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2021年1月26日 (火)

2021年中学入試情報(34)海城 総応募者数前年対比100.2%の重大な意味

★2021年1月25日現在(海城学園サイト×首都圏模試センターサイトから)、海城の応募者総数の前年対比は、100.2%、前々年対比が103.8%。いわゆる難関校が苦戦する中、海城と駒東は前年対比100%を上回りました。しかしながら、両校の上回っている理由におそらく違いがあります。海城は世界の受験生・保護者が憧れるエスタブリッシュ校になっているということです。また本間の大げさな表現だと思われるかもしれません。

             21応募 20応募 19応募 前年対比 前々対比
海城(帰国生入試,A方式) 93 120 132 77.5% 70.5%
海城(帰国生入試,B方式) 76 60 66 126.7% 115.2%
海城(一般入試①) 552 539 508 102.4% 108.7%
海城(一般入試②) 1277 1,276 1,218 100.1% 104.8%
総数 1998 1995 1924 100.2% 103.8%

    21応募 20応募 前年対比
麻布 881 1,016 86.7%
開成 1243 1,266 98.2%
筑波大学附属駒場 677 694 97.6%
駒場東邦 639 605 105.6%
栄光学園 811 827 98.1%

(2021年1月25日現在 首都圏模試センター出願倍率速報から)

★しかしながら、その理由はある程度推理できるのです。海城は駒東はじめ上記のいわゆる難関校が設定していない帰国生入試を開いています。ここが決定的に大きく違います。そして、ここが起爆剤となって、海城全体がたんなる難関校ではなく、世界のエスタブリッシュ校に変容させているわけです。

★海城の帰国生入試にはA方式とB方式があり、減っている入試はAだけです。Bも一般入試も増えているのです。しかもBはむしろ増加率が他の入試に比べて高いのです。

★いったいこれは何を意味しているのでしょう。それは、おそらく海外の帰国生のうち日本人学校から受験する数が減っているということを意味します。海外全体の日本人学校自体が勢いがないということもあるでしょうし、海城を受験するのに、A方式の国語と算数と面接の準備しかしない生徒というのが少なくなったのでしょう。

★日本人学校で海城を選択する生徒はそもそも4科目の準備をします。すると、国語と算数だけ準備している日本人学校の生徒と4科目の準備をしている生徒では、その段階で差がついてしまうので、実質4科目入試のレベルになるため、国語と算数のみの受験生は海城を回避するでしょう。

★仮に国語と算数だけの準備をした場合、日本人学校の生徒も英語をしっかり修得するのが当然の流れです。日本人学校の生徒でもB方式を選択するということになるでしょう。

★それと、やはり現地校やインターナショナルスクールに通わせる家庭が多くなってきたということでしょう。それがB方式の増加率が著しい理由だと思います。

★特に北米の帰国生は、圧倒的に日本人学校より現地校かインターナショナルスクールでしょう。海城はグローバルネットワークとサイバースペースのハードパワーとソフトパワーは、上記のどこの学校よりも完備しています。

★シリコンバレーの受験生・保護者は海城に憧れてしまうのは当然ではないでしょうか。

★今回の難関校の苦戦の理由は3つあります。

1 今回のパンデミックで、本質的かつ合理的な併願をするようになった

2 難関校でもグローバルでイノベーティブな学びの環境が整っている学校を保護者が選択するようになった

3 教師一人ひとりが卓越しているだけではなく、教師のチーミングがうまくいっている組織を選択するようになった

★海城は、そのいずれも満たしているのです。特別校長補佐中田先生は、グローバル教育もICT教育ももちろんコミュニケーションやドラマエデュケーションも立ち上がりでコーディネートしています。それぞれの領域のリーダーがいる学校はたくさんあります。しかし、このすべてを包括的にマネジメントできる教師は、学校にはそう簡単には存在しないのです。

★校長が出来るかといったら、包括的にマネジメントするというのは、授業のデザインや評価のシステムデザインまでできなくてはなりません。だって、すべてはそこから生まれているので、ここから考えていく、つまり細部に神は宿るという慧眼の持ち主がいないと包括的なマネジメントは、教育ではできないのです。

★企業は、この授業に相当する仕事はありません。研修を1日6時間毎日全員がやっている企業は潰れてしまうでしょう。Googleだって20%ルールです。

★この教育と企業の組織のコアワークの差異を無視してCT教育やグローバル教育を語るリーダーが前面に出たとき、今の受験生や保護者は納得しないのです。難関校であれ、もし東大に50人以上いれることができなくなれば、それは当然、先の3つの条件を満たしていないからそうなったのであるから、人気は衰退していきます。

★海城はハーバードや東大にもたくさん合格していきますが、そこに人気の軸足をおいていないのです。先の3つの条件を満たす学びのデザインをしたうえで、実績がでているから世界から注目されるエスタブリッシュ校になっているのです。

★中田先生は、世界の情報を徹底的に集めます。Googleのプロジェクトアリストテレスは当然意識しているでしょう。GAFAも憧れるエスタブリッシュ校である理由はそういうところにもあります。

★もっとも、海城当局は、GAFAやIBなど調べ尽くしますが、虜になることとはありません。そこが大きな魅力です。知の自由、知の冒険。海城の心意気でしょう。

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