「教育とは生き方そのもの」へシフト(02)デューイ・ルネサンスはPBLの実践の中で生まれる。
★今年2021年は、デューイの「民主主義と教育」が出版されて105年。2016年にはその100周年記念で、各国でシンポジウムやセミナーが行われてようです。日本でも、日本デューイ学会がデューイ研究を行い、その成果が昨年12月に出版されました。デューイの教育思想の現代的意義が多くの学者によって投稿されています。現代の教育の課題をデューイならどう考えるかという着想で書かれているため、多くの学者が日本や世界の教育の課題をどうとらえているかがわかるかもしれないと思い購入しました。
★デューイのアート教育と民主主義のつながりを現代化するという課題やそもそも民主主義を教育にどう結びつけるかデューイは解答していないとかデューイの職業教育に対する考え方が、当時から進路先教育を批判していたということなどなどなるほどなるほどとわかりやすかったですね。
★ただ、教育思想として教育学の枠内で語られているので、デューイが「民主主義と教育」でヘルバルト主義を批判する文脈で語っている箇所をPBLのエッセンスと捉える見方はなかったようです。
★民主主義と市民社会と教育を結びつけるのは、デューイにとってはPBLです。直接この言葉をデューイは同書では使っていませんが、別の書物である「考える方法」においては、「コンストラクション」と「プロジェクト」は多用しています。
★そして、そのPBLを人生の準備として扱うのではなく、人生そのものだと捉えるのです。
★デューイのこの着眼点でみるから、民主主義と市民社会と教育は結びつきます。職業教育を進路先教育ではないとするところに、民主主義を国家による実現ではなく、生活そのものの中に創り上げようとするデューイの斬新な発想があります。
★国家というシステムは、民主主義のすべてではなく、民主主義を運営する一つの装置に過ぎないのに、生活をそれに従わせるのは人間をないがしろにすることではないかというわけです。デューイはあくまで哲学者であって、教育学者ではありません。
★教育学者という枠内でデューイ再評価しても、現代思想のネオプラグマティズムの枠内で再評価しても、それはそれで何が問題なのかを露にするという点で貢献していますが、教育は人生であり、民主主義や市民社会も人生そのものなのだというデューイの考えを実践にシフトすることはできません。
★そのためには、PBLとは何か、なぜ必要なのか、エエーイ!デューイが今実践するとしたらどうするのか創ってしまおうというのがポイントですね。
★いずれにしても、デューイが哲学的に究めようとした主観と客観を分けることによって生まれるディストピアを阻止する学びとは何かは、ハイデガーをどう超えるかということと結びつきます。
★なんだやっぱり哲学の話ではないか?と思うかもしれませんが、ここには重要な意味が隠れています。主観と客観の二項対立を解決する方法は、日々生きている私たちの生活に新たな道を開くことになるという意味です。やはり21世紀は教育の時代だったということですね。
| 固定リンク
« GLICC Weekly EDU(09) 2021年学びの取り巻く環境は、デューイだったらどうするか考えれば見通せる。 | トップページ | 工学院Z世代の未来の開き方(02)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん② »
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(07)新しい物語を創る生徒たちのキャリアデザインへシフト 気を付けて、終焉したはずの大きな物語がゴーストとして闊歩しているライフデザインはまだ残っている(2024.09.09)
- AI社会だからこそ精神の時代(03)駒沢学園女子 時空を超える美しくも凄まじい無限の価値を生み出す教育(2024.09.09)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望(2024.09.08)
- AI社会だからこそ精神の時代(02)桜美林の美しく凄まじい信念の源 小泉郁子(2024.09.08)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(05)ルトガー・ブレグマンの考え方も参考にして進む(2024.09.07)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(07)新しい物語を創る生徒たちのキャリアデザインへシフト 気を付けて、終焉したはずの大きな物語がゴーストとして闊歩しているライフデザインはまだ残っている(2024.09.09)
- AI社会だからこそ精神の時代(03)駒沢学園女子 時空を超える美しくも凄まじい無限の価値を生み出す教育(2024.09.09)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望(2024.09.08)
- AI社会だからこそ精神の時代(02)桜美林の美しく凄まじい信念の源 小泉郁子(2024.09.08)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(05)ルトガー・ブレグマンの考え方も参考にして進む(2024.09.07)
「創造的破壊」カテゴリの記事
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(07)新しい物語を創る生徒たちのキャリアデザインへシフト 気を付けて、終焉したはずの大きな物語がゴーストとして闊歩しているライフデザインはまだ残っている(2024.09.09)
- AI社会だからこそ精神の時代(03)駒沢学園女子 時空を超える美しくも凄まじい無限の価値を生み出す教育(2024.09.09)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望(2024.09.08)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(05)ルトガー・ブレグマンの考え方も参考にして進む(2024.09.07)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(04)工学院・聖学院・文大杉並 世間から見えない次元の教育をしているワケ(2024.09.05)
「PBL」カテゴリの記事
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(07)新しい物語を創る生徒たちのキャリアデザインへシフト 気を付けて、終焉したはずの大きな物語がゴーストとして闊歩しているライフデザインはまだ残っている(2024.09.09)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望(2024.09.08)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(04)工学院・聖学院・文大杉並 世間から見えない次元の教育をしているワケ(2024.09.05)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(03)本格的なSTEAM教育は始まったばかり(2024.09.04)
- 2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(02)新しい私立中学選びの座標軸(2024.09.04)
最近のコメント