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2021年2月25日 (木)

大学入試問題とトランジション(08)早稲田大学政治経済学部 新しい一般選抜実施 トランジションモデルになる!か?

★早稲田大学政治経済学部の一般選抜試験が実施されました。今年から、全く新しい形式で行われていますから、受験業界は注目しているはずですが、すでにサンプル問題も公開されてきましたから、衝撃度は少なかったかもしれません。サンプル問題通りだったからです。

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(総合問題の英文は同書から出題)

★とはいえ、政治経済だけではなく、他の学部でも入試問題の形式を変更していました。それも大きな一因となって出願数が激減して、特に政治経済学部は目立ちましたから、その点に関しては大いに話題になっていました。したがって、実質的衝撃はやはり大きかったのかもしれません。

★この出願数が減ったということで、今後入試問題形式の揺り戻しがあるかどうか注視していきたいですが、定員を割ったという話ではないのですから、総長や学部長が使う言葉「熟議」「グローバルリーダー」「ハイブリッド教育」に質の高いマッチングが出来た場合、今回の新しい形式は継続されることになるでしょう。もしかしたら、さらに進化する可能性もあります。

★いずれにしても、この形式が続けば、受験生の学び方は変わります。大学入学共通テストでは、英語と国語と数学Ⅰ・数学Aは必須です。文系ですが、数学が必須というのが出願が減った原因の1つでしょう。おそらく、当局はそのことは織り込み済みだったと思います。しかし、政治経済の学問の世界で、数学的思考はもはや無視できない時代です。いかしかたがないでしょう。となると、早稲田の政治経済を志望する生徒の学び方は変わりますね。

★そして、大学入学共通テストから社会、数学、理科から1教科1科目選択しなければなりません。共通テスト後の総合問題を見れば明らかですが、倫理や生命科学の素養が必要になりますから、倫理とか生物、化学の選択をする生徒もいると思います。従来なら世界史とか日本史の選択に絞れたでしょうが、どうやらそうでもなくなってきました。

★要するに、大学入学共通テストを課すことで、英語と日本語という言語技術と哲学、数学的思考、科学的思考というリベラルアーツを包括的に学んできて欲しいというメッセージがあります。教科の学びが、リベラルアーツに結びつくかどうかは、授業次第ですが、おそらく生徒は新書レベルの文章とジャーナルレベルの英文は読み込むことになるので、かりに授業が知識中心主義でも、生徒の学び方は変わります。

★総合問題も、推理思考と小論文思考は重要になるし、ハイブリッド教育そのものを反映した日本語と英語の素材文の両方が出題されます。生徒の学び方はやはり変わります。

★しかも、早稲田の政治経済の一般選抜で出題される小論文というかワンパラ論述は、200字や100Words程度で、テーマも受験生なら想定内です。ですから、ここはさっさっと書いてクリアしなくてはならないでしょう。

★つまり、SDGsの1つひとつの問題に関して、ワンパラでスピーチできるトレーニングをするような学びが必要になります。予備校がトレーニング集をつくり、それを暗記するというようなことが起こるかもしれません。しかし、それよりも、自分で調べたりしてワンパラノートを創っていく方が、大学入学後役に立ちますから、当然、後者の学び方をする生徒が増えるでしょう。

★今のところ、早稲田政治経済とSFCくらいしかこのような形式と内容の入試を提示していないので、多くの高校生の学びが変わるかどうかはわかりません。

★たしかに、私大の一般選抜入試でも小論文を課す入試が徐々に増えてきていますが、かりにその小論文を空欄のまま終えたとしても、他の知識問題ができれば合格できます。ですから、高校生全員の学び方が大きく変わることはないかもしれません。

★しかし、国立大学の独自入試、私大の総合型選抜、共通テストの作り方の変化など丸暗記型受験勉強を無化するウネリは明らかです。私大の一般選抜で早稲田大学の政治経済学部の入試問題の変更は、そのウネリを増幅するのに貢献する可能性はあります。

★いずれにしても、PBL型授業の重要性が高まるのは避けられないし、考える作業や協働型プロジェクト体験が入試や大学入学後にも大きな影響を与えるでしょう。進路指導をトランジションモデル形成に変容させる転機になることは間違いないでしょう。

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