からやってきています。イノベーションは多様な環境でしか生まれないと言われています。大学の留学生率は先進諸国で最低です。すなわち、高度人材危機が日本で大問題なのです。

★がしかし、このことに気づいている受験生はまだまだ少ないし、その受験生のニーズにこたえられる学校は文杉のようなNew Power Schoolですが、それもだ40校くらいです。その中で最も先進的な学校が文杉です。

★特にこの高度人材危機は2022年以降明らかになります。2022年4月1日から18歳成人の時代が到来です。今までの18歳のように守られる部分が少なくなり、いきなりグローバルな社会に放り出されます。大学に入るや高度人材予備軍と競争が始まります。本来共創を大切にしているのですが、しばらく競争になります。新経済社会が安定するまでに、20年くらいかかります。その過程は高度人材による年収1000万以上クラスの独占がはじまるからです。

★ここに備える進取の気性に富んだ保護者が関心を持つ学校が文杉です。3月21日、この時代の新しいニーズにこたえるべく、文杉は2022年からまた新しいシステムを構築しています。そのことについて説明がありました。どんな内容か?それは4月17日の追加説明会に参加して情報収集をすることをおススメします。

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2021年3月22日 (月)

GLICC代表鈴木裕之さん なぜグローバルアドミッションの時代なのか?! ヤバイ話の二重性大いに語る。トランジションアドミッションの必要性のヒントを頂きました!感謝です!

★昨日GLICC代表鈴木裕之さんは、「海外帰国生のためのオンライン進学説明会」を開催。おそらく塾業界のほとんどの人が気づいていないヤバイ話です。しかも2時間を超えるトークをやってのけたのです。ウェビナーとして参加していましたが、あまりにおもしろいし恐ろしいし、それがゆえにそこを超えれば希望がやってくるという二重のヤバイ話。あっという間に時間は過ぎ去りました。

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★簡単に言ってしまえば、2020年大学入試改革は、一見滞っているようにみえるけれど、それはドメスティックアドミッションの話で、各大学はグローバルアドーミッションに移行しつつあるという話なのです。ドメスティックなアドミッション、つまり国内のアドミッションの改革は、そこしか見えていないで、常に対処療法でしか解決策を考えられない方々が足を引っ張るからなかなか進まない。

★しかし、グローバルアドミッションは、そういう方々の範疇を超えているし、興味と関心をもたれない箇所だから、どんどん進めていけるといういうことなのです。そもそも大学入試における帰国生入試は、国内の高校には関係ない話だと思われています。

★しかしながら、IBだとかIBに相当するダブルディプロマコース、UPAA提携学校、インターナショナルコースを持っている高校は、そこに関心があります。IBやダブルディプロマコースを持っている学校で学んでいる生徒は、そのまま帰国生入試を受けられるし、UPAA提携校で学んでいる生徒は、今のところマンチェスター大学など海外大学受験となりますが、いずれそのうちにIBのようになっていくでしょう。すくなくともインターナショナルコースを有している学校で学んでいる生徒が、総合型選抜や公募推薦の中のグローバル入試を受験するように、UPAA提携学校で学んだ生徒もそういう道を選択するようになるでしょう。

★外部検定試験は、一般入試では猛反発をくらうわけですが、以上のようなグローバルアドミッションにおいては、極めて重要です。もちろん、CEFRでC1を取得できるレベルだと、一般入試でもかなりアドバンテージが高いと鈴木さんは、東大の合格得点結果で説明しています。

★ともあれ、定員厳格主義があるわけですから、帰国生入試の数が増えることで、一般入試は難しくなります(ここの本当の意味はとてつもなく恐ろしいのですが、気が付かなければそれまでです。いずれ考察しましょう)。さらに総合型選抜も英語力と思考力と経験値と社会貢献度というまるで海外大学入試に必要な入試制度への試験は、隠れグローバルアドミッションです。

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★がしかし、ヤバイ話というのは、そういうことではないのです。実は帰国生入試以外に、各大学が今力を入れ始めた入試は外国学校入試です。つまり留学生のための入試です。国連やOECDなどのデータを見るまでもなく、日本は急激に生産年齢人口が減ります。上記のグラフの中で激減する国です。また、在留学外国人率もめちゃくちゃ低いですね。

★EVだとか脱炭素社会が間近にせまっていて、高度人材が必要だと。その高度人材は、もはや現状のドメスティックアドミッションのシステムでは生まれないので、帰国生と総合型選抜などで専門意識や研究プロジェクト向きの学生を大量にとらなければならないのは歴史的必然なのです。

★しかし、それだけでは足りないのです。そこで、外国学校入試で中国、東南アジアから優秀でハングリーな学生をゲットしようとグローバルアドミッションを開始しているのです。

★すでに理系の大学院の博士後期は、半分が留学生と言ってもいいかもしれません。その流れが博士前期にも及び、やがては学部にも及ぶということになるのでしょう。

★多様化がなければイノベーションは起きにくいと言われていますから、EVと脱炭素社会に向けて拍車がかかるでしょう。

★しかも、これは理系だけの話というわけではないのです。そのような高度人材を支えるマネジメントの高度人材も必要です。文理融合型の学際的な専門性が問われるのです。

★かつては、外交を中心とする一部の官僚が英語が出来ればよかったのです。それが商社にひろがり、グローバル企業に拡大し、それで帰国生入試が注目されるようになってきたのですが、さらに国内一般企業にも波及しつつあるのです。

★それはこのコロナ禍にあって、ITやWeb関連産業が活況を帯びていることからも想像は難くないはずです。

★私のようなドメスティックな生活をしている市民でも、多くの東南アジアや中国の留学生と出遭いがあります。この流れは加速しているのでしょう。もちろん、現状のパンデミックではそれは目立ちませんが、もはやZoomなどで広範囲に加速しています。

★鈴木さんが事務局をしているNew Power Schoolのコミュニティは、実際にそのような流れに乗っていて、もはや偏差値というドメスティックな尺度では通用しなくなっている世界の到来の最前線にいます。今回のセミナーでは、New Power Schoolの紹介もされていました。

★日本の多くの人が気づいていない、グローバルアドミッションの話、それを見定めている中高大学の紹介、そのような中高大学に合格するための英語力と思考力の対策の方法など、2時間を超えるプレゼンテーションは、海外駐在の方々に大好評のうちに幕を閉じました。

★私も4月から共に学ぶ高校生とどんなプログラムを創造していくのか大きなヒントをもらいました。おそらく今ドメスティックなアドミッションで想定しているようなもではなく、かといってグローバルアドミッションにすぐにつながらないわけですから第三のキャリアデザインを考える必要があります。さてさて、どうするか。その解決方法はトランジションアドミッションプログラムだなと確信しました。

★4月から共に学ぶ高校生は、偏差値装備がはじめからなされているわけではないので、逆手にとって、その装備をさせることなく、別のトランジションアドミッション装備を創り上げることが大切なのだと感じた次第です。鈴木さん、ありがとうございました。

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八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(了)在校生とOGからのメッセージ

★もうすぐ高1になる八雲の男子生徒3人とのインタビューの紹介も最後になりました。菅原先生は中1の時に彼らの学年主任。つまり共学1期生の学年をOne Teamにしていくメンバーとして幾度も対話を重ね、陽だまりのような眼差しで見守り続けてきました。もちろん、これからもそうです。インタビューに参加していただき、「間違いなく、彼らは八雲の共学化の歴史を積み上げていると再度確信しました」と。

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★「何より、1人ひとり自己変容しながら、その変容が八雲の歴史になっているというのが嬉しい。彼らが入学した時は、男子生徒の比率は少なかったわけです。しかし、年々増え、今年4年目の新中1生の男女比率は1:1です。また今年から高校入試も共学化したのですが、やはり1:1の比率で入学してくれました。これは彼らのプレゼンの姿やグローバルリーダーシップにチャレンジしている後姿をみて、憧れて入学希望をしてくれたのは間違いありません」と語ります。

★たしかに、3人1人ひとりが自分の変化についてしっかり自覚しているのは目を見張りました。八雲の歴史のページをつるという責任感が自分の中に生まれているとか、内向的な自分が発信型になったのは、信頼のある環境だったからだと気づいたとか、自分の内面に研究したいという気持ちが沸き上がっているのを感じますとか、アイデンティティを自覚しているのです。

★でも何より大事なのは、互いに心を動かせる信頼関係であるというのは共通の想いでした。さすがOne Team。ゆるぎなきビジョン共有が持続可能になっています。

★その証しは、3人のメッセージから汲み取れます。ご紹介しましょう。

 ★Kくんは、「難しい事はいろんな人を頼って一つになって乗り越えよう」と語ります。簡にして要を得た表現です。信頼感がここにも浸透しています。「頼る」ということが言える互いにオープンな信頼関係をつくることができるからこそ困難を乗り越えられるのだと。まさに八雲学園でのMくん自身の体験が凝縮しています。

★Mくんは、「自分らしさを大切に、学業と行事に励み、学校生活を楽しもう!」と表現しています。アイデンティティとそれを学業と行事の2つのベクトルに分割し、その合力が学園生活で楽しめる状況を生み出すという、まさに理系に突き進もうというMくんの信念が彷彿としています。

★Yくんは、「八雲学園の先生は生徒一人ひとりに真摯に向かい合ってどんなことにも相談を乗ってくれたり、本当に気軽に話しかけられる先生がたくさんいらっしゃいます!そしてこの学校はグローバル教育などに力を入れていて、外国人とかかわれる機会などがたくさんあったり、またプレゼンテーションの機会の多さ、また文化体験の多さなど自分の世界が必ず広がります。この学校には魅力がたくさんありすぎてここには書ききれませんが言い切れることがたくさんあります。それはこの学校に入って後悔することは絶対にありません!みなさんこの学校に入って大きな成長をともに成し遂げましょう!お待ちしております!私事にはなりますが、私は吹奏楽部に所属していて初めての男子でもあります。4月には定期演奏会が開かれます。少しでもこの部活に興味を持ってくれたらと思います!」と語ります。

★相手の心を動かすことをモットーとしているYくんらしい、くわしくわかりやすく、「この学校には魅力がたくさんありすぎてここには書ききれませんが言い切れることがたくさんあります」という情熱的なレトリックを駆使しています。自由研究3年連続最優秀賞受賞の面目躍如です。

★3人はこれから、仲間と一緒に、後輩と一緒に八雲の歴史に共学校の新しい歴史を加えていくことでしょう。しかし、本質的なことは何も変わりません。それはOG高寺さんの次のメッセージにシンクロしているところからもわかります。

「RSRC(ラウンドスクエア地域会議)2019@深圳に参加して
               2019年度卒業 髙寺香帆
こんにちは!私は昨年度八雲学園を卒業した、現在大学1年生の髙寺香帆です。私は高校3年生の春に、中国で行われた地域会議に参加致しました。今回はその経験がどのように今の自分に影響しているかを記したいと思います。
私がこの経験から得たことは、3つあります。1つは英語学習のモチベーションが上がったことです。正直、地域会議では楽しいことばかりではなく、英語が上手く話せず他国の参加者に馬鹿にされて落ち込んだこともありました。しかし、その経験こそが私の英語学習の意欲に火をつけました。大学受験が終わった今でも、留学や国際交流に向けてそのモチベーションを下げず、勉強し続けています。
2つ目は友達の幅が広がったことです。私は今まで、日本人の友達がメインで、その他の国籍の友達が数名いる程度でしたが、その幅が一気に増えました。特にインドネシア、カンボジアから来ていた友達は、私のつたない英語を一生懸命聞き取ってくれ、時に私が聞き取れなかった説明を要約してくれました。また、何人かの友達とは、コロナ前、日本に旅行に来てくれた際、一緒に遊んだり、テキストしあったりしていました。今年も年賀状を送りあう友達もいて、一生ものの友達作りが出来たと思います。
3つ目は、異文化に対する理解が広がったことです。私の場合、渡中前は、メディアの影響で特に中国、韓国人に(本来あってはなりませんが、)偏見がありました。しかし、実際に私が地域会議で関わった方々は、本当に親切で気さくな方ばかりで、そうした偏見を持っていたことを大変後悔しました。この経験から、現在は様々な事柄において、先入観を持たないように気を付けながら生活をしています。
 内容をまとめると、今までの3つの要素が、今の私を構成するのに無くてはならなかったものであり、この経験がなければ、ここまでの成長は見込めなかったと思います。個人的には、多少嫌な思いはしても、地域会議に参加したことを後悔したことはありません。現在はコロナ禍で国境をまたぐ移動は難しい状況にありますが、私達にはオンラインという強い見方がおり、どんな人でもインターネット上で、世界中の人とつながることが出来ます。国際交流をやって後悔することはありません。是非皆さんも機会を見つけて、国際交流を楽しみ、自身の成長を感じてみてください!応援しています。私も共に頑張ります。」

★八雲学園の教育の総合力が生み出すグローバルリーダー。このような人間像を描く学校だということがよくよくわかる3人の在校生のインタビューとOGのメッセージです。八雲学園のもう一つの魅力は、このグローバルリーダーへ育つ教育の循環が持続可能であり、生徒とともにアップデートし続ける実績を毎年積み上げているということだと確信しています。

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2021年3月21日 (日)

八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(4)

★Kくんの進取の気性に富んだ精神あふれるプレゼンの話に花が咲いたと思ったら、今度はYくんが語り始めました。「八雲は、本当にプレゼンの機会が多いんですよ。理科では、夏休みに1人1テーマについて自由研究して文化祭などでプレゼンします。ぼくは、毎年最優秀賞もらっているんです」とさりげなくそれでいて好奇心の眼は輝いていました。

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★毎年というのは、偶然ではなくYくんなりの戦略や作戦があるんですねと聞いてみました。どうやら今回は愚問ではなかったようです。「相手の心を動かすには、身近な物を選んで、そこに新たな見方を発見することですね。中1の時は、どろの着いた布を洗い落とす洗剤はどれかを多くの洗剤を買って実験しました。中2の時は、アボガドを選びました。食べごろを判断するのが難しいと言われているので、時間ごとに食べ比べる実験をしました。中3の時には、赤色のいろいろな材質と光の関係を調べました」と。

★一見身近な実験ですが、どれも化学の話ですね。それと味覚や視覚が結びつくように学年があがるにつれてアップデートしています。理科としてもおもしろいけれど、身近な問題を化学の力で解決する話です。その問題はわりと生活に根づいているので、スタンフォード大学で生まれて東大でも導入されているデザイン思考という手法です。文系だけど理系的なセンスも融合して実験をしているYくんの学びの姿勢が了解できました。

★感動していたら、今度はMくんが「マナー講習やシエラトンホテルでテーブルマナーも学べるのです」と。思わず理系志望のMくんがどうしてマナーに興味があるのと聞いてしまいました。またも愚問でしたが、驚きの回答があったのです。「社会的地位の高い人と食事をしたときにマナーはコミュニケーションの一環として必要ですよ。それも相手の心を動かす大事なプレゼンテーションです」と。

★そこに飛ぶのかあと私の心の叫びでした。ウェルカムの精神とかホスピタリティは社会に出たときに大切だとは八雲の先生方はたしかにいつも語っっています。しかし、偉い人と話すシチュエーションを再現しての話ではありません。

★Mくん、そしてKくん、Yくんもですが、ここでいう社会的地位の高い人とは、実は自分の研究や企画をプレゼンして耳を傾けてくれる人ということでした。具体的には出資者や社長だというのです。

★まままさか起業とかということ?とおそるおそる聞いてみました。二つ返事で「興味あります」と3人がハモりました。起業体験セミナーとかあるのですかと尋ねると。これまた二つ返事で「はい」と3人。そして、ただし普段の授業で行うというのです。

★公民の時間に株式学習ゲームというカリキュラムがあり、その中で起業して資金調達するためのプレゼンを行うプロジェクト学習があるということです。製品や仕事のコンセプトは言うまでもなく、大事なことはいかに相手と信頼をつくるかということだそうです。ウェルカムの精神、ホスピタリティ、相手の心を動かす、身近なものの解決・・・などが3人の内面の中ではきれいにつながり循環が生まれているということが了解できました。

★そう思ったとき、またも近藤理事長・校長が声をかけてくれました。「八雲学園は教育の総合力を大事にしているんです」と。もちろん、私の記憶の中でリマインダーが立ち上がったというわけですが。

★3人は、この魅力的な教育の中で自分が変わったことを自覚していると言います。だから自信をもって後輩に八雲学園を共に楽しんでほしいのだと。その声は次回最終回でご紹介しましょう。

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2021年3月20日 (土)

八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(3)

★Yくんが話し始めたときも、やはり話題が重ならないように気遣ってくれました。「僕は、文化体験について語ります」と。たしかに年間20か所くらい体験しに外にいくのは八雲学園の魅力です。各種博物館、各種科学館、多様なワークショップ、各種エンターテイメント・・・。数え切れません。「そんな中で劇団四季には驚きました。演劇に興味を持っている自分に気づいたからです」と。

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★そのとき、近藤理事長・校長の声が聞こえてきました。「多くの体験は大事なんだ。多様な声に耳を傾けることが大切なんだ。なぜだと思いますか。自分の世界を深堀するきっかけづくりになるからです」と。もちろん、Zoomに途中参加されたわけではない。お会いするたびに語られる言葉が、リマインダーよろしく現れたのです。

★そして、文学部かなあ自分が進みたいのはと。文系ではなく、文学部と決めているのだと。まさか作家になりたいとかと聞いてしまったら、そう短絡的ではないという感じで、いや違いますよと。また愚問を発してしまったと反省しつつ、耳を傾けると、「新しい分野や新しい文化を体験すると、新たな理解や気づきが生まれるのです」と。

★なんと、教育者の想いとは、このように具体的に生徒に伝わるのだと感嘆してしまいました。

★そして「あっ、それからプレゼンの機会が多いということです」と。ここから一気にランダムに話が盛り上がってきました。みなそうだということになったのです。

★Kくんは、「本当に多いのです。たとえば、eスポーツの部活を創りたくて、企画提案を先生方にさせていただきました。驚いたのは、すべての先生方が参加してくれたのです。俄然燃えました。そしてありがたいと思いました。どうやったら、先生方の心を動かすことができるのか。いきなりプレゼンではなく、それまでに相談にのってくれた先生もいます。校長先生とも直接話す機会も頂きました。もちろん、一回だけで承認はされませんでした。しかし、もう一度機会をもらえるというのです」と目は輝いていました。

★よく聞くと、すでに賞金億単位のeスポーツに参加する体験をしているというではないですか。日本ではまだまだ広まっていないので、ぜひ普及させたいのだというのです。体験から自分の世界を深堀し、それをさらに公開するパワーが生まれるのが八雲学園のプレゼンテーション教育だということでしょう。そういうプロジェクトが大好きなのだというのは3人口をそろえて語っていました。まさに魅力的な教育です。自分が変わるという実感は、このプレゼンへの過程とどれだけ他者にインパクトを与えることができるかというワクワク感なのでしょう。

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2021年3月19日 (金)

八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(2)

★八雲学園の魅力について現中3生で、4月から高1になる男子在校生にインタビューしておもしろいのは、じゃあ自分は英語について語りますとMくん。最初に話したKくんと話が重ならないように気遣いを見せてくれるのは、さすがウェルカムの精神を大事にしている八雲学園らしい自然体の姿勢です。

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★Mくんが語るには、「自分は中学に入るまで、英語らしい英語の勉強はしていなかったのですが、3年間で英語力がついたと実感しています。英検3級も取れています。次もチャレンジしたいと思っています」と。

★英語が得意と言うことは、将来もう国際関係か何かの仕事につきたいのですかと尋ねたところ、「いや具体的には決まっていませんが、理系に進み、研究したいと思っています」というのです。

★しかし、なるほどなあと思ったのは、なぜ英語力がついたのか、その理由をきっちり語っているのは、たしかに理系的なセンスを感じさせます。「毎年イングリッシュ・ファン・フェアを体験できるのですが、ネイティブスピーカーの方々に、趣味や文化についてインタビューしながらコミュニケーションして、通じると嬉しいし、毎年手ごたえを感じています」と。

★「それに、YESという自分のペースで英語を学べるe-learningのシステムがあって、これはモチベーションがあがります」ということです。菅原先生によると、彼ら1期生からタブレット型PC1人1台の環境にしてきたので、今年の4月で中1から高1までは、その環境になるということです。こうしてZoomで資料を共有したりチャットしたりするのもスムーズなのは、その環境を使って、すぐにオンライン授業を開始できたからだということです。

★それにしても、理系に進むのに英語に興味があるというのはおもしろいですねと問うと、それは愚問でした。「理系に進むと、論文を読むにしても、プレゼンするにしても、海外の方も参加するのが当たり前ですから、英語は使います。大切だと思います」とあっさり回答されてしまいまいました。

★英語という言語は、かつて大学受験のための教科学習の1つでしたが、今や完全にキャリアデザインの一環なのだと思い知らされました。現状ではさりげなくMくんは語っていますが、中3までに英検3級をとったということは、高校卒業までには、準2級、2級、準1級までは、順調に進むでしょう。八雲学園は、C1英語を目指す環境になるので、1級も夢ではありません。八雲グローバル教育のロードマップを順調に歩いているといえましょう。

★そしてYESというシステムは、海外協定大学推薦制度(UPAA)加盟校の一環として行っているシステムです。今年も同制度を活用して世界大学ランキング100位以内のマンチェスター大学をはじめ、海外大学に4大学に合格しています。3年後Mくんたちにもその門戸は開かれているわけです。

インタビューをしていた時期とちょうど同じころ、大学通信が「学習塾が勧める中高一貫校ランキング2020 グローバル教育に力を入れている中高一貫校」という記事で、同校のことをこう記事にしています。

「トップの八雲学園は2018年に中学が、21年に高校が女子から共学化。アメリカ西海岸に海外研修センター「八雲レジデンス」があり、海外研修や留学を積極的に実施するなど、伝統的にグローバル教育を重視している。高い英語力を身につけ、他国の文化を理解し、多角的にものごとを捉えることができるグローバルリーダーの育成を目指す。卒業までにCEFR(セファール)C1レベル到達を目標にしている。さらに、20年度より海外協定大学推薦制度(UPAA)を導入し、海外大学進学も推進している。17年にラウンドスクエア(世界50カ国の私立学校200校が所属する国際私立学校連盟)に加盟し、活発な交流を行っている。」

★3人は、自分たちのグローバル教育は当たり前の環境であると思っているかもしれないが、この記事を読んだら、どんなに恵まれたカリキュラムデザインが創意工夫されているのか改めて感動するでしょう。そして、共学1期生として、この環境を十分に使い切ろうと思うに違いありません。菅原先生によると、生徒たちが共学校を創っていくという誇りと自覚を十分にもっている姿勢に、自分たち教師が勇気づけられるのですということです。

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ダイアローグとシステム思考と哲学(02)聖学院に有る学習する組織を卒業生が語る。「卒業式と卒業文集と、その他諸々の話」

★卒業式シーズン。卒業生が、教師や同窓生とフラットに学校生活についてリフレクティングトークやリフレクティングライティングする行為で満開です。聖学院の今春の卒業生Yasuiさんが、noteで語っているのもそうです。「卒業式と卒業文集と、その他諸々の話」がそれですが、ぜひご覧ください。そのうえで、ピーター・センゲの「学習する組織」のレンズを通してもう一度みてください。聖学院に「学習する組織」が有るのが了解できます。同校は21世紀型教育推進校で、PBLも実践しています。PBLの大前提は、学校が「学習する組織」の顔も有しているということが条件です。

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★最近、SDGsについて探究する学校や企業など多くの団体が芽吹いていますが、その行為が「学習する組織」が前提になっているかそうでないかでクオリティの差があるのがわかります。SDGsの出発点は、1972年のローマクラブが編集した「成長の限界」ですが、編者の中心はあのドネラ・メドウズです。

★ここから新しい政治経済社会の構想の議論が世界を席巻します。SDGsにつながっているぐらいです。京都大学や慶応の経済学部の入試問題では、この構想史を未来へ向けて批判的に考える問題を出題していますね。

★彼女の思考様式はシステム思考と呼ばれ、若くして亡くなっても、親友であるピーター・センゲらが継承し、大きく展開しています。センゲは、今はコンパッショネイト・システム思考として「学習する組織」を形成する要素の一つとしてマインドセットしています。

★そして、この学習する組織のシステム思考を活用して思索する問題を、今春慶応義塾大学SFCの総合政策学部が出題しています。大学入試問題に出るから「学習する組織」を学べというくだらないことを言っているわけではありません。

★上述したような大学の入試問題は、学内の研究の最前線の成果が反映しますから、「学習する組織」や「システム思考」は、学問や探究において極めて重要になってきているということを言いたいのです。そしてPBLというのも、中等教育段階での教授法ではなく、中高大や社会につながる学問研究の場そのものだということです。

★PBLのない中等教育学校は、今後大学や社会への探究や政治経済活動をするときトランジションとしてつながりにくくなるおそれがります。Yasuiさんが、同記事でこう語っています。

「聖学院などが推している新しめの教育って勉強みたいに、すぐ成果があがるようなもんでないと思っているのでやっぱり5年後とかわからないけれど成果としてあげなければいけないと思っています。学校とか関係なくて、そういう教育がメインストリームになってほしいからね。」

★鋭い感性がここにはあります。こういう教育が、学校とか関係なく=つまり聖学院だからだとかではなく、メインストリームになってほしいと。それは、Yasuiさん 自身が、「学習する組織」を形成するメンバーだったから直観できることでしょう。

補説)詳しくは、Yasuiさんの記事をお読みください。とはいえどういうところに学習する組織の要素があるかは、示しておきましょう。学習する組織を形成する要素は5つあります。それが複雑系な感じで結びつくわけですね。

Ⅰビジョン共有:「聖学院などが推している新しめの教育って勉強みたいに、すぐ成果があがるようなもんでないと思っているのでやっぱり5年後とかわからないけれど成果としてあげなければいけないと思っています。学校とか関係なくて、そういう教育がメインストリームになってほしいからね。」

Ⅱチームワーク:「13の時から、みんな言いたいこと言って、言葉で済まなくて、思いっきり体でぶつかり合う。15ぐらいになると、この人はこういう性格なんだなとか、分かりはじめる(それでも衝突はあるが)。同時に記念祭とか、プロジェクト、部活のなかで中心的存在になるから、協力し合う。やっと良好な人間関係を築けたと思ったら、もう卒業。」

Ⅲシステム思考:「卒業式が終わって、その日の26時ぐらいから卒業文集を読み始めました。学年の半分ぐらい読んでみたところ、部活や友達のことが多く書かかれてありました。友達の書いているそういう文章と自分の記憶がリンクしてきて、あの時、あんなこと思ってたのか、こんなこと考えていたんだなと分かって最高に自分の中で盛り上がった。普段強気な奴も素直なこと書いてきて、これまた盛り上がった。時間の経過と字面にするのはやっぱりいい。ちょくちょく笑かしにきてる文章もあって書いているその人の個性がブレていないのがこれまた最高。悪ふざけしたことが書いてあって、もう出来ないと思うと寂しさを感じる。締切が過ぎてて、みんな適当に書いたとか言ってたけど、めちゃくちゃマジで書いてあったな。」

Ⅳメンタルモデル:「中学の頃なんてあんだけクソクソ言ってて、6年後には良いと言えるようになるのだからやっぱ聖学院すごい笑。」

Ⅴ自己マスタリー:「最後にこの6年間、お世話になった方には、ヘラヘラしている人間で伝わりにくいかもしれませんが本当に感謝しています。魅力的な6年間という一瞬を過ごさせてもらいました。しっかり社会と母校に、何かしらのインパクトを還元できるようにやっていきます。」

★Yasuiさん、ほんの少しでしたが対話してくれたときのことを思い起こします。ありがとうございました。宮台真司さん的な口調もあり、友を社会を思いやるマインドもあり、ほとばしるパトスとそのあとの疲労から回復する気概ありで、Yasuiさんのキャラは魅力的でした。インパクト還元期待しています!

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2021年3月18日 (木)

ダイアローグとシステム思考と哲学(01)リバタリアン・コミュニタリアニズム

★リベラル、コンサバの葛藤の時代はどうやら終わりをつげ、多くはリバタリアニズムへの道に進んでいる時代。一方でコミュニタリアニズムもまた重視される時代。しかしながら、本当のところは、リバタリアン・コミュニタリアニズムという相矛盾する要素がハイブリッドになる発想の時代かもしれません。リベラルとかコンサバとかリバタリアンとかコミュニタリアンとかについては、住吉雅美さん(青山学院大学法学部教授)の下記の写真の本をぜひご覧ください。サンデル教授を読むのも良いですが、この4つの関係をコンパクトにかつダイナミックに描かれているのが同書の特徴です。

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★リバタリアンでコミュニタリアンというのはどういうことかというと、共同体の作り方が、中心からも周縁からも作られないということなのです。授業共同体であるPBLをつくるときに、構成主義であろうとすると、関係が前面にでます。関係性は、中心も周縁もないのです。そもそも円は中心も円周もないのです。見える化して固定化しているから、つまり物象化しているから、そう見えるだけです。

★私たちの顔に輪郭線は本当はないでしょう。絵にするときに便宜上描いているだけです。それがいつの間にか輪郭線が前面にでてきてしまっているわけです。あくまで想像上のものです。

★現代はコミュニケーションが重要だと言われていますが、ここに中心とか周縁とか持ち出すと、フラットな関係性がなくなり、それはインストラクションとしての関係性ができて、それは関係というより縛りになります。

★この縛りから解放されてなおかつ無秩序にならない共同体。数学的には関数的共同体ですが、こういう人間関係、社会関係を築くことによって、精神的不調をきたさず、ポジティブにあるいは自信をもって生きていく人間社会が生まれます。

★学校もこうでなければなりませんが、精神的不調からはじまり、統合失調症、うつ病などが生まれる場になりがちです。

★少なくとも、この状況を解消するためには、コミュニケーションや対話が大事だと言われているし、特に共感的コミュニケーションが成立している学校は、教職員も生徒も幸せな生活を送っているわけです。

★とはいえ、対話のプレイヤーが、リベラリストかリバタリアンかコンサバかコミュニタリアンかによって、微妙に中心や周縁の力学が働くので、ダブルバインドがあらゆるところで渦を巻きます。

★このダブルバインド状況を解消するには、リバタリアンコミュニタリアニズムの立場に立つしかないというのが、現代社会の組織論というわけでしょう。

★しかし、この発想はすでにアダム・スミスが語っています。国富論の中で一度しか使っていない「見えざる手」が働くということです。みなバラバラに話し、行っても、大きなベクトルは出来上がるという発想ですね。同時代人のヘーゲルもこの発想は持っていますが、絶対精神という目標が中心になってしまうので、アダム・スミスとは違うカテゴリーに入っていますね。

★とはいえ、このバラバラでも、先述した4タイプの価値が存在しているというバラバラさ加減だと、自然淘汰までの時間があって、その間ではダブルバインドや葛藤が頻発しています。やがてリバタリアン・コミュニタリアニズムのトポス(場)ができて、そこで多様性が発揮されると中心も周縁もないのに秩序が生まれてくるのです。

★これがチーミングの醍醐味です。豊かなチームは、リバタリアン・コミュタリアンがトポスとなっている時に生まれます。

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2021年3月17日 (水)

八雲学園 共学1期生男子 プレゼンで人の心を動かす術教えます(1)

★本日八雲学園は終業式を行いました。式が終了してすぐに、Zoomで4月から高1に進学する現中3男子3人と対話することができました。中1の時から菅原先生が学年主任であったため、共学1期生の男子がどう成長したか尋ねていたら、彼らと話した方が速いですからと段取ってくれました。素早いコーディテート力はさすがです。

★それに、私のインタビューはシナリオがあるようでないので、対話の瞬発力が必要だというのは、長いお付き合いの菅原先生は熟知しています。そういうその場で臨機応変に、それでいて本質的なことを語れるようになっているという自信があったのだということは、対話が終わったときに改めて了解できました。スピーチしながら考えるしなやかな姿勢にその成長ぶりは確かにあると実感できました。

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★テーマは、新入生にメッセージを贈るということでしたが、いきなりそのテーマで話すのではなく、やはり3年間で感じている八雲学園の魅力について軽く尋ねてみました。

★リハや打ち合わせがあったわけでもないのに、チームワークが前面に現れる対話でした。菅原先生は、何はなくともOne Teamづくりを土台としてつくる組織運営の達人ですが、このような対話の場面でもそれが際立ちます。

★ランダムにKくんから教えてくれますかと尋ねると、すぐに「チューター制度に代表されますが、先生と生徒の距離感がいい感じです。もちろん、ベタベタ親しいという感じとは違います」と。ファクトを語るだけではなく、意味を捉え返す<レンズ>をすぐに披露しました。距離感が近いとはどこの学校でも使われるフレーズです。それだけ大事なのですが、それだけ言うと、どこか紋切り型です。

★ところが、Kくんは、距離感の意味を深く考える<レンズ>を身に着けていました。このレンズは先生と実際に常に対話しながら、適切な上下関係というリスペクトをしつつもフレンドリーな関係がそこにはあるというチューター制度をはじめとする対話の積み重ねによって磨き上げられたもののようです。

★このことはMくん、Yくんが話すにつれて三人で、やはり信頼関係ができあがっているということですねと共感し合うところまで高まっていくことで明かされていきます。なかなか知的にスリリングな対話です。まさにチームなあrではなの妙技ですね。(つづく)

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New Power School(05)聖学院 今春の卒業生が贈る言葉「これから聖学院生になる君へ」

★今春、聖学院を卒業したOBのYasuiさんが、「これから聖学院生になる君へ」というメッセージをSNSで流しています。本人は、「小さなアドバイス」と語っていますが、ユーモアあり、現実的な話もあり、大きな夢や希望を抱くことができます。すてきなメッセージです。ぜひご覧いただきたい思います。

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(2019年10月、聖学院でPBLセミナーを実施した時に、同校のZ世代のみなさんも参加、協力してくれました。学外の教育関係者と啓発的なコミュニケーションをとっている姿に感動したのを覚えています。)

★内容は本人の文章を直接読んでいただきたいのですが、1つだけコメントさせててください。記事の中にこんなセンテンスがあります。

<6年前の僕は第一志望に合格できず、悔しい思いを持ちながら入学して行きました。しかし、そんな悔しい思いをしたのは一瞬で楽しく学校を過ごしていました。>

★心憎い表現ですね。「一瞬で」という一言に、Yasuiさんが将来振り返ったとき、自分があるのは、その「一瞬」の永遠にあるのだという未来へ向けて自分とまだ見ぬ後輩にリマインダーセットをしているからです。

★総合型選抜に取り組んでいたYasuiさんならではの発想ですね。記事を読めばおわかりのように、Yasuiさんは、他の学校では経験できない聖学院ならではの多くの体験値を積み、そこで気づいたことについて探究への道を自分で開いていくのですが、総合型選抜では、その開いていく過程を表現しなくてはなりません。

★それは、スト-リーテラーよろしく語らなくてはなりません。契機、困難、仲間、葛藤、超越、新しい問い、希望・・・GRITさながらの物語がそこにはあります。経験がなければ生まれてこない一回性の物語です。そんな物語を描ける聖学院の生活は、将来から振り返れば、「瞬間」点でしょうが、その点の向こうに永遠に続く積分関数が広がっているのです。

★その「一瞬」の物語が、聖学院生の生徒がそれぞれの未来でいかなる困難に遭遇しても、自分で自分の心に火をつけ、仲間と乗り越えていく力になるわけです。

★ そんな火や共振のエネルギが生まれる一生ものの物語を描ける学校こそ、大切な学びの場だと思います。

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2021年3月15日 (月)

wish自由とwill自由(02)前橋のタイガーマスク運動の価値 focメカニズムの発見

★よく学校で、factとopinionを区別するようにと学びます。これは客観と主観を分けるようにという話です。次に、fact(f)とopinion(o)を統合して論述を書きなさいとなります。ここらへんは、何気なく行われているし、言語技術や受験テクニックだとあっさり思われています。

「focメカニズム」

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★欧米の教育でも、このfとoは、大切にされているし、言語技術の中で必ずトレーニングされます。この強調というかリマインダーは欧米の教育はたぶん日本に比べて大きいと思います。しかしながら、欧米の場合は、fとは何か?oとは何か?という捉え返しというか、リフレクションがすさまじいわけです。

★アイデンティティとフェイクの問題を、ライティングではかなりつっこんでやるわけです。おそらくIBのTOKはここをしっかりやっているわけですね。知識とは何か?知識とはいかにして成り立つのか?知識とは客観的なのか?主観的なのか?そして。それはいかにして認識できるのか?認識のアプローチが歴史や文化人類学的に行われるのと哲学で行われるのと、政治経済学で行われるのとではいったい何が違うのか?

★実際近代哲学は、この議論を連綿として行ってきたし、捉え方によっては、第二次世界大戦まで引き起こしてしまうという経験をしているので、欧米ではものすごい内省と学問的蓄積があります。そして、それが民主主義と教育という領域で投影され続けています。

★日本も他人ごとではなく、自分たちが明治以降に世界大戦に参戦したし、引き起こしています。にもかかわらず、言語の理解の仕方を間違えるととんでもないことになるという議論はされないし、それが学校で語られることもほとんどありません。不思議です。しかし、fとoについては、語り継がれているわけです。そこから広く深く考えることを誰も禁じてはいません。ですから、すすめればよいだけです。

★なぜ禁じられているかのようなイリュージョンがあるのか?それは昔話と同じ構造なのでしょうが、そこを追究する時間は私にはあまりないので、それより、さっさと広く深くそこを洞察し、fとoが生み出すメカニズムを組み立てることを先に進めたいと思います。

★そんなことが頭の中でぐるぐるまわっていたとき、NHKの番組を見ていたら、前橋で、焼肉店店長栗原さんが、今回のパンデミックで臨時給休業せざるを得ないという事態に直面した時、10年前群馬県で生まれたタイガーマスク運動を思い出し、生ものが故に廃棄しなくてはならない食材で弁当をつくり、無料で困っている方々に配る活動をしようと意志決定したというニュースが流れました。

★あっ、これだと思いました。

★栗原さんが、苦境に陥ったとき、その状況というfactをしっかり認識し、自分なりのopinionをもったわけです。しかし、その苦境は、自分だけではなく、同業の人びとや町の人びとも同じでした。そのような社会の背景(backgraound)で、痛みをシェア(sharing the pain)したわけです。

★それゆえのopinionだったわけです。多くの人々が同じ事態といfactに対してopinionを持つわけですが、痛みをシェアし、この前人未到の状況を乗り越えるにはいかにしたら可能かというBig Questionに行き着いたから、栗原さんは思ってもいなかったタイガーマスク運動が広がり、NHKにも取り上げられるようになったわけです。

★このとき、しかし見過ごしてならないことは、全く違う状況でも、10年前に群馬県からタイガーマスク運動という社会現象が起きていたということです。この運動に栗原さんの行動がつながりました。

★10年前伊達直人と名乗って、子どもたちの困窮した状況というfactを見て、自分のopinionを持った方と栗原さんと仲間はシンクロしたのです。それは、時を超え、情況を超えてつながったわけです。「タイガーマスク運動」というconceptの源泉にたどりついたわけです。

★このconsceptは古くからあるmen for othersというマインドです。NYの国連のギャラリーにも、民族や宗教、人種などの違いを超えて共通するマインドだと考えて、ロックウェルのモザイク画が掲げられていますね。

★このようにfとoは大きな問いにつながり、それはコンセプトにつながります。コンセプトは誰かが与えてくれるものではなく、あくまで多くの人々のfactとopinionのシェアによって、生まれてくるものですが、その生まれたものが普遍的であるとき、大きな運動になるということでしょう。

★かくして徹底的に特殊を追究していくと、いつの間にか普遍に行き着いてしまうのです。ところが、普遍を追究しても、特殊がつながってこないのです。不思議ですね。

★理論と実践の一致とか、理想と現実の一致とか、理性的なものは現実的なものとか、よくいわれますが、そのメカニズムは、ふだんのfactとopinionの学びが出発点だったのです。もちろん、背景がくっつかないと運動はおこりませんが。

★このような学びを「focメカニズム」と呼びたいと思います。wish自由がwill自由にシフトするには、このfocメカニズムが必要なのかもしれません。

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2021年3月14日 (日)

品川翔英国語科最終研修 終わりは始まり

★昨日、品川翔英国語科の最終研修でした。1年間心理的安心安全の中、対話とワークショップができたのは、本当に国語科の先生方のペルソナが情熱家で好奇心旺盛で開かれた精神の持ち主だったからです。それと対話の中で交わされる問いの源泉はいつも生徒の状況でした。

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★それと柴田校長が折に触れ、研修の様子を見にというより参加してくれたからでもあります。今回も最後のセッションの時に、私との別れも近づいてきたということもあり、顔を出してくれました。そして参加も。

★最初のセッションは、慶応義塾大学SFCの井庭崇教授監修の「対話のことばカード」を使って、先生方1人ひとりのPBL型授業の振り返りから始めました。すでに、1人ひとりPBL授業が継続的に実施していますから、迷うことなく授業のストーリーやシークエンスに沿って、大事にしている対話カードを並べていきました。

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★そして、当然個人ワークの後は、シェアです。自分は何を大切にしているかプレゼンそして傾聴です。いつもはここでフィードバックし合いますが、すでにお互いのPBLについてはこれまでシェアしてきたので、今回はパスしました。

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★そして、それぞれ共通する対話カードを並べました。ならべてから<ぐるぐる>というワークショップです。1人ひとりが仮に同じ考えでも自分の言葉で表現していく時間です。ときに何回転もしていきます。また途中で自分たちが口すさんだ問いを拾って、回転し始めます。思わず出るので、しまった自分たちでハードルを上げてしまったと大笑いになるのです。新たな意味や理解が生まれてくる瞬間です。

★先生方は共通していることに感動しつつ、違う点を改めて確認し合いリスペックとし合っていました。

・言葉にする時間

・じっくり聞く

・一緒に見出す

★という生徒中心主義的な対話をしているのが改めてシェアできました。そして、その結果として、

・開かれた質問

・意味の変容

・新たな理解

・広がりのある文脈

★が生まれ出てくる対話を大切にしているということも共有できたのです。国語科といっても学年も違うし、現代文、古典、漢文、国語表現など授業は違うのですが、対話という観点から見れば、改めて共通している点があるということです。分野横断的な視点が共有できたわけですが、それはすでに先生方は気づいていました。

★先生方は探究の時間にもかかわっていますから、この国語科内分野横断型の視点は、教科横断型視点に転用できるとすぐに気づき、実践もしてきました。それゆえ、自信をもって、国語科で行ってきたPBL実践を他教科の先生方と共有するワーックショップを先月行ったわけです。それを、今回は対話という切り口で確認し合ったのですが、なるほどやはりそうだということになったのです。

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★2つ目のセッションは、ピーター・センゲの「フィールドブック 学習する組織5つの能力」から「あなたが最も大切にしている価値リスト」を使いました。自分の大切にしている価値を10個選び、さらにコアの価値を3個絞り、1つ目のセッション同様並べました。対話カードと対照できるように並べました。もう私が何も言わなくても、すぐに対話カードと自分たちが大切にしている価値カードのつながりを考えながら並べていました。さすがです。

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★1人ひとりのプレゼンをシェアしたあと、やはり共通している価値を並べ、<ぐるぐる>ワークショップを行いました。ここからは柴田校長も参加しました。みな驚いたのは、全員が選んだカードは全部で40枚あったのに、共通していたのは20%だったということです。対話カードも共通しているカードはほぼ同じ割合だったのに、全体が対話という同じトーンだったので、違いが意識として明確にならなかったのでしょう。

★しかし、価値は違うカードばかりだったので、共通しているものとその違いが明快になって、先生方は意外だなあと感じたわけです。達成、成長、創造性、誠実などは共通していたのですが、それ以外は全く違います。「冒険」というカードを選んだりしているのは、今井先生はその先生のキャラがそのまま表れていて、おもしろいと語っていました。

★その先生は平岡先生ですが、パッションという言葉が好きだというところからもなるほどなあと。西山先生は「芸術」という価値を大切にしていて源氏物語の現代化を目論んでいる普段からの言動から納得でした。また、田中幸司先生の「自然」を選択していたのには、先生方は口々に田中先生らしいと。そして、今井先生の的確なそのコメントに、さすがだと。

★柴田先生は、共通点と違いがあるからいいんだよと。コアがあってみな違うから魅力が映し出されると。もちろん柴田先生の選んだ価値はまったくもってあれなのですが、それはご想像にお任せします。校長として頼もしい価値観です。

★最終セッションは、対話と価値の関係について<グルグル>ワークショップです。

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★自分たちがなんてすばらしいことを語り合っているのだという雰囲気になってきたところで、今後他教科の先生方と同じように、この対話と価値のファクトを分析してオピニオンを語り合うワークショップをシェアしていこうと、その際呼びかける時に、そのワークショップのネーミングを考えようといういことになりました。

★ここは少し時間がかかりました。ファクトとオピニオンは瞬時に語り合うことができたのに、そのワークショップの名づけをしようとなると、考え込みます。ということは、同じオピニオンでも何か質が違うということだねと。

★平岡先生が、また最初に戻りましたね。ファクトとオピニオンの次に何が来るかという前回の宿題のことですねと鋭い気づき。終わりは始まりというのが、物語の大事な構造です。でも、そのとき、文脈は広がっています。

★それは本当の意味での<コンセプト>ということなのだと。数学だと公理とかになるし、理科だと概念。でも言語系はコンセプト。企画作成や建築設計のコンセプトという意味に近いけれど、直接的に生徒の存在が含まれているという意味ではより深い意味です。

★ファクトとオピニオンとコンセプトと。客観と主観と統合という話です。

★私の品川翔英の国語科の先生方と時間を共にしてきた研修はこれで終わりです。しかしながら、先生方は4月から新たな展開をしていきます。物語の続きを楽しみにしています。物語の構造論、思考スキルと論理の関係、ルーブリックの考え方、古典の現代化、言葉のゲーム化、分野横断型視点、教科横断型視点、対話のかけがえのない価値、生徒の成長をうながすPBLやルーブリック、オンライン授業の妙技・・・、数えて言ったらきりがないほど、先生方とリサーチしワークショップを繰り返してきました。

★そして、先生方1人ひとりが、授業を超えて全体教員と研修を行う際のファシリテーターや学習カウンセラーとしてリーダーシップを発揮する実践をやってのけました。4月からの新しい教師と生徒を迎えるにあたり、学習面で、リーダーシップの側面で、品川翔英という協働体を創っていくうえで、活躍されることでしょう。

★国語科の先生方をはじめ、多くの先生方と貴重な時間を共有する機会を頂きました。心から感謝申し上げます。西山先生の最後の「Value-Value」という言葉が響いています。ぜひそうしてください。先生方、お元気で!

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wish自由とwill自由(01)争い事と交渉事

★世の中は、いつも自由と規制の葛藤で混乱を生み出します。これは解決困難で、できたためしがありません。ですから昔から種類や方法は千差万別ですが、争いごとは絶えないわけです。しかし、同時にそればかりだと、人類は滅んでいますからそうなっていないということは、交渉をしながらなんとか均衡を保つ時間があるということです。

★そのうちに、解決する争い事もあれば、別の新しい争い事が起きることもあるというわけです。再び交渉がはじまるわけです。壮大な歴史も人生としての歴史も、争い事と交渉事の連続であるわけです。それゆえ人生は物語そのものなわけです。そして、この交渉事が対話術によって行われる時、均衡の時間は長持ちします。これについては、いずれ述べます。

【図1】

Wish

★さて、争いが絶えないのは、個人が普遍と特殊をどう考えているか違うからです。普遍を社会、特殊を個人と置き換えたとき、社会の中の個人としてとらえることもできるし、その社会の中に納まっているのは窮屈だ、そんなの関係ないと社会と個人は別々だと捉えることもできます。

★この考え方の違いで争い事が起こるわけですね。中世以来の普遍論争という哲学的闘争もその一つです。哲学論争であれば、それは議論として尊重していられるわけですが、ことそれが戦争となるとただ事ではないのです。この違いが宗教戦争を起こしていたことは、世界史を見れば明らかです。

★ですから、議論や戦争に一定の解決策を講じるために交渉をする時間というのが必要だったのです。デイヴィッド・ヒュームが倫理の条件に時間をセットしたのは、まさに当時の経験の観察からでてきたのでしょう。ヒュームに限らず、哲学者たちは、戦争とパンデミックにいつも迫られていたからです。そして、この環境は今も続いていることは、いまここで私たちが実感していることです。したがって、この倫理と時間の問題は現代社会でも継承されています。交渉にかける時間を重ねることの重要さですね。

★授業は交渉というより、対話ですが、この対話なき長時間の講義形式の授業は、実は倫理上問題だという気づきも生まれつつあります。オンライン授業の中に対話のシステムがなく、オンディマンドだけだと何か変だと大学の学生はクレームをあげます。今回のパンデミックで、それはメディアでもSNS上でもあふれました。これを無視すると倫理上の問題が起こることは、もはや説明するまでもないでしょう。

★何か事件が起きたとき、初期対応で謝罪が送れると、法律上の訴訟はあまりおきませんが、倫理上の問題は追究されます。この謝罪が交渉術的にとらえるか対話術的にとらえるかで、また問題の現れ方は違いますが、それについては、また改めて。ともあれ、時間というの概念は、たんなる物理的な意味だけではなく、倫理的なそしてもちろん感情も関係しているわけです。このような時間概念をもつかどうかで人間かそうでないかが区別できるかもしれない程です。

★というわけで、上記の【図1】のように、普遍と特殊の集合論的な関係は、対話によって循環するわけです。この図の中には、3つのタイプの関係があります。違うタイプの考え方をしている社会と社会、個人と個人、社会と個人が対立するわけですから、交渉によって、つまり、この考え方をグルグル回していくうちに3つ目にステップアップすることで、普遍性と特殊の共通点を見出すことができます。ここでようやく、妥協していくというわけです。こうして、自由の安心安全が紡がれるわけですが、これはしかし、油断していると、もとに戻ってしまい、また交渉するということの繰り返しになるわけです。

★元の木阿弥なんて言葉がすでに存在しているわけですし。

★これは、常に一つのタイプを続けていると自由になりたいという意志がこみあげてくるからですね。この自由を私はwish自由と呼びたいと思います。今の束縛、つまり共通性という普遍性から逃れたいという自由ということです。

★これに対し、wish自由はローカル普遍に自分を適合したいとか適合させたくないとか、普遍に適合させる自分の自由にこだわっているのに気づき、なんだそもそもローカル普遍を見直して、新しい普遍を創ってしまえというのが、will自由です。

【図2】

Will

★【図2】のように、wish自由の循環から飛び出るわけですね。起業家精神が大事だなんていうのがトレンドなのは、wish自由からwill自由へということでしょう。創造思考が大事だとかアート思考が大事だとかプロジェクト思考が大事だとかいうのもそうですね。

★wish自由循環は、演繹推論と帰納推論で正解がある程度あります。しかし、will自由は、正解はありません。あくまで仮説推論です。したがって、wish自由論者から見れば、訝し気に思われてしまうのは、will自由論者の運命なのです。

★しかしながら、運命に身を任せていると、will自由論者は独善的・独裁的になりがちです。万能感に溺れると大変なことになります。自分ひとり溺れているうちは問題はありませんが、普遍性を創るわけですから、周りも巻き込まれます。それゆえ、クリエイティブシンキングには、クリティカルシンキングが欠かせないということです。2つのWと2つのCがダイナミックに交差するのがシステム思考なのです。

★完璧なwill自由とか完璧なクリエイティブシンキングとか、多/他から独立したものを求めると、関係を断ち切る要素還元主義に自ら陥没していくのです。

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2021年3月13日 (土)

New Power School(04)八雲学園 はやくもUPAAの成果 4つの海外大学に合格 そのわけ

★八雲学園は、海外協定大学推薦制度(UPAA)の加盟校になってまだ2年も経っていないと思いますが、はやくも今春海外大学に合格しました。高校3年間の成績 と EAT(英語統一テスト)スコアで協定大学に出願可能です。その結果として、次の大学に合格。

The University of Manchester (イングランド) 世界大学ランキング 51位27 
University Exeter (イングランド) 世界大学ランキング174位
University of South Florida (アメリカ) 世界大学ランキング201~250位
Oregon State University (アメリカ) 世界大学ランキング401~500位

* ランキングはTHE世界大学ランキングの最新データです。同データによると東大36位 京大54位です。

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(図は、同校サイトから)

★このことは、何を意味しているのでしょうか?とても大事な意味が横たわっています。つまり、八雲学園で学ぶ生徒は、東大や京大と同じレベルの大学に合格する才能を有しているという事実です。

★ただ、そのようなレベルの大学にアプローチするプロセスが、海外だとマッチングするのですが、国内だと難しいということがあるわけです。それが、今までは、海外のアプローチが英語の壁があるために、日本の教育は、はじめから見ようとしなかったということなのです。

★選択肢が多様なのに、少ない選択肢を目指して日本の生徒は競争していた。するとその選抜試験に適合しないけれど才能は十分にあるという生徒は、その才能を自己評価も他者から認められることもなかったわけです。

★八雲学園の先生方は、そういう意味では生徒のそのような外部の壁をぶち壊す環境をつくってきたわけです。

1)英語力の育成

2)多様な海外体験の創出

3)文化教養の基礎作り

★才能を生み出すのに十分な環境ですが、この環境がよすぎて、日本の選抜試験に魅力を感じないということも片方であったでしょう。そこで、

4)ラウンドスクエアやUPAAという海外へのキャリアデザインを開く多様なアプローチの実現

★をしてきたのです。そして、それが見事に花開いたわけですが、最も重要なことは

5)チューター制度という対話によって、生徒自身が他と比較して自分の評価を決めるのではなく、自分がどう生きるかという自分が自分自信に立ち臨むモチベーションの生成

★をしてきたのです。教師の力量とは、知識をわかりやすく説明する力、知識を活用して思考を鍛える力、積極的に活動する主体性を生み出す力などなどですが、大事なことは心に火をつける力です。そして最強なのは、生徒自身がいかなる事態に直面しようとも、萎縮せずに、自分で自分の心に火をつける精神力を育成する力でしょう。

★UPAAというシステムがあることを知ったとき、先生方は躊躇なく活用を検討し、実施しました。八雲の生徒は、自分で自分の心に火をつけるに値する魅力と出遭えば、必ず動き出すという自信があったからです。

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GLICC Weekly EDU(26) IB出身者を受け入れる早稲田大学の変容を実感

★昨日12日、GLICC Weekly EDU 第21回「国際バカロレア(IBディプロマ)取得から帰国受験そして日本の大学生活」がありました。ミュンヘンのインターナショナルスクール出身で、現在早稲田大学法学部で学んでいる桑原さんが登壇。GLICC主宰の鈴木さんの教え子で、現在は、GLICCIBプログラムのチューターでも活躍しています。

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★詳しい内容は、ぜひYoutube配信をご覧いただきたいと思います。IBのプロジェクトベースの学びの方法や意味や価値がわかります。そして、その学びが、早稲田の国際寮で生活しながらの学びに直結している様子が明快にわかります。学びのトランジションの典型的なモデルです。

★配信の時間では、国際関係のセンシティブな問題があるので、深くは触れられませんでしたが、桑原さんの民主国家日本の強みも弱みも背負いながら国際関係を調整して、その関係を最適な状態にしたいという気概が静かに響いています。

★本人のメジャーの土台は国際法研究にあるわけですが、ゼミでは国際民事訴訟法を学んでいます。カンボジアやマレーシア、南アフリカ共和国などでもフィールドワークをしながら、現場の市民とのかかわりに、法律的な背景や倫理的根拠を考えるケースメソッドを重ねているようです。

★国際的な視野の背景には、実は、グローバル市民レベルでの葛藤解消の感覚があり、そこに大事なディスカッションという対話活動があるというのが桑原さんの話から了解できます。国によって民法などの市民法が違うわけです。家族法や契約法が、海外と日本では、異なり、問題が起きたときに、どちらの裁判所で行うのか、行えるのか、二重に行ってしまったときにはどうなるのか、国内で行われる訴訟とは全く違う複雑な要素が加わります。

★ある意味、法体系はなく、文化人類学や社会学、国際的な倫理問題の視野も必要です。

★強烈に実務的でありながら、市民どうしの文化の違いや宗教の違いなど価値観の葛藤を調整するにはどうしたらよいのか?桑原さんは、大学に入って倫理を学んだ時に「時間と記憶」をテーマにレポートを書いたそうです。

★倫理で時間というのは、内省やディスカッションの時間が解決の糸口を見出し、当然そこには記憶が関係してくるということでしょうか。今度詳しく聞いてみたいなあと思います。

★ともかく、国内法では法実証主義で解決する問題も、同じ婚姻・離婚・契約などの法的関係は法実証主義そのものがうまくいかないという局面ばかりにぶつかるわけです。もちろん、複雑系を法実証主義で乗り切る以外にいまのところは実務的にはないのです。

★いずれにしても、ヨーロッパで帝国から近代国家が生まれる時に、法実証主義と自然法論がぶつかった理由が、抽象論ではなく、グローバル市民同士の現場にあった実務的な話であり、今もそれは投影されているというのは、日本だけで生活していたら確かにわからないことです。

★グローバル社会の本質を、早稲田大学は当然見抜いて、2015年くらいから思い切りグローバルな環境整備に舵を切ったということでしょう。法学部自体は、まだまだ帰国生や留学生は少ないようですが、国際寮というシステムで、グローバリゼーションに巻き込まれている市民の生活実感を学部横断的に共有できるようにしているようです。

★大学入試改革は減速しつつ進んでいますが、早稲田大学はかなり加速しているという息吹を感じることができました。それにしても、学際的な知を深めかつアーティスティックな感覚を豊かにしている桑原さんは、IBが大事にしている10の学習者像を体現しています。高校時代の学びの経験のあり方が、かなり重要だということも確信できました。ありがとうございました。

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2021年3月11日 (木)

New Power School(04)工学院の進化 多様なPBL&そのわけ

★昨日、工学院に伺い、多くの先生方と対話ができました。期末試験の時だったということもあるのでしょうが、こんなに一遍に話す機会が巧まずして生まれたのは、実は、これが初めてでした。今までも、多くの先生方と一堂に会してはいたのですが、廊下で、対話スペースで、研修スペース、Fabスペースでと、それぞれの先生方のテーマで話を半日で聞くことができました。

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★しかも、そのテーマはそれぞれなのにもかかわらずコアのテーマというかコンセプトに結びついている感じがしたのです。このコアのテーマは、教務主任の田中歩先生が、先生方とこだわってきた生徒中心主義に収束するのですが、そこへのアプローチが実に多様であり、先生方も生徒もそれぞれのプロジェクトを立ち上げて工学院という学びの場を多面的にそれでいて有機的につながるように創っているということが身に染みました。

★こういう学校づくりをするにはいかにしたら可能か。工学院とは違う学校の場合は、その学校の条件がまた別ですから、工学院の方法論をそのまま持ち込むことはできないでしょう。

★ただ、コンセプトは共有できます。生徒中心主義と多様なPBL。それのカギはリアリスティックなリフレクションと共感的なコミュニケーションです。このこのコアを共有し、それぞれの学校の条件にマッチングさせていくわけですが、その接着になるのが、多様なPBLの適用です。

★工学院の場合、レクチャーオンリー形式の授業は7年前に決別しました。しかし、レクチャーとディスカッションやワークショップ型グループワークとのコンビネーションは柔軟です。これが多様なPBLを生み出しているのです。

★しかし、さらに教師と生徒をつなぐ論理的推論方法が3種類あるということも田中歩先生と進路指導部主任の鐘ヶ江先生と教頭の奥津先生と別々に話しながらもつながりました。

★鐘ヶ江先生は、70%が理系進学で30%が文系進学で、理系は、医歯薬系と建築、生命科学が人気なのだというのです。そして、これと文科系の進学が文理別々ではなく、つながっているというのです。なるほど哲学だとか探究だとか行っていると、そこはつながるなあと。

★一方で、田中歩先生は、論理的推論方法は、演繹的と帰納的な方法があり、その過程を大切にする授業が理数系の教科で、言語や社会科はどちらかというと正解のない仮説的推論で、結論が確からしさや正当性、信頼性をどう評価するかというリフレクションにポイントを置いた授業になるというのです。どちらもPBLの授業になるけれど、この3つの推論を1人の教師がすべて使うわけではないというのです。それは多様でよいのだけれど、どうやったらもっと有機的に3つがつながるかが今後の課題なのだと。

★奥津先生は、数学の教師でありながら、3つを場合に応じて使い分けます。数学の授業を行う場合は、演繹と帰納の両方を往復させます。しかし、ちゃんと最後には正解に行き着くわけです。プロセスがPBLの醍醐味です。

★ところが、グローバル交流会を英語を駆使しながら奥津先生はやってしまうのですが、そのときのプログラムは仮説的推論というか創造的推論のシークエンスでシナリオを描いていきます。先日パンデミックのためできなかった合唱祭の代わりに行った映像祭の運営も、まさに創造的推論思考を活用されていました。

★教務主任、進路指導部主任、教頭という役割があるから、このような3つの推論思考を有機的に結びつけて運営していくわけです。医歯薬系と建築、生命科学などの自然科学と哲学や探究が、相互に関係する知の世界が共有され、そこからそれぞれのキャリアデザインが描かれる。これを1人ひとりひとりの教師や生徒自身ができるようになるにはいかにしたら可能かという新たな課題と同時に工学院のさらなるアップデートのステージのビジョンが映し出されました。そんな思いを馳せる機会をいただき、心から感謝です。帰りのバスの中で、7年間の先生方との対話から生まれる螺旋の上昇気流に思いを馳せながら帰路につきました。

★4月からは、また新コミュニティシップづくりをよろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。

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東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(03)順天、自修館の示唆するコト

インターエデユ「速報!2021年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」によると、順天が2名、自修館が1名、それぞれ現役で東大に合格しています。両校は、東大進学コースがあるわけではありません。

★順天は、もう30年以上前からグローバルなボランティアを行っていたり、毎年イギリスからギャップイヤーを利用した大学生(になる直前の生徒というべきか)が教育奉仕に訪れています。そのくらいグローバルな視野をもち、SGHでもあったので、世界の痛みをシェアし、どうしたらよいのか学校全体を挙げて取り組んでいます。

★自修館も、開設当初からEQやPBL型授業に取り組み、多様な才能を大切にしている学校です。

★こうした学校から1人、2人と東大に進学すると、東大の文化もアップデートするでしょう。

★聖学院や三田国際、工学院、富士見丘、文杉、八雲の生徒も合格する力が育っているのに、東大をスルーして海外の大学や別の大学に行ってしまっていますが、東大に進学者を1人ずつ出すと、閉じた社会がだんだん開いていくのですが。。。

★New Power Schoolは、キャリアデザインにおいてもNew Powerを感じる大学を選択するので、しかたがありません。それは本人の選択の自由です。

★そして、実はこの事態が、新しい普遍主義の動きなのです。

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東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(02)麻布、西大和、洗足、横浜雙葉、日比谷、横浜翠嵐、浦和

インターエデユ「速報!2021年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」によると、今年は、麻布はいつも通りの合格者でした。昨年60人台になったので、あれッと思いましたが、浪人生の数が少ないだけでした。麻布は現役で50人弱、浪人で40人弱が合格するというのが、恒例なのですが、昨年はこのところ麻布らしくない高実績をだしていたので、浪人が少なかったということだったのでしょう。

★逆に開成は、今年は数を減らしました。とはいえランキンク1位であることに変わりはありません。浪人生が少なかったというだけです。現役で100人強合格するのが同校の常です。

★要するに、東大合格大量校は相も変わらずです。米国ならちょっと問題になりますね。民主国家だとそういうことになるのはもう説明するまでもないでしょう。米国などは、平等にする法制度も完備しています。もちろん逆差別問題なども起こっていますが。

★本来は、思い切って各高校から1人の枠で5000人定員にすればよいだけなのですが。。。

★そうすれば、女子校もあるので、東大に進学する女子生徒も多くなるでしょう。共学が多いので、逆転するかもしれませんが。

★そんな夢みたいな話は、さておいて、西大和の勢いが目立ちますね。数などは、インターエデュのサイトをご覧ください。もしかしたら、京大の数を含めると、相当な勢いかもしれません。

★西大和のすばらしいところは、ただ合格人数を出すだけではなく、グローバル教育にも力を入れているし、新しいタイプの入試も実施していて、多面的にクオリティを磨きあげているところですね。

★開成のようであり、栄東のようであり、洗足学園のようであるといったらよいかもしれません。東大学歴階層構造を内側から変えてくれる人材が育っているような予感がします。

★日比谷が渋幕に迫る勢いになってきました。横浜翠嵐が浅野や栄光、海城をおさえる合格者数を出しています。海城のすぐあとに埼玉の浦和が追いついてきています。渋谷教育学園渋谷をおさえてですから勢いがありますね。

★首都圏は、いよいよ東大学歴階層構造の上位圏は、私立優位の時代は終わるかもしれません。ある意味、富裕層だけではなくなりますから、少し閉じられたシステムが開かれるようになりますが、それと日本を救おうとするかどうかは別問題です。そこはネガティブでもポジティブでもないですが、開かれる兆しは歓迎です。

★また、洗足、横浜雙葉が両方とも10人合格させています。ついに学歴エリート校の中に入りました。洗足はグローバル教育は御三家や豊島岡に比べ破格ですから、同じエリート校といっても、どこか違うかもしれません。また横浜雙葉は、カトリック学校ですから、何か違うかもしれませんが、逆に学内で何かが変わったのかもしれません。

★もともとカトリックの学校は、学歴エリート校になるのは躊躇する精神性があります。でも、そこを違う東大に入って内側から変えればよいのだから、東大進学数とカトリック精神は矛盾しないという聖光学院のような信念を持てば、横浜雙葉の生徒は潜在的能力を持っているので、合格実績を伸ばすのに時間はかかりません。

★鴎友学園女子のように、そこにはこだわりがあり、東大に行くにも相当な意味を感じて挑むという学校では、洗足と同じくらい人気がある難関校となっても東大に10人以上入れようという学内の動きはなかなか生まれないでしょう。

★つまり、鴎友は東大の社会のおける役割や意義を考えるから受験すれば合格する生徒が洗足や横浜雙葉のようにいるにもあっかわらず、そうはならない背景がかちゃんとあるわけです。かといって、New Power Schoolになろうとするかといえば、それはそれで、学内で議論が起こります。非属の学校を貫いているのだと思います。

★かくして、東大学歴階層構造も開かれたシステムへとなり始めたし、まだまだ遠いと問い返す高偏差値校どうしの色合いが多彩になってきたとしたらしたらそれはそれでよいことです。

★しかし、まずは、東大は同じ学校から10人以上はとらないとルールづけしたら、日本の教育はだいぶ変わるなあという景色が目に見えるような気がしませんか(汗)。それはともかく、色合いがなぜ多彩になってくるのでしょう。それはもちろん、時代の良心の声が強くなってきたからです。

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東大合格実績2021から見えるキャリアデザインの特殊化と普遍化の2極化(01)

★今年も東大合格実績の話題が喧しくなる季節ですね。これは、よくもわるくも、日本の教育の文化を規定しているので、無視するわけにはいきません。東大にたくさん合格させている学校は、東大という文化を推奨しているということは紛れもない事実です。特に10人以上合格させている学校は、いわゆる学歴エリート校ですから、東大を頂点とする大学階層構造の上位層の大学に進学させて、日本を救おうという理念に燃えているわけです。

★なんて大げさなというかもしれませんが、東大というのは、そういう文化です。明治維新以降、国が総力を挙げて支えてきた大学ですから、当然そのような使命を持っていないと言ったら噓になるでしょう。かりに個人主義が拡大しようと、東大に合格するとそういう文化から逃げることはできません。かりに自覚しなくても無意識のうちにマインドセットされているはずです。

★ですから、国民は大いに期待をすべきなのですが、どうもそういうわけでもないですよね。それは東大という知のリソースを国民全体がシェアできるようにすべき(これは義務だと思います)で、図書館や研究成果を中高生や広く国民が活用できるようにすべきです。もちろん、その動きは一部の中高生には開かれているのですが、まだまだ全体にはなっていないですよね。

★もしそういう仕掛けができるなら、税金ももっと投入すべきでしょう。

★がしかし、そうはなっていないから、東大合格者数多い順の学校ランキングが毎年注目されるわけです。なぜなら閉じられた知のリソースを活用するためには、そこに入らなければならないからです。

★それがよいかわるいかは、私は興味がありません。ただ、このような閉じられた知のリソースを手に入れようとする学歴エリート高校が絞られてくれば絞られてくるほど、よいことだと思います。

★エッ!?本間さんは学歴エリート推進者なの?と思うかもしれません。もちろん、そんなわけはありません。東大にたくさん入れる学校が絞られてくれば、それ以外の高校は他の道を明確に生み出すようになるからです。今までは、そこがはっきりしませんでしたが、2021年いよいよそこが明快になったということなのです。

★東大の合格者は約3000人です。少子高齢化と言えども、高3生はざっくり100万人にいるのです。東大合格者の数のお話は、0.3%の話なのです。ですから、0.3%は、ある意味特殊化への道ですよね。ここに向けての進路指導を組み立てるというのは、国を救う官僚や超富裕層へのキャリアデザインを描くということです。

★ところが官僚や超富裕層が国を本当に救うかどうかは誰も保障しません。もし、国を救う使命を東大が抱くということをはっきり国民とシェアすれば、すばらしいことです。その特殊化の意味は急に普遍主義を帯びてきます。しかし、その特殊化が個人化だったとしたら、問じられた知のリソースは国民にシェアされないままになります。

★フランスのベルサイユ宮殿やルーブルのように国民に知のリソースを開かれたシステムにするという感覚が生まれれば、日本の教育は大きく変わるでしょう。

★今年の東大合格者ランキングを見ると、その動きへの期待が見えます。東大が内側から変容する兆しということですね。

★さて、0.3%に私たち国民は命を預けるのは虫が良すぎるし、そもそも預ける気はないのです。であれば、ハナから東大学歴階層構造への道を捨ててしまえばよいわけです。とはいえ、そう簡単ではありません。超富裕層の世帯割合は、野村総研の調査では、0.2%くらいだと言いますから、東大OG・OBがみなそうだというわけではありませんが、おそらく0.3%と0.2%というには、何らかの相関があることは推測できるでしょう。東大のOGの割合がOBに対し少ないというのも、それに関係するでしょう。

★学問的裏付けは学者に任せますが、当たらずともなんとかでしょう。

★そしてこの0.3%にかける学校の生徒は、全員が東大に行くわけではありませんが、その多くは東大学歴階層構造の上位層にはいくわけです。年収1000万以上稼ぐ人口は5%くらいだと言われていますから、そこには最低収まりたいという野望はあるでしょう。まあ、世の中金ではないといいますが、大哲学者カントでさえ、平和は金が保障すると(もちろん、市場が成り立つというのは平和があるからだという意味です)言っているぐらいです。

★すると、私立中高一貫の中で東大学歴階層構造をターゲットにあてている学校と各自治体の公立学校の中の公立中高一貫校と進学重点校に指定されている高校の生徒数が5%くらいだということになるでしょう。実際そうです。

★ですから、95%はそんなの関係ないわけです。しかしながら、ここが問題なのです。その5%が閉じられた社会だから、権力が集中しているわけです。

★エ~!民主国家でしょう日本はと思う方もいるでしょう。法の支配もあるし、選挙もある、私的所有も認めらている。すべて貨幣で交換できる保障がある。だから、一生懸命働いてお金を稼げば、何でも手に入る。好きなことができる。しかし、そのお金を誰もが1000万以上稼げるわけではない。5%の東大学歴階層構造の上位層に食い込まなければそれができない。

★もちろん、選抜試験という名の自己責任システムが保障されているから、問題ないというわけです。

★もし、このシステムが本気で100%の国民に働いていたら、95%の国民は、精神が病むか少なくても自己肯定感は高くならないでしょう。

★どうでしょう。実際日本は精神を病む人は多いし、自己肯定感は低いと言われているでしょう。どうやらこの学歴階層構造のシステムは結構強烈に働いているようですね。

★しかしながら、一方でこのダブルバインドに気づいたら、そこから抜け出るという自由が保障されているということに気づいている国民も随分多くなったわけです。そこは民主国家だったわけです。ホッとします。「そんなの関係ない!」というのは、学歴階層構造のシステムに対し使うとしたら、良いじゃないですか。ダブルバインドを抜ける方法は、そんなのやーめたということです。

★かくして、東大学歴階層構造という閉じられたシステムとは違う開かれたシステムを創ろうよという流れができるわけです。思考スキルと英語、ICTは、この開かれたシステムを創るのに貢献する強力なツールです。

★ですから、5%の中にも、閉じられたシステムの内側から開こうとする人もいるし、95%から諦めないで、開かれた社会を創ろうよという人も生まれてきて、握手をし始めたのです。そのエポックが2021年です。

★今年も、昨年と比べ数を落としたとはいえ、東大合格者ナンバー1である開成の初代校長高橋是清は、東大にたくさん合格させ、善き官僚制度を創る人材を輩出するとしていました。さすがはダルマ宰相ですね。

★文科省も、開かれたシステム作りのために大学入試改革をいろいろ考えています。学習指導要領改訂もそうです。内側から頑張っている官僚もいるわけです。しかし、現場はどうでしょう。実は東大学歴階層構造の上位校は、すでに改訂学習指導要領のようなことはやっているのです。問題は、そこに準じようとしている学校現場ですね。ここが閉じられたシステムを守る中間権力になっています。

★ここまで含めて10%の学校がこのシステムを支えています。この10%の学校の在校生は、学歴エリートを意識することなく受け入れ、少数の生徒はそこになじめず悩み、特殊だと思われています。

★ところが、その特殊な生徒が、「そんなの関係ない」という「開かれたシステム」創りにジャンプしたら、とたんに普遍主義的な素敵な人材として受け入れられるなんてことがあるわけです。(つづく)

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2021年3月10日 (水)

New Power School(03)富士見丘 生徒1人ひとりがグローバルな視野で学ぶ構え 目覚ましい大学合格実績も

★富士見丘は3月9日現在の大学合格実績を公開しています。その輝かしい実績は、卒業生82名がゆえに、数字としては大きくみえないかもしれませんが、割合でみると、すさまじいものがあります。とはいえ、上智12名、立教17名という数をみれば、それだけで進路指導の充実ぶりにぴんとくるでしょう。

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写真は同校サイトから

★しかしながら、大学合格実績を出すことが同校の目的ではありません。C1英語×PBL×ICT×リベラルアーツをベースに、グローバルリーダーの自覚をもって活躍する構えを、生徒1人ひとりがつくることを目的にしています。

★特に、同校の理事長補佐吉田成利先生は、憲法学者でもあり、イギリスやアメリカで研究もしてきました。日本のジェンダーの格差問題を解決するには、グローバルな視野で学ぶ構えを育成することの重要性を知り尽くしています。

★したがって、模擬国連部や海外大学準備教育などの強力なサポートもしています。模擬国連部だけではなく、同校の生徒全員が、1人ひとり大きな地球規模の問題を、日々の5×5という探究活動で見出し、その問題解決に思いを馳せています。そのことは同校がスーパーグローバルハイスクール(SGH)だったということからも了解できます。このSGHのリソースは今も豊かに活用されています。

★一方海外大学準備教育及びSGHの両方の実績も認められ、同校はWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)拠点校に文科省から認定されています。

★このWWLは、「国内外の大学,企業や国際機関等と協働し,グローバルな社会課題等から選んだテーマを通じた高校生国際会議の開催や大学教育の先取り履修等,Society 5.0に向けて文理両方を学ぶことを含め,高度かつ多様な科目内容を生徒個人の興味・関心・特性に応じて履修可能とする」学びをデザインすることが目的とされています。

★要するに、そのような学びを実現するカリキュラム開発の拠点校だということなのです。

★すでに富士見丘が行ってきた先進的な学びを全国に広めて欲しいという文科省の願いが込められているのでしょう。まさに同校自身がグローバルリーダーシップを発揮するのです。いやしているのです。

★少人数教育がゆえに、海外帰国生も憧れる学校です。一方で、帰国生は同校の教育の魅力にすぐに気づくけれど、塾主導の受験市場からはなかなかその魅力が見えないという逆説的な力も働きます。にもかかわらず、そのような日本の状況の中において富士見丘に教育の真実を見ることができる受験生もいます。

★富士見丘の教育に注目が浴びる時、日本の国がようやく世界のリーダーシップを発揮できる時でしょう。歴史とはそういうものです。その日が到来するのもそう遠くはありません。

【今年の富士見丘の大学合格実績3月9日現在】

東京外国語大学   2名
東京都立大学    1名
上智大学     12名
早稲田大学     2名
国際基督教大学   3名
立教大学     17名
青山学院大学    7名
法政大学      3名
中央大学      6名
学習院大学     6名
明治大学      1名
成蹊大学      4名
成城大学      3名
関西学院大学    2名
明治学院大学    2名
獨協大学      9名
津田塾大学     3名
東京女子大学    6名
日本女子大学   16名
学習院女子大学   1名
日本大学      2名
白百合女子大学   6名
清泉女子大学    1名
フェリス女学院大学 1名
芝浦工業大学    1名
東京都市大学    1名

(高校3年生の在籍84名) 

(同校サイトから)

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2021年3月 9日 (火)

New Power School(02)進歩主義的で普遍主義的だからこそ魅力

★New Power Schoolは、人気があるわけです。英語教育を充実していますとかPBLをやっていますオンライン授業をやっていますよだけではNew Power Schoolでは実はありません。パッケージとしては進歩主義的ではあるけれど、必ずしも普遍主義的ではないからです。それだと人気があっても、本音は進学校だったということがよくあります。

★普遍主義的というのは、世界の人々の痛みを共有し、そこにどんな大きな問題が横たわっているのか生徒が自ら見つけ、共有し、共に解決しようという何らかのアクションをとる行為をするということです。しかも、それはそれぞれ方法や行動は多様ですが、すべての生徒がそうなるということが大前提です。

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★ですから、前回ご紹介した八雲学園のように、キャリアデザインのコンセプトが、学歴社会でない政治経済社会に視野を広げる問題意識をもつクオリティになるわけです。

★そのようなBig Questionは、教師が投げかけているうちは、進歩主義的でも普遍主義的でもありません。生徒が自ら生み出すのです。その背景には、多様な現象・事象のファクトを探究し、探究しながらオピニオンを共有できる共感的なコミュニケーションとしての対話ができる環境が必要です。それには心理的安全という人間関係やチーム=恐れのない組織を構築している学校であるかどうかは重要な尺度ですね。

★このようなファクトーオピニオンを対話するバックグラウンドがあるからこそ、世界の痛みを身に染みて共有できるわけです。すると、この痛みに横たわる決定的なBig Questionが生まれてきます。

★この環境というフォームは、生徒の内面に相互に思考のサーキュレーションを回転させ大車輪を生み出していきます。

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★このBig Questionを生み出す対話の場と思考のサーキュレーションがつながる学びがPBLです。これがコースによってあったりなかったり、科目によってあったりなかったりでは、心ある先生は進歩主義で普遍主義ですが、学校全体ではまだまだ進学校レベルでしょう。

★だから、人気のある学校というのは、成果があがっている進学校か、Big Questionを生み出す対話と思考のサーキュレーションが結合しているNew Power Schoolであるか、どちらかであるという時代がやってきたわけです。もちろん、New Power Schoolは生徒1人ひとりにとっての実現先が達成されます。

★それゆえ、魅力がにじみ出ます。爆発的な倍率とかにはなりませんが、目に見えない本質的なことを大事にする価値観を持っている生徒や保護者には、共感されるのです。

★そのようなNPSは、前回ご紹介した八雲学園以外に、たくさんあります。工学院、聖学院、静岡聖光学院、富士見丘、三田国際、和洋九段女子、大妻中野、かえつ有明、聖パウロ、文杉など。折に触れご紹介していきたいと思います。

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2021年3月 8日 (月)

大学入試問題とトランジション(14)2022年入試は、カズオ・イシグロ

★「カズオ・イシグロ」。2022年の大学入試(にかぎらず中学入試や高校入試)のテーマの通奏低音。新刊の「クララとお日さま」は、まさにその塊。物語の構造は、宮沢賢治の「よだかの星」を思わせるジレンマ連続のファンタジーかと思えば、その背景にはカフカの「城」を思わす得体のしれない政治経済システムが暗示されています。あるいは、映画マトリックスのような。

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★多面的多重的な構造で、SFミステリー的であり、その物語の原動力が、愛を学習するプロセスを人口知能人間AFに課しています。

★多様な事件や試練を乗り越えた末のハッピーエンドとも読めますが、背景に結局は中央集権的な格差社会の枠組みが語られぬまま暗示されて終わるので、デストピアの掌の上のような雰囲気もただよっています。

★表現としては、そのAFが学習する過程を、人間の視神経の代わりに画面で認識していく「ボックス」に何が映っているかで示すリマインダー表現を多用しています。

★まるで、認知科学の本を読んでいるような感覚も新鮮です。

★しかし、明らかにソサイエティ5.0を超える未来社会の話で、政治経済社会の問題、格差社会の問題、ジェンダー問題、組織問題、メリトクラシーの問題、ハラスメントの問題、生命科学的な問題、環境問題など地球に存在するあらゆる問題を、キャラクターの日常生活の中に埋め込む小説。

★中学入試でも、大学入試でも出題される可能性があるし、総合型選抜の準備に取り組む前提学習として読書会をやる団体もでてくるでしょう。

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2021年3月 7日 (日)

大学入試問題とトランジション(13)大学入試問題の意義 2022年から18歳成人の前提となる民主主義を学べる

★私たちは、日々SNSももちろん含むメディアを通して、日本という国が民主国家であることをモニタリングししているわけです。SNSのフェイクが大問題になったり、海外のニュースで、相対的に平和が維持されていることを感じたり、国会中継で、ポピュリズムを巡る議論のもどかしさを感じたり、公衆衛生の政府と市場の葛藤の前に途方にくれたりしています。

★しかし、それが、民主国家であろうとする前提があるから気になるのだということは、前面に立ち続けることはあまりないわけです。しかしながら、メディアがときどき民主国家は世界の50%を切りましたなんていう記事をみて驚き、日本が民主国家としては未熟であると世界から評価されているのを知って、さらに驚くわけです。

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★そんな私たちですが、小中高生が学ぶ入試問題は、すべての教科で、民主主義の土台となる、言語や科学、数学のルールを学びます。それが大学入試問題となると、さらに先鋭的になり総合型選抜の入試問題にいたっては、民主主義のタイプまで鮮明に問われるようになります。

★一般入試では、一橋であれ、慶応であれ、早稲田であれ、リバタリアンだろうが、リベラリストだろうが、コンサバだろうが、まず問題になることはありません。価値は自由です。ところが、総合型選抜になると、価値は自由ではあるのですが、その大学を選択する段階で、アドミッションポリシーに合うあわない、教授の考え方に共感するしないを無視することはできません。

★したがって、自分の価値と大学の価値の意識がマッチングできるかどうかは当然考えます。一般入試も、その大学を選ぶ段階で考えるでしょうが、それが合否に直結する話ではないのです。

★ところが総合型選抜では、志望理由書や小論文、面接があるわけですから、どのような価値を大切にするかどうかは軽視できません。

★そんな、価値自由なんだから、それが合否に関係するなんてと思うかもしれませんが、総合型選抜は、いっしょに研究していけるかどうかを判断します。新しいことにチャレンジする必要はないというコンサバな価値観を優先するということは、総合型選抜を実施している大学は考えにくいというのはすぐに了解できると思います。

★社会のことを考え、社会に貢献できるメンバーが欲しいと思うのは当然でしょう。このことは民主国家の大学であれば、究極的には民主国家の最適なシステムにどうつながるのかということですから、そもそも民主主義とは何かを意識しないで、総合型選抜の準備はできないでしょう。

★最近SDGsに関連するテーマが問われますが、このグロバールイシューは、民主国家同士の間でのみ起きているわけではありません。非民主国家と民主国家との関係においても発生しています。

★民主国家とは何か、非民主国家とは何かについて基本的なことを考える機会は、実は小中高の入試問題を考える時期にあります。大学入試改革を考えるとは、よりよい民主国家とは何かを考えることに結びつくのです。

★特に2022年から、高校卒業すると18歳成人にシフトするのです。私たちはどんな民主国家をいっしょに創っていこうとするのか。そんな大げさなとは、さすがに言えないですよね。もうすぐ10年を迎える3・11。よりよき民主国家であろうとしているかどうか振り返る契機になるでしょう。

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2021年3月 6日 (土)

GLICC Weekly EDU(25) 静かに変わる大学入試問題 思考型問題の構造は中学入試の思考力入試と同型。構成主義がゆえに。

★昨日、主宰の鈴木さんと対話しました。詳しくはぜひGLICC Weekly EDU 第20回「2021年大学入試問題を通して今後の大学進学準備教育について考える」をご覧ください。今年の一橋の帰国生入試の小論文のテーマから話しが始まりました。そして、このテーマが、一橋の今年の問題の特徴というより、もっと普遍的で、特に今回のパンデミックにおいて問い返されるテーマなのではないかと気づきました。そこで、早稲田や慶応大学、浜松医科大、一橋大学などの一般入試における論述型問題を見ながら、通奏低音であることを検証していくこととなりました。

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★一橋の帰国生入試の課題文は、上記の書から引用されていました。SNSの世界などでフェイクが横行し、分断が進んだここ数年の世界の動きを、個人の知の限界が生み出す誤謬の世界だから、コミュニティ(時代を超えて)に相互に切磋琢磨するコミュニティの知にもっと目をむけようという箇所でした。

★要約などの記述の問いが出題されたうえで、個人の知や知能が重視され、コミュニティの知が軽視されてきたのはなぜか、ケースを挙げながら自分のオピニオンを論述する問題が出題されていました。

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★この個人の知とコミュニティの知のジレンマという構造をいかにつかみ、構成するかということですが、これは慶応の環境政策でも同様でした。早稲田の政経でも同じでした。

★東京医科歯科大学や浜松医科大の実験や治療法を開発する論述も、ジレンマではないですが、矛盾が生じないように検証やモニタリングを実験や開発プロセスの中に求めていました。

★一般入試の限界もあり、ジレンマや矛盾を自分の体験から発見するプロセスは踏まないし、具体的な政策や開発の実効性など深く論述するところまではいっていないのですが、それでも、要約して終わりという問題を超えて考えるところまで求める傾向がでてきたわけです。

★早稲田の政治経済学部がそのような新しい動きを出したということは、たいへん意義のあることです。もちろん、そのような問題を出すというサンプル問題を何回か公開した結果、敬遠されて出願数が減ったということで、来年続けるかどうかは、注視するところではあります。

★もうひとつ、早稲田の政経における独自入試は総合型問題一本でしたから、課題文は日本語と英語でした。

★したがって、早稲田の政経の総合型問題は、一般入試において、今後言語はバイリンガル以上になり、思考力も個人の知からコミュニティ知にシフトし、ロジカル&クリティカルシンキングまで求められるようになってきたという傾向の象徴といえるでしょう。

★これは、中学入試においても同じことが起きています。

★今回一橋の出題した課題文を執筆したスローマンさんは認知科学者です。認知科学の特徴は、科学の最先端の知見も、専門家ばかりではなく子供も理解できる構成主義的な授業デザインができるということです。

★中学入試や大学入試も思考型の問題になると、そこに差があっては科学的とはいえないので、少し考えれば当たり前です。この思考のメカニズムを、今回は思考のサーキュレーションという図でまとめました。詳しくは今後また語っていきたいと思います。

★今月の末、大妻中野の教頭諸橋先生がご登壇されます。大妻中野は早稲田の政治経済の入試問題に先駆けて新しい英語や思考力入試問題を開発しています。New Power Schoolのリーダーシップを発揮しています。

★諸橋先生とは、その開発当初から語り合ってきました。大妻中野の教育が本質的だからこそ、この普遍的な思考型のあるいはコミュニティの知への動きと結びついているのでしょう。というよりも、牽引しているのでしょう。その本質的な教育について語り合えるのを楽しみにしております。

 

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2021年3月 5日 (金)

大学入試問題とトランジション(12)浜松医科大学の生物 システム思考の有効性。その転用の発想を探究に活かすことができる。<思考スキル→IDEA→システム思考のサーキュレーション> IBを超える学び

★今年の浜松医科大学の生物で、フェニルケトン尿症の発生のメカニズムを考察する記述とそれを治療する方法の開発を論述させる問題が出題されました。遺伝子や塩基のことについて、生物の教科書で学んだ基礎知識は必要ですが、この症状の事実を知らなくても、課題文を読めば、理解できるようになっています。

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★しかしながら、課題文で説明されている内容は、上記の図に描かれているメカニズムであり、なぜある酵素の塩基配列が変化してしまうのかは自分で推理するしかありません。また、この症状の治療方法を開発せよというのも同様です。

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★おもしろい思考問題ですね。しかしながら、これは思考スキルを適用するIDEAと生物の基礎知識を結合することでできます。上記の問4は、置換スキルと不足しているものと不足していないものという比較のスキルがIDEAになります。このIDEAにマッチングする知識を想起すればよいわけです。

★問5の治療の開発は、前回ご紹介した東京医科歯科大学の実験を開発する問題と同様、比較スキルをIDEAとして使います。あとは因果スキルです。これらのIDEAに結びつける知識は、使う語句として設定されているので、それほど多くの知識を動員しなくても大丈夫です。この因果スキルは、循環の弊害(問5では副作用となっていますが)を、見出すシステム思考につながります。

★このような問題が、出来るかどうかは合格するには重要ですが、それだけではなく、探究の入口ではインスパイアクエスチョンになります。

★両方とも、思考スキル→IDEA→ループで見える化するシステム思考のサーキュレーションを考えていきます。この思考のサーキュレーションに気づき自らのものにした生徒は、多様な事象に直面しても、この思考のサーキュレーションを回して追究していくことができます。

★来年から始まる総合の探究の時間について、世間では大いに議論され、テキストサンプルが山積しています。それは大いに結構ですが、事象というコンテンツを何にするかに目をとられすぎ、思考のサーキュレーションをいかに体験の中で気づいていくのかそのプロセスを発見するプログラムデザインはあまり注目されていません。思考のサーキュレーションの講義はあるかもいsれませんが、ワークショップにはなっていないですね。

★IBでは、TOKやパーソナルプロジェクト、コミュニティプロジェクトで活用されるATLスキルは、若干思考のサーキュレーションと重なりますが、あくまで学習のサーキュレーションで、思考の内的な連関サーキュレーションは前面に出てきません。

★それゆえ、IBを参考にしている探究の話も、そこまで深入りしないのでしょう。

★国立大学の一般入試を受験する生徒が、実はすでにこの思考のサーキュレーションを身に着ける可能性が高いわけですね。なんと逆説的な!総合型選抜や探究に偏った指導をしていると、本来探究で最も重要な出発点を見落としてしまうというパラドクスがなきにしもあらずです。もっとも、早慶を除く私大の一般入試は、思考のサーキュレーションは必要としていません。ここが課題ですね。

★中学入試においては、男子御三家の一般入試と聖学院、工学院、かえつ有明、和洋九段女子、大妻中野などの思考力入試は思考のサーキュレーションを大切にしています。

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2021年3月 3日 (水)

New Power School(01)八雲学園 豊かで本質的なキャリアデザインを描く意志

★八雲学園の今年の中学入学生の男女の比は、ほぼ1:1。バランスのいい共学校になりました。またいよいよ高校入試でも男子が入学します。高校入試は、少人数定員ですが、高校から新しい自分にチャレンジしたいという生徒が入学してきます。今年もそうだということです。この高校入学者の覚悟こそ八雲学園の進路教育の真髄です。

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★実は中学入試及び高校入試は、キャリアデザインの分岐点です。学歴社会の中で勝ち組になろうとすれば、出来るだけ偏差値の高い学校を選択しようとするでしょう。世界に視点が向いている生徒は、これからはグローバルな社会の中でそれぞれの才能を生かしたリーダーになり、寛容な社会を創っていく道を選ぶでしょう。

★中学入試の時点で、あるいは高校入試の時点で八雲学園を選ぶというのは、学歴社会の中で勝ち組になる戦術を学ぼうとするのではなく、様々な問題を解決すれば解決するだけ新たな問題が噴出する予測不能な世界の中で自分の才能をどのように活かして貢献していけるのか希望と覚悟を抱くことです。

★Old Power Schoolの選択者だって学校当局だって、まさか勝ち組になろう、勝ち組を生み出そうなどと初めから思っているわけではないのですが、過去のデータばかり見て、現実志向ばかり追求して、希望と覚悟を持たない限り、現在の学歴社会に飲み込まれて、格差をつくる側、格差をつくられる側に振り分けられるのです。

★この現代社会の課題を根本のところで意識できるかどうかがポイントです。つまり、自分の内なる希望と覚悟によって選ぶ意志を大事にするのか、他人の決めた偏差値で学校を決めるのかが重要な人生の分かれ道なのです。

★八雲学園のラウンドスクエア体験をしたOGが次のようなエッセイを後輩に贈っています。一読していただければ、進路先のためのキャリアデザインではなく、世界の痛みを引き受け社会に貢献する自己実現のためのキャリアデザインを描いていることが了解できるでしょう。

 <RoundSquare国際会議を経て> 2019年度卒業 臼田千優


 私は、2018年にカナダの首都オタワで行われたRS国際会議と2019年に中国の深圳で行われたRS地域会議に参加した。この貴重な経験は私に沢山の気付きと発見を与え、私のやりたい事、将来目標とすることを確固たるものにした。。特にカナダでの国際会議は私にとって何ものにも変えがたいものであった。
 私は東京出身だが、毎年秋田県にある田舎で正月を過ごしたり、北海道でファームステイをしたりと地方との関わりが幼い頃から多かった。そのため、自然豊かで静かな地方での生活に憧れがあった。一方で、少子高齢化により地方の活気はなくなり、ますます人が減っている。その状況に以前から、こんなに素晴らしい所の魅力が沢山の人に知られず廃れていくのはなんとももどかしい、なんとかしたいという思いを心の底に抱いていた。
 高校1年生の時、八雲学園の9ヵ月プログラムに参加した際、異文化コミュニケーションに興味を持ち、高校2年生の10月に国際会議に参加した。周りの学生は当然のように英語が話せる状況でコミュニケーションには大変苦労した。その中でも自分の言いたい事を必死になって誰かに伝えたいと思い努力したことは非常に貴重な経験であり、勉学に対するモチベーションになった。私のこの会議での一番の気づきは、「地域文化の多様性」である。会議最終日に行われた交流会で各学校の生徒達がそれぞれの文化を表現したパフォーマンスを披露した。そこで一つの国の中でも地域ごとに全く違うパフォーマンスが披露された。こういった地域文化が海外に存在するということは47都道府県に分かれている日本にも存在し日本の財産であるという事を痛感した。
そこで、「日本の地域活性化をしたい」、過疎化によって失われつつある地域の活気を取り戻したい、これが私の軸となり進路の道筋になった。現在は明治大学にて地域の政治経済を重点的に学び、ゼミでは地方移住や地方への企業誘致政策について分析している。さらには文化人類学やジェンダー論など今まで触れてこなかった様々なことに興味を持って講義を受けている。コロナ禍のため留学など厳しい部分はあるが、英語のプレゼンテーション講義を受けるなど、工夫しながら大学生活を送っている。国際会議に参加したことは私の将来に大きな影響を与え、どんな時でもチャレンジしてみる勇気を与えてくれた。高校時代にこのような貴重な体験ができたことを嬉しく思うと同時に、チャンスを与えてくれた先生方、保護者に感謝している。
今世界中が大変な状況ではありますが、何か小さいことでも自分のやるべきことがあり、それを積み重ねれば必ず結果になります。皆さんも頑張ってください!

★「どんな時にでもチャレンジしてみる勇気」。これぞ覚悟ですね。

★今年の卒業生の中には、あのマンチェスター大学に合格した生徒もでています。イギリスの大学評価機関Quacquarelli Symondsによる2021年最新世界大学ランキング(QS World University Rankings)で27位です。東大が24位、京大が38位です。ところがです。その生徒は、マンチェスターと日本の私立大学が併願で、両方受かったら、日本の私大を選択するというのです。ランキングとか偏差値とか関係ないのです。あくまで、自分の自己実現のためのキャリアデザインなのです。

★もはや八雲学園は、日本の大学はいうまでもなく、世界の大学が自分のキャリアデザインのための選択肢になったのです。

★MARCH以上に何人はいっているかで学校を選ぶのは、Old Power Schoolでは有効ですが、New Power Schoolでは、自分自身の意志を大事にするということがポイントなのです。

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大学入試問題とトランジション(11)東京医科歯科大学の生物 発生生物学の学際性を活用する探究もありかも

★今年の東京医科歯科大学の生物の問題は、いつも通り、用語の名称記述と説明記述、現象の因果関係の説明記述、図式化、仮説実験の論述など骨太の思考問題でした。

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★その中で、一番目の問題では生物発生学の分野である細胞接着の問題が出題されていました。カドヘリンが細胞接着に必要なのかどうか証明する仮説実験を考え、結果も予想する論述問題もしっかり出題されていました。

★同大学の生物の問題は、知識がなくても推理して解けるというような問題ばかりではなく、がっちり基礎知識が必要で、それを記述できるまでに仕上げていなければできないので、入試準備段階の取り組みは、論理的な思考力をがっちりトレーニングすることになります。そして、それで合格できます。

★しかしながら、そんな中で上記のような問題は、仮に知識としてしらなくても、科学の実験のプロトタイプを知っていれば、それをメタファーとして応用が出来る問題です。

★このプロトタイプは、小学校や中学校で行う実験、たとえば光合成と呼吸の関係を検証する実験と同じものです。条件を一つだけ変えて比較実験をし、その結果でてきた物質のアイデンティティ検査確認するという一連の流れですね。

★これを論理的思考とみるのか、クリティカル&クリエイティブシンキングとみるか、それについて議論することはあまり意味のある事ではありません。むしろ、プロトタイプをメタファーに使うということを、科学以外にも活用できるということに気づくことが大事です。

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★この話は、最近出版された高橋祥子さんの上記写真の書籍と類似した発想です。同書では、細胞接着をメタファーに組織の構造を考えるケースは載っていませんが、当然それも想定されているはずです。

★組織の結合を媒介するカドヘリンの役目とそれを阻害するカドヘリン抗体の関係は、組織結合と組織崩壊のメタファーに活用できます。中世は目に見える生物現象モデルで組織や人間関係、知性について語られてきました。

★それがマシーンモデルに代わってきたわけですが、現在では、遺伝子や細胞レベルの生物モデルで語れるようになってきました。

★理系に限らず生物という学問領域は重要になってきたわけです。

★生物モデルで社会を考える視点は、もちろん生物の授業時間で行うにはそれこそ物理的時間が足りないでしょう。「探究」という時間の意味はそこにこそあります。リアルな体験ばかりが重視されがちですが、数学モデルで社会や人間を考えるとか、言語モデルで考えるとか、AIモデルで考えるとか、倫理モデルで考えるとかなどなど、多角的視点のトレーニングの場として活用するというのもありですね。

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2021年3月 1日 (月)

品川翔英 教師の一体感が溢れでる。国語科拡大研修で。

★2月27日(土)、品川翔英は、前代未聞の研修が行われました。入試の見通しが立つや、怒涛の4月に向けての準備で学内は活気に満ちています。その雰囲気を象徴するような吹奏楽部のスウィングジャズの音が響く中、研修は行われたのです。

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★昨年の3月から国語科はPBLの実践的な研修を積んできました。もともと潜在的な可能性があったのに加えて、オンライン授業へのシフトが、ハイブリッドPBLの飛躍的進化を後押ししました。

★物語の単元では、現代文でも古文でも、13フェーズで物語分析をしたり、物語創作をするという言語構造論をわかりやすく生徒と共有するようになりました。言語領域については、ワードウルフというラテラルシンキングを養う方法で、ロジカルな言語化を生徒がアクティビティで学ぶようになりました。他の単元でも分厚い問いが生まれ、生徒が深い学びを行っていくようになりました。

★この言語構造論やラテラルシンキング、言語の背景リサーチについて、国語科の田中幸司先生は、他の教科の先生方と共有する拡大研修会を実施しました。いわゆる教員研修ではなく、国語科の研修に参加したいと思う先生方に公開するという形式でした。

★この忙しい時期にどのくらい参加するのだろうと思っていたら、4グループもできるほどの参加がありました。柴田校長や熊坂先生も見守っていました。

★田中先生の講義というよりも、国語科の先生方がみなファシリテーターになって、ワークショップ形式の研修となりました。全員当然のごとくタブレットをもってきていましたから、プラットフォームを活用しながら、物語構造分析などを協働しながら行う姿は、圧巻でした。

★この活気あるオンラインも使いながらのハイブリッドPBL授業さながらの研修となったのです。4月以降の品川翔英のハイブリッドPBL授業の共有をする形にもなり、意気込みや気概を感じる研修でした。

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★品川翔英の人気の秘密は、やはりこの先生方のチーミングの勢いとパッションとワクワク感と生徒との信頼と生徒の人生への責任感だということはわかりましたが、これだけでは人気は持続しません。

★最後のリフレクションで、瞬発力あるディスカッションとプレゼンが行われましたが、そこではファクトとオピニオンで終わらないSomethingが加わっていました。実はこれが世界標準の知の共有の持続力の奥義です。国際バカロレアのプラグラムが優れているのは、まさにこのSomethingをプログラムの中に織り込んでいるからです。

★この力を品川翔英の先生方は共有していることが、リフレクションで次々と証明されていったのです。

★さて、そのSomethingの正体とは何か?それは企業秘密です(笑)。

★今年度最後の国語科研修は、このSomethingのメカニズムを共有することになります。画竜点睛を欠かない研修となるでしょう。そして、そこにこそ、品川翔英の持続可能な人気のエネルギーが生成されているのです。もちろん、そのエネルギーは、生徒1人ひとりの内面から溢れ出るエネルギーとなります。このエネルギーを学内の生徒全員が生み出せる学校は、今のところそう多くはありません。

★御三家といえども、全員は無理なのです。なぜか?それを生み出す環境を授業で創っていないからです。気づく生徒は気づくけれど、気づかない生徒は気づかないままで卒業してしまいます。品川翔英は違います。生徒1人ひとりをケアするのです。このケアという言葉を大事にしているのが、田中幸司先生です。

★それゆえ、拡大研修という広がりを生み出したのでしょう。

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