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2021年2月

2021年2月27日 (土)

GLICC Weekly EDU(24) GLICCの中国人スタッフのオリビアさんとの対話 東大の地理の問題とシンクロ

★昨日、GLICC Weekly EDU 第19回「グローバル教育について考える-中国人留学生チョ・テンジョさん(Oliviaさん)とともにこれからのグローバル社会を考える」がありました。そのときは、まだ今年の東大の地理の問題が公開されていなかったのですが、今みてびっくりです。留学や言語について鈴木さんとオリビアさんが対話した内容が、地理の設問Bで出題されていたのです。

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★インターネットの重要性や日本の留学生のほとんどがアジアからだということなど対話していったのですが、そのことについて論述する問題が出題されていたのです。

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★GLICCのスタッフは、留学生が多いのですが、日ごろ対話されている内容は、リアルな問題が共有されています。

★また、留学生は、東工大や東大などで研究しています。東工大の大学院で研究しているオリビアさんは持続可能な環境をつくることに企業が投資するESG投資やグリーンポンドの評価について研究するプロジェクトを実施しているそうです。

★経済活動がSDGsを達成していく可能性、社会的インパクトについて研究しているスタッフがGLICCには存在しています。大学入試問題を考えるリアルな人材がいるという場は、得難い塾です。

★英語と国語と算数という科目設定ですが、実際には言語と思考のプログラムがメインストリームです。いまのところ、日本語を使わざるを得ませんが、いずれは、英語と思考のプログラムだけの塾になっていくのでしょう。

★なぜなら、大学入試問題が、そうならざるをません。

★東工大のオリビアさんの研究室は50%が留学生だそうです。今後は大学院だけではなく、大学もそうなっていくでしょう。

★なぜか?おそらくESG投資やグリーンポンドへの投資が脱炭素スマートシティー構想と結びつき、そのモデルづくりの拠点が東京シティそのものがなるからです。

★トヨタとホンダが静岡と埼玉で、それを行っていますが、その成果は結局東京シティに転移されるようになります。そのとき、海外からの留学生がたくさん集まってきます。

★インバウンドの質の大転換がいよいよ起こるなあとしみじみ感じた対話となりました。

★日本語はどうなるのか?それは源氏物語を学ぶように、文化言語として学びますが、日常語というか公用語は英語にならざるを得ないでしょう。

★英語×思考×スマートシティ=ガーデンシティというのが、実はGAFAが考えている構想です。

★じゃあ、日本のアイデンティティは?イギリスがポンドを守り切ったように、日本は円を守るということでしょう。

★かりにデジタル通貨になっても、円という名前は残すでしょう。

★もし、それもなくなったとき、それはグローバリズムとナショナリズムの二項対立を超えた第三の世界の登場です。それがハイブリッドガーデンシティということになるでしょう。

★New Power School市場の登場は、実は東京シティの大きなモデルチェンジの兆しだということなのでしょう。

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大学入試問題とトランジション(10)京大の生物に脱炭素のシステム構築のヒントを学ぶ

★今年の京都大学の生物の最終問題は、生態系の循環のメカニズムをエネルギの変換過程のレンズを通して考察し、記述する問題。教科書を丁寧に読んでいて、あとは比例・反比例の関数関係や比の関係を使えばできる基本問題。語彙をやさしくすれば、中学入試でも出題できる。

★仮に麻布がこのテーマで問題を出したとしましょう。すると、ファインマン博士のワークショップを持ち出すでしょう。子どもたちにチョロQが動く背景に思いを馳せさせ、そこには生態系があり、最終的には太陽エネルギーに行きついてしまうワークショップです。そして、そこにエネルギー変換の過程を結びつけて出題するかもしれませんね。

★あるいは、生物多様性の話に展開していくかもしれません。あるいはまた、チョロQが動くエネルギー量を測定し、そのエネルギーはもともと生産エネルギーの何割になっているのか算出させ、脱炭素のためにどんなシステムをつくることが可能なのか問うような問題が出されるかもしれません。

★もちろん、その際、得意のモデルを組み立てシミュレーション実験をするでしょう。

★そんなワクワクするような探究の広がりの出発点を記述させるというのが、京大らしい問いのデザインです。

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2021年2月26日 (金)

大学入試問題とトランジション(09)名古屋大の安定した思考力問題

★今年の名古屋大学の入試問題は、どの教科もいつもながら骨太で、それでいて自然体の学び方で立ち臨めます。論理的でクリティカルシンキングが学べる問題ばかりです。ふだんの授業で単元に相当するところを名古屋大学の入試問題でモニタリングしていくといいのではと思います。

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★世界史の最終問題も350字くらい書く論述型問題ですが、与えられたキーワードをセンテンスにしてつないでいくとできるので、教科書をきちんと学んでおけばよいのですが、なぜこの問題を出したのかを授業で問うメタ視点を学びたいところです。

★今年の問題は、1989年に向けて世界がガラリと変わるファクトを書く問題なのですが、ドイツとソ連と中国と東欧の動きをまとめる問題でした。こうして89年に向かって世界全体が動いていくのを一望する問題は、なるほど、民主化が進んだと同時に、実は反民主化の種がちゃんと残されていたことがわります。

★それが、今にいたっているわけです。今回のパンデミックでそれが露になったわけです。

★一方、法学部の小論文もいつもながら圧巻なのですが、<平等>という概念の捉え返しと、いまここで現実に起こっている格差問題をどう解決するかを考える問題でした。

★ただ、慶応大学のようにリベラルコミュニタリアンやリバタリアンの話まではいかず、ロールズで思考を展開する問題で、今の高校生が考える基礎に基づいて論考する条件がきちんと設定されていました。

★受験生にとっては、日ごろの準備が生かされるように問いの条件が設計されているのが、名古屋大学らしいなあと感じました。というのも、この新しい発想は、1989年の民主化の進化の側面から生まれてきていますから、もう一つの反民主的な動きの種を見過ごしがちなんですね。

★両方を複眼的に見るには、ルソー→カント→ロールズの発想について整理しておく必要があります。そこからリバタリアンなどの新しい動きを見てみると、さらに次の新しい見方がみえてきます。

★東大や大阪大学は、この新しい見方を捉える問題を現代文で出題していますから、斬新ではあるけれど、もし受験生が名古屋大のような背景を知らなかった場合は、たんなる読解問題になってしまいます。

★そして一方で、名古屋大の受験生が、この新しい発想も学んでいたら、今回のような問題は見通しがすぐに開けたことでしょう。

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大学入試問題とトランジション(09)東京大学と大阪大学の現代文から見えるコト

★河合塾の大学入試解答速報で、国立大学の入試問題が公開され始めています。大学入試問題の解答方法については、それぞれスペシャリストの方々にお任せし、私が見たいのは、入試問題という問いの背景になにがあるか、あるいはその問いを発する大学の識者が何を見ているのかということです。インタビューもしないので、もちろん私の独断と偏見です。それでも、どんな素材が扱われているかを話題にすることは、参考になるかもしれません。

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★今年の東京大学の現代文の1つは、「文化人類学の思考法」という著作から出題されています。13人の文化人類学者が執筆していますが、その中の松嶋健さんの「ケアと共同性」という論考から一節が出題されています。

★大阪大学では、東浩紀さんの「観光客の哲学」から出題されています。なぜ今観光客かという大事な大前提が詳しく語られていると箇所が終わったあたりから出題されているので、東浩紀さんの文章に接していない場合、読みにくかったかもしれません。

★ともあれ、どちらも、今回のパンデミックで世界同時的に気遣っているテーマです。もちろん、話題性に着目して出題したというわけではないでしょう。世界同時的に気遣ったこととは、世界同時的に気遣うことができてしまっているということそれ自体の意味です。

★グローバルとローカルとか、グローバリズムとナショナリズムとか対比して語られるのが通常ですが、その対比を無化ししてしまう世界同時的なこの均質性とはいったい何だろう?という気遣いですね。

★今回のパンデミックは個人主義ではどうにもならないことにみな気づいたわけです。また国家が管理することができると思われてきたことが、そうではないのではないかという気づきも世界で共有しているわけです。

★両著がパンデミック前に出版されているにもかかわらず、そのことを問いかけているわけですから、産業革命以降の近代化の概念を問う本質的な話に、世界がパンデミックによってようやく気づいたということなのでしょう。

★個人と社会共同体の関係とは違う第三の概念をそろそろ考察しようよということでしょう。世界同時的に、世界均質になってしまったがゆえに、それは逆説的に達成されているのですが、ここにきて新しい概念を創出しようという時代になったわけです。21世紀は個人や社会、自然について新しい知識を生み出す思考の時代にはいっているということです。

★大学入試問題をはじめ、小中高の入試問題に思考力や記述力が重視されているのは、文科省が決めているのではなく、時代の良心の反映ということでしょう。もちろん、文科省もその声に耳を傾けているわけですね。

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2021年2月25日 (木)

大学入試問題とトランジション(08)早稲田大学政治経済学部 新しい一般選抜実施 トランジションモデルになる!か?

★早稲田大学政治経済学部の一般選抜試験が実施されました。今年から、全く新しい形式で行われていますから、受験業界は注目しているはずですが、すでにサンプル問題も公開されてきましたから、衝撃度は少なかったかもしれません。サンプル問題通りだったからです。

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(総合問題の英文は同書から出題)

★とはいえ、政治経済だけではなく、他の学部でも入試問題の形式を変更していました。それも大きな一因となって出願数が激減して、特に政治経済学部は目立ちましたから、その点に関しては大いに話題になっていました。したがって、実質的衝撃はやはり大きかったのかもしれません。

★この出願数が減ったということで、今後入試問題形式の揺り戻しがあるかどうか注視していきたいですが、定員を割ったという話ではないのですから、総長や学部長が使う言葉「熟議」「グローバルリーダー」「ハイブリッド教育」に質の高いマッチングが出来た場合、今回の新しい形式は継続されることになるでしょう。もしかしたら、さらに進化する可能性もあります。

★いずれにしても、この形式が続けば、受験生の学び方は変わります。大学入学共通テストでは、英語と国語と数学Ⅰ・数学Aは必須です。文系ですが、数学が必須というのが出願が減った原因の1つでしょう。おそらく、当局はそのことは織り込み済みだったと思います。しかし、政治経済の学問の世界で、数学的思考はもはや無視できない時代です。いかしかたがないでしょう。となると、早稲田の政治経済を志望する生徒の学び方は変わりますね。

★そして、大学入学共通テストから社会、数学、理科から1教科1科目選択しなければなりません。共通テスト後の総合問題を見れば明らかですが、倫理や生命科学の素養が必要になりますから、倫理とか生物、化学の選択をする生徒もいると思います。従来なら世界史とか日本史の選択に絞れたでしょうが、どうやらそうでもなくなってきました。

★要するに、大学入学共通テストを課すことで、英語と日本語という言語技術と哲学、数学的思考、科学的思考というリベラルアーツを包括的に学んできて欲しいというメッセージがあります。教科の学びが、リベラルアーツに結びつくかどうかは、授業次第ですが、おそらく生徒は新書レベルの文章とジャーナルレベルの英文は読み込むことになるので、かりに授業が知識中心主義でも、生徒の学び方は変わります。

★総合問題も、推理思考と小論文思考は重要になるし、ハイブリッド教育そのものを反映した日本語と英語の素材文の両方が出題されます。生徒の学び方はやはり変わります。

★しかも、早稲田の政治経済の一般選抜で出題される小論文というかワンパラ論述は、200字や100Words程度で、テーマも受験生なら想定内です。ですから、ここはさっさっと書いてクリアしなくてはならないでしょう。

★つまり、SDGsの1つひとつの問題に関して、ワンパラでスピーチできるトレーニングをするような学びが必要になります。予備校がトレーニング集をつくり、それを暗記するというようなことが起こるかもしれません。しかし、それよりも、自分で調べたりしてワンパラノートを創っていく方が、大学入学後役に立ちますから、当然、後者の学び方をする生徒が増えるでしょう。

★今のところ、早稲田政治経済とSFCくらいしかこのような形式と内容の入試を提示していないので、多くの高校生の学びが変わるかどうかはわかりません。

★たしかに、私大の一般選抜入試でも小論文を課す入試が徐々に増えてきていますが、かりにその小論文を空欄のまま終えたとしても、他の知識問題ができれば合格できます。ですから、高校生全員の学び方が大きく変わることはないかもしれません。

★しかし、国立大学の独自入試、私大の総合型選抜、共通テストの作り方の変化など丸暗記型受験勉強を無化するウネリは明らかです。私大の一般選抜で早稲田大学の政治経済学部の入試問題の変更は、そのウネリを増幅するのに貢献する可能性はあります。

★いずれにしても、PBL型授業の重要性が高まるのは避けられないし、考える作業や協働型プロジェクト体験が入試や大学入学後にも大きな影響を与えるでしょう。進路指導をトランジションモデル形成に変容させる転機になることは間違いないでしょう。

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2021年2月23日 (火)

大学入試問題とトランジション(07)探究の言葉/探究のリマインダー

★今年の大学入試を振り返るのはまだ早いのですが、総合型選抜でも一般入試でも共通する<探究の言葉>というのがあるのではないかなあと。備忘録として、あるいはリマインダーとしてメモしておきます。

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★それは、意外と当たり前のことなのです。経験というのが大事なのはわかるのですが、<経験を捉え返そう>というのが<探究の言葉>だったのです。

★経験は大事で、知識は二の次だというのが昨今の通念ですが、知識は経験と関係ないかというとそんなことはないですよね。経験は大事だと言われながら、私たちの周りには、直接経験できない事柄で満ち溢れています。

★今回の入試問題は、ここを巧みに問いかけています。「つれづれ」という教科書ででてくる言葉の意味を近世から歴史的パノラマをひもとくと、日本人の根っこというものが揺らいだり、揺らいでいる日本人観そのものを包括的に捉え返し新しい日本人観を見つけたりするのがテーマでしたが、これも<経験を捉え返そう>という探究の言葉を想起させます。

★1980年代に出版され、最近復刻された角山さんの「茶の世界史」は、その後、川北さんの「砂糖の世界史」、武田さんの「チョコレートの世界史」という<経験を捉え返そう>という探究の言葉を押し広めました。中学入試の社会科や最近の思考力入試の編集視点は、色濃くその影響を受けています。

★いっぱいの茶碗を覗き込むシーンのリマインダーに「茶の世界史」が広がるんです。紅茶に角砂糖を溶かしていると「砂糖の世界史」というリマインダーがポップででてくるんです。チョコレートをひとかけら頬張ると「チョコレートの世界史」のリマインダーがキットカットの壮大な歴史を思い出させるのです。

★身近な経験から見えない背景を立ち上げるというのはまさに<経験を捉え返そう>という探究の言葉です。

★古市さんの新しい日本史観もこの言葉のなせる業です。歴史はファクトであると同時にストーリーですから、自分で書き換える楽しみはたしかにありですね。

★もっとも、この<経験を捉え返そう>とするとき、その根拠やエビデンスを揃える方法が大事です。渡辺靖さんの姉妹書籍は必見です。毎日のニュースを見ながら、そこには帝国から近代、現代へとウネル世界史がリマインダーとして広がれば、<経験を捉え返そう>という探究の言葉をつかえているなあと実感できるでしょう。

★探究とは、<経験を捉え返そう>という<探究の言葉>が広げる<探究のリマインダー>をいくつ構築できるかですね。そして、そのリマインダーを紡ぎ、つなげていくと、総合型選抜ばかりか一般入試もワクワクしながら立ち臨めるし、道は開けるでしょう。

★人生はファクトの背景の探究のリマインダーをどのくらいたくさん自ら創出するかということだからです。哲学的にはセンスメイキングというのでしょうが。。。

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2021年2月21日 (日)

21世紀型教育機構の世界性(02)Zoomセミナー New Power School市場の拠点を証明

本日21日(日)、21世紀型教育機構は、Zoomセミナーを開催しました。「21世紀型教育機構 新中学入試セミナー」というタイトルでした。同機構の理事であり事務局長の鈴木裕之さんがMCとZoom環境をオーガナイズしていました。全部で4つのフェーズで構成されていて、21世紀型教育機構の生み出す市場の意味と加盟校の世界の学校へ飛躍しようとするステージに来たことを証明するセミナーとなりました。もはやことさら新機軸をぶち上げなくても、すでに当たり前に世界の学校と対等に教育の世紀を創っていける中等教育レベルを構築したわけです。

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★中学入試市場で、機構がどのようなポジショニング—もちろん偏差値ではなく、教育の質と教育の世紀を創り出す貢献度という意味でですがーにあるかを確認するには、市場の状況を分析しなければなりませんが、そこは首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんをおいてほかに分析できるリサーチャーはいません。

★毎年、機構はまず北さんにお願いしています。今年は、中学入試4.0というエポックだっただけに、その認識を広めてきた北さんならではのスピーチでした。ちなみに、中学入試1.0は、1986年に中学入試情報センターが、この業界ではじめて立ち上がり、中学入試ブームが一気呵成に世に広がった時期です。中学入試2.0は、1999年私学危機を乗り越えるべく、ゆとり教育の不安を私学が協働して払拭した時期です。中学入試3.0は、2014年、前年から立ち上がった大学入試改革に対応するために、私学が新タイプ入試と英語入試の実施が強烈に実施されはじめたときからでした。

★今回2021年はパンデミックによって、オンラインの学びの環境が私学が先頭を切って一気呵成に実施していった年です。まさに中学入試4.0と言えましょう。そして、北さんは、すべてのエポック創出を牽引する業界ジャーナリズムのリーダーです。

★このコロナ禍における多様で俊敏な変化を見せた中学入試の状況を北さんはスピーチしてくれたのです。詳しくは、いずれ録画が公開されますので、そちらでご覧ください。

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★そして、2つ目のフェーズは、聖学院の児浦先生と和洋九段女子の新井先生による、思考力入試とPBL入試のシステムと合格者の成長ぶりについてのスピーチと対話でした。どちらもワークショップ型の入試です。21世紀型教育機構の加盟校は、PBL型授業を行うことは相互に約束しています。そのPBL授業の反映した典型的な新タイプ入試です。

★各学校の理念と21世紀型教育機構のMEN FOR OTHERS(MFO)という理念とその実現のための1つの場であるPBL授業が一体となっています。学校の理念やPBLの手法は各学校によって違いますが、国連が目標にしているMFOとPBLの大きなフレームは共有しているのです。

★聖学院と和洋九段女子はもちろん異なるプログラムだったのですが、コンパッションをベースにしているということは共通でした。そしてそれがゆえに、入試なのに緊張しつつも楽しめるものになっていました。両校とも心理的安心安全な学びの環境をつくっています。まさにMFOは共有されているわけです。

★3つ目のフェーズは、グローバル教育です。国際生入試、帰国生入試、英語入試というアドミッションポリシーとそれが接続するカリキュラムポリシーとディプロマポリシーの成果をくし刺しにする各学校のスピーチと対話でした。登壇した学校は、工学院、聖ドミニコ、文化学園大学杉並、三田国際、八雲学園でした。

★21世紀型教育機構は、C1英語とPBLとSTEAM教育とリベラルアーツ、海外大学進学準備の大きなフレームは一致しています。工学院、三田国際は、21世紀型教育本格始動が今年の高3が中学1年生だったときです。文化学園大学杉並はすでに5年前にダブルディプロマクラスを高1から立ちあがています。したがって、この3校は、2021年にその国内外の成果がたくさん出る年だったのです。予想通りたくさんでました。文杉はすでに3年前に大注目を浴びています。

★聖ドミニコは、加盟2年目ですが、以前からロンドン大学など海外大学進学は毎年あり、21世紀型教育による今後の期待は高まっています。八雲学園は、共学化して4年目を今年の4月から迎えます。すでに国内大学合格実績はでていますが、海外大学準備教育もがっちり進み、大いに期待ができます。

★21世紀型教育機構の加盟校は、日本の教育を制度によって変える大それたことは考えていません。自分たちの学校が、世界のエスタブリッシュスクールとオプションではなく、相互留学が継続的に可能なような、教育環境を創ることによって、日本のプレゼンスを高めていこうとしているだけです。

★今のところ、日本の教育は海外の教育に学んでいる方が多いですが、東南アジアをはじめ、海外の生徒が日本で学びたいと留学してくれるようになってほしいと。そのためには、C1英語の環境は必要です。リベラルアーツや哲学は必要です。PBLの授業で対話やディスカッションが出来る環境は必要です。ICTはグローバルなコミュニケーションは必須です。そして、大学の進路は、日本に限らず行きたいところに進めるという環境が必要なのです。

★いかに制度があったとしても、この中身がなければ何もできません。

★このような野心を着々と実現しているというところが、何よりNew Power School市場を生み出す拠点であることの証明です。

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★4つ目のフェーズは、そのような機構の教育のクオリティを持続可能にするために、アクレディテーションサーベイを実施しています。世界のエスタブリッシュスクールの基準に合わせて、クオリティを測っています。

★コロナ禍で、動画とグーグルフォームをつかったアンケートサーベイで行う方向転換をしようとしていることが公開されました。ゆくゆくはAIを活用することになるでしょう。

★セミナーやアクレディテーションを21世紀型教育機構は完全デジタル化しようとしています。そういう環境を構築しなければ、世界の学校にはなれないということだけのことです。

★2011年の秋に21世紀型教育機構の発足の準備が始まりました。そこから数えて、2021年度は10周年を迎えます。すばらしい21世紀型教育機構の飛躍の年となるでしょう。そして、New Power School市場の拡大もますます拍車がかかるでしょう。

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大学入試問題とトランジション(06)慶応義塾大学環境情報 不条理の哲学をプラグマティックに変換

★今年の慶応義塾大学環境情報の入試問題は、目からウロコ。あの膨大な情報はまったくなし。論理的アイスブレイクの計算をして、あくまで論理的な意味での不条理のケースを15個、そしてそれがなぜ起こるのか理由を簡潔にまとめていく問題でした。

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★今回のパンデミックで再び注目されたカフカの「ペスト」。第二次世界大戦の不条理を重ねて、ペスト禍の不条理な人々の生活をドキュメンタリー風に書き綴った本ですが、そんなペストの本を編集するような視点を想起させるようなすばらしい問題でした。つまり、生活の中にある不条理を列挙させていく問題でした。課題文はありません。自分の教養と経験と社会問題対する高い意識そのものがテキストです。そこから引き出していく問題です。

★探究や研究の端緒は、まさにこの不条理や矛盾、二律背反、パラドクスの発見から始まります。クリティカルシンキングとかクリエイティブシンキングは、このパラドクスの端緒を見つけるところからはじまります。

★ここをダイレクトに15個も気づけるのかという、めちゃくちゃ根源的な問題。さすがです。

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大学入試問題とトランジション(05)早稲田大学法学部の入試問題 B2思考をベースに記述も。

★早稲田大学の法学部の入試問題を見ていて、なんだかホッと一息。慶応の入試問題の新しいリベラリズムと新しいリバタリアンの間の考え方のゆらぎに、私のような年寄には、どのように包括的に捉え返すかひやひやするけれど、早稲田のはまだまだ現代思想の延長上で捉えることができます。現代思想には、慶応が捉えているポスト・ポストモダン的な芽がすでにあるけれど、その多くは、近代をどうとらえなおすか、もう一つの近代への視点を中高時代に養っておくという基礎が問われるので、まだパノプティコンの批判的検討で済みます。ポスト・ポストモダンは、もはやシノプティコンの世界だから、すべてがカジュアル知性になっていて、クラシク音楽を楽しんでいる私には眩暈がします。

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★とはいえ、カジュアルと言うことは、無意識のリバタリアンの広がりということですから、アダム・スミスやヒューム、ハイエクあたりに足場を求めながら、どうシノプチコン時代を鳥の眼と虫の眼で捉え返すか「逃」げずに「挑」まなくてはとは思っています。

★さて、早稲田の法学部の問題に話を戻しますが、国語は、最後の180字のパラフレーズの問題を覗いては選択肢です。このパラフレーズの問題も結局は要約記述で、自分の意見を論じるわけではないので、思考コードでいけばB2で、対応できます。仮にこの問題ができなくても合否を決定づけるものではありません。

★しかし、アドルノが亡命先で、自分の文化社会的影響でできあがった認識システムを、異文化との接触で、喪失と同時に新しいものの見方を自分のものにしていく話は、中高時代に体験するプログラムのものの見方の幅を広くするものです。受験勉強の過程にそのようなものの見方をプラスすることはトランジションモデルとして意味あることです。

★また英語のライティングで、ピクチャ―ライティングをワンパラグラフで書きなさいということですから、100Wordsぐらいの英作文ですね。基本、ファクトとオピニオンをさらりと書けばよいのでしょうが、授業で使う時は、オピニオンの部分をコンセプトやアイデアに発展させることができます。今回の絵は、かつて、東大で出した自分の顔を写した鏡を覗いたら別人格の自分が映っていたというもののバリエーションでしたから、素材としてはおもしろいですね。

★日本史は、文章を書く記述はありませんでした。しかし、近現代史が多いのは特徴的なのかもしれませんね。

★世界史は、最後の問題が、1700年代のフランス革命が起こる前までのヨーロッパの外交関係・国際関係を説明する300字記述の問題でした。一足先に市民革命を体験しているイギリスが、ヨーロッパの帝国から近代国家への道を開いていくプロセス史をまとめる問いでしょうから、定番と言えば定番です。しかし、大航海時代の絵柄が思い浮かんで、ワクワクしますね。試験の時には、冷静に書かなくてはならないでしょうが。

★政治経済では、アクセス権について書く250字記述が出題されていました。メリット・デメリットの両面を書く問題ですが、表現の自由の延長で書けるし、SNSで必ずでてくる問題でもあるので、難しくはなかったと思います。ただ、受験勉強をするときに、当然でしょうが、権利について自分なりのものの見方を考えておく必要はあります。知識を覚えておくだけの勉強では、どうやら一般入試も限界がある時代がやってきたわけです。

★とはいえ、本番でこの問題ができなかったからといって、合否に影響を与えるかと言うと、そんなことはないわけで、180字から300字のワンパラグラフを書く問題が出題されているからと言って、受験勉強が大きく変わるかどうかは、学校現場の判断ですね。

★早稲田の政経の問題はまだ公開されていませんが、公開されれば、今年から新しくするという予告通りだったとすると、従来の勉強方法では限界があることがわかるはずです。しかしながら、入試問題の傾向の大幅変更は、今年の出願数大幅減の一因ともされています。これに当局が耐えられるかどうかも注視していかなければなりません。

★早稲田にしても、慶応にしても、論述やワンパラ記述を出していますが、それで合否が決まらない以上、受験勉強の方法論は変わらないかもしれません。合格すればよいという功利主義的な考え方を否定することはこの多様性の時代できないからです。

★選択肢問題と論述やワンパラ記述の配点のバランスを3:2くらいにしてくれると、受験勉強の方法も明らかに変わるでしょう。ワンパラグラフぐらいの論述やファクト記述は、実は採点しやすいということがわかれば、比率が変わるとは思います。今後に期待です。

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2021年2月20日 (土)

沖縄インターナショナルスクール PYP探究学習発表会 日本の教育のこれからを考える大きなヒント

★本日20日(土)、午前中、沖縄インタナショナルスクール(以降「OIS」と表記)は、国際バカロレア プライマリー・イヤーズ・プログラム最終学年の5年生による学習発表会(エキシビション)が行われました。自分たちが関心のある社会問題について探究した内容を発表。Zoomで行われました。

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★テーマも〈新型コロナウイルス 〉・〈絶滅危惧種〉・〈アート〉・〈ゲーム中毒〉・〈インターネット〉・〈宇宙ごみ〉・〈再生可能エネルギー〉と日本の教育の小学校5年生を完全に突き抜けていました。

★それにしても、開会あいさつの知念理事長も来賓あいさつをされた瑞慶覧長敏(ずけらん ちょうびん)市長も英語と日本語のバイリンガルプレゼンテーションでした。もちろん、子どもたちも全員バイリンガルプレゼンテーションです。

★中身の濃さはいうまでもないのですが、探究のプロセスを明らかにしながらプレゼンしていく姿は、結果や成果を急ぐ日本の教育とは全く違う雰囲気でした。

★しかも、ペーパーを見ないで、プレゼンしています。質問にも大いに柔軟に考え回答していました。もちろん英語でしていたのです。

★要するにミニTEDでした。

★プレゼンは、視聴者を巻き込むパフォーマンスも行われ、それぞれ楽しかったですね。

★踊ったり歌ったり、動画づくりやサイト作りなどプロダクトまであるわけです。

★視聴者は100人以上だというのですから、それもまたすごいわけです。

★PYP→MYP→DPとIB一貫小中高のOISです。これからが楽しみです。

★この歳になると、小学校3年生の時に出会った子どもたちが、今では、医者、弁護士、起業家、看護師、科学者など世界に貢献する仕事に携わっています。子どもの成長の予言などできるはずもないのですが、ああやっぱりそう成長したかと思うこともしばしばです。

★だから、Zoom越しでしたが、自分の考えをしっかり持ち、ユーモアも交えながらプレゼンしていた様子から、彼らがグローバルリーダーとして活躍している未来の姿が思い浮かびました。

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大学入試問題とトランジション(04)慶応大学総合政策の小論文 探究の方法を学びながら小論文を完成させる

★大学入試速報2021(河合塾)によると、問題はまだ未公開ですが、分析は発表されています。それをみると、どうやら、3つのケースを公共政策的な定性分析とあのシステム思考的なループ図を描きながら最終的に改善政策の800字論述をするようです。

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★公共政策的な分析は、ステークホルダーであるアクターどうしの利害関係や調整の目標、それに影響を与える制度設計の分析などをしていくようです。そして、それらの諸関係をループ図で書き、メリットとデメリット、あるいはユートピアとデストピアの生まれる関係図に仕立てあがていきます。

★それらの分析を踏まえ、800字で小論文を書いていくわけです。

★上記の写真にあげた書籍だけではなく、膨大な資料を参考に、公共的な分析ツールの構築とシステム思考のシンボルであるループ図(同塾の分析ではアロー・ダイアグラムと称されていました。問題ではそのように指定されていたのかもしれませんね)の書き方を体得しながら自分の考えを組み立て行きます。

★しかし、公共政策的な分析やシステム思考は、「探究」を学んできた受験生にとっては、ある意味当然だったかもしれません。実際の「探究」では、提示されている膨大な資料をリサーチするところから始まるし、その中で、提示されている探究するケースを自ら掘り起こさなければなりません。

★分析や小論の書き方は、すでにPBLなどの授業で体験済みです。ということは、資料もケースも与えられているので、PBLに慣れている受験生にとっては有利だったかもしれません。

★もっとも、総合政策を受験する生徒はこのトレーニングはみな経験済みかもしれません。

★総合型選抜や探究を学校の先生方と取り組んでいる神崎先生は、公共政策分析やシステム思考のメソッドは当然活用しています。私自身も神崎先生をはじめ、学校の先生方とコンパッショネイトシステム思考ベースのPBLや対話を行っています。

★私は公共政策分析はしませんが、社会学でいうロールプレイ分析を物語分析などに重ねて子どもたちと対話しています。公共政策に変換することはそう難しくありません。

★また、総合政策の入試問題を中学入試で先取りしているのが、聖学院の思考力入試です。

★今は聖学院、慶応義塾大学総合政策、神崎メソッド、私と仲間の先生方という特殊なエリアでの出来事ですが、New Power School市場のウネリもでてきました。

★このような入試が随所で生まれれば、中高大そして社会へという豊かなトランジションモデルが出来上がるでしょう。もちろん、このモデルが生み出すのは、クリエイティブクラスです。

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GLICC Weekly EDU(23) 麻布と開成の算数の入試問題の比較スタディーを通して見えるコト シンプルな学び方と思考の癖

★昨日のGLICC Weekly EDU 第18回のテーマは「2021年中学入試問題分析3-開成中と麻布中の算数の出題を比較し、その共通性や違いに迫る」でした。GLICCの数学科主任の申先生による麻布と開成の比較スタディーを通して、算数や数学のシンプルな学び方あるいは思考の癖を形づくることが大切であり、何も難しいことではないことが了解できました。

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★シンプルな学び方というのは、「思考実験」ということです。試行錯誤をしながら、ルールやパターンを見出していく、そしてそれを公式化する。そのルールやパターンが隠されている現象を分析する。また新たにパータンを発見する。といった「思考実験」です。

★それが、「思考実験」をせずに、公式やパターンを覚え、それを適用するトレーニングばかりしていると、自らパターンを発見できなくなる可能性があると申先生は語ります。

★思考実験のプロセスは、適用できることばかりではなく、適用できない失敗を重ねその経験が直感的にこのプロセスで行くとうまくいかないという非適用パターンも身体化するということでしょう。

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★思考実験によって、「適用」と「非適用」の経験の両方を積むことが学び方の本意ですが、中学入試では、この「思考実験」をしなくても条件反射的にできる、つまり公式や既習パターンを適用するだけで解けてしまう問題もたくさんでます。

★入試という局面だから、それでよいのだけれでも、授業で学ぶときは、あくまで、思考実験というプロセスを前提として、適用パターンのトレーニングをするということです。

★思考実験とトレーニングの両方が必要です。トレーニングだけになる学び方では、入試を突破できないということ以上に、中高大そして社会に進んでいく中で、躓きが多くがなるということでしょう。思考実験ありきのトランジションの必要性ということなのです。

★この算数・数学の学びは、実は言語の学びにおいても同じことが言えます。これは、構造主義→生成文法→認知言語という流れの中で創られていますが、申先生の数学的な思考実験の方法論と重なるところが多く、驚きました。

★GLICCの代表鈴木さんが教科横断型のクリエイティブコースを創っている意味は、この学びのフレームあるいは思考のフレームが共通しているからできるという意味だったのです。

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2021年2月19日 (金)

大学入試問題とトランジション(03)慶応大学法学部の小論文 ルカの福音を通して個人と社会の緊張と対立を考える問題

★今年の慶応義塾大学法学部の小論文の入試問題は、福田恒存の「一匹と九十九匹と~ひとつの反時代的考察」から課題文を出題していました。福田恒存が、1947年に発表したと断り書きをしたうえで、読んで要約を400字程度で書き、それをふまえ個人と社会の緊張と対立について書きなさいと。特に指示はありませんが、全部で800字くらい書けばよいのでしょう。

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★このテーマについては、福田恒存の文章を読まなくても、受験生は用意をしていたでしょう。というのも、京都大人文研准教授の藤原辰史さんが発表した「パンデミックを生きる指針」は、公開後1週間に30万件超のアクセスがあったというほど多くの人に共感をもって迎え入れられました。この指針の中に、武漢の作家である方方さんの次の文章が引用されています。「一つの国が文明国家であるかどうか[の]基準は、高層ビルが多いとか、車が疾走しているとか、武器が進んでいるとか、軍隊が強いとか、科学技術が発達しているとか、芸術が多彩とか(中略)、決してそうしたことがすべてではない。基準はただ一つしかない、それは弱者に接する態度である」がそれですが、これは、今回のパンデミックで世界中の人が同じに気持ちになったものです。

★まさに、これこそ個人と社会の緊張と対立の生々しい世界中の人びと共通の実体験です。ですから、自分の意見を書くことそのものは、むしろ受験絵師は準備していたし、自分の経験を語れたでしょう。

★ですが、福田恒存の文章が難関です。文章が難しいということではないのです。福田恒存は、ルカの福音第15章の次の箇所を引用し、その比喩を解読する形で書いているので、そのたとえをどのように自分お意見と関係づけるのかが難しかったでしょう。

<「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜し歩かないであろうか。そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩に乗せ、家に帰ってきて友人や隣り人を呼び集め、『わたしと一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うであろう。>

★一匹と九十九匹の関係を文学と政治、個人と社会という対立関係に重ねて語っているわけです。1947年という戦後、これから民主主義をどう形成していくかが念頭にあるのはわかりますが、それを介して、自分の考えに結びつけるのは、スムーズに書くのは難しかったでしょう。

★実はこれは、自然法と実定法の比喩としてとらえると、書きやすかったかもしれません。自然法は交換の正義と配分の正義の調整をしますが、実定法は交換の正義しか問題にしません。配分の正義が問題にならないと1人ひとりの人間の具体的な姿が見えず、抽象的な平均的な人間、法学の世界ではリーズナブルマンと呼ぶのですが、それに対する批判的検討が戦後世界で議論されていたのです。

★トミズムという自然法論と分析主義的実定法の議論ですね。シェークスピアの翻訳家でもあった福田恒存は、当然この法の根拠を巡る話は知っていたのです。近代のすさまじい劇的人間像こそシェークスピアが描いたアンビバレンツな存在であり、自然法を喪失することをなんとかしようとしながら、実定法に従わざるを得ない近代民主主義の隘路をなんとかしようと議論をし続けたという意味で、保守本道のその人が福田恒存だったからです。

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2021年中学入試問題のおもしろさ(04)聖学院のものづくり思考力入試 麻布と別角度でシンクロする魅力

★首都圏模試センターが聖学院の今年の「ものづくり思考力入試」の取材記事をアップしました。具体的な入試のシーンが鮮明に伝わってくる記事です。そして、どんな問いが出されたのか、レゴをどのように入試で活用するのか、どのようにレゴのワークショップ型の入試を採点するのかが詳しくわかります。ぜひ<聖学院中 レゴブロックを使った「ものづくり思考力入試」>をご覧ください!

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★さて、その上で、首都圏模試センターの思考コードで問いの分析をしてみましょう。結論から言うと、麻布の問題と別角度からシンクロする難しさです。同時に、それでも挑戦したくなる魅力のある入試です。

★多様な才能を見出し、育てる入試問題に挑戦している聖学院の真骨頂です。麻布の問題も、過去問を学ぶとそうなりますね。

★さて、問1がまずすばらしいですね。思考を広げ深め、勇気をもって表現をしていくには、心理的安全性が確保されていなければなりません。その足場づくりをしています。自らの内面を想い巡らしながら、自然や社会とのつながりに思いを馳せる雰囲気を生み出すマインドセットから始まります。

★麻布の入試問題も、最初の問題や、社会や国語の文章は、読んでいくうちに同じ気持ちがこみあげてくる問題です。ただし、それは、受験生の個人に任されています。緊張しっぱなしの生徒へのケアは、麻布の試験中にはありません。そこはストイックです。自分で乗り越えなくてはなりません。

★聖学院の場合は、楽しんでやろうねとか、正解が1つであるわけではないからねとかケアフルな声かけが、入試の最中にあります。また、受験生同士が協力し合うこともあるのです。麻布の場合はライバルで、入学後仲良くなりますが、聖学院では、入試準備の時から、ライバルであると同時に仲間であるという不思議な関係をつくります。

★もちろん、全員が合格できるわけではないのですが、そこは一期一会なのです。

★そういうわけで、問1は、思考コードでいきなりC2なのです。100字くらい書かなくてはならないので、B2の要素も必要で、それに自分の想いをクリエイトしなければならないのです。エッ!難しいのでは?もし論理だけならそうでしょうが、自分の気持ちを思いめぐらすことは、難しさを心地よさに変換します。価値あることへの挑戦は難しいかもしれませんが、その気持ちよりもモチベーションの気持ちが沸き起こります。

★その準備ができたうえで、多くのデータを比較して、ファクトを導きます。B2ですね。しかし、B2でとどまらず、そこから「矛盾」という認識レンズを使って事実から問題を発見する変容を生み出します。B3ですね。

★矛盾が見つかったら、それを批判的に検討しながら、解決策を組み立てます。C2の思考をフル回転させます。

★そして、さらにそれは目の前のことだけだったのではないか、10年後はどうなてちるのかとどこでもドアを開く瞬間です。問4はC3に行き着きます。

★さらにリフレクションして、自分のつくったプロトタイプをリファインして試験終了です。どこでもドアを何度も開いて、問1のところまで遡ったり、再び10年後にいったりとワープしっぱなしのリフレクション。生徒は興奮状態冷めやらぬ状態になっているはずです。

★帰り道、こんな問題がでて、僕はこう考えたんだと保護者と話しながら聖学院への正門へ坂をいっしょに降りていきます。このスロープを散歩するところまプログラムはデザインされています。だんだん興奮が冷めて日常に戻っていきます。これは麻布でも同じシーンが見られます。入試が終わって、六本木や広尾駅に歩いていく受験生と保護の対話がときどき聞こえてきますが、同じシーンですね。

★こんなに難しいとは!と驚かないでください。レゴを使っているからそこは大丈夫なのです。レゴという思考の道具を介することで、かなり創造生成のきっかけになっているのです。これは建築家が良く使う、アフォーダンスとか、経済で使うナッジという手法です。実によく巧まれているのです。

★しかし、全体は、児浦先生のIN/OUTワークショップ言語が貫いた、才能が湧き出てくる仕掛けが背景にあります。難しい言い方になってしまいますが、アリストテレスが可能態を現実態に変換する形相=フレームが開発されているから、可能なのです。

★この先生方の教養が基盤になって思考力入試問題ができています。別角度の入試問題とは言え、聖学院と麻布の入試問題がシンクロするのは、両校の作問者も教養の幅が広く深い洞察力があるからですね。ここがシンクロの本当の理由です。

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大学入試問題とトランジション(02)慶応大学文学部の小論文 「つれづれ」概念の多様性と正解のない問題の意義を問う 思考コードで整理すると♪

★今年の慶応義塾大学の文学部の小論文の課題文は、川平敏文さんの「徒然草 無常観を超えた魅力 (中公新書)」の終章 <再び「つれづれ」とは何か>から引用されていました。終章全部を読めば、論旨をわかりやすく理解できるのですが、そうなるとただでさえ長い課題文なのに、その倍の長さになってしまいます。

★問1の400字以内で要約する問題は、限られた範囲で推理しながらも、作者の論の運びを逸脱しないようにまとめていかなくてはなりません。「つれづれ」概念の「退屈」説と「静寂の境地」説の二項が時代によって振り子のように揺れる論をまとめていけばよいのですが、途中で、この2つの説の間のグレーの話がでてきて、それがどうしてでてくるのかこだわってしまうと、心理的にまとめにくかったかもしれません。

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★本書は近世、近代、現代と膨大な文献をベースに「つれづれ」概念がどのように変遷してきたかファクトを論じつつ、その変遷の理由を時代の権力関係や専門領域の人びとの視点、庶民の受け止め方などある意味文化人類学的なレンスも活用しながら、一方でヘーゲルの弁証法的歴史観のレンズも使いながら書いている超面白い書です。

★「総合的な探究の時間」で探究するデザインやフレームのモデルにもなりそうですね。

★それはともかく、本書及び慶応の課題文は次の文で締めくくられます。

「いま、自分の立っている場所を疑え。そしてその是非を問い直せ ─ ─。 本書で論じてきた「つれづれ」問題は、とてもとても小さなテーマではあるが、ある意味普遍的な課題を、われわれに自覚させてくれるものである。

★まさいく神は細部に宿るという最近注視されている考えうレンズが提示されています。

★問2は、「正解の出ない問題に取り組むことの意義」について、作者の考えを踏まえて、400字以内で自分の考えを書く問題でした。この最後の文をどうとらえるか、そしてそれに相当する例を、文学部ですから、自分の読書体験から披露すれば解答としてはできてしまうのでしょう。

★しかしながら、川平さんの同書のサブタイトルが「無常観を超えた魅力」とあるように、「正解の出ない問題に取り組む意義」は、まさにこの通説を超えた魅力を創ることにあるのであって、この態度は今後の私たちにとって普遍的な学びの態度になるでしょう。

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★ところで、このような文章を整理したり、自分の意見を書くときに、うえのように、対立概念の間に中間の考え方をつくっておきます。結果的に川平さんも創っていますね。そして、それぞれの概念が引き起こす解決案や不足の点を、道徳的側面や理性や理論的側面、美学的側面の3つから見るようにします。すると、9つの領域のアイデアが整理できます。

★実際には、道徳もいろいろな考えがあるし、学問もいろいろありますから理論的な側面も無限です。美学に関しては美術史が物語るように無限です。

★概念にしても、中間のグレーの部分は無限ですね。それゆえ、どんな考えも無限にあるのですが、片方で意思決定をしなければなりません。この中からチョイスするか複合するか思案のしどころですが、こうやって分類しては幾度も分類を変更するということをしながら探究を深めていくわけですね。

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★そして、この上記の図を90度回転させると、思考コードになります。思考コードは、評価やルーブリックの道具だけではなく、アイデアを生み出す道具でもあります。

★アイデアをこの中に閉じ込めるなんてとお思いの方もいるでしょうね。それがいいんですよ。それが「通説を超えた魅力」になります。思考コードはその魅力を生み出すテコなのです。

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2021年2月18日 (木)

2021年中学入試問題のおもしろさ(03)筑駒の詩 貞久秀紀さんの詩 構成主義的背景

★今年、筑駒は、貞久 秀紀(さだひさ ひでみち)の詩集「昼のふくらみ」から「体育」を出題しました。何気ない散歩。その散歩の中で心と身体がDNAのように魂を結んでいます。その魂がなぜか共振し、垣根の向こうの知らない人と会釈を交わしてしまう。思う身体、考えう身体。身体の内部に心の延長があるのなら、身体の外部の自然や社会もまた身体の延長ではないのか。。。

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★詩人は、氷山モデルでいう水面下をとらえているのでしょう。あるいは、構成主義的なあるいはシステムシンキング的な認識や感性の広がりをみているのでしょう。

★さりげない日常を心と身体がDNAのように織りなして歩いていくとそこには非日常が広がっています。詩人は瞬間瞬間パラレルワールドを生きているわけですね。

★見える人と見えない人を分けるものは何でしょう。いずれにしても見えなければ筑駒には入れません。

★中学入試問題に立ち臨むには、氷山の一角をみているだけの勉強ではなく、見えないものを見る勇気もまた必要だということでしょうか。

★そういえば、今年の開成は漫画家山田玲司さんの文章を出題していました。このような広がりが見えない状況を「思考停止」といっているわけですが、このことについて考察する問題を出題していました。

★考えるということは、真理をたどることなのか道をたどることなのか?

★今年の早稲田大学国際教養の英語のライティングの問題の中には、ギリシアと中国のものの見方を比較して、真理か道か、ものの見方考え方を整理する問題が出題されていました。

★アドミッションポリシーとカリキュラムポリシーとディプロマポリシーがようやく分断を結びつきに変える時代が少しずつ足音をたててやってきたのかもしれません。

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大学入試問題とトランジション(01)早稲田大学国際教養の英語入試問題 PBL型トランジションモデルを引き出す

★今年の早稲田大学国際教養の英語の問題は、いい感じです。90分のReadingの問題も、パラグラフのトピック把握問題、単語のコンテクストの中での意味理解と類語の関係づけ問題、内容一致不一致問題がベースでした。文章の構造論と単語の意味論とファクトのアイデンティティ問題と置き換えられますから、受験テクニックというより言語のフレームや意味論、ファクトーオピニオンーコンセプトという英語を通して思考の枠組みをきちんと学ぶ不断の取り組みが大事だというコトですね。

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★テーマも、レゴ社をケースにソフトパーワー戦略について考察する文章、言語に関する文章、時間に関する文章という人生を考えるうえで興味深い題材になっています。これも、対話型の授業では、よく話題になるテーマです。

★また、60分のWritingの問題もおもしろかったですね。3題のうち1問目は、ベーシックインカムに関する60wordsくらいのパラグラフの英文を読んで、オピニオンを100wordsくらいで書くのですが、その際そのオピニオンをサポートする根拠も書くようにと条件づけられています。パラグラフライティングの問題です。

★2問目は、世界の平均寿命の推移グラフを見て、ファクトとグラフの信ぴょう性について書くクリティカルシンキングの問題でした。

★3問目は、<The Geography of Thought: How Asians and Westerners Think Differently...and Why 2004/5/8
Richard Nisbett Ph.D.>からの引用文章300wordsぐらいの短いものを読んで、日本語で要約する問題でした。ギリシアと中国のものの見方の違いは、社会的な実践行動の違いが反映していて、その違いの特徴を明快にまとめる問題でした。要約という、抽象化スキルは、思考の基本ですね。

★思考の対象やテーマも思考のフレームやスキルも、ふだんの主体的・対話的深い学びで対応できるようになっていました。英検2級くらいの力で、そのような学びを3年間積み上げてきたらできる問題ですが、その学びの背景の思考体験としての読書量やプロジェクト型体験はおそらく肝でしょう。

★要するに、机上の受験勉強というより、3年間の多様な経験をバックボーンとするPBL型の授業を経験して早稲田大学の国際教養に入学するトランジションモデルがやはり大事だということではないでしょうか。

★早稲田大学の国際教養は、日本の教育をPBLを背景としたトランジションモデルに転換させる契機になると思います。

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新しい教育社会(29)New Power School市場をつくる工学院

★昨夜というか真夜中、工学院の教務主任田中歩先生とZoom対話をしました。振り返りと逆振り返りをしていました。もうすぐ高3生が卒業するのですが、この学年は、工学院の21世紀型教育改革の本格実施の1期生です。中1から入学した生徒も、高1から入学した生徒もいずれも新しいコースで出発しました。

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★その成果が多方面にわたってでたわけですから、その振り返りとさらなる飛躍のための対話でした。自分の学校だけではなく、御三家ピラミッド市場に対し、New Power School市場をつくるのに大きく貢献しました。

★これは画期的なことなのです。今まで注目されてきた新興勢力の学校といえども、偏差値競争の御三家ピラミッド市場の中でポジションゲームをしてきたわけです。

★そこでの問題は、近代文明が引き起こしてきた問題と同様の構造があるのはいうまでもありません。むしろ、その象徴でしょう。

★それに対し、その引き起こした問題を回避する新しい子どもたちの居場所をつくらなければならないというNew Power Schoolをつくることを今年の卒業生を迎え入れたときに断行したのが工学院です。聖学院をはじめ10校強の仲間とコミュニティをつくりNew Power School市場形成のインパクトを生み出してきました。

★途中、謎の学校とか、PBLやICT教育をやって大学受験がうまくいくのかとか揶揄されましたが、生徒が生き生きと活躍している姿をみて、だんだん市場の理解がちがってきました。御三家ピラミッド市場からNew Power School市場に参画した大妻中野などの勢いもまたすさまじいものでした。

★御三家ピラミッド市場に押し込めれ、その中で偏差値という尺度だけで教育を語ることに真っ向から反対し、受験市場の中で孤軍奮闘していた桐朋女子なども、再びこのNew Power School市場拡大の過程の中で脚光を浴びています。

★工学院の経営陣がビジョンを掲げ、田中歩先生をはじめとする先生方がワンチームになって、生徒と一緒にNew Power School市場をつくってきた動きが、ウネリを生み出したわけです。

★同校の高3の仲野さんや郷野さんと対話して、たしかに、彼ら高3生が、工学院の新しい歴史のページを描いたと同時に、彼らは意識していないかもしれませんが、多様な尺度で才能をエンパワーする成長の基準(思考コード)が生かされるNew Power School市場づくりに貢献したのです。

★御三家ピラミッド市場が生み出してきた、あるいはこの市場を支える日本社会。この社会が変わることは時代の良心の野望です。その声に耳を傾けて、それぞれがアクションを起こしているNew Power School市場。

★しかしながら、歴史というのは、デストピアエネルギーとユートピアエネルギのぶつかり合いが生み出す化学反応の軌跡ですから、タフにNew Power School市場を広げる覚悟が必要なのだと田中歩先生は語ります。

★そのための構想をいろいろ対話しました。4月以降の田中歩先生のさらなる活躍をご期待ください。

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2021年2月17日 (水)

新しい教育社会(28)制度的変革より、1人ひとりの魂から

★40年前に、東京カテドラルで、マザー・テレサを目の前にしました。4000人が訪れていたので、ほんの一瞬でしたが、インパクトはありました。それから私の魂は紆余曲折、迷路と眩暈の旅の日々でした。今もたぶんそうだと思います。世俗にまみれ、とてもマザー・テレサに合わせる顔はありません。しかし、ここ10年は、すばらしい人々に出会い、支えられながら生きている実感を得ながら、何をしようかと未だに歩きながら考えいます。

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★このままではいけないと仲間と共にトランスフォーメンションを合言葉に行動してきました。それは今も変わりありません。しかし、最近、写真の本の翻訳者であるシスター渡辺の次の言葉に行き着いたなあと強く感じます。

なぜ政府に働きかけて社会変革を推進しないのかという問いかけに、マザーは静かに答える。「私は福祉活動をしているのではありません。私にとって大切なのは、群衆としての人々ではなく、個々の魂なのです」

「マザー・テレサ 愛と祈りのことば」 翻訳 渡辺和子 (PHP文庫) (Kindle の位置No.46-48).  

★制度改革ではなく、1人ひとりの出会いの中で、互いのタレントを顕在化する対話こそ、トランスフォーメンションが生まれるのだと。十牛図の十番目の境地なのだと、これぞマインドフルネスなのだと。

★しかし、マザーはきっと言うのでしょうね。トランスフォームを目的とするのではなく、1人ひとりの魂に集中しなさいと。

★まだまだ、旅は続きそうです。

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新しい教育社会(27)グレート・トランスフォーメーション 神崎先生と対話

★ポスト・コロナ時代の変化については、グレート・リセットとかグレート・リカバリーとか呼ばれています。すでに、カール・ポランニーが70年前に書いた「大転換」のウネリが、いよいよ大きくなってきたということでしょうか。19世紀に世界に広まった市場経済の混沌とした様相を収拾するデストピアストーリーが世界大戦へ導き、それを逆転させるポジティブな世界へ導くために複合社会が生まれてくるという、ざっくりですがシナリオです。

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★しかしながら、その複合社会についてポランニー自身が論じたわけではなさそうです。その後、多くの人々が論じたのでしょうが、現実社会は欲望の資本主義が拡大してしまいました。今年の慶応義塾大学の経済学部の入試問題の1つである小論文では、岩井克人さんの著書「21世紀の資本主義論」から課題文が引用され、支配関係がないのに、非対称的な格差が生まれるメカニズムについて考える問題が出題されていました。

★岩井克人さんのいうように英語という世界言語と基軸通貨体制の織りなすメカニズムは、複合社会の在り方の一つの答えなのかもしれません。

★しかしながら、それは、確かにSDGsで克服しようとしている多様な問題を生み出しています。その問題を決定的に明るみに出したのが、今回のパンデミックでもありましょう。

★中学入試の国語の問題で、栄光学園が、藤原辰史さんの文章を課題文として使っていましたが、藤原さんは、あの有名な「パンデミックを生きる指針ー歴史研究のアプローチ」を書きました。岩波のサイトのB面の岩波新書でアップされたとたん、アクセスが半端ないと話題を呼んでいました。

★その文章の中で、武漢の作家の方方(ファンファン)さんの文章も引用されていました。文明国家の基準は弱者に接する態度で決まるという箇所です。

★どうやら、社会は、この方向に大転換する時がやってきたということでしょう。

★そんな話を神崎先生と対話しながら、自分たちなりにそのグレート・トランスフォーメンションの作り方に挑戦しようとZoomでまたまた日をまたいで語りました。

★私たちは、制度論的アプローチではなく、現状の市場経済が、交換の正義の背景に隠している配分の不正義を正義に変換する行動を通してそれを成し遂げようと。しかし、この動きは、広がれば、制度の体質改善をうながします。

★かつてなら、このような行動は、砂漠に水をまくような話でしたが、SNSの時代、想像以上に拡大する予感がします。1人ひとりの行動が大切なのです。

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2021年2月15日 (月)

2022年に向けて動き出した私立学校(02)対話のシステムをきちんととらえるワークショップ言語のウネリ

★新学習指導要領で、「対話的・主体的で深い学び」が導入されようとしています。これは大変よいことです。今まで導入されてこなかったことが不思議です。なぜなら民主主義的国家なら、この対話や主体的ということはとても大切です。言論の自由だとか、その自由が保障されているからこそ主体的になれるわけで、制限されることなく深く思考できる自由が保障されるわけですから。そういう意味で、ようやく民主主義的な国家が熟してきたということでしょうか。

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★ところが、実際はなかなかそうはうまくいかないですね。世界の国々で民主国家の人口のシェアはイギリスのザ・エコノミストの調べによると48%だというのです。しかも、完全民主主義となると4%だというのです。もちろん、これはきちんと調べる必要がありますが、もしそうだとすると、なんとかしなくてはならないでしょう。

★しかしながら、民主主義の崩壊なんて言葉も叫ばれる昨今です。これも調べなければなりませんが、民主主義を形づくることは生半なことではないということを示唆していると考えるとよいですね。

★すると、やはり「対話」とは何かは重要です。対話が民主主義的価値を持続可能にするにはいかに可能かということです。小1から高3まで1200万人の生徒がいます。シンガポールやフィンランドの人口の倍いるわけです。

★この世代が教育によって民主主義を学び実装するならば、民主主義は守れるでしょう。

★では、その対話とは?対話というのは、「知識」「理解」「論理」「批判」「創造」という認知システムを自然体験の中で身につけながら、そのシステムを身体や感情などの人間全体にかかわることに結びつけていく過程です。

★それだけではなく、その経験の中で気づいたことを探究し、新しいアイデアを顕在化し、実現していくコミットメントをしていくことです。

★これらの多様なアプローチを一つに結びつけていく言語が述語論理で、ストーリーの構造やアナロジーの構造、メタファーの構造などの言語が活用されます。

★いったい何を言っているのかと思うかもしれません。こういうことをすべて包括して実践的に行うのが、ワークショップ言語です。今この対話の本質を哲学や社会学や文化人類学など学問的にアプローチするだけではなく、ワークショップ言語という新しい言語で学問をショートカットして実装してしまう動きがでてきています。

★学問的アプローチは必要です。しかし、すべてのグローバル市民が身につけるのは現実的ではありません。1200万人がみな身につけるためにもワークショップ言語の開発が必要だというウネリがいま生まれています。

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2021年2月14日 (日)

2021年中学入試問題のおもしろさ(02)桐朋女子の入試問題で多様性と寛容性が枠を超える力を生み出す。

★桐朋女子の広報担当の吉川先生に、今年の入試問題一式を頂きました。ありがとうございました。封を開けるや、あまりの面白さに没入してしまいました。桐朋女子を受験する生徒は、受験勉強というより、好奇心を旺盛にし、思索の道を歩んでいく感覚で、学ぶコトが楽しいと感じるはずです。自分なりの学び方、自分なりの解答と桐朋女子の先生方の考え方がマッチングするかどうか、考えを深めていくわけです。

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★マッチングといっても、桐朋女子の教師がレールを敷いているわけではないのです。自分で敷くことを望みながらも、独りよがりな道を歩まないように見守るわけです。口頭試問はまさにその象徴的入試です。ともあれ、その先生方の学び方とマッチングするかどうかということです。

★正解はないけれど、多様性を大事にしているわけです。ですから、日本にいるいろいろな国からきて生活している人々の資料をきちんと分析して、共に生きようとするとき、どんな問題があるのか、ファクトを分析し、解決するための自分なりのオピニオンを持つことを求める問いを出題しています。

★また口頭試問では、納豆菌の出来るプロセスの仮説を立てるため、多角的な実験でシミュレーションする対話も行われるのです。ここでは、科学的な仮説という推理の思考力と必要十分条件をカテゴライズしていく述語論理という数学的思考力も求められます。ちょっと難しいですが、口頭試問のための丁寧な動画が公開されていますから、ご安心ください。

★仮説と述語論理は、実は正解があると思っている人が多いですが、突き詰めると矛盾が生まれ、そのたびに解決していくという批判的で創造的な思考力が必要です。

★そんな骨太だけれど、自分の考えをオープンに発表できる心理的安心安全をマインドセットする入試にチャレンジすることは、いわゆる普通の受験勉強とは違いますね。

★野田醤油が成立する理由を地政学的に洞察する問題も超面白かったですね。実はこの問題は、鐘ヶ淵にカネボウが誕生した理由を考えるときと同じ地政学的コンセプトレンズをつくるとできます。このカネボウ問題は、開成も出しているんですね。

★地理という学びは、自然と政治と経済と文化などの統合体のコンセプトレンズをつくる学びです。暗記教科なんかではないんですね。

★桐朋女子の入試問題は、ファクト分析とオピニオン発信だけではなく、認識と感性と身体と世界を統合するコンセプトレンズを創りなさいという問題です。学びの根本に立ち還るとても重要な問題です。

★もしかしたら何を言っているかわからないと言われるかもしれません。それは、ファクトという知識に着目した学びを重視しているので、オピニオン発信やコンセプト創発の学びに慣れていないだけだと思います。

★入試問題は学校の顔ですから、桐朋女子のカリキュラムや授業も当然そうなっています。だから、卒業後、大学に進み、社会に出たときに、ジェンダー不平等をはじめとするいろいろな格差を解決するグローバルリーダーが輩出されるわけですね。桐朋女子のトランジションモデルに日本の教育は学ぶとよいと思います。

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2021年中学入試問題のおもしろさ(01)JGの社会で歴史のリテラシーレンズをつくる

★竪穴式住居といえば、縄文時代を思い出します。しかし、平安時代まで作られていたようです。いや現在だってホームレスの段ボール住居があります。この竪穴式住居について、今年のJGの社会ではわざわざ平安時代の竪穴式住居の絵を提示します。

★そして、さりがなく同じ平安期と人々のくらし重なっている室町の町家の様子の絵を併置します。

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★建物のつくり方の変化を図を見て考える問題ですが、それだと縄文時代の竪穴式住居の絵を提示すればよかったのです。もちろん、解答は、「大鋸という道具にによって木材の加工ができるようになり、竪穴住居から、壁や屋根も木でつくる木造家屋に変化した」というような、絵にかいてあるファクトを転写すればよいのでしょうが、JGの先生がなぜこのような問題を出題しようとしたかを推測すると実に興味深いわけです。

★1つは、時代の変革期に現れる生産道具というテクノロジーの誕生を見る視点は、歴史のリテラシーに欠かせないレンズです。

★それから、地べたに住まいをたてていたのが、床をしっかりとつくってその上に家屋を立てるようになるのとでは、大きな違いがあります。そのような変わり目に気づくことが大事なわけです。すなわち、自然から人間が離脱していく契機であることを鋭く見抜くもう一つの歴史のリテラシーのレンズがここにはあるからです。そして、これもまたテクノロジーにかかわるわけですが。

★この自然から離脱するギャップの蓄積こそ、SDGsで問題となっている多様な格差の出発点でもあります。

★だからこそ、今再び、段ボールハウスの見直しや縄文文化やそれ以前の狩猟採集経済の見直しがされているのです。JGの先生方は、当然そのようなものの見方感じ方を有しているというわけです。

★入試問題は、学校の顔でありますが、その顔とは、教師の見識の深さの違いも反映します。

★室町時代から、日本の「住まう」という感覚が生まれているのでしょうが、この日本の建築の感覚が、っ九鬼周造を介して、ハイデガーに影響を与えてしまうあたりはなかなかスリリングです。

★それから、岡倉天心を介して20世紀の3大建築家の1人フランク・ロイド・ライトにも影響を与えます。

★JGの中学入試は、そんな哲学や建築思想に思いを馳せる入試問題であるということは、JGの先生方の見識のパースペクティブがいかに広いかを物語っているのでしょう。

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2021年2月13日 (土)

2022年に向けて動き出し私立学校(01)聖学院 ワークショップ言語という新しい言葉を使って

★聖学院は、中学入試と高校入試を終えたばかりだというのに、すでに次のステージに動き始めました。さすがです。こういう動きがとれるというのは、先生方にIN/OUTシートという「ワークショップ言語」が共有されているからです。

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★「ワークショップ言語」という新しい呼び方を思いついたのは、写真の書「今日から使えるワークショップのアイデア帳 会社でも学校でもアレンジ自在な30パターン」 2020/4/13 ワークショップ探検部 (著), 松場 俊夫 (著), 広江 朋紀 (著), 東 嗣了 (著), 児浦 良裕 (著)」の著の1人児浦先生(聖学院広報部長・国際教育部長・21教育企画部長)と対話しているときのことです。

★今日もそうでした。Zoomで対話しているときに、お互いに、IN/OUTシートを活用してストーリーを紡ぎ出す共同作業をしているわけです。この共通体験は、まさにこのワークシートがワークショップ言語として共有されているからだと実感したのです。

★昨年度→今年→来年→再来年のストーリをIN/OUTで情報をシンプルに整理しながら対話していきます。すると、このINとOUTの間に生まれる諸関係がシステムシンキング的には合理的にいかなかたところが見えてきます。その場の弱点を見出すだけではなく、その弱点の解決策をINしたら、どんなシステムが生まれ、OUTはどうなるいかが見えてきます。OUTがポジティブだったり、ネガティブだったりになりますから、ここは調整しながらシステムシンキングのアップデートをしていくわけです。

★このワークショップ言語を活用しながらの対話は、見通しを立てながら、しかし瞬間的にリファインして再構築していくスリリングな対話になるので、極めて生産的・創造的です。

★児浦先生と話していると、2022年までのストーリーが見えてきます。今年度もパンデミックという予測不能な要因がINPUTされましたが、それでも乗り切ってきたわけですが、それがこのワークショップ言語を活用して話していくと、予測不能な事態を乗り切る方法が一般化されて、応用可能なカタチとしてOUTPUTされるわけです。

★これが聖学院の自信となり有形無形の財産となっていきます。ポジティブストーリーが現実化していくわけですね。

★このようにワークショップ言語はリフレクション→アイデア→実現化を丸ごと循環させる新しい思考言語です。ワークショップ言語を使うことで、どんどん未来がいまここで実効性の高いアイデアになっていきます。

★ただデータを並べ、個々に気づいたことを述べ合っていただけでは、短時間で解決策をシステマティックに組み立てるのは時間がかかります。

★しかし、児浦先生と共同執筆者のワークショップ言語を活用すれば、組み立てながら分析も創造なども一石多鳥にできてしまいます。

★児浦先生は数学の教師でもあります。創意工夫すれば、瞬間的に解決する問題も、一つ一つ順番に計算していくと、時間もかかるし、途中で飽きてしまうということをよくよく知っています。世界をつくるときは、このショートカットをする構造言語が必要です。

★構造言語というと学問的過ぎてわかりにくいのですが、それがワークショップ言語となると、イメージもわきやすく、アイデアもからめとられるように引き出されてきます。

★今年の聖学院の成功理由とさらにアップデートした未来を、3/6(土) オンライン学校説明会ではやくも堪能できます。なんと予約は2021年2月6日(土)から始まっていました。

★なお、私たちがXSchoolコミュニティをゆるやかに結成し、ワークショップ言語を共有しながら、New Power School市場をもっと大きくしようと思っています。ワークショップ言語というアイデア生成言語を使って。乞うご期待!詳しくは新年度にはいって公開します。

★そうそう、一つ大事なことを忘れていました。ワークショップ言語は、チーミングを豊かに生み出していく言語です。

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GLICC Weekly EDU(22) 2021年中学入試のテーマは「思索」と「弱者に接する態度」

★昨日、鈴木裕之さんとGLICC Weekly EDU で対話しました。このシリーズも17回め、今回のトピクは「2021年中学入試問題分析2-首都圏難関中の国語と社会の出題を中心に、新時代を切り拓く思考力について考える」です。

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★入試問題が変わることで、中学入試市場も転換していく流れについて展望しつつ、今年の入試問題のディテールに進んでいきました。ただ、土台となるテーマは、2つでした。2つと言ってもコインの表裏で、一体ですが。

★その1つは、麻布学園の校長平秀明先生が、一回目の緊急事態宣言発令のときに、在校生向けて発信した「諸君へ」というメッセージにあります。最後のパラグラフを引用させていただきます。名文です。この中にある「思索」こそ、今年の麻布の入試問題の土台となるテーマだったし、多くの学校とも同期していました。

「自宅での勉学はふだん学校で受ける授業とは違い、自分の興味関心を広げたり、日頃読めなかった本を読んだり、弱点を鍛え直したり、また、関心のある事がらを深く追究する良い機会ともなります。英国の生んだ偉大な科学者アイザック・ニュートンは、学生時代にペストの流行で大学が閉鎖となり、ロンドンから離れた郊外でゆとりある思索のなかで万有引力の法則を発見したと言われています。
諸君に与えられたこの時間をぜひ有意義に過ごしてほしいと思います。」

★また、もう一つは、B面の岩波新書で発信された京都大学の藤原辰史准教授の文章です。それは「パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」で、アップされて1週間で30万アクセスもあったそうです。

★多くの学校の先生方も共有した歴史的文章ですね。私も、Facebookでシェアしました。

★その中で、武漢の作家方方さんの文章を引用しているところがあります。一つの国が文明国家であるかどうかは、高層ビルだとか、車がたくさん走っているとか、軍事力が優れているとか、テクノロジーが進んでいるとか、派手なイベントを開く能力があるとか、そんなお金や物質的な豊かさではない、弱者に接する態度にこそあるのだという趣旨の文章でした。

★栄光学園の国語で、藤原さんの他の著書から文章が出題されていました。食に関するものですが、麻布の社会と通底するものでした。

★このように直接間接「弱者への態度」に思いめぐらす「思索」問題を例に挙げて鈴木さんと対話しました。ぜひご視聴いただければと思います

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2021年2月12日 (金)

2021年中学入試情報(68)桐朋女子 クリエイティブクラスを輩出するNew Power School

★政治家の失言非難にとどまらず、わたしたちの国のジェンダー不平等問題に対する批判的議論が巻き起こる時代がやってきました。その不平等を乗り越える創造的才能者を輩出している女子校の1つが桐朋女子です。その政治家の進退問題で騒然となっている日本ですが、世界は今回のパンデミックで、痛いほどわかった近代文明のマイナスの部分をグレートリセットしようとダボス会議がバーチャルスペースで行われています。

★その主催者世界経済フォーラムの日本代表が、同校のOG江田麻季子さんです。日本の動きと世界の動きの差に驚きますが、同時に桐朋女子は、そんな日本をつくってきた教育を突き抜けるNew Power Schoolであることを改めて映し出しているといえましょう。

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(写真は、同校サイトに掲載されているデジタルパンフレットから)

★首都圏模試センター調べによると、桐朋女子の中学入試の出願総数は、前年対比で97.8%でした。しかし、実受験者の前年対比は100.5%なのです。また広報担当の吉川先生からは、手続き率も昨年より高いというメッセージを頂きました。

★出願総数は、今回のパンデミックで併願は慎重な構えだったので、首都圏ののべ受験者数はたしかに減りました。しかし、実受験者は減らなかったのです。ですから、その流れに桐朋女子も呼応しているわけです。

★もちろん、増えたところ減ったところは昨年同様あるわけですから、桐朋女子の人気度は持続可能以上ということでしょう。

★これは日本の教育にとってとてもよいことではないでしょうか。形式的平等はもちろん大事なのですが、やはり実質的平等はいかにしたら可能かを議論し解決していく時代です。そのときに、同校の在校生及びOGが活躍するのは予想に難くないからです。今後もますます期待したいですね。

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東京の私立高校(07)聖学院 初めてのグローバルイノベーションクラス入試

★昨日11日(木)、聖学院は初めて「グローバルイノベーションクラス(GIC)」の入学試験を行いました。試験科目は英語と思考力そして面接です。英語と面接はともかく、思考力入試は対策のしようがないので、ファーストペンギンになる勇気のある生徒がチャレンジしました。その模様は同校サイトでアップされています。ぜひご覧ください

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(写真は、聖学院のサイトから)

★この思考力入試は、しかしながら、ふだんの興味と関心を広め深める学びを中学3年間行っていたならば、それがそのまま生かされるので、知識は不要です。

★だいいち、iPadが用意されているので、わからない知識などは調べることができます。

★では、いったい何を診・観る問いなのでしょう。それは事実だけを集積するのではなく、事実のコンセプトや事実の背景にある新しいアイデアを見ることができるかどうかなのです。

★エッ!そんなの簡単じゃないと思うかもしれません。そうです。そのような才能があれば、簡単です。それからオープンマインドを有していれば、その場で潜在的可能性を顕在化することになるかもしれません。

★つまり、具体的なケースを一般化したり、その法則を見出したりする力があるのか、その力をその場で生み出すことができるのか、創造的才能やその潜在的可能性をみる問いのデザインがされているわけです。

★さらに、その見出したものを全く別の素材や事柄に適用できるかどうかが問われます。アイデアを具体的なカタチにできるかどうかまで診るのです。とても、高次な思考力が必要で、この思考力をトレーニングをしていない場合、この高次思考力のプロセスの話は、何を言っているのか理解不能でしょう。

★これが、日本の教育の限界です。聖学院はこの限界を突き抜けています。そして、今、聖学院中学生でない高校受験生にもこの限界を共に超える挑戦をしようよと呼びかけているのです。

★今回聖学院にチャレンジした高校受験生は、直観的かもしれませんが、この限界を超える学びへ興味と関心を持ったと言いうことなのです。

★今の高校入試のシステムは、必ずしも才能者にはマッチングしているとは限りません。知識から積み上げていく学びが不得意な生徒も13%、つまり東京に約9000人はいるはずなのです。この9000人が才能を爆発させる居場所の1つとして、聖学院のGICはあります。

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2021年2月11日 (木)

東京エリア 2021年から2025年にかけて中学入試と高校入試で変わること グローバル革命×テクノロジー革命×エネルギー革命×身体革命×精神革命 革命のごった煮時代到来

東京都が公開している小学1年生と中学校3年生の数の推計推移グラフは重要な情報です。今回のパンデミックによって、スマートシティ化は加速します。私立中学入試と私立高校入試は、この動きに対応するというより、スマートシティには教育と公衆衛生とSDGsとICTがコアになりますから、むしろ牽引する新しいアイデアやプロジェクトが次々と私立中学と私立高校から生まれてくるでしょう。

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★この東京のスマートシティ化は、自然と社会と精神のサーキュレーショングローバル市民社会ですから、たんにサーキュレーションエコノミーとも色合いが異なります。この展開は、しかし人口増がある程度必要です。

★2025年までは、中学も高校もしばらく人口が増えますから、しっかりとスマートシティ教育を構築する機会到来です。

★今年の中学入試は、コロナ禍でしたが東京は受験人口は若干増えるでしょう。この増加傾向は2025年までは続きます。しかし、小学校1生人口が2023年から減少傾向に入りますから、2025年以降の中学入試の受験人口は増加するとは限りません。もちろん、スマートシティ化教育が成立していれば、私立に集まるでしょうが。

★高校入試は、2020年中学3年生人口は減少しましたから、今回は苦戦したところもあります。しかし、苦戦した学校の中には、2025年までの変化を予想して、1クラス分の画期的な教育デザインをしています。聖学院やかえつ有明のように中学が人気ですから、現状高校入試において生徒獲得に成功する必要はないのです。これからのための実験を開始しています。

★スマートシティ化はスモール・イズ・ビゲストクリエイティビティという話になりますから、Zoomなどを使い、グローバル市民活動をしつつ、イノベーティブ農法を実験します。電力の内製化も始まるでしょう。

★つまり、グローバル×英語×イノベーティブ×クリエイティブ×自然×マインドというコンパクトな教育がコアになる街づくりにつながっていきます。スマートシティは、スマート教育やスマート医療、スマート産業などを循環させるようになります。化石燃料はなるべく使わないようになっていきます。

★それには社会実装された知恵やスキルが重要ですね。文系理系を問わす、言語と数学とテクノロジーと思考力はベーシックな学びになります。

★そのうえで、グローバル革命とテクノロジー革命とエネルギー革命=農業革命と身体革命と精神革命の一体となったクリエティブリーダーが必要になります。この意味でのクリエイティブリーダーの生まれる拠点づくりに前のめりの私立学校がサバイブすることになるでしょう。

★要するに、革命のごった煮時代の到来なわけです。

★中学入試では、それがはっきりしてきたし、高校入試では受験生はまだまだ気づいていませんが、受験生増の続いている間に、気づく受験生もまた増えてくるでしょう。様々な変化の流れが合流して沸点に達する沸騰新時代を創り出すのは、まさにZ世代ということでしょう。

 

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東京の私立高校(06)かえつ有明 心理的安心安全のある学校の意義を捉え返すことの重要性

★かえつ有明の高校入試は、1クラス分だけです。今年2月3日東京都が公表した「令和3年度 都内私立高等学校入学応募者状況【一般入試・中間】一覧」を見ると、倍率は0.5ですから、そう難しくないと錯覚すると思います。しかし、高校入試は、1月に推薦入試があるということとかえつ有明の場合は、中高一貫校で、この1クラスに中学から入ってくる生徒がいるのです。したがって、決して易しくないのです。

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★むしろ、一般入試で倍率が0.5という数字は、かえつ有明のその1クラスを敬遠している高校受験生が多いというコトを象徴しているとみなした方がよいでしょう。というのも、この1クラスの名称はプロジェクト科となっていて、端的に言うと教師は教えない授業をするわけです。

★教えない授業というのは、毎日が自習という意味ではないのです。自分でプランをたて、学びの活動を実践し、そのプランをリフレ―ムしながらアップデートを楽しみながら探究していくというクラスです。

★今では、どのクラスもそうなっているし、中学が大人気ですから、高校入試をしなくても、経営的には大丈夫なのですが、教育とは経営のためにおこなっているわけではないのです。0.5が意味するのは、まだまだ多くの生徒が、このようなプロジェクトに参加することを恐れているわけです。

★しかし、そんな中でチャレンジをしようという生徒の居場所を高校からも開放しておこうという意図がかえつ有明にはあります。

★この恐れから賢い失敗を受け入れる心理的安心安全の環境を創っているかえつ有明の未来の世界を生み出すのに重要な組織です。

★同校の場合は、プロジェクトですから、心理的安心安全な場をもちろん、先生方がつくりますが、この場を生徒自身が自ら創れるマインド、シンキング、スキルを身につけていきます。

★大学や社会に出たときに、NVC=Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーションを生み出すリーダーシップを発揮するには、NVCベースの恐れのない組織をつくるチーミングのマインドとスキルが必要です。

★戦略的プロジェクトとチーミングプロジェクトの両方を使い分けられるリーダーシップをそれぞれが自分で、もちろん仲間と支え合いながら身につけていきます。

★NVCではなく、VCを発揮しているとどんなにえらい政治家でも世界から批判を受ける時代です。恐れのない組織、つまり心理的安心安全を生み出せるチ―ミングのマインド、シンキング、スキルがシェアされる時代がやってきました。

在校生自身が日本語と英語で書いているエッセイのページ「Idea Canvas」を同校はサイトで紹介しています。自分の考えをリフレクションしアップデートしていく、つまり自己変容できる心理的安心安全が土台にあることが了解できます。

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東京の私立高校(05)品川翔英 生徒自身が語る歴史を創る誇り

★品川翔英の今年の高校入試は、共学化、校名変更、カリキュラム改革の2年目です。1期生の活躍が話題を呼んで、それも相まって志願者を増やしました。東京都が今年2月3日に公表した一般入試の中間発表は次のようになています。

        定員 応募者数 倍率 
理数選抜コース  15  44  2.9
国際教養コース  15  52  3.5
特別進学コース  60  380  6.3
総合進学コース  60  748  12.5
総数     150  1224  8.2
令和3年度 都内私立高等学校入学応募者状況【一般入試・中間】一覧 東京都2021年2月3日公表

★3人の高1生、つまり改革1期生にインタビューをする機会を頂きましたが、みな口をそろえて、自分次第で自分が変われる学校で、自分たちで学校の歴史を創っていくことができると誇りを持って語ります。というのも、生徒会活動から新しいサークルまで自分たちで発案して創るプロジェクト型の取り組みが可能だからです。もちろん、自由には責任が伴います。根拠や正当性や信頼性を証明するプロセスを踏む必要があります。

★しかし、そのプロセスこそが、プロジェクトベースになり、トランジションモデルを構築することになるでしょう。

★高校入試で、偏差値が50~60くらいだと、公立の中学時代は自分のやりたいことを思い切り表現できない時代を送っている場合が多いかもしれません。まずは高校に行くことだが優先するのは当然だからです。

★また、アクティブラーニングだとかPBLは、高校入試を突破しなくてはならないので、なかなか難しいでしょう。今回のパンデミックで、オンライン授業の広がりがなかなか難しかった公立中学の現状をみれば、それは明らかです。

★もちろん、公立もオンライン授業を導入し、導入することによって授業も変わります。新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」が掲げられているからそうなるでしょう。

★大学共通テストも、考える構えが要求されるようにもなりました。しかしながら、この新しい学びは、評価が難しく、テキストやマテリアルは共通テストのようになりますが、だからといってアクティブラーニングをやる必要があるのかというと、現場では必ずしもそうではないでしょう。しばらく時間がかかります。

★偏差値が50~60くらいの生徒は、未来がどうなっていくのかを自ら学び、偏差値競争ではなく、品川翔英のように自分のやりたいことをやり自分の進路実現を叶えられる学校を選ぶことができれば、自己肯定感をポジティブに維持できるでしょう。偏差値競争は人との比較です。人生はそればかりやっていると自らを見失います。自己喪失こそネガティブな世界を自分の中に誘い込みます。

★自らを立ち上げるには、どうしたらよいか。学校の先生の情報とSNSやサイト情報を正しく活用しながら、自ら情報を多角的に獲得することも大切でしょう。そして何より先輩の声に耳を傾けることでしょう。

★明日の世界は私たちがつくるのだという意志をもちワクワクできる学校を選ぶ気持ちが大事です。そんな未来のことではなく、目の前のことをちゃんとしろよと声をかけられたら、すぐに従ったり、すぐにはねのけるのではなく、まず自分の声に耳を傾けましょう。たしかに、夢だけ追っているのか、いやそうではなく、いまここで成果を出す努力をしながら未来を見ているのか。相手の言葉をはねのけるかどうか判断する前に、自分の声に耳を傾ける内省(リフレクション)のトレーニングは欠かせません。

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2021年2月10日 (水)

東京の私立高校(04)八雲学園は生徒1人ひとりの学びのニーズをつかみとる。それゆ限界を超えられる。

★東京の私立高校の一般入試は、偏差値が55~60の生徒だと、推薦入試と違い、ある意味現実的で堅実な受験生がアプローチするケースが多くなりがちです。ですから、特進と進学コースだと、進学コースの方に生徒が集まるし、インターコースなどを設定すると敬遠するわけです。

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(八雲の高校受験生に対する感染防止完全対策とおもてなしの心が心理的安心安全を生み出しています)

★八雲もハードルが高いのではないかと敬遠されている高校かもしれません。RS(ラウンドスクエア)という世界の180校のエスタブリッシュスクールのコミュニティの加盟校ですから、偏差値が55~60では、歯が立たないのではないかと思われるかもしれません。

★それよりも、しっかり勉強してMARCH以上に行くことができるのが最優先だと。

★しかしながら、その実力があれば、3年間でやりたいと思うことにいくらでも挑戦できます。なぜなら、八雲の先生方は、生徒1人ひとりの学習の仕方やコンディションに応じて、最大の伸びを引き出すコーチぞろいです。偏差値55もあれば、全く問題はありません。

★大事なことは、1人で学ぶのではなく、先生方と仲間と一緒に学ぶ多くの経験です。この多様な経験が、あなたの心に火をつけます。内側から燃えるエネルギーが生まれれば偏差値など全く関係ありません。1人で受験勉強するようなイメージでいると、先が見えませんが、先生と仲間と取り組めば、その力が自分の内側にみなぎるものなのです。その経験はやってみなければわからないというのがもどかしいですが、八雲のOGが次のようなエールを贈ってくれています。

★ハードルが高いと思われているRSでの体験が、ぐっと身近になります。そして、RSだけではなく、多くの経験ができます。自分の心を覚醒させる体験に必ず出逢えるでしょう。まずは、OG奈良さんのエールをお読みください。勇気が湧いてきますよ。自分を変えることができるでしょう。

Round Squareを振り返る 2019年度卒業 奈良百合香


 今年の5月、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が白人警察官による行き過ぎた拘束で命を落とした事件をきっかけに、全米に抗議デモが広がるという出来事があった。いわゆるBLM運動(Black Lives Matter)だ。当時の状況を私はTwitterで見て知ったのだが、遠い国の出来事では片づけられず、デモの動向を注視していた。そんな中で、日本には差別はないと主張する人や、この運動の背景に無関心な人、そもそも関係ないと考えている人が少なくなかったことは記憶に新しい。無理もないだろう。

 では私の抱いた憤りや問題意識は一体どこから来たのか?出た答えがRound Squareであった。一つの空間に世界中のあらゆる地域から学生が集まり、寒いカナダの空の下で同じ時間を共有したあの1週間の経験が私に与えたものの大きさは計り知れない。地球は丸い、人は皆同じ仲間というのは理想論だ。一堂に会したからすぐに打ち解けられるという訳ではなかった。お互い生まれた国も食べている物も着ている服も言語も違う。最初はぎこちなく、視線も温かいとは言えなかった。緊張もしたし、心細かった。

 それでも互いのバックグラウンドを話し、同じアクテビティをすることで、少しずつ距離が縮まった。学校で日本語を学んでいるといい、「ヤバイ!」を連呼してくれた中国人の男の子のことも、名前を覚えてくれたケイトスクールの女の子(彼女は黒人だった)も、一緒にホームステイをしたインド人のグノアのことも鮮明に覚えている。

 皆全然違って、同じ10代の学生だった。世界のどこか日本の外で何か悲しいことが起きた時、あの日出会ったあの子たちはきっと声を上げている。現に彼らは自国の歴史を知っていて、政治を学び、選挙を考え、多様な人種の友達を持っていた。私はどうだっただろうか?BLM運動が起きた時、何もできない自分が猛烈に不甲斐なかった。

 脳裏によぎったのは、RSで出会った同世代の顔だった。実際RSの協定校であるケイトスクールから3年前に留学に来たシャンテルは、SNSを通じてこの問題を知ってもらいたいと訴えていた。RSで得たものは、真のグローバルとは何かという問いの小さな答えだったと思っている。世界の諸問題を無関係で異質なものとして見るのではなく、ひとりひとり明確な顔を持った誰かがそこに当事者として今この瞬間も存在していることに想像力を巡らせる、そうした感覚をわずかだとしても与えてくれた、かけがえのない1週間だった。

★こんなかけがえのない経験が出来る八雲。偏差値の限界を超えることができるはずです。

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東京の私立高校(03)聖パウロ学園の数学の<対話>

★聖パウロ学園は、教育の実践のコアが<対話>というのは、学校説明会で広報部長の望月先生が明快に語ります。MFO(Men for Others)が理念で、これは、カトリックの精神を超えた多様性にも貫かれている世界精神だとニューヨークの国連本部は、そのギャラリーにノーマンロックウェルの絵を掲げて宣言しています。

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(聖パウロの数学科の先生方。左から伊藤先生、佐藤先生、松本先生)

★対話とMFOの間をいったりきたりしながら、授業、行事、部活、キャリアアッププロジェクトなど「経験」が、生徒のGRITを育てます。グローバルコースを主に担当している英語科主任の大久保先生は、入学時はパウロの生徒はいわゆる偏差値というものはそう高くはありませんが、3年間でかなり伸びます。

★もちろん、英語力は伸びますが、何より大事なのは人間の存在力ですと。今学校の課題としては、偏差値でいうと55までは伸ばせる手ごたえを共有していますから、60をどう乗り越えられるのかという挑戦ですと。

★偏差値はわかりやすいからそう言っているだけで、自分で考えて自分のやりたいことを見据えたら、模擬試験の成績も上がります。ただ、それが60以上を超えるには、マインドセットとコーチングベースのトレーニングが大事ですと語ります。

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★さらに、幸い、パウロは少人数なので、個別にコーチできる環境にあります。あらゆる時間、いたるところで面談という対話を先生方はやっています。毎時間生徒も先生をつかまえていますと。

★パウロを訪れると、実際にそうなのですが、さらに面白いのは、数学の先生方との対話です。

★大学入学共通テストの分析をするというので、お邪魔しました。分析というので、問題の解法のカテゴリー分けをするのかと思ったら、それはすでに共有していて、共通テストの本質的な特徴は何か、センターからどう変わったのかという対話でした。

★特に数ⅠAの対話では、数式による論理的思考と述語論理的つまり集合論的な思考の両方を想定できると伊藤先生が語っていたのが興味深かったですね。

★佐藤先生、松本先生もそれには同意していました。松本先生によると、数式だけで説明出来てしまうのが数学の醍醐味ですが、パウロの生徒は文系に進む生徒が多いので、すべての生徒が大学受験で数学を使うわけではないのです。しかし、数学的思考は、受験で数学を使う使わないにかかわらず必要なのですと。

★伊藤先生も、身近な現象に数学が使われていることを発見するには、やはり言葉によって数学を語れることは大切だし、もし集合論や述語論理的な数学が身に付けば、数学のものの見方考え方を学問横断的に活用できるようになります。

★受験のことだけ考えれば、そこまで考える必要はないのかもしれませんが、思考力を育てようと思ったら、言語的思考の一環として実は数学も大切なのですと。

★共通テストも数ⅠAには、そんなメッセージを感じとりましたというのです。深いですね。

★実際、伊藤先生の授業は、まずは自分が持っている道具で、問題を解かせます。しかし、計算が難しくなって途中で壁にぶつかります。その後に、どんな工夫が必要なのか生徒と一緒に考えていきます。k,x,yのkの際立たせ方は、式の変換や等値のしかた次第で、あっさりクリアできます。そのときの生徒が、目からウロコと感じるのは言うまでもありません。

★このような体験こそ、思考力を覚醒するというのですから、ますます興味深いですね。

★松本先生の授業も、高3になったときに、数学的直観が生まれるように、高1、高2では丁寧に回り道をいっしょにしています。

★ふとそれは、他の教科でも同じような授業デザインがなされているなあと気づきました。一般に、日本の高校生は、自己肯定化感が低いといわれています。聖パウロの生徒も入学時には例外ではないでしょう。パウロの先生方はそんな社会通念をはねのけるために、生徒に語り掛けるし、対話もします。自己肯定感の心理学は、現場ではそんな簡単なものではなく、丁寧なコミュニケーションが、マインドセットには欠かせません。そのことを本当によく知っています。それが、やがて、生徒が自分に自信をもち、目標を定めて、立ち臨むようになるのです。もちろん、MFOの精神を大事に。

★この体験の積み重ねこそ人生の転機を自らにうみだしていく人間の存在力でしょう。

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東京の私立高校(02)高校教育のトランジションモデルの根底<対話>

★トランジションモデルは、すでに多くの高校にあります。先生方の暗黙知としてあると言ってもよいし、生徒の暗黙知としてあると言ってもよいわけですが、対話していると、それぞれの暗黙知は個性的であると同時に普遍性と仲間性もあります。

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★この3つのペルソナがそれぞれの自分軸と称されるような方程式とかプロトタイプとかメンタルモデルとかセルフストーリーというものを形成しています。これが、協働して、何か一つの目標に向かう時、正の相乗効果を生むか、負の相乗効果を生むかによって、かかわったメンバーそれぞれのトランジションの質と力と方向に大きな影響を与えます。

★ですから、結局は、この諸関係を生み出す根底にあるのは<対話>です。

★<対話>システムは、しかし暗黙知なので、なかなかそれを顕在化できないし、できないのかもしれません。

★それゆえ、いろいろな形に転移して共有する必要があるということでしょう。

★それがカリキュラムや授業デザイン、探究プログラム、行事や部活のようなプロジェクトということです。コースやクラス分けもそうです。

★これらのケミストリーが、正の相乗効果を生みだすように、久しい間伝統が紡がれていくのです。しかし、その紡ぎ方が保守主義なのか進歩主義なのかは違います。

★わたしもそうですが、私たちは伝統と進歩主義を対立概念でとらえがちですが、伝統と破壊という対立概念と保守と進歩という対立概念を区別したほうがよいかもそいれません。

★伝統を保守すると破壊に転じ、伝統を進歩主義的に現代化すると破壊を防ぐことができるということなのかもしれません。ですから、創造的破壊というレトリックは、破壊することが目的ではなく、伝統を進歩主義によって現代化するコト、最近の言葉で言えば、アップデートするコトを示唆します。

★暗黙知はこの伝統と進歩主義の対話によって共有できます。共有した時、それを持続可能にするために顕在化するわけです。そのとき、進歩主義的には、英語やICTという言語やエンジニアのテクノロジーを活用しているのが、昨今のNew Power Schoolなのかもしれませんね。

★<対話>が根底にあるのはわかりましたが、それをどのようなシステムに転化するか。多様な創意工夫があるわけです。

★いずれにしても、創造性が溢れる対話をたくさん目撃しています。あとは、それをカタチに転化することです。ただし、転化したときにもともとの豊饒な対話を生み出している暗黙知をすべて汲み取っているわけではありません。

★それゆえ、リフレクションによって、最初のカタチのプロトタイプをリファインし続けることが必要です。このような対話の探究と形式化のリフレクション循環ができるところには、トランジションモデルがありそうです。このことは、理論物理学者のデヴィッド・ボームのいうような(量子力学的な)一貫性のある対話がトランジションモデルの根底の対話と同期しているともいえそうです。

★すでに、幾つかの学校の先生方と<対話>をしているし、最近はその高校の生徒のみなさんととも<対話>をさせていただく機会が増えてきました。このインタビューを通してみえてくるものがトランジションモデルのヒントになるでしょう。

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東京の私立高校(01)はじめに 高校教育のトランジションモデルの意味

★いよいよ東京エリアでも私立高校の一般入試がはじまります。とはいえ、同エリアの高校入試は中学入試と違い、すでに推薦入試や単願入試などが1月から始まっています。すでに日本は9月以降は大学の総合型選抜が始まっています。11月ころから中高の帰国生入試も始まりますから、半年間は、210万人強の生徒が入試というトランジション(人生の転機)に取り組んでいるわけです。

★つまり、小学校から高校まで、全国における生徒数はざっくり1200万人で、中学受験生、高校受験生、大学受験生は、これまたざっくりですが、210万人いるわけです。18%は、人生の転機として新しいステージへ挑戦するわけです。

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★さて、ここでちょっと思い巡らしてください。フィンランドやシンガポールなど教育の質が高いということで注目されている国の人口はどのくらいかということをです。600万人いかないでしょう。つまり、日本は、小学生から高校生までの生徒人口が、そのような国々の人口の倍もいるのです。

★そして、98%が高校に進学します。小中学校は義務教育ですから、ほぼ全員が進みます。つまり、毎年約1200万人の学びの場がなんらかの形で保障されているのです。

★日本という国は、もはや経済大国でもないし、英語ができないから先進諸国と生徒同士がスムーズに対話ができないので、なんとかしなければ大変だあという話もちらほら聞こえます。ICTも遅れているGIGAだあとかなっています。

★もちろん、英語もICTも重要です。でも、言語は、英語だけではないでしょう。フランス語も中国語もスペイン語もポルトガル語もインドネシア後も・・・とにかく国があるだけ、いや国があってもその中の民族の違いで言語は違い、たくさんあります。

★ICTといってもユーザー側ではなく、エンジニア側になる場合も入れると無限とも思えるテクノロジーが広がります。

★多様性とは、国が違うというだけでも宗教が違うというだけでも言語が違うというだけでも価値が違うというだけでも足りない概念です。1人の生き様にかかわるすべての側面そのものが多様で、その多様性が80億人弱存在するわけです。1人の多様性×80億人弱だけでも気が遠くなるような多様性の数です。

★時代が予測不能なだけではなく、私たち人間存在の在り方自体が予測不能です。

★しかし、この事態を私たちは意識しませんね。「氷山モデル」のコンパッショネイト・システム思考や「星の王子様」の眼に見えないものが大切だというのは、この存在の多様性を探究しようということですね。

★先ほど、210万人、つまり1200万人のうちの18%がトランジション(人生の転機)に取り組むと書きましたが、これはどうやら違うということでしょう。受験勉強を人生の転機と捉えることは、「氷山モデル」や「星の王子様」の発想から言えば、あまりに大切なものを切り捨てていますね。存在の多様性は無限です。その多様性を、限定的な教科で競うことに意味はどのくらいあるのでしょうか。

★したがって、最近わざわざ「トランジション」という言葉が使われ始めるようになったのは、人生の転機は、受験期だけの話ではなく、幼保小中高、そして大学、それから社会という存在の多様性を開花する人生丸ごとを意味するようになっているわけです。

★存在の多様性の人生は、小さい転機から大きな転機が拡散収束しながら形成されます。その形成の過程すべてをトランジションと呼ぼうというわけです。

★「氷山モデル」や「星の王子様」が大切にしているものは、要するに潜在的可能性の話ですね。その潜在的可能性は多様ですから、小さな転機の連続を自分のペースで生み出していけば、もう立派な豊かなトランジションになるはずなのです。ところが、自分のペースだけではなく、社会の受験期という締切がときどきやってきます。この自分の考えだけでは現状なんともならない事態へ遭遇した時、潜在的可能性をできるだけ開花し立ち臨むことになります。

★この受験期という社会と協働する機会を通して、大きな転機を形成するために潜在的可能性をできるだけ開花する山場をいかにしてつくるかが大切だということでしょう。今までは、受験=暗いというイメージがありましたが、それを転換するまさに転機をいかに自分で創るか。そのシステム作りがトランジションモデルです。

★受験期という向こうからやってくる事態は、しかしながらある程度予想できます。しかし、今回のパンデミックという自然の存在の多様性はまだまだ予測できないことが多いわけです。政治経済社会という多様性もそうです。

★トランジションというのは、この人間存在の多様性、自然の多様性、社会の多様性の把捉不能なほどの指数関数的多様性の数をその都度自分なりにつかみ取る連続です。その連続の過程は、自己の潜在的可能性への気づきですから、気づくたびに自己変容し、自己変容した自分が見る世界や創る世界、かかわる世界は変容します。

★この変容の質と量の度合いによって、トランジションという転機の過程の軌跡もいろいろな曲線を描くでしょう。

★いずれにしても、豊かなトランジションを描ける学びの環境をいかにつくるか。トランジションモデルをいかにつくるかです。そのモデルの中で、最も大きな跳躍台モデルが高校という時期です。1200万人がこのような豊かなトランジションを描けるならば、日本の悩みは解消されるし、それは同時に世界の悩みも解消することにつながるでしょう。問題の解決と悩みの解消は違うので、これはいずれまた考察します。

★とにかく、1200万人のためのトランジションモデルを世界に提供でいきれば、これがどのくらい質と量の両面のインパクトがあるか。そのことに私たちは気づき、トランジション形成の1つの大きな山場でもある高校教育の重要性を改めて考えていきたいと思います。

★それから、全校の私立高校のシェアは30%ですが、東京エリアの私立高校のシェアは55%です。学校数も生徒人数もほぼ55%です。公立高校の受け皿校というのが私立学校だという考え方があるエリアもあると聞き及んでいますが、東京の場合は全く違います。できうるならば、公立と私立が協働して新しいトランジションモデルを創れるといいですね。

★現状、まだまだ公立VS私立という幻想があるので、すぐにはできません。これは、学校の問題というより、日本社会全体の幻想ですね。しかし、今回のパンデミックで、そのような心の境界線は少しですが乗り越えるウネリが生まれています。SNSのイノベーションのさく裂がそれを後押しをしているということもあるかもしれません。

★いずれにしても、私立高校は、相対的に自由度が高いので、先行してトランジションモデルをつくることになるでしょう。ファーストペンギンはどの分野でも必要です。それもまた、多様な社会貢献のあり方の1つでしょう。

※「トランジション」という言葉は、中原淳先生と溝上慎一先生がいっしょに編集している「活躍する組織人の探究から大学から企業へのトランジション」(2014年 東京大学出版)から学びましたが、使っている文脈が異なってしまっていることはご了承ください。

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2021年2月 9日 (火)

2022年中学入試の展望(02)2月1日から7日間で見えるコト❷

前回「2022年中学入試の展望(01)2月1日から7日間で見えるコト」のつづき。

★このアクセスランキングをカテゴリー分けすると、中学入試の新市場のウネリと中学入試問題の転換の2つについて主に考察している記事ばかりであることがわかります。時期によっては総合型選抜関連の記事やこれから3月には大学入試関連の記事が上位にランクインしてきます。すでに何回か、本ブログで記述してきましたが、次のように新市場New Power Schoolの市場(以降「NP市場」と表記)と御三家ピラミッド市場についてまとめてみました。

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(各塾の合格者を輩出している学校の例として挙げているだけで、NP市場も御三家ピラミッド市場も、それぞれ40校ずつある。割合は、生徒数の割合、厳密にはズレがあるが、イメージとしての割合。RS市場だけは、4校しかない)

★大手塾が御三家ピラミッド市場の学校だけではなく、NP市場の学校にも合格者を出しているというのは、その塾にも、東大を頂点とするピラミッド階層構造の上位階層を狙うことを第一の目標にしている保護者だけではなく、オープンマインドで、心理的安心安全の環境を生成する教育力があり、英語教育以上のグローバル教育を行い、授業もPBL型であるというNP学校を選択するという進取の気性に富んだ保護者がいるということを示唆しています。

★かつては、SAPIXは、東大ピラミッド市場の学校を選択する保護者に偏っていましたが、学校選択は受験生・保護者の問題であるとする保護者も多くなってきたらしく、そのような保護者の中から、NP市場を選ぶということがあるということです。

★Facebookで、このような情報を発信していると、昨年あたりから共感しますという保護者からメッセージをいただくことが多くなったり、実際に実施したセミナーにまで足を運んでくれる進取の気性に富んだ保護者と出会うこともしばしばです。情報を共有していただきありがとうございます。

★いずれにしても、NP市場が首都圏中学入試の20%シェアになってきたわけです。そして、このNP市場ができることによって、今まですべてが御三家ピラミッド市場で、偏差値ランキング競争をしてきたと思われてきたのが、明快にその市場だとわかる学校群は、これもまた20%という話になってきました。

★では、60%の学校は、どっちの市場に属するのかというと、意外とグレーなのです。NPに属したいのだが、普通の英語教育だし、授業もアクティブラーニングはやらない、総合学習や探究ではやるから、NPに興味がないわけではない。でも中途半端だから、NPとは思われない。だとすると、大学合格実績を出すしかないかとなるわけです。

★そう迷っているうちに、NP市場の学校が大学合格実績も伸びてくるわけですね。

★だったらと思うでしょうが、NPスクールのようにやろうとすると、すぐには出来ないのがトラディショナルスクールです。

★逆に麻布のように中学受験業界が御三家ピラミッド市場に押し込めて、当局は創設者江原素六の創ってきた近代教育を普遍的なものとしようとしているという学校もあります。当局は、上記の円グラフのカテゴリーのいずれにも入らないのだと思っていると思います。

★21世紀型教育機構の学校のように、NP市場で牽引するポジショニングを獲得しているように、御三家は、御三家ピラミッド市場を積極的に牽引しているわけではなく、神棚に奉られてしまっているという意味で牽引しているわけです。

★2021年時代が決定的に変わったという意識は、日本全体いや世界の人びとも身に染みて感じているわけです。市場の意味も変容するでしょう。

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2021年2月 8日 (月)

21世紀型教育機構の世界性(01)世界に通用するコミュニティへ着々 アクレディテーションのデジタル化がカギ

★今年の中学入試は、いくつか転換のポイントが明らかになったわけですが、New Power School の躍進がくっきり刻まれる特徴がありました。これについては、今書き始めている「2022年中学入試の展望(01)2月1日から7日間で見えるコト」のシリーズを参照していただければ幸いです。

★この「21世紀型教育機構の世界性」という記事では、同機構のすばらしい動きと加盟校の世界に通じる教育の質を語っていきたいと思います。エっ!本間は機構を降りたのではないかと言われるかもしれません。はい、理事会から辞任いたしました。でも、それは私がやっていたのでは、21世紀型教育機構が大きくならないからです。老兵は潔く去るべきなのです。でもしかし、お爺ちゃんいっしょにやろうよと言われれば、ニコニコ笑いながらファイブ爺よろしくミーティングにはたまあに顔をだしています。

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(21世紀型教育機構の理事鈴木さんとアクレディテーションのデジタル化のZoomミーティングのシーン)

★そんなわけですから、New Power School の中でも尖がっている21世紀型教育機構の加盟校の話を岡目八目のポジショニングで語っていきたいと思います。だって、日本の教育の希望とか宝の話を世間の人びとと共有するのはいいことです。とはいえ、機構も公開できるところと非公開の部分があるのは当然です。非公開の部分は私には知らされないので、そこはご勘弁を。

★とにかく、このパンデミックで、すべての加盟校は、一気呵成にオンライン授業にフルスペックで移行できました。それは、毎年行っているアクレディテーションで、「グローバル教育の質」「CEFRの段階のチェック」「英語率」「帰国生率」「思考力テスト率」「授業の問いの深さ」「PBL度」「ICTの使用方法の質」「STEAM率」「海外大学進学率」など3ポリシーについて21世紀型教育機構加盟校の条件を満たしているかどうかを毎年リフレクションしているのです。

★そんなところまで言ってよいのか?とおもうかもしれませんが、すでに私がかかわっていたとき実施してきたセミナーで公開している情報です。

★そういう毎年丁寧にアクレディテーションを行ってきたために、1人1台のPC環境はかなり揃ってきた矢先に、パンデミックです。一気呵成に機構の加盟校は自然体で、でも教師が一丸となってチーミングを高めました。すばらしかったですね。

★PBLのベースの学習する組織や心理的安心安全を生み出すコミュニケーションが一気に広がったからです。ICTがすごいとかPBLとかすごいというのは、もちろんなのですが、同機構の教育研究センターのリーダーである聖学院の児浦先生と工学院の田中歩先生と話をしていると柔らく強く愛のある組織の成立条件の話ばかりです。

★かくして、21世紀型教育機構の理事で事務局長の鈴木裕之さんも同機構のデジタル化が急務だということで、2020年度のセミナーはすべてZoomでした。しかもグローバルにやりました。当然英語で生徒はやりとりしました。ファシリテーターはケンブリッジで哲学を学んで、日本の私学の帰国生なら多くの生徒が知っているアレックス・ダッツン先生です。今Phdを取得するためにイギリスにいます。

★そして、緊急事態宣言が解けてから、リアルにアクレディテーションが行われたのですが、それでも動画もとり入れた画期的なハイブリッド・アクレディテーションになったのです。

★ところがです。再度緊急事態宣言が発令になったので、やり方を変えなければなりません。そこで、八雲学園と文化学園大学杉並で行う場合は、もっとデジタル化する新しい方法を取り入れることになったのです。鈴木さんが、お爺ちゃん、ちょっと手伝ってよと。いいよお~。何をしりゃあいいの?すると、実際に授業をみなくても、デジタルでやりとるする視点を、今まで多くの私立学校でワークショップをやるときに活用してきた本間さんの視点集を使いたいんですがと。

★いいよともともと半分は、加盟校の工学院と聖学院と和洋九段女子と聖パウロ学園の先生方と授業リサーチやZoom研修してきたものだから、シフトできるかもねと。

★それをデジタル化するプロセスに入り、着々と進んでいます。視点については、私の視点なので、すでにちょこちょこ公開していますが、それがどうやってデジタル化されるかまでは、語れないし、もはや私にはわかりません。

★ただ、これによって、私の独断と偏見の視点がデジタル化によって統計学的に精査されていきます。もともと、アリストテレスからMITやスタンフォード、ハーバードなどの学習理論や哲学、文化人類学などと私学人(≪私学の系譜≫の第一世代と第二世代)とキリスト教と禅をインテグレートしたものなので、精査が進めば、私の手を離れ世界に通用するアクレディテーションになるでしょう。

★ある意味、ブルームのマスタリーラーニングのコンストラクショニズム版による現代化の完成(タキソノミーはその一部の話です)なので、世界のエスタブリッシュスクールと共有できるでしょう。

★しかしながら、本意は、すべての子供たちに適応可能にすることです。それがデジタル化の意味です。まずは、私は別路線で1200万人のための動きをしますが。それもしかし、21世紀型教育機構の加盟校の何人かの先生方とも協力して行っていきます。もちろん、加盟校以外の先生方とも動き始めています。

★要するに、21世紀型教育機構は、世界のエスタブリッシュスクールが学びたいと思う教育システムをデジタル化するわけですね。そして、私はエスタブリッシュスクールには通っていない子供たちがクリエイティブクラスになる可能性を探るわけです。そこで、共通する点があれば、機構も新しいコミュニティにも老人の智慧はシェアさせてもらいますというわけです。不要と言われない限りで(汗)。

★高齢者の新しい仕事の方法も考案するのが残された人生のミッションでしょう。今日は、ずっとモーツアルトの40番1楽章(ワルター)をリピートして聞いています。ふだんは、あまりく聞く気がしないのですが、今日は調子がよいですね。明日の道が明快になったからでしょう。

★それにしても、本間語はわからないという先生が、加盟校には少なくなりました。

★加盟校以外で話すと怪訝に思われます。もちろん、かえつ有明や品川翔英のように受け入れてもらえる学校もあります。もしかしたら、本間語を理解しようとする寛容な気持ちで迎え入れていただけるかはねのける軽蔑の眼差しをなげてくださるかは、伸びる学校とそうでない学校のリトマス試験紙になっている可能性があるなあと、あっ、我田引水でした。

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2022年中学入試の展望(01)2月1日から7日間で見えるコト

★2021年2月1日から7日というのは、東京と神奈川の中学入試の時期であり、全国で入試件数も受験人口も最も多いわけです。そしてなんといっても、全国に先駆けて新しい入試や学びが生まれます。新市場が創出される場なのです。子供たちの未来や新しい経済社会のヒントが見え隠れする機会なので。それゆえ、この1週間の状況を少し考察し、今後の見通しを見定めることにします。

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(品川翔英の3人の高1生のメッセージは、同校以外の受験生や保護者も含め3000人以上に読まれ、貢献しました。)

★考えるきっかけとして、本ブログの2月1日から2月7日のアクセスランキング50の記事をもとにしたいと思います。この時期の多くの記事が、出願倍率速報のデータと3つの大手塾の合格実績のデータ、そして入試問題の分析などをもとにしているので、ある程度客観的なデータで考察している記事が多いからです。まず50の記事を並べます。

1:品川翔英 期待値を超える(03)なんでもできる恐れのない学校 受験生への応援メッセージ
2:2021年中学入試情報(61)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみる中学入試マーケットの変容
3:麻布の入試は今年もやはり傑作。(1)私たちのいまここのシステムを再考しよと問いかける
4:2021年中学入試情報(60)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみ...
5:2021年中学入試情報(62)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみ...
6:2021年中学入試情報(47)三田国際 マーケティングと教育のミックスの...
7:2021年中学入試情報(66)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみ...
8:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
9:麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(2)科学的通説を覆すかもしれない体験...
10:麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(3)理科の入試問題で学際的視点をモデ...
11:2021年中学入試情報(59)2021年2月3日現在 聖学院 応募者総数...
12:品川翔英 期待値を超える(02)ノブレス・オブリージュ
13:2021年中学入試情報(54)2021中学入試問題 大転換! パンデミッ...
14:思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs.フェリス
15:2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加...
16:2021年中学入試情報(63)品川翔英の心意気と気遣い
17:2021年中学入試情報(57)2021年2月2日現在 工学院 応募者総数...
18:GLICC Weekly EDU(19) かえつ有明佐野先生と対話。
19:2021年中学入試情報(45)文京隣接地帯に衝撃走る。広尾学園小石川 京...
20:2021年中学入試を読み解く準備(9)今年も、東洋大学京北中学高等学校の...
21:2021年中学入試情報(56)2021年2月2日現在 和洋九段女子 応募...
22:2021年中学入試情報(55)2021年2月2日現在 聖学院 応募者総数...
23:2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に...
24:2021年中学入試情報(64)全く新しいタイプの学校 和洋九段女子 CS...
25:2021年中学入試情報(49)2月1日 パンデミック中学入試 工学院の生...
26:2021年中学入試情報(07)かえつ有明が躍進するわけ 1月29日、副教...
27:2021年中学入試情報(65)工学院の祈るような気持ち CSTの流れの兆...
28:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
29:2021年中学入試情報(58)2021年2月3日現在 工学院 応募者総数...
30:2021年中学入試情報(67)城西大城西 生徒中心主義のNew Powe...
31:思考コードがつくる社会(15)総合力の栄光、英語の聖光、安定した進学校浅...
32:2021首都圏中学入試(15)開成の算数の入試問題を分析する意義 ブルー...
33:2021年中学入試情報(50)2月1日現在 工学院の応募者総数 予想通り...
34:GLICC Weekly EDU(21) 麻布の入試問題から見える学びや...
35:2021年中学入試情報(53)2月1日現在 聖セシリアの応募者総数 予想...
36:2020年からの中学入試(23)STEAM教育を実施している学校を探そう...
37:【速報】明日5日の八雲学園の〈未来発見〉入試 本日4日23:59まで!:...
38:2021年中学入試情報(11)フェリス女学院応募者増の意味
39:2021年中学入試情報(46)昭和女子大附属昭和 真下校長に学ぶ 本当の...
40:2021年中学入試情報(52)2月1日現在 自修館中等教育学校の応募者総...
41:2021年中学入試情報(51)2月1日現在 カリタス女子の応募者総数 予...
42:2021年中学入試情報(40)女子美 今年も応募者総数 前年を上回る!ア...
43:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
44:2021年中学入試を読み解く準備(6)基礎情報⑥東京男子校の帰国生入試。...
45:2021年中学入試情報(37)桐蔭学園中等教育学校 応募者数 前年を上回...
46:2021年中学入試を読み解く準備(4)基礎情報④東京共学校の集まり方に変...
47:2021年中学入試情報(39)横浜創英 応募者総数 前年を上回る!工藤勇...
48:2021年中学入試情報(36)鴎友学園女子 応募者数 前年を上回る!: ...
49:2021年中学入試情報(43)成立学園 総応募者数 前年を上回る!日々感...
50:2021年中学入試情報(34)海城 総応募者数前年対比100.2%の重大...

★ランキング1位は、品川翔英の記事です。同校は、12位、16位にも入っていますから、今年注目された学校の1つです。そして、1位というのは、実はこの記事には、同校の≪Z世代≫高校1年生の応援メッセージも掲載していますから、3人のパワーというおが大きな理由だと思います。

3人の慈愛と希望と挑戦という3つの精神こそ、2022年中学入試に切望されているマインドだということでしょう。

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2021年2月 7日 (日)

GLICC Weekly EDU(21) 麻布の入試問題から見える学びや入試市場のウネリ

★先週の金曜日、GLICC Weekly EDUで、主宰の鈴木裕之さんと語りました。テーマは、 第16回「2021年中学入試問題分析-麻布中学の出題を中心に、新時代を切り拓く思考力について考える」でした。創設者江原素六の精神や同校のOBの学者の発想や思想、前校長の氷上先生のハンセン病に関連するボランティア活動などをからめながら、麻布の中学入試問題の奥行きの深さについて言いたい放題対話しました。ぜひ視聴よろしくお願いいたします。

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★その対話から見えてきたことは、教科入試はロジカルシンキングの記述で寸止めされてきて、クリティカル/クリエイティブシンキングは適性検査や思考力入試に任されてきたのですが、いよいよ教科入試でも出題されるようになってきたということです。これは、麻布に限らず、開成や海城、筑駒、武蔵、フェリスなどでも同じことが言えるわけです。このあたりは、今週の金曜日に話題にしたいと思います。

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★また、理科と社会の問いを具体的に見ていきながら、知識を記憶する優れた装置を脳内につくるというより、自分でモデルをつくり、あるいはストーリーの構造をつくりながら、目の前の世界とコミュニケーションしながら認識を広げ、深めていく思考のシステムが重要であるというところに行き着きました。

★今後は、このモデルづくりの学びが実は記憶装置も優れたものにしていくだろうし、ストーリーの構造を組み立てていく過程で、コンパッションのマインドを生み出すということを考えていきたいと思っています。

★21世紀は社会実装的知識とイノベーションとコンパッションの時代ですが、これは、モデルやストーリの構造のプロトタイプづくりとそれを経験に適用しながらリファインしていく過程の連続によってなり立つのだと思います。つまり、PBLの役割は大きいのですが、今後そんなことに思いを馳せる2021年中学入試分析になると思います。

★それから、中学受験市場としては、麻布は、御三家ピラミッド市場の競争市場に巻き込まれていますが、当局にとってはあずかり知らないことでしょう。むしろ、創設当時の進歩主義的教育を新教育主義によって現代化させているNew Power School だと考えていますが、そういう捉え返しを中学受験市場がするかどうかとはまた別の話ですね。

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2021年中学入試情報(67)城西大城西 生徒中心主義のNew Power School

★城西大学附属城西中学校(以降「城西大城西」)は、2021年2月6日19時現在で、前年対比92.9%(同校サイト公表)でした。首都圏模試センターの出願倍率速報のデータで、前々年対比を算出すると121.5%ですから、NP市場(今、中学入試市場には、御三家ピラミッド市場だけでではなく、NP:New Power School 市場とRS:ラウンドスクエア市場が誕生しています)で、評判の旗が立ち上がっています。

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(写真は、同校サイトから)

★日能研の倍率速報は、現地点では、2021年2月6日15時現在のものが最新です。それによると、同校の総出願数は、360名です。同校の19時時点では、372名ですから、2時間で12名増えたことになります。

★今、まさに城西大城西の2月7日の入試にチャレンジしている受験生。その数は、web出願ですからさらに増えているでしょう。しかも、同校サイトでは「出願サイトからの出願ができなかった方は当日のみ窓口にて出願を受け付けます。受験料、写真、通知表コピーをご持参ください。」ということですから、前々年対比まではいかなくても、昨年並みにはなるでしょう。

★コロナ禍で予測不能な事態の不安の中で、受験生は立ち臨んでいるわけですが、このような柔軟な対応は、受験生の不安をやわらげることにもつながります。そして、この心理的安心安全を創り出す教師陣の姿勢は生徒中心主義です。このことについて、とてもわかりやすく城西大城西を紹介している記事があります。

「進学通信特集合WEB版」がそれです。ぜひご覧ください。

★インターナショナルな環境、図書館の環境、PBLの環境、進路指導の環境、ICTの環境などなどNew Power Schoolの環境が整っていることがわかるのですが、このNPSchoolの最も重要な点は「生徒中心主義」です。これがインタビュアーと先生との対話でわかりやすく表現されています。

★ところで、みなさんお気づきですか?城西大城西の入試日は、2月1日と2日、7日だけなのです。もし3日、4日も実施したとしたら、応募者は増えるわけですが、本当に同校の魅力と共感する受験生と一緒に学ぶので、過度な募集活動はしないということでしょう。まさに生徒中心主義ですね。New Power Schoolといっても、トレンドとしてのNPなのではなく、ペスタロッチ、フレーベル、デューイのころからの進歩主義教育を創設以来継承し、現代化しながら今日を迎えています。

★2月20日(土)、追試が設定されていますが、これはあくまで、今回の中学入試において感染症などが原因で入試を受けることができなかった受験生が対象です。ですから、ここでも「生徒中心主義」が徹底されています。徹底されているといっても、戦略的な行為ではなく、自然体としてそうなるのでしょう。

★大手塾からも同校を受験しています。大手塾も御三家ピラミッド市場だけではなく、NP市場にも目配りするようになっているのですが、それには城西大城西のような学校が増えてきたというウネリがあるからですね。塾のような経営団体は、市場のニーズによって動きますから、ウネリを察知し始めたのでしょう。

★受験生にとって、市場のダイバーシティが活性化することはとても大事なことです。今同校で奮闘している受験生の念願成就を祈っています。

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2021年2月 6日 (土)

キャリアガイダンスVol.436 自由の見えない枠組み

★キャリアガイダンスVol.436をいただきました。ありがとうございます。そして、いつも編集長山下真司さんの巻頭言の教養的レトリックには感心します。ある論者は「まじめで素直でおとなしい」いいじゃないか、やっちゃいなよ、失敗はこわんくないよ、やってみなはれ、枠を外してワクワクしようという路線。

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★一方でまじめというのは受け身だし、それを他者に求めるのもなんだかなあと同調圧力が生み出す「まじめで素直でおとなしい」という捉え方もあります。

★また、型にあてはめるのではなく、弱さと向き合える場づくりをと真摯な構えを披露する論者も。いろいろあってたしかによい「・・・」のです。

★探究や協働活動のプログラムでも随分創造力が前面にでているものが多く、キャリアガイダンスの価値の多様性が編集方針であることがわかります。

★しかしながら、ヴィトゲンシュタインのうさぎあひるのトリックアートを、いろいろあっても同じだよとみなす考え方に偏っているなあとふとよぎりましたが、読み進めると1人だけだったけど、いやいや同じものを違う価値観で変形させるのだよと語っている論も掲載されていました。

★実は、山下真司さんの巻頭言は「・・・」をどう読むかがポイントだよという結び方をしているのです。このさりげない省略という修辞学。実に破壊的です。

★「・・・」は、いろいろあってよいだから、たしかに、今述べたように多様な価値観があるのです。でも、一つだけ論じられない価値があるということは「・・・」で担保しておくよという暗号です。

★悪法も法であることを認めている法実証主義の世界に生きているのに枠なんか外せるの?その中で合意形成して多数決でなければ民主主義なの?

★そういうクリティカルシンカーを登場させられないからねという暗号です。悪法も法ですから「不快」は自由を制限できる可能性大なのです。

★それは、キャリアガイダンスという大きな枠があるからしかたがない。山下編集長は、そこをわかっていて「・・・」というレトリックを使ったのです。

★そんな根本問題、つまりゲーデルのダイアレクティカ解釈論議なんてできないよと論者たちがいったとしたら、それは元の木阿弥で、「わかんなーい」とかそんな屁理屈なんて聞けるかとなってしまい、それは自己言及パラドクスに陥るからですね。

★高校教育の罠。それを熟知しているからこそ、きちんと線引きしてという枠をつくって編集している。ラッセルやベイトソンのパラドクス解消のための論理階型理論を使っているのです。出版というのは、シェークスピアの時代からアンヴィバレンツ。このダブルバインドに陥らないように、また救い出すために編集長というのは存在する。改めて山下さんの言論の自由の守護神のごとき大きさと鋭い眼差しに感服しました。

★それと論者の方々が心理的安心安全を前提に語れるように環境を整える気遣いはさすがです。

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2021年中学入試情報(66)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみる中学入試マーケットの変容④御三家市場×NP市場とRS市場とCコミュニティ

★2月5日現在で、3つの大手塾の実績を更新してみました。すると明快になりました。それは何かというと、この中学受験とか中学入試のマーケットは3つに分けられるということです。

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★まずは、御三家に象徴される市場です。ご参加だけではなく、偏差値競争を選択の基軸にしている市場です。3つの大手予備校をこの<御三家市場>だけでみると、SAPIX、早稲田アカデミー、日能研の序列になりますね。

★しかし、一方で、この3つの大手予備校から受験生を獲得しているNew Power Schoolがあります。英語教育以上のグローバル教育をやって、PBLとかアクティブラーニングをすべての授業で行い、ハイブリッドオンライン授業も完璧に行う学校です。この市場を<NP市場>と呼びましょう。日本の教育を変える牽引校です。偏差値を基軸にするのではなく、生徒の才能開花率×自己変容率を選択の基軸にしています。

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★それからもう一つ、ラウンドスクエアスクールの市場があります。このグループは、ラウンドスクエアという世界の180校のエスタブリッシュな私立学校のコミュニティの存在を知らない人が多いので、まだ市場が爆発しているとはいえませんが、確実に認知が広まっています。<RS市場>と呼んでおきましょう。才能開花率×自己変容率×地球は1つというネオスペースシップアースミッション=IDEALSが選択基準です。

★それから、市場から脱出したCSTコミュニティが、NP市場とRS市場からいくつか参加して共創していきます。

★共創と競争は市場の中で行うというのはスローガンにすぎず、論理的にはショートします。抜け出るには論理階型というベイトソン的発想が必要です。

★そのためには、強欲競争市場(G市場)ではなくジャスティス競争市場(J市場)と共創コミュニティ(Cコミュニティ)の循環システムが必要です。従来はJ市場とCコミュニティはつながっていませんでした。そのためJ市場はG市場に飲み込まれ、Cコミュニティも同様でした。なんとか政府に介在してもらうのですが、その政府が問題だったりしてなかなかうまくいきません。

★私立学校は、J市場をつくることができるし、Cコミュニティを創ることができる、現状では唯一の場です。ですから、この希少資源の場をきちんと循環するシステムにすることが、世のため人のためになるでしょう。2021年中学入試は、この予感へつなぐ、まずは足場として、<御三家市場>と<NP市場>と<RS市場>が誕生したといえましょう。

★その証拠が、この3つの市場を総合すると、3つの大手塾は優劣がつかなくなるのです。保護者はそれぞれの価値観で衡平に選択することができます。もはや偏差値はその衡平感覚をつくる1つのツールに過ぎなくなりました。つまり、・・・。ここからはご想像にお任せいたします。

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2021年中学入試情報(65)工学院の祈るような気持ち CSTの流れの兆し。コンパッションシップ。

★昨夜、工学院の教務主任田中歩先生からメッセージが届きました。この間メッセージのやり取りをしていて、先生の3つのペルソナを感じました。2月5日でいったん中学入試は区切りをつけます。お疲れさまでしたといいたいところなのですが、受験生がまだ引き続き立ち臨んでいます。田中先生のマインドも緊張状態は続いています。

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★毎年、工学院は、2月12日に入試をやる準備をしていて、首都圏の受験生の様子をみて、実施するかどうか判断します。今回もまた断行しました。今までは、どちらかというと、才能があるのに、偏差値という基準で学校選びをして、うまくいかなかった受験生のために実施していたという理由が大きかったと思います。

★しかし、昨年あたりから少しずつ12日入試の意味が変わってきたようです。田中歩先生は直接それについては語りませんが、やり取りの中で私がそう推理しているわけです。

★先ほど歩先生の3つのペルソナと言いましたが、一つは、経営ペルソナです。ここ数年、広報の仕方やネットワークの広げ方に目配りしてきました。ご自身でブログも書いて、メディアに共感してもらえるような表現も工夫してきました。もちろん、歩先生だけではなく、多くの先生や生徒が書き込んでいます。

★しかし、そういう流れを加藤先生と協力しながらアフォーダンス的にあるいは共感的に持続可能になる仕組みを創ってきました。その手ごたえを今年は感じたので、少し私もその過程にかかわりをつくっていただいていたので、速報メッセージを送っていただけたのだと思っています。

★それから、もう一つは、入試問題は学校の顔です。英語や思考力入試で、一部の教員が21世紀型教育のカリキュラムを反映するだけではなく、各教科の試験にも反映しなくてはなりません。しかし、ルールを決めて21世紀型教育的な入試問題をつくるようにしかけても、学内全体が共通意思を持たない限り、その質は安定しません。

★ところが、今年の入試問題は知識と深いい思考力型問題のバランスの安定性が整ったというメッセージが流れてきました。これで、学校全体の教育やカリキュラムをすべての入試問題に反映することができるという教務ペルソナを感じました。

★もちろん、この広報と教務のペルソナは、相乗効果が生まれます。教育の中身を広報するのであって、それがあって、インフラのすごさや行事や部活のおもしろさを共有できれば最強だからです。

★しかしながら、田中歩先生のリーダーがゆえの共感ペルソナという孤独があります。共感するのだから孤独ではないのですが、共感するがゆえに、痛みを受けとめ、しかしどうすることもできないという想いをかかえます。そして経営ペルソナは、そこの部分を今はおさえておけというわけですから、にっこり笑いながら、最前線において、そのことについて語り合うことはできません。

★そのことについては、野次馬的な人は、冷たいとかなるでしょう。でもいちいち今は言い訳はしません。にっこり笑って、励ます眼差しと祈ることしかできないわけです。それでなければ、リーダーは務まらないのです。

★このような田中歩先生の内側にある、そしてそれが表現されるわけですが、この表現のときに、その内側の3つのペルソナの葛藤を調整しなければなりません。弱みを言い合える組織だから強いというのは、自己変容論のセオリーですが、今回はその痛みをもっているのは、受験生なんです。このまだ仲間になる前の受験生と互いに痛みをどのように共有するのか。

★共有しているよと示せば、それはたんに自分の苦しさのガス抜きにしかなりません。そこは引き受けて、眼差しと祈りで見守る以外に痛みを引き受けることはできないのです。

★もちろん、それは現状です。解決することは漸次的には可能です。今歩先生とそこをどうするか、CSTコミュニティをどうするか、それは昨日和洋九段女子の記事でも少し触れましたが、このCSTコミュニティの流れを生み出していくしかないと今のところは思っています。

★歩先生のようなリーダー性を、この間神崎先生とチャット対話していて、気づきが降りてきて、コンパッションシップだと造語をつくりました。仲間との共感的コミュニケーションは、まだ仲間になる前の段階では、コンパションシップが必要なのだと。

★グローバルな活動をしている歩先生ならではのリーダー性を表す言葉だと思いますが、今後はますますこのコンパッションシップが必要になります。地球はone homeだからです。でも、今はまだまだその気持ちは世界で完全に広まってはいませんよね。共感的コミュニケーションの前にコンパッションシップが必要です。

★2月12日の入試の意味は、このコンパッションシップという新しい価値を共有する瞬間になると思います。受験生には最後まで立ち臨んで欲しいと思います。その立ち臨む体験こそが大事な糧になることを祈っています。

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2021年2月 5日 (金)

2021年中学入試情報(64)全く新しいタイプの学校 和洋九段女子 CSTの流れを創ることになる。

★2021年2月7日現在(首都圏模試センター)、和洋九段女子の応募者総数は、738名に達し、前年対比は168.5%、前々年対比は240.4%です。PBLをすべての教育活動に展開してきた結果、中学受験マーケットにも存在する、そして中学入試マーケットにも存在する進取の気性に富んだ保護者とSDGsに心を開いている保護者に認知される学校となっています。

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★同校は、new power schoolなのですが、すでにこのタイプの学校でありながらここから次のステップへ飛び出そうというかえつ有明、聖学院、工学院と聖パウロ(中学はありません)と共鳴共感共振しています。これらの学校はいずれも他校にないCSTをベースにしたPBLを生み出し始めています。

★生徒1人ひとりの才能を開花するというよりも、生徒1人ひとりが自分の才能を見出し開花していく環境としてのPBLです。クリエイティブ、クリティカル、コンパッション、コントリビューション、コミュニケーションといったC軸思考ができる環境です。

★さらにもうひとつ決定的なCがあります。それはいずれご紹介する時があると思いますが、ともかく潜在的な才能を顕在化したいという生徒、そもそも自分の潜在的才能は何であるか知りたいという生徒にとって幸せな居場所になります。

★和洋九段女子をはじめいまここに挙げた学校同士が何かやろうと示し合わせているわけではないのです。ただ、この5校の自然な交流が生み出すサークル星が明日の日本の子どもたちの希望の光となると私は予感しているのです。

★ともあれ、和洋九段女子のPBLはもはや公開研究の場となり、多くの関係者と学びの連携が広がっています。なぜ広がるのか?なぜつながるのか?それはCSTの感性が直感的に共感の輪を生み出しているからです。

★希望の星は、論理を超えたそれでいてあとから論理的に正しかったとなる光なのです。

★CSTとは何かは、いずれまた考察します。

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2021年中学入試情報(63)品川翔英の心意気と気遣い

2月1日、品川翔英はサイトに、その日の適性検査型入試の解答解説の動画を即日アップしました。2月3日の公立中高一貫校を受験する生徒にとって有益かつ励みになる動画です。また、適性検査入試以外の同校の入試を受験する生徒にも、各教科が出題するもの見方考え方を学べます。

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★自分の学校だけではなく他校を受ける中学受験生にもエールを贈るこの心意気と気遣いにさすがとしかいいようがありません。コロナ禍でただでさえ煩雑な仕事で多忙な中、このようなおもてなしができるのは、学内がワンチームでなければできないでしょう。さすがです。

★そして、もう一つ驚いたことに、適性検査Ⅰの解説をしている国語科の平岡先生の鋭い解説にああなるほどと思いました。

★というのも、この間、高1の在校生にインタビューをしたときに、平岡先生のPBLの授業は有益なのだという話がでていました。なるほど本当だなと。

★適性検査Ⅰは長文を読んで、何が書いてあるか要約をし自分の考えを書く問題です。その要約の説明の仕方が、言葉は違いますが、英語の要約の仕方とちゃんと同期しているのです。

★「では」とか「しかし」などの文章の流れをを示す言葉に注目する話をしていますが、これは思考スキルを発動する際の記号です。英語の場合は、ディスコースマーカーといって、とても大事なスキルです。このスキルがないと今年の共通テストのような膨大な情報量を処理することができないと言われています。

★また文章の言葉をモザイク状にまとめてから、自分の言葉に置き換えるということも言っていますね。これは英語だとパラフレーズというスキルです。また、要約と意見ですから、英語だとファクトとオピニオンをきちんと区別するスキルです。

★品川翔英は、国語と英語を言語というくくりで扱っていますから、当然共通する言語技術が使われているわけです。欧米だとランゲージ・アーツという考え方です。母国語と第二外国語を学ぶときに活用されています。

★よく探究などは、教科横断型だとかいわれますが、たいていはテーマが同じものを各教科で扱うというジグゾーパズルです。それはまずスタート地点では大事なのですが、これを本質的なところでつなぐには、教科を超えた共通の言語技術が活躍するのです。

★たいていの学校は、英語は英語、国語は国語という縦割りですから、そうもそも本質的な教科横断はなかなか難しいのです。この言語技術を哲学やリベラルアーツで置換えているすてきなな学校もあります。しかし、考えてみたら、それもまた言語技術が活用されています。

★インタビューした在校生が柔軟かつ緻密で、さらに深く考える姿勢があるのは、このような学びの環境があるからなのでしょう。

★受験生の保護者は、学校を訪れて彼らといっしょに校舎を見学しながらコミュニケーションをとります。そのとき直感的にこの奥行きを感じ取ることでしょう。

★2月4日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、同校の応募者総数の前年対比は、319.3%、前々年対比は1976.9%。そうなるのは必然だったのです。

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2021年中学入試情報(62)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみる中学入試マーケットの変容③早稲アカの勢い

★早稲田アカデミーは、御三家だけではなくnew power school(前回述べたCタイプ、以降NPS)も射程に入れています。

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★御三家といっても、それぞれ違いがあるように、NPSもそれぞれ違いがあります。かえつ有明と三田国際は、グローバルな環境も他と比べれば双璧です。英語率が高いという点ではインターコースを持っていないかえつ有明も帰国生が多いですね。オールアクティブラーニング(かえつはディープラーニングと呼び、三田国際はPBLと呼んでいます)という点では似ていますが、かえつは、U理論に基づき、三田国際は科学的PBLに基づいています。とくにかえつ有明は、ピーター・センゲ自身に薫陶を受けたメンバーがいて、世界的な広がりになるコンパッショネイト・システムシンキングを学内研修でも浸透させつつあります。それにかえつは、哲学授業が行われています。英語教師と社会科教師に哲学専門の授業ができる研究者がいるのです。一方、三田国際は理系に優れた研究者を迎え入れています。

★SAPIXは三田国際を認知する保護者が多いのでしょう。一方早稲田アカデミーはかえつも三田国際も認知する保護者がたくさんいます。日能研は、さらに聖学院と大妻中野という伝統と進歩主義を融和させたNPSも認知する保護者がたくさんいるわけです。PBLやグローバルな点ではかえつ有明や三田国際と同じように環境創りをしていますが、聖学院はプロテスタンティズムという価値を中心にしているし、大妻中野は創設者の理念をハイデッガー的に読み替えて価値づくりをしています。

★このように、いわゆる御三家を頂点とする偏差値ピラミッドだった中学受験マーケットが、NPSを欲する保護者が誕生することによって才能重視の中学入試マーケットへ変容しつつあります。

★そして3つの大手塾がこの動きを加速させることになりそうです。

★さらに、その加速の向こうに、今はまだほとんど知られちないラウンドスクエアスクールへの認知の広がりがあります。この領域は今のところ情報の日能研の独壇場です。この領域を切望している保護者を前回Eタイプと称しました。

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★おもしろいことに、このEタイプの保護者を早稲田アカデミーもまたしっかりゲットしているということです。今のところ御三家メインの中学受験マーケットで優位なのはSAPIXです。そしてNPSが台頭してくる中学入試マーケットでは日能研が優位です。

★しかし、その両方のマーケットに目配りしているのは早稲田アカデミーです。

★塾の歴史もまた、他の業界と変わらず、栄枯盛衰は免れられません。すべては、マーケットがどのように変容するかです。つまり、マーケットに参加するプレイヤー次第です。

★プレイヤーも、塾の情報に誘導されるグループもあるし、自ら要望を訴えつくっていくグループもあります。このプレイヤーの心理にどう対応するか。SNSの時代ですから、ニーズのマイニングもまた変容するでしょう。

★特にZoomの普及で、後者のグループは勢いを増しています。当然この3つの大手塾以外のウネリもでてくるでしょう。そのウネリをつくるかどうかは、NPSのエネルギー次第です。つまりは、CタイプとEタイプと共感共振し、大きなエネルギーのウネリを生み出せるかですね。

★このエネルギーは、生徒1人ひとりの才能創発主義です。世界の動きは、間違いなくこのベクトルがうねっています。日本はどうなのでしょう。それを読み解くにも、首都圏中学入試マーケットは貴重なプロトタイプです。同世代人口の3%の動きなのに、世間の注目度が高いということがその証しでしょう。

★真理は、小さい領域に現れます。それを見出せる想像力と直観力がカギですね。早稲田アカデミーにはそういう想像力と直観力が豊かなスタッフがいるのかもしれません。

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2021年2月 4日 (木)

GLICC Weekly EDU(20) 鈴木代表と麻布の入試問題の背景について語ります。

明日5日は、第16回GLICC Weekly EDUです。いつもは主宰の鈴木代表はゲストの方をお招きするのですが、今は入試の真っ最中ですから、鈴木さんと私本間でまずは麻布の今年の入試問題を通してみえる中学入試の今後を対話しようということになりました。

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★今年の麻布の問題は、SDGsもパンデミックの話でもありませんでした。表面的にはそうなんですが、その両者の根本問題に立ち還ると、産業革命以降出来上がってきた近代社会及び近代の人間の根本問題にリンクします。結果的には二つテーマはルビンの壺よろしく図ではなく地の方で出題されていたのです。

★また本間の爺さんのいうことは大げさで、もっと楽しく面白問題を話してくれればよいんだよと思われるでしょう。まあ、でも実際に対話しながら飛びたっていった生徒、今目の前の生徒と対話していて、そういう心境にはとてもなれません。したがって、カジュアルでないところはお許しください。

★ただ、ざっくばらんに、麻布の問題作成の背景にある文化人類学的あるいは社会学的あるいは哲学的なお話は、例によって独断と偏見でしたいと思います。

★たとえば、今回の麻布の社会の問題は、最初つくったものを途中で改変し、いつもとは違って大問2題になっています。もちろん一続きの問題になっているし、解答の仕方だけ考えれば、傾向は変わっていないのですが、いつもとはやはり決定的に違います。

★また最後の問題が、ここ数年の問いとは違い、のびのびとクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングを活用する問題になっています。ある意味、20年くらい前に回帰したかもしれません。

★なぜでしょう。それは、もちろん、塾歴社会のくびきをぶち壊す宣言だと思います。社会学や文学、文化人類学、医学分野で見識ある学者を輩出し、政治家もたくさん輩出。それに反骨精神旺盛のあの官僚も輩出しています。

★いいかげん塾歴社会なんとかしてよという話でしょう。もちろん、そこは直接は語らないので、岡目八目の私がおっせかいにも鈴木さんと語ろうという魂胆です。もちろん、2021年の中学入試の傾向の大転換についても少し語ります。

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2021年中学入試情報(61)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみる中学入試マーケットの変容②必勝法から必笑法へ

★今中学入試市場に参加している保護者の中には、Aタイプ)IBのような教育を日本の私立学校でも行ってくれるとよいのになあと思っているグループとBタイプ)自分の子どもの才能を開花し伸ばしてくれる環境があるとよいのになあと思っているグループとCタイプ)その両方を満足していくれる学校はないのかなあというグループとDタイプ)個性と難関大学合格を保障してくれる学校がよいというグループがあります。

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(この3つの書籍は、時代の変容を読み解いた歴史的価値のある本です)

★AタイプのIBに興味がある保護者は、IB認定校を選択します。Bタイプは英語はともかくという保護者が多いので、2科目と新タイプ入試を行っている学校を選択することが多いでしょう。Cタイプ)の保護者は進歩主義的なnew power schoolを選択するでしょう。Dタイプ)はいわゆる塾歴社会をつくる塾が目指す学校を選択するでしょう。

★教育ジャーナリストであり、心理カウンセラーでもあるおおたとしまさんは塾歴社会という言葉を見事につくり、SAPIXと鉄力会の実像をリサーチしました。一方で、「必笑法」を世に出し、「第一志望合格かどうかにかかわらず、終わったあとに家族が「やってよかった」と笑顔になれるならその受験は大成功」(Amazon)という考え方を世に広めました。

★塾歴社会が重視する学校を選ぶグループはDタイプが多く、他の3つのタイプは、「必笑法」の考え方に価値を置く方が多いでしょう。おおたさんは教育ジャーナリストですから、これらの価値観を押し付けるのではなく、そのような多様な価値観があふれてきた中学入試マーケットの姿を浮き彫りにして映し出しているわけですね。

★2013年までは、Dタイプ一色で、そもそも他のタイプは中学入試そのものに参加できなかったのです。IB校が私学になかったし、新タイプ入試は稀有でした。それが、4つのタイプが参加できる市場に中学入試は変容したということでしょう。

★石川一郎先生は、5年前に、2020年の大学入試問題を予想しました。大学入試改革のシステムそのものは、著書の中で書かれているようにならなかった部分もありますが、入試問題が批判的・創造的思考にシフトしていくということを最初に読み切った先生はさすがです。それに実は今回は文科省は実施しませんでしたが、石川先生が同書で語っているComputer based Testへの移行は時間の問題でしょう。

★そして、今年の中学入試もどのタイプが受験する学校もこのベクトルへシフトする兆候がくっきり見えはじめました。

★さて、そして、おおたさんは意識されているかどうかはわかりませんが、そこはジャーナリストの眼です。先を見通す発言をことあるたびに、SNSなどで発言しているのです。それは極めて重要な発言です。ご自身が麻布のOBだということもあるからでしょうが、言葉を大切にすることと民主主義や人権という近代社会の光の部分を保守することは密接な関係があるのだということです。

★まさしく≪私学の系譜≫を生み出した麻布のOBならではの発想ですね。私立中学受験、たとえば麻布の入試問題は、まさにここの部分をベースにしています。とはいえ、今までは中学入試マーケットでそれを論じても塾歴社会に埋め込まれかかっていた私学ですから、なかなかそれをストレートに表現することは難しかったのです。

★しかしながら、Dタイプの保護者は、そこを信念としてもっています。人間は生まれながらにして社会的動物です。これはGoogleの大好きなアリストテレスという哲学者の言葉です。遠く古代ギリシャの哲人で、民主主義の萌芽を理論化した哲学者でもあります。

★私学がリベラルアーツを大事にするのも、ここにつながっています。残念ながら、これを真剣に考える土壌が日本の教育にはまだないのですが、中学入試がそれを開こうとしているわけです。塾歴社会の必勝法から、子供の権利を保守する必笑法にシフトするわけです。

★なぜなら、これをストレートに表現することの大切さを知っているEタイプ)の保護者がついにDタイプ)から新たに登場したからです。おそらくこのEタイプ)の保護者の子どもは、日能研や早稲田アカデミーに通っているケースが多いでしょう。この民主主義及び人権とことばを大切にすることを前面にうたっているのは、世界のエスタブリッシュ私立学校180校です。このコミュニティはラウンドスクエアといって、デモクラシーと奉仕などを明確に理念としてかかげ、互いに実現する学びをそれぞれが展開しています。

★このラウンドスクエア(RS)に正式加盟している(加盟にはIBよりも厳しい認定システムがあります。世界ではIBとRSは非常に有名です)学校は、啓明学園、工学院、玉川学園、八雲学園です。

★2月3日現在ですが、日能研からは、この4校に70名合格者がでています。早稲田アカデミーからは、34名、SAPIXからは2名です。

★まさに必勝法から必笑法にシフトする時代の動きがここに現れています。

★わたしたちは、小さな徴から大きくイメージを膨らませるクリエイティブシンキングを働かせる時代に立ち会っているのかもしれません。

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2021年中学入試情報(60)早稲田アカデミー・日能研・SAPIXからみる中学入試マーケットの変容

★2月3日が過ぎると、早稲田アカデミーと日能研、SAPIXの私立中学合格実績の比較が注目される時期です。今年もそれぞれのサイトを開いてみました。最も驚いたことは、早稲田アカデミーが中学入試マーケット全般をついに把捉したということです。

★どういうことかというと、昨年までは、速報時期は偏差値の高い学校を中心に公開していたのですが、今年からは、偏差値に関係なく、すべてをきちんと公開しているのです。

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(本日聖学院の最終試験である難関思考力の会場。写真は今朝の聖学院児浦先生のfacebookから。チャレンジする生徒が28名。大いに脳神経系身体全体を使って、がんばってください!)

★これによって、3者の塾の特徴が明らかになったわけです。SAPIXは御三家を中心とする高偏差値校はやはり強かったのですが、早稲田アカデミーがしっかり対抗軸になってきたということですね。そして、日能研は、満遍なく学校の合格者をだしています。それぞれの子どもが選択した学校に合わせた学びをサポートするというのが大きな特徴になりました。しかしながら、早稲田アカデミーは、この点においても対立軸になる勢いです。

★簡単に言えば、早稲田アカデミーは、SAPIXと日能研の両方の良いとこどりをしていると言えるでしょう。塾歴エリート社会VSスマート市民社会という二項対立が、ついにこの大手3塾の中で消えていくという時代になったということでしょう。

★もちろん、SAPIXの塾歴エリート社会という文化はまだまだ残るでしょうが、たとえば、聖学院の合格実績をみると、日能研からは55人合格、早稲田アカデミーからは13人、SAPIXからは6名合格しています。

★日能研は、多重知能論をはじめ進歩主義的な学びの理論を取り入れていますから、当然進歩主義的な学校の情報を子どもたちと共有しています。聖学院の合格者は自ずと多くなりますね。しかしながら、早稲田アカデミーとSAPIXからも合格しているということは、このNew Power Schoolの風を無視するわけにはいかなくなっているということです。

★女子校で、進歩主義の象徴的な学校は大妻中野ですが、日能研からは118人、早稲田アカデミーからは73名、SAPIXからは22名です。

★共学で、進歩主義の先頭に位置している三田国際学園は、日能研からは44名、早稲田アカデミーからは59名、SAPIXからは42名です。

★老舗ではありますが、進歩主義でもある共立女子は、日能研からは133名、早稲田アカデミーからは89名、SAPIXからは21名。

★今ダボス会議で、グレートリセットをテーマにそしてサブテーマとして才能主義を設定して世界中の識者が議論しています。これは塾歴エリート社会からスマート市民社会へのシフトも暗示しています。

★日能研は、このシフト・チェンジを21世紀にはいる前から断行していましたから、SAPIXとは真逆の流れを黙々と歩いていました。しかし、いまこうなってくると、このシフトチェンジがあたりだったということでしょう。

★ですから、早稲田アカデミーもSAPIXも当然リスクマネージメントをしているわけですね。

★中学入試市場の質は首都圏からまたも大きく変わりました。

★そして、2022年入試は、もっと加速します。それに伴い、教科入試VS新タイプ入試の二項対立も解消されます。重点の置き方は違いますが、両方とも思考力重視になり、どのような思考タイプを出題するかが各学校の特色となります。思考タイプを分析する眼鏡は首都圏模試センターが「思考コード」をつくって対応してきました。再び「思考コード」の出番です。(つづく)

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2021年2月 3日 (水)

2021年中学入試情報(59)2021年2月3日現在 聖学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!他校にない異才の数学教育がカギ。

★本日聖学院の広報部長・国際教育部長・21教育企画部長の児浦先生からメッセージが届きました。お疲れのところありがとうございます。

●出願者のべ数(応募者)は、現段階で989名と1000人に届く勢いです(昨年度は872名)。
実人数も363人となっており、昨年度の318名を大幅に上回りました。

●受験者のべ数は、現段階で592名となり、昨年度の558名を上回りました。
明日の難関思考力を足すと、600名を超えることとなりそうです。 

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(聖学院サイトから。M型思考力入試の記事必見です)

★今回のパンデミックでハイブリッドオンライン授業を徹底した聖学院。やはり予測不能な時代に頼りになる学校だと中学入試市場は評価したのでしょう。

★そんな中でM型思考力入試が行われたのですが、同校記事によると圧巻だったようです。世界ジオパーク糸魚川の貴重な石を使っての思考力入試。縄文期の考古学的にも価値ある石。数多くある石の中にある鉱物は、産業的にも大切な資源です。

★で、なぜこれが数学的思考なのでしょう。入試が終わってからじっくりインタビューしようと思いますが、予想するに、その数学の先生は、こんな強い意志を貫いたのではないでしょうか。

★「オンライン授業は大いに結構よ。でもですよ。デジタルトランスフォーメンションに焦点を当てているだけではいけないわよ。便利なツールがあれば、それは命題論理はわかりやすいでしょね。でも、それは数学的に思考することではないわね。機械的操作になりがち。数学の真意は命題論理よりも述語論理の意味での置換操作。あらゆる現象は数学的思考の言語に置換えることができるのです。そこを追究しなくてはね」という信念を反映させた入試だったと推測します。

★その先生は、米国の大学とICUで学んでいるので、数学をリベラルアーツ的に学んできたわけです。受験数学とは別アプローチの考え方をする先生で、どちらかというとIBティーチャーの感覚に近いのです。

★考えてみれば、児浦先生も数学の先生です。そして、もう一人の先生はテクノロジーの先生です。思考力チームは要するに数学的思考がベースということなのかもしれません。

★すなわち、聖学院の思考力を支える1つの柱には、本質的な数学的思考力あるいはオーセンティックなテクノロジーに適用される数学的思考力があるわけですね。これは他校にはない本当のイノベーションかもしれません。

★オンライン授業がそれに気づかせてくれたとは、実に教育とはおもしろい。いずれにしても、教師も生徒も異才の集まる聖学院ですね。ジョブスではないですが、異才というクレージーな人々が世界を変えているのです。聖学院に期待がかかるわけです。

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2021年中学入試情報(58)2021年2月3日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!生徒1人ひとりの潜在的価値が輝く。

★本日も工学院教務主任田中歩先生からメッセージをいただきました。午後入試の合格発表が終わってからのメッセージ。「本日も昨年に比べ18名も多く受験に来てくれました。同日前年対比117%です」ということでした。工学院の先生方、受験生、そして他校の私学の先生方もお疲れ様です。連日の午前・午後入試、採点、合格発表。疲労が蓄積しているはずです。

★まだ続きます。そして来週は高校入試です。高3生は大学受験真っ最中です。

★免疫低下に注意をして、休める時には休んでください。

★そして、がんばりましょう。

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自然体の工学院の魅力全てがわかる動画です。本当に生徒1人ひとりの潜在的価値が輝いていますね。わずか2分26秒の動画です。しばし眺めて、疲れた脳と身体を癒してください。

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麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(3)理科の入試問題で学際的視点をモデル化で具体的に示す

★教科横断型だとか学際的だとか探究だとか多面的だとか教育言説はいつも騒がしいですが、科学的に論じる教育学者はほとんどいません。思考力・判断力・表現力だあエビデンスだあといったとしても、それらがいったい何であるか論じることなくバズワードやジャーゴンが飛び交っていて、基礎的な検証態度がみられないのが教育の世界です。麻布の入試問題は、そういう教育の世界に、特に批判するわけでもなく、こう考えればいいのですよとメタモデルをそっと示してくれます。今年の理科の物質の拡散もその典型です。しかもこの問題の向こうには、今回の新型コロナウィルスの離散及び感染の両面について考えるうえで、大いにヒントになります。

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★もちろん、直接COVID-19を話題にはしていませんが。

★さて、どんな問題かというと、身近な経験として周りにいっぱいある物質の拡散現象について考える問題です。水にインクをたらしたときにどうなるかという体験的な現象を確認し、さらにこの現象をことわざで端的に置き換えさせて、物質的な現象が心理的な現象に変形される場合もあるという柔軟性を問いかけています。ちょっとしたアイスブレイクで、入試問題なのに紙上ワークショップになていますね。

★その後で、この拡散を分子や原子という知識ではなく、「つぶ」という小学生でもイメージしやすい概念に置換えてモデル化していきます。物質の拡散の構造化をするわけですね。

★学際的な視点とは、まさにこのモデル化や構造化です。このモデルや構造と共通する物理的現象、生態的現象、心理的現象を見出していく問いが次々と出題されていくわけです。

★一見関係のない現象にこの拡散モデルがあてはまり、目からウロコとなるわけですね。

★熱力学の第二法則など数式にすると難しい科学の話もモデル化や構造化すると小学生も理解が可能だとするブルーナーのカリキュラム論がちゃんとここには生きています。

★麻布をはじめ、多くの私立学校は米国のスプートニクショックで生まれた認知科学を応用した学習理論に影響をうけた現代化カリキュラ学習指導要領を継承しています。もちろん、麻布のようにモデル化や構造化をして継承するのと、大量の知識をインプットすることで継承するのとでは違いはあるのですが。

★世間では、このモデル化や構造化の話を抜きに、教科書に盛り込まれる素材だけみて、難しい、量が多い、落ちこぼれがでると批判し、ゆとりの流れに拡散してきました。かくして現代化カリキュラムは世の中的にはエントロピーが増大して雲散霧消してきたわけです。

★ところが、麻布はそこをモデル化するという科学の基本的な検証態度を重視し続けているというわけです。入試問題は学校の顔だとは、受験業界では人口に膾炙されているわけですが、これぞまさにという感じですね。

★このモデル化や構造化は他の教科でも同様です。もちろん、モデル化や構造化は、絶対的なものではありません。試行錯誤があるのは当然ですが、麻布の入試問題の傾向が長い間大枠変わらず、ときどき実験的な問題を出すのは、時間をかけて軌道修正しているということなのでしょう。

★いずれにしても、知識ではなく思考力だとか知識がなければ思考ができないというような不毛な議論は時間の無駄です。麻布のように知識とか思考についてのモデル問題をみんなで共有して語り合った方がよさそうですね。

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2021年2月 2日 (火)

2021年中学入試情報(57)2021年2月2日現在 工学院 応募者総数 引き続き前年を上回り続けている!潮目変わる。

★工学院の田中歩教務主任からメッセージがはいりました。「午前昨年より20名増、午後22名増でした!特に算数一科は5倍でした。」ということです。2021年2月2日現在(日能研倍率速報)、総応募者数は、また増えて、前年対比128.5%です。

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(今年は、パンデミックで海外や沖縄などには行けませんでしたが、学内でオンラインで現地とやり取りしながらSDGsの探究をしつつ起業や社会的貢献活動のプランを練りました。工学院での学びの総まとめの位置づけにある高2のグローバルプロジェクトは圧巻です。)

★中学は1学年の定員が105名ですから、2日目に新たに20名以上チャレンジに来るのは、工学院の教育が中学入試市場で認知されたということでしょう。

★今までは、八王子という立地ということもあり、限定的な受験生でしたから、1日に合格したら2日目は受けに来ませんでした。ところが、1日の即日発表によって、急遽インターネット出願で、2日に受験者が増えるというのは、完全に潮目が変わりました。

★すべての生徒が目を輝かせ対話し、探究に没入し、社会的インパクトを与える活動をしているのですから、人気が出るのは当然ですよね!元会長の仲野さんなら、満面に笑みをたたえて語ってくれるはずです!仲野さん自身、6年間大いに活躍したし、社会的インパクトを多様な領域で生み出してきましたからね。

★それから、田中歩先生から、思考力入試だけでなはなく、教科の入試も質の向上がみられるということでした。アドミッションポリシーーカリキュラムポリシーーディプロマポリシーの一貫性の完成ということですね。たしかに仲野さんはこの春卒業します。この3ポリシーの一貫性を体現した一期生です。

★明日3日と2月5日にまだ入試があります。出願はぞれぞれ前日までです。明日の試験の出願にまだ時間があります。パンデミックで思うように受験ができなかった生徒もいると思います。諦めずにぜひ工学院の扉をたたいてみてください。すばらしいトランジション(人生の転機)が待っています。ねえ、元生徒会長仲野さんそうですよね!

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2021年中学入試情報(56)2021年2月2日現在 和洋九段女子 応募者総数 前年を大幅上回る!

★2021年2月2日現在(同校サイト出願状況データ×首都圏模試センター出願倍率速報)、和洋九段女子の応募者総数は661名で、前年対比150.9%。大幅に前年を上回りました。同校のオールPBL授業の価値と生徒の創造的才能の開花爆発力が中学入試市場に認知されたわけです。

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★126年の伝統を誇るシカゴ大学附属で行われているデューイのPBLとMITメディアラボのPBLとグーグルのプロジェクトアリストテレスが発見した活力あるチームの条件「心理的安心安全」そしてピーター・センゲのコンパショネイトシステム思考(SDGsのルーツ)を統合した和洋九段女子独自のPBL。

★在校生は授業でも授業から外に出ても何はなくてもPBLです。詳しくは同校の動画集をご覧ください。

★今回のパンデミックで思うように受験がいかなかったという受験生もいるでしょうが、和洋九段女子は2月10日にも入試を用意しています。諦めずに同校の扉をたたいてみてください。あなたにとってかけがえのない人生の転機(トランジション)になるでしょう。幸運を祈っています。

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2021年中学入試情報(55)2021年2月2日現在 聖学院 応募者総数 前年を上回る!

★2021年2月2日現在、聖学院の応募者総数は951人、前年対比は106.9%です。昨年1年間、頻繁にオンライン説明会を繰り返し、開催するたびに大好評でした。

★例年、受験生が憧れる説明会同時開催の思考力セミナーも昨年はオンラインワークショップで、始める前は、リアルな空間でできないことの物足りなさがあるかもしれないと心配もあったようですが、いざ行ってみると、実施する先生方も、参加する受験生も、リアルとはまた違うワクワク、生き生きした学びになったと大満足の連発だったということです。

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★たしかに、昨年の第一回目の緊急事態宣言が発令されて以来、聖学院は、1年間ずっとハイブリッドでオンライン授業を継続してきたために、リアルはリアルの良さ、オンラインはオンラインの良さを引きだすシステムを構築してしきたのです。

★その努力が、入試市場における評判に結びついたということでしょう。

★明日3日の入試出願は、3日9:00まで受け付けています。

★4日の最終試験「難関思考力入試」は、2 月 3 日(水)23:59まで出願を受け付けています。詳しくは同校募集要項をご確認ください。

★さて、このような聖学院の人気の秘密、聖学院の魅力については、GLICC Weekly EDU 第14回「中学入試、高校入試の新しいムーブメントを牽引する聖学院児浦先生との対話」が参考になると思います。同校広報部長であり、国際教育部長であり、21教育企画部長でもある児浦先生が大いに語っいます。

★思考力入試のワークショップの振り返りもあり、受験生がどのような発想を持っているのかも見ることができるので、最終の難関思考力入試の準備にも役立つと思います。みなさまの念願成就を祈っております。

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麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(2)科学的通説を覆すかもしれない体験シミュレーション

★麻布の理科と言えば、コーヒー問題やスウィーツ問題が有名です。今年もキャベツと塩の関係が少し出ていました。これもめちゃくちゃワクワクする問題です。発電の問題もおもしろすぎます。しかし、氷期の35万年前からのサイクルモデルを提示し、気候変動の話を一般化するストーリーで考えていく問題はなんともロマンがあって興奮します。

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★そして、氷期が訪れる理由や氷期が終わる理由について考察するとは!しかし、これは既習の海と陸の温度の吸収の差異やヒートアイランドのメカニズムやそれを防ぐ方法などのアナロジーで推理できてしまいます。つまり、知識としてではなく、日常の現象の背景にあるメカニズムの適用でできてしまいます。

★氷期の間に陸続きかもしれなかったという地図を書かせる問題も地理の等高線を適用すればよいわけです。

★氷が溶けて海面が高くなった分からもとの氷の平均の高さを求める問題も、比の問題で、算数でよくやっています。

★総合的に考察する問いですが、心憎いのは、この話が縄文時代へと続くのです。気候変動諸説ありの話や縄文文化の再発見などここ数年話題になっていたテーマをさらりと出題しています。

★アイヌが近隣の地理的条件からそのルーツを推理することは必ずしも正しくないことを考察し、ルーツの系図を推理するところまで問うわけです。

★この̻2⃣の問題は気象の問題だろうし生物の問題なのでしょうが、考古学的アプローチも入っているし文化人類学的アプローチも入っています。しかも従来の教科書的学説やSDGsでさえ鵜呑みにしない構えがあります。

★世にリベラルアーツを叫ぶ人は多いですが、具体的に麻布の入試問題のような視点を持っているのかと問えば、二つ返事でイエスとは返ってこないでしょう。

★基本的な原理を適用する思考力と学説さえも覆すかもしれないクリティカルシンキングと科学的検証思考を中学入試で問うのは、思考力入試は別として、なかなかない希少価値があります。

★麻布に向けての受験勉強は人生そのものを考えることにもなります。仮にダメだったとしても、落合陽一さんのような人生もあるのです。

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2021年中学入試情報(54)2021中学入試問題 大転換! パンデミックとクリエイティブクラスとデモクラシーとSDGsそしてコンパッションがテーマ そしてクリティカル&クリエイティブシンキング活用問題もいよいよ登場

★2021年中学入試の大まかな傾向が見えました。パンデミック史ともいえる傑出した社会の問題を出題したのは、渋谷教育学園渋谷です。また、同校は環境破壊と経済社会の関係も問うています。SDGs関連の問題といえましょう。

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(2021年中学入試問題を作成する教師の教養を示唆する書籍)

★環境に注目しているのはJGの国語も同じです。またJGの社会では社会保障関連の法制度の問題も出題しています。

★海城の社会もさすがです。一平グループの新しい流通及び新農業経済の創造を果たしたクリエイティブクラスについてと、その発想が口蹄疫というある意味パンデミックと同じ構造をもった被害から生まれたというストーリーを展開していました。大型記述も圧巻です。

★開成の社会も、北海道の状況やパーム油の問題について問うていました。これも気候変動やSDGs関連の問題です。パーム油に着目するのはさすがです。洗剤など日常であふれるほど使っていて、ボルネオなどの森林破壊をしていることに気づかない私たちへの警鐘でしょう。SDGsとは何かを通り越して、本質に迫る問いですね。

★武蔵の社会は相変わらずすばらしいですね。新聞とインターネット及びSNSの問題を、民主主義と絡めて問うています。論理的思考までという寸止めで問いを出していた武蔵も、満を持して推理的思考や批判的思考を使う問題を出題しています。

★フェリスは、わかるという認知心理学の記述でした。わかると好奇心の関係とそれに関する受験生の経験をしっかり記述させる問題です。自分の内面に生まれてくるエネルギーをとらえる内省的思考を大事にしていますね。クリティカル&クリエイティブシンキングをストレートに出題するフェリスの構えは不動です。

★開成の国語は、ルサンチマンと変革を嫌うサイレントキラーへの警鐘です。開成の中で生まれている変革と世の中のズレを暗示しているのでしょうか。

★桜蔭の国語では、自分の中の苦手意識や弱みに真摯に向き合って乗り越えていくという自己変容について問うていました。これは海城の国語も同様でしたし、ある意味麻布の国語も、弱みの共感こそコンパッションを生み出すというテーマが横たわり、時代の良心の声がシンクロしていました。

★麻布の理科は発電のメカニズムを問うているし、社会は食の問題を問うています。直接間接SDGsやパンデミックの話に関連しますが、いうまでもなく表層的な知識問題ではなく、深層を探っていく問いです。写真で紹介した書籍のテーマすべてを麻布は4教科で問うています。

★2021年の中学入試問題は、「パンデミックとクリエイティブクラスとデモクラシーとSDGsそしてコンパッション」のテーマを多面的に問うています。そして、今までは、適性検査型入試や思考力入試などの新タイプ入試で問うてきた「クリティカル&クリエイティブシンキング」をフル回転させるフカイイ問題の出題数が圧倒的に増えています。

★開成や麻布、海城などの理科や社会で、対話文が素材になっているのは、ある意味適性検査や共通テストを意識しているとも言えます。

★つまり、4教科入試で、適性検査や思考力入試型の問いを挿入し始めたのです。

★2021年中学入試は、本質的/根源的問いとそれに対応できるクリティカル&クリエイティブシンキングも要する問いが出題されたエポックとなったといえます。

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2021年2月 1日 (月)

2021年中学入試情報(53)2月1日現在 聖セシリアの応募者総数 予想通り前年を上回る 

★2021年2月1現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、聖セシリアの応募者総数の前年対比は、105.9%。予想通り前年を上回りました。

★理由については、本ブログ記事「2021年中学入試情報(23)聖セシリアの丁寧な教育路線が興味深い。」をご参照ください。

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2021年中学入試情報(52)2月1日現在 自修館中等教育学校の応募者総数 前年を大幅に上回る EQ×探究の土台充実

★自修館中等教育学校とEQ×探究の2泊3日の宿泊学習をごいっしょしたのはもう15年以上前のことですが、こうした心理的安心安全をベースに、生徒のみなさんが探究の翼をのびのびと伸ばしていく学校に人気が集まるのは日本の教育にとってよい影響を与えると信じます。

★2月1日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、同校の応募者総数の前年対比は129.4%です。大幅に伸ばしましたね。

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2021年中学入試情報(51)2月1日現在 カリタス女子の応募者総数 予想通り前年を上回る 

★2021年2月1日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、カリタス女子の応募者総数の前年対比は102.2%。予想通り2月1日までに昨年を上回りました。

★英語だけではなくフランス語も堪能な生徒が輩出するほどのグローバル教育の環境があり、理数系も強い女子校。したがって、昨年、一回目の緊急事態宣言が発令されても、動じることなくフルスペックのオンライン学習を実行しました。

★豊かな図書館の空間もあり、教養教育も充実しています。

★教育の質の競争時代を牽引する神奈川の女子校の風格に期待しています。

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2021年中学入試情報(50)2月1日現在 工学院の応募者総数 予想通り前年を上回る さらなるアップデート!

★2月1日、工学院大学附属中学の入試が行われました。田中歩教務主任からメッセージが届きました。

「お疲れ様です!1日目、無事終了しました。午前午後とも昨年より受験生は多く、午前は欠席者ゼロ、午後は2名の欠席でした。応募者総数は前年を超えましたが、まだまだここからです!」

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★「まだまだここからです!」というのは実は掛詞です。応募者総数はこれからまだまだ伸びますよという意味と4月からまだまだ教育のアップデートが起こりますから期待していてくださいという意味です。

★何といっても、共感的コミュニエーションをICTで見える化し、生徒同士共有し、対話の質をアップデートできるところまできたのですから、グローバル!イノベーション!そして恐れのない組織として共感的コミュニケーションの質をグレードアップ!ということなのです。

★大いに期待したいですね!

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麻布の入試問題は今年もやはり傑作。(1)私たちのいまここのシステムを再考しようと問いかける。

★2021年2月1日、麻布の中学入試が実施されました。14:40分くらいでしたか、密にならないように順番に受験生は校舎から次々と退出。鉄〇会をはじめ、中学からの塾の方々が、校門から離れたところで、はやくもビラを配布していました。パンデミック下でも、そんな風景がまだあるのだなあと思いつつ、私は入試問題を購入しに事務室に向かいました。

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★父親、母親と待ち合わせ、疲れた様子もなく、むしろやりきった様子で並んで歩いていく姿。とはいえ、合格するのは3人に1人。どんなに憧れても自分でコントロールできない現実に直面しながら、3日間程併願校を受験し、決まるところで、次の人生をあゆんでいく。トランジションによる自己変容は、中学受験生にも何かを突き付けます。どの道に進もうとも、果たして居心地の良い環境であるかどうかは、結局自分次第。

★今日の麻布の国語のテーマは、受験生にそんなことを突き付けていました。いつも通り、クリティカルシンキングを回転させる文章でした。登場人物が、Q町とフリーランスのライター、自然保護課の課長、「私」、少年、そしてガゼル。津村記久子さんの短編集「サキの忘れ物」から出題されました。

★「私」と少年は学校に対する印象がよくないという点で共通していますが、少年は社会通念に関心がありません。「私」は、社会通念と自分の迷いの間をいったりきたり、他の登場人物は、それぞれの利益を優先するというガゼルをめぐる多様な価値観やモノの見方が静かにぶつかり合う物語。とはいえ、ガゼルに対する「共感」とはいかにして可能かという少年の存在もしっかり問いかけられているわけです。

★もちろん、「私」の少年とシンクロを通してガゼルへのシンクロも問われているわけですね。

★しかし興味深いのは、「ガゼル」はカントでいう物それ自体で、物語の中では、何であるかはなかなわからないのです。まるで、今回のパンデミックを巡る多様な議論が行われているような物語なのです。SNSの効用もでてくるくらいですから、出題者は、今回のパンデミックを無視しているわけではなさそうです。

★今回の麻布の出題は、他の教科も直接パンデミックを取り扱ってはいませんが、パンデミックがあろうがなかろうが、問題の根本的構造は同じであるという領域を問いかけているのが、麻布らしいですね。トレンドを追わずに、根源的問いを追うということでしょう。

★それにしても、今回も女流作家の文章でした。また津村さんの作品も昨年6月に文庫に収められたものを活用しています。約10,000字の文章であるというのも、やはり傾向は変わりありません。

★問いも、社会通念の外にある心情のそうはいいながらも外に出でたら生きていけるのかという人間の存在のアンビバレンツを問うているという点も変わりません。小学校6年生だからといって、そこは手加減しません。人間の存在の構造をきちんと問うているわけです。

★筋金入りの現代化カリキュラムの根っこにあるブルーナーの教育の過程の魂を引き継いでいます。ピカソが、ついにこの子供がつかみ取る存在の根源の構造を絵にすることができなかったと語るわけですが、スティーブ・ジョブスと共に、そこにチャレンジしています。

★禅の境地では、ここが悟りの境地であり、GAFAが最終的に希求するグリーンな世界の話です。

★現代化カリキュラムは戦後のカリキュラムですが、その魂は、遠く明治維新のころに遡ります。創設者江原素六が、その当時の世界が問うていた根源的なるものを引き受けていたというのはさすがです。

★そりゃあそうですよね。薩長との闘いで、死というものと常に向かい会って、生き抜いたのですから。今回の麻布の国語の問題のもう一つのテーマは、根源的な存在とあなたはどう向き合うのかというものでもあったのです。

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2021年中学入試情報(49)2月1日 パンデミック中学入試 工学院の生徒にトランジション経験の意味を学ぶ

★1月29日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、工学院の応募者総数の前年対比は97.1%。試験最終日には、100%を超えるのは必至です。1月31日現在(日能研倍率速報)、東京の私立中高一貫校全体の応募者総数の前年対比は、87.9%ですから、パンデミック入試という出願数や併願校の縮小傾向の中、工学院は奮闘しているといえます。

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★また、多摩エリアは、東京と言っても、少子高齢化が進み、小中学生の人口も減っています。都心が逆に増えているのに対し、決して立地が有利ということはありません。そういう意味では、勢いが確かにあるといえるのです。

★なぜか?それは、いろいろあります。しかし、その象徴的な生徒の活動があります。それは生徒自身のオリジナルの防災に対する番組があるのです。2年間、2週間に一遍間隔で、取材して編集して放映する「べりぃぐっと!チャンネル」がそれです。驚くべき継続力です。

★編集委員が、今年4月から高3になり、大学受験の準備に入るため、昨日1月31日最終回が発信されました。

★東北大震災で被災された方々が復興に信念をもって立ち臨んでいる現場に行って、取材するだけではなく、共に復興のために何ができるかを考え、発信することで協力したいという想いがあふれている番組です。

★数々のネットワークをつなぎ、場合によっては英語版もつくって、海外にも発信しています。

★Youtubeですから、最終回になっても、視聴することができます。ユーモアと愛が溢れ、対話やBGMが感動と思いを広げる番組です。何より、震災のみならず、パンデミックなど不測の事態に遭遇した時、どうすべきかとどのようなマインドが大事なのか伝わってきます。この番組の視聴回数はこれからも増えるでしょう。

★とにかく、ぜひ同番組をご覧ください。生徒が中高で、人生そのものを生き生きワクワク、そして真剣に生き抜いている姿に感動するでしょう。もちろん、このような活動ができるのは、工学院の教師と生徒の関係がすてきなわけです。恐れのない組織になっている証拠です。それにICT環境の充実度が半端ないというコトでもあります。

★このような経験をとおして、大学入試にチャレンジをし、大学に進み、やがて社会に出ていくわけですが。このすべての過程のトランジション経験が社会が変わっていく/変えていく包括的な関係を生み出していくことは想像に難くはありません。

★工学院では、ちーむ・べりぃぐっとのみならず、様々なプロジェクト活動が自走しています。豊かなトランジション経験ができる希少価値のある学校です。

★それに、なんといっても図書館とfabスペースが融合し、知の拠点をつくった教師の存在。トランジション経験には、先人の知恵の膨大な蓄積はやはり欠かせないし、今回のちーむ・べりいぐっとのYoutubeもその知恵の仲間入りを果たすでしょう。

★最終回は、トランジション経験では始まりでもあります。今までありがとうございました。そして、今後も新たな装いの形を期待しています。

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2021年中学入試情報(48)2月1日 パンデミック中学入試 東京・神奈川でも始まる トランジションの新たな意味を八雲のOGに学ぶ

★本日2月1日(月)、東京・神奈川で中学入試がスタートしました。中学入試自体はすでに関西、千葉、埼玉などでは始まっていますが、中学入試人口の最も多いのが東京・神奈川エリアです。今年の緊急事態宣言下でのパンデミック中学入試のクライマックスともいえます。

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★今回のパンデミックには、世界同時的に、本当に各領域で、閉塞感、焦燥感、緊張感、高ストレス、困窮感など鬱屈状況を強いられてきましたし、今もそうです。にもかかわらず、賢く判断し、自分の人生を、未来を見据えながら、強く進む多くの人々の立ち臨む姿も映し出されています。

★中学入試もその一つです。そして、2021年ほど、人生の転機というトランジションの意味を深く考えさせられた年もありません。人生の転機は、確かに自己変容が生み出す内面的なものではあります。しかしながら、自分の意志ではコントロールできない外部の予測不能な事態が襲い掛かってきたとき、自分はどうするのかどう変わるのか、自己変容とは、外部との関係で起こらざるを得ないものだということを身に染みて思い知らされました。

★私たちはパンデミックがあるにもかかわらず、外部との関係をどうカタチ作っていくのかという経験の中に生きています。ふだんは、あたかも自分の意志でコントロールしているかのような自己主導で動けると錯覚していますが、本当は常に関係性という経験の中で生きているのだということが、このパンデミックを通して了解できたのです。

★2014年に当時東大准教授の中原淳先生と京大准教授の溝上慎一先生が編者の「活躍する組織人の探究~大学から企業へのトランジション」という本に出会ってから、学校や大学での学びの経験いかんによって社会に出てから活躍するというトランジションが起こるというリサーチに目からウロコでした。

★21世紀に入って、それまであった「高偏差値の大学に入るための勉強をしたら、よき人生が決まるみたいな神話」が崩れつつあるというのは、世に言われていたし、私自身も実感していましたが、それが学びの経験によって崩すことができると知ってわが意を得たりだったのです。その時、両先生もアクティブラーニングについて理論化と実践をしていました。私も1998年から教育研究所を開設して、私立学校の先生方とPBLを行っていたので、シンクロしました。

★そして、仲間の先生方とPBLを基礎にした21世紀型教育を推進するコミュニティをつくってきました。ところが、今回のパンデミックで、このトランジションの意味が、さらに人生の転機に、多様な関係がつながっていて、PBLの意味が授業以上に人生そのものではないかと気づきました。

★私たちはいろいろなPBLの理論を学びましたが、いつもデューイに還っていきます。今回もそうです。そんなとき、デューイの次の言葉に出会いました。「教育は人生のための準備ではない。人生そのものなのだ」という言葉です。そこからPBLは、トランジションという人生の転機を生み出す人生そのものなのだと。だから、仲間や世界の人びとと協働して行うPBLは極めて重要なのだと。

★中原先生や溝上先生は、トランジションの範囲をどんどん広げて研究されていますが、ぜひ頑張って欲しいと思います。私自身は研究者ではなく実践家なので、その研究成果を参考にさせて頂きながら、幼稚園から大学までの生徒や学生のトランジションを豊かにするためのPBLを先生方といっしょに開発していきたいと思います。これもまたプロジェクトですね。

★いままさに奮闘している中学受験生もこのトランジション経験をしているわけです。そして豊かなトランジション経験としての学びのデザインをアップデートしているのが私立中学の先生方です。このトランジション経験をどのようにカタチづくるかによって、1人ひとりの自己変容は決まると同時に、未来の社会も変わっていきます。というのは、先にも述べましたが、自己変容は自分を超えて多くの関係を巻き込むし、巻き込まれるからです。

★いっしょに21世紀型教育を推進している八雲学園のOGが、同校のラウンドスクエアという学びの経験を通して豊かなトランジションを生み出していることを示唆している文章を書いています。八雲学園の在校生に向けてのエールですが、これは中学受験生へのエールでもあります。中学入試はしばらく続きます。また新型コロナウイルスの影響で、各校が追試などの設定もしていますから、今月いっぱい続く長丁場となります。迷ったり、ストレスが高くなったりします。そんなとき、ご紹介する八雲のOG三浦さんのことば「誰かに思いをはせるということ」を思い出してください。

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 誰かに思いをはせるということ 2018年度卒業 三浦詩織


 私は南アフリカとオーストラリアで行われた2回のラウンドスクエア会議に参加しました。世界中から集まってくる学生のほとんどは私より英語が堪能で、肩身の狭い思いをしながらそれでも拙い英語を話すしかない時間は辛いことも多かったです。しかしその中でも忘れられない思い出があります。それはオーストラリアで行われた地域会議での中国人の学生たちとの交流です。

 同じグループに分けられた私と2人の中国人の学生は共通の話題を通してすぐに親しくなりました。野外でのアクティビティを終えたある日、二人のうちの一人が私に、「日本と中国は仲が悪いけど、僕たち同士は仲良くできると思う」と言いました。何気ない談笑の後の一言でしたが、彼の素直な言葉は私の心に深く届きました。

 大学に進学し政治学を学ぶ中で、彼の言葉はより大切なものとなっています。ニュースを通して伝えられる他国の印象がたとえ悪くても、私たちはその国の一人一人の事を考えることをやめてはいけません。日本とは文化の違う国について考えるとき、そこには生活を送っている人間がいるということを身近に想像しなければいけません。ラウンドスクエア会議での経験は、遠い国に住む人のことを考える想像力を与えてくれました。

 また、遠い国の人に思いをはせることは身近な人に思いをはせることにもつながっています。学校という限られた空間の中にいると人との違いに敏感になってしまうかもしれませんが、人種や性別、年齢といったラベリングが同じでも私たちにはそれぞれ個性があります。私はもともと自己主張をすることが苦手でしたが、ラウンドスクエア会議を通して自分で考えて行動する経験を積むことで自分の性格を理解するようになりました。そして自分の個性を大切にできるようになるにつれ、他人の個性も尊重できるようになりました。

 ラウンドスクエア会議は英語を使うことを目的とした場ではなく、英語で交流するための場です。そのため完璧な英語が話せたとしても自分の殻に閉じこもっているだけでは意味がありません。また英語のレベルが低くても、積極的な姿勢があればどこかで成長することができます。ラウンドスクエア会議への参加は多くの人に開かれています。私の文章を読んで興味を持った方はぜひラウンドスクエア会議に参加して、そこで得た経験をまた後輩に受け継いでいってほしいと思います。

 

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