大学入試問題とトランジション(07)探究の言葉/探究のリマインダー
★今年の大学入試を振り返るのはまだ早いのですが、総合型選抜でも一般入試でも共通する<探究の言葉>というのがあるのではないかなあと。備忘録として、あるいはリマインダーとしてメモしておきます。
★それは、意外と当たり前のことなのです。経験というのが大事なのはわかるのですが、<経験を捉え返そう>というのが<探究の言葉>だったのです。
★経験は大事で、知識は二の次だというのが昨今の通念ですが、知識は経験と関係ないかというとそんなことはないですよね。経験は大事だと言われながら、私たちの周りには、直接経験できない事柄で満ち溢れています。
★今回の入試問題は、ここを巧みに問いかけています。「つれづれ」という教科書ででてくる言葉の意味を近世から歴史的パノラマをひもとくと、日本人の根っこというものが揺らいだり、揺らいでいる日本人観そのものを包括的に捉え返し新しい日本人観を見つけたりするのがテーマでしたが、これも<経験を捉え返そう>という探究の言葉を想起させます。
★1980年代に出版され、最近復刻された角山さんの「茶の世界史」は、その後、川北さんの「砂糖の世界史」、武田さんの「チョコレートの世界史」という<経験を捉え返そう>という探究の言葉を押し広めました。中学入試の社会科や最近の思考力入試の編集視点は、色濃くその影響を受けています。
★いっぱいの茶碗を覗き込むシーンのリマインダーに「茶の世界史」が広がるんです。紅茶に角砂糖を溶かしていると「砂糖の世界史」というリマインダーがポップででてくるんです。チョコレートをひとかけら頬張ると「チョコレートの世界史」のリマインダーがキットカットの壮大な歴史を思い出させるのです。
★身近な経験から見えない背景を立ち上げるというのはまさに<経験を捉え返そう>という探究の言葉です。
★古市さんの新しい日本史観もこの言葉のなせる業です。歴史はファクトであると同時にストーリーですから、自分で書き換える楽しみはたしかにありですね。
★もっとも、この<経験を捉え返そう>とするとき、その根拠やエビデンスを揃える方法が大事です。渡辺靖さんの姉妹書籍は必見です。毎日のニュースを見ながら、そこには帝国から近代、現代へとウネル世界史がリマインダーとして広がれば、<経験を捉え返そう>という探究の言葉をつかえているなあと実感できるでしょう。
★探究とは、<経験を捉え返そう>という<探究の言葉>が広げる<探究のリマインダー>をいくつ構築できるかですね。そして、そのリマインダーを紡ぎ、つなげていくと、総合型選抜ばかりか一般入試もワクワクしながら立ち臨めるし、道は開けるでしょう。
★人生はファクトの背景の探究のリマインダーをどのくらいたくさん自ら創出するかということだからです。哲学的にはセンスメイキングというのでしょうが。。。
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