工学院Z世代の未来の開き方(05)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん➄
「工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④」のつづき。
★郷野さんは、総合型選抜の資料としてポートフォリオを提出しています。3つの部に分かれていました。第1部は、生徒会誌「扶養峰」を編集した時に掲載した自身が撮った写真。文化祭や体育系部活で輝く同僚の表情や姿や身体の動きを「一瞬」に鷲づかみする写真でした。
★第2部は、カンボジアでグローバルプロジェクトを実施したときの写真。カンボジアの街の人びとの実生活の中の姿を撮影した写真。第3部は、天文学部で撮影した天体の写真。いずれも絶品だと私は感動しました。前回語ったように、これで日芸写真学科に合格したのだと思ったわけです。
★しかし、郷野さんはそうではないと。特に第2部の写真は一方的に自分の見方を押し付けて撮っただけで、カンボジアの人びととコミュニケーションをとっていないから、日本とは違う村の風景の中の人びとを撮ったから、いつもとは違う感覚がでたけれど、まだなぜこの写真かということが理論的に詰めれていないのだというのです。
★だからこそ、そこを追究したいという情熱を面接官とシェアしたのでしょう。面接官は、直接的な質問はせず、カンボジアについていろいろ問いかけてきたそうです。なるほど、そこだったんですね。
★「そこ」ってどこか?実は、郷野さん自身が第3部ですでに回答しているのです。天体の写真は自分の眼の中に撮るべきコンセプトやアイデアがあると思っていたが、そうではなかったと。天体そのものの被写体にもそのコンセプトやアイデアがあるのだと。そこを写真にしなくてはならないというのです。
★そして郷野さんは、その「自分に囚われないで」学び続けることができる大学を選んだのだと。自分に囚われない学びに挑戦し、自分に囚われないからこそ創造性は拡張し、自分に囚われないからこそ貢献できるのです。工学院の校訓をそのまま深めた郷野さんだったのです。
★そして、仲野さんも、また同じことを語っていたのです。自分の殻を何度も破ってきた苦行。それが6年間だったと。もちろん苦行だから苦しくて辛いのではなくて、だからこそワクワクして立ち臨んだのでしょう。
★仲野さんは、このような二人のことを自ら「変態」と呼びます。このシリーズの一回目に〇〇だからこそこの苦行を乗り越えることができたのだと紹介しました。この〇〇にあてはまることばこそ「変態」だったのです。
★もちろん、この「変態」という意味は、スティーブ・ジョブスがApple社に帰還した時に創った有名な動画広告のコンセプト<think different>のことです。ピカソやアインシュタイン、フランク・ロイド・ライト、キング牧師、マリア・カラス、バックミンスター・フラーなどの表情を次々と流し、クレージーな個人が世界を変えてきたのだと語るCMでした。
★21世紀型教育が目指すクリエイティブクラスのロールモデルとなった動画です。田中歩先生は、もう一つの意味の変態を付け加えました。つまり、自己変容という意味です。
★仲野さんは、総合型選抜は自分の興味や好奇心のあることをとことん追求していく生き様と大学の欲する学生像のマッチング。自分だけではなく、大学という相手をもどう巻き込めるかなのかだと。こんなことをやり抜くのは変態でないとできないと言うのです。
★仲野さんも郷野さんもジョブスのクレージーラインナップに登場する人材だったということでしょう。ジョブスのCMの最後の1人は、無名の少女が目をパチッと覚醒したところで終わります。
★さあ、あなたもクレージーになろうよというわけでしょう。二人はそれぞれの道でクレージーな道をこれからも継承していくでしょう。
★今回、二人に感動的な対話をいただきました。二人のような生徒が過ごせる工学院。田中歩先生も静かに情熱を燃やし、明日への戦略を練っていることでしょう。
★ヘルマン・ヘッセがこう語っているのを思い出しました。
<わたしたちのこの手に包まれている一つの希望とは何か。自分自身を今日いくらかでも変えることだ。昨日までよりも善く変えていくことだ。本当にそのことを実践する人々にこそ、世界の幸福はかかっている。 書簡 1950>「ヘルマン・ヘッセ. 超訳 ヘッセの言葉 (Kindle の位置No.340-343)」
★仲野さん、郷野さん、田中歩先生、まことの希望をありがとうございました。
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