« 2021年中学入試情報(57)2021年2月2日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!潮目変わる。 | トップページ | 2021年中学入試情報(58)2021年2月3日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!生徒1人ひとりの潜在的価値が輝く。 »

2021年2月 3日 (水)

麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(3)理科の入試問題で学際的視点をモデル化で具体的に示す

★教科横断型だとか学際的だとか探究だとか多面的だとか教育言説はいつも騒がしいですが、科学的に論じる教育学者はほとんどいません。思考力・判断力・表現力だあエビデンスだあといったとしても、それらがいったい何であるか論じることなくバズワードやジャーゴンが飛び交っていて、基礎的な検証態度がみられないのが教育の世界です。麻布の入試問題は、そういう教育の世界に、特に批判するわけでもなく、こう考えればいいのですよとメタモデルをそっと示してくれます。今年の理科の物質の拡散もその典型です。しかもこの問題の向こうには、今回の新型コロナウィルスの離散及び感染の両面について考えるうえで、大いにヒントになります。

Photo_20210203062401

★もちろん、直接COVID-19を話題にはしていませんが。

★さて、どんな問題かというと、身近な経験として周りにいっぱいある物質の拡散現象について考える問題です。水にインクをたらしたときにどうなるかという体験的な現象を確認し、さらにこの現象をことわざで端的に置き換えさせて、物質的な現象が心理的な現象に変形される場合もあるという柔軟性を問いかけています。ちょっとしたアイスブレイクで、入試問題なのに紙上ワークショップになていますね。

★その後で、この拡散を分子や原子という知識ではなく、「つぶ」という小学生でもイメージしやすい概念に置換えてモデル化していきます。物質の拡散の構造化をするわけですね。

★学際的な視点とは、まさにこのモデル化や構造化です。このモデルや構造と共通する物理的現象、生態的現象、心理的現象を見出していく問いが次々と出題されていくわけです。

★一見関係のない現象にこの拡散モデルがあてはまり、目からウロコとなるわけですね。

★熱力学の第二法則など数式にすると難しい科学の話もモデル化や構造化すると小学生も理解が可能だとするブルーナーのカリキュラム論がちゃんとここには生きています。

★麻布をはじめ、多くの私立学校は米国のスプートニクショックで生まれた認知科学を応用した学習理論に影響をうけた現代化カリキュラ学習指導要領を継承しています。もちろん、麻布のようにモデル化や構造化をして継承するのと、大量の知識をインプットすることで継承するのとでは違いはあるのですが。

★世間では、このモデル化や構造化の話を抜きに、教科書に盛り込まれる素材だけみて、難しい、量が多い、落ちこぼれがでると批判し、ゆとりの流れに拡散してきました。かくして現代化カリキュラムは世の中的にはエントロピーが増大して雲散霧消してきたわけです。

★ところが、麻布はそこをモデル化するという科学の基本的な検証態度を重視し続けているというわけです。入試問題は学校の顔だとは、受験業界では人口に膾炙されているわけですが、これぞまさにという感じですね。

★このモデル化や構造化は他の教科でも同様です。もちろん、モデル化や構造化は、絶対的なものではありません。試行錯誤があるのは当然ですが、麻布の入試問題の傾向が長い間大枠変わらず、ときどき実験的な問題を出すのは、時間をかけて軌道修正しているということなのでしょう。

★いずれにしても、知識ではなく思考力だとか知識がなければ思考ができないというような不毛な議論は時間の無駄です。麻布のように知識とか思考についてのモデル問題をみんなで共有して語り合った方がよさそうですね。

|

« 2021年中学入試情報(57)2021年2月2日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!潮目変わる。 | トップページ | 2021年中学入試情報(58)2021年2月3日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!生徒1人ひとりの潜在的価値が輝く。 »

中学入試」カテゴリの記事