工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③
「工学院Z世代の未来の開き方(02)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん②」のつづき。
★仲野さんと郷野さんの6年間のポートフォリオに耳を傾けて共通していると感じたのは、①高感度なセンサーを有している。②それゆえ、オリジナルの視点をその都度生み出せる柔軟さがある。③グローバルでありながらローカルなあるいは出会った人々の課題を引き受けるマインドを有している。④解決策をどこかから持ってくるのではなく、その場で協働しながら生み出す対話思考力がある。➄そして、それを具体的な経験で終わらせることなく、独自の理論構築へというクリエイティビティがある。⑥GRIT MindとGrowth Mindsetを実装しているという点です。
★二人は、工学院という同じ学びの場にいたし、生徒会やMog(Mission on the Ground)プログラムにも同じく参加もしていました。そして、その経験を通して、それぞれの道を見つけ、仲野さんは成城大学経済学部経営学科に進むことが決まり、郷野さんは日本大学芸術学部写真学科に進むことが決まりました。共通経験をしながらも、それぞれの才能を豊かに広げ深めたわけです。デューイやシーモア・パパートではないですが、経験から学ぶということは、経験と各人の才能がケミストリーを起こすということであって、この経験をしたからこの情報や考え方を学ぶのだという教育方法論が明らかに間違っているということを、二人は証明しています。
★ただ、もしも先述した6つの能力(①高感度センサー ②オリジナル視点を柔軟に生成 ③グローカルな最近接課題発見マインド ④解決策を協働して創出する対話思考力 ➄マイセオリー構築のクリエイティビティ ⑥GRIT Mind×Growth Mindset)がないと、教師のインストラクションデザインの枠組みの中で情報を得て終わってしまうのでしょう。
★仲野さんは、生徒会長として、全国から集まる生徒会のフォーラムに参加し、視野を広め、生徒会が学内の多様な面で新しい発想や動きを創ることができるのだと気づいたわけです。従来行われてきたことを慣習的に継続するのでは、学校を支える生徒のマインドは、1人ひとりばらばらになり、学校に集うワンチームとしての意味が消失するのではないかと気づいたのだと思います。
★世界はもともとあったものがあり続けるのではなく、その都度そこに集った人々が自分たちに適合するように新たな世界を創りづけることによって持続可能に存在するのであるということですね。最近若手の新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルが主張していることです。もともとは、ミヒャエル・エンデが「モモ」や「ネバ―エンディングストーリー(はてしない物語)」で語っていたことにガブリエルも共鳴しているわけです。最近NHKがマルクス・ガブリエルや「モモ」を取り上げる番組を放映していますが、二人は、そして田中歩先生も、その時代の先進性と共鳴していると言えます。もちろん、無意識のうちでしょうが。
★ともあれ、仲野さんはその活動で、生徒会大賞を受賞するというのはすでに述べましたね。もちろん、郷野さんとの協働があってこそです。
★それから、工学院の数多くのグローバルプログラムに参加した経験が仲野さんの世界をどんどん新しく豊かにしていったようです。もともと、中3の夏に、学年全体がオーストラリア研修を行っていました。この研修は、筑波大駒場の副校長城戸先生が工学院の校長に就任していた時代、おそらく1999年ころからだったと思いますが、そのとき創られたプログラムです。
★「創造・挑戦・貢献」という校訓が筑駒と同じなのは、城戸先生の影響だと思います。城戸先生は、世界文化遺産やユネスコの事業にもかかわっていたグローバルな方だったし、執筆活動も旺盛でした。現代思想に造詣が深く、私が岡部先生(今は工学院の先生)とNTS教育研究所を創設した時に、そのコンセプトメイクのときの指南を受けました。理論と現場の現実を結ぶ視点が弱いと何度も何度も突っ返されました。その視点を発見する私の探究の道が始まったのはそのときからです。
★研究所のお披露目も兼ねたセミナーをブリティッシュヒルズで行ったときも同行していただいて、アドバイスやフィードバックをもらったのを今も鮮明に覚えています。つくづく工学院には縁があるなあと感慨深いですね。
★さてしかし、田中歩先生方は、なんと当時破格のオーストラリア研修に加えて、いくつもグローバルプログラムを開発実施したのです。私にはいくつあるのか把握しきれません。というのも、年中行事化しているものもあれば、そのときどきに生まれるものもあるからです。国際コンテストなどは、必ずしも毎年行われるとは限らないし、そもそも大人数で参加するようなものは、海外ではあまりないのです。
★それがグローバル教育というもので、同じ場所に集団旅行する修学旅行は、日本独自の行事で、海外ではそれはレアケースです。工学院の先生方のグローバル教育に対する柔軟な対応力がさく裂した6年間でした。生徒中心主義の工学院ですから、一握りの生徒が体験すればよいという教師主導のご都合主義は排除されます。
★最も代表的な例は、高2の後半で実施されるグローバル・プロジェクトです。工学院のグローバル教育の集大成ですね。幾つもの国に分散して、SDGsと関連する課題発見と解決をチームで乗り切ります。現地の人びとと協働するのも大きな特徴です。今年の高2はパンデミックでリアルには体験できませんでしたが、オンラインで乗り切りました。これもまた新しいテクノロジーの創出です。
★仲野さんと郷野さんはそのグローバル・プロジェクト(GP)も一期生です。そして、そこでそれぞれに感じ、新しい着想が生まれ、解決のためにそこで終わるのではなく、新たな大きな課題を引き受けます。それまでの二人の経験が、GPとの経験とケミストリーを生み出したのでしょう。総合型選抜で自らを語る時、大きなレバレッジになったのです。(つづく)
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