2021年中学入試問題のおもしろさ(04)聖学院のものづくり思考力入試 麻布と別角度でシンクロする魅力
★首都圏模試センターが聖学院の今年の「ものづくり思考力入試」の取材記事をアップしました。具体的な入試のシーンが鮮明に伝わってくる記事です。そして、どんな問いが出されたのか、レゴをどのように入試で活用するのか、どのようにレゴのワークショップ型の入試を採点するのかが詳しくわかります。ぜひ<聖学院中 レゴブロックを使った「ものづくり思考力入試」>をご覧ください!
★さて、その上で、首都圏模試センターの思考コードで問いの分析をしてみましょう。結論から言うと、麻布の問題と別角度からシンクロする難しさです。同時に、それでも挑戦したくなる魅力のある入試です。
★多様な才能を見出し、育てる入試問題に挑戦している聖学院の真骨頂です。麻布の問題も、過去問を学ぶとそうなりますね。
★さて、問1がまずすばらしいですね。思考を広げ深め、勇気をもって表現をしていくには、心理的安全性が確保されていなければなりません。その足場づくりをしています。自らの内面を想い巡らしながら、自然や社会とのつながりに思いを馳せる雰囲気を生み出すマインドセットから始まります。
★麻布の入試問題も、最初の問題や、社会や国語の文章は、読んでいくうちに同じ気持ちがこみあげてくる問題です。ただし、それは、受験生の個人に任されています。緊張しっぱなしの生徒へのケアは、麻布の試験中にはありません。そこはストイックです。自分で乗り越えなくてはなりません。
★聖学院の場合は、楽しんでやろうねとか、正解が1つであるわけではないからねとかケアフルな声かけが、入試の最中にあります。また、受験生同士が協力し合うこともあるのです。麻布の場合はライバルで、入学後仲良くなりますが、聖学院では、入試準備の時から、ライバルであると同時に仲間であるという不思議な関係をつくります。
★もちろん、全員が合格できるわけではないのですが、そこは一期一会なのです。
★そういうわけで、問1は、思考コードでいきなりC2なのです。100字くらい書かなくてはならないので、B2の要素も必要で、それに自分の想いをクリエイトしなければならないのです。エッ!難しいのでは?もし論理だけならそうでしょうが、自分の気持ちを思いめぐらすことは、難しさを心地よさに変換します。価値あることへの挑戦は難しいかもしれませんが、その気持ちよりもモチベーションの気持ちが沸き起こります。
★その準備ができたうえで、多くのデータを比較して、ファクトを導きます。B2ですね。しかし、B2でとどまらず、そこから「矛盾」という認識レンズを使って事実から問題を発見する変容を生み出します。B3ですね。
★矛盾が見つかったら、それを批判的に検討しながら、解決策を組み立てます。C2の思考をフル回転させます。
★そして、さらにそれは目の前のことだけだったのではないか、10年後はどうなてちるのかとどこでもドアを開く瞬間です。問4はC3に行き着きます。
★さらにリフレクションして、自分のつくったプロトタイプをリファインして試験終了です。どこでもドアを何度も開いて、問1のところまで遡ったり、再び10年後にいったりとワープしっぱなしのリフレクション。生徒は興奮状態冷めやらぬ状態になっているはずです。
★帰り道、こんな問題がでて、僕はこう考えたんだと保護者と話しながら聖学院への正門へ坂をいっしょに降りていきます。このスロープを散歩するところまプログラムはデザインされています。だんだん興奮が冷めて日常に戻っていきます。これは麻布でも同じシーンが見られます。入試が終わって、六本木や広尾駅に歩いていく受験生と保護の対話がときどき聞こえてきますが、同じシーンですね。
★こんなに難しいとは!と驚かないでください。レゴを使っているからそこは大丈夫なのです。レゴという思考の道具を介することで、かなり創造生成のきっかけになっているのです。これは建築家が良く使う、アフォーダンスとか、経済で使うナッジという手法です。実によく巧まれているのです。
★しかし、全体は、児浦先生のIN/OUTワークショップ言語が貫いた、才能が湧き出てくる仕掛けが背景にあります。難しい言い方になってしまいますが、アリストテレスが可能態を現実態に変換する形相=フレームが開発されているから、可能なのです。
★この先生方の教養が基盤になって思考力入試問題ができています。別角度の入試問題とは言え、聖学院と麻布の入試問題がシンクロするのは、両校の作問者も教養の幅が広く深い洞察力があるからですね。ここがシンクロの本当の理由です。
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