麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(2)科学的通説を覆すかもしれない体験シミュレーション
★麻布の理科と言えば、コーヒー問題やスウィーツ問題が有名です。今年もキャベツと塩の関係が少し出ていました。これもめちゃくちゃワクワクする問題です。発電の問題もおもしろすぎます。しかし、氷期の35万年前からのサイクルモデルを提示し、気候変動の話を一般化するストーリーで考えていく問題はなんともロマンがあって興奮します。
★そして、氷期が訪れる理由や氷期が終わる理由について考察するとは!しかし、これは既習の海と陸の温度の吸収の差異やヒートアイランドのメカニズムやそれを防ぐ方法などのアナロジーで推理できてしまいます。つまり、知識としてではなく、日常の現象の背景にあるメカニズムの適用でできてしまいます。
★氷期の間に陸続きかもしれなかったという地図を書かせる問題も地理の等高線を適用すればよいわけです。
★氷が溶けて海面が高くなった分からもとの氷の平均の高さを求める問題も、比の問題で、算数でよくやっています。
★総合的に考察する問いですが、心憎いのは、この話が縄文時代へと続くのです。気候変動諸説ありの話や縄文文化の再発見などここ数年話題になっていたテーマをさらりと出題しています。
★アイヌが近隣の地理的条件からそのルーツを推理することは必ずしも正しくないことを考察し、ルーツの系図を推理するところまで問うわけです。
★この̻2⃣の問題は気象の問題だろうし生物の問題なのでしょうが、考古学的アプローチも入っているし文化人類学的アプローチも入っています。しかも従来の教科書的学説やSDGsでさえ鵜呑みにしない構えがあります。
★世にリベラルアーツを叫ぶ人は多いですが、具体的に麻布の入試問題のような視点を持っているのかと問えば、二つ返事でイエスとは返ってこないでしょう。
★基本的な原理を適用する思考力と学説さえも覆すかもしれないクリティカルシンキングと科学的検証思考を中学入試で問うのは、思考力入試は別として、なかなかない希少価値があります。
★麻布に向けての受験勉強は人生そのものを考えることにもなります。仮にダメだったとしても、落合陽一さんのような人生もあるのです。
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