工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④
「工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③」のつづき
★仲野想太郎さんは、高2のグローバル・プロジェクトでは、ベトナムのチームのリーダー。高2のMogではカンボジアに参加し、そこでの現地の人びととの起業構築と実際の運営で成功。現地の人々に喜ばれました。そのときもリーダーでしたから、ベトナムでもうまくいくと自信をもって立ち臨んだといいます。
(左上仲野さんの写真は、生徒会大賞受賞時に右上郷野さんの撮影)
★ところがです。10日間のプログラムでしたが、用意周到に現地の人と対話し、計画も立て、前回の経験を踏まえて運営したわけですが、その起業は失敗に終わりました。すでに制約された期限の半分の5日間が経ってしまったのです。オーストラリア研修で、英語のプログラムを場所を借りてやるのではなく、現地の授業に参加せて欲しいとコーディネーターや現地の先生方と交渉して、それを実現することに成功した自信、とれるはずがないと変態扱いされても、変態大いに結構と生徒会大賞をねらって獲得した自信、カンボジアのMogに参加し、見事に起業を成功に収めた自信、そのすべてを、この5日間の情熱に注ぎ込んだのに、すべてが崩れる落ちる「瞬間」だったそうです。
★がしかし、仲野さんは、情熱だけではダメなのだと思い起こし、何が間違っていたのか対話していったら、起業のパートナーが違っていたということに気づいたそうです。カンボジアは現地の人々がパートナーで、いっしょに考えたし、マーケットに参加するのも彼らでした。
★ところが、今回は宿泊先はホテルの人で、ホテルの人といくら話し合っても、今回のクライアントパートナーは観光客だったということに気づきました。観光客のニーズを全然掘り起こしていなかった。そこで観光客にアンケートの協力を仰いだわけです。そこで、クライアントパートナーの欲するものがわかり、再起業することができました。見事に成功です。
★情熱は必要だが、実績を残すための戦略も必要なのだということを改めて学んだそうです。そして、何より、国によって地域によってマーケティングの方法が違うのだと。だとすれば、このマーケティングのパターン分析を調査し理論化したいと。それが総合型選抜のモチベーションになったわけです。
★この話を聞いた大学の面接官、つまり教授陣はさあいっしょに研究しようということになったのは納得がいきます。情熱と思考対話力とマーケティングイノベーションの視点を持っているのですから。それに、経営学では、アンケートは実はリサーチのためだけのものではありません。そのアンケートに参加したペルソナが、共感するような問いかけをすることがコツなのです。仲野さんの短期間でV字回復したのは、アンケートに協力を仰ぐ段階で、応援を取り付ける共感をシェアリングしていたということでしょう。冷たいアンケート項目か熱いアンケート項目か、確かに情熱だけではだめですが、情熱がなければアンケートの段階で成果をあげられなかったでしょう。
★さて、一方の郷野翔太郎さんは、グローバルプロジェクトでは、カンボジアに行きました。そこで見つけたのは、実は仲野さんと違って、起業構想から外れた路地ででした。もともと生徒会誌「芙蓉峰」の編集をしていたわけですが、そのとき学内の各イベントの様子を写真撮影して編集していました。
★総合型選抜の時に、その写真がポートフォリオの一環として提出されたわけですが、面接官である教授陣は、ハッとしたと思います。なぜなら、たとえば、私が取材で写真を撮りに行ったとしても、記事掲載の時に写真があったほうが見てもらえるという功利主義的な考えのスナップを撮るだけですが、郷野さんのアングルは、写真の向こうに工学院の生徒の生き様や感情や情熱が伝わってくるのです。そんなショットが選択されて掲載されているのです。
★郷野さんの撮影した生徒会長仲野さんの写真も、軸のブレない、挫折を乗り越える明るいエネルギーの塊感を表現しています。郷野さん自身が、仲野さんのメンタルモデルをそう明快に表現していますから、そのコンセプトが見事に宿っています。
★ですから、郷野さんは、カンボジアに行ったとき、自分たちが行っている起業はなかなかいいものだけれど、カンボジアの姿そのものを本当に感じ取っているかとふと思い、路地にむかったそうです。そこで見た光景を写真に収めました。そしてそれがポートフォリオに掲載されています。
★なるほど、これで総合型選抜にパスしたのだと私は思いました。ところがです。郷野さんの話はそこからが大事だったのです。(つづく)
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