日本の大学入試改革の意味(02)スプートニクショックーゆとりーPISA-全国学力テストー適性検査ー大学入学共通テストそして思考力入試の意味
★ようやく、メディアや教育関係者が、大学入学共通テストを学習理論的側面、文化的側面、教育制度的側面、教育測定学的側面、社会学的側面、子供論的側面から論じ始めるようになっています。文化人類的側面でみるには、PBLのチーミングの理解やクリエイティブクラス、タレンティズムという市民生活経済的側面からみなければなりませんが、それでも多面的な側面からオフ会で論じるようになってきたのは、期待が高まります。
★いずれにしても、1957年のスプートニクショック以来、日本は米国の認知心理学の影響を受けて学習指導要領が構成されてきたと思われます。現代化カリキュラムはその象徴です。
★しかし、「落ちこぼれ」という言葉を生み出すものだったので、そこからはゆとり教育への道が生まれてきたわけです。そのときの座長は昨年亡くなられた有馬朗人先生です。文部大臣や中教審の座長を歴任しました。東大総長や武蔵学園学園長など多くの大学経営にもかかわりましたも。しかし、最後は母校武蔵学園に戻ってきたわけです。
★「ゆとり」に関しては有馬先生と多くの教育関係者は、おなじものを見ていても全く違うものをみていました。同床異夢とかヴィトゲンシュタインの引用する「ウサギアヒル」ですね。有馬先生グループがみるPISAは創造的才能者を育成する学びをリフレクションする場でした。しかし、他の教育関係者は反ゆとりを掲げるエビデンスとしてとらえました。
★そのズレは、有馬先生が武蔵出身者だったことに由来するでしょう。武蔵の学問的授業こそが、有馬先生はゆとりだと考えていたのですから。一般の教育関係者から見れば、それこそ現代化カリキュラムで、無理だろうと。知識注入型が基礎で、そんな思考力なんてというのが大勢でした。
★しかし、そこに両方の考え方をゲットする大手教育産業が顕れました。PISAを有馬先生の考えかたとして活用しながら、同時に知識が基礎だよねという考え方にも対応するように動いたのです。そして今の大学入学共通テストの構想を練り上げ、着々とビジネスを展開していきました。その当時から、もう一つ基礎テストをつくる構想がありました。これは今回の入試改革では外されました。ホッとしていますが、それもその当時からすでに大いに議論され、リサーチされていたのです。
★その時は、私はスプートニクショックで米国が遂行しようとしていた、構成主義的なカリキュラムを構想し実施していました。最先端の科学も小学生にも理解できる知識ではなく、科学者のものの見方や感じ方の構造視点を共有できるのだと。これはおそらく武蔵や麻布とシンクロしていたと思います。
★もちろん、その場でも、そんな抽象的な思考様式は難しすぎる、基礎と応用の二つのコースに分け、テキストも別々にするというグループと応戦していましたが。
★それでも、私は放送大学の先生方といっしょに創造的才能教育について書かせてもらって、それを理論的根拠として遂行しようとしましたが、反ゆとりの勢いはすさまじく、私は別の道を歩むことになりました。そんなとき、大手教育産業の有馬先生シンパのチームとPBL的な学びのプロジェクトを協働しはじめました。しかし、それも2011年3月11日をもって解散となりました。
★そのときのメンバーは、もちろん、今もそれぞれの場で教育改革リーダーです。
★さて、PISAーPBLを模索しているその横で、全国学力テストと公立中高一貫校の適性検査が実施されるようになりました。その内容や形式は大学入学共通テストにも適用されています。大手教育産業のAレベルをはじめとする海外大学の入試制度、それは小学校から大学までカバーするものなのです、それを日本でも行おうという構想が着々と実現されていきました。
★それはそれで、ユートピアシナリオにもなるし、デストピアシナリオにもなります。eポートフォリオの流れも合流していますから、生徒の生涯の内面のシノプティコンを生み出すデストピアも待っているかもしれません。
★そこで、私たちは同時にユートピアシナリオを描き続ける思考力入試の開発をしました。PISAを有馬先生と同じ感覚で捉えることができるメンバーが私学には当然いたのです。
★オンライン授業やテレワークで、こどもたちの学力や才能のビッグデータ化はエビデンス!エビデンス!と叫んで、進むみます。シノプチコンになるか相互にセレンデピティを生み出すエビデンスとなるのかは、時代の良心に耳を傾けるかどうかです。AI時代だからこそ最後に残る倫理観。
★メディアの方には、ぜひこの両方を複眼的に論考し、両方を市民と共有して欲しいと思っているし、その期待が実現するのではないかと思う今日この頃です。
★で、おまえは何をやるのかと。私は実践者=プラマティストですから、ひたすら創造的才能者=クリエイティブクラスを子どもたちといっしょに生み出す作業を地道にしていきます。
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