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2021年1月13日 (水)

2021年中学入試情報(17)工学院好調。他の追随を許さないグローバル教育。1人も置き去りにしない高次言語思考力と共感力が育つ。

★工学院の中学入試の応募が順調に伸びていると田中歩教務主任からメールがありました。ことあるたびに田中歩先生がホンマノオト21に登場してきます。なぜでしょう?私は私立学校研究家というライフワーク(これは生業ではありません。人生ですね)をやっているので、学校全体の話に目配り気配りしています。ですから、本ブログでもアドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーという学校の経営、教育、進路全般について紹介しています。

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(写真は同校サイトから)

★そして気づいたのですが、この3ポリシー全般について実践もし、マネジメントもできる教師って実は希少価値だということです。田中歩先生ご自身は気づいていないかもしれませんが、得難い教師というわけです。英語の教師で心理学に造詣が深いというのがベースにあるからでしょう。

★今年も、工学院の帰国生応募者数は50名でした。昨対比161.3%です。帰国生入試と言えば、洗足学園とか聖光学院が老舗です。今年は、洗足は214人、聖光は145人でした。

★一見、大きな違いがあるように思うかもしれません。しかし、工学院の募集定員は100名強です。洗足や聖光はその3倍弱でしょう。それに、定員の半分の応募が帰国生だというのは、実は学内ではものすごいインパクトです。実際このインパクトは3ポリシー全体にケミストリーを生んできているのです。

★何がすごいって、1人も置き去りにしない高次言語思考力と共感力を身につけて卒業できる学校だということです。それは、ここのところ、総合型選抜で合格した高3生と対話してしみじみ感じました。

★また、直接は話したことはありませんが、高3で哲学コミュニティを学校を超えて運営している生徒もいるぐらいです。

★それから、もう2年前でしょうか同校でSTEAMのセミナーを田中歩先生方とコラボして行ったのですが、そのときのマイクラのファシリテーターは中学生でした。彼らの中には英語で高次思考を展開できる生徒もいました。英語でではなくてもプログラミング言語や日本語という言語で高次思考を展開できるファシリテーターばかりでした。

★そういえば、3年前も、新しい学びについてワークショップを行ったときに、工学院の生徒がファシリテーターのリハから行ってくれました。彼らは、海外大学、早稲田大学、ICUに進んでいます。

★そんな考える力と対話力、そしてファシリテーターができてしまう共感力があるZ世代なのです。一握りの特別な生徒だけではなく、マルチな才能をそれぞれに活かしているのです。

★そういう意味での生徒中心主義をミッションとして教育活動を行っているのが田中歩先生と仲間である工学院の先生方です。

★そして、ラウンドスクエアに加盟していることによって、とんでもない世界の問題を解決する議論をグローバルに展開するようになっているのです。まずは同校の英語科主任中川先生の論考「International Youth Day 2020」をご覧ください。

★インドとシンガポールのZ世代と“Parentification”について、同校の生徒が議論しているのです。これは、日本語では「親役割代行」という心理学用語です。日本でも当然問題ですが、いじめやひきこもりなどの問題が前面にでて意外と知られていない事態です。

★いや、すでにそれが日常になっていて気づかない状況に陥っています。実に深く辛い問題です。高齢化時代は、この「親役割代行」の家族問題に直面しています。家族というシステムの見直しがそこまできています。

★ところが、日本ではなかなか気づかないのですが、インドやシンガポールでは、貧困のために子供が親の代わりに家を守っていくことによって思春期の問題やアイデンティティの問題にぶつかっています。

★そうなのです。高齢化社会における親役割代行は、思春期を経験した子どもなのですが、世界で起きているのは、思春期をスルーする子供の親役割代行なのです。

★これは、ルソーやピアジェからはじまった子供の発達段階に適応して教育していくという近代教育システムを崩してしまう勢いなのです。議論の表題が“disenthrall”とは強烈ですね。日本の学習指導要領では、まず目にしないキーワードです。

★単純に束縛からの解法を意味するわけではありません。奴隷状態になっているにもかかわらず自身の活動に魅せられれていくのです。バスチアンが魔法にかかって自分はヒーローだという幻想に取り込まれどんどん自分を見失っていくという物語を思い出してしまいました。もちろん、仲間との出会いとどこまでも受け入れ寛容性によって、“disenthrall”されるわけですが。

★この強烈なダブルバインド状態は、しかし、シンガポールやインドでは可視化されているわけです。ところが、日本は気づかないのです。日本の現政権とZ世代の関係はまさに“Parentification”状況になっているというメタファーが成り立つのではないでしょうか。

★これが他に追随を許さない工学院のグローバル教育なんです。自分の顔は自分で見ることはできません。ですから、日本の問題は日本人同士対話していても気づかないのです。そこに気づくための対話はグローバルでなければならないでしょう。

★でも、それはやはり一握りの生徒やハイブリッドインターコースの生徒だけの話ではないのかと思う方もいるかもしれません。いえ、断言できます。全員に機会があるのです。その具現化は、同校のブログでいまどんどん発信されているグローバル・プロジェクトという工学院のグローバル教育の集大成プログラムを見れば明らかです。

★気づいていますか?八王子が、東京の拠点になるのを。気候変動によってそうなるのです。まだ、40年先の話ですが。

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