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2021年2月26日 (金)

大学入試問題とトランジション(09)名古屋大の安定した思考力問題

★今年の名古屋大学の入試問題は、どの教科もいつもながら骨太で、それでいて自然体の学び方で立ち臨めます。論理的でクリティカルシンキングが学べる問題ばかりです。ふだんの授業で単元に相当するところを名古屋大学の入試問題でモニタリングしていくといいのではと思います。

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★世界史の最終問題も350字くらい書く論述型問題ですが、与えられたキーワードをセンテンスにしてつないでいくとできるので、教科書をきちんと学んでおけばよいのですが、なぜこの問題を出したのかを授業で問うメタ視点を学びたいところです。

★今年の問題は、1989年に向けて世界がガラリと変わるファクトを書く問題なのですが、ドイツとソ連と中国と東欧の動きをまとめる問題でした。こうして89年に向かって世界全体が動いていくのを一望する問題は、なるほど、民主化が進んだと同時に、実は反民主化の種がちゃんと残されていたことがわります。

★それが、今にいたっているわけです。今回のパンデミックでそれが露になったわけです。

★一方、法学部の小論文もいつもながら圧巻なのですが、<平等>という概念の捉え返しと、いまここで現実に起こっている格差問題をどう解決するかを考える問題でした。

★ただ、慶応大学のようにリベラルコミュニタリアンやリバタリアンの話まではいかず、ロールズで思考を展開する問題で、今の高校生が考える基礎に基づいて論考する条件がきちんと設定されていました。

★受験生にとっては、日ごろの準備が生かされるように問いの条件が設計されているのが、名古屋大学らしいなあと感じました。というのも、この新しい発想は、1989年の民主化の進化の側面から生まれてきていますから、もう一つの反民主的な動きの種を見過ごしがちなんですね。

★両方を複眼的に見るには、ルソー→カント→ロールズの発想について整理しておく必要があります。そこからリバタリアンなどの新しい動きを見てみると、さらに次の新しい見方がみえてきます。

★東大や大阪大学は、この新しい見方を捉える問題を現代文で出題していますから、斬新ではあるけれど、もし受験生が名古屋大のような背景を知らなかった場合は、たんなる読解問題になってしまいます。

★そして一方で、名古屋大の受験生が、この新しい発想も学んでいたら、今回のような問題は見通しがすぐに開けたことでしょう。

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