2021年中学入試問題のおもしろさ(01)JGの社会で歴史のリテラシーレンズをつくる
★竪穴式住居といえば、縄文時代を思い出します。しかし、平安時代まで作られていたようです。いや現在だってホームレスの段ボール住居があります。この竪穴式住居について、今年のJGの社会ではわざわざ平安時代の竪穴式住居の絵を提示します。
★そして、さりがなく同じ平安期と人々のくらし重なっている室町の町家の様子の絵を併置します。
★建物のつくり方の変化を図を見て考える問題ですが、それだと縄文時代の竪穴式住居の絵を提示すればよかったのです。もちろん、解答は、「大鋸という道具にによって木材の加工ができるようになり、竪穴住居から、壁や屋根も木でつくる木造家屋に変化した」というような、絵にかいてあるファクトを転写すればよいのでしょうが、JGの先生がなぜこのような問題を出題しようとしたかを推測すると実に興味深いわけです。
★1つは、時代の変革期に現れる生産道具というテクノロジーの誕生を見る視点は、歴史のリテラシーに欠かせないレンズです。
★それから、地べたに住まいをたてていたのが、床をしっかりとつくってその上に家屋を立てるようになるのとでは、大きな違いがあります。そのような変わり目に気づくことが大事なわけです。すなわち、自然から人間が離脱していく契機であることを鋭く見抜くもう一つの歴史のリテラシーのレンズがここにはあるからです。そして、これもまたテクノロジーにかかわるわけですが。
★この自然から離脱するギャップの蓄積こそ、SDGsで問題となっている多様な格差の出発点でもあります。
★だからこそ、今再び、段ボールハウスの見直しや縄文文化やそれ以前の狩猟採集経済の見直しがされているのです。JGの先生方は、当然そのようなものの見方感じ方を有しているというわけです。
★入試問題は、学校の顔でありますが、その顔とは、教師の見識の深さの違いも反映します。
★室町時代から、日本の「住まう」という感覚が生まれているのでしょうが、この日本の建築の感覚が、っ九鬼周造を介して、ハイデガーに影響を与えてしまうあたりはなかなかスリリングです。
★それから、岡倉天心を介して20世紀の3大建築家の1人フランク・ロイド・ライトにも影響を与えます。
★JGの中学入試は、そんな哲学や建築思想に思いを馳せる入試問題であるということは、JGの先生方の見識のパースペクティブがいかに広いかを物語っているのでしょう。
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