« 2021年中学入試問題のおもしろさ(01)JGの社会で歴史のリテラシーレンズをつくる | トップページ | 2022年に向けて動き出した私立学校(02)対話のシステムをきちんととらえるワークショップ言語のウネリ »

2021年2月14日 (日)

2021年中学入試問題のおもしろさ(02)桐朋女子の入試問題で多様性と寛容性が枠を超える力を生み出す。

★桐朋女子の広報担当の吉川先生に、今年の入試問題一式を頂きました。ありがとうございました。封を開けるや、あまりの面白さに没入してしまいました。桐朋女子を受験する生徒は、受験勉強というより、好奇心を旺盛にし、思索の道を歩んでいく感覚で、学ぶコトが楽しいと感じるはずです。自分なりの学び方、自分なりの解答と桐朋女子の先生方の考え方がマッチングするかどうか、考えを深めていくわけです。

Img_0627

★マッチングといっても、桐朋女子の教師がレールを敷いているわけではないのです。自分で敷くことを望みながらも、独りよがりな道を歩まないように見守るわけです。口頭試問はまさにその象徴的入試です。ともあれ、その先生方の学び方とマッチングするかどうかということです。

★正解はないけれど、多様性を大事にしているわけです。ですから、日本にいるいろいろな国からきて生活している人々の資料をきちんと分析して、共に生きようとするとき、どんな問題があるのか、ファクトを分析し、解決するための自分なりのオピニオンを持つことを求める問いを出題しています。

★また口頭試問では、納豆菌の出来るプロセスの仮説を立てるため、多角的な実験でシミュレーションする対話も行われるのです。ここでは、科学的な仮説という推理の思考力と必要十分条件をカテゴライズしていく述語論理という数学的思考力も求められます。ちょっと難しいですが、口頭試問のための丁寧な動画が公開されていますから、ご安心ください。

★仮説と述語論理は、実は正解があると思っている人が多いですが、突き詰めると矛盾が生まれ、そのたびに解決していくという批判的で創造的な思考力が必要です。

★そんな骨太だけれど、自分の考えをオープンに発表できる心理的安心安全をマインドセットする入試にチャレンジすることは、いわゆる普通の受験勉強とは違いますね。

★野田醤油が成立する理由を地政学的に洞察する問題も超面白かったですね。実はこの問題は、鐘ヶ淵にカネボウが誕生した理由を考えるときと同じ地政学的コンセプトレンズをつくるとできます。このカネボウ問題は、開成も出しているんですね。

★地理という学びは、自然と政治と経済と文化などの統合体のコンセプトレンズをつくる学びです。暗記教科なんかではないんですね。

★桐朋女子の入試問題は、ファクト分析とオピニオン発信だけではなく、認識と感性と身体と世界を統合するコンセプトレンズを創りなさいという問題です。学びの根本に立ち還るとても重要な問題です。

★もしかしたら何を言っているかわからないと言われるかもしれません。それは、ファクトという知識に着目した学びを重視しているので、オピニオン発信やコンセプト創発の学びに慣れていないだけだと思います。

★入試問題は学校の顔ですから、桐朋女子のカリキュラムや授業も当然そうなっています。だから、卒業後、大学に進み、社会に出たときに、ジェンダー不平等をはじめとするいろいろな格差を解決するグローバルリーダーが輩出されるわけですね。桐朋女子のトランジションモデルに日本の教育は学ぶとよいと思います。

|

« 2021年中学入試問題のおもしろさ(01)JGの社会で歴史のリテラシーレンズをつくる | トップページ | 2022年に向けて動き出した私立学校(02)対話のシステムをきちんととらえるワークショップ言語のウネリ »

中学入試」カテゴリの記事