聖学院インパクト(09) 生徒共に「共通感覚」を創る思考力・判断力・表現力 他校にはない普遍的教育へ
★前回「Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(4)アイデアのレベルが違う」という記事を書き込むや、聖学院の教頭伊藤豊先生から次のようなメッセージを頂きました。同校の教育の本質がそこにはあります。掲載許可を頂いたので、そのまま掲載します。
タイの教育格差の問題がとても根深くて、山岳民の子供たちの顔を思い浮かべながら、正直、私はこれを解決不可能だと諦めていたんです。(生徒にはそんなことを言っていませんでしたが)
しかし、昨年4月、校舎に集まれない中、五十嵐君とZoomや電話で議論しているうち、「できるかもしれないぞ」と思えてきました。彼は諦めないんです。解決できると信じてレポートを書いていたようです。「こんな取り組みができます」と何度も報告を受けるうち、私はだんだんと明るい気持ちになりました。
少子高齢化を扱った他の生徒に「こんな未来にどうして希望が持てるの?」と聞いてみたら、「社会をよくしようとがんばってる人を知ってるし、自分もそこに加われるから」と返ってきました。
とても励まされました。結論ありきでレポートを書くのはどうなのかと思いつつ、彼らの信念に突破力を感じました。彼らは革命家なのかもしれません。
★「彼らの信念に突破力を感じ」とか「彼らは革命家なのかもしれません」という「ことば」を表現できる教頭がいる聖学院。その根っこには、タイの教育問題への痛みを、タイの人びとと共有できる共通感覚を伊藤先生と生徒が共に創っているからです。
★それは、生徒1人ひとりのタラントを開いていく教育の過程とメーコックファームの子どもたちのタラントを何とか開く手伝いをしたいという思い、メーコックファームをテコにタイの国を幸せの国に変えたいと努力している現地の人びとが思いを重ねているからこそできるわけですね。とても教科書の枠内だけで授業をしていたのでは、創ることができない共通感覚です。
★今「共通感覚」といったのは、欧米ではアリストテレスのセンススコムニスに端を発し、イギリスではコモンセンスとして引き継がれ、カントは「判断力批判」という美学の中で、思考力や美学と自由を論じる中で、アリストテレスの共通感覚論を捉え返しコペルニクス的転回を果たしている流れに聖学院があることに気づいたからです。
★この流れこそ、伊藤先生が「結論ありき」「信念」というものでしょう。私たちは、あまりに演繹法と帰納法に慣れ親しんでいて、共通感覚を創る過程で、すでに自然と社会と精神の秩序としてあるはずの合目的としての結論が存在していることを忘れています。平和とか自由とか幸せとかは、未来にあるのではなく、ハナミズキの種の中にすでにハナミズキの成長の姿があるように、存在しているのです。
★それを見出す共通感覚を自分たちがどう創っていくか。カントはすでに今でいう共感的コミュニケションの重要性を判断力批判の中で述べているのを、伊藤先生のメッセージを読んで思い出しました。
★そのように想起することになったのは、カントと伊藤先生はシンクロしているからでしょう。気づかなかったものを気づくから結論や未来のビジョンや目的になるのですが、気づかなかっただけで、それはすでにありてあるものなのです。普遍的というのはそういうものです。最近の欧米の哲学者は、人類誕生以前にあるものとして想定しているぐらいです。
★そのありてあるものに気づく拠点がタイ研修というシステムなのでしょう。
★伊藤先生が、イギリスや米国の聖公会やカントのプロテスタンティズムと共感するのは、聖学院という学校の由来の守護神であるからこそということもあるでしょう。突破力とか革命家というのは、このプロテスタントという原点に還る言葉なのかもしれません。
★そんな普遍的なところまで深堀している男子校は、聖学院以外には立教池袋と麻布しかないのです。立教池袋は米国聖公会ですから、多くの米国大統領出身のキリスト教の派です。世界を救済するアプローチは聖学院とは違います。しかし、戦後、そのアプローチで、立教を拠点に日本の教育は救済された経緯がありますね。麻布はキリスト教を捨てざるを得なかった経緯があって、ストレートにそこに挑めないということもあるでしょう。
★聖学院が海外大学進学者を多数輩出するのは、「社会をよくしようとがんばってる人を知ってるし、自分もそこに加われるから」という普遍的な共通感覚を独自に生徒と共に創る過程を実施しているからでしょう。ちなみにこの精神をサーバントリーダーシップと同校では語っています。欧米ではノーブレスオブリージュと言われているのは、中学受験生にとっても親しみやすい「ことば」ですね。
★「希望の私学」はここにあり。ですね。
★そうそう、この聖学院が創出している「共通感覚」はマインドでもあると同時に、未来を拓く有用なテクノロジーでもあります。判断力批判を書いたカントが、今聖学院を見たとしたら、そう言うでしょう。さらに、タイ研修での聖学院の先生方と生徒のこの共創行為をこういうでしょう。「崇高な美」であると。
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