大学入試問題とトランジション(05)早稲田大学法学部の入試問題 B2思考をベースに記述も。
★早稲田大学の法学部の入試問題を見ていて、なんだかホッと一息。慶応の入試問題の新しいリベラリズムと新しいリバタリアンの間の考え方のゆらぎに、私のような年寄には、どのように包括的に捉え返すかひやひやするけれど、早稲田のはまだまだ現代思想の延長上で捉えることができます。現代思想には、慶応が捉えているポスト・ポストモダン的な芽がすでにあるけれど、その多くは、近代をどうとらえなおすか、もう一つの近代への視点を中高時代に養っておくという基礎が問われるので、まだパノプティコンの批判的検討で済みます。ポスト・ポストモダンは、もはやシノプティコンの世界だから、すべてがカジュアル知性になっていて、クラシク音楽を楽しんでいる私には眩暈がします。
★とはいえ、カジュアルと言うことは、無意識のリバタリアンの広がりということですから、アダム・スミスやヒューム、ハイエクあたりに足場を求めながら、どうシノプチコン時代を鳥の眼と虫の眼で捉え返すか「逃」げずに「挑」まなくてはとは思っています。
★さて、早稲田の法学部の問題に話を戻しますが、国語は、最後の180字のパラフレーズの問題を覗いては選択肢です。このパラフレーズの問題も結局は要約記述で、自分の意見を論じるわけではないので、思考コードでいけばB2で、対応できます。仮にこの問題ができなくても合否を決定づけるものではありません。
★しかし、アドルノが亡命先で、自分の文化社会的影響でできあがった認識システムを、異文化との接触で、喪失と同時に新しいものの見方を自分のものにしていく話は、中高時代に体験するプログラムのものの見方の幅を広くするものです。受験勉強の過程にそのようなものの見方をプラスすることはトランジションモデルとして意味あることです。
★また英語のライティングで、ピクチャ―ライティングをワンパラグラフで書きなさいということですから、100Wordsぐらいの英作文ですね。基本、ファクトとオピニオンをさらりと書けばよいのでしょうが、授業で使う時は、オピニオンの部分をコンセプトやアイデアに発展させることができます。今回の絵は、かつて、東大で出した自分の顔を写した鏡を覗いたら別人格の自分が映っていたというもののバリエーションでしたから、素材としてはおもしろいですね。
★日本史は、文章を書く記述はありませんでした。しかし、近現代史が多いのは特徴的なのかもしれませんね。
★世界史は、最後の問題が、1700年代のフランス革命が起こる前までのヨーロッパの外交関係・国際関係を説明する300字記述の問題でした。一足先に市民革命を体験しているイギリスが、ヨーロッパの帝国から近代国家への道を開いていくプロセス史をまとめる問いでしょうから、定番と言えば定番です。しかし、大航海時代の絵柄が思い浮かんで、ワクワクしますね。試験の時には、冷静に書かなくてはならないでしょうが。
★政治経済では、アクセス権について書く250字記述が出題されていました。メリット・デメリットの両面を書く問題ですが、表現の自由の延長で書けるし、SNSで必ずでてくる問題でもあるので、難しくはなかったと思います。ただ、受験勉強をするときに、当然でしょうが、権利について自分なりのものの見方を考えておく必要はあります。知識を覚えておくだけの勉強では、どうやら一般入試も限界がある時代がやってきたわけです。
★とはいえ、本番でこの問題ができなかったからといって、合否に影響を与えるかと言うと、そんなことはないわけで、180字から300字のワンパラグラフを書く問題が出題されているからと言って、受験勉強が大きく変わるかどうかは、学校現場の判断ですね。
★早稲田の政経の問題はまだ公開されていませんが、公開されれば、今年から新しくするという予告通りだったとすると、従来の勉強方法では限界があることがわかるはずです。しかしながら、入試問題の傾向の大幅変更は、今年の出願数大幅減の一因ともされています。これに当局が耐えられるかどうかも注視していかなければなりません。
★早稲田にしても、慶応にしても、論述やワンパラ記述を出していますが、それで合否が決まらない以上、受験勉強の方法論は変わらないかもしれません。合格すればよいという功利主義的な考え方を否定することはこの多様性の時代できないからです。
★選択肢問題と論述やワンパラ記述の配点のバランスを3:2くらいにしてくれると、受験勉強の方法も明らかに変わるでしょう。ワンパラグラフぐらいの論述やファクト記述は、実は採点しやすいということがわかれば、比率が変わるとは思います。今後に期待です。
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