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2021年2月 1日 (月)

2021年中学入試情報(48)2月1日 パンデミック中学入試 東京・神奈川でも始まる トランジションの新たな意味を八雲のOGに学ぶ

★本日2月1日(月)、東京・神奈川で中学入試がスタートしました。中学入試自体はすでに関西、千葉、埼玉などでは始まっていますが、中学入試人口の最も多いのが東京・神奈川エリアです。今年の緊急事態宣言下でのパンデミック中学入試のクライマックスともいえます。

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★今回のパンデミックには、世界同時的に、本当に各領域で、閉塞感、焦燥感、緊張感、高ストレス、困窮感など鬱屈状況を強いられてきましたし、今もそうです。にもかかわらず、賢く判断し、自分の人生を、未来を見据えながら、強く進む多くの人々の立ち臨む姿も映し出されています。

★中学入試もその一つです。そして、2021年ほど、人生の転機というトランジションの意味を深く考えさせられた年もありません。人生の転機は、確かに自己変容が生み出す内面的なものではあります。しかしながら、自分の意志ではコントロールできない外部の予測不能な事態が襲い掛かってきたとき、自分はどうするのかどう変わるのか、自己変容とは、外部との関係で起こらざるを得ないものだということを身に染みて思い知らされました。

★私たちはパンデミックがあるにもかかわらず、外部との関係をどうカタチ作っていくのかという経験の中に生きています。ふだんは、あたかも自分の意志でコントロールしているかのような自己主導で動けると錯覚していますが、本当は常に関係性という経験の中で生きているのだということが、このパンデミックを通して了解できたのです。

★2014年に当時東大准教授の中原淳先生と京大准教授の溝上慎一先生が編者の「活躍する組織人の探究~大学から企業へのトランジション」という本に出会ってから、学校や大学での学びの経験いかんによって社会に出てから活躍するというトランジションが起こるというリサーチに目からウロコでした。

★21世紀に入って、それまであった「高偏差値の大学に入るための勉強をしたら、よき人生が決まるみたいな神話」が崩れつつあるというのは、世に言われていたし、私自身も実感していましたが、それが学びの経験によって崩すことができると知ってわが意を得たりだったのです。その時、両先生もアクティブラーニングについて理論化と実践をしていました。私も1998年から教育研究所を開設して、私立学校の先生方とPBLを行っていたので、シンクロしました。

★そして、仲間の先生方とPBLを基礎にした21世紀型教育を推進するコミュニティをつくってきました。ところが、今回のパンデミックで、このトランジションの意味が、さらに人生の転機に、多様な関係がつながっていて、PBLの意味が授業以上に人生そのものではないかと気づきました。

★私たちはいろいろなPBLの理論を学びましたが、いつもデューイに還っていきます。今回もそうです。そんなとき、デューイの次の言葉に出会いました。「教育は人生のための準備ではない。人生そのものなのだ」という言葉です。そこからPBLは、トランジションという人生の転機を生み出す人生そのものなのだと。だから、仲間や世界の人びとと協働して行うPBLは極めて重要なのだと。

★中原先生や溝上先生は、トランジションの範囲をどんどん広げて研究されていますが、ぜひ頑張って欲しいと思います。私自身は研究者ではなく実践家なので、その研究成果を参考にさせて頂きながら、幼稚園から大学までの生徒や学生のトランジションを豊かにするためのPBLを先生方といっしょに開発していきたいと思います。これもまたプロジェクトですね。

★いままさに奮闘している中学受験生もこのトランジション経験をしているわけです。そして豊かなトランジション経験としての学びのデザインをアップデートしているのが私立中学の先生方です。このトランジション経験をどのようにカタチづくるかによって、1人ひとりの自己変容は決まると同時に、未来の社会も変わっていきます。というのは、先にも述べましたが、自己変容は自分を超えて多くの関係を巻き込むし、巻き込まれるからです。

★いっしょに21世紀型教育を推進している八雲学園のOGが、同校のラウンドスクエアという学びの経験を通して豊かなトランジションを生み出していることを示唆している文章を書いています。八雲学園の在校生に向けてのエールですが、これは中学受験生へのエールでもあります。中学入試はしばらく続きます。また新型コロナウイルスの影響で、各校が追試などの設定もしていますから、今月いっぱい続く長丁場となります。迷ったり、ストレスが高くなったりします。そんなとき、ご紹介する八雲のOG三浦さんのことば「誰かに思いをはせるということ」を思い出してください。

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 誰かに思いをはせるということ 2018年度卒業 三浦詩織


 私は南アフリカとオーストラリアで行われた2回のラウンドスクエア会議に参加しました。世界中から集まってくる学生のほとんどは私より英語が堪能で、肩身の狭い思いをしながらそれでも拙い英語を話すしかない時間は辛いことも多かったです。しかしその中でも忘れられない思い出があります。それはオーストラリアで行われた地域会議での中国人の学生たちとの交流です。

 同じグループに分けられた私と2人の中国人の学生は共通の話題を通してすぐに親しくなりました。野外でのアクティビティを終えたある日、二人のうちの一人が私に、「日本と中国は仲が悪いけど、僕たち同士は仲良くできると思う」と言いました。何気ない談笑の後の一言でしたが、彼の素直な言葉は私の心に深く届きました。

 大学に進学し政治学を学ぶ中で、彼の言葉はより大切なものとなっています。ニュースを通して伝えられる他国の印象がたとえ悪くても、私たちはその国の一人一人の事を考えることをやめてはいけません。日本とは文化の違う国について考えるとき、そこには生活を送っている人間がいるということを身近に想像しなければいけません。ラウンドスクエア会議での経験は、遠い国に住む人のことを考える想像力を与えてくれました。

 また、遠い国の人に思いをはせることは身近な人に思いをはせることにもつながっています。学校という限られた空間の中にいると人との違いに敏感になってしまうかもしれませんが、人種や性別、年齢といったラベリングが同じでも私たちにはそれぞれ個性があります。私はもともと自己主張をすることが苦手でしたが、ラウンドスクエア会議を通して自分で考えて行動する経験を積むことで自分の性格を理解するようになりました。そして自分の個性を大切にできるようになるにつれ、他人の個性も尊重できるようになりました。

 ラウンドスクエア会議は英語を使うことを目的とした場ではなく、英語で交流するための場です。そのため完璧な英語が話せたとしても自分の殻に閉じこもっているだけでは意味がありません。また英語のレベルが低くても、積極的な姿勢があればどこかで成長することができます。ラウンドスクエア会議への参加は多くの人に開かれています。私の文章を読んで興味を持った方はぜひラウンドスクエア会議に参加して、そこで得た経験をまた後輩に受け継いでいってほしいと思います。

 

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