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2021年1月10日 (日)

2021年中学入試情報(12)相次ぐ女子校の面接中止が変えるコト 予測不能な事態に対応するトレーニング方法を生み出したかもしれない。要はタフなメンタルと柔軟な思考力。

★2021年の首都圏中学入試が本格化するや再度緊急事態宣言が発出されたわけですが、それに伴い、女子校が相次いで面接を中止しています。非常事態だからやむを得ないのか、やらなくて済むのなら今後もやらないとなるのか、それは学校によって姿勢は違います。この姿勢の違いが、各学校の応募者の増減に多少なりとも影響するのかどうかそれは今のところわかりませんが、面接の意義の見直しが起こることは間違いないでしょう。

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★桜蔭という学校は、やはりさすがだなと見直しました。「新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑み、対面での接触を避けるため、口頭ではなく記述による方法に変更いたします」というのですから。面接で合否は決まらないけれど、やはり成績だけでみてはいないぞという姿勢を崩していないわけです。面接では合否は決まらないのに、それでも面接をやる意味というのは、成績重視だけの人が受験するのを抑止する役目はあるのですね。もちろん、面接のときはうまくパフォーマンスするというアッパレな生徒もいるかもしれませんが、それは経験上わずかでしょうし、あまりにひどければ、契約は成立しないわけです。

★つまり、面接を行う学校は、本来は、いっしょに学ぼうという契約を交わす条件だったわけです。それがいつのまにか成績だけになり、そうでなければ公平性がないと受験市場は要求してきたわけですが、いっしょにこれから学んでいこうという契約の条件であって、その条件設定に公平性がなければはじめて問題になるわけです。

★受験マーケットにとって公平かどうかは、実は背景に受験権力が働いていて、それはそれで問題だということがパンデミックが問いかけているわけです。

★入試マーケットは、学校と受験生の契約の場ですが、受験マーケットは誰にとっての契約の場か少し考える必要がでてきました。塾を否定しているのではありません。入試マーケットにおけるサポーターとしての塾の役割は重要です。しかし、学校と受験生の相互契約の代行機関はできないのです。

★また、横浜雙葉は、他の学校のように、あっさりしていません。「面接の準備をなさっていた受験生・保護者の皆様には急なお知らせとなり、大変申し訳ございません」と丁寧に告知しています。しかし、であれば、その代わりに桜蔭のような対応を具体的にどうとるのかそこがなければ本当は困りますね。もし何もしないなら、横浜雙葉の姿勢は、そういうことなんだとなります。もちろん深い意味があります。それは後述します。

★それはともかく、エっ!?じゃあフェリスはあっさりしすぎているではないかと思うかもしれません。ところが、フェリスは国語で。たとえば昨年は、変えるべき常識は何か、変えたら社会はどうなるのかあなたの考えを200字以内で書きなさいという問題を出題しているのです。桜蔭のように急遽記述にする必要はそもそもないのです。ですから、シンプルな告知でよかったのでしょう。

★だったら、はじめから人物考査の必要はないのでは?とお思いになりますか?国語の200字は、あくまで学力を判断する材料です。ただ、長年行っているわけですから、200字と面接の相関が織りなす人物像のデータはあるわけです。今年は優先順位は、生徒の命を守ることで、今回は過去のデータに基づいて対応しようということでしょう。

★なんでそんなことがわかるのかと思うかもしれません。まともな評価を考え実践していれば、それは評価セオリーですから推測するに難くないのです。

★じゃあ、雙葉や女子学院はどうなのか?フェリスと同じことが言えます。雙葉は、フェリスのように生徒自身の考えを200字で書かせる論述問題は出題しませんが、考えるプロセスが長大になる問題ばかりを4科共通して出題します。学びのプロセスには、人物像が反映します。もちろん、結果のみで得点を出しますが、やはり長年行ってきているわけですから、かなりの高確率で人物像を推測できるでしょう。もちろん、この点に関しては当局は何も言いません。余計な憶測をマーケットに生みたくないですからね。

★でも、自分たちで問題をつくって、採点している方々はそこはよくわかるでしょう。入試問題が学校の顔というのはそういうことでしょうし。

★女子学院の問題はそうなっていないではないかと思うかもしれません。それは入試問題の問いだけをみるとそうかもしれません。しかし、女子学院は、学校説明会―入試問題―面接がセットになっています。

★説明会は、礼拝スタイルで行われます。毎朝行われる礼拝が嫌なら受験しないでくださいとまず条件を設定します。その礼拝は、必ず先生と生徒が順番で語らなければなりません。立教女学院や恵泉、普連土もそうですね。そして、その内容は優れた小論文の解答もびっくりするような内容です。

★それに取り組む覚悟がないと受験はできないわけです。それから、女子学院の問題は、問いはそれほど難しくないのですが、国語と社会の素材が現代の問題や世界の痛みを考えざるを得ないものに偏っています。こういうものの見方・感じ方に共感できなければ受験できません。そのうえで、面接です。これに関しては桜蔭と同じで、長年蓄積してきている学力と人物像の相関というものはあるわけです。多少ズレるかもしれませんが、今年はそれはやむを得ないと判断したのだと思います。

★じゃあ横浜雙葉はどうなのか?実は、横浜雙葉は、もともと200字は出題する文化だったのですが、それは丁寧な面接でカバーできるから、少しハードルを下げてきたという事情があるのでしょう。

★エっ!すると入試問題に200字が出るかもしれないのかとなるわけですが、有り得るでしょうね。つまり、面接を中止るのは、土壇場で決まっているわけではありません。すでに大学の総合型選抜などで面接を中止したという情報は9月の段階で得ているわけですから、どの学校も想定していたでしょう。

★入試問題作成や変更は、その段階では、まだ間に合っていたはずです。

★かくして、面接中止という事態は、入試形態が変わったというだけではなく、入試問題の傾向にも影響を与える可能性があるし、そもそも評価とは何かを再構築する事態も生み出す可能性が大なのです。とはいえ、受験生に直接の影響があるわけではありません。

★入試問題の傾向が変わることは、平時でもよくあることですから。それに、受験生も柔軟な対応をトレーニングしていますから。しかしながら、予測不能な事態に対応する受験準備ということは、2021年中学入試の大きな特徴といえましょう。

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