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2021年1月

2021年1月31日 (日)

品川翔英 期待値を超える(03)なんでもできる恐れのない学校 受験生への応援メッセージ

★雑談段階で、品川翔英の3人の高1生が柔軟で寛容であるということは十分にわかりました。そこで、PBLの授業はどんな感じかインタビューするよりもちょっと私もミニPBLをしたくなりました。

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★まず上記の線画をみてもらい、何に見えるか順番に語ってもらいました。一見あひるのようにも見えますが、角度を変えるとピースをしようとする手のようにも見えますとか、あひるとか何かの鳥には確かにみえますが、角度を変えるとうさぎにみえますよね。まあいろいろみえます。一通り語ってもらったあとで、2度目のサイクルを回します(このサイクルを回し続けるアクティビティを<ぐるぐる>と呼んでいます)。

★とくにルールを決めてはいないのに、次々と前の仲間の発言と違うことを語っていきます。具体的なものにもみえるけれど、抽象的な線とか点でだと理解できます。要するに認識ということにつて語っているわけですよね。同じものでもいろいろ見方によってはみえてくるということですよね。違うものでも同じということかもしれない。トリックが隠されているということですとか果てしなく思考は続きます。推理や想像力が豊かだし、複眼思考ができるすごいねと思わず驚嘆。

★この図は「うさぎあひる」と言って、数理哲学者のヴィトゲンシュタインをはじめ多くの哲学者や心理学者がモチーフにして、たしかに3人の<ぐるぐる>アクティビティで出てきたように認識について語るときに使われます。

★PBLの醍醐味は、いろいろなテーマがうさぎあひるの絵のように紐解かれていく暗号解読だったり、まさにトリックを見破る思考実験が挿入されていることですが、はじめて会った私と心を開いてどんどん思考の翼をひろげてくれるのです。

★それは、村上先生や田中幸司先生が、今回の対話にいっしょに参加し、何を話さなければならないとか何を話してはいけないという制約をかけることなく、むしろ生徒の方が柔軟な考えができるとエールを贈ってくれるのです。ですから、高1の皆さんは、臆することなく自由に話せるし、話していくにしたがって、視野が拡大し、思考は深くなっていく体験を共有していくわけです。

★心理的安心安全の場を創っているので、この学校でなら話せるし、いろいろなことができるということだそうです。

★さて、話はまだまだ続きますが、今回のインタビューの最後に、受験生に向けてメッセージをチャットに書き込んでくれました。明日はいよいよ入試がスタートする2月1日ですから、3人の高1生から受験生へのエールを贈りたいと思います。

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Yさん
品川翔英は自由で穏やかな雰囲気が漂う学校です。まだ共学化して間もなく、伝統を創り上げる過程を経験できる、大変貴重な場所です。新入生の皆さんと共に、この品川翔英を創り上げていく日を楽しみにしています。

Tさん
私たちはまだなんでもできます。品川翔英はまだ新しい学校なので学校としての文化をまだ作れていません。だからこそ新入生の皆さんが無限に可能性を広げられます。だからやりたいことをまず見つけてみてください。君たちに会えるのを楽しみにしています。

Nさん
新入生の皆さんへ やりたいことには恐れず挑戦し、好きなことには貪欲に生きましょう 全ては未来の自分が輝くためです。 

★村上先生も田中先生も、3人の高1生のこのメッセージを見て、彼らたちといっしょに学ぶことができることに誇りを抱いたでしょう。(つづく)

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GLICC Weekly EDU(19) かえつ有明佐野先生と対話。入試直前に心理的安心安全のコンディションを。リラックスのための語り。

1月29日(金)、<GLICC Weekly EDU 第15回「サイコロジカル・セーフティーの環境から才能がはばたく」 かえつ有明佐野先生との対話>がありました。かえつ有明の教育そのものについては、56分くらいに、つまり終わる寸前に語られます。それまでは、大きく変容しメンタルな本質的な意味で人気が爆発している理由が語られています。この理由の語りそのものに耳を傾けていると、自然とマインドフルネスに到達します。

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★入試直前に心を平静に保ちたい、でもなかなかできないという場合は、聴いているだけでもリラックスできると思います。今回のゲストとして佐野先生をお招きした主宰の鈴木裕之さんのすてきな気遣いですね。

★もちろん、受験生だけではなく、心の平安を求めている方にもぜひおすすめです。

★今回のパンデミックで、私たちは、危機に直面している時こそ心理的安心安全をいまここで生み出すことが大事であると身に染みてわかtっています。そうはいっても、なかなか難しいことです。

★かえつ有明は、常にこの心理的安心安全を生み出しながら教育を行っています。このコンディションを崩すのは、実もいとも簡単で、佐野先生は、「やらねばならない」というやりととりが生まれたときに、すぐに崩れると語ります。だからこそ、この安心安全を持続可能にする対話が大切なのだと。

★かえつ有明はダイバーシティも大切にしているわけですが、国際生を受け入れるためにも必要だというだけではなく、心の多様性の話でもあるのだと。

★この対話の仕掛けは、U理論とシステム思考という世界の人々が注目している学習理論に裏付けられています。とくに、システム思考を推進しているMITのピータ・センゲには佐野先生が直接会いに行って、薫陶をうけています。

★ピーター・センゲのシステム思考は、今ではEQと結合し、「コンパッションネイト・システム・シンキング」という進化を果たし、佐野先生の言葉では、グリーンな世界の境地に達しているといいます。このグリーンな世界を目指しているのがGAFAでもあります。

★グーグルのプロジェクト・アリストテレスが見出した最高のチームの条件と佐野先生が同僚及び生徒と生み出しているグリーンな世界の対話はシンクロしています。メンタルな本質的な意味で人気がある理由=恐れのない組織は、多くの世界の識者やグレートカンパニーのプロジェクトが行きつく境地とシンクロしているというわけです。

★少し書きすぎました。まずは視聴していただければ幸いです。そして心理的安心安全を生み出し明日からの入試で未来へ向けて念願成就を。祈っております。

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2021年中学入試情報(47)三田国際 マーケティングと教育のミックスの完成 新しい教育を開く場 真実を語ろう

★1月29日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、2月1日以降の入試の総応募者数は、2000人を超えています。新型コロナ感染防止のために、無理をせずに行きたい学校の中で確実に合格できる学校をできれば受験回数を減らして安心安全な受験をしたいというのが、2021年のパンデミック入試の当然の傾向です。

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(昨年2月1日の三田国際の入試風景。今年はこの光景はどこの学校でも自粛となるでしょう)

★ですから、2000人以上の総応募者数を集めていても、ここのところ前年対比でみてきたたために、同校について触れてこれませんでした。しかしながら、新設校で2000人集めて、メディアが注目するというような動きもあるので、ファクトを確認しておきたいと思い、明日東京神奈川の中学入試がスタートする前に記しておきたいと思いました。繰り返しますが、ファクトは、三田国際の人気は、やはり首都圏中学入試でダントツだということです。

★2014年に共学化し、名称も変更し、スーパー21世紀型教育を断行し、8年目を迎える今日も、最終的に3000人前後の総応募者を集めている学校がどこにあるのでしょうか。このことを確認しておきたかったのです。

★さて、ここからはオピニオンですから、ここまでお読みいただいたメディアの方々ありがとうございました。ここからは読まなくて結構です。

★三田国際は、たとえば、御三家が前年対比100%をきるのと同じ理由で、前年対比は今のところ100%をこえません。御三家の中でも麻布はかなりおとしていますが、それは三田国際にシフトしたとも言えます。今のところと言ったのは、最終試験まで出願数は伸びます。毎年のことですが、麻布以外の御三家級の学校を受験した生徒が、チャレンジしにきます。

★受験生は、受験をしながら学びます。特に今回は、学校説明会もオンラインで行われるというケースが多かったので、受験の時はじめて学校の中に足を踏み入れるということがいつもより多いと思います。

★そのとき受験生は気づくはずです。もちろん保護者も。メディアや塾の情報がすべてではないということを。海外大学への視野をしっかりもっている教育の雰囲気を肌で感じるでしょう。ICTもちゃんと使っているではないかと。御三家級の学校で、この点をはっきりさせて前年対比を上回っている海城学園には、麻布の減った分の受験生が三田国際同様集まっているはずです。

★私が麻布にこだわっているのは、麻布の受験生・保護者は、時代を感じるに敏です。同時にこのパンデミックです。合理的に受験します。ですから、海城や三田国際を最初から受けたほうがよいと決断する傾向は御三家のなかで多くなるのは当然の心理でしょう。

★そして、開成―筑駒のラインで受験する場合、現段階ではいわゆる東大合格実績の高い学校を併願しているでしょう。ところが、情況は違うということを身に染みてわかるのです。開成や筑駒こそ、海外大学準備教育やフルスペックのオンライン授業をやれるSTEAM教育に熱心だと。

★東大頂点ピラミッドをねらっているだけの進学校との併願を急遽取りやめ、2月4日に集結するのです。この日の定員は、10名ですから御三家の入試より難しくなるのは当然です。

★それに、2月3日の午後入試は15時集合ですから、池尻大橋から田園都市線で用賀はすぐに着きます。とはいえ、メディカルサイエンステクノロジーコースの入試しかありません。試験科目も算数と理科です。筑駒受験生のうち将来の理系志望者が受けに来るでしょう。定員は30名です。1クラス分ですね(ここが極めて重要)。

★もうおわかりですね。三田国際は御三家級の生徒のうち進取の気性に富んだ家庭の生徒が、集まってくる学校になっているのです。

★かくして、入試日や時間の設定がマーケティングと教育のミックスでできていて、人数を集めればよいという経営上の理屈だけで動いているのではないのです。

★当然このような緻密な計画を立てる姿勢は、ふだんの授業にも反映しています。三田国際のproblem-based-learningというPBLは、私がいっしょにつくっている仲間の学校のproject-based-learningというPBLとはちょっと違っています。三田国際の実践しているPBLの根っこはもともと医療領域の教育で行われてきたものです。特に戦後発展したインストラクショナルデザインという米国の認知心理学の結晶ですね。

★私のは、戦前からある、もっというと126年前からあるデューイのコンストラクショニズムの系列のPBLでダイアレクティカ論理にもとづくもので、わかりにくいかもしれません。そこにいくと、三田国際のPBLは実によく設計されていて、安定しています。

★インストラクショナルデザインは、ち密に設計された学びだからこそ発想の自由人を生み出すというプログラムです。御三家級の学校に入っていっても、このようなプログラムがあるわけではありません。授業の達人の先生の頭の中にある設計はもちろんありますが、それは目に見えませんから、その先生にシンクロした生徒は伸びますが、そうでない生徒は必ずしも伸びません。

★ところが、三田国際はインストラクショナルデザインがきっちりできていますし、テクノロジーによって可視化されていますから、その設計を生徒もシェアするわけです。

★インストラクショナルデザインの極致はブルームの学びのデザインです。ブルームと言えばタキソノミーで有名で、現代の世界の教育に大きな影響を与えています。IBもCEFRも、今回の新学習指導要領も、取り入れながらアレンジしていますね。

★しかし、ブルームの本意は、タキソノミーを活用して3側面の評価ができる「完全マスタリー学習」をデザインするところにあったのです。これがあるから、オンライン授業やCBTテストができるのです。米国の教育が、パブリックスクールで今そこに到達しているわけです。

★ただ、タキソノミーを限定的に使わざるをえないので、米国のパブリックスクールは私立学校にはかなわないというもどかしさもあります。不完全燃焼のマスタリー学習になっているわけです。

★三田国際は、そこを乗り越え、今や日本で唯一のパーフェクトマスタリーラーニングを完成させているのです。私は何度も予想してきましたが、三田国際は共学であるという世界のリーダーを育てる学校という意味でも、学力という意味でも、クリエイティブクラスを輩出するという意味でも、筑駒を当然超えると思っています。

★それは筑駒もよしとするでしょう。これからの時代は国立ではなく私立の時代でなければ、真の民主主義はやってこないのです。現在の公立学校も、チャータースクールのような形式になる方向で進んでいます。ここでいう私立という意味は、もちろんお金持ちの学校という意味ではありません。グローバル市民のための学校ということです。

★相変わらず、わけのわからないことを言っていると思われるでしょう。でも、これは私のオピニオンであって、同時に時代の良心の声です。パンデミック入試で戸惑ったり悩んだりしたときに、この時代の良心の声に耳を傾けてください。

★でも、三田国際は難しくて手が届かいないと思ったら、あきらめずに、三田国際と同じ方向に進んでいる学校を見つけてください。この私のホンマノオト21にあるカテゴリーの「中学入試」をクリックしてください。そのような学校を探せるはずです。

★だからといって、三田国際と同じであるわけではもちろんありません。ヴィトゲンシュタインのうさぎあひるの論理と同じです。おなじ思いでも、うさぎにもみえるしあひるにもみえるのです。

★世間は、おなじものを要求する傾向にありますが、違って同じというルビンの壺が真理です。同じ想いを大切にしながら違いを受け入れられたら、受験は乗り越えることができるでしょう。念願成就を祈っています。

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2021年1月30日 (土)

2021年中学入試情報(46)昭和女子大附属昭和 真下校長に学ぶ 本当の人気の意味

朝日新聞の記事「コロナは私たちを強くした 女子の受験生に言いたいこと」(2021年1月28日)には、昭和女子大学附属昭和の校長真下峯子先生の情熱と勇気づけられる心で満ちています。受験生に限らず今自分でコントロールできないパンデミックの中にあるにもかかわらず、未来を信じて立ち臨んでいる人々にとっても大切な記事です。

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(写真は、昭和女子大学附属昭和のfacebookから)

★昨年、同校の応募は大ブレイクし、そのウネリは今年も続いています。新型コロナの影響で総出願数は多少影響は受けていますが、前々年対比は166.8%(1月29日現在首都圏模試センター出願倍率速報)で、勢いに変わりはありません。

★それに、新設のスーパーサイエンスコースの入試が4倍を超えていますから、実受験者を考えれば、今までとは違う才能を持った生徒も入学してくることになり、単に受験生の数が増えたかどうかということではなく、多様な才能を受け入れることができる入試の質の改革がなされ、ダイバーシティな生徒の集まり方になるということにこそ重要な意味があるのです。

★新たな意味をつくることこそイノベーションです。

★それにしても、真下校長の言葉は、科学的思考と心理的安心安全と突き抜ける強さがあります。一般にはこのようなときには、学校はこんなすてきなコースがあるし、みんなの未来はこんな大学に行けますよ、それに、未来はこう変わるから、今から準備をしましょうという定型的な話になりがちですが、真下校長は一切しないのです。

★もちろん、ふだんの説明会で、学校の特徴というトピクでは話されるでしょうが、事ここに及んでは、そのような話をしていないのです。

★受験生の状況とその状況がいかにみんなにとって他の時代では経験できない価値ある状況なのかコペルニクス的転回の心意気を共有し、そんなみなさんが進むべき道は、社会通念や心の壁をいっしょに突き抜けていく道ですと語り掛けます。価値ある役割を果たしましょう。みなさんならそれができるのですよ。共に進みましょう。

★世界を見る目と好奇心をもって前に進みましょうと。この両方は、一つに言い換えると関心をもつということです。世界への関心、自然への関心。関心は愛を生みます。グローバルとサイエンスと本科のコースでそれぞれの才能を生かした関心が内側から生まれてくる予感が大いにします。

★真下校長のスピーチは、世界の女性リーダーと共通するマインドがあります。それに自らの話をオープンに語ることも忘れません。世界で活躍するリーダーは、好奇心、オープン、問い続ける思考力、そして寛容性が豊かです。

★すてきな校長の登場は、今後教育界へ指数関数的なインパクトを与えることになるでしょう。

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2021年中学入試情報(45)文京隣接地帯に衝撃走る。広尾学園小石川 京華学園 京華女子 獨協。

★広尾学園小石川は、1月29日現在、応募者総数は2532人(同校サイト)。広尾学園とカリキュラムが同じで、教師も教えに来るとあって、人気がすさまじいですね。かつての広尾学園の創設当初のような勢いです。

★文京区及び近隣エリアの学校には衝撃です。すでに準備段階の前評判が高かったですから、隣接地帯の私立学校は、対応策を講じてきたはずです。京華学園は、ますます大学進学実績を出す準備を強化するでしょう。偏差値50前後の生徒がたくましく育ち、好成果を上げています。広尾学園小石川1期生が実績を出すようになるまで、6年間ありますから、その間に必ず強化していくでしょう。

★そういう期待もあってだと思いますが、1月29日現在の応募者総数の前年対比は99.5%(首都圏模試センター出願倍率速報)で、最終試験までには、100%を超えるでしょう。

★同グループの学校である京華女子も同じです。女子校の方は、すでに前年対比は、106.8%です。

★中学入試受験生が都心は増える傾向にあるので、文京区と近隣エリアの学校には、緊張が走りつつも相乗効果になっているのかもしれません。

★獨協も、京華と同じくらいの偏差値の生徒が受験しますが、古き良き男子校の自由さを維持しつつ大学合格実績も京華と変わらないので、老舗のブランドを守りつつ、どうやってインターナショナルや医進サイエンスコースなどのすでに人気のある進歩主義的な学びに応戦するかが大事です。

★さすがに動き始め、新しい入試日も設定しました。結果、同日現在、応募者総数前年対比は、148.7%と対応策は成功しています。もちろん、最終的には実数がポイントです。

★入試日などの改革だけでは、教育の中身の質の競争には耐えられません。良し悪しは別として、文京区に隕石が落ちたことは確かです。

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2021年中学入試情報(44)和洋九段女子 人気急上昇!PBLの翼にのって。

★2021年1月29日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、和洋九段女子の総応募者数の前年対比は、133.8%。「2021年中学入試情報(35)和洋九段女子 応募者数 前年を上回る!」の記事は、1月25日現在のものでしたが、そのときすでに前年対比115.1%でしたが、その4日後、急上昇しているのです。最終試験まで、まだまだ出願は続きます。

★心理的安心安全の足場づくりのPBL授業が人気になっています。真剣に学びに挑むにしても、創造的な作業をするにしても、学びの場がストレスが高くてはうまくいかないというのは、Googleのプロジェクトアリストテレスのリサーチで世界にシェアされはじめています。

★マインドフルネスや学内外の協働活動、SDGsという世界の痛みをシェアし問題解決しようという創造的活動は、世界一のチームとしての組織づくりが大切です。

★このことが中学入試マーケットのプレイヤーでもある保護者にだいぶ広がっている実感を抱いています。

 

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2021年中学入試情報(43)成立学園 総応募者数 前年を上回る!日々感動学校。

★2021年1月29日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、成立学園の総応募者数の前年対比は、108.5%、前々年対比は130.8%。見える学力のみならず、目に見えない学力(SDGs的にはシステム思考)を大切にしている同校。生徒1人ひとりの価値が豊かになっていく学校であることが中学入試マーケットで毎年認知されてきています。

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★中学入試マーケットでは、塾やメディアの情報発信の役割は大切です。一方で、それにも限界があります。特に成立学園のように見えない学力も大切にしている場合、そこの領域を外部が察知して発信するというのは、メディアや塾では難しいですね。

★それは、公の発信は、ファクトが大切ですから、推理やオピニオンを発信するのは役割ではないという大切なルールがあるのです。

★ですから、そこはSNSで発信されるというのが最近の傾向です。もちろん、SNSはリスクもありますから、そこは受け手は鵜呑みにしない目を持つことが必要だし、発信する側も自分を批判的精神でクリーニングするスキルが大切です。

★私の発信も、ブログというSNSの機能を使っているわけですから、自由に推理したりオピニオンを書いています。できるだけ、エビデンスを探し、それに基づいて発信しようと心がけています。正しいかどうかは受け手の皆さんに委ねられてしまうのですが、上質な発信に努めています。

★なぜこんなことを書いているかというと、成立学園のサイトをみて、改めて気づいたからです。同校のサイトでは、毎日順番で先生方が、しかも校長先生も含めて、発信をしています。

★外部のメディアからは、絶対に見えない学校でのできごと、生徒の様子、先生方の想いなどなど。同校は氷山モデルを大切にしていますから、その水面下のマインドやコンテンツが毎日豊かに発信されているのです。この継続ができる組織になるには、実にすごいワンチームマインドが必要です。自分の子どもの環境としては最高のチームです。

★それに、すてきなのは、毎回必ず「写真」が一枚掲載されます。そして、パラグラフライティングで100字前後の文章が掲載されます。ピクチャ―ライティングを教師自らが実行しています。教師全員が、パラグラフライティングやピクチャ―ライティングができるというのは、当然この知の技法が生徒にも転移しているというのは、推測に難くありません。

★それから、毎日シンプルで心温まるメッセージが発信されるのです。もう20年以上も前に、ロバート・フリン先生のワークショップに参加したことを思い出します。先生はあのプログレス・イングリッシュの著者で、英語教育の一時代をつくったかたです。私は先生から、ノック&ノックというアクティビティを頂きました。シンプルな問いを参加全員に順番に投げかけていきます。考えている暇などつくらないのです。どんどん問いを出していきますが、それをフリン先生はノック&ノックだと教えてくれました。

★今でいう、インプロだし。私のアクティビティでは<ぐるぐる>というものですが、これは何かを生み出すというか化学反応を生み出す不思議な対話の1つです。

★実は、これと同じ感覚を成立学園のサイトを見て感じたのです。

★マーケットで塾やメディアの発信のみならず、自らのサイトでも行う。このことはどこの学校でも行っています。でも、サイトのメッセージの出し方に、パラグラフライティング、ピクチャ―ライティング、ノック&ノックアクティビティを埋め込んでいるサイトはまだ見たことがありません。

★これこどクリエイティブクラスのテクノロジーです。

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2021年1月29日 (金)

2021年中学入試情報(42)富士見丘 3%の穴に気づいている進取の気性に富んだ受験生に大人気。

★2021年1月28日現在(日能研倍率速報)、富士見丘の総応募者数は234人、前年対比86.0%、前々年対比188.7%。コロナの影響でまだ昨年に追いつていませんが、前々年に比較すればやはり人気の勢いはあります。ただ、一般中学入試という50,000人のマーケットでの話ではなく、帰国生入試と英語入試のマーケット5000人での話で、その中では大人気です。

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★このマーケットを、首都圏模試センターの社長山下一氏と共に「3%の穴」と最近呼んで、対話を進めています。またGLICC代表鈴木裕之氏とも、毎週金曜日Youtubeで配信しているGLICC Weekly Eduでも、「3%の穴」に気づいている進取の気性に富んだ、つまりクリエイティブでイノベーティブなゲストを招いて、大いに対話しています。

★もちろん、山下氏にも出演していただきました。「3%の穴」は、客観的な厳密な数値ではありません。多くの人がまだ気づいていない未来のwell-beingを生み出す道しるべを意味するメタファーです。ただ、3%という着想は、いろいろな領域で重要なことに気づいていたり、その兆しだったりする割合に符合するとこから由来しています。

★たとえば、開成の大学合格実績の内、3%は海外大学進学の実績です。また、大学でリベラルアーツや哲学部が名称を変更され縮小しています。たとえば、東大の文学部の思想文化学科の学生数が総学生数の3%です。しかし、今GAFAでは、リベラルアーツや哲学対話は重視され始め復権の兆しがあります。さらに、3%というのは、少数だけれど未来を見据える多様性の大切な想いが詰まっていることを象徴する数値だと考えています。

★富士見丘の魅力に気づいた保護者の中には、もちろん英語をしっかり学んでいないという受験生をお持ちの方もいます。どうしたらよいでしょうと尋ねられることもしばしばです。ご安心ください。富士見丘に入学して、6年たって卒業する時には世界の高校生と議論できるようになっていますからと回答します。

★実際、先輩たちの説明会でのスピーチやプレゼンをみて、本当にそうでしたとメッセージも返していただいています。

★海外のエスタブリッシュスクールでは、当たり前の少人数教育で、世界の人びとと議論までできる英語力・思考力・発想力、そして主体性を身につけられる学校です。

★イギリスのエスタブリッシュスクールやシカゴ大学附属学校(デューイ学校)の年間学費は300万から1000万です。それに比べると破格に安い学費で同じクオリティの学びができるのです。たしかに、このような情報に気づける保護者自体3%の穴の向こうに突き抜けている方々でもあります。

★そうそう、このイギリスや米国のエスタブリッシュスクールの情報をなぜ富士見丘は知り得ているかと言うと、理事長・校長補佐の吉田成利先生(明海大学准教授)がロンドン・キングズ・カレッジやシカゴ大学で法律を学び、Ph.D.を取得しているからです。そして、先生のグローバルネットワークを富士見丘に直結させているわけです。世界中で多くの姉妹校提携もしていますし、ロンドン・キングズ・カレッジの推薦制度も実現しています。

★それに、理事長・校長の吉田晋先生ご自身が英語が堪能なのです。

★このような学校は、実に希少価値あり!です。そこに気づくかどうか。6年後、君は富士見丘で本当によかったと思うでしょう。世界に未来に羽ばたく翼を身につけた自己変容した自分の姿が鏡に映っているのですから。

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2021年1月28日 (木)

2021年中学入試情報(41)日本女子大学附属中 応募者総数 前年を上回る!進歩主義と普遍主義が融合している。

★2021年1月28日現在(日能研倍率速報)、日本女子大附属中の総応募者数は642人、前年対比は102.2%。直接中高の情報は知らないのですが、2年前から豊明小学校の先生方と授業リサーチをしていて、同小学校の実物教育の現代的意義とICTや英語、理科、アートを介した現代化について語り合ってきました。

★小学校募集で苦戦しているわけではないのですが、危機感と子どもの未来への希望の両方のセンサーが働いているすてきな小学校です。

★そして、日本女子大学はグループ全体として頻繁に経営と教育の未来を語っていますから、豊明小学校のそのような勢いは、グループ全体にも浸透していると言えます。

★この豊明小学校の実物教育というのは、経験を通して探究の道を生徒自身が開いていく教育で、創立当時の教育の背景にあったキリスト教精神やペスタロッチ、フレーベル、デューイなどヘルバルト主義と違う道を目指していた教育の影響を受けていました。

★126年の歴史のあるシカゴ大学附属学校は幼稚園から高校まであって、シカゴ大学にもたくさん進みます。この学校は別名デューイ学校ですが、日本女子大グループとも親和性の高い学校です。

★もちろん、そのことを受験生が知っているわけではないでしょう。しかし、長い歴史を経ても進歩主義的かつ普遍的な教育は空気で伝わるもので、それゆえ人気があるということなのでしょう。

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2021年中学入試情報(40)女子美 今年も応募者総数 前年を上回る!アート思考の時代。

★2021年1月27日現在(首都圏模試センター出願速報)、女子美術大学付属の総応募者数は909人、前年対比114.2%、前々年対比133.1%。ここ数年、毎年前年対比100%を超え続けています。

★アート思考の時代です。国語も数学も社会も理科も英語も、Outputは、論文、スピーチ以外にアート作品化してしまうのです。そりゃあplayfulですよね!

★日本ではアート市場は本当に小規模です。それに文化庁や自治体の管轄美術館が主流ですから、女子美術大学からアーティストが続々出るかといとそうではないのです。

★ただ、デザイン系の仕事は山ほどあります。とくにSNS系になるとクリエイティブクラスの豊かな仕事が増えていくでしょう。

★一方、アートの世界はどうかというと、市場で売れはしないけれど、女子美大卒でアートを続ける学生も実は多いのです。

★東南アジアのアート市場は日本より勢いがあるので、海外で活躍する若手アーティストも増えています。よって、アーティストにとって、英語は最低必要な言語になります。

★スマートシティー化する世界の都市ですが、農業とアートは結合してスマートハウス化の必要な要素になっていきます。どうしても閉鎖した空間、テレワークという五感制約の仕事が多くなります。身体によい食事、心に良いアート、自然と社会と精神の循環持続可能な世界の想像界を生み出すにはアートは欠かせないでしょう。

★間違いなくポストコロナ時代はアート思考の出番です。

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八雲の真価×進化×深化×新価(5)八雲の野望➄卒業後に自己変容の進化がつづく

★ラウンドスクエア加盟校としての八雲学園の教育のコアは、何といっても多様なスーパー体験ができることです。この体験を通して目からウロコの気づきに導かれます。このものの見方や考え方を変える体験、そしてその新しい認識を身につけていけることこそ、卒業後にさらに自己変容の進化を生み出す源になります。

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★副教頭近藤隆平先生から在学中にラウンドスクエアの国際会議に参加したOGが現在校生に向けてエールを贈ってくれたという文章をいくつかいただきました。八雲を受験する生徒にも、励ましになると思います。掲載の許可を頂きましたので、これから少しずつ紹介していきましょう。

ラウンドスクエア活動が教えてくれた「挑戦」の姿勢

2018年度卒業 越前香桜里

私は、2017年に南アフリカで行われた国際会議と2018年にオーストラリアで行われた地域会議への参加という形でラウンドスクエア活動に携わる機会を頂きました。ラウンドスクエア活動への参加は、様々な方面で現在の私の基盤となっています。

 2017年、当時高校2年生の私が南アフリカのケープタウンで行われるラウンドスクエア国際会議への参加の話を頂いた際、まず最初に感じたのは「南アフリカに行くの?!」ということでした。アフリカ大陸に足を踏み入れたことがなかった私にとって、ケープタウンでの国際会議への参加はあらゆることが未知の世界で、行く前には自分の英語力への不安はもちろん、その他についても様々な不安を抱えていたのを覚えています。

しかし、実際に訪れてみると、そんな不安は全て吹き飛びました。自然いっぱいの街、街中にあふれる歌・音楽・ダンス、バラザの仲間たち、山頂からの景色、どれをとっても刺激的で素敵な経験でした。そこで初めて、私自身がアフリカの国に対して偏見を持っていたことに気がつきました。そして、自分の中に無意識のうちに存在する偏見は、自分自身で塗り替えていくしかないと強く感じました。常に新たな環境に自分の身を置く「挑戦」の精神を持つことの大切さを改めて痛感しました。

 この「挑戦」の精神は大学に進学した今でも、私が最も大切にしていることの一つです。今年はほとんど大学に通うことができず、今年度大学に入学した私にとって、想像していたものと大きく異なる大学生活は、非常に大きな壁として立ちはだかっていたように思います。心が挫けそうになった時、私が自然と思い出したのは、ラウンドスクエアでの経験でした。自分自身の生活や考え方に問題意識を持ち、それを変えられるのは自分だけであるということを思い出しました。

受け身の生活を送るのではなく、自分が思い描いていた日々に少しでも近づけるために能動的に生きたい、そう思った私は、大学の留学考査を申請しました。来年の9月からイギリスへの留学候補生に選ばれ、現在、資格試験の勉強や専門分野の勉強を進めています。実際に渡英できるのかは分かりませんが、可能性がある限り挑戦する、その姿勢こそ、ラウンドスクエアの活動への参加を通して私が学んだことです。そして、これらの活動は、今後八雲学園のラウンドスクエア活動に携わっていく後輩たちにとって、活動を通して自己を見つめ、将来を考える有意義な経験になると確信しています。

 

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2021年中学入試情報(39)横浜創英 応募者総数 前年を上回る!工藤勇一校長旋風。

★2021年1月27日現在(首都圏模試出願倍率速報)、横浜創英中の総応募者数は、515人。はやくも前年対比は131.4%。新しい教育論を語り、それを実践する工藤勇一校長旋風が巻き起こっています。

★工藤校長は、毎月のように東洋経済をはじめ多様なメディアで取り上げられています。一般的な教育的社会通念をコペルニクス的転回するような論調で、ある意味ラディカルに語っています。

★しかし、子育てで不安になったり悩んだりしている保護者の手の届かないような話はしません。そこが人気の肝ですね。

★同校サイトでもこう語っています。

「今まで以上に「自分で考え、判断し、決定し、行動できる力」(自律の力)を身に付けることが大切です。あえて誤解を恐れずに言えば、日頃から私たちが学校教育の中で大切にしてきた「礼節」や「忍耐」、「協調」といった日本の特性とも言える価値観よりも優先すべきものだということです。」

★慎重に大胆な語り口調なのです。しかし、同グループの副理事長の堀井章子先生と工藤校長はシンクロしている関係なので、堀井先生の理論的背景を鏡にすると、強烈にラディカルなお話です。

★そこは、一般の受験生や保護者には、見えないかもしれませんが息吹として感じ取れるものでしょう。

★それにしても、ピーター・センゲやHTHの発想にも通じる工藤勇一校長と堀井章子副理事長には頑張って欲しいものです。神奈川県のHTHになってんもらいたいものです。

★もっとも、HTHが望んでいる自分たちが足りないと言っているものがワンピースあります。

★そのヒントは私たち日本の私学にはもともとあるものです。ただ、日本にあるのですが、それを手に入れるには、10のステージを経なければならないのです。

★そこは、しかし、デビッド・ボームと共に誰でも手に入れられると嬉しいのですが。

★今のところ、工藤勇一校長はこのワンピースを表現する言葉を他の言葉に比べると頻繁には使われません。

★すでに、新しい学びの中で活用しているのですが、ルビンの壺でいえば、図ではなく地になっています。それが反転した時、シリコンバレーのHTHも憧れる学校になるでしょう。

★それほどポテンシャルの高い学校に変容しようとしているのが、横浜創英ですね。

★そういえば、新渡戸文化も武蔵野大も違いはありますが、概ね同じベクトルで進んでいます。ですから、いずれも、このワンピースは今のところ「地」に回し、「図」には出してきていません。

★反転した時、他校は驚くでしょうね。ポテンシャルが無限にある学校グループです。

★HTHやシカゴ大学附属学校(デューイ学校)がリサーチに来る学校になる期待値が高いというわけです。

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2021年1月27日 (水)

2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い!PBLの風に乗って。

★工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)の中学入試の出願状況は勢いがあります。田中歩教務主任によると、前年同日比は、延べ145%、実人数128%です。首都圏模試出願倍率速報(2021年1月27日現在)によると、最終総出願数に対する前年対比は、94.6%で、前々年対比は、128.5%です。

★最終的に前年の総応募者数を上回る勢いです。

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(2年前、当時中学生だった生徒。全国の教師対象のSTEAMセミナーのファシリテーターをしてくれました。ICTも英語も思考力も年齢を超えて優れているのです)

★それにしても、それでもまだまだ満足しないという前のめりの工学院。PBLが授業のみならず、すべての活動に広まり、生徒は社会的インパクトやグローバルインパクトを与える社会実装の学びをしてしまいます。PBLの風に乗って実践的かつ学問的学びの竜巻を引き起こしています。

★国連でプレゼンしたり、シンガポールの国際コンクールで金賞を獲得したり、東日本大震災のケアや地域の小学生と防災教育のワークショップを行ったり。インドのエスタブリッシュスクールの生徒と当然英語で議論もしていますが、そこで価値観の決定的な違いをどう乗り越えるのか突き付けられ、世界の痛みの深さに直面して、悩み頭をフル回転する本当の国際交流もしているのです。

★このことは、英語科主任中川先生がコラムの中で語っています。Yahooニュースにリンクされる程の重要なニュースなのです。こんなに深い本質的な教育の内容について、Yahooがリンクするのですからとても重大だと認識されている証です。

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★二年前にSTEAMセミナーを協働して行いました。上記の写真は、この工学院の改革のビジョンの旗をふった平方校長のもとに集結した21世紀型教育推進者の面々です。21世紀型教育センターのリーダーの1人田中歩先生は、右から2人めです。同センターのもう一人のリーダー聖学院の児浦先生は左から2人めです。

★ここに勢ぞろいしたメンバーは、みなPBLの達人です。PBLの風にのって、新しい学びの竜巻を生み出しています。本ブログでも聖学院の紹介はよくします。両校はPBLをコアに生徒1人ひとりの才能を生み出す拠点になっています。

★もちろん、PBLをやれば生徒募集が成功するとは限りません。PBLを教師と生徒が協働する中で生まれるPlayfulとPassionの翼を生徒が実装し広げる強烈な体験をする場だからこそ学びの竜巻が受験生や保護者を巻き込んでいくのです。

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品川翔英 期待値を超える(02)ノブレス・オブリージュ

前回「品川翔英 期待値を超える(01)はじめに」のつづき。

★ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)。品川翔英のモットーです。高貴と引き受ける行為が重なっている言葉ですね。3人の高1の生徒のみなさんと出会って、すぐにこの言葉を思い浮かべました。100分近い対話を貫く通奏低音でもありました。田中幸司先生は、毎月対話していますが、村上先生と3人の生徒の皆さんとは初対面です。さて、どうしようかと。だいたい私のは無手勝流の対話手法なので、雑談からはいりました。

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★Zoomだと気持ちの反応がわからないとよく言われます。たしかにそうなんですが、今回はそんなことは全くありませんでした。なぜならめちゃくちゃ表情が豊かなみなさんだったからです。真剣に語る時の表情、静かに微笑む表情、自分の考えを魅せる表情、表情と表現内容がDNAのように符合していました。

★あとで、語ることになると思いますが、「期待値を超える」という品川翔英の信念があります。村上先生の大好きな構えでもあります。Zoomの社会通念をいきなり超えてくれるのですから凄いですよね。

★さて、雑談の中で、今日参加して頂いている先生と皆さんのかかわりは?とたずねると、村上先生とは授業や様々なところで接点はあるけれど、田中先生は直接は接点はないんですと。雑談ですから、そこで終わって全然構わなかったのに、田中先生はふだん授業などで、接することはないですが、改革委員会の1人です。村上先生もそうなのです。何か意志を感じますよね。そんな教師の人事についてみんなとシェアしている学校なのと尋ねると、学校のサイトで公開されていますから、閲覧しましたと。

★私は、学校のことにこんなに関心があるとはと内心ハッとしました。が、話は急がず、ゆっくり順番に聴いていきました。基本少人数なので、<グルグル>という対話アクティビティを挿入してみました。

★すると、こんな話もしてくれました。田中先生とは、学校説明会でお会いする機会があります。そんなときに声をかけてくれます。温かい気持ちが伝わってくる先生ですと。そんな目配り気配りができるのとこれまた驚きでした。

★さらに、いやあ本当にかかわりがないんですと語るメンバーもいました。<グルグル>というアクティビティは、聴く姿勢、待つ姿勢が行っているうちにマインドセットされる場の力があるんですが、話せない時、もちろんサポートに入ります。しかし、今回はその必要は全くなかったのです。しばしの沈思黙考のあと、こう語ってくれました。でも、今こうしてみんなの話を聞いていて、心温かい先生だと感じましたと。

★いまここでかかわりをもった参加者をリスオペクトする高邁な精神と場に参加したのだから対話を引き受けた以上、自分の気持ちや考えを素直に表現するのだという構えが伝わってきた瞬間でした。ノブレス・オブリージュの調べが響いたのです。

★村上先生に関しては、授業やクラス活動で毎日かかわっていることもあり、みなストレートに語ってくれました。とにかく授業の仕方や語り方が活力あるのです。言葉も、たたきつけるように語るのです。ああ、悪い意味ではありません。衝撃的に頭に入ってくるのですと。そう話している時の目の輝きと白い歯がキラッとしていて、すてきだなと。そのメンバーは、「かかわり」という言葉を大事にしていますから、村上先生とのかかわりをそんふうに表現したのですね。

★もう一人のメンバーは、とにかく難しい化学の話も、わかりやすく丁寧に講義してくれます。たとえば、塩基が云云かんぬんとどっと話してくれました。ファクトとオピニオンを明快に分けて、語ってくれます。そんな難しい話を理解できるのは、もちろん村上先生のトークの巧みさによるものでしょうが、その生徒自身の思考スキルが確立しているから理解できるということもあります。そして、このことは3人に共通していることでもありました。

★ただ、どの思考スキルを活用するかは、三者三様でした。これが個性でもあります。認知能力と非認知能力のバランスがよいのは、そういうことだったのかと感心しながら耳を傾けていると、次にさらに驚くべき語りが続いたのです。

★村上先生は、HRのときに、学校の出来ごとだけではなく、ご自身のお子さんが、ご家庭で過ごされている様子を話してくださいます。子供の成長の眼差しと私たちの成長が重なるわけですね。プライベートなことを私たちに話してくださるということは。。。

★そう、先生が生徒を信頼しているということですね。村上先生も田中先生も驚いたし、心の中で涙腺はゆるんでいたはずです。「ありがとう」という言葉が身に染みました。

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★なるほど、村上先生と田中先生が、高1生も注目し、きちんと評価ししているチーミングのプロだったということが、本題に入る前の雑談段階でピンときました。まだ邦訳はでていません(予約受付中)が、チーミングや心理的安心安全を提唱しているエイミー・エドモンドソン教授の「恐れのない組織」を改革委員会は着々と日々の中で生み出しているわけですね。神は細部に宿るとよくいわれますが、学校説明会のときの声かえ、HRのときの規格外れの話、生徒と理解をシェアできる授業に浸透しています。

★改革プロジェクトこそ、すでにPBLだったのです。(つづく)

 

 

 

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「教育とは生き方そのもの」へシフト(04)デューイの発想に共感のウネリか?

★昨日夜、本ブログのアクセスが指数関数的なカーブを描き急上昇しました。この時期は中学入試の情報に気配りした記事が多いので、特に2月に入るといつもの3倍くらいのアクセスになるのは恒例なのです。けれども、ちょっと早いなあと調べてみたら、<「教育とは生き方そのもの」へシフト(01)グレートリカバリーの意味>の記事がダントツトップでした。

★Googleで「グレートリカバリー」をサーチしてみたら、同記事がトップページに出てきたので、たまたま、このキーワードに興味がある方々にヒットしたということでしょう。

★しかしながら、この落合陽一さんとNHKの編プロが練り上げた言葉は、マルクス・ガブリエルさんとシンクロし、さらにはデューイの発想のアップデートをしようとしている教育に合流するという流れの記事なので、共感していただけるとありがたいなあと。

★ともあれ、中学入試目前の中で、このような記事が一夜城であっても、アクセスが集中したということは、今までになかったので、2021年はSomething Newがウネリ始めているのでしょう。と期待したいものです。

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2021年中学入試情報(37)桐蔭学園中等教育学校 応募者数 前年を上回る!

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、桐蔭学園中等教育学校の総応募者数は、1050人、前年対比114.0%。新生桐蔭は着々と軌道に乗っています。

★アクティブラーニングと探究とトランジションの一連の循環が明快に分けられそれでいてしっかりと結びついます。溝上理事長と岡田校長、そして教員のチームワークが素晴らしいのです。

★同校のラグビーチームさながらです。

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2021年中学入試情報(36)鴎友学園女子 応募者数 前年を上回る!

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、鴎友学園女子の応募者総数は、1146名、前年対比102,5%。本物教育にこだわってきた同校が、時代の良心の声が顕れてきたときに、活躍する。素晴らしいですね。

★グレートリセットでもグレートリカバリーでもなく、<Great Salvation>。内村鑑三の眼差しを感じますね。

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2021年1月26日 (火)

2021年中学入試情報(35)和洋九段女子 応募者数 前年を上回る!

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、和洋九段女子の応募者総数は、504人。前年対比は、115.1%。ついに中学入試市場は和洋九段女子の21世紀型教育を受容しました。多くの学校がパンデミックによって苦戦している中でのこの事態は、和洋九段女子にとっても、和洋九段女子のような学校を求めているという時代の良心の声が聞こえるようになった中学入試市場にとても画期的でしょう。

★2月1日から2月10日までいくつか試験がありますから、まだまだ出願は増えるでしょう。

★国内外のつながりを創る教育、そのつながりをつくるときのパスポートは対話と貢献活動です。この2つを生み出す環境は同校のすべての授業、すべてのクラスで実施しているPBL授業です。

★このPBL授業の大前提は、心理学的安心安全。生徒が試行錯誤して失敗しても、むしろそれをみんなで改善していく・協働をしていく授業。

★互いに弱みを共有し、弱みを強みに転化できるオープンマインドが、安心安全だからこそ広がります。

★そして、あのSDGsすごろくチームの生徒のように社会的インパクトを生み出すことになります。自信と誇りと仲間だけでなく外部の方々とのつながりによって寛容的な精神が生まれます。

★和洋九段女子のグローバル教育は、海外だけではなく外部の方々との多様性を包括的に含んでいます。

★そして、オンライン授業もスムーズに行っている同校のICTのインフラもデバイスもソフトも充実しているし、なんといってもサイエンスマスの授業が科学的思考力も養っているのです。

★クールでマインドフルネスでダイバーシティの学びの環境の中で、生徒1人ひとりのタレントが開花します。これからの大学入試は、この才能がモノをいう時代です。語り尽くせぬ和洋九段女子の教育。本物の教育は目に見えないことのほうが多いのです。また発見して語ります。

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聖パウロ学園の保健体育 ポストコロナ時代に大切な役割を担う

★先日、聖パウロ学園の廣瀨先生の保健の授業を拝見しました。ちょうど感染症と免疫がテーマの講義が行われていました。3密を避けるために、いつものペアワークやディスカッションはできません。そこで、興味と関心を生徒1人ひとりの内面に生み出すために、ストーリーテリングというアクティビティで授業を展開していました。

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★今回のパンデミックの感染拡大状況をグラフなどのデータの読み取りで復習しながら、今後ワクチンによって新たな感染防止策が現実化しそうなので、「免疫」のシステムにストーリーは移行していきました。

★そこで、驚いたことに、5種類の免疫を5レンジャーのそれぞれのキャラクターに置換えて物語を話していったのです。生徒の反応はもちろん上々です。また、免疫を漫画で解説している本からもエピソードを挿入するような展開で物語っていました。

★また、感染症や免疫について自分ゴトとしてとらえる仕掛けとして、「現代免疫低下リスクチェック」で、リフレクションするシーンもありました。緊急事態宣言が再び出ている中で、授業でディスカッションができないのは、もどかしいところだと廣瀨先生は語ります。

★しかし、生徒は、グラフと言葉を置き換えたり、物語というメタファーで免疫システムを学んだり、論理的思考力をフル回転させていました。またリフレクションシートではクリティカルシンキングも養っていました。

★保健の授業こそ思考力を大転回させることになるのだと改めて気づき、感動しました。

★そして、保健のテーマが、公衆衛生やヘルスの問題などSDGsにも直結していることにとても重要な学びがここにはあると感じました。

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★それは、聖パウロのMFO=Men for Othersという精神と各教科の知を生徒1人ひとりが、自らの身体と脳神経と循環システムによってつないでいるという重要な学びのコーディネートを行ているということではないかと。

★また、ポストコロナの時代は、医療従事者をサポートする役割も免許に盛り込まれたりするのではないだろうかとかスポーツトレーナーやスポーツカウンセラーなど幅広い仕事が保健体育教師に望まれるようになるかもしれないと思ったりもしました。フィジカル、ソーシャル、メンタルという3側面をつなぐ医療的サポートの資格が保健体育科の先生方に求められるような気がしました。

★負担ということではなく、それだけ重要な科目だということです。

★実際、他教科とのコラボレーションもできそうです。授業終了後、廣瀨先生と対話をする中で、次のようなつながりが広がるという話になりました。すてきですね。

❶免疫システムをキャラ化し物語に置換えている→国語科と連携できる。
➋免疫システム→理科と数学と連携できる。システム連関図や統計データなどで。
➌多様なスキル→視野を広げ探究へのきっかけづくりになっている。→探究やキャリアデザイン教育につながる。
❹感染症を通して自分の問題、社会の問題への気づきを生み出せる。→キャリアデザイン教育につながる。
➎保健体育自体の価値→実技と連携させ非認知能力のベース(=ソーシャル×メンタル×ヘルスサイエンス)を身につけることができる。 

★聖パウロ学園の近隣には東京薬科や北里など医療関連の研究ができる大学もあります。実際そこへ進む生徒もいます。その動機付けは理科だけではなく、保健体育科の授業が大きな影響を与えているということも理解できました。

★教育というのは、実に奥が深い。そして、他教科間で、コラボのための対話ができる聖パウロのチーミングは、他の学校ではなかなか得難い大切なものだと感じ入りました。廣瀬先生、多くの気づきをありがとうございました。

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GLICC Weekly EDU(18) 29日金曜日かえつ有明佐野先生と対話。サイコロジカル・セーフティーが生み出す最高のチームと才能

今週1月29日(金)のGLICC Weekly EDUのゲストは佐野和之先生(かえつ有明副教頭)です。佐野先生は心理学的安心安全を生み出す魂の対話を同僚と生徒と常にしています。授業でも絶えることがありません。すべての授業がアクティブラーニングで、対話に満ちているからです。

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★この心理学的安心安全を編み続けるには、達人の領域にいけば、感性のおもむくままに自由な時空の流れに身を任せればできるのですが、だれでもができるわけではありません。

★かえつ有明の先生方は、佐野先生と盟友金井先生による学内の研修によって、それを生み出し、その研修で培った魂とスキルを生徒とシェアします。それゆえ、生徒は自身の困窮していることや弱みをさらけだし、仲間と対話をしながら、自ら回復し、さらには新たな挑戦への勇気を内なる松明として燃やし自らの探究の旅にでるのです。

★私は佐野先生に頂いたメッセージを今も大切にしています。

≪小さく始めたグリーンな世界が少しずつ広がり始めている。少しずつ、でも確実に。それぞれの緑が他の草原や木々と結びつき始め、新たな循環態系を形成していく。その世界を維持するにはそれぞれがその世界との繋がりを回復して、部分と全体を一致させていく不慣れな作業に意識を向ける必要。弱肉強食の世界で培われたメンタルモデルに自覚的になり、慣れ親しんだその世界観を手放す覚悟を持たないとグリーンな世界に生きられないどころか、その世界の存在にすら気付けないかも。ここからが自分自身のあり方を試されるところ。≫ 

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、かえつ有明の総応募者数は、1801人、前年対比は、78.3%、前々年対比は101.6%。昨年が大人気だったので、難しくなり多少敬遠されていますが、2月3日までには、昨年並みになるでしょう。

★大学受験第一主義ではないのに、いやだからこそ人気なのかもしれません。その人気はグリーンな世界が広がる最高の学校チームにあります。学校のチーム作りの秘密について対話したいと思います。対話の手法はピクチャーダイアローグになると思います。

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2021年中学入試情報(34)海城 総応募者数前年対比100.2%の重大な意味

★2021年1月25日現在(海城学園サイト×首都圏模試センターサイトから)、海城の応募者総数の前年対比は、100.2%、前々年対比が103.8%。いわゆる難関校が苦戦する中、海城と駒東は前年対比100%を上回りました。しかしながら、両校の上回っている理由におそらく違いがあります。海城は世界の受験生・保護者が憧れるエスタブリッシュ校になっているということです。また本間の大げさな表現だと思われるかもしれません。

             21応募 20応募 19応募 前年対比 前々対比
海城(帰国生入試,A方式) 93 120 132 77.5% 70.5%
海城(帰国生入試,B方式) 76 60 66 126.7% 115.2%
海城(一般入試①) 552 539 508 102.4% 108.7%
海城(一般入試②) 1277 1,276 1,218 100.1% 104.8%
総数 1998 1995 1924 100.2% 103.8%

    21応募 20応募 前年対比
麻布 881 1,016 86.7%
開成 1243 1,266 98.2%
筑波大学附属駒場 677 694 97.6%
駒場東邦 639 605 105.6%
栄光学園 811 827 98.1%

(2021年1月25日現在 首都圏模試センター出願倍率速報から)

★しかしながら、その理由はある程度推理できるのです。海城は駒東はじめ上記のいわゆる難関校が設定していない帰国生入試を開いています。ここが決定的に大きく違います。そして、ここが起爆剤となって、海城全体がたんなる難関校ではなく、世界のエスタブリッシュ校に変容させているわけです。

★海城の帰国生入試にはA方式とB方式があり、減っている入試はAだけです。Bも一般入試も増えているのです。しかもBはむしろ増加率が他の入試に比べて高いのです。

★いったいこれは何を意味しているのでしょう。それは、おそらく海外の帰国生のうち日本人学校から受験する数が減っているということを意味します。海外全体の日本人学校自体が勢いがないということもあるでしょうし、海城を受験するのに、A方式の国語と算数と面接の準備しかしない生徒というのが少なくなったのでしょう。

★日本人学校で海城を選択する生徒はそもそも4科目の準備をします。すると、国語と算数だけ準備している日本人学校の生徒と4科目の準備をしている生徒では、その段階で差がついてしまうので、実質4科目入試のレベルになるため、国語と算数のみの受験生は海城を回避するでしょう。

★仮に国語と算数だけの準備をした場合、日本人学校の生徒も英語をしっかり修得するのが当然の流れです。日本人学校の生徒でもB方式を選択するということになるでしょう。

★それと、やはり現地校やインターナショナルスクールに通わせる家庭が多くなってきたということでしょう。それがB方式の増加率が著しい理由だと思います。

★特に北米の帰国生は、圧倒的に日本人学校より現地校かインターナショナルスクールでしょう。海城はグローバルネットワークとサイバースペースのハードパワーとソフトパワーは、上記のどこの学校よりも完備しています。

★シリコンバレーの受験生・保護者は海城に憧れてしまうのは当然ではないでしょうか。

★今回の難関校の苦戦の理由は3つあります。

1 今回のパンデミックで、本質的かつ合理的な併願をするようになった

2 難関校でもグローバルでイノベーティブな学びの環境が整っている学校を保護者が選択するようになった

3 教師一人ひとりが卓越しているだけではなく、教師のチーミングがうまくいっている組織を選択するようになった

★海城は、そのいずれも満たしているのです。特別校長補佐中田先生は、グローバル教育もICT教育ももちろんコミュニケーションやドラマエデュケーションも立ち上がりでコーディネートしています。それぞれの領域のリーダーがいる学校はたくさんあります。しかし、このすべてを包括的にマネジメントできる教師は、学校にはそう簡単には存在しないのです。

★校長が出来るかといったら、包括的にマネジメントするというのは、授業のデザインや評価のシステムデザインまでできなくてはなりません。だって、すべてはそこから生まれているので、ここから考えていく、つまり細部に神は宿るという慧眼の持ち主がいないと包括的なマネジメントは、教育ではできないのです。

★企業は、この授業に相当する仕事はありません。研修を1日6時間毎日全員がやっている企業は潰れてしまうでしょう。Googleだって20%ルールです。

★この教育と企業の組織のコアワークの差異を無視してCT教育やグローバル教育を語るリーダーが前面に出たとき、今の受験生や保護者は納得しないのです。難関校であれ、もし東大に50人以上いれることができなくなれば、それは当然、先の3つの条件を満たしていないからそうなったのであるから、人気は衰退していきます。

★海城はハーバードや東大にもたくさん合格していきますが、そこに人気の軸足をおいていないのです。先の3つの条件を満たす学びのデザインをしたうえで、実績がでているから世界から注目されるエスタブリッシュ校になっているのです。

★中田先生は、世界の情報を徹底的に集めます。Googleのプロジェクトアリストテレスは当然意識しているでしょう。GAFAも憧れるエスタブリッシュ校である理由はそういうところにもあります。

★もっとも、海城当局は、GAFAやIBなど調べ尽くしますが、虜になることとはありません。そこが大きな魅力です。知の自由、知の冒険。海城の心意気でしょう。

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日本の大学入試改革の意味(02)スプートニクショックーゆとりーPISA-全国学力テストー適性検査ー大学入学共通テストそして思考力入試の意味

★ようやく、メディアや教育関係者が、大学入学共通テストを学習理論的側面、文化的側面、教育制度的側面、教育測定学的側面、社会学的側面、子供論的側面から論じ始めるようになっています。文化人類的側面でみるには、PBLのチーミングの理解やクリエイティブクラス、タレンティズムという市民生活経済的側面からみなければなりませんが、それでも多面的な側面からオフ会で論じるようになってきたのは、期待が高まります。

★いずれにしても、1957年のスプートニクショック以来、日本は米国の認知心理学の影響を受けて学習指導要領が構成されてきたと思われます。現代化カリキュラムはその象徴です。

★しかし、「落ちこぼれ」という言葉を生み出すものだったので、そこからはゆとり教育への道が生まれてきたわけです。そのときの座長は昨年亡くなられた有馬朗人先生です。文部大臣や中教審の座長を歴任しました。東大総長や武蔵学園学園長など多くの大学経営にもかかわりましたも。しかし、最後は母校武蔵学園に戻ってきたわけです。

★「ゆとり」に関しては有馬先生と多くの教育関係者は、おなじものを見ていても全く違うものをみていました。同床異夢とかヴィトゲンシュタインの引用する「ウサギアヒル」ですね。有馬先生グループがみるPISAは創造的才能者を育成する学びをリフレクションする場でした。しかし、他の教育関係者は反ゆとりを掲げるエビデンスとしてとらえました。

★そのズレは、有馬先生が武蔵出身者だったことに由来するでしょう。武蔵の学問的授業こそが、有馬先生はゆとりだと考えていたのですから。一般の教育関係者から見れば、それこそ現代化カリキュラムで、無理だろうと。知識注入型が基礎で、そんな思考力なんてというのが大勢でした。

★しかし、そこに両方の考え方をゲットする大手教育産業が顕れました。PISAを有馬先生の考えかたとして活用しながら、同時に知識が基礎だよねという考え方にも対応するように動いたのです。そして今の大学入学共通テストの構想を練り上げ、着々とビジネスを展開していきました。その当時から、もう一つ基礎テストをつくる構想がありました。これは今回の入試改革では外されました。ホッとしていますが、それもその当時からすでに大いに議論され、リサーチされていたのです。

★その時は、私はスプートニクショックで米国が遂行しようとしていた、構成主義的なカリキュラムを構想し実施していました。最先端の科学も小学生にも理解できる知識ではなく、科学者のものの見方や感じ方の構造視点を共有できるのだと。これはおそらく武蔵や麻布とシンクロしていたと思います。

★もちろん、その場でも、そんな抽象的な思考様式は難しすぎる、基礎と応用の二つのコースに分け、テキストも別々にするというグループと応戦していましたが。

★それでも、私は放送大学の先生方といっしょに創造的才能教育について書かせてもらって、それを理論的根拠として遂行しようとしましたが、反ゆとりの勢いはすさまじく、私は別の道を歩むことになりました。そんなとき、大手教育産業の有馬先生シンパのチームとPBL的な学びのプロジェクトを協働しはじめました。しかし、それも2011年3月11日をもって解散となりました。

★そのときのメンバーは、もちろん、今もそれぞれの場で教育改革リーダーです。

★さて、PISAーPBLを模索しているその横で、全国学力テストと公立中高一貫校の適性検査が実施されるようになりました。その内容や形式は大学入学共通テストにも適用されています。大手教育産業のAレベルをはじめとする海外大学の入試制度、それは小学校から大学までカバーするものなのです、それを日本でも行おうという構想が着々と実現されていきました。

★それはそれで、ユートピアシナリオにもなるし、デストピアシナリオにもなります。eポートフォリオの流れも合流していますから、生徒の生涯の内面のシノプティコンを生み出すデストピアも待っているかもしれません。

★そこで、私たちは同時にユートピアシナリオを描き続ける思考力入試の開発をしました。PISAを有馬先生と同じ感覚で捉えることができるメンバーが私学には当然いたのです。

★とにも、スプートニクショック(現代化カリキュラム)ーゆとりーPISAー全校国学力テストー適性検査ー大学入学共通テストという一連の流れは貫徹しました。しかしながら、現代化カリキュラムをアップデートしようとするユートピアチームは思考力入試で子どもの創造的才能を保守しようとするし、デストピアチームは現代カリキュラムを基礎と応用と分断しようとするでしょう。

★オンライン授業やテレワークで、こどもたちの学力や才能のビッグデータ化はエビデンス!エビデンス!と叫んで、進むみます。シノプチコンになるか相互にセレンデピティを生み出すエビデンスとなるのかは、時代の良心に耳を傾けるかどうかです。AI時代だからこそ最後に残る倫理観。

★メディアの方には、ぜひこの両方を複眼的に論考し、両方を市民と共有して欲しいと思っているし、その期待が実現するのではないかと思う今日この頃です。

★で、おまえは何をやるのかと。私は実践者=プラマティストですから、ひたすら創造的才能者=クリエイティブクラスを子どもたちといっしょに生み出す作業を地道にしていきます。

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2021年1月25日 (月)

品川翔英 期待値を超える(01)はじめに

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター「出願倍率速報」)、品川翔英の総応募者数は375名、前年対比232.9%、前々年対比1442.3%です。高校入試はさらに集まっています。この爆発的な人気の秘密はどこにあるのでしょう。論より証拠、生徒のみなさんが、自分の学校に誇りを持ち、自分たちが好奇心を膨らませながら学び、様々な活動をすることが自分たちを成長させ、結果的に学校や社会に影響を与え、変化を生み出していくという信念と情熱を持っているからです。

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★そう語るY君、Nさん、Tくんと対話ができました。今年になってすぐの始業式で、柴田校長が熊本県知事の蒲島さんの話をしましたが、まさに蒲島知事の期待値を超えよ、皿を割れ、リスクをとれというモットーそのものを体現している品川翔英Z世代高校生だったのです。

★柴田校長のエールは、遠くの目標ではなく、いまここでまさに君たちが行っていることそのものなのだということを鏡に映して生徒に気づかせるものだったのです。私たちは自分の顔は自分で見ることはできません。ですから他者との対話やフィードバックによって気づくものです。

★3人の生徒と対話をしていて、仲間との人間関係を築いていく中で、教師とコミュニケーションを丁寧にしていく中で、気づきをたくさん得ているということを了解するのは難しくはなかったのです。

★また、いっしょに立ち会って頂いた村上亜矢子先生と田中幸司先生も、改めて3人が自分たち教師のことをどう思っているのか気づいたようでした。そして、何といっても、生徒の期待値以上の才能を発見して感動したということでした。

★それにしても、この対話の段取りが、あっという間にセットされたのには驚きでした。応募者の状況がだいぶ判明してきたときのことですから、つい先週の話です。

★応募者が続々集まってくるというのは、何より品川翔英の価値が受験市場で受け入れられたという強烈なエビデンスです。この1年、品川翔英を微力ながら応援してきた私にとっては、その秘密を明らかにしたいという欲求を止められませんでした。思わず、先週柴田校長にメールをしました。生徒さん自身と対話をさせていただけませんかと。

★二つ返事で、もちろんです。熊坂先生から連絡がいきますからよろしくお願いしますというメールが届きました。そのメールを読み終わるや否や、すぐに熊坂先生からセットしましたよろしくお願いしますとメールが届きました。あっという間に、本日25日(月)、この対話の機会を頂いたわけです。

★風に乗って魅力が広がっている学校というのは、こういうものだというのは、工学院や和洋九段女子、かえつ有明、聖学院などでも同じです。Z世代の高校生とやはり対話の機会をいただき、そのたびに感動するわけですが、今回もそうでした。

★特に品川翔英の高1生は、共学になり校名も変更になり、カリキュラムも授業も、行事も・・・あらゆる面が変わった瞬間に立ち会っています。新生校の1期生です。3人は、そのことを明確に意識していました。ですから、自分たちが新しい伝統や学校文化を創造していくということに誇りと信念を持っているのです。断固たる決意で品川翔英を先生方と創っていこうという明晰な思考と感動的な心意気が伝わってくる対話をしてくれたのです。

★今回、最初のアイスブレイクの段階で、3人があまりに柔らかい思考と他者を思いやる寛容で温かい精神の持ち主であることに気づいたので、予め尋ねようと思っていたことをがさっと捨てました。私自身はPBL授業について多くの学校の先生方と長年つくりあげてきていたので、品川翔英が新たに開発したPBL授業について実際に生徒にインタビューしてみようと思っていたのです。そこにこそ品川翔英の魅力があるのだと仮説をたてていたのです。

★ですが、これだけ、柔軟に対話ができたり、こちらからの問いをどういう意味ですかと聞き返すのではなく、自分なりに捉え返すパラフレーズのスキルを発動して、三者三様に考えたこと感じたことを語れるのですから、もはや聴く必要はないと判断しました。先生方が創意工夫したPBL授業を行っていることは、その段階で目に浮かぶようにイメージが広がったからです。

★ですから、PBLの授業のやり方やどんな成果があったのかという無粋で野暮な質問は捨てました。3人とそして2人の先生と、学びの本質的な対話をしてみようと、根源的なところまでいっしょにダイブしてみようと思ったのです。知の洞窟への冒険をしてみたくなったのです。

★あまりに深くまで行ったので、それを表現するには、私の力ではだいぶ不足しています。でも、これは皆さんに伝えなければならないことです。品川翔英のZ世代の価値とその価値をいっしょに磨いている先生方の真摯な姿を。3人が、品川翔英だから変われる、成長できる、過去は変えられないけれど、これから創っていけるのだと語ってくれたその大切な価値を。(つづく)

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2021年1月24日 (日)

ノートルダム学院小学校 子供たちの瞬間瞬間の成長を気遣いかつ世界的視野を身につけ問題を解決するリーダーシップを育てるプロジェクトをデザインする教師で満ちている。

ノートルダム学院小学校(以降「ND」と表記)のサイトを開くたびに感動しないではいられません。なぜなら、更新率が高く、開くたびに先生方の生徒を見守る温かい眼差しと才能があふれでる授業が展開されている様子が手に取るようにわかるからです。そして、校長原山稔郎先生が毎週のようにブログを更新していて、世界の痛みをシェアし、その痛みを解消するサーバーントリーダーとして目の前の生徒が成長してくれるように祈る心が伝わってくるからです。

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★先日、NDの先生方とZoom対話をしました。いつもは、リアルな空間で行うのですが、今回は再度緊急事態宣言が発令されたために、サイバースペースで行うことになりました。リアルなスペースだと、peer-think-shareやディスカッション、ポストイット・マインドマップ、カテゴライズ、パターンランゲージの活用など、個人ワークとペアワーク、グループワークや多様なツールを使い変幻自在に動きながら気づきを生み出していくのですが、サイバースペースだと、その身体の動きは制約されます。

★しかし、リアルスペースであれ、サイバースペースであれ、再重要なコトは、<対話>です。

★そういう意味では、全く問題がありませんでした。NDサイトにあふれ出ている先生方の<対話>のエネルギーが、Zoom対話でもいかんなく発揮されていたのです。

★<対話>をするとき、斜めからみる皮肉屋(cynic)がいないのが、ND学院小学校の特徴です。cynicとcritical thinkingの区別がしっかりできているので、内省(振り返り)と改善がスムーズに循環します。先生方のこの姿勢がロールモデルエフェクトとして生徒の成長に大きな影響を与えるのは、火を見るより明らかです。すばらしいチームですね。

★今回は、高野先生の日本史の授業の振り返りを先生方としました。貴族の世界から平家が台頭し武家の社会が生まれ、鎌倉時代に移行していく歴史の話をストーリーテリングというアクティビティで授業は展開されたということです。

★生徒は、高野先生のストーリを聴きながら、個人ワークと対話をしながら、「天皇観」「貴族観」「武士観」を仮説を立て推理していきます。ファクトのノートテイキングというより、自分の考え方をそのつど書き換え更新していくという思考の試行錯誤の軌跡をノートにするわけですね。

★目的は「あなたなら、天皇、貴族、武士のどの立場で、国を治めるか?」というプロジェクトだったようです。

★ファクトとオピニオンを縦糸と横糸で編んでいく授業です。生徒は、いつの間にかその時代にタイムトラベラーとして参加したかのように感じたことでしょう。「自分ゴト」という言葉がありますが、歴史に自分自身がかかわっていく主体性が生まれてくる巧みな仕掛けだと思います。

★しかし、高野先生は、自己内省をし、ストーリーの話をする時間が長くなりすぎて、結局講義型の授業になってしまっていて、インプット型の授業ではないかと。どう改善したらよいだろうと、自分なりにモニタリングして、仲間の先生方に相談をもちかけました。

★すると、同僚の先生方は、「ノートルダムの歴史を学んだ小学生が、誇りを持って小学校に通えるのと同じように、日本に住んでいること、文化、魅力ある人物を誇りに思えるようになれるような授業でしたよ!」「歴史上の人物を知る、生活、文化、自分の国を知る、そして自分の国のことを語れるようになる!なんか国際人への第一歩へとつながるきっかけが生まれるような気がしました。テーマを持っての意見交流、気付き合い、学び合いができるのは、意外と難しい。それなのにやってのけているのだからすごいよ」「広報を考えていく中で、どうしてもキーワードが<未来を生きる>になってしまうんですが、過去の時代にいながら未来社会を考えるしかけができていて感動しました。このような授業を実施していることをもっと広報したいと。ありがとう!」「社会というと、知識を詰め込むものだと思いがちな子どもたちに、歴史のストーリーを教えてあげることで、よりおもしろく、歴史が好きになれると思いましたよ」と、エールが贈られました。

★高野先生と同じ社会を担当している一柳先生も、終始高野先生をサポートしながら「学んだことを土台にして、具体的な事象に対する解決策を考え、発表できる授業だと思う」と互いに社会科の授業の価値を確認し合っていました。

★このような同僚にようるエンパワーメントフィードバックができるのはすてきです。もっとこうしろという対話ではなく、自分たちはこのようなことに気づいたよと分かち合いができるオープンなマインドは、共感的な対話ができる組織だということを示唆しています。

★そして、高野先生は「ストーリテリングと知識を講義するということは実は違っていたのだということに気づかされました。ある意味コペルニクス的転回です。ストーリーテリングは講義というよりアクティビティという意味でとられ返せばよいのですね!」と。

★そして、国語の先生とも、物語を創作するワークショップはぜひ横断的にやりましょうと。生徒もストリーテラーになることは、もっと主体的になることですよねと。

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★高野先生は、神先先生が、理科でも実験や作業はするけれど、高野先生のストーリーテリングと生徒が自分の考えを更新していく作業は、同じ意味があると思いますというフィードバックに、そう気づいたということでした。

★私も、先生方と対話して、上記のような図が思い浮かびました。まさにこれぞプロジェクト学習だなと感じ入りました。ありがとうございました。

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GLICC Weekly EDU(17) 聖学院児浦先生と対話。1人ひとりの賜物が溢れ、聖学院の賜物融合が爆発している。

★先日、GLICC Weekly EDU 第14回「中学入試、高校入試の新しいムーブメントを牽引する聖学院児浦先生との対話」が開催されました。主宰の鈴木さんもコメンテーターの私も、聖学院の全貌の話と生徒1人ひとりの賜物のが生まれ出でる細部の過程を聴いて、驚嘆の連続でした。

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★神は細部に宿るというのはこのことだと感嘆したわけです。

★生徒1人ひとりの賜物、私たちの言葉で言い換えれば才能が、あふれでる学びのデザインが、大胆かつ細心の注意をはらわれて創られている話やそのデザインが様々な学問や学習理論の成果をインテグレートして精緻に創っていることを改めて聴くことができました。

★そして、その生徒の賜物が溢れ出ると、教師の賜物もさらに開発され、相乗効果が生まれます。核融合ならぬ賜物融合が爆発している学校だということがよくわかります。詳しくはぜひYoutubeをご覧ください。児浦先生の21教育企画部長の素晴らしい賜物を体験できます。

★また、児浦先生のPPTの創りこみには、他の追随を許さない技術が発揮されています。成果の出る広報とは、ここまで教育の内容をプロセスの側面と価値ある内容の表現がなされていなければならないということもわかります。学校の広報の先生方にも大いに参考になると思います。

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★そして、その力が、新高校生クラスGICに結晶化されているわけです。国際教育部長として面目躍如です。

★しかし、なんといっても、児浦先生自身は、ネットワーカーで、外部の学習の方法をたくさん学内に結びつけているわけです。4人の実践家といっしょに児浦先生はワークショップの実装版本を出版しています。外部の智慧がワークショップとして内部にも流れ込んでいるわけです。

★このWSのパターンは、教育だけはなく他の団体も巻き込むユニバーサルな価値を持っています。まさにOnlu One For Othersを児浦先生自身が体現しているわけです。

★生徒が自らの賜物を生み出し、どんどん成長し、世界を巻き込んでwell-beingの社会を創っていく希望が聖学院にはあります。児浦先生、私たちに希望と確かな道を、本当にありがとうございました。

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2021年中学入試情報(33)新しい価値観の海外体験者と英語体験者に対応する準備機関が生まれる可能性大

★中学入試を受験する海外体験者と英語体験者の価値意識が従来の中学入試の価値意識とズレがでてきたことは中学入試市場では広く認知されるようになってきました。新タイプ入試が増えてきたということがその証ですが、この入試が増えたことによって、新しい価値意識を掘り起こしたとも言えるし、新しい価値意識をもった海外体験者や英語体験者が、新しい入試や自分たちの価値を受け入れてくれる塾などの準備機関を猛烈に探す行為に触発されて新しい入試が開発されたり、新手の塾が生まれてきたとも考えられます。

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★海外体験者というのは、帰国生入試を受ける資格がある生徒だけをいうのではなく、小学校低学年で海外体験があるという生徒や、小学校の時グローバル研修に短期だけれど経験したという生徒も含みます。

★かつては、帰国生も、海外に進出した一般受験を受ける準備をする塾に通い、帰国生入試と一般受験を受けられる準備をしてきました。したがって、開成や麻布、駒東など一般受験で帰国生が入学しているというケースは当たり前でした。ただし、この場合、中には不満をもつ帰国生もいました。4科の勉強で手いっぱいになり、英語の学びが継続できないと。

★そこで、海城は、帰国生入試を開設しました。準備は20年前から用意周到に行われてきましたが、ともあれ、これが大当たりでした。そして明らかにここから帰国生の価値意識が変わってきました。

★そのままでは、海城にいけなかった帰国生の行き場がありません。しかし、すでにかえつ有明が、英語だけで帰国生を受け入れる国際生入試を行い、その入学者が着実に成果をあげていました。ケンブリッジ大学卒のハリーポッタ似のアレックス先生の哲学英語の授業が大人気だったし、何よりIBのTOK以上の授業であることに目を付けたインタナーナショナルスクールの小学生が、どっとかえつ有明に押し寄せました。

★これで、海城を受験する準備をしている帰国生に併願校として、御三家ではなく、かえつ有明のような新しい学校があれば、そこも併願するという意識を創発することになりました。

★すると、準備として4科目をきっちりする必要はなくなったのです。英語と国語と算数でよいということになります。そのうち、思考力入試という新タイプ入試が増えます。これはかえつ有明と聖学院、工学院が行ったことから端を発しています。

★いずれも、帰国生を受け入れています。

★そうなると、英語と国語と算数と思考力を養う塾がないかということになってきたわけです。全部やれる専門塾はたぶん東京には数箇所しかありません。今そこが口コミで帰国生に知れ渡ってきています。しかもオンライン授業対応ですから、海外からも受講できます。

★しかし、まだまだ、国語と算数と思考力という探究ベースの塾あるいは個別指導塾と英語塾のカップリングで通塾しているでしょう。

★東京の帰国生の25%は、すでに4科受験の準備はしなくなっています。海外体験者は、5年生6年生段階で一般受験の専門塾に通うケースが多くなっていますが、3%は、新タイプ入試対応塾を選択していると推測できます。

★一方、英語体験者ですが、その中で、英検で5級以上の生徒は、もうできれば英語だけの新タイプ入試でいきたいし、それはまだまだ少ないので、英語と国算と思考力を養って臨もうとしています。100%といっても過言ではないでしょう。

★このような新タイプ入試対応塾が一気に広まらないのは、実は英語など4技能入試が当たり前になります。すると従来の講義型の授業ではなく、当然ワークショップ型で、PBL的な授業になります。

★この新タイプの授業ができる講師が塾にはまだそんなに多くはいないというのが、今の塾の事情です。しかし、このことはやがて、ガザッと変わるでしょう。大学生が起業して新し学びの塾を開設していくからです。当然オンライン授業もやりますし、英語も達者ですから、彼らにとっては、英語と国算と思考力で受験できる新タイプ入試が増えることは願ったりかなったりなのです。

★しかも、そのような新しいタイプの塾は、社会と理科の学びもオプションでどんどん創っていくことが可能なのです。仲間とのネットワーク型の学びの環境を創るのが得意だからです。

★中学入試と受験準備塾と保護者の価値意識が新しくなる共鳴音が鳴り響き始めるのも間近です。

★それから、帰国生入試と英語体験入試の違いもやがてなくなります。帰国生入試は、今までは1月までに行われてきました。しかし、今やかえつ有明も2月以降にも行います。そのとき英語体験者もいっしょに受験でます。そこの境目はなくなり始めているのです。

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2021年1月23日 (土)

2021年中学入試情報(32)東京エリアの帰国生の中学入試 応募者状況 時代の良心を見通す学校が顕れる タレンティズム時代へ

★今の日本は、97%の社会通念の壁に覆わています。しかし、ここのところその壁の向こうに通じる3%の穴を突き抜ける私立中高一貫校が顕れました。その3%の穴を開成自身が、自身の学校に開けています。しかし、下記のリストの学校の中には、学校全体で3%の穴の向こうに突き抜けようとしている学校があります。社会通念から時代の求める良心に導かれる道を歩み始めているわけです。

         21応募 20応募 前年対比
かえつ有明 国際生 699 697 100.3%
広尾学園 国際生 650 271 239.9%
広尾学園小石川 国際生 591 0
開智日本橋学園 帰国生 300 131 229.0%
東京都市大学付属 帰国生 268 283 94.7%
渋谷教育学園渋谷 帰国生 224 253 88.5%
頌栄女子学院 帰国生12月 186 227 81.9%
海城 帰国生 169 180 93.9%
共立女子 海外帰国生 160 131 122.1%
山脇学園 帰国    136 93 146.2%
大妻中野 海外帰国生 114 105 108.6%
立教池袋 帰国児童 106 100 106.0%
白百合学園 海外帰国生 91 71 128.2%
文化学園大学杉並 81 69 117.4%
学習院 帰国子弟    77 78 98.7%
学習院女子 帰国生 67 75 89.3%
成城学園 帰国生    51 65 78.5%
工学院大学附属 帰国生 50 31 161.3%
田園調布学園 帰国子女 48 20 240.0%
昭和女子大附昭和 帰国生 46 40 115.0%
中央大学附属 帰国生 36 32 112.5%
暁星 帰国生     34 24 141.7%
淑徳 帰国生     33 42 78.6%
聖学院 帰国生     31 36 86.1%
高輪 帰国生     29 30 96.7%
富士見丘 帰国生     27 6 450.0%
品川女子学院 帰国生 25 12 208.3%
佼成学園 海外帰国生 20 6 333.3%
佼成学園女子 帰国生 19 0
大妻多摩 帰国生 18 23 78.3%
実践女子学園 帰国生 15 7 214.3%
ドルトン東京学園 帰国生 10 10 100.0%
八雲学園 帰国生     10 12 83.3%
和洋九段女子 海外帰国生 8 2 400.0%
女子聖学院 帰国生 7 2 350.0%
跡見学園 帰国生    7 4 175.0%
神田女学園 帰国生 7 4 175.0%
駒込 帰国生     7 3 233.3%
啓明学園 帰国生     7 4 175.0%
普連土学園 帰国生 7 3 233.3%
三輪田学園 帰国生 6 3 200.0%
国本女子 帰国生     5 4 125.0%
玉川学園 帰国生     5 2 250.0%
目白研心 国内帰国生 4 0
文教大学付属 帰国生 4 8 50.0%
武蔵野大学 帰国生 4 13 30.8%
麹町学園女子 帰国生 3 4 75.0%
十文字 帰国生 3 4 75.0%
明星学園 帰国生 3 5 60.0%
順天 海外帰国第1回 3 9 33.3%
京華 帰国生特別 2 7 28.6%
玉川聖学院 帰国子女 2 1 200.0%
聖ドミニコ学園 帰国生 2 2 100.0%
桐朋女子 帰国生対象特別 2 2 100.0%
聖徳学園 帰国生 2 2 100.0%
京華女子 帰国生特別 1 0
星美学園 海外帰国生 1 0
東京家政大学附属 帰国生 1 0
東京女子学園 帰国生 1 1 100.0%
実践学園 帰国生   1 0

★このリストは、東京エリアの帰国生入試の応募者状況を示すものです。応募者の前年対比を出し、応募者数の多い順にならべてあります。データは、日能研の倍率速報(2021年1月23日現在)をメインに使いました。

★東京エリアの帰国生の応募者前年対比は140%(成長率という発想から考えればすごいですよね)ですから、東京エリアが、いかに3%の穴を突き抜けようとする風がいかに吹いているかということがわかるでしょう。

★もちろん、上記リストすべてが、3%の穴を突き抜けようとしている学校ではありません。社会通念の壁の中で、帰国生の英語力によって、椅子取りゲームで覇者になろうという戦略的な学校もあります。ただ、いずれにしても、ここのリストに挙がった学校は、海外大学への道も開いているので、学校がどう思おうと、生徒自ら3%の穴を通り抜けようとする機会を作っていることに変わりはありません。

★世界は、この3%の穴の向こうが拡大しています。今までのように化石燃料を使いたい放題で、その化石燃料を巡る覇権争いをやめることなく行い、結果、地球と市民を傷めつけてきたことを反省する良心が動き始めています。日本は、社会全体でそこにシフトするという点では、だいぶ後れを取っています。先進諸国の中でジェンダーの問題を解決できていない国であることは象徴的な出来事です。

★この3%の穴を通り抜けるウネリは、しかし、人々の意識が変わらなければどうしようもありません。どうしたらよいのか?それは教育にかかっているというのが、国際的に一致している価値観です。それは、紆余曲折あるのですが、ブレアークリントン時代から生まれています。

★みなさんが、憧れ騒いでいるシリコンバレーのHTHなどは、まさにブレアークリントン時代の教育政策の贈り物です。

★日本だって、なんとかそれに乗ろうとしてきたのは当然ですね。しかし、総合学習も、探究学習も、アクティブラーニングも、PBLも相変わらず反対者やそのサイレントキラーはいるわけです。

★彼らが、学歴社会において社会通念の壁を保守してきました。しかし、東京エリアは、どうやら3%の穴の向こうに冒険しようという学校が誕生してきました。

★それがどこなのか、それは上記リストの学校が今後牽引していきます。もちろん、コンサバだったり、GAFAだったり、マーケティングだったり、タレンティズムだったり、どこに価値を置くかは違います。しかし、価値の多様性は歓迎なので。それぞれのアプローチで3%の穴を通り抜ければよいのです。

★それぞれ違うけれど、3%の穴を突き抜けるベクトルを生み出すというのは、アダム・スミスやヘーゲル的なアイデアだし、量子力学的な発想でもあります。もちろん、文化人類学的発想でもありましょう。

★そして、この社会通念と良心の意味の違いを論じたのがJ.J.ルソーです。この点は、今回の倫理の共通テストの問題でもありました。どうやら、ウネリは確実に生まれています。

★そうそう、トレンドとウネリは違います。トレンドは社会通念のニーズが生み出しますが、ウネリは時代の良心が生み出します。

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2021年中学入試情報(31)神奈川エリアの帰国生の中学入試 応募者状況 未来の経済構造変容のヒント

★2021年1月22日現在(日能研倍率速報)で、概ね帰国生入試の応募者数は出そろってきました。ここで帰国生入試の前年と比較しておきましょう。リストは応募者数の多い順位並べています。

     21応募 20応募 前年対比
洗足学園    214 226 94.7%
聖光学院 帰国生 145 165 87.9%
桐光学園男子部 帰国生 87 95 91.6%
法政大学第二 帰国生 80 86 93.0%
日本大学 帰国生 64 64 100.0%
逗子開成 帰国生 61 67 91.0%
公文国際学園 帰国生 47 42 111.9%
湘南白百合学園 帰国生 34 38 89.5%
森村学園 帰国生 32 39 82.1%
神奈川大学附属 帰国生 29 0
桐光学園女子部 帰国生 22 29 75.9%
清泉女学院 帰国生 19 23 82.6%
カリタス女子 帰国生 12 18 66.7%
青山学院横浜英和 帰国生 11 21 52.4%
日本女子大学附属 帰国 10 11 90.9%
関東学院 帰国生 8 15 53.3%
聖園女学院 帰国 7 3 233.3%
横須賀学院 帰国生 4 3 133.3%
聖セシリア女子 帰国生 4 2 200.0%
聖ヨゼフ学園 帰国生 3 6 50.0% 

★洗足学園、聖光学院は例年通りたくさん集めています。しかしながら、前年対比は微減です。これは、帰国生の数全体が減少しているというわけではありません。首都圏の中学入試人口は、およそ50,000人です。これに対し、私の推計ですが、首都圏の帰国生の中学入試受験者は3000人ぐらいです。

★そこに、グローバルコースや国際生コース、インターナショナルコースなど、そこだけ注目すれば、御三家の教育以上の授業や学習環境を整え、そこから世界大学ランキング100位以内の大学に進学することができるということが、ここ2,3年で明らかになってきました。

★では、そのような生徒は東大にも入りやすいよねといわれるかもしれません。しかし、東大の入試制度と海外の入学制度は全然違うし、評価のシステムが違います。これがおもしろいことに、世界大学ランキング100位以内の東大と京大は、帰国生入試枠の生徒は、世界に通じる入学制度の互換性を利用できるのですが、一般受験生はできません。ここに一般受験生が海外大学を受ける壁があるのです。お金の問題もありますが、大学受験はまだまだ鎖国状態です。

★中学から帰国生入試で中高に入学した生徒は、一般クラスに入れば、東大に合格する生徒はたくさんいます。実際、御三家や洗足、聖光学院などは、帰国生入試で入ってきた生徒は特別な国際生対象のクラスがなかったり、あえてはいらなかったするので、一般受験をするクラスのメンバーの中に溶け込みます。

★東大に合格したときに、実は帰国生だったという話はあるあるなのです。しかしながら、国際生クラスやインターナショナルクラスに入った生徒は、日本の大学は、超難関私大か総合型選抜を受験するわけです。英語が圧倒的にできるので、このようなクラスを設定している学校は、御三家も驚く大学に入学する事態が生まれているのです。

★話が長くなりましたが、帰国生のパイは3,000人くらいです。そのパイを、そのような新しいグローバルコースを持った学校が新プレイヤーとして参入して、洗足や聖光学院と取り合うわけです。当然、老舗の学校の帰国生応募者が微減となるわけです。

★なおかつ神奈川エリアの小中高生の人口減は激しいわけです。それに加え、テレワークで、地方にビジネスの人口が移動するかと思いきや、結局ハイブリッドで、会社に近い方がよいわけだし、同時に仕事場のスペースは小さくなりますから、放っておくと不動産の値崩れが起こります。それに不動産は、2022年問題があって、30年前の改正緑地法をさらに改正しないと、都市圏で緑地の宅地が加速します。

★それゆえ、不動産の値崩れを防ぐために、都心のテレワークや多様なウイルス感染防止策を講じた新しいスペースが開発されます。ある意味江戸化するわけですね。生活と働き場所が同じになり、なおかつハイブリッド空間になるわけです。

★本社機能が東京都から移転しない限り、テレワークによる地方への移動は限定的で、むしろ都心に人口が集まってきてしまいます。電車通勤という密な状況を回避し、テレワークとリアルのハイブリッドの方が、合理的ということになるでしょう。

★帰国生のファミリーは、港区や世田谷区に集中することになります。実際、人口動態では、東京の23区は人口が集中します。東京の中でも埼玉や神奈川に近い多摩エリアは、人口減となります。

★したがって、帰国生の人数自体も神奈川エリアや多摩エリアは減るわけです。実際神奈川エリアの帰国生入試の総応募者数は、前年対比94%です。一方、東京は、前年対比140%です。

★しかしだからこそ、帰国生獲得のためのイノベーションがものすごい勢いで進みます。老舗の学校は、減少したといっても、一般生と同じ感覚ですから、全体では安泰なので、特別なことは行いません。もっとも、洗足と日本大学(日吉)は、きちんと帰国生のためのコースをつくています。今後も帰国生に人気の学校であり続けるでしょう。

★今はそれほど多くありませんが、聖ヨゼフ、聖セシリア、カリタス、清泉は、コースというより破格のグローバルプロジェクトを実施ていくでしょう。そして、都心の学校以上にオンライン授業や教育のイノベーションを起こしていくでしょう。不利な立地の条件を創意工夫次第で、乗り越えられるのが、教育の醍醐味です。この4校は、それを実現するイノベーションを起こせる学校です。

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2021年1月22日 (金)

2021年中学入試情報(30)首都圏中学入試 問題の予想

★2月1日から東京と神奈川の私立学校の入試があります。私立学校が最も多く集積しているエリアですから、最も注目される時期でもあります。すでに、埼玉、千葉、関西圏などで中学入試はスタートし、今までとは違い、新型コロナウイルス感染防止対策を万全にして臨む準備も加わり、学校も受験生もこれまで以上の体力と気遣いの中で進行しています。

★そして、入試問題でも、パンデミックとSDGsが交差する問題が出題されてれています。各塾予備校でも、そのことを予想し、入試直前まで、感染対策を十分に施し、受験生と基礎の確認、苦手問題の振り返りを行い、そのうえで予想問題をいっしょに考えている姿が目に浮かびます。

★特に、昨年の学校の一斉休校の影響で、出題範囲が限られる学校もでています。しかしながら、そのような学校でも時事問題は今まで通り出題するところが多いわけです。ですから、時事問題に関連して各教科横断的な問題を出題する可能性は大なわけです。

★たとえば、理科では、この1年、天体や宇宙に関するニュースは多かったですから、当然「はやぶさ2」を扱った問題も予想されているでしょう。はやぶさ2のカプセルがオーストラリアに落下することになった理由は何かという記事が朝日新聞で掲載されていて、参考になります。

★次のような観点が書かれています

❶立地:広い、平ら、人が少ない
➋日本と国交・アクセスしやすさ
➌帰還軌道が南半球だった
❹物的・人的損傷に対する保険関連の法律の適用がある
➎未知のウイルスに対応する協力体制ができる国

★社会や理科でも出題される問いがあることに気づきます。特に「未知のウイルス」という観点は、宇宙からのウィルスも今回のパンデミックも対応する仕組みやシステムあるいは構造はほぼ同じ扱いで考えられます。

★また、SFなどででてくるエイリアンという発想からは、ウイルスと人間の違いという観点も問われるかもしれません。免疫の話とかDNAの話が知識としてではなく、素材文として出てくる可能性はあり、そうなると国語の説明文や論説文でも出題される可能性があります。かつて麻布がドラえもんは生物なのかという問いを理科で出題しましたが、国語でも出題できます。ウィルスは生物かというテーマの説明文がでれば、当然、あなたの考えを書きなさいという短い論述はでてもおかしくないでしょう。ウイルスは遺伝子を自己複製しないというのがポイントです。

★また、この間芥川賞を受賞した宇佐美りんさんの「推し、燃ゆ」は、SNSを介した心理の凄まじい描写が印象的ですが、今回のパンデミックでテレワークやオンライン授業(今も再緊急事態宣言下でそうなっています)が一気に広まりました。このテレワークと働き方や学び方のメンタル面や社会構造の変化について問われるのもおそらく塾予備校は想定内だと思います。

★1970年代以降の日本の産業の中でさらに工業の変化に焦点を当てた問題は以前からも出題されていましたが、今回のパンデミックで、ソサイエティ5.0やSDGs、そして脱酸素社会の問題は注目されるのでしょう。

1970年 鉄鋼 船舶 ラジオ受信機
1980年 乗用自動車 輸送用機械
1990年 乗用自動車 コンピュータ 集積回路
2000年 鉄鋼 輸送用機械
2010年 工業の成長の低迷
2020年 工業の成長の低迷
2030年 SDGsへ対応する工業
2050年 脱炭素社会に対応する工業 

★そして、当然働き方の変化についても問われるでしょう。特にテレワークやオンライン授業は、生活の時間と心の問題は重要です。かつて、フェリスや横浜雙葉では、「時計のある時間」と「時計のない時間」あるいは「直線的な時間」と「円環的な時間」などが比較される文章を提示し、時間と意識の関係について自分の考えを200字以内で書く問題も出題されたことがあります。

★時間の問題は人間にとって永遠の問題ですが、今回のパンデミックは、再び考察するウネリが時事問題としては浮上しているわけです。

★このような問いを考るうえで、参考になるのは、世界経済フォーラムのダボス・アジェンダです。クリティカルシンキングを発動させながら読む必要はありますが、世界同時的に抱える問題を振り返るうえで参考になります。

★おそらく、以上のように、まざまな創意工夫を凝らした新傾向問題も出題されるでしょう。しかしながら、知識の問題として出題れることはなく、大事なことは今まで学んできた読解方法、記述・論述の書き方と考え方、データやグラフの読み取り方を確認しておけば、新しい情報の問題も恐れることはありありません。

★それから、基本的な知識の定着の確認は大事です。たとえば、麻布の理科は40点満点で40問出題されます。簡単な知識の問題もなかなか興味深い記述の問題もすべて1点です。難しい知識は出題されませんから、そこは確実におさえるのが、麻布合格の秘訣だということは何度も塾予備校の先生方が確認されていることでしょう。

★新型コロナ感染防止策と基礎知識の確認と平静な心構えと柔軟に考えることができるコンディションを整えて臨んでください。念願成就を祈っています。

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2021年中学入試情報(29)東京エリアの共学校の応募者状況

★2021年1月21日現在(日能研倍率速報)から、東京エリアの共学校の各入試の応募者状況を見てましょう。50人以上応募者があり、前年との差が―20よりも少ない学校を並べてみました。広尾学園小石川は、新しい学校なので前年差は応募者人数と同じわけですが、多くの応募者がいるということがわかります。

                     21応募者 前年差
広尾学園小石川 第4回 412 412
広尾学園小石川 第5回 399 399
広尾学園小石川 第3回 377 377
広尾学園小石川 第2回 367 367
芝浦工業大学附属 特色 206 206
安田学園 先進特待/第6回 194 194
広尾学園小石川 第1回 193 193
青稜 タブレット 104 104
明星 第4回/2科 87 68
品川翔英 第7回/2科・4科 67 67
上野学園 2月1日午後 127 64
品川翔英 第3回/2科・4科 60 31
明星学園 A 106 24
品川翔英2回/2科型(特待) 62 23
宝仙理数第1回2科・4科 82 23
駒込 第4回/3カ年特待 56 22
文化学園大学杉並 第1回 90 22
安田学園 一般/第1回 154 17
東京電機大学 第2回 342 11
明星学園 C 97 10
郁文館 第2回総合 82 9
桜美林 2/2午前/総合学力 95 7
ドルトン東京 2月1日午前 106 5
桜丘 第1回 125 5
聖徳学園 2/1AO 56 3
明星学園 D 96 2
桜美林 2/1午前/総合学力 166 0
成立学園 第1回 58 0
宝仙理数新4科特別総合 116 0
立正大立正 第1回午前 149 0
東海大付属高輪台 第1回 108 -1
成蹊 第1回 345 -2
宝仙理数 第2回2科・4科 161 -2
桜丘 第2回 135 -2
淑徳巣鴨 第1回(一般) 109 -2
明星 第3回/2科 96 -3
東海大学菅生 第3回 62 -3
聖徳学園 2/2PM② 64 -4
東海大学菅生 第2回B 56 -4
桜丘 第4回 128 -5
桜丘 第3回 133 -6
明星 第2回/2科 93 -6
郁文館 第3回総合 93 -7
法政大学 第1回 298 -8
安田学園 一般/第2回 169 -8
東海大学菅生 1回B兼特待 67 -9
東海大学菅生 2回A兼特待 60 -9
東海大学菅生 第4回 57 -9
東洋大学京北 第4回 26 -10
工学院大学附属 第2回A 56 -10
聖徳学園 2/1PM① 54 -10
文化学園大学杉並 第3回 87 -11
立正大学付属立正 第2回 151 -12
上野学園 2月2日午前 59 -12
城西大学城西 第1回午前 54 -12
多摩大学目黒 進学第1回 68 -13
東海大学菅生 第1回A 60 -14
郁文館 GL特進クラス選抜 55 -14
東京農大第一 第1回 670 -15
目黒日本大学 2月2日午前 213 -16
日本大学第二 第1回 440 -17
桜丘 第5回 130 -17
三田国際 第1回/インター 103 -17
ドルトン東京 2月2日午前 126 -19
郁文館 第1回一般 67 -19
聖徳学園 2/3AM② 59 -20

★このリストに人気がすでに安定している共学校がでてきていないのは、もともと応募者が多いので、前年差が-20より少ないという条件の中にはいってこないというだけのことです。

★このリストは、新しい学校の勢いや新しい教育イノベーションの努力をして、マーケットの中でサバイブしようとがんばっている学校の勢いが推定できるリストになっていると思います。このリストの中から未来の共学校として注目を浴びる学校がでてくる可能性があります。それは2月以降にある程度明らかになってくるでしょう。

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2021年1月21日 (木)

2021年中学入試情報(28)千葉エリアの私立中学入試の応募者数は昨年を上回る予想。

★千葉エリアの私立中学入試は、昨日から本格的に始まりました。日能研倍率速報(2021年1月20日現在)から1月20日から22日の入試で、前年比を出してみました。

             21応募者 20応募者 前年対比
光英VERITAS 第1回(特待)  174 39 446.2%
光英VERITAS VERITAS算数/英語  84 29 289.7%
光英VERITAS 第2回   199 70 284.3%
千葉日本大学第一 第1期  775 671 115.5%
渋谷教育学園幕張 帰国生  159 147 108.2%
芝浦工業大学柏 第1回   1134 1107 102.4%
麗澤 第1回  797 787 101.3%
昭和学院秀英 第1回  1408 1401 100.5%
専修大学松戸 第1回  1455 1470 99.0%
昭和学院 適性検査型  164 166 98.8%
市川 第1回  2538 2754 92.2%
東邦大学付属東邦 前期  2258 2500 90.3%
二松學舍柏 グローバル/特選第1回  121 137 88.3%
昭和学院秀英 午後特別  694 824 84.2%
渋谷教育学園幕張 一次  1758 2142 82.1%
二松學舍柏 選抜第1回  76 97 78.4%
二松學舍柏 選抜第2回  73 106 68.9%

               日能研2021年1月20日現在 

★トータルでは、現状前年対比は96%。これはまだ集計中ですから、昨年を上回るのは必至でしょう。コロナ禍にあって、学校と受験生が共に乗り越えようとする姿勢がここには反映されているのでしょう。

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2021年中学入試情報(27)工学院大学附属中高のふだんのPBL授業が共通テストとマッチングしている。

★工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)の教務主任田中歩先生から、今のところ同日前年対比延べで172%、実人数148%だと連絡が入りました。風が吹いています。

Unlock

★風が吹くという意味は、共感的コミュニケーションの振動が学内で共振し、その波動が外部のいろいろなところに広がっているということです。

★たとえば、同校は、日本初のケンブリッジイングリッシュスクールです。ケンブリッジ出版のテキストを使うのが原則ですが、テキストを購入して終わりではないのです。テキストは加盟校専用のWebにつながり、ケンブリッジ出版のプラットフォームを活用できるのです。リスニングやスピーキングの動画、ライティングに必要なマテリアルにアクセスして活用できます。それに教師のオンライン研修にも参加できます。

★デジタル教科書というより、情報の拡張性が半端ないということです。サイバースペースで4技能トレーニング環境にあるわけです。認定校になる準備段階から遡ると、この環境が6年前からあったということです。ですから、1人1台タブレットやノートPCが必要だったのです。

★当然、この環境を学ぶにはPBL授業でなければなりません。そして、同時並行で、全教科でPBLに挑戦していたので、英語だけの問題ではありませんでした。紆余曲折在りながら最終的にはグローバルプロジェクトというカタチにいわゆる修学旅行はシフトチェンジしたのです。

★このグローバルプロジェクトは、今回パンデミックによって、現地でフィールだワークが出来ませんでした。一年通して何度もプログラムを一からやり直し、リアルスペースとサイバースペースをオンラインでつなぎながら乗り切りました。現地にいけなかったのは非常に残念だったでしょうが、有志ではなく、学年全体が予測不能なパンデミックと行政政策の次々と変更される波の中で、乗り切るための生徒間の対話や議論は、共感的波動を学内にそして、現地の方々やコーディネーターとも共振していったのはいうまでもありません。

★そんな風が吹いている中、高3生は総合型選抜やつい先日大学入学共通テストに挑んだのです。そして、それぞれが終了するたびに、入試制度や問題を教務主任田中歩先生は情報収集・分析し、カリキュラムや授業、定期テストなどの有効性を検証しています。

★その一つの例として、英語の共通テストの分析をし、PBL授業と定期テスト、ケンブリッジ出版のテキストの総合的な有効性についての論考が同校サイトに掲載されています。こういうプロトタイプーリファインというPBL型の仕事をするのが田中歩先生の特徴です。

★いかに有効かが了解できる中身が大変興味深いのでぜひご覧ください。「工学院の英語教育×大学入学共通テスト」という記事がそれです。

★また、同校は、ラウンドスクエアという世界のエスタブリッシュな私立学校コミュニティの正式認定校です。このコミュニティで、工学院の生徒がもちろん英語で対話をし国を超えてPBLを行っています。ラウンドスクエアはIBの創設者の一人であるクルト・ハーンという偉大な教育者が旗揚げしたコミュニティです。

★彼自身が創設したゴードンストーンスクールは、世界の王室の子弟、各国の重鎮の子弟が入学するほどクオリティの高い教育とグローバルリーダーを育成する確かなプログラム、寛容性を養うサービスをメインとするアドベンチャー教育が実施されているノーブレス・オブリージュな学校です。年間の学費は1000万円です。

★工学院は、その10分の1の学費で、同じクオリティの教育が得られるという保証が正式認定校という意味です。このことに気づいている中学受験生が徐々に増え始めているわけで、それもまた風が吹いている状況を生んでいる理由の1つでしょう。

★インドやインドネシアでは、IBかラウンドスクエアの認定校が、あるいは両方認定されている学校かが富裕層家庭の選択の条件です。工学院の生徒はそのような海外のネットワークと結びついて学んでいけるのです。

★その具体的な対話や議論については、英語科主任の中川先生がいろいろなメディアから取材を受けています。今日も工学院の英語の教育全般について取材されている記事「電子図書館で洋書を読み、クラウドで小説を執筆。生徒の表現力を伸ばす英語教育×ICT」がYahooニュースでリンクされていました。ぜひご覧ください。

★この風はどんどん大きくなります。なぜなら、この風は共感的コミュニケーションから生まれているのですから。そして、そのコミュニケーションの言葉が、日本語でも英語でもないのです。New Languageなのです。この新しい言語を使っている学校は、今のところ10校くらいでしょう。IB校でもまだまだです。ラウンドスクエア校はすべてです。使っていなければ認定されないからです。これについては、今年の中学入試の動向を見ながら考えていきたいと思います。

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2021年1月20日 (水)

2021年中学入試情報(26)東京エリア 女子校の応募者状況 新しいウネリ=New Languageが生まれているかも。

★2021年1月20日現在(日能研倍率速報)から、東京エリアの女子校の各入試の応募者状況を見てましょう。50人以上応募者があり、前年との差が―50よりも少ない学校を並べてみました。するとあることに気づきます。

Photo_20210120220601

(写真は、昭和女子大附属昭和女子のサイトから。この写真に共通するNew Languageがあるんです)

       応募者数 前年差
山脇学園 一般B 319 319
トキワ松学園 第4回 70 70
和洋九段女子 第5回 66 66
鴎友学園女子 第1回 563 53
雙葉(締切) 385 34
京華女子 第2回英検 52 32
桜蔭(締切) 581 26
実践女子学園 第2回 249 11
和洋九段女子 第1回 64 11
大妻多摩 総合進学/第1回 80 6
実践女子学園 第1回 75 6
佼成学園女子 2/2午前 52 2
昭和女子大附昭和 GA 51 2
日本大学豊山女子 2科① 142 -1
晃華学園 第1回 119 -2
日本大学豊山女子 2科② 111 -3
晃華学園 第2回 276 -4
トキワ松学園 第2回/英語 73 -4
共立女子第二 1回AM2科4科66 -4
佼成学園女子 2/1午後 50 -4
佼成学園女子 2/1午前 117 -5
共立女子第二 2回(PM) 93 -6
実践女子学園 第3回 118 -8
玉川聖学院 第1回 80 -8
共立女子第二 2回(AM) 77 -8
日本大学豊山女子 2科選択94 -10
トキワ松学園 第3回 63 -10
立教女学院(締切) 347 -11
大妻多摩 総合進学/午後 163 -11
共立女子第二 1回(PM)/2科93 -11
昭和女子大附昭和 GB 56 -13
山脇学園 一般A 215 -15
女子聖学院 第2回 74 -15
玉川聖学院 第2回 100 -16
文京女子 ポテンシャル① 75 -16
東京家政大第2回特別奨学 70 -16
桐朋女子 A 88 -17
和洋九段女子 第3回 65 -17
京華女子 第1回午前2科4科59 -17
富士見 第1回 216 -18
玉川聖学院 第4回 96 -19
京華女子 第3回 70 -19
東京家政大 第1回セレクト50 -19
文京女子 ポテンシャル② 78 -22
女子聖学院 第1回 54 -22
富士見 算数1教科 174 -25
玉川聖学院 第3回 83 -25
白梅清修 第1回(午前) 78 -25
文京女子 ポテンシャル③ 76 -25
光塩女子学院 第2回 107 -26
東京家政大学附属 第3回 62 -26
文京女子 ポテンシャル④ 80 -27
和洋九段女子 第2回 74 -29
京華女子2回午後2科4科型 64 -29
東京家政大学附属 第5回 63 -29
普連土学園 1日午前4科 88 -30
晃華学園 第3回 133 -31
十文字 第3回 105 -32
十文字 第1回 88 -34
日大豊山女子 4科・2科 86 -36
和洋九段女子 第4回 64 -36
女子聖学院 第3回 60 -36
跡見学園 一般第1回 126 -39
桐朋女子 B 92 -39
文京女子 特待チャレンジ 50 -39
光塩女子学院 第1回 57 -41
実践女子学園 第6回 101 -43
和洋九段女子 第6回 54 -43
三輪田学園 第1回午前 112 -44
十文字 得意型 77 -44
昭和女子大附昭和 T 114 -45
大妻中野1回アドバンスト 101 -45
光塩女子学院 第3回 61 -46
麹町学園女子 2月1日午前 59 -46
女子聖学院 第4回 67 -48
昭和女子大附昭和 A 176 -49
頌栄女子学院 第1回 223 -50
トキワ松学園 適性検査型 82 -50 

★ここに並んでいる女子校は、もはや単なる進学校ではありません。なんらかのnew power programを持っています。しかし、多くはまだ、英語と日本語という言語でそのプログラムは行われています。

★もちろん、プログラミング言語を使っているところもありますが、それはすべての教育活動にまだ浸透しているわけではありません。

★ところが、上記のリストに登場している和洋九段女子、トキワ松、昭和女子大昭和、日本大学豊山女子は、学校自身はまだ気づいていないかもしれませんが、共通点があるように思います。

★それは、新タイプ入試を行っているということだけではないのです。新タイプ入試は他の学校でも行っています。

★むしろ、上記の4校は、共通のSomethingを使って新タイプ入試を行っていて、実は学内にも影響を与えているSomethingです。

★男子校は、聖学院1校しか使っていないので、今のところそのSomethingがウネリかどうか気づかなかったのですが、この4校にもあるとすると、どうやらありそうですね。

★共学校も今度みて、そのSomethingが何か考えてみたいと思います。

★そうそう、そのSomethingといのはNew Languageであることは確かだと思っています。

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2021年中学入試情報(25)和洋九段女子 最先端PBL授業実装の女子校が受け入れられる時代の象徴

★2021年1月20日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、和洋九段女子の応募者総数は、416人で、前年対比は95.0%。2月1日までに前年の総応募者数を超えるところまで来ています。すでに、前年を上回っている入試もでていますから、それは確実でしょう。

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(写真は同校サイトから)

和洋九段女子(第1回[本科クラス],PBL) 300.0%
和洋九段女子(第1回[本科クラス],2科) 166.7%
和洋九段女子(第4回[本科クラス],特待2科) 127.3%
和洋九段女子(海外帰国生・第1回[グローバルクラス]) 120.0%
和洋九段女子(海外帰国生・第2回[グローバルクラス]) 100.0%
和洋九段女子(第1回[グローバルクラス],英語) 100.0%
和洋九段女子(第4回[グローバルクラス],特待4科) 100.0% 

★日本の女子校の中で、すべての授業でPBL授業を行い、あらゆる行事がプロジェクト型になっているという学校は、実は和洋九段女子しかないのです。

★プロジェクト型であるので、必然的に学内外いろいろな団体とネットワークが広がりコラボレーションのケミストリーが起こります。最も代表的な社会貢献活動にまで発展しているのがSDGsです。SDGsは学校全体で取り組んでいますから、一握りの生徒が行っているわけではないのです。1人も置き去りにしないというSDGsの理念通りに、みんなで協力して世界を変えているわけです。もちろん、この世界は自分の内面の世界でもあり、同時に文字通り社会としての世界です。

★PBLでは、1人1台のタブレットで、Webというグローバルブレインにもつながっています。世界的視野が広くなるし、自分の想いを深めていけます。それにグローバル教育も盛んですから、Webの中でも日本人だけではなく外国の方々とも議論ができるわけです。

★私も和洋九段女子の高校生と対話するチャンスも頂きました。そのときはかえつ有明の高校生もいっしょでしたが、皆さんと一緒にZoomでSDGsを通して、自分たちはどのように世界を変えていけるのか互いに創造的思考を豊かに回転させながら対話をしていました。

★未来をいまここで生み出す対話ができるということが、ポストコロナ時代が求めている時代の良心です。和洋九段女子の人気の理由は、そんな魅力があるからでしょう。

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2021年中学入試情報(25)東京エリア男子校の応募者状況

★2021年1月19日現在(日能研倍率速報)、東京エリアの男子校の応募者状況を見てみましょう。応募者が前年を上回った数分を算出して並べました。マイナス数字は、前年を上回るのに必要な人数です。0人~60人までの学校を並べました。おそらくこの範囲の学校は最終的に前年度を上回ることになるでしょう。現段階で、2021年中学入試で注目されている男子校ということになります。


Photo_20210120000401


(写真は獨協のサイトから。獨協のサイトは、今もなお大切な青春が存在していることを表現しています)


前年応募者超過人数
獨協 第2回PM(新設)396
明法 第2回午前 15
日本学園 第2回 12
日本学園 第1回・適性検査 12
日本学園 第4回・創発学 0
京華 適性検査型特別選抜 -1
聖学院 第1回アド/もの思考 -2
日本学園 第3回 -2
京華 第1回特別選抜/午前 -3
駒場東邦 -4
日本大学豊山 第1回 -4
京華 第1回中高一貫 -6
聖学院 第1回一般 -7
明法 第1回午後 -13
明法 第1回午前 -15
足立学園 特別奨学生/第1回 -15
佼成学園 第1回適性検査型特奨 -15
佼成学園 第1回一般/グローバル -17
東京都市大学付属 グローバル -17
聖学院 第2回一般 -21
明法 第2回午後 -22
佼成学園 第2回適性検査型特奨 -24
聖学院 難関思考力 -25
足立学園 一般/第1回(志) -40
足立学園 一般/第2回 -43
聖学院 第2回アド/特待/M思考 -44
獨協 第1回 -48
佼成学園 第2回一般 -49
高輪 A日程 -51
桐朋 第1回 -53
武蔵 -54
佼成学園 第2回特別奨学生 -56
足立学園 一般/第3回 -57
海城 一般① -60 


 


 

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2021年1月19日 (火)

聖学院インパクト(10) 聖学院が最先端教育を続けられる理由。児浦先生のワークショップスキルにヒント。

★聖学院が、最先端の教育を生成し続け、教育関係者を超えて各界にもインパクトを与え続ける秘密は、児浦先生のワークショップ力にあります。

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★上記写真の本には、児浦先生のワークショップのスキルが幾つか紹介されていますが、それらはすべて、授業や研修、会議で活用されています。

★リーダーシップスキル、コラボレーションスキル、未来ビジョンスキル、リフレクションスキル、ファシリテーションスキルなどは、PBL授業で活用する必須のスキルだし、同僚や生徒とともに進化するスキルでもあります。

★総合型選抜に立ち臨むとき、生徒自身が自分をリフレクションし、自分軸を確認し、いまここで未来を描くストーリーテリングにも絶大な効果があったでしょう。

今週金曜日のGLICC Weekly EDUで、この最先端教育や人づくりの奥義を同書を開きながら、児浦先生に尋ねてみようと思います。聖学院の躍進の秘密、未来への希望が開かれるでしょう。

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GLICC Weekly EDU(16) 聖学院児浦先生と対話します。時代の社会通念の向こうにある良心にマッチングする最先端の教育創り。

今週の22日(金)、鈴木裕之代表主宰のGLICC Weekly EDUのゲストは、聖学院の広報部長・国際教育部長・21教育企画部長の児浦良裕先生です。当日は高校の推薦入試がスタートするたいへん重要な日です。そんな中での出演です。ありがとうございます。児浦先生の役職を見ればわかる通り、超多忙な超人的教師なのです。

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★なぜこんな超人ぶりを発揮できるかと言うと、まず第一に児浦先生自身が創造的才能者、つまりクリエイティブクラスの先頭に立っている人物だからです。内村鑑三のいうところの「勇気ある高邁な精神の人間」ということでしょう。

★それからもう1つは、なんといっても生徒中心主義的な得難い教育者ということです。これは生徒迎合主義とは全く違います。生徒迎合主義は時代の社会通念である学歴社会の競争で勝利できるように導く教師の信条ですが、生徒中心主義は時代の良心と生徒の才能を結合する世界の難題に挑む教師の気概のことをいいます。

★今回のパンデミックで、世界同時的に多くの人々が、時代の良心に耳を傾けるようになりましたね。

★この気概を持って、思考力入試、帰国生入試、授業デザイン研修、アジアとの連携プロジェクト、多様な世界プログラム、STEAM教育、オンライン授業、海外大学進学準備教育など次々とイノベーションを起こし、今年は高校新クラスGIC(グローバルイノベーション)を立ち上げました。

★ビビッドな/びびっとくる情報と多くの先生や外部の方々とのコラボレーション、起業する生徒とのコラボレーションなど、スカッとスッキリするそして涙腺がゆるんでしまうお話を聞くことができると思います!

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2021年中学入試情報(24)カリタス女子は静かに最先端の教育を実現。そして大学進学実績も伸ばす。

★2021年1月18日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)によると、カリタス女子の中学入試の出願総数前年対比は79.9%。2月1日までに昨年を上回る勢いの学校の1つです。12月の帰国生入試の出願総数の前年対比は、147.1%で、帰国生からも人気の学校です。

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(写真は、同校サイトから)

★すでに、昨年12月までの大学合格実績が公開されています。

2021年度 主要大学合格状況(速報)(2020年12月時点)

お茶の水女子大学 1名
早稲田大学 1名
慶応義塾大学 5名
上智大学 9名
GMARCH 13名

医学部 3名
薬学部 7名
獣医学部 2名 

★総合型選抜が中心だと思いますが、いずれも一般入試よりもタイトな入試です。自分のやりたいことがしっかりあり、すでに深く追究している実績があったり、社会貢献の成果の期待ができる片鱗があったりしなければなりません。しかし、この点に関してはカリタスのキャンパスの作り方に象徴されているように、興味と関心、好奇心を広げ深めていく環境にあります。1階の図書館からはじまって各フロアーがまるで大学の研究棟のように充実しているのです。

★それに、静岡聖光学院のように、充実したオンライン学習もいちはやく展開してきました。両校はカトリック学校の保守的なイメージを覆す点においても貢献しています。

★それにしても、カリタス女子は、ブレないのです。「初めにロゴスありき」で、このロゴスは神そのものでたんなる言葉ではないわけですが、でもロゴスの言葉化は大切です。このロゴスは、おそらくカリタスの理念の「普遍的な愛をもって人に尽くす」ために必要なものです。

★入試問題を見ていると、「本物の声」とか「フェイクニュースをチェックする言語的視点」の論説文やエッセイが多く出題されます。また記述も論述も多いですね。

★ですから、新タイプ入試も、国語は必須で、他の1教科は算数、理科、英語から選択です。

★そして、一方でロゴスは理性の光も意味しているのでしょう。でなければ普遍性をクリティカルチェックができません。カリタスの教育の基礎は、言語とサイエンスマスです。エっ?!社会はどうなの?と思うかもしれません。最も重要です。「人に尽くす人間」になるには社会問題を解決しなければなりません。

★社会については4科目入試がありますから、大事にしているのですが、あえて選択ということになれば、言語とサイエンスマスで、SDGsのような世界の痛みを引き受け解決していく探究は、入学してからじっくり学びましょうということでしょう。

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2021年中学入試情報(23)聖セシリアの丁寧な教育路線が興味深い。

★2021年1月18日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)で、聖セシリア女子の中学入試の応募者総数前年対比は81.0%で順調に伸ばしています。2月1日までには昨年を上回る勢いです。

★その根拠は、入試の種類によっては、すでに前年対比100%を上回っているからです。A方式の1次の4科は前年対比135.7%です。A方式4科は119.7%です。

★一般に2科4科選択の場合は、2科の方が多くなります。2科4科選択の場合、合格者の選抜方法は、「まず、第1段階として全員が共通で受けている、国語・算数2科目の合計得点順に、合格者を選抜します。ここでは合格者全体の約70~80%を決定します。そして、第2段階として、第1段階で選抜されなかった4科目生から、4科目の合計得点順に合格者を選抜します」と、これは聖セシリアの方法ですが、多くの学校が同じような方法をとっています。

★この条件で4科目を選択する方が多いというのは、同校を第一志望にしている生徒が4科目を受けているというケースが高いということを意味します。というのも、午後入試を他の学校を受けるとすると、余裕を持って移動することを考えると2科目で受験するほうが合理的です。

★もちろん、2科目受験で第一志望という受験生もいます。その場合は、2科目の準備に絞っていた生徒ということでしょう。

★聖セシリアは、グループ・ワーク入試や英語入試も行っています。

★だからといって、学内では、2科目と新タイプ入試でよいのだという流れにはなりません。

★あくまで、聖セシリアで学びたいのだけれど、2科目までの準備しかしていない、国語や算数の準備も十分にできなかったけれど、グループ・ワークを通して考えることは大好きだ、英語なら自信があるというそれぞれの生徒の才能に対応できるマッチングシステムを丁寧に作り上げているということでしょう。

★何か特別な学びを想定しているのはなく、小学校までに受験生が経験してきた学びが結びつくように丁寧に入試システムをつくっているわけですね。

★この丁寧な教育路線は、あくまで生徒自身の学びに寄り添う同校の姿勢そのものです。時代が変わるからといって、それを見据えた新しい教育を押し付けるのでも、国公立大学の一般入試には4科目入試の受験準備が大事だから、4科目受験でなければだめだという進学校然としているわけでもないのです。

★では、new power ではないのか?と思われるかもしれません。いいえ、結果的にこの入試システムは最先端のペルソナマーケティングの手法です。経済社会の世界も、丁寧なコミュニケーションを大事にする時代になったわけです。

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2021年1月18日 (月)

2021年中学入試情報(22)新渡戸文化学園の存在の意味が広がる。新しい教育文化の在り方。

★首都圏模試センター出願倍率速報(2021年1月15日現在)によると、新渡戸文化中学校の総出願数の前年対比は、133.8%で、前々年対比は223.1%。出願数自体は爆発的とは言えませんが、少人数教育であるから、同校の価値がマーケットで受け入れられ始めたということでしょう。

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★新渡戸文化学園の価値とは一体何でしょう?それは明らかに今までにない学校であり教育を、今までにない教師というかパートナーといっしょに創っているということ。つまり、創り方とそこに集まっているコミュニティーメンバーとしての教師も生徒も保護者も今までとは違うということなのです。

★どう違うのか?それを知るヒントは東洋経済ONLINE2021年1月17日の記事<新渡戸文化学園、約4割が「兼業教員」のワケ「教員の幸せ」を追求する働き方改革とは?>がわかりやすいですね。

★実は、直観的には同校の新しさはわかるのですが、全貌が見えないのです。いわゆる量子力学的な組織ですから、これだと思うとそれでもないということになるのです。

★ですから、学歴社会がまだまだ居座っている中学受験マーケットでは、とらえにくいというのは否めないのです。しかし、中学受験のマーケットのうち40%は、学歴社会的な価値観が揺らぎ始めています。したがって、そのゆらぎの領域で、新渡戸文化学園の価値が広まりつつあるのです。

★ただ、この揺らぎ方は、これまた一様ではないのです。多様です。たとえば、GAFA型の武蔵野大中学、men for othersベースの21世紀型教育推進の聖学院、学校組織改革型横浜創英などいずれも人気で,new power schoolですが、かつての進学校型というような一つのカテゴリーにあてはまりません。

★そして、新渡戸文化学園もnew power schoolなのですが、武蔵野大や聖学院、横浜創英とはまた全く違う学校なのです。どう違うのか?もしかしたら、落合陽一氏が「働き方5.0」で語っているクリエイティブクラスの教師が40%占めているということが確かに決定的な特徴かもしれません。

★このクリエイティブクラスは、基本起業家型あるいはアクティビスト型です。定住型ではなく狩猟型です。同校がアフタスクールを設置して、全く自由な学びの空間のプロトタイプを内包しているというのはとても痛快だし不思議なんですが、それができるのがクリエイティブクラスのなせる業です。

★狩猟型というのは、ノマドと言われ、現代思想では、近代国家的な組織を創らないリバタリアン的な雰囲気があったのですが、その農耕民族が文明と国家を造ったという歴史観は覆されるという古代史のコペルニクス的転回が話題になっています。

★どうやらネオノマド型のクリエイティブクラスというのが、新渡戸文化学園に集まる教師の新しい価値なのかもしれません。

★GAFAというバーチャル農耕型で、あまり働かずして超富裕層になる者と働けど貧困から抜け出せない層の格差を生む組織か、みんなが多彩な才能を発揮し、創りながら考え、手を動かしながら考え、多才がゆえに、等しく多くの富をみんがシェアできる組織か。その富はもちろん、物質面と精神面の両方というクリエイティブクラス。

★こんな後者のような世界を創るには、理事長自身がそういう行動をしていなければならないのですが、そもそもアフタースクールを設置し、ネオノマドなパートナーを呼び寄せたのは、平岩国泰理事長その人です。ご自身も、同学園理事長、NPO代表理事、渋谷区教育委員という3つのペルソナを持っているわけです。

★アイデンティティは、一つのペルソナが象徴する時代から、多くのペルソナが関係して、一つのアイデンティティを生み出していくという時代なのかもしれません。このあたりは、平岩理事長の周りに集まる見識者がリサーチして、いずれ語っていくでしょう。

★私のは、一市民としての感想にすぎませんが、そんな気がしてならないのです。幸せとはユートピアを受け入れるパートナーが集う場所にしかうまれないでしょう。格差は不幸を生み出すシステム以外の何物でもありません。

★中学受験という格差を生み出すマーケットで、それを解消する私立中学が顕れてきた。何と逆説的な!実は2021年の大事件なのです。

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GLICC Weekly EDU(15) 八雲学園の魅力 菅原先生のラグビーベースの教育観・学習観・組織論 画期的才能開花術!

★先週金曜日、GLICC Weekly EDU 第13回「2021年中学入試応募者状況、人気校の秘密ー八雲学園 菅原久平先生との対話」が行われました。菅原先生と言えば、元祖パラレルワーク教師で、1996年中学開設のときにお会いしたときから、大学のラグビー部のコーチをされていて、今も続いています。

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★それでいて、菅原学年と言えば、好大学進学実績を輩出し、なおかつその優れたOGが母校に帰還し教師を行うという循環を生み出しています。まさに学内も同窓も一体のワンチームの世界を創り続けています。やはり、ラガーマンとしての組織論が反映しています。

★同様のことは横山学年についてもいえます。横山先生は剣道師範の腕前で、かつグローバル市民的視野の持ち主です。

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★さらに、両雄は、私学の広報担当でもあります。多くの私学の広報の先生方が頼りにしている人物です。まさに、八雲神社の両脇にいる守護獣さながらです。

★そもそも八雲学園の理事長・校長近藤先生自身が空手の達人で、オリンピック競技に空手が選ばれる時の立役者の一人でもあります。謝恩会でピアノを弾きながら歌ってしまうし、芸術にも造詣が深く、それゆえ、同校では芸術をベースにした文化体験が教育の柱の1つになっているほどです。

★近藤先生は文武両道では満足しません。多才な人間道をモットーとしています。それゆえ、イエール大学の学生との国際音楽交流を毎年行っています。というのも、イエール大学をはじめ、米国の大学の学生は、音楽もやり、医学も研究し、演劇も学び、アスリートのスポーツ科学も研究するなどいろいろな才能にチャレンジしています。その姿に国際音楽交流を通して生徒が共感共鳴共振して欲しいという想いがあります。

★そしてそれは大成功しています。そこから多様なグローバル教育や部活、行事が生まれているからです。そして、そのような活動を通して、在校生のこれまた多様な才能が花開いているのです。

★そんな多様な才能が満足するような学校運営は、実は複雑系です。複雑系は、量子力学さながら瞬間瞬間にサプライズが生まれますから、コントロールすることができません。まったくラグビーのプレイと同じだと菅原先生は語ります。それゆえワンチームが大事なのです。

★八雲学園の教育は、菅原学年を経由して母校に帰還して英語教師をしているボッサム先生によると、授業と行事が一体となってクリエイティブ教育を生み出していて、授業が核になっているというシステムなんだというわけです。

★ですから、菅原先生はワンチームプロジェクトのプロトタイプである授業では、<Peer-Think-Share>というアクティビティが重要で、そのアクティビティを通してクリティカルシンキング養成が大事なのだと。そして、計算された無駄のないアクティビティの活用デザインが、生徒の多彩な学びのパターンを生み出すのだと、ラグビーコーチさながらの授業論を展開します。

★また、八雲の破格のグローバル教育、ボッサム先生がいうところのエクセプショナル教育のメインがラウンドスクエア加盟校としての教育です。同コミュニティはIDEALSというスピリットを共有しています。これは、Internationalism、Democracy、Environmentalism、Adventure、Leadership、Serviceという6つのスピリットのイニシャルから構成されている言葉です。

★いずれも、今回のパンデミックで起きている世界問題を解決するリーダーには必要なスピリットです。SDGsやイノベーション、社会貢献などをカバーするスピリットですね。菅原先生は、「これらの6つのスピリットに共鳴される日本の先生方は多いと思います。特にポストコロナ時代は、社会科の教科を超えてデモクラシーを教育に顕在化し、グローバルリーダーを育成するプロジェクトを学校全体でつまりワンチームとして取り組んでいくことが大切だ」と。

★この点については、日々のニュースで、民主主義の危機が報道されているところからも納得です。

★詳しくは、Youtubeをご覧いただきたいと思います。2021年の従来とは違うパンデミック入試の様相についても菅原先生の見通しや考え方を聴くことができます。

★そうそう、菅原先生は、ラガーマンが活躍する勢いのある学校も紹介しています。静岡聖光学院の星野校長、そして星野校長の母校桐蔭、品川翔英の柴田校長の話にも触れています。なるほど、菅原先生のように、ラガーマン校長や教師が活躍している学校だったり、ラグビーの強い学校ということですね。

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2021年1月17日 (日)

GLICC Weekly EDU(14) 受験勉強の才能創出自己変容型学びは中学受験でも可能です。

★今年度は、GLICCで小学校3生から小5まで、クリエイティブコースをいっしょに創る機会をいただきました。ありがとうございます。保護者の方ははらはらしながらワークショップ型の授業をご覧になっていたと思います。ケアのために、対話をしたり、保護者の方も交えてのワークショップを行ったりしました。

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★基本テキストはインターネットの記事、写真、動画すべてです。そこから抽出して一応はテキストはオリジナルとしてつくります。でも、素材は、すべてWebです。SDGsやエコロジーの話なんか、Webの中に山ほど、あります。水が重要だ、雪が気になるとなったら、水の分子やそこから雪の結晶が六角形になる仕組みなんかはWebの中にわんさかあります。水の分子の変態のミクロ様子なんかリアルには経験できません。

★ただ、見ているだけではありません。経験が大事ですよね。ですから、教室で行うのでは疑似体験で、実際には、たとえばスキーしたことあるリアルな経験を聴きながら、イメージを共有しながら行う対話が一番大事です。家庭や学校で行うリアルな経験をどう授業でむずび付けるか。それにはネットは本当に有効です。

★しかも、なぜかGLICCには帰国生や英語体験者が多いので、海外の動画を見て共有できます。

★大事なことは、見たこと聴いたことから気づいたことをスピーチすることですね。毎回1分間スピーチはするので、今では当たり前です。最初の内は照れたり、気分が悪い時は嫌だと。フーンそうなのかあ、でも、Webがいいのは、嫌だという生徒の好きな動画をチョイスしてみんなで共有するコトができる点ですね。ちゃんと1分間スピーチしますよね。話したくなるわけですから。

★こうして仲間の話を聞いたりフィードバックしたりという学びのアクティビティが形成され、<Do Now>になれば、時間をかけずにできるようになります。今では、1分ねとか2分ねとか3分ねで、スピーチの準備をしたりできます。

★最近では体験入学の生徒も参加しするようになりましたが、いつもの生徒に要領を説明してもらいますから、私は、いいね、ありがとう、天才といっていればよいわけです。

★最初は、本間さんは、いいねをいいすぎる、天才っていいすぎると思われていたようです。学校の先生とのワークショップもそうです。でも、今では、たいていい、いいねも、すごいも、天才、すばらしいを言わないと、何かありましたかと言われるようなコミュニティになっています。

★1年前は、ただただ長い文章を読んで、読めない漢字を読めるようにする「ノック&ノック」はやりましたが、書き取りはいっさいやりませんでした。あとは、トピクやテーマをスピーチするということをやりました。宿題はないのですか?ということで、最初は、漢字を読み方つきで並べておいたので、見てきてくださいと。

★あとは好きな本を読んでくれればいいですよでした。強制されて読むことぐらい好きから遠くなりますから。そのうち、たいていの文章は読めるようになりました。新聞くらいは読めればまずよいかなという感じで文章は選んでいきました。

★ときどき入試もにもやっみて、意外とできるねと確認したところで、子供たち自身がスピーチや読むことに抵抗がないなあと感じられる頃、漫画と物語を一冊ずつ毎月プレゼントしました。宿題ではないから、積読で良いよと。でも、漫画はすぐに読んでいましたね。

★ドラえもんやスヌーピー、コボちゃんのときもありました。実は、授業で、四コマ漫画を見て、心情変化分析グラフや、オチの効果をNU BOARDなどで描いてもらい、これも1分間スピーチをやりました。そのあとで、5000字くらいの物語を読み、同じように心情分析グラフを描いて、テーマについてスピーチということを続けました。

★物語の方はすぐに読む子供もいたし、読まない子もいました。ところが、星の王子さまは、徐々にみんながよみました。授業では、星の王子さまについての評論文を読んで、子供とは何か振り返りました。当然難しいので、こどもとのための哲学という本も合わせて読みました。

★子供って何?自分って何?自分の顔は自分で見ることができない。どうしたらよい?とか。小4小5の子どもたちは、ちゃんと没入して考えるのです。正解かどうかはあまり問題ではないのです。言いたくなったことをスピーチすることですね。それを大切にしました。5年生は、互いにフィードバックし合う姿勢がでてきました。4年生もそうですね。

★さて、保護者といっしょのワークショップ。ワークショップと言っても、親と子と私の3人で、やりました。日曜日に各家庭90分くらいとって、順々にやりました。3週間続きました。自分の顔は自分で見ることはできません。それは保護者が自分の子どもの顔を見えないのと同じですね。

★天才ですよ〇〇ちゃんはといっても、不安なわけです。ですから、論理パズルと物語の心情分析や13フェーズの構造分析をレゴでやるのをいっしょにやりもしました。目の前で自分の子どものいつもは見たことのない考える姿やスピーチする表情をみて、天才でしょうというと、ですねとなるのは当然です。井庭崇教授作成のLearning Patternsのカードで、自分の学びの特徴を説明し、今後どうするか並べてもらいプレゼンもしてもらいました。

★5年生の生徒が、模擬試験に挑戦して、漢字以外はできたけど漢字が書けなかったあ!と言ってきました。、でどうする?と聞くとやるよとなります。4年生もその姿をみて、やっぱ避けることはできないなあと。で、毎回8個くらい漢字を練習する宿題を出すことにしています。600語くらい書けるようになれば、あおはなんとかなるので、軽くやっています。

★毎回、8個の中から5個出しますが、練習してこない生徒もいるので、3分間準備時間をとります。でもたいてい、どの漢字出すのと聞かれます。間違いやすいのはどれだと思う?とか、この熟語は生態系関連だなあとか、ドラえもん的にはとか語りながら、出していきます。NU BOARDに書いてもらいます。はっきりくっきり大きく書かなければなりませんから、便利です。3分間で覚えるわけですね。

★漢字の読み書きも、子供たちが興味をもっている文脈に関連付ける対話ができます。

★そうそう、スピーチができるようになった段階で、話した内容を書けばよいのだとして、100字記述を毎回出すようになりました。A4の大きさの100字専用の原稿用紙を使います。私の視力が弱いということおありますが、ふにゃふちゃした文字も、書いていくうちに読めるようなカタチに成長していきます。

★半年くらい前に、抽象的には書けるのだけれど、それ以上書けないという子供がいたので、この原稿用紙を使いました。1枚は書けるじゃないかとすごいねといっているうちに、1枚では足りないということになります。2枚書きたいと。3枚書きたいと、4枚書きたいと。

★達成感があるということがわかりました。何せ複数枚書くのですから。今では、4年生は、毎回論理パズルと1分間スピーチと100字記述を3問くらいと200字記述を行っています。漢字の確認ももちろんやっています。 5年生は、論理パズルと子ども同士のフィードバックタイムと200字記述が中心です。4年生は物語の続きはやりますが、5年生は13のフェーズを使ってショートショートを創作したいというので、もうワードを使っています。漢字の書き取りは、いずれまたまとめてやります。もう彼らは物語創作で、言葉の選択を考えるようになっていますから大丈夫です。

★こうして対話をしていくと、そろそろきちんと事実と意見、ファクト・オピニオンを意識しようかということになります。フィードバックする時に、意見はよいけれど、事実はなんか違うんじゃないということになってきたからです。

★というわけで、昨年末から、ファクトとオピニオンについて語り合うことにしました。上記の図のような両者のバランスのパターンを提示し、キャラクターについて語ってもらいます。そして、それぞれのパタンのキャラの組み合わせを6通りつくり、それぞれのコミュニケションや人間関係がどうなるのか推理してもらいます。

★小4は、全員英語が堪能なので、英語のファクトとオピニオンの解説動画を共有しました。主観とか客観とか日本語はわからないけれど、英語だとピンと来るのだというからおもしろいですね。そんなわけで、このシートに関してはいろいろみんな語ります。サッカーをやっている子供は、チームづくりについて語ってくれたりします。

★小5は、この主観と客観の分け方が怪しいし、事実といっても事実とは何?とか鋭い哲学的な問いを投げかけてきます。物語を創作しているので、キャラ設定で、不安な自己キャラも登場するので、そこらへんはクリティカルシンキングを発動するようです。

★鬼滅の刃について論じる子供とエヴァンゲリオンについて語る子供と多様です。ですから、このセパレートはいただけないと。子供のための哲学なんて本をシェアしてしまうと、そういうことになるのだなあと。おもしろいのだけれど、一般的な考え方を知ってもらうのも大切なので、「通説」というキーワードを出してみました。「通説」を前提に仮説を立てて、現象や状況とズレがでてきたときに、考え直すでいいかいと。それならよいですよと。

★体験の子どもが参加した時、ちゃんと通説に従ったファクトとオピニオンを説明してくれました。こうして、ファクト、オピニオンというキーワードを使ってスピーチや記述を使い分けしながらアウトプットすることも<Do Now>アクティビティになったのです。

★もう彼らは、いわゆる国語の入試問題は、6年になってから過去問の分析を自分でしながら戦略を立てて攻略できるので、そこは心配していません。マテリアルはインターネットと本。リアルな経験。これらを対話とライティングでつないでいくことで、言語的な才能はどんどん豊かになっていくのだと思います。

★緊急事態宣言下の今はオンライン授業ですが、少人数ですから、「対話」が中心なのは全く変わりはありません。というよりも、「対話」が日常になっていたので、Zoomでもライブ感はなんとか保てます。映像共有はやりやすいし、マテリアルの活用ツールとしてはZoomはなかなかいいですね。

★小5は、ワードとNU Boardのミックスです。ワードは、互いに共有してフィードバックをするのに、視覚でも確認しながらできるので、便利です。そのうち、PPTかキーノートでやりとりすると思います。

★基本、私が先生方とワークショップを行う時も、同じやり方です。結局、才能創出自己変容型ダイアローグこそが大切だということなのだと実感する今日このごろです。

★そうそう、入試問題を子供たちが分析できるようになるということは、入試問題分析をリサーチに置換えればよいと思っています。文献の整理方法は、小学生の段階では物語の構造分析と文化人類学的手法でいけると思います。中高になると、数学的思考分析とサイエンス的な思考も必要です。とはいえ、小学生も簡単な統計的な分析視点はグラフのファクト・オピニオン記述では取り入れています。割合を使ったり、比で換算して置き換えるという操作は必要です。

★グラフの上下を、最初は増えている減っているというスピーチをしていますが、数字を使って再編集してとやり直してみてよと頼むと、数値を使うチャレンジをします。すると、減り具合の深刻さがピンときてプレゼンしている自分が驚いています。

★この間は、今2カ月にわたって読んでいる本が「はてしない物語」ですから、心理学者が分析した論考を読みました。もっとも、読解ではなく、それをマテリアルに使うだけです。バスチアンのキャラ分析をしている箇所があったので、どうしてミヒャエル・エンデは、そんなキャラを設定したの?と問いました。100字で書くのですが、3分で書いてきます。途中で、もう少しというので、じゃああと1分と。ストップウオッチが鳴るので、必死に書きながら考えます。そう書きながら考えるんですね。

★成長とのギャップが分かりやすく伝わるとか共感を生みやすいキャラで、読者を引き込めそうだとかいろいろ書いていました。作者の編集を読み解く視点が13フェーズ分析なので、今やたいしたものです。

★子供たちの才能創出が自己生成的である対話環境であるかどうか、鈴木さんや同僚と対話しながら検証していきたいと思います。

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日本の大学入試改革の意味(01)大学入学共通テストの成功と失敗のダイアローグ。 なんとかヘーゲル生誕250周年を祝えましたね。

★2020年の大学入試改革の理念が現実の着地点として物質化したのが昨日と今日行われている大学入学共通テストです。大学入試改革反対論者やニヒリストあるいはシニカルな人は、なんだセンター入試とどこが違うんだ、失敗だなと言うでしょう。一方で、PISAやIBのTOKをベースにした適性検査を作成している教師陣、私立学校の思考力入試を開発している教師、PBLを促進している方々は、条件付きでとにかく転換の意思表示はしたねと語るでしょう。

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★記述を廃し、選択肢の問題にしてしまったので、見た目はマイナーチェンジだし、解答を導き出す過程はたしかに、センター入試時代と何ら変わらないし、思考コード(首都圏模試センター)によれば、A2(知識・理解軸で複雑な知識の組み合わせレベル)に分類されてしまいます。もちろん、いつの世も、知識を忘れる場合はあるわけで、そのときは推理を発動すればB2になります。

★実は、推理をしても所詮覚えていなければできないという問題が本来のA2ですが、今回は推理をすればかなり正解にたどりつく問題も多かったのです。そういう幅がある問いを作成したという点では、見た目は変わらない選択肢問題も、質的には少し変化があったといえましょう。

★しかし、大学入試改革反対論者は、そもそもPBLも反対なわけですから、ブルームのタキソノミーベースの評価方法を受け付けません。思考コードを受け付けないわけです。そうすると、その認識眼鏡では、今回の問いが、以前の問いと若干違いがあるなんてことは無視して構わない誤差の範囲だと判断し続けるでしょう。

★まあ、予言しておきますが、そういう声を大にして語る方々がでてきますよ。そのとき、ああ、ハラスメントという意味がわかっていない人々だと進歩主義者やSDGsを推進している人々はがっかりするでしょうね。でも、そのような心ある見識ある人は、表現の自由だからと温かく見守ってしまうでしょうが。

★とはいえ、彼らは、今回の問いよりも、マテリアルの構成主義的な設定に少し勇気をもらうでしょう。というのは、PISAは、連続テキスト(文章など)と非連続テキスト(図、グラフ、絵など)をミックスしてマテリアルを構成します。今回の共通テストはそれを踏襲しています。

★したがって、問いの形式は選択肢であっても、設定は変わってきます。マテリアル同士のつながりを比較・対照するという思考スキルを発動させる問いを設定させたり、その違いの歴史的な背景、パラダイムの違いを問うマインドセットをするようになっていました。

★現代文の論説文は「、「妖怪」を権力の道具、人民の道具、内面の道具というアートの歴史物語(文章ではフーコーのアルケオロジーだといっていますが)の応用で書かれています。PBL的な授業を行う時のマテリアルという道具デザインでは、よくやる手法ですね。ジョブスがピカソ自身の内面の変化と作品の変化にヒントを得ているのとシンクロします。

★それにこのやり方は、IBのTOKのやり方です。もちろん、TOKの片鱗であってそのものでは到底ありません。ただ、どの教科も複数の連続・非連続テキストを組み合わせることによって、テーマやトピクに対する複数のアプローチを求める点では、TOK的と言えなくもありません。

★そういう意味では、今後共通テストをマテリアルにして進路指導や教科の授業をデザインする際、単独のマテリアルを歴史的背景も認識の眼鏡の変容も論ずることなく授業ができた時代は終わりを告げることになります。やるじゃないか大学入試センターというわけです。

★しかし、この連続テキストと非連続テキストをミックスしたマテリアルを使う方法は、今年の早稲田大学政治経済学部の独自入試でも予告されているわけです。総合型選抜はすでにそうなっています。実は公立中高一貫校の適性検査は先取りしています。私立学校の中学入試の思考力入試やPBL入試、自己アピール入試という新タイプ入試もとっくにそうなっています。高校入試もその傾向にあります。

★一般入試はどうなるのでしょう。すでに国立大学の独自入試は論述が多いので、マテリアルを複数にするのは容易です。あとは私大の一般入試ですね。やるなあ大学入試センター。追い詰めているじゃないかあとなるるわけですね。

★欧米の入試制度のいいところどりをして、いろいろ欠点もあるけれど、すべての生徒を置いていかないで、複眼思考をできる学習指導要領をつくり、あとは、授業を「主体的・対話的で深い学び」にシフトしようといういつのまにかそうなっている戦術という得意技で、形式的平等をあくまで遂行する我が国の官僚制度の面目躍如ということでしょう。

★欧米の入試制度や授業デザインを見て、いいなあと憧れても、見ている教育は超富裕層と貧困者の大格差を生み出している教育なんですね。イギリスのすばらしいパブリックスクール(イギリスでは私立学校)を見て、憧れても、年間の学費1000万だったりするんです。

★シリコンバレーのHTH(ハイテックハイスクール)のPBL憧れちゃうなあという先生方も多いですよね。でも、アメリカは自治体によって教育につぎ込む予算、つまりお金が違うわけで、シリコンバレというGAFAで潤っているエリアはそりゃあHTHのようなチャータースクール運営ができまるのです。

★デューイのPBLすごいですよたしかに。私も大好きです。でも彼が最初に創ったラボラトリースクール資金難で10年もたんかったんです。その間デューイは「学校と社会」という本を出版して、印税つぎ込んでいた。たしかに126年続いているけれど、それは途中であの世界大学ランキング100位内の資金調達がうまくいっているシカゴ大学の付属校になったからです。今年は、OGがノーベル物理学賞とったんで、寄付も多くなるでしょうね。そもそも、通わせている家庭の両親はシカゴ大学のメンバーが50%以上だとも言われているし。。。

★世界の平和や幸せを実現するなら、市民全体に還元できる教育を実施することが必要なわけです。そんなこと言っている本間さんは私立学校研究家を標榜しているじゃないかと。

★それは、だって、日本の私立学校は、自由を維持したいという家庭が、公立学校だったら1人に支払われる税金分を自前で払っているだけで、学校で使われる教育費そのものは変わらないんです。海外とは台所事情が違いすぎるんですね。

★ただ、相対的に自由だから、やろうと思えば、PBLだってハイグレードなグローバル教育だってできてしまう。

★だから、労働集約型で、資金がない分、創意工夫しようという環境が私立学校なんです。私学の先生方に頭が下がるのがそこなんです。この自由の火を維持したいというので、私立学校研究家を標榜しているんですね(汗)。

★もちろん、大学進学主義の方が生徒募集という学校経営的には効率が良いという私立学校もあります。しかし、そこだって、魂を売っているわけではない。今回のパンデミックでオンライン授業に移行できたのは、new power schoolだけではなかったのは、私学の自由を大事にしているスプリットは健在だったことを示唆しています。

★そして、そこも、今回の共通テストでいっせいにPBLやアクティブラーニング型授業に移行していく流れができるでしょう。

★偉大な哲学者ヘーゲル。でも大学人としては権力をもてなかった家庭人ヘーゲル。ルソーに憧れ、ヘルダーリンという詩人を友人にもった青春を謳歌したヘーゲル。サビニーやヘルバルトという官僚学者に捨てられ、近代国家のラインアップから外されたヘーゲル。でも、なぜかマルクスに担ぎ上げられぢ同時に踏みつけられたヘーゲル。国家主義者的なレッテルを貼られたヘーゲル。

★デューイに影響を与え、デューイに批判されたヘーゲル。イギリス経験哲学者やバートランド・ラッセルという哲学者にさんざん攻撃されたヘーゲル。

★デューイもラッセルも学校をつくったけれど、教師としては活躍しなかったし、その学校はうまくいかなかった。でも、ヘーゲルは生涯教師だった。ギムナジウムの校長もやり、日々生徒と対話した。ダイアローグという対話を。でも日本ではこのダイアローグを弁証法なんて訳されて祭り上げられた。でも、ヘーゲルは一年間ベルリン大学の総長やっただけで、あとはコレラであっけなく死んでしまった。

★ルソーと共に市民社会を愛したのに、フランス革命の戦火に「精神現象学」の原稿が紛失・消失しないように大事に抱きかかえながら逃げまくったヘーゲル。ルソーも市民社会を愛したがゆえに逃亡者になりました。ヘーゲルも市民社会を愛したがゆえに、近代国家主義者と間違われました。昨年はヘーゲル生誕250周年でした。でもベートヴェン生誕250周年の影にすっかり隠れてしまったヘーゲル。

★でも、ヘーゲルは言うんです。ミネルバは空が灰色になって飛び立つのだと。歴史は理性の狡知なのだと。パラダドクスなのだと。デューイがあなたを批判してプラグマティズムをつくり、あなたを捨てたヘルバルト主義と闘ってくれたおかげで、あなたの1教師としての対話型授業が今ようやく出現しようとしているのです。

★2020年大学入試改革は、満身創痍、結構ボロボロだったけれど、あなたの生誕250周年を祝う記念行事となんとかなりましたね。おめでとう。そしてありがとう。

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2021年1月16日 (土)

GLICC Weekly EDU(13) 受験勉強の才能創出自己変容型学びへの転換が生み出すことコトの重大さ。大学入試改革を突き抜ける。

★たしかに、中学受験の体験は、全国の小6のうち10%弱。さらに論理的思考ばかりでなく批判的思考や創造的思考を学ぶ中学受験勉強をしている生徒はといえば、全国の小6の3%。この数字の意味がピンとくる人はなかなかいないのです。GLICCでは、この状況を<3%の穴>と呼んでいます。3%の穴を突き抜ける世界は世界の人びととかかわりながら幸せな世界をいかにつくるのかを問い続ける主体的な多才な人間、本当の意味でのグローバルリーダーを輩出することになります。

★開成の大学進学実績の表をみて、真ん中下に海外大学進学実績があるのに目を引きます。世界大学ランキング100位以内の名だたる大学リストがずらりです。アイビーリーグやケンブリッジ、そしてあのミネルバ大学まで載っています。とはいえ、開成の進学実績リストの3%なのです。

★実は、この3%の穴を突き抜ける子供たちは、開成だけではなく、偏差値が開成のようにない学校でも、はじめから<3%の穴>を突き抜ける生徒を引き受けるシステムを開発したnew power schoolが出てきたのです。

★それが思考力入試や自己PR型入試です。適性検査型入試もそうですが、創造的思考力という点では、思考力入試や自己PR入試よりは少し弱いです。とはいえ、公立中高一貫校受験生は、論理的思考力、批判的思考力、創造的思考力という高次思考力の準備学習は全開です。

★実は、総合型選抜が3%の穴を突き抜ける価値があるのだという意識は、このようなシステム思考にチャンレンジする入試を開発している中学入試・高校入試を行っているところしか理解がしにくいというもどかしさがあります。高校入試になると、かえつ有明や聖学院、八雲学園、聖パウロ学園のような少人数を対象とする高校ぐらいしかこの理解はなかなか難しいわけです。

★3%とはいえ、小6には、3万人いるわけですね。小学校から高校までだと36万人いるわけです。

★GLICC代表の鈴木さんやカンザキメソッド代表の神崎先生、そして私は、まずは、この受験勉強を才能創出自己変容型の学びに転換することの重要性に気づいている<3%の穴>を突き抜けるチャレンジをする子供たちと共にもちろん、自分たちも突き抜けようとしています。

★そして私たちと同様、<3%の穴>を突き抜けるコンパスである「思考コード」を独自に開発している首都圏模試センターの社長山下一さんも共感してくれています。

★もっとも、山下さんは、すべての中学受験生が<3%の穴>を突き抜けられるように思考コードを模擬試験受験生すべてに共有しています。

★どうやら、大学入試改革は、この<3%の穴>を突き抜ける学びにはまだまだ明快な意識がありません。しかし、それは極めて民主的なお話です。なぜなら、<3%の穴>を突き抜けるかどうかのディシジョンメイキングは、私事の自己決定で、制度で規定されることではないからです。

★もちろん、国民全体が、<3%の穴>を突き抜ける学びこそが<一般意思>なのだと気づけば、制度化されることになります。今のところ、国民全体にとっての<全体意思>である一般入試が制度化されているわけで、受験勉強が市民権を得ているわけです。

★大学入試改革は、かくして<全体意思>のお話で、才能創出自己変容型の学びは、現状では<一般意思>が潜在的に隠れている私事の自己決定の領域です。それゆえ、この学びが、大学入試改革を突き抜けてしまうのは歴史的必然というコトになるでしょう。

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2021年中学入試情報(21)和洋九段女子応募者数更新。

★2021年1月16日現在(和洋九段女子サイト情報)、和洋九段女子の中学入試総応募者数は、355人。昨日より16人増えました。これで、前々年対比115.6%、前年対比80.1%になりました。昨日段階での前年対比が、76.7%ですから、1日で順調な勢いです。

★昨年の説明会の参加は、オンラインだったでリアルであったりしましたが、いずれもコロナ禍という状況を考慮し、予約制でした。それが、毎回定員を満たしていたわけですから、説明会参加者の心をつかんだのでしょう。

★PBLがベースの教育は、他者とかかわりながらの主体性が生まれます。主体性は多様なネットワーク、コミュニティとのかかわり、同僚の対話の中から生まれるもです。かかわりは、気づきやセレンデピティを生みます。

★自分の内なる気づきやセレンデピティが生まれたとき、いわゆる<自分事>というマインドセットがなされます。

★そのマインドセットの重要性については、今回のパンデミックで私たち自身が身に染みて感じ取っていることでもあります。

★したがって、共感を生み出したのでしょう。同校Z世代高校生の主体的な貢献活動とロジカルでクリエイティブなプレゼンを見れば、それは何より明らかです。うちの娘もあのように成長するのだというロールモデルエフェクトの広がりがあるのですね。

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2021年中学入試情報(20)和洋九段女子好調 特にPBLの成果出始める。

★2021年1月15日の出願倍率速報(首都圏模試センター)によると、和洋九段女子の出願総数は、まず前々年対比で、109.4%、前年対比は76.7%。このままいけば、昨年を上回る勢いです。

★特にPBL入試の総数は、まだ少ないとはいえ、前年対比142.9%です。

★新井教頭先生がかえつ有明の副教頭佐野先生とコラボするセミナーや両校のZ世代が対話するマインドセットをしかけ、和洋九段女子のPBL環境が有効なことを証明していっています。

★なんといっても、和洋九段女子のZ世代高校生のSDGsの普及社会貢献活動や農村活性化企画活動が国連広報センターや大学、企業、NPOなどの団体から高く評価され、メディアにも取り上げられています。

★女子new power schoolとしてその取り組みの基盤ができてきた証しでしょう。

★海外大学や進学準備教育もその成果は、すでにでているのですが、本格的には2023年春に出る予定です。というのも、21世紀型教育に本格シフトした1期生の成果が出るからです。かえつ有明の場合は国際生の実績がでてから人気がでて、アクティブラーンングへの以降が人気をさらに後押しをしました。やはり今のような人気が出るには、6年以上かかりました。

★和洋九段女子もグローバル教育とPBLで、同じような道を歩いていると言えましょう。

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GLICC Weekly EDU(12) 受験勉強を才能創出の人生の学びに転換するコトの大事さ実感する今日この頃

★GLICC代表鈴木裕之さんが老人の僕に新しい学びをいっしょに創る機会を与えてくれています。また盟友(と僕が思っているだけかも:汗)神崎史彦先生もいっしょにつきあってくれています。おもしろいのは、鈴木さんは、大学入試における帰国生入試の専門塾から高校入試、中学入試とGLICCの強みを拡張してきているわけです。

★神崎先生は、総合型選抜をメインに探究や小論文の学校プロデュースに拡張しています。そして、総合型選抜と帰国生入試の共通点が多いという対話を通して、改めて3人が共有したことは、生徒自身が受験勉強を才能創出の人生の学びに転換できるようになることの重要さということです。

★このアイデアは、今までも世間にはあったのですが、受験勉強の副次的な効用として、間接的に人生の学びになるという程度だったのです。なぜなら、一発ペーパー試験という入試制度が主流だったからです。だから、帰国生入試のような受験勉強=才能創出自己変容型学習とはなっていなかったのです。

★AO入試時代から、神崎先生は、AO入試=才能創出自己変容型学習だという信念で生徒と対話してきました。しかし、学校現場や大手予備校は、一般入試が主流で、教科学習が不得意な生徒のための非常口のような感覚でとらえていました。神崎先生の塾「カンザキメソッド」で学ぶいわゆる塾生は、神崎先生と考え方や想いを共有していますから、問題はないのですが、学校現場では、必ずしも価値の共有は簡単ではないようです。

★しかしながら、探究というキーワードが新学習指導要領を駆け巡るようになって、総合型選抜こそ受験勉強と生徒の人生への探究の道が重なるのではないかと捉え返す学校現場も生まれ始めています。神崎先生の出番ですね。

★フランスの教育制度がいいとは限りません(フランス社会学は教育制度を徹底的にクリティカルシンキングしていますから)が、リセ(公立高校)の現場の先生方と話した時に感じたのは、高校卒業資格の試験バカロレアが、日本でいう入試に相当してしまうので、ふだんの授業がそのまま大学へのパスポートになるわけです。ですから、自分のやりたいことがまんして受験勉強を教科書とは別立てでやるというのは、理解が難しいということでした。同じ対話は、30年前の視察と、10年前の協働プログラムをやってときにもしましたが、同じ反応でした。

★もちろん、リセの卒業試験であるバカロレアは、小論文形式です。あれっ?と思うでしょう。イギリスのAレベルやドイツのアビツーアもそうです。スイスやイタリアも同様の制度です。

★問題は、小論文かどうかというより、徹底的にクリティカルシンキングとアートを学ぶ、意識しているかどうかはわかりませんが、リベラルアーツがベースにあるカリキュラムだというわけです。それは、米国のAPもそうだし、カナダの制度もそうです。先日カルテックで研究しているGLICCのオンライン講師Sophieさんもそう語っていました

★どうやら、鈴木さんと神崎先生のベクトルは、合力になりそうな気配です。もちろん、経営的な合体というような話ではありません。ウネリを生み出すそれぞれの経営理念という意味でですが。

★ただ、鈴木さんと神崎先生と共有している思想家はデューイとローティだし、麻布の入試問題なのです。これに、鈴木さんはハーバーマス的視点、神崎先生はレヴィ・ストロース的視点が加わって、さらに幅が広くなっています。

★いずれにしても、対話とかPBLとかは互いに親和性があります。

★麻布の入試問題は、その背景にロラン・バルト的な世界や文化人類学的なベースがあるし、現代数学や最先端科学の成果がベースになっています。それがカリキュラムに流れているので、入試問題もそうなっているわけです。

★この麻布の入試問題の分析・研究をして、ガードナー、ブルーム、センゲなども学び、独自のスプリットと学びの方法論を加えているのが、かえつ有明と聖学院の思考力入試問題です。もちろん、今では開発当時のそんな話は誰もしないでしょう。遠い昔の話です。

★麻布のような入試問題やかえつ有明や聖学院の思考力入試のようにリベラルアーツや探究の入口になっていることに気づいた私たちは、中学入試、高校入試、大学入試を貫く、才能創出自己変容型学習の一条の光が見えたのです。アインシュタインが光速が不変だということを発見したときと同じ興奮があると思います。

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2021年1月15日 (金)

GLICC Weekly EDU(11) ポストコロナ時代に教育で問われることは何か?私学の守護神菅原久平先生と語ります。

本日15日(金)、GLICC Weekly EDUでは、私学の守護神菅原久平先生(八雲学園高等部長)がゲストです。気になる2021年中学入試の動向とそのベクトルを牽引する八雲学園の教育の魅力ともう一つとても大事なコトについて対話します。

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★それは、八雲学園がラウンドスクエアに加盟していることに重大な意味があるということなのです。

★ラウンドスクエアとは、世界の私学のスピリットを代表しているコミュニティです。そのスピリットは、IDEALsです。IDEALSとは一体何でしょう。このスピリットを世界の人びと共有することで、今起こっている気候変動や社会の分断を解決する糸口があるのです。

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★私学が、大学進学実績をあげることは、その向こうにIDEALsを実践する必要があるからで、IDEALsある進学実績向上こそが、ポストコロナ時代に求められていることなのです。

★八雲学園は、このIDEALsのスピリットを実現する多様な経験とプロジェクトを推進するラウンドスクウェアの<ディスカバリーフレームワーク>をベースに授業や教育を行っています。大きな鳥の眼の話と普通のメディアでは取材されないようなミクロだけれどそれこそが最重要な話、つまり授業システムがどうなっているのか、生徒はどう反応しているのかまで対話したいと思います。乞うご期待!

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2021年中学入試情報(19)佼成女子学園 はやくも前年対比102.4%

★2021年1月14日現在(佼成女子学園サイト情報×首都圏模試出願倍率速報)、佼成女子学園の応募者総数は、388人で、前年対比は102.4%。2月1日までにはさらに増えるでしょう。

★SGH認定校だったことをテコに、ここ6年くらいの間に破格のグローバル教育とアクティブラーニング、ICT教育を整え、大学進学実績も飛躍しました。たとえば、昨年は上智20名合格と、グローバル教育面目躍如の成果を出しています。

★同校サイトでは、国公立23名、早慶上ICU32名、MARCH理50名、3大女子大37名となっています。

★new power programを構築して進学校に転換した伝統校というところが保護者には安心安全で魅力なのでしょう。

★一方、受験生にとっては、それ以外に、書道部の大パフォーマンスや吹奏楽部の活躍に代表される部活動が盛んというのは大切なポイントです。

★学校経営的には、トリプルA活動やフェロー面談やチューター制度、英検祭り×イマージョン教育などルール・ロール・ツールの3側面の目配り・気配りが功を奏しているのだと思います。

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2021年1月14日 (木)

2021年中学入試情報(18)品川翔英 はやくも前年対比112.2%

★2021年1月14日現在(日能研倍率速報)、品川翔英の応募者総数は221名、前年対比は112.2%。2019年と比べると、597.3%です。募集定員が100名ですから、前年、前々年に比べると、大飛躍でしょう。

★もちろん、2月1日までにさらに増えるでしょう。

★情熱と対話力と21世紀型スキルといまここに未来ビジョンを見据えて現実化する力などが魅力を創り上げています。

★2022年90周年記念事業の一環として新校舎も建設する発表もなされました。同校サイトではこうあります。

「本学園は、2022年10月に創立90周年を迎えます。今回、生徒数の増加と安心、安全に学園生活を送ってもらうために、「創立90周年記念事業」の一環として「新中央校舎建設」を下記の予定で計画をいたしました。」

★90周年に合わせて、カリキュラムも生徒数も校舎も新しくなります。勢いはとまらないでしょう。

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2021年1月13日 (水)

2021年中学入試情報(17)工学院好調。他の追随を許さないグローバル教育。1人も置き去りにしない高次言語思考力と共感力が育つ。

★工学院の中学入試の応募が順調に伸びていると田中歩教務主任からメールがありました。ことあるたびに田中歩先生がホンマノオト21に登場してきます。なぜでしょう?私は私立学校研究家というライフワーク(これは生業ではありません。人生ですね)をやっているので、学校全体の話に目配り気配りしています。ですから、本ブログでもアドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーという学校の経営、教育、進路全般について紹介しています。

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(写真は同校サイトから)

★そして気づいたのですが、この3ポリシー全般について実践もし、マネジメントもできる教師って実は希少価値だということです。田中歩先生ご自身は気づいていないかもしれませんが、得難い教師というわけです。英語の教師で心理学に造詣が深いというのがベースにあるからでしょう。

★今年も、工学院の帰国生応募者数は50名でした。昨対比161.3%です。帰国生入試と言えば、洗足学園とか聖光学院が老舗です。今年は、洗足は214人、聖光は145人でした。

★一見、大きな違いがあるように思うかもしれません。しかし、工学院の募集定員は100名強です。洗足や聖光はその3倍弱でしょう。それに、定員の半分の応募が帰国生だというのは、実は学内ではものすごいインパクトです。実際このインパクトは3ポリシー全体にケミストリーを生んできているのです。

★何がすごいって、1人も置き去りにしない高次言語思考力と共感力を身につけて卒業できる学校だということです。それは、ここのところ、総合型選抜で合格した高3生と対話してしみじみ感じました。

★また、直接は話したことはありませんが、高3で哲学コミュニティを学校を超えて運営している生徒もいるぐらいです。

★それから、もう2年前でしょうか同校でSTEAMのセミナーを田中歩先生方とコラボして行ったのですが、そのときのマイクラのファシリテーターは中学生でした。彼らの中には英語で高次思考を展開できる生徒もいました。英語でではなくてもプログラミング言語や日本語という言語で高次思考を展開できるファシリテーターばかりでした。

★そういえば、3年前も、新しい学びについてワークショップを行ったときに、工学院の生徒がファシリテーターのリハから行ってくれました。彼らは、海外大学、早稲田大学、ICUに進んでいます。

★そんな考える力と対話力、そしてファシリテーターができてしまう共感力があるZ世代なのです。一握りの特別な生徒だけではなく、マルチな才能をそれぞれに活かしているのです。

★そういう意味での生徒中心主義をミッションとして教育活動を行っているのが田中歩先生と仲間である工学院の先生方です。

★そして、ラウンドスクエアに加盟していることによって、とんでもない世界の問題を解決する議論をグローバルに展開するようになっているのです。まずは同校の英語科主任中川先生の論考「International Youth Day 2020」をご覧ください。

★インドとシンガポールのZ世代と“Parentification”について、同校の生徒が議論しているのです。これは、日本語では「親役割代行」という心理学用語です。日本でも当然問題ですが、いじめやひきこもりなどの問題が前面にでて意外と知られていない事態です。

★いや、すでにそれが日常になっていて気づかない状況に陥っています。実に深く辛い問題です。高齢化時代は、この「親役割代行」の家族問題に直面しています。家族というシステムの見直しがそこまできています。

★ところが、日本ではなかなか気づかないのですが、インドやシンガポールでは、貧困のために子供が親の代わりに家を守っていくことによって思春期の問題やアイデンティティの問題にぶつかっています。

★そうなのです。高齢化社会における親役割代行は、思春期を経験した子どもなのですが、世界で起きているのは、思春期をスルーする子供の親役割代行なのです。

★これは、ルソーやピアジェからはじまった子供の発達段階に適応して教育していくという近代教育システムを崩してしまう勢いなのです。議論の表題が“disenthrall”とは強烈ですね。日本の学習指導要領では、まず目にしないキーワードです。

★単純に束縛からの解法を意味するわけではありません。奴隷状態になっているにもかかわらず自身の活動に魅せられれていくのです。バスチアンが魔法にかかって自分はヒーローだという幻想に取り込まれどんどん自分を見失っていくという物語を思い出してしまいました。もちろん、仲間との出会いとどこまでも受け入れ寛容性によって、“disenthrall”されるわけですが。

★この強烈なダブルバインド状態は、しかし、シンガポールやインドでは可視化されているわけです。ところが、日本は気づかないのです。日本の現政権とZ世代の関係はまさに“Parentification”状況になっているというメタファーが成り立つのではないでしょうか。

★これが他に追随を許さない工学院のグローバル教育なんです。自分の顔は自分で見ることはできません。ですから、日本の問題は日本人同士対話していても気づかないのです。そこに気づくための対話はグローバルでなければならないでしょう。

★でも、それはやはり一握りの生徒やハイブリッドインターコースの生徒だけの話ではないのかと思う方もいるかもしれません。いえ、断言できます。全員に機会があるのです。その具現化は、同校のブログでいまどんどん発信されているグローバル・プロジェクトという工学院のグローバル教育の集大成プログラムを見れば明らかです。

★気づいていますか?八王子が、東京の拠点になるのを。気候変動によってそうなるのです。まだ、40年先の話ですが。

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2021年中学入試情報(16)桜蔭、フェリス、日本女子大、はやくも昨年比100%超える。それに続く学校もでてきた。

★本日13日現在で、桜蔭、フェリス、日本女子大附属第1回の入試は昨年の応募を超えました。日能研倍率速報によると、サレジオ学院Aは、あと9人で昨年を上回ります。駒場東邦は、あと56人、聖学院第1回は、あと34人で昨年を超えます。

★聖ヨゼフも、IBのMYPの候補校ということもあり、全体的に上向きになりそうです。今年4月から共学化する芝浦工大附属中学校も好調です。

★横浜創英も、全体としては好調の模様。

★栄東、渋幕は当然好調です。

★来週には、情況がはっきりしてくるでしょうが、現時点で上向きに向かっている学校を記しておくことによって、2022年の傾向が読めるので、気づいたことは、小まめにメモしていきたいと思います。

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2021年中学入試情報(15)帰国生が選ぶ学校 教育の変化のヒントが隠れている

★2021年中学入試の応募者の情況について、各シンクタンクはまだまだ集計中ではありますが、帰国生入試に関してはかなり応募集計が出そろってきました。日能研と首都圏模試センターのデータで判明している学校を調べてみました。

★まず前年対比100%を超えている学校リストです。

          21応募 20応募 前年対比 タイプ
女子聖学院 帰国生  7 2 350.0% 女子
玉川学園帰国   5 2 250.0% 共学
田園調布学園 帰国 48 20 240.0% 女子
聖セシリア女子 帰国生 4 2 200.0% 女子
啓明帰国     7 4 175.0% 共学
工学院大学附属 帰国生 50 31 161.3% 共学
栄東 帰国      39 31 125.8% 共学
共立女子 帰国     160 131 122.1% 女子
聖学院 帰国    19 16 118.8% 男子
都市大等々力 帰国生 251 213 117.8% 共学
文化学園大学杉並帰国生 81 69 117.4% 共学
昭和女子大学昭和帰国 46 40 115.0% 女子
中央大学附属 帰国生 36 32 112.5% 共学
広尾国際生    650 583 111.5% 共学
渋谷教育学園幕張 帰国  159 147 108.2% 共学
立教池袋 帰国児童 106 100 106.0% 男子
大妻 帰国      109 103 105.8% 女子
かえつ有明国際生 672 668 100.6% 共学
清泉女学院 帰国生 23 23 100.0% 女子

(日能研、首都圏模試センターのデータから2021年1月12日現在。複数入試の場合は総数)

★英語に力を入れている学校、new power school、インターナショナルコースを設置している学校など帰国生の選ぶ学校も多様化しています。

★2021年の応募者数多い順に並べてもみました。一般入試と比べると、帰国生全体の受験生は3000人くらいですから、30人集まるというのはかなり帰国生から人気がでていると思われます。

         21応募 20応募 前年対比 タイプ
かえつ有明国際生 672 668 100.6% 共学
広尾国際生 650 583 111.5% 共学
東京都市大学付属 帰国生 268 283 94.7% 男子
都市大等々力 帰国生 251 213 117.8% 共学
洗足学園 帰国生 214 232 92.2% 女子
攻玉社 国際学級 170 181 93.9% 男子
海城 帰国生   169 180 93.9% 男子
共立女子 160 131 122.1% 女子
渋谷教育学園幕張 帰国  159 147 108.2% 共学
聖光学院 帰国生   145 165 87.9% 男子
大妻 帰国 109 103 105.8% 女子
立教池袋 帰国児童 106 100 106.0% 男子
大妻中野 帰国 91 93 97.8% 女子
文化学園大学杉並帰国生 81 69 117.4% 共学
学習院 帰国子弟 77 78 98.7% 男子
学習院女子 帰国 67 75 89.3% 女子
逗子開成 帰国生   61 67 91.0% 男子
工学院大学附属 帰国生 50 31 161.3% 共学
田園調布学園 帰国子女 48 20 240.0% 女子
昭和女子大学昭和(帰国) 46 40 115.0% 女子
栄東 39 31 125.8% 共学
中央大学附属 帰国生 36 32 112.5% 共学
湘南白百合学園 帰国生 34 38 89.5% 女子
(日能研、首都圏模試センターのデータから2021年1月12日現在。複数入試の場合は総数)

★上記のソートの中にはでてきませんが、富士見丘は22人、八雲学園は10人の応募がありました。富士見丘は、1学年の生徒数がスモールサイズですから、この応募者数の学内に対するインパクトは相当なものです。

★八雲学園は、帰国生入試を開始したのが3年くらい前からです。基本的に小学生時代英語をあまり学んでこなかった生徒を受け入れてきたので、帰国生入試には積極的ではなかったようです。

★しかし、共学化し、ラウンドスクエア認定校ということもあり、設置したようです。10名のうち7名が男子というのも、八雲学園がなんらかの進化をしていることを示唆しています。

★帰国生入試のマーケットは、一般受験マーケットの6%くらいですから、メディア的には目立たないのですが、かりに帰国生が10名入学してきたら、その学校の教育のシナジー効果は相当なものなのです。マクロとミクロのズレがここにはあるのですが、そのズレに教育の変化の重要なヒントが隠れています。

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2021年1月12日 (火)

2021年中学入試情報(14)new power program導入の埼玉モデルに勢い

★本日12日の埼玉エリアの中学入試における各校の応募者前年対比100%以上は次の通り。

       21応募 20応募 前年対比
聖望学園 第3回  31 15 206.7%
栄東 帰国生(第1回)  27 20 135.0%
昌平 第3回/Tクラス  153 133 115.0%
狭山ヶ丘高校付属 第2回 117 103 113.6%
西武学園文理 第2回  229 214 107.0%
開智未来 探究2  111 106 104.7% 

(日能研倍率速報2021年1月11日現在から)

★いずれも、進学実績を出すことはマストで、そのうえでアクティブラーニングだとかグローバル教育、1人1台タブレット環境などnew power programを導入しています。

★その中でも顕著なのは栄東です。東大をはじめとする難関大学の進学実績をきちんとだしながら、アクティブラーニングをそのテコとして活用しています。

★new power schoolのように学校全体像が改革を行うというより、自分お強みを新しいテクノロジーで強化するというやりかたです。この手法は、わかりやすいので、埼玉モデルです。

★この栄東を旗印とする埼玉モデルは、東京の多くのnew power schoolとはアプローチは違いますが、new power programを取り込んでいるところに、首都圏私立中高一貫校の変化=日本の教育の変化に大きく貢献するでしょう。

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聖学院インパクト(09) 生徒共に「共通感覚」を創る思考力・判断力・表現力 他校にはない普遍的教育へ

★前回「Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(4)アイデアのレベルが違う」という記事を書き込むや、聖学院の教頭伊藤豊先生から次のようなメッセージを頂きました。同校の教育の本質がそこにはあります。掲載許可を頂いたので、そのまま掲載します。

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 タイの教育格差の問題がとても根深くて、山岳民の子供たちの顔を思い浮かべながら、正直、私はこれを解決不可能だと諦めていたんです。(生徒にはそんなことを言っていませんでしたが)
 しかし、昨年4月、校舎に集まれない中、五十嵐君とZoomや電話で議論しているうち、「できるかもしれないぞ」と思えてきました。彼は諦めないんです。解決できると信じてレポートを書いていたようです。「こんな取り組みができます」と何度も報告を受けるうち、私はだんだんと明るい気持ちになりました。
 少子高齢化を扱った他の生徒に「こんな未来にどうして希望が持てるの?」と聞いてみたら、「社会をよくしようとがんばってる人を知ってるし、自分もそこに加われるから」と返ってきました。
 とても励まされました。結論ありきでレポートを書くのはどうなのかと思いつつ、彼らの信念に突破力を感じました。彼らは革命家なのかもしれません。 

★「彼らの信念に突破力を感じ」とか「彼らは革命家なのかもしれません」という「ことば」を表現できる教頭がいる聖学院。その根っこには、タイの教育問題への痛みを、タイの人びとと共有できる共通感覚を伊藤先生と生徒が共に創っているからです。

★それは、生徒1人ひとりのタラントを開いていく教育の過程とメーコックファームの子どもたちのタラントを何とか開く手伝いをしたいという思い、メーコックファームをテコにタイの国を幸せの国に変えたいと努力している現地の人びとが思いを重ねているからこそできるわけですね。とても教科書の枠内だけで授業をしていたのでは、創ることができない共通感覚です。

★今「共通感覚」といったのは、欧米ではアリストテレスのセンススコムニスに端を発し、イギリスではコモンセンスとして引き継がれ、カントは「判断力批判」という美学の中で、思考力や美学と自由を論じる中で、アリストテレスの共通感覚論を捉え返しコペルニクス的転回を果たしている流れに聖学院があることに気づいたからです。

★この流れこそ、伊藤先生が「結論ありき」「信念」というものでしょう。私たちは、あまりに演繹法と帰納法に慣れ親しんでいて、共通感覚を創る過程で、すでに自然と社会と精神の秩序としてあるはずの合目的としての結論が存在していることを忘れています。平和とか自由とか幸せとかは、未来にあるのではなく、ハナミズキの種の中にすでにハナミズキの成長の姿があるように、存在しているのです。

★それを見出す共通感覚を自分たちがどう創っていくか。カントはすでに今でいう共感的コミュニケションの重要性を判断力批判の中で述べているのを、伊藤先生のメッセージを読んで思い出しました。

★そのように想起することになったのは、カントと伊藤先生はシンクロしているからでしょう。気づかなかったものを気づくから結論や未来のビジョンや目的になるのですが、気づかなかっただけで、それはすでにありてあるものなのです。普遍的というのはそういうものです。最近の欧米の哲学者は、人類誕生以前にあるものとして想定しているぐらいです。

★そのありてあるものに気づく拠点がタイ研修というシステムなのでしょう。

★伊藤先生が、イギリスや米国の聖公会やカントのプロテスタンティズムと共感するのは、聖学院という学校の由来の守護神であるからこそということもあるでしょう。突破力とか革命家というのは、このプロテスタントという原点に還る言葉なのかもしれません。

★そんな普遍的なところまで深堀している男子校は、聖学院以外には立教池袋と麻布しかないのです。立教池袋は米国聖公会ですから、多くの米国大統領出身のキリスト教の派です。世界を救済するアプローチは聖学院とは違います。しかし、戦後、そのアプローチで、立教を拠点に日本の教育は救済された経緯がありますね。麻布はキリスト教を捨てざるを得なかった経緯があって、ストレートにそこに挑めないということもあるでしょう。

★聖学院が海外大学進学者を多数輩出するのは、「社会をよくしようとがんばってる人を知ってるし、自分もそこに加われるから」という普遍的な共通感覚を独自に生徒と共に創る過程を実施しているからでしょう。ちなみにこの精神をサーバントリーダーシップと同校では語っています。欧米ではノーブレスオブリージュと言われているのは、中学受験生にとっても親しみやすい「ことば」ですね。

★「希望の私学」はここにあり。ですね。

★そうそう、この聖学院が創出している「共通感覚」はマインドでもあると同時に、未来を拓く有用なテクノロジーでもあります。判断力批判を書いたカントが、今聖学院を見たとしたら、そう言うでしょう。さらに、タイ研修での聖学院の先生方と生徒のこの共創行為をこういうでしょう。「崇高な美」であると。

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2021年1月11日 (月)

2021年中学入試情報(13)千葉エリアの中学入試 首都圏への影響大

★埼玉エリアの中学入試はすでに1月10日から本格化していますが、千葉エリアは20日からとなります。しかし、すでに20日の入試で、前年対比70%以上応募が集まっている学校があります。

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           21応募 20応募 前年対比
光英VERITAS 第1回(特待) 118 39 302.6%
渋谷教育学園幕張 帰国生 157 147 106.8%
市川 第1回       2292 2754 83.2%
昭和学院秀英 午後特別  614 824 74.5%
専修大学松戸 第1回   1076 1470 73.2% 

(日能研倍率速報2021年1月10日現在)

★千葉エリアで、光英VERITASのようにnew power schoolとして大転回した学校に受験生が集まる時代になったという一つの兆しがここには現れています。もともと、渋谷幕張は元祖new power schoolで、毎年人気は絶好調だし、上記のリストにもあるように、帰国生にも人気です。それから、進学校とnew power programを統合している学校も人気です。上記の学校は、20日までには、応募者は昨年並み以上になるでしょう。

★しかし、今回は市川の中学入試は幕張メッセでの受験が首都圏全体の中学入試に影響を与えます。すでに栄東は、場所と日時を分散して、昨年並みの約6000人の応募者を集めました。しかし市川は一つの場所で、多人数の受験を実施します。

★すでに募集要項でも感染防止対策をしながら実施する趣旨が記載されていますが、さらに詳しい防止策がサイトで追加されています。首都圏全体から受けに来るので、いずれにしても、市川の対策に応じる配慮を首都圏全体の受験生はします。

★ですから、他のエリア特に東京と神奈川は2月1日からですから、市川の防止策より緩くすることはできません。いつもは東京や神奈川のモデルが、首都圏中学入試への影響として注目されるのですが、今回は千葉エリアの市川がモデル校となります。

★それに市川は、近年帰国生の受け入れも、積極的ですから、感性防止対策もグローバルな視野で行っています。マスクと検温だけではなく、PCR検査も場合によっては必要となります。

★中学入試準備は、学力だけではなく、ヘルス管理も重要になってきます。根性だけの時代は終わりを告げます。学びとヘルスとメンタルというトータルなマネジメントが必要になります。受験勉強から人生を生き抜く複眼的セルフマネージメントの時代が来てしまいました。

★とにかく、入試が終わったら、メディアは、感染防止策をどこまで徹底したか問うことになるでしょう。

★ポストコロナ時代は、学校にとって、New Power Learning(進学校でも導入することは可能なのです)とRisk Managementの透明化や可視化は極めて重要になるでしょう。

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Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(4)アイデアのレベルが違う

「Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(3)アップデートを続ける新しい組織を創る」のつづき。

★五十嵐健太さんは、多様なペルソナを有しています。それゆえ、五十嵐さんの学びに対する理論は、ハワード・ガードナー教授のMI(多重知能)理論とシンクロするのでしょう。Fresh Service合同会社のパートナーズのインターンシップにもその理論は一貫しています。そして、聖学院の高1生でもありますから、同校の行事にも積極的に主体的にかかわります。がしかし、その主体性の意味がやはり一般の高校生とは違います。

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★聖学院の他の追随を許さない、海城の特別校長補佐中田先生をうならせるほどのタイの研修にも五十嵐さんは当然のごとく参加するわけです。メーコック財団(聖学院の前校長戸邊先生が創設者)の施設のキャパはそれほ大きくありませんから、希望者殺到する中、座長の伊藤豊教頭は頭を悩ませながら調整しながら参加者を決めます。そのくらい人気のプログラムです。

★そして、帰国後、毎年1年かけて振り返りの書を編集発刊します。最初のころは感想や気づきだったと記憶していますが、今や参加したメンバーが気づいたことをさらにリサーチし探究してエッセイライティング級のレポートにします。かなり読みごたえがあり、今年のダボス会議の強欲資本主義からステークホルダー資本主義へというテーマを先取りする経済システムのアイデアを展開する生徒もいます。

★もちろん、五十嵐さんもその一人です。ただ、五十嵐さんの場合は、アイデア段階でとまらずに、実装段階にまでしてしまうのが多様なペルソナの持ち主であることの証です。

★伊藤先生は、編集段階で、生徒が書いてきたレポートをそのまま載せるわけではないでしょう。出版するわけですから、生徒と協働編集となるわけです。ビブリオやエビデンスのないアイデアではだめで、そこはしっかり「指導」するのだと思います。

★「指導」というのは、五十嵐さんの存在がなければ、あえて触れる必要のない当然のことですよね。高校生なのですから。学校の行事の一環として参加するわけですから、教育とか指導の枠があるのは当たり前です。

★その枠が、伊藤教頭のようにデカイキャパだとなおさら、教育とか指導というのは背景に退いて見えなくなります。それゆアイデアが自由に生まれてくるのです。

★五十嵐さんも、その広い枠の中でアイデアを自由闊達に生み出します。高校生なら、その段階でもう十分な主体性を発揮しているわけです。しかしながら、五十嵐さんはさらにその枠も突き抜けてしまいます。

★今回は、タイ研修で教育の重要性を痛いほど感じ、中でも教師不足の問題をいかに解決するかという自問自答をしました。そして、そこはロボと教師やオンライン学習というテクノロジーで突破しようと論を展開しています。

★五十嵐さんがタイ研修に参加したのは今回のパンデミックが広まる直前でした。ですから、そのアイデアは、数カ月後には実現してしまいます。しかし、レポート編集段階では、伊藤先生と何度も議論したそうです。

★おそらく伊藤先生としては、その実現性のエビデンスを歴史や文化で述べてもまだやってきていないソサイエティ―5.0の成就段階の話で、仮定の立て方をもっと堅固にしようということだったと思います。

★ところが、五十嵐さんは、高校生というペルソナと起業家というペルソナを持っています。高校生というペルソナでは、すでにある既存の事実やデータに基づいて仮説を立てていく演繹法(インダクション)と帰納法(デダクション)で十分だったわけです。

★しかし、起業家というペルソナは、今目の前の困っている人々のために今すぐに動き、経済活動を通じて何ができるかという仮説を立てる必要があります。それはある意味賭けです。今までに何かがないから困っているわけで、過去のデータや蓄積だけでは生まれてきません。それを見出すのは、閃きや直観です。「アブダクション」という今までにないものまでも推理する論理が必要になります。

★この論理はプラグマティストらが使う論理です。デューイやガードナー教授はこれをうまく使うわけです。しかし、当然ヘルバルト主義という20世紀教育の土台は、それをはねのけます。彼らはそれと攻防し続けてきました。それがテクノロジーによって、今突き抜けられてしまったのです。実はその21世紀型教育の旗艦校の1つが聖学院ですが、五十嵐さんの起業家というペルソナは、そこからさらに先に行ってしまいます。

★21世紀型教育のリーダー伊藤先生だからこそ五十嵐さんの起業家精神をリスペクトしながらその才能=タラントに気づき、抑えつけなかったのでしょう。もっとも仮に抑えつけたとしても、五十嵐さんは逆にそれをバネにしたでしょう。

★それに、結果的に五十嵐さんの預言はあたってしまったのです。聖学院はタイ研修終了3か月後にはパンデミック拡大に対応すべくすばやくオンライン学習にシフトしたのですから。

★とにかく、起業家とアクティビストの違いはこれですね。あくまで、経済を通していまここで解決策を実行して、結果的に世界が変わればよいというのが起業家です。アクティビストは、いまここで解決するアイデアが即世界を変えることになるはずだという強い信念を社会にぶつけていきますね。

★どちらもありだとするのは起業家だし、なまぬるいいまここで世界を変えるのだと立ち臨むのがアクティビストです。

★いずれにしても、五十嵐さんは、教師のみならず、未来を生み出す人材の不足を解決するためにFresh Service合同会社のパートナーズと経済活動を生み出しているのでしょう。

★現在、高校生Z世代は、起業家とアクティビストの両方を生み出しています。2022年には18歳成人の誕生です。高校生という枠で教育する時代は終わりを告げる時代がやってきてしまいました。

★五十嵐さんは、聖学院と共に、その最前線で活躍しているのです。

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2021年1月10日 (日)

2021年中学入試情報(12)相次ぐ女子校の面接中止が変えるコト 予測不能な事態に対応するトレーニング方法を生み出したかもしれない。要はタフなメンタルと柔軟な思考力。

★2021年の首都圏中学入試が本格化するや再度緊急事態宣言が発出されたわけですが、それに伴い、女子校が相次いで面接を中止しています。非常事態だからやむを得ないのか、やらなくて済むのなら今後もやらないとなるのか、それは学校によって姿勢は違います。この姿勢の違いが、各学校の応募者の増減に多少なりとも影響するのかどうかそれは今のところわかりませんが、面接の意義の見直しが起こることは間違いないでしょう。

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★桜蔭という学校は、やはりさすがだなと見直しました。「新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑み、対面での接触を避けるため、口頭ではなく記述による方法に変更いたします」というのですから。面接で合否は決まらないけれど、やはり成績だけでみてはいないぞという姿勢を崩していないわけです。面接では合否は決まらないのに、それでも面接をやる意味というのは、成績重視だけの人が受験するのを抑止する役目はあるのですね。もちろん、面接のときはうまくパフォーマンスするというアッパレな生徒もいるかもしれませんが、それは経験上わずかでしょうし、あまりにひどければ、契約は成立しないわけです。

★つまり、面接を行う学校は、本来は、いっしょに学ぼうという契約を交わす条件だったわけです。それがいつのまにか成績だけになり、そうでなければ公平性がないと受験市場は要求してきたわけですが、いっしょにこれから学んでいこうという契約の条件であって、その条件設定に公平性がなければはじめて問題になるわけです。

★受験マーケットにとって公平かどうかは、実は背景に受験権力が働いていて、それはそれで問題だということがパンデミックが問いかけているわけです。

★入試マーケットは、学校と受験生の契約の場ですが、受験マーケットは誰にとっての契約の場か少し考える必要がでてきました。塾を否定しているのではありません。入試マーケットにおけるサポーターとしての塾の役割は重要です。しかし、学校と受験生の相互契約の代行機関はできないのです。

★また、横浜雙葉は、他の学校のように、あっさりしていません。「面接の準備をなさっていた受験生・保護者の皆様には急なお知らせとなり、大変申し訳ございません」と丁寧に告知しています。しかし、であれば、その代わりに桜蔭のような対応を具体的にどうとるのかそこがなければ本当は困りますね。もし何もしないなら、横浜雙葉の姿勢は、そういうことなんだとなります。もちろん深い意味があります。それは後述します。

★それはともかく、エっ!?じゃあフェリスはあっさりしすぎているではないかと思うかもしれません。ところが、フェリスは国語で。たとえば昨年は、変えるべき常識は何か、変えたら社会はどうなるのかあなたの考えを200字以内で書きなさいという問題を出題しているのです。桜蔭のように急遽記述にする必要はそもそもないのです。ですから、シンプルな告知でよかったのでしょう。

★だったら、はじめから人物考査の必要はないのでは?とお思いになりますか?国語の200字は、あくまで学力を判断する材料です。ただ、長年行っているわけですから、200字と面接の相関が織りなす人物像のデータはあるわけです。今年は優先順位は、生徒の命を守ることで、今回は過去のデータに基づいて対応しようということでしょう。

★なんでそんなことがわかるのかと思うかもしれません。まともな評価を考え実践していれば、それは評価セオリーですから推測するに難くないのです。

★じゃあ、雙葉や女子学院はどうなのか?フェリスと同じことが言えます。雙葉は、フェリスのように生徒自身の考えを200字で書かせる論述問題は出題しませんが、考えるプロセスが長大になる問題ばかりを4科共通して出題します。学びのプロセスには、人物像が反映します。もちろん、結果のみで得点を出しますが、やはり長年行ってきているわけですから、かなりの高確率で人物像を推測できるでしょう。もちろん、この点に関しては当局は何も言いません。余計な憶測をマーケットに生みたくないですからね。

★でも、自分たちで問題をつくって、採点している方々はそこはよくわかるでしょう。入試問題が学校の顔というのはそういうことでしょうし。

★女子学院の問題はそうなっていないではないかと思うかもしれません。それは入試問題の問いだけをみるとそうかもしれません。しかし、女子学院は、学校説明会―入試問題―面接がセットになっています。

★説明会は、礼拝スタイルで行われます。毎朝行われる礼拝が嫌なら受験しないでくださいとまず条件を設定します。その礼拝は、必ず先生と生徒が順番で語らなければなりません。立教女学院や恵泉、普連土もそうですね。そして、その内容は優れた小論文の解答もびっくりするような内容です。

★それに取り組む覚悟がないと受験はできないわけです。それから、女子学院の問題は、問いはそれほど難しくないのですが、国語と社会の素材が現代の問題や世界の痛みを考えざるを得ないものに偏っています。こういうものの見方・感じ方に共感できなければ受験できません。そのうえで、面接です。これに関しては桜蔭と同じで、長年蓄積してきている学力と人物像の相関というものはあるわけです。多少ズレるかもしれませんが、今年はそれはやむを得ないと判断したのだと思います。

★じゃあ横浜雙葉はどうなのか?実は、横浜雙葉は、もともと200字は出題する文化だったのですが、それは丁寧な面接でカバーできるから、少しハードルを下げてきたという事情があるのでしょう。

★エっ!すると入試問題に200字が出るかもしれないのかとなるわけですが、有り得るでしょうね。つまり、面接を中止るのは、土壇場で決まっているわけではありません。すでに大学の総合型選抜などで面接を中止したという情報は9月の段階で得ているわけですから、どの学校も想定していたでしょう。

★入試問題作成や変更は、その段階では、まだ間に合っていたはずです。

★かくして、面接中止という事態は、入試形態が変わったというだけではなく、入試問題の傾向にも影響を与える可能性があるし、そもそも評価とは何かを再構築する事態も生み出す可能性が大なのです。とはいえ、受験生に直接の影響があるわけではありません。

★入試問題の傾向が変わることは、平時でもよくあることですから。それに、受験生も柔軟な対応をトレーニングしていますから。しかしながら、予測不能な事態に対応する受験準備ということは、2021年中学入試の大きな特徴といえましょう。

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2021年中学入試情報(11)フェリス女学院応募者増の意味

★神奈川エリアの私立中学入試の出願の多くは8日からスタートですから、まったく全貌は見えない中、フェリス女学院ははやくも前年対比104.4%(日能研倍率速報2021年1月9日現在)。フェリスは6日から出願(出願期間と書類提出期間が違いますから、募集要項を再度見てご確認を)を開始して、実は本日もう締め切ってしまいます。横浜雙葉も6日から出願を開始していますが、締め切りはもう少しあとです。そういうこともあって、はやめに決着がつくという感じなのかもしれません。とはいえ、少なからずコロナの影響はでています。それは相次ぐ女子校の面接の中止や方法の変更です。

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★フェリス女学院の応募者増の理由はいろいろ考えられます。新型コロナウィルス感染拡大の影響は同校に限らずですが、フェリスの場合は特別です。

★まず、面接を中止。フェリスの場合は、次のように告知されています。

 ・今年度は、新型コロナウイルス感染症予防のため、人物考査は実施いたしません。

★横浜雙葉の場合は、次のように告知されています。

・現在、新型コロナウイルス感染症の感染者が急増し、緊急事態宣言発出の可能性が高くなっています。これらの状況を鑑み、誠に残念ではございますが、今年度の入試面接は中止といたします。面接の準備をなさっていた受験生・保護者の皆様には急なお知らせとなり、大変申し訳ございません。何とぞご了承くださいますようお願い申し上げます。

★フェリスは、「人物考査」と表現し、横浜雙葉は「入試面接」と表現しています。これは単純にラベルの違いでしょうか?これは意味深です。いずれにしても、フェリスは「人物考査」をやらないのですから、この表現に少し躊躇していた受験生はメンタルの部分で受けやすいですよね。増加の一因だと思います。

★そして、何よりフェリス女学院中高出身者の活躍がここのところ目立っています。同校レベルの女子校も同様に活躍はしています。作家、アナウンサー、女優などどこもその点においては差はありません。

★ところが、フェリスの場合は、中島さちこさんをはじめとして21世紀型教育を牽引するリーダーまで活躍しているのです。コンサルタントというより、アーティストで数学者として21世紀型教育を牽引するワークショップなどを行っています。

★教育革命家白川寧々さんも活躍していますよね。フェリス卒業後、デューク大学に進学したり、MITとMBAを取得したりしてアグレッシブですが、日本の教育を変えるべく発信し、海外大学を勧める守護神みたいなこともしています。

★受験生・保護者にとって身近な存在であるわけです。

★フェリス女学院は頑として普遍的な教育を行い、教育イノベーションに派手に取り組むことはしていないのですが、21世紀は教育がカギと言われている時代に、その最前線で活躍するのがフェイルス女学院出身者というのは、なんかいいですよね。これも増加の一因かもしれません。

★時代の変化を創っていく人材を輩出するフェリス。「人物考査」は合否には確かに関係ないのですが、このような生徒をきちんと受け入れていたというのが証明されたということを改めて意識することを中学入試マーケットに投げかけたというのがポストコロナの希望を暗示します。

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2021年中学入試情報(10)埼玉エリア 中学入試始まる。

★本日10日(日)、埼玉エリアの中学入試スタート。同時に東京の私立中学の出願も始まりました。神奈川エリアは8日に開始していますから、首都圏中学入試は本格的に始まったわけです。1月10日の埼玉エリアの私学の前年対比で100%を超えているところは、次の通りです。

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(写真は、大妻嵐山のサイトから)

       21年応募 20年応募 前年対比

【共学校】
武南 第1回午前  :    196 96 204.2%
浦和ルーテル学院 第1回  448 262 171.0%
西武学園文理 第1回  :  656 393 166.9%
細田学園 dots(適性)/第1回  54 36 150.0%
細田学園 特待生/第1回  : 36 26 138.5%
国際学院 第1回(特待生/英語):  24 18 133.3%
星野学園 理数選抜/第1回 : 594 453 131.1%
星野学園 進学クラス/第1回: 547 425 128.7%
本庄第一 第1回/単願  :  45 35 128.6%
狭山ヶ丘高校付属 第1回 : 139 110 126.4%
武南 第1回午後  :    107 88 121.6%
春日部共栄 第1回午後  : 218 184 118.5%
西武台新座 第1回特進選抜: 109 92 118.5%
昌平 第1回/一般/グローバル : 218 186 117.2%
聖望学園 第1回  :    102 94 108.5%
西武台新座 第1回特進  : 155 144 107.6%
埼玉栄 第1回医学/難関/進学: 1067 1006 106.1%
細田学園 一般/第1回  :  91 87 104.6%
昌平 第1回/Tクラス  :  158 155 101.9%

【女子校】
大妻嵐山 第1回一般  : 234 180 130.0%
大妻嵐山 まなび力  : 74 51 145.1%
大妻嵐山 第2回一般  : 250 217 115.2%

【男子校】
城北埼玉 特待  : 552 483 114.3% 

(日能研倍率速報2021年1月9日現在による)

★注目したいのは、大妻嵐山。大妻グループが1つになって女子校を牽引しようとしていますが、嵐山もそれをきちんと実行しているわけです。学校自己評価もきちんと公開し、次のような目標をPDCAサイクルでチェックしています。

1 世界につながる科学的素養を育てる
2 世界につながる表現する力を育てる
3 世界につながる心と感性を育てる
4 世界につながる進学力を育てる
5 組織的な広報活動を展開し学校の魅力を伝え、入学者を確保する

★この評価の過程では、通常、全教員がかかわるし、評議員会や理事会、PTA、同窓会も巻き込みますから、学内シナジーは相当燃え上がります。嵐山をはじめ、大妻グループの今後が実に楽しみです。

★埼玉全体としては、昨年の1月10日の共学校の受験総数は、16,219名。今年は14,304名で、前年対比は88.2%ですから、集まるところとそうでないところの差がはっきりでてしまう入試かもしれません。

★このことは、今までと一見変わらないのですが、明暗の理由が、今までと違います。それは全体の様子を見てから論じたいと思います。

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2021年1月 9日 (土)

八雲の真価×進化×深化×新価(4)八雲の野望④ロールモデルエフェクトの連鎖

「八雲の真価×進化×深化×新価(3)八雲の野望③」のつづき。

★ボッサム先生と王先生、菅原先生、近藤先生と対話しているときに、ふと慶應義塾大学教授のつくったLearning Patternsを使いながら八雲の教育を逆照射してみようということになりました。たとえば、見せるのではなく魅せることがポイントである「魅せる力」というカードをひいたときに、八雲の場合ならどういうシーンにあるのかとみんなで問うわけです。

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★すると、毎回の授業でプレゼンテーションは大事にしていますよねとボッサム先生。そして、それがレシテーションコンテストや英語祭、ファンフェアにつながったとき、見せるだけではなく、五感をフルに使い、臨場感あふれる魅力的なプレゼンをトレーニングするところまでいきます。まさにそこではないでしょうかとボッサム先生は語ります。そして、なるほど、それが授業と行事がつながるクリエイティブ教育だよねと一同ウナルわけです。

★自分たちのことなのに、今気づいたみたいな雰囲気に驚きと笑顔が入り混じります。

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★学びの共同体、新しい関係を見つける、どっぷりとつかる、突き抜ける、動きながら考えるなどのカードを引きながら、あるあるとなったわけです。そして、Learngage Patternsはいいね。改めて自分たちの行ってきたことを振り返るのに有効だとかいう話にもなりました。さっそく今月それを使ってミーティングをすることもZoom対話の後菅原先生と決まりました。コロナ禍における新たなアクレディテーションの手法に気づいたわけです。

★そんな対話を続けていて、<「まねぶ」ことから>というカードを引いたとき、ボッサム先生は、そうそうこれがロールモデルエフェクトですねと。教育社会学や教育心理学では、学校における様々な場面でのロールモデルは、生徒にとっては影響力がありますと。王先生も、やはり学びや探究へのモティベーションは、あの先生のようになりたいとかあの先輩のようになりたいは大事ですよねと。

★ボッサム先生も、先輩見ていてくださいと意欲を燃やし、行事をやり終えたときの自己効力感や、そこからつながる自分の未来への期待感にも大きく影響しますよ。私たちも、部活や行事の実行委員会を通して、よき先輩に恵まれたなと思っていましたが、まさに、ロールモデルエフェクトがプラスに働きましたと。

★そして菅原先生が、今では二人が在校生のロールモデル。ロールモデルエフェクトは連鎖するなあと。

★すると、近藤先生が、なるほどまさにそうです。今英語祭をやるにあたって、ラウンドスクエアで国際会議に参加した歴代のOGに後輩にエールを送ってくれないかとメールを送信したら、続々返信がありました。それが、あのエッセイライティングばりの文章で、エールの文章までロールモデルになっているのですと。

★Zoom対話の後、近藤先生はそのOGエール集を添付してくれました。文章を開いて驚きました。八雲で育った生徒はこんなに自己変容をするのだということがわかったからです。(つづく)

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2021年中学入試情報(09)大妻中野の大切な意味<希望の私学>

★本日9日、大妻中野は第2回目の帰国生入試を実施しています。1回目は、11月7日行われていて、応募者は91名(首都圏模試センター「出願倍率速報」による)でした。本日分を合わせると、当然総数は100名を超えますから、同校のグローバル教育面目躍如ということでしょう。ここ数年、帰国生からの人気は高まるばかりです。2月1日以降の一般入試(といっても新思考力入試もグローバル入試などの新タイプの創意工夫入試もあります)も間違いなく高人気となるでしょう。

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(写真は、同校サイト及びfacebookから)

★大妻中野の教頭諸橋先生とは6年前に出会いました。中野サンプラザだったか記憶が曖昧なのですが、合同説明会に参加した時、当時広報担当主幹時代の諸橋先生のプレゼンに新鮮な何かを感じたというようなことをホンマノオトに書き込んだ記憶があります。すると、海城の当時教頭の中田先生が、諸橋先生になんか本間さんに書かれているよと諸橋先生にメールを投げたそうです。

★早稲田大学OBネットワークの俊敏さに驚かされましたが、私学の情報ネットワークのパワフルさに感心もしました。私は寸止めではありますが、言いたい放題だし、すばらしいところはすばらしい書き込んでしまうので、警戒される方も多いのですが、諸橋先生は、そんなことには動じず、私とコミュニケーションをスタートしてくれました。

2015年の9月8日のホンマノオトで、諸橋先生のこんなメッセージを紹介しています。

 「12/2(日)には、中野も首都圏模試会場です。午前午後で小6、小5。うちでも、時代変革の動きに急激に加速がかかっているこなとをお伝えできると思います。本校だけでなく他校のうごきも、そして、地下のマントルが音もなく確実に流れていて、今度の地殻変動のあとには、地盤沈下する場所と隆起する場所にはっきり別れるのだと覚悟して臨んでいきます!」

★大妻学院との出会いは、15年くらい前に、当時は理事の前大妻学院理事長の花村邦昭先生と一泊二日でパネルディスカッションをごいっしょしたときでした。なぜか前日相部屋で、質問攻めにあいました。今思えば、次の日のパネルディスカッションで果たして対話できる相手かどうか探られていたのでしょう。場合によっては、調整しなければならないということだったと思います。

★その対話の中で、花村先生は、日本総研を創設した社長で、ビジネスモデルをナレッジマネジメントをベースに組み立てたという話を聞きました。そして私のPBLが暗黙知や潜在的可能性を顕在化するものであるという話とシンクロするということになりました。

★また、大妻学院の創立者大妻コタカの「恥を知れ」はハイデッガー的な解読ができるという話を聞き、驚きもしました。ちょうど私もハイデガーの「芸術の根源」で扱われているゴッホの「一足の絵」で話そうと思っていたからです。ナレッジマネジメントの話をするときには、氷山モデルが使われるのですが、当時はわかりやすさよりもう少し奥行きのある話をしようとする傾向があったために、マテリアルをハイデガーにしたのですが、花村先生のキャパの大きさというか、教養力に驚嘆。

★でももっと衝撃だったのは、対話をしながらウトウトしそうになってきたときに、で、そういう話をしているあなたはいわゆる教育コンサルをやっているのだろうけれど、経済的には儲かるの?儲かるなら興味あるなあと。それから各自治体の経済や財務状況の話にうつり、大学や中高はこの情況にどう貢献できるのかねと機銃掃射のごとく。

★こちらは、すっかり目が覚めましたが、花村先生はストンと深い睡眠にシフトしていました。花村先生の後の現在の理事長も東大の経済出身です。大妻学院というのは、ハイデガーと経済の複眼思考をする理事長が就任するということでしょうか?

★諸橋教頭が本日の帰国生入試の告知をSNSで流す時、どこかの廊下に陳列されているのでしょう、大妻コタカの言葉を写真に収めています。なんと、その言葉は、花村先生が、大妻コタカの言葉をハイデガー流に言うと、「関係的自立」だよと言っていた箇所に重なるではありませんか。

★6年前に大妻中野を取材させていただいて「希望の私学」を書かせていただきました。そのときもすでに21世紀型教育を歩んでいると感じましたが、もう一度記事を読んでみると、「隔世の感を禁じ得ない」という言葉がぴったりです。

★今では、早稲田大学の学生と英語でディスカッションしたり、英語のディベート大会で勝ち進んだり、ICTでアイデアソンに参加したり、グローバルとSTEAM教育は統合されています。帰国生入試も新思考力入試(この名称は早稲田大学にもありますが、大妻中野が先んじています)もグローバル入試も揃っています。

★たしかに、諸橋教頭の当時の覚悟「今度の地殻変動のあとには、地盤沈下する場所と隆起する場所にはっきり別れるのだと覚悟して臨んでいきます!」は、実現しました。大妻中野は地殻変動を先読みしながら、なすべきことをなし、隆起する場所に<希望の私学>として位置したのです。

★そして、ポストコロナ時代、いっそう輝くでしょう。

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2021年1月 8日 (金)

八雲の真価×進化×深化×新価(3)八雲の野望③

「八雲の真価×進化×深化×新価(2)八雲の野望②」のつづき。

★ボッサム先生と王先生とのZoom対話は、菅原先生と近藤隆平先生に気づきをもたらしました。自分たちがつくってきた教育をOGとその友人が母校に帰還し教師をやることで、新しい眼差しでみていることに驚きを感じたようです。

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★八雲の教育といえば、グローバル教育、文化体験、進路指導、チューター制度の4本柱です。おそらくボッサム先生が生徒だったころは、グローバル教育は英語教育だったし、文化体験は芸術鑑賞だったと思いますが、それが卒業後広がったわけです。

★したがって、ボッサム先生は戻ってきたときに、その進化の姿に驚きワクワクしたそうです。しかしながら、対話をしていくと、その驚きが深い理解につながっているということに気づきました。また王先生が新しい視点で、4本柱を捉え返しているのです。

★二人の大学院や海外での生活や留学経験からいって、八雲学園のグローバル教育は、一般的なプログラムとは違って、八雲学園の生活全体に浸透しているし、交流のレベルが他では得難いエスタブリッシュなものなのだから、それは破格な教育だというわけです。

★英語だけにとどまらず、グローバル市民のリーダー育成として4つの柱を貫く教育だというのです。菅原先生は、グローバルリーダーの育成というのは八雲学園の教育の総合力だと常々語っていますから、まったくその通りだけれど、それをボッサム先生は「エクセプショナル教育」と表現したのです。菅原先生自身は、自分たちで創り上げてきた教育の総合力をエクセプショナルとは言うには控えめだったわけです。

★しかし、OGにそう言われると、たしかにそうだと言えるわけです。この謙虚な菅原先生の心意気が魅力なのです。

★また、ボッサム先生は、あらゆる行事は全員が参加します。そしてそれがすべての授業とつながっているのですと。近藤隆平先生は、そのつもりでデザインしたのだけれど、だからといってそれ以上なにかあるのかとふとよぎったそうです。

★すると、ボッサム先生は、時間割の授業と行事がもしつながっていなかったしたら、それは八雲学園ではないわけで、つながているから、授業の先に創作があるのだという意識が生徒にはあるんですと。

★だから、王先生は、授業でアクティビティを行う意味は二重の意味であるのですと。アクティビティは自分がウケてきたInput型の授業よりも、Outputとそのための思考を能動的に活用するため、実に効果的な学びになります。大学院ではその研究をしてきたし、その実践ができてうれしいのですと。

★そして、もう一つの意味は、そのOutputの力が各行事につながって、創作という成果を生み出していくのですと。そこでボッサム先生は、授業と行事はセットでクリエイティブ教育を行っているとみなした方がよいのではと。

★近藤先生は、目から鱗でしたと。日々行っていることも見方が変わることで、その価値がますます高まりますと。

★そして、ウェルカムの精神は、八雲の最も大事なマインドですが、それは学びにおいてオープンマインドやGrowth Mindsetをするときのベースだというのあh、二人が教育心理学を学んでいるからこその気づきだった思います。

★学校説明会の時の先生方のウェルカムの精神には感動しますが、それは「お・も・て・な・し」以上に生徒が内面の世界を深堀するときに必要なマインドだったのです。

★八雲の4つの柱を横断している3つのラインの発見が、八雲の教育を織りなしている糸だったということに気づいた瞬間でした。このような織物のような教育だからこそクオリティの品質が高いのだということでしょう。

★精神のコペルニクス的転回がZ世代OGによってもたらせています。

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GLICC Weekly EDU(10) パンデミックの時代を生きるには才能自己開発ができる対話が大切。ちょっと凄いことになってきた。

★本日21時からは、GLICC Weekly EDU 第12回 「カリフォルニア工科大学に通うSophieさんとの対話ー 海外からみた大学事情及び未来ビジョン」を実施します。主宰の鈴木代表が英語でZoom対話をしながら、トランスレートもします。私は英語はだめですが、deepL翻訳を使いながら対話をしようと思っています(汗)。本当に凄い時代になりました。テクノロジーで時空の壁も言語の壁も乗り越えられるのですから。そして、さらにおもしろいクリエイティブ・プロジェクトが生まれています。

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★ソフィーさんと対話できるのは、それゆえ楽しみなのです。ここのところ創造的才能者=クリエイティブクラスのZ世代(小学校から高校生・教師)と対話しながら、つくづく才能開発の環境デザインの一環として「対話」は大切だと思っています。ソフィーさんがどんな才能開発の環境にあるのか、どんな対話をしているのか実に興味があります。

★ソフィーさんもZ世代ですから、今対話しているZ世代の才能者の対話デザイン(PBLに埋め込みたい)を、今後多くの人びととシェアしていけば、着実に世界は変わるでしょう。そう確信する日々を送っています。

★今、私はGLICCで小学生のクリエイティブコースの国語を担当していますが、ついに小5が、ノートパソコンを授業中にもってきていいですかということになり、NU BOARDやレゴでセカンドブレインを活性化させながらもをWordで長文を書き始め、CANVASというプラットフォームでその場でやりとりしながら対話していくのです。

★対話をするときは思考スキルと物語の構造分析視点(13のフェーズが今のところ使いやすいですね)をベースにしていきます。そうこうしているうちに、それぞれにプロジェクトが立ち上がり、授業の方は生徒たちの思考と感性トレーニングの共有ベースで、国語でありながら学際的なというか文化人類学的な言語使用をしていきます。ですから、MYプロジェクトは授業外で生徒が自分で進めていくわけです。GLICCのCANVAS内で時空を超えて行うので、授業内ともいえるわけですが。

★生徒は思考力ベースの入試と英語を活用する入試を受けると自分の意志(家族との対話の中でしっかりと自分で決めています。今回のプロジェクトもお母さんとかお父さんも巻き込んでいます)で決めています。小学生なのに本当?と思うかもしれませんが、それは違うのです。ただ、その理解には、意志とは何か?主観とは何か?というコペルニクス的転回が必要で、それができている家庭の生徒と私は対話しているので、実感できるのでしょう。

★中学入試が思考力や自分の意志を表現できるタイプの入試を開発したことは、本当に小学生にとって才能開花の道を開いたなあと思います。受験と才能とは一見パラドクスですが、本来受験とは、生徒の才能とのマッチングを果たすものですから、これが本道なのです。

★どうなるかはわかりませんが、こんなに多くの脱枠自己変容型自己タイプの創造的才能者と対話ができるなんて!これも21世紀型教育を推進している先生方や鈴木さん、及び思考コード開発にかかわらせて頂いている山下さんと北さんとの対話によってもたらされているわけです。心から感謝。

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2021年1月 7日 (木)

「教育とは生き方そのもの」へシフト(03)成城大学と日芸の魅力

★年末、工学院から総合型選抜で成城大学と日芸に合格した二人のZ世代と対話をしました。シリーズで5回に分けて書きました。対話をしているときも感動したし、書くときもラフマニノフのピアノ協奏曲2番とパガニーニの変奏曲をオートリバースしてBGMにしてワクワクしながらキーボードをたたきました。いろいろなことが思い浮かび、そのつど寄り道もできました。そして、総合型選抜の価値を二人から触発され次のようにまとめました。

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★二人は、「殻を破る」「自己に囚われない」ということを意識していましたから、思考コード(図は工学院のものではなく、首都圏模試センターの思考コード)は、A軸・B軸・C軸フルスペックで活用していました。まさに「脱枠自己変容型」自己タイプだったのです。

★一般入試を受験する生徒も、「脱枠自己変容型」自己タイプもいます。大学に行ってからさらに伸びるタイプです。工学院の二人の生徒と大学で合流してシナジー効果を生み出すでしょう。

★しかしながら、一般入試は、「枠内主体型」自己タイプでも合格します。大学に入ってから殻を破れば伸びますが、そうでない場合は苦労するでしょう。

★また、「枠内従属型」自己タイプもいます。大学に入って何度も殻を破る必要があります。

★こうしてみてみると、今年の総合型選抜、少なくとも成城大学と日芸は、「脱枠自己変容型」自己タイプを受けいれる大学で、大変魅力的ですね。

★そういえば、成城大学は、小学校、中学校、高校、大学の先生方といっしょに思考コードについてミーティングをしたことを思い出しました。さすがデューイの系譜の学園です、先生方は教養とテクノロジーを統合させた情熱家でした。

★日芸は、私が敬愛する師の出身大学です。そういえば、師も写真学科でした。師は天才学校改革者で、北から南まで幾つもの学校の改革を成功させています。一瞬にして巻き込む力と閃きは真似ができません。発想の自由人そのものです。

★みな個性的なのですが、どこか自分の大学の特徴を身につけているのですね。不思議です。逆に言えば、そういう大学こそが魅力的だということでしょう。

★そうそう、学校改革の気鋭の教師も成城大学でした。いつも刺激を受けています。

★来年の新高3生には、この2つの大学はぜひ紹介しなくては!

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工学院Z世代の未来の開き方(05)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん➄

「工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④」のつづき。

★郷野さんは、総合型選抜の資料としてポートフォリオを提出しています。3つの部に分かれていました。第1部は、生徒会誌「扶養峰」を編集した時に掲載した自身が撮った写真。文化祭や体育系部活で輝く同僚の表情や姿や身体の動きを「一瞬」に鷲づかみする写真でした。

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★第2部は、カンボジアでグローバルプロジェクトを実施したときの写真。カンボジアの街の人びとの実生活の中の姿を撮影した写真。第3部は、天文学部で撮影した天体の写真。いずれも絶品だと私は感動しました。前回語ったように、これで日芸写真学科に合格したのだと思ったわけです。

★しかし、郷野さんはそうではないと。特に第2部の写真は一方的に自分の見方を押し付けて撮っただけで、カンボジアの人びととコミュニケーションをとっていないから、日本とは違う村の風景の中の人びとを撮ったから、いつもとは違う感覚がでたけれど、まだなぜこの写真かということが理論的に詰めれていないのだというのです。

★だからこそ、そこを追究したいという情熱を面接官とシェアしたのでしょう。面接官は、直接的な質問はせず、カンボジアについていろいろ問いかけてきたそうです。なるほど、そこだったんですね。

★「そこ」ってどこか?実は、郷野さん自身が第3部ですでに回答しているのです。天体の写真は自分の眼の中に撮るべきコンセプトやアイデアがあると思っていたが、そうではなかったと。天体そのものの被写体にもそのコンセプトやアイデアがあるのだと。そこを写真にしなくてはならないというのです。

★そして郷野さんは、その「自分に囚われないで」学び続けることができる大学を選んだのだと。自分に囚われない学びに挑戦し、自分に囚われないからこそ創造性は拡張し、自分に囚われないからこそ貢献できるのです。工学院の校訓をそのまま深めた郷野さんだったのです。

★そして、仲野さんも、また同じことを語っていたのです。自分の殻を何度も破ってきた苦行。それが6年間だったと。もちろん苦行だから苦しくて辛いのではなくて、だからこそワクワクして立ち臨んだのでしょう。

★仲野さんは、このような二人のことを自ら「変態」と呼びます。このシリーズの一回目に〇〇だからこそこの苦行を乗り越えることができたのだと紹介しました。この〇〇にあてはまることばこそ「変態」だったのです。

★もちろん、この「変態」という意味は、スティーブ・ジョブスがApple社に帰還した時に創った有名な動画広告のコンセプト<think different>のことです。ピカソやアインシュタイン、フランク・ロイド・ライト、キング牧師、マリア・カラス、バックミンスター・フラーなどの表情を次々と流し、クレージーな個人が世界を変えてきたのだと語るCMでした。

★21世紀型教育が目指すクリエイティブクラスのロールモデルとなった動画です。田中歩先生は、もう一つの意味の変態を付け加えました。つまり、自己変容という意味です。

★仲野さんは、総合型選抜は自分の興味や好奇心のあることをとことん追求していく生き様と大学の欲する学生像のマッチング。自分だけではなく、大学という相手をもどう巻き込めるかなのかだと。こんなことをやり抜くのは変態でないとできないと言うのです。

★仲野さんも郷野さんもジョブスのクレージーラインナップに登場する人材だったということでしょう。ジョブスのCMの最後の1人は、無名の少女が目をパチッと覚醒したところで終わります。

★さあ、あなたもクレージーになろうよというわけでしょう。二人はそれぞれの道でクレージーな道をこれからも継承していくでしょう。

★今回、二人に感動的な対話をいただきました。二人のような生徒が過ごせる工学院。田中歩先生も静かに情熱を燃やし、明日への戦略を練っていることでしょう。

★ヘルマン・ヘッセがこう語っているのを思い出しました。

<わたしたちのこの手に包まれている一つの希望とは何か。自分自身を今日いくらかでも変えることだ。昨日までよりも善く変えていくことだ。本当にそのことを実践する人々にこそ、世界の幸福はかかっている。 書簡 1950>「ヘルマン・ヘッセ. 超訳 ヘッセの言葉 (Kindle の位置No.340-343)」 

★仲野さん、郷野さん、田中歩先生、まことの希望をありがとうございました。

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2021年中学入試情報(08)埼玉エリアの私学教育の価値の変化の兆し

★今月10日から、埼玉エリアの私立中学の一般入試がスタート。つまり、首都圏中学入試が本格的にスタートします。中学入試はインターネット出願ですからギリギリまで応募者は増え続けます。そんな中で、1月10日の埼玉入試ですでに前年対比100%を超えている入試が9件あります。

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1:西武学園文理 第1回  167%
2:武南 第1回午前  165%
3:浦和ルーテル学院 第1回  157%
4:本庄第一 第1回/単願  129%
5:星野学園 理数選抜/第1回  128%
6:狭山ヶ丘高校付属 第1回  126%
7:星野学園 進学クラス/第1回  124%
8:春日部共栄 第1回午後  111%
9:聖望学園 第1回  102%

(日能研倍率速報1月6日現在)

★こうしてみると、埼玉エリアの私立中学が、大学進学実績だけではなく、グローバル教育やICT教育も含め教育イノベーションにも価値を置く学校が多く並んでいるのが目につきます。

★やはり、大学進学実績第一主義の時代は去ったようです。とはいえ、大学進学実績を出すことはマストということでしょう。ついこの間までは、進学校か21世紀型教育校かという価値選択でしたが、今や両方が統合されている学校に人気が出る傾向になってきたようです。

★西武文理も、手厚い進学指導体制に、教育イノベーションも加え、新しい息吹が学内に吹いていますね。パンデミックによるオンライン学習を導入にチャレンジしたということも功を奏したのでしょう。

★武南や星野学園、春日部共栄も同じような流れです。

★また、浦和ルーテルはプロテスタント校ということもあり、青山学院大学系属校になり人気がでました。

★そんな中で本庄第一は興味深いスタンスで人気があります。中学段階で他私学への進路を開く高校入試指導もしてしまうのです。埼玉エリアはまだまだ公立王国ですから、そのマーケットを大いに活用するという戦略なのでしょう。

★とはいえ、入学したら同校の魅力に、やはりそのまま高校に進学しようという生徒が多くなればよいのです。そうなるには、ニーズにきちんと応える教育の質や魅力をアップデートし続ければよいわけですから、このような戦略もありですね。

★とにかく、今回のパンデミックはまだまだ収まりそうにありません。多様な戦略の工夫が必要となります。

★ただ、その戦略が多様であっても、行き着く先は教育の質のアップデートと教育イノベーションへの進取の気性がさく裂するということは間違いがないのです。何せヘルスとインテリジェンスとマインドすべてに目配りしなければ、パンデミックは乗り切れないのですから。

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2021年1月 6日 (水)

2021年中学入試情報(07)かえつ有明が躍進するわけ 1月29日、副教頭佐野先生をお招きし対話する予定です。

★首都圏中学入試がいよいよというときに、まずは、かえつ有明の国際生入試は終わりました。トータルで、696名の応募(11月から12月にかけて3回ありました)があったのです。やはり今年も人気があります。同校の英語力を有した生徒の力は入学後多方面にわたりプラス効果を生み出しますから、かえつ有明の新中1の学びの豊饒さはほぼ決定づけられたも同然です。

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★エっ!かえつ有明は帰国生頼りなの?と思われるかもしれません。いいえ、そうではありません。2科4科の定員は100名/180名ですから、56%を占めます。帰国生は定員40名ですから、占有率は22%です。2:8の論理で、シナジー効果が生まれるという意味で、帰国生の受け入れは今やどこの学校も大切になっています。グローバルな時代です。英語というよりダイバーシティというわけです。

★しかし、上記の表にあるように、思考力入試とAL入試で30名定員があります。17%です。20%には手が届きません。ところが、国際生入試が2月2日にあります。この入試は帰国生とは限らないのです。2020年は小学校5年生と6年生で英語は教科化され、4技能が重視されるようになりました。ですから、国内で英語を学んでいるだけで受験資格はあります。

★この3種類の試験は、思考力と言っても批判的・創造的思考力を要しますから、2科4科テストとは違う考える体験が必要です。今年は、大学入試でも総合型選抜が相当難しくなっています。オリジナルの体験と高次思考力が問われるようになってきたのです。

★かえつ有明は、それよりも随分前からそのレベルの思考力入試を行ってきたわけです。中学受験に合格するための勉強ではなく、小学校段階から自分の人生を探究する学び=人生そのものの探究が始まるわけです。

★グローバルな時代はこれからは多言語が必要です。AIによってすぐれた翻訳機能が出てきますから日常会話や研究論文は問題がないのですが、人間関係を広め深めるには、AIではできない部分が相当あります。論理の前に直感や感性が必要だからです。

★つまり、交渉は、すでにある情報を素早く正確に読み解くのではなく、隠れた感情や想い、情報を推理しながら未知の世界を開いていくことですから、今のところまだまだAIではできない部分もあります。

★ですから、バイリンガルぐらいにはならなくてはという時代を止めることができません。言語が多言語になると、思考も多角的になります。言語や文化の差異を理解しながら推理しながら共感する関係を創っていくからです。

★そういう意味では、英語と思考力において、帰国生であれ、国内生であれ、優れた生徒が20%以上いると学内はシナジー効果が生まれるのです。これは脳科学的にも証明されています。新しいものやひと現象と交流すると脳は刺激を大いに受けるのです。ワクワクするのはそういうことです。2:8の論理は古いパレート最適という考え方ですが今も通用する考え方です。

★ところが、かえつ有明は、2月1日前の国際生入試と2月2日の国際生入試を合わせると50名の定員になります。それに思考力入試の定員を合わせると80名になります。占有率は44%にもなります。

★2科4科の生徒だけと比較して、知的ケミストリーがどちらの方がエネルギがーが生まれるかいうと、言うまでもありません。

★しかも、2科4科で入学してきた生徒も全員アクティブラーニングの授業を体験していくわけです。高校入試もプロジェクト科が1クラス入試を行いますが、このクラスは破格のアクティブラーニングクラスです。中学からの生徒に負けません。

★かえつ有明の偏差値が近年難しくなるのは当然です。従来は圧倒的に2科4科の生徒が多かったのです。ところが今や2科4科では定員の56%しか入れません。狭き門になっています。それでも、果敢に挑戦するのは、生徒が自ら考え自ら判断し、自ら探究していくことがいかに魅力的かということだし、それができる物心両面の安心安全を生み出す教師力があるからです。

★このあたりのことは、1月29日(金)、入試直前ですが、GLICC Weekly EDUでゲストとしてお招きする佐野副教頭と対話したいと思います。お楽しみに。

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工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④

「工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③」のつづき

★仲野想太郎さんは、高2のグローバル・プロジェクトでは、ベトナムのチームのリーダー。高2のMogではカンボジアに参加し、そこでの現地の人びととの起業構築と実際の運営で成功。現地の人々に喜ばれました。そのときもリーダーでしたから、ベトナムでもうまくいくと自信をもって立ち臨んだといいます。

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(左上仲野さんの写真は、生徒会大賞受賞時に右上郷野さんの撮影)

★ところがです。10日間のプログラムでしたが、用意周到に現地の人と対話し、計画も立て、前回の経験を踏まえて運営したわけですが、その起業は失敗に終わりました。すでに制約された期限の半分の5日間が経ってしまったのです。オーストラリア研修で、英語のプログラムを場所を借りてやるのではなく、現地の授業に参加せて欲しいとコーディネーターや現地の先生方と交渉して、それを実現することに成功した自信、とれるはずがないと変態扱いされても、変態大いに結構と生徒会大賞をねらって獲得した自信、カンボジアのMogに参加し、見事に起業を成功に収めた自信、そのすべてを、この5日間の情熱に注ぎ込んだのに、すべてが崩れる落ちる「瞬間」だったそうです。

★がしかし、仲野さんは、情熱だけではダメなのだと思い起こし、何が間違っていたのか対話していったら、起業のパートナーが違っていたということに気づいたそうです。カンボジアは現地の人々がパートナーで、いっしょに考えたし、マーケットに参加するのも彼らでした。

★ところが、今回は宿泊先はホテルの人で、ホテルの人といくら話し合っても、今回のクライアントパートナーは観光客だったということに気づきました。観光客のニーズを全然掘り起こしていなかった。そこで観光客にアンケートの協力を仰いだわけです。そこで、クライアントパートナーの欲するものがわかり、再起業することができました。見事に成功です。

★情熱は必要だが、実績を残すための戦略も必要なのだということを改めて学んだそうです。そして、何より、国によって地域によってマーケティングの方法が違うのだと。だとすれば、このマーケティングのパターン分析を調査し理論化したいと。それが総合型選抜のモチベーションになったわけです。

★この話を聞いた大学の面接官、つまり教授陣はさあいっしょに研究しようということになったのは納得がいきます。情熱と思考対話力とマーケティングイノベーションの視点を持っているのですから。それに、経営学では、アンケートは実はリサーチのためだけのものではありません。そのアンケートに参加したペルソナが、共感するような問いかけをすることがコツなのです。仲野さんの短期間でV字回復したのは、アンケートに協力を仰ぐ段階で、応援を取り付ける共感をシェアリングしていたということでしょう。冷たいアンケート項目か熱いアンケート項目か、確かに情熱だけではだめですが、情熱がなければアンケートの段階で成果をあげられなかったでしょう。

★さて、一方の郷野翔太郎さんは、グローバルプロジェクトでは、カンボジアに行きました。そこで見つけたのは、実は仲野さんと違って、起業構想から外れた路地ででした。もともと生徒会誌「芙蓉峰」の編集をしていたわけですが、そのとき学内の各イベントの様子を写真撮影して編集していました。

★総合型選抜の時に、その写真がポートフォリオの一環として提出されたわけですが、面接官である教授陣は、ハッとしたと思います。なぜなら、たとえば、私が取材で写真を撮りに行ったとしても、記事掲載の時に写真があったほうが見てもらえるという功利主義的な考えのスナップを撮るだけですが、郷野さんのアングルは、写真の向こうに工学院の生徒の生き様や感情や情熱が伝わってくるのです。そんなショットが選択されて掲載されているのです。

★郷野さんの撮影した生徒会長仲野さんの写真も、軸のブレない、挫折を乗り越える明るいエネルギーの塊感を表現しています。郷野さん自身が、仲野さんのメンタルモデルをそう明快に表現していますから、そのコンセプトが見事に宿っています。

★ですから、郷野さんは、カンボジアに行ったとき、自分たちが行っている起業はなかなかいいものだけれど、カンボジアの姿そのものを本当に感じ取っているかとふと思い、路地にむかったそうです。そこで見た光景を写真に収めました。そしてそれがポートフォリオに掲載されています。

★なるほど、これで総合型選抜にパスしたのだと私は思いました。ところがです。郷野さんの話はそこからが大事だったのです。(つづく)

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工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③

「工学院Z世代の未来の開き方(02)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん②」のつづき。

★仲野さんと郷野さんの6年間のポートフォリオに耳を傾けて共通していると感じたのは、①高感度なセンサーを有している。②それゆえ、オリジナルの視点をその都度生み出せる柔軟さがある。③グローバルでありながらローカルなあるいは出会った人々の課題を引き受けるマインドを有している。④解決策をどこかから持ってくるのではなく、その場で協働しながら生み出す対話思考力がある。➄そして、それを具体的な経験で終わらせることなく、独自の理論構築へというクリエイティビティがある。⑥GRIT MindとGrowth Mindsetを実装しているという点です。

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★二人は、工学院という同じ学びの場にいたし、生徒会やMog(Mission on the Ground)プログラムにも同じく参加もしていました。そして、その経験を通して、それぞれの道を見つけ、仲野さんは成城大学経済学部経営学科に進むことが決まり、郷野さんは日本大学芸術学部写真学科に進むことが決まりました。共通経験をしながらも、それぞれの才能を豊かに広げ深めたわけです。デューイやシーモア・パパートではないですが、経験から学ぶということは、経験と各人の才能がケミストリーを起こすということであって、この経験をしたからこの情報や考え方を学ぶのだという教育方法論が明らかに間違っているということを、二人は証明しています。

★ただ、もしも先述した6つの能力(①高感度センサー ②オリジナル視点を柔軟に生成 ③グローカルな最近接課題発見マインド ④解決策を協働して創出する対話思考力 ➄マイセオリー構築のクリエイティビティ ⑥GRIT Mind×Growth Mindset)がないと、教師のインストラクションデザインの枠組みの中で情報を得て終わってしまうのでしょう。

★仲野さんは、生徒会長として、全国から集まる生徒会のフォーラムに参加し、視野を広め、生徒会が学内の多様な面で新しい発想や動きを創ることができるのだと気づいたわけです。従来行われてきたことを慣習的に継続するのでは、学校を支える生徒のマインドは、1人ひとりばらばらになり、学校に集うワンチームとしての意味が消失するのではないかと気づいたのだと思います。

★世界はもともとあったものがあり続けるのではなく、その都度そこに集った人々が自分たちに適合するように新たな世界を創りづけることによって持続可能に存在するのであるということですね。最近若手の新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルが主張していることです。もともとは、ミヒャエル・エンデが「モモ」や「ネバ―エンディングストーリー(はてしない物語)」で語っていたことにガブリエルも共鳴しているわけです。最近NHKがマルクス・ガブリエルや「モモ」を取り上げる番組を放映していますが、二人は、そして田中歩先生も、その時代の先進性と共鳴していると言えます。もちろん、無意識のうちでしょうが。

★ともあれ、仲野さんはその活動で、生徒会大賞を受賞するというのはすでに述べましたね。もちろん、郷野さんとの協働があってこそです。

★それから、工学院の数多くのグローバルプログラムに参加した経験が仲野さんの世界をどんどん新しく豊かにしていったようです。もともと、中3の夏に、学年全体がオーストラリア研修を行っていました。この研修は、筑波大駒場の副校長城戸先生が工学院の校長に就任していた時代、おそらく1999年ころからだったと思いますが、そのとき創られたプログラムです。

★「創造・挑戦・貢献」という校訓が筑駒と同じなのは、城戸先生の影響だと思います。城戸先生は、世界文化遺産やユネスコの事業にもかかわっていたグローバルな方だったし、執筆活動も旺盛でした。現代思想に造詣が深く、私が岡部先生(今は工学院の先生)とNTS教育研究所を創設した時に、そのコンセプトメイクのときの指南を受けました。理論と現場の現実を結ぶ視点が弱いと何度も何度も突っ返されました。その視点を発見する私の探究の道が始まったのはそのときからです。

★研究所のお披露目も兼ねたセミナーをブリティッシュヒルズで行ったときも同行していただいて、アドバイスやフィードバックをもらったのを今も鮮明に覚えています。つくづく工学院には縁があるなあと感慨深いですね。

★さてしかし、田中歩先生方は、なんと当時破格のオーストラリア研修に加えて、いくつもグローバルプログラムを開発実施したのです。私にはいくつあるのか把握しきれません。というのも、年中行事化しているものもあれば、そのときどきに生まれるものもあるからです。国際コンテストなどは、必ずしも毎年行われるとは限らないし、そもそも大人数で参加するようなものは、海外ではあまりないのです。

★それがグローバル教育というもので、同じ場所に集団旅行する修学旅行は、日本独自の行事で、海外ではそれはレアケースです。工学院の先生方のグローバル教育に対する柔軟な対応力がさく裂した6年間でした。生徒中心主義の工学院ですから、一握りの生徒が体験すればよいという教師主導のご都合主義は排除されます。

★最も代表的な例は、高2の後半で実施されるグローバル・プロジェクトです。工学院のグローバル教育の集大成ですね。幾つもの国に分散して、SDGsと関連する課題発見と解決をチームで乗り切ります。現地の人びとと協働するのも大きな特徴です。今年の高2はパンデミックでリアルには体験できませんでしたが、オンラインで乗り切りました。これもまた新しいテクノロジーの創出です。

★仲野さんと郷野さんはそのグローバル・プロジェクト(GP)も一期生です。そして、そこでそれぞれに感じ、新しい着想が生まれ、解決のためにそこで終わるのではなく、新たな大きな課題を引き受けます。それまでの二人の経験が、GPとの経験とケミストリーを生み出したのでしょう。総合型選抜で自らを語る時、大きなレバレッジになったのです。(つづく)

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工学院Z世代の未来の開き方(02)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん②

「工学院Z世代の未来の開き方(01)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん①」のつづき

★田中歩先生とは、ハイブリッドPBL、CLIL、思考コード、プロトタイプーリファイン、共感的コミュニケーション、Growth Mindset、GRIT、生徒中心主義、置換スキルなどのことばは、いつもシェアしています。仲野さんと郷野さんの6年間の工学院の生活は、田中歩先生が生徒と共にこれらの気づきと発見と開発をすることによって、生徒といっしょに実装してきた学びです。<共に>というのがとにかくキーワードだと思います。

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★田中歩先生との対話は、心理学的でも哲学的でもありません。もちろん、そういう話にもなりますが、それはあくまでも客観的な情報や知識として活用されるにすぎません。生徒中心主義=生徒の生きざまと教師の生き様の共創=多様な経験のPBLデザインを生み出す理由のシェア=いまここで生まれる未来を共にゲットする=いまここでその未来を創る=学びは人生の準備ではなく人生そのもののプロトタイプ=etc.と次々と置き換えていく対話です。毎回新しい気づきがある対話ですね。

★それは、生徒とだけではなく、教師とのやりとりでも同じです。ですから、田中歩先生の対話は高感度な共感的コミュニケーションなのだと私は思っています。生徒といっしょに経験することで、新しいものを見出すわけですが、なぜ気づくか?それは他の人では気づかないつながりを見つけるということでしょう。つなげるとは、「置換」スキルを発動するということです。

★差異があるということを意識するがゆえに、そこに共通点を見出す「置換」スキルを発動させるわけです。アリストテレスは、ミメーシスと言っていますが、欧米のリベラルアーツの重要なキーコンセプトです。ただ、科学が発展して、マシーンモデルが浸透した時、この概念は欲望資本主義からは排除されかかりました。決められた体系以上でも以下でもない。余計な「置換」をするなというのが、デューイが闘ったヘルバルト主義という20世紀教育です。

★しかし、この固定された体系は、はじめは合理的で効率が良かったのですが、みなさんもご承知のように、というかいままさにパンデミックで身に染みてわかっているように、大きなゆがみや亀裂、分断を生み出し、SDGsの運動をおこさなければならないほどの情況を生み出したのです。

★1972年からその警鐘は鳴らされ、デューイ・ルネサンスが、現代思想の中でネオ・プラグマティズムとしてウネリ始めます。しかしながら、教育の世界ではなかなかウネリませんでした。しかし、2011年3月11日を契機に、21世紀型教育を標榜してPBLを教科学習の中に取り入れるという挑戦と創造と貢献を旗に掲げた学校がありました。その先鋭的な学校の1つが工学院大学附属であり、仲野さんと郷野さんは、その流れの1期生だったのです。

★そして、田中歩先生は21世紀型教育を標榜する仲間の学校とパートナーシップを生み出しながら、学内外のリーダーシップを発揮していくわけです。そして、世界同時的にデューイに影響をうけた多くの人々のPBLがさく裂しはじめたのも、田中歩先生方の活動とシンクロしています。グローバルな動きをすることによって、田中歩先生は身をもってそのことを感じていきます。

★この6年間は、グローバル・リセットのウネリだったわけですが、教育という領域で、あるいは教育の領域を超えて、牽引した動きをしていた学校の1つが工学院なわけだし、それゆえ仲野さんと郷野さんは、この時代を切り拓くまさにモデルなわけです。

★総合型選抜に挑戦してクリアしてきた二人のポートフォリオは実に重要な意味があるわけです。(つづく)

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2021年1月 5日 (火)

「教育とは生き方そのもの」へシフト(02)デューイ・ルネサンスはPBLの実践の中で生まれる。

★今年2021年は、デューイの「民主主義と教育」が出版されて105年。2016年にはその100周年記念で、各国でシンポジウムやセミナーが行われてようです。日本でも、日本デューイ学会がデューイ研究を行い、その成果が昨年12月に出版されました。デューイの教育思想の現代的意義が多くの学者によって投稿されています。現代の教育の課題をデューイならどう考えるかという着想で書かれているため、多くの学者が日本や世界の教育の課題をどうとらえているかがわかるかもしれないと思い購入しました。

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★デューイのアート教育と民主主義のつながりを現代化するという課題やそもそも民主主義を教育にどう結びつけるかデューイは解答していないとかデューイの職業教育に対する考え方が、当時から進路先教育を批判していたということなどなどなるほどなるほどとわかりやすかったですね。

★ただ、教育思想として教育学の枠内で語られているので、デューイが「民主主義と教育」でヘルバルト主義を批判する文脈で語っている箇所をPBLのエッセンスと捉える見方はなかったようです。

★民主主義と市民社会と教育を結びつけるのは、デューイにとってはPBLです。直接この言葉をデューイは同書では使っていませんが、別の書物である「考える方法」においては、「コンストラクション」と「プロジェクト」は多用しています。

★そして、そのPBLを人生の準備として扱うのではなく、人生そのものだと捉えるのです。

★デューイのこの着眼点でみるから、民主主義と市民社会と教育は結びつきます。職業教育を進路先教育ではないとするところに、民主主義を国家による実現ではなく、生活そのものの中に創り上げようとするデューイの斬新な発想があります。

★国家というシステムは、民主主義のすべてではなく、民主主義を運営する一つの装置に過ぎないのに、生活をそれに従わせるのは人間をないがしろにすることではないかというわけです。デューイはあくまで哲学者であって、教育学者ではありません。

★教育学者という枠内でデューイ再評価しても、現代思想のネオプラグマティズムの枠内で再評価しても、それはそれで何が問題なのかを露にするという点で貢献していますが、教育は人生であり、民主主義や市民社会も人生そのものなのだというデューイの考えを実践にシフトすることはできません。

★そのためには、PBLとは何か、なぜ必要なのか、エエーイ!デューイが今実践するとしたらどうするのか創ってしまおうというのがポイントですね。

★いずれにしても、デューイが哲学的に究めようとした主観と客観を分けることによって生まれるディストピアを阻止する学びとは何かは、ハイデガーをどう超えるかということと結びつきます。

★なんだやっぱり哲学の話ではないか?と思うかもしれませんが、ここには重要な意味が隠れています。主観と客観の二項対立を解決する方法は、日々生きている私たちの生活に新たな道を開くことになるという意味です。やはり21世紀は教育の時代だったということですね。

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GLICC Weekly EDU(09) 2021年学びの取り巻く環境は、デューイだったらどうするか考えれば見通せる。

★昨日は、GLICC Weekly EDU 第11回 新春企画対話でした。テーマは「2021年の幕開けに寄せて―『学び』を取り巻く環境はどう変わるのか 」。主宰の鈴木裕之代表と私立学校研究家本間が対話をしました。ときどきカメラが充電切れを起こすなどハプニングなどもありましたが、2021年はこういう変化にどう対応するかが大切、まさに今年を象徴した対話になりましたと鈴木さんは機転をきかしていました。さすがです。

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★2020年ではっきり見えたこと、それは、デューイのいう構成主義的な学びができる学校や塾がどこだったかということです。今年125周年を迎えるシカゴ大学のラボラトリースクールは、デューイが自身の理論と現場の教師と協力して立ち上げた学校です。

★昨年、ブラックホール発見に貢献してノーベル物理学賞を受賞した科学者の1人アンドレア・ゲッズ教授も同校の卒業生です。数多くの才能者を輩出しています。同校のサイトにある動画を見ながら対話をしました。

★静岡聖光学院、聖学院、工学院、三田国際、かえつ有明、日本女子大附属豊明小学校などの例を出しながら、デューイ学校にイメージがかなり近いことを対話しました。これらの学校は、御三家には似ていないけれど、デューイ学校には似ているのです。

★このことは何を意味するのでしょう。鈴木さんが、「世界標準」と表現していました。

★そういうことです。

★そして、デューイの時代には、まだ宇宙船もタブレットもITによる新しい脳科学の成果もありませんでしたから、もしデューイが今の世界にいたら、もっとおもしろいことをやっていただろうと。

★だから、2021年はそれを追究する学校がでてくるだろうし、塾も同じであると対話しました。

★シリコンバレーのHTHは、たしかにおもしろいのですが、限られた生徒の才能を育むだけではなく、すべてのこどもの才能を開花する環境をとなれば、それはデューイの発想の中にあります。

★GLICCを鈴木さんが創設するときに、話し合ったのは、普遍的な世界標準に対応できる環境を創ろうということでした。ですから、デューイのPBLを土台にしている洋書を探しました。その署はブルームのタキソノミーもインテグレイトしています。

★また英語の教材も、その理論が適用されているものも探しましました。

★もっとも、テキストは素材に過ぎないので、それをどう使うかが大事で、それをデューイの発想をベースに講師のみなさんと共有しようということだったのです。

★GLICCは外国人講師とGLICCの卒業生である帰国生が多いので、この考え方はもともとなじみやすいのです。

★私も、自然と社会と精神の循環世界を創る多様な才能の結合を教育を通して目指していますから、デューイとはシンクロします。それがデューイの「経験と自然」という著書を読んで、改めて共鳴しました。

★鈴木さんとは、ハーバーマスのコミュニケーン行為論や認知科学、ヴィトゲンシュタイン、ガタリ、ベイトソン、ブルーナー、ピアジェなどを読みながら議論して、ある中学受験塾の小3から小6のカリキュラムをデザインしたことがあります。当時のコンセプトは、その塾の渋谷校に訪れたアルビン・トフラー夫妻の「21世紀は教育の時代」をうたった「パワーシフト」と共鳴していました。

★基本的にはそのラインは変わていません。これらの流れは、構成主義でデューイとも交差します。

★PBLをずとやってきたので、当然そうなるわけですが、外国人講師と対話する時は、やはりデューイやブルームの理論でなければすぐに共有できなかったのです。

★現代思想や哲学の中では、ニュープラグマティズムとしてデューイ・ルネサンスは起こってきました。いよいよ教育においてもデューイ・ルネサンスが生まれる予感がします。

★デューイ学校は、私立学校のみならず、公立学校にとっても親和性のある教育です。デューイ学校かIB学校か、Aレベル学校かどれを選択するかということでしょう。いずれもすてきです。あとはお金の問題ですね。

★いずれにしても、デューイだったら、インターネット空間とリアル空間の両方を使うハイブリッドPBL環境をつくるでしょう。そして、あくまで生徒が自ら才能を発展させていく環境とは何か。その環境はたんなる物理的な自然ではなく、内面としての自然だけでもなく、自然と社会と精神が結合したネットワークを身体につなぐ人間存在となるでしょう。

★デューイの構想は、主観と客観を隔てる幻想を打ち砕くことだったのです。その幻想こそが才能者と才能を発展できない子供の差を生産してきたからです。

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2021年1月 4日 (月)

「教育とは生き方そのもの」へシフト(01)グレートリカバリーの意味

★昨日、NHKの「ズームバック×オチアイ」を見ました。タイトルは<新春SP 「2021 大回復(グレートリカバリー)への道」>でした。「グレートリセット」ではなく、「グレートリカバリー」にしたのが、NHKらしいし、落合陽一さんらしいなあと、どんな展開になるのか興味があったからです。

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★落合さんは、リチャード・フロリダの「クリエイティブ・クラス」という言葉を、「働き方5.0」でキーワードとして使っているので、「グレート・リセット」を書いたフロリダの書にちなんで、「グレート・リカバリー」と名付けたのかと思っていたら、それもあったでしょうが、それだけではなく、今年のダボス会議のテーマ「ザ・グレート・リセット」と重なるのを避けたかったのでしょうね。

★というのも、ダボス会議の背景には、GAFAがいるので、番組の中でも語っていますが、GAFAという帝国には少し距離を置かなくてはということのようです。落合さん自身はデジタルという新しい自然と旧来の物質的自然をどう融和させるかを「働き方5.0」の中で追究していますし、デジタルアーティスでもあるわけで、テクノロジーを否定することはありません。

★それは友情出演してきたマルクス・ガブリエルさんも同様です。二人とも今ある世界が存在するのは、もともとあるのではなく、創っているからあるのであって、歴史的に多くの人々の協働物語作品だと。それこそが存在であって、はじめから存在しているのではないのだと。これは、デューイともシンクロします。

★だから、有ると思って、油断していると、ミヒャエルエンデの「果てしない物語」のように、その世界ファンタ―ジェンは虚無に飲み込まれるよと。そうならないように、世界を楽観的に創っていこうよというのです。デストピアのシナリオではなくユートピアのシナリオを描こうよと。

★まさにプロジェクト学習ですね。

★私がPBLを学校の先生方と行っているのは、まさにそういう意味です。教育は大学進学のための準備期間ではありません。生き方そのものの学びであって、学びは生き方そのものです。どう生きるかそれを学ぶには、PBLだよねとデューイは語り続けたのです。

★教育と市民社会が、民主主義を創り続ける2極であり、それは引き合っているわけです。そういうわけで、シカゴにラボラトリースクールをつくったのです。

★この学校は、今年創立125周年を迎えます。しかし、それがデューイが求めたものであるかどうかはわかりません。デューイが行っていたのは9年です。資金調達がたいへんだったということです。デューイは「学校と社会」の印税を資金に当てていたらしいですね。その当時にPBLなんて受け入れられなかったからでしょう。

★デューイが「民主主義と教育」の中で、自分の理論とはなぜ違うのかと論理的にヘルバルト主義を批判しているのですが、この構図は21世紀型教育と20世紀型教育の違いに重なるのです。パンデミックで、21世紀型教育はポジショニングを得ましたが、デューイの時代は、パンデミックも世界大戦もあった時代です。

★国家のために戦う人材を生産しなければならにときに、そんな悠長なことは言ってられないという古いパラダイムがあったのだと思います。

★しかし、今もパンデミックはまだまだ猛威をふるっているし、油断すれば世界戦争も起こりかねない緊張状態を持続しているわけです。ただ、、デューイの時代と違うのは、化石燃料の覇権争いから新しいエネルギー創出の時代に変わってきたということでしょう。

★インターネットやコンピュータの発達が、遺伝子工学や生命科学を爆発的に発展させ、エネルギー再生の新しい道がどんどん生まれています。

★しかし、パンデミック以前は、既存の経済システムが、それを歓迎してこなかったのです。既得権益が、大量消費、大量生産、大量移動、大量情報の歯車の回転を止めようとしなかったのです。

★ところが、パンデミックは、この歯車を世界同時的に止めてしまいました。それでも、人間は生きなければならないのです。SDGsはパンデミック以前は、大量消費・大量生産・大量移動・大量情報を止めるのではなく、それらが引き起こす負の部分を抑制する方向で動いていました。

★しかし、今回のパンデミックで、大量消費・大量生産・大量移動・大量情報そのものを見直す、つまりグレート・リセットし、グレート・リカバリーしよというわけです。

★まだまだ、エネルギー問題は好循環になっていません。それゆえ、経済とニューノーマルな生き方はジレンマを解消できていません。

★にもかかわらず、ここを突破するには、私たちは新しい経験と新しい自然に対する考え方を生みだす必要があります。デューイは「経験と自然」という書で、すでにその方向性を語っています。なるほど、ローティが、デューイを読み直して、新しいプラグマティズムの道を開いたはずです。

★しかしながら、それは哲学の牙城の中での話で、社会実装に開かれていたわけではないのです。

★それがマルクス・ガブリエルさんと落合陽一さんが出現して、そこを実装段階にするわけですね。

★私たちは、それを教育で行うとしています。シカゴのラボラトリー・スクールは、デューイをどのように継承しているかはわかりませんが、「教育は人生の準備ではなく、人生そのものだ」というデューイの言葉を大切にしています。それゆえ、人間は常にそして死に至るまで学び続けるのですね。

★教育も学びも人生そのものです。だとしたら、教育や学びの機会は学校だけのものではありません。道端の石ころからでも学べるとは詩人の言葉でしょうが、人生は、自らの才能を自ら見つけ開いていくことです。それはいまここにいる瞬間も同じです。ですから、あらゆる時間あらゆる空間が学びの過程なのです。ただ、自分のことは自分でわからないという哲学命題もあります。日々そこには黄金律があるわけです。つまり、あなたのしてほしいことを他者にもしなさいという対話という存在者がいるわけです。

★デューイがこの対話をinteractionではなくtransactionと語ったのは慧眼だったということですね。

★そして、人生そのものの教育や学びであるには、ヘルバルト主義はうまくいかないのです。PBLがキーになるわけです。ヘルバルト主義は近代国家主義的教育です。PBLを提唱し実践したデューイは、市民社会を念頭に置いていたでしょう。グローバル市民とはそこに位置づけられているわけです。

★日本の私立学校が、明治期にヘルバルト主義の官学と対峙しデューイ的なPBLを受け入れようとしていたのには重要なお意味があったのですね。戦後再び、ヘルバルト主義的に陥る私学もありましたが、2021年は、再びにデューイに立ち還るという動きが起きているのでしょう。マルクス・ガブリエルさんと落合陽一さんは、それが文化と倫理の復権という新啓蒙主義だと、番組の中で語っていました。

★大きな方向性が生まれました。同時に大事なのはそれぞれが自由に学ぶことです。人生は誰かに支配されるわけにはいかないのです。しかし、自分では自分のことはわからにのです。協働するしか誠の道はなさそうです。それには文化と倫理が確かに必要です。もちろん、自由を束縛するのではなく、自由を生み出す世界を創るために。

★そうそう、そして、脳科学のパラダイムが、同時に変わります。ニューロンだけが脳の働きを支えているのではなく、ニューロンとニューロンの間にある部分が大量に発見されたのです。従来の顕微鏡で覗くとき、そこにある液体が流出して、その存在を確認できなかったというのです。

★毛内拡さんの「脳を司る脳」は必読です。デューイは19世紀後半から20世紀前半まで92歳まで活躍していましたから、パンデミックも世界大戦も経験しています。それを民主主義と教育でなんとか問題解決しようというのがプロジェクトでした。ノイマンコンピュータも験しているし、そもそもライプニッツが計算機の土台を創っていますから、デジタルな自然も予感していた可能性があります。とはいえ、ノートパソコンを見たわけではありませんから、落合陽一さんの考える新しい自然概念までは到達していなかったでしょう。

★ですが、自然概念を広げる論を展開はしていたのです。

★ヘーゲルを超えようとしていたのは、まさにマルクス・ガブリエルさんと同じ発想です。

★しかし、さすがにIT発達に伴う脳科学の躍進までは捉えていなかったでしょう。

★デューイに還るも、さらに新しいプロジェクトが立ち上がるという意味が教育におけるグレート・リカバリーの意味だと思います。リカバリーとは、意味を創ること、世界を創ること。それがファンタ―ジェンを持続可能にするでしょう。

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2021年1月 3日 (日)

Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(3)アップデートを続ける新しい組織を創る

「Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(2)」のつづき。

★昨年末、CEO五十嵐健太さんの「Fresh Service合同会社」のサイトが公開されました。先日の五十嵐さんとの対話を合わせて閲覧してみると、改めてなるほどと感心してしまいます。

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★高校生でもあるので、株式会社にするのではなくて、合同会社にしているところがなかなか考えているなあとまず思います。NPOにしないところは、まず税金をあてにしないで、独立精神を前面に出しています。社団法人にしないのは、社会的信用を社会貢献を看板にしないで、あくまで、自分たちの想いと行動とアイデアで信頼の輪を広げていくことの現われです。

★財団法人にするには、最初のお金が必要ですから、そうはしなかったのでしょう。合同会社として、お金をかけずに自由に社会貢献活動、つまり奉仕という意味でのサービスを行っていくという断固たる決意を感じます。

★合同会社ですから、社員は無限責任です。ですから、社員以外のメンバーの呼び名はパートナーズとしているのも心憎いですね。パートナーだから、指示されたことを行う働き方が求められているわけではないのです。

★パートナーの採用やステップアップは、定期的に契約交渉というプレゼンがあります。自分はいったい仲間に何を貢献できるのか、何が出来るのか、どこまでやるのか、そしてどれほど情熱と愛があるのかをプレゼンしなければなりません。この情熱と愛は特に大事です。これについてはいずれ述べます。

★ともあれ、その交渉的な試験は、オーディションさながらで、ルーブリックで行っていくそうです。そういう意味では、五十嵐さん自身、「うちの人事制度は、なかなか厳しいと思います。横と比べる相対評価でもなく、いわゆる絶対評価でもなく、自分自身の評価を私たちの想いとマッチングさせなければならないのですから」と。おお、スタンフォード大学のフェッターマン教授のエンパワーメン評価の発想とシンクロしつつ、さらにブラッシュアップしているではないかと驚きました。

★サイトにはこうあります。

「2020年、新型コロナウイルス感染症により多くの人が困り、社会課題が露わになりました。 私たちは都心の子育て世代や地方の農家・生産者にスポットライトを当てた組織です。 人間には生まれ持った才能・賜物〈GIFT〉が一人それぞれ個性豊かなものが必ずあります。Fresh PartnersではひとりひとりPartnersの才能・賜物〈GIFT〉を最大限尊重し発揮できる 空間創りをお約束いたします。皆さんのGIFTをこのFresh Partnersで活かしてみませんか?
皆さんのご応募を心よりお待ちしています。」

★そして、パートナーズとして活躍すると何を得られるかということが明快に書かれています。

01.自分のGIFTを最大化できる
02.自分のレベルアップを体感できる
03. 他の学生よりもたくさんの社会経験ができる

★得られるものは、金ではないということです。では何のための会社なのか?パートナー一人一人が、今ここから未来に到るまで、「成長し続けるGIFT」を見つけるためだというわけですね。ここでお金を稼げなくても、大学卒業後は、万全でしょう。

★これは、別の言葉で言えば、<クリエイティブクラス>としてのポテンシャルを見つけ豊かにしていくネットワークとマインドとスキルを身につけられるよということでしょう。

★Fresh Serviceとは、商品が新鮮だということとパートナー1人ひとりのGIFTを大切にするために、常に自身が挑戦し変容していくサービス=奉仕を協働していこうということだったのですね。

★五十嵐さんと対話していると、なんだ聖学院自身が同じような組織になれば、さらに発展するじゃないかと思ったら、五十嵐さんは、将来教師になりたいし、そのときもし、パラレルワークができるようになっていたら、合同会社は続けるが、そうでないときは会社の持続可能性を考えて、仲間に任せて行けるようにするということでした。

★なんと、学校経営についても教育についても熟慮しているからこそ、このような合同会社にしたのだなとふと思いました。そして、五十嵐さんは、間髪入れずに、「私の好きな理論は、ハワード・ガードナー教授の多重知能理論なんです」と。

★ああ、なるほど、そこなんだなあと。だからパートナーズは、自分自身の才能を見出し、大切にし、行動しながら豊かにしていくという発想になるわけだと。お金をかければよいのではなく、その前に、まずは創意工夫というブリコラージュ的な発想、つまり「野生の思考」はガードナー教授もリスペクトしています。五十嵐さんは、自分のことをケチだと語っていましたが、置き換えると「野生の思考」の持ち主だということですね。

★そして、パートナーズだけではなく、Fresh Marketに参加する客も、実はパートナーで、生活そのものをそれぞれのGIFTを見出し大切にし豊かにしていく機会を<共に>生み出していくのだと。

★私たちは生産者や消費者、販売者や購入者の前に互いに生活を豊かにしていくパートナーシップを大切にする市民だったのです。だから、マーケティングはペルソナマーケティングでなければならなかったし、責任を分かち合う合同会社でなければならなかったわけです。法律上の会社形態に則りながらも、全く新しい経済共同体組織を生みだそうとしているわけです。

★2021年は、本ブログで幾度となく触れていますが、「ザ・グレート・リセット」の時代であり、強欲資本主義から才能主義的資本主義へパラダイム転換する時代です。GIFTという互いのタレントを大切にし豊かにしていく五十嵐さんの活動は、まさにこのパラダイム転換の一角をなすでしょう。(つづく)

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2021年1月 2日 (土)

八雲の真価×進化×深化×新価(2)八雲の野望②

「八雲の真価×進化×深化×新価(1)八雲の野望①」のつづき。

★菅原学年の卒業生ボッサム先生と大学院で出会った友人王先生が八雲学園で英語の教師をしているというお話は、前回しました。菅原学年の卒業生の意味はある意味これからのエポックをつくる人材を示唆しています。そうです、1995年直後に誕生しています。Z世代なのです。今中高生Z世代が注目されていますが、そのZ世代が将来何をやりとげるのか?そのプロトタイプがボッサム先生と王先生といっても過言ではないのです。

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★母校に返ってきたボッサム先生。そしてボッサム先生の友人王先生。Z世代が事をなすときは、ネットワークで動きます。母校の教育を知っているけれど、卒業後の様子は当然経験していないボッサム先生とまったく八雲教育を経験していない王先生。八雲の教育の総合力を創り上げてきた菅原先生。菅原先生とボッサム先生は教師と生徒だった時代もあるわけです。そしてアメリカから新風を運んできた近藤隆平先生。

★ボッサム先生は、卒業後も菅原先生を介して近藤隆平先生ともコミュニケーションをとってきました。

★この4人のネットワークがすでに、日本、中国、アメリカとなんとグローバルネットワークです。当然、この4人が動くとき、それぞれのグローバルなネットワークがさらにつながるのです。もともと、八雲学園の教育はグローバルネットワークを大切にしてきました。これがあるからこそ、ウェルカムの精神が発揮されているし、ウェルカムの精神があるから、グローバルネットワークを拡大することができるのです。

★ファンフェアひとつとっても、ものすごい外国人教師のネットワークとつながっています。イエール大学との国際音楽交流もそうですね。あらゆるイベントがそうなのです。無形の財産というのでしょうが、このリソースをお金を出して買おうとすると、とても1年間50万円では買えません。なんだかんだ年間100万ぐらいは学費がかかるのが私立学校ですが、公立学校だって、ちゃんと税金で同じくらい生徒1人に順当さているのです。

★それでも、私立学校を選ぶというのは、目に見えない無形のリソースに魅力があるからです。進学実績も大事ですが、重要なことは、先に進むときにどれだけ目に見えないネットワークと結びついて進めるかではないでしょうか。八雲学園を訪れて、それに気づく保護者がでてきました。中学受験はたいていは塾が行う進路相談に即して学校選択が行われます。

★しかし、ときどき、私のブログやYoutubeをみて、セカンドオピニオンよろしく、八雲の説明会に足を運んでみたという保護者がいます。そして、すぐに驚きのメッセージが届きます。日本にこんな学校があったんですねと。そして高校生が学校の紹介プレゼンしているのを聞いて、娘もいずれあのように活躍してもらいたいと。

★そういう方々は、ご自身が創造的思考力を使って仕事をしていたり、グローバル企業で日々英語で海外とやり取りをし、英語だけでの問題ではなく、文化や教養が重要だということを身に染みてわかっている方とか、医療現場でチーム医療の重要性やグローバルな専門知識の重要性に日々直面している方々が多いのです。

★だから、ピンとくるのかもしれませんが、そういう仕事のやり方は、今後あらゆる領域で広がっていくことは間違いがないので、八雲学園の教育はますます必要とされていくでしょう。それに、そのことに気づいた保護者は、これだけの教育リソースは、海外では年間300万から1000万かかるのに、八雲の学費で手に入れられるのは幸運ではないかということもちゃんと気づいています。

★今回4人の先生方とZoom対話しておもしろかったのは、グローバルネットワークの参加者だったがゆえに、おなじ対象を見ても、おなじ言葉を聞いても、感じ方や考え方が違っていて、八雲学園の新しい発見や気づきがあったことです。

★たとえば、王先生は、ウェルカムの精神は、たんなる「お・も・て・な・し」の作法ではなく、オープンマインドに通じる精神で、大学院で行うプロジェクトリサーチのときに必要な構えであると語ります。それは、自分が研究してきたことでもあり、それをベースに八雲学園の授業をするときにも、アクティビティをデザインしていますと。

★ボッサム先生は、母校の教育をそういう角度でみてもらえて嬉しいと。そしてそのような対話は、ボッサム先生を刺激します。自身が大学院で研究しているロールモデルエフェクトにとってもオープンマインドは大切なのだが、八雲学園にはなるほどロールプレイエフェクトの連鎖が次々と起こっていると捉え返しました。

★このことが、八雲の教育に新しい光を与えます。Z世代のコミュニケーション力は、まさにコミュニケ―ションによって発想を生み出すことなのですが、それが変容を生み出すパワーでもあります。物理的な革新性よりも精神的な変容が新しいカタチを生んだ行くというやりかたですね。排除したり、否定したりするのではなく、今目の前にある事に新しい光を当てることによって新たなケミストリーを起こしていくというやり方です。

★今回も、そのケミストリーが起こったのです。(つづく)

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2021年1月 1日 (金)

工学院Z世代の未来の開き方(01)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん①

★昨年末、工学院のZ世代仲野想太郎さんと郷野翔太郎さんとZoom対話の機会を頂きました。教務主任の田中歩先生と幾度も対話を重ねているうちに、2020年大学入試改革は一見とん挫しているようにみえるが、総合型選抜は、従来のAO入試と違うのではないか、もしかしたら何か変化が起きているかもしれないという話になり、いろいろ仮説をたてました。そうこうしているうちに、総合型選抜の結果がでてきたので、実際に合格した生徒にインタビューしてみようということになりました。そんなわけで、お二人と対話することができたのですが、結論から先に言うと、大学入試が変わったかどうかはまだまだわからないけれど、少なくとも、大学入試の概念を二人は変えたということが了解できました。

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★そういう意味では、大学入試を変えるのは、文科省や全国校長会でもなく、二人に代表されるZ世代が大学入試の意義や概念を2021年あちこちで発信していくことで、大学入試は変わっていくという実感を抱けました。少なくとも、田中歩先生は、2人の話に感銘を受け、想像以上の自己変容ぶりに感動し、進路指導やキャリア教育の在り方を改善し質を高めていくように進路指導部と協働していくと語っていました。

★そして、二人の友情の在り方がまたすてきでした。中高一貫の出会いは、得難い友情を生み出すのだということもしみじみ伝わってきたのです。もちろん、田中歩先生は、自らそうなる環境を整えてきたと野暮なことはいいません。ですから、私が岡目八目で語ることは許されるでしょう。

★二人に、総合型選抜は、大学が総合的な判断をして受けいれなければならないけれど、どういう点が認められたからたと思うのか、郷野さんから見た仲野さん、仲野さんから見た郷野さんという具合に、互いに評価してみようという話になったとき、6年間の友情とは本当にパートナーのことをよく理解していく過程なのだということがわかりました。

★二人はともに生徒会の役員を5年間ずっとやってきて、最終的には、仲野さんが生徒会長、郷野さんが副会長を務めたということです。それぞれ部活は違うし、クラスも違うのですが、生徒会の活動を通して互いを理解し合えたのでしょう。

★もちろん、いっしょにいたから友情が生まれたわけではありません。また後で、話しますが、工学院始まって以来の生徒会のパラダイム転換をやってのけたそうです。そういうときは、幾つもの壁が立ち上がり、葛藤が生まれます。それを一つ一つクリアしていくGRIT精神が凄まじいのです。

★仲野さんが突進し、壁にはねのけられても、郷野さんや他のメンバーと夜を徹して語り合い、立ち臨み、一つ一つ壁をクリアしていったということです。それが、一般社団法人生徒会活動支援協会が実施した、日本生徒会大賞2020の個人の部で優秀賞受賞につながりました。

★実は、この賞は、仲野さんが全国の学校の生徒会のフォーラムに何度も参加し、生徒会の新たな可能性を見出し、それを実行することで賞をとるのだと公言して受賞しました。有言実行の成果をあげたのです。とは、いえ、今まで挑んだことのない新たな生徒会の活動をやったからといって、すぐに獲れないだろうと最初はみなまさかと思っていそうです。

★仲野さんは、俄然燃えたわけですね。その内なる情熱。誰にでも燃やせるものではありません。外から燃やせと言われてできるものでありません。この心的構造は、仲野さん自身の才能だし、メンタルモデルの土台だと思います。その情熱の火を消すことがなかったのがなぜか?これも本シリーズで明らかになっていくことだと思います。

★さて、仲野さんと郷野さんは、工学院が21世紀型教育を行っていくぞと宣言し本格的に改革を実施したときの一期生なのです。田中歩先生は、

「この嵐のような教育改革は、今となっては大きな飛躍につながって自信がつきましたが、最初は教師も生徒もたいへんでした。突然教師全員が海外やIBの研修を受けに行ったり、ケンブリッジイングリッシュスクールとしての認定をうける準備をしたり、授業は一斉授業からPBLにすぐに転換するような流れになったりしましたからね。高1高2で完成させる探究論文のプログラムも創ったし、Mogや3カ月留学など今までなかったグローバルプログラムもつくりました。そのたびに私たちも海外を飛び回りました。英語科でなくても英語を使わざるを得ない環境ができてしまいました。そして、彼らが、高2の時に今までの修学旅行をグローバル・プロジェクトとという形で、新しいものにしました。でも思考コードを最初につくってブレない軸をつくったのはよかったかな。それに、これだけの体験を積んだ教師たちは、今回のパンデミックで、フルスペックのオンライン学習へ移行しなければならなかったときは、もはやそれほど戸惑いはなかったですね」

★と、いつも語っているのです。そして、今回こう言っています。「二人の話を聞いて、この改革は、生徒の学園生活も隅々に渡って変化を迫ってきたのだということが良く理解できました。そして、その変化に二人は果敢に挑戦してきたのだということも。中学の時の二人と卒業間近の二人は大きく変容しています。いっしょに改革を歩いてきたいや走ってきた同士です」とインタビュー後、メッセージが届きました。

★そういうわけで、郷野さんは、仲野さんのことを、軸がブレないマインドを持っています。何があってもそこは崩れない。だから進める。ただ、軸があるから柔軟です。はねのけられても、きっちり考え抜いて方法をブラッシュアップして乗り越えていきます。そんな人材、大学は欲しいに決まっていますよと。

★仲野さんは、郷野さんのことを良い意味で〇〇(これはいずれご紹介します。今ここで書くと誤解されるかもしれませんから^^)ですよ。自分の興味のあることはガアッーとやってのけます。もの凄い集中力です。今回の進路も決まるまで時間がかかりました。しかし、決まるとものすごい勢いで書類作成や対策を行いました。しかし、それは〇〇だからできたんだと思います。普通だともっと前から決めてじっくり準備していくのが総合型選抜への臨み方です。

★もちろん、郷野さんは、仲野くんも十分〇〇ですと。

★生徒会の活動のやりとりだけではなく、それぞれの総合型選抜の準備のこともよくしっているのは、友情もさることながら、二人が頼りにした教師とあえて壁になった教師の存在も大きかったでしょう。オープンマインド、田中歩先生はGrowth Mindsetといつも呼んでいますが、このマインドセットが学内には広がっているから相乗効果があったということもあったでしょう。

★いずれにしても、仲野さんと郷野さんは、新しい工学院の生徒会像を創ったわけです。これも世界を変える出来事だったのです。どうやら総合型選抜で重要なのは、体験を重ねるだけではなく、世界を変える意志と実績ということが見えてきました。

★ストーリーテラーの仲野さんとアートの知をもつ郷野さんの話は、まだまだつづきます。(つづく)

 

 

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2021年が開かれました!共に新しい道を見つける年になりますように。

★昨夜おおみそか、パンデミックは昨年の中で最悪の事態に到達しました。医療現場はギリギリのところまできていて、過酷な状況であると報道されていますが、外から見ている私たちの想像を絶する状況だと思います。医療従事者の方々やエッセンシャルワーカーの方々に心から感謝し、その使命感をそれぞれの場所で、背負うしかないと思っています。

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★どうか新しい道がそれぞれに開かれる年となりますように、共に2021年を動きながら考えていきましょう。

★昨年、「持続可能性」と「ザ・グレート・リセット」そして「才能主義(クリエイティブクラス)」ということについて考える局面に毎日のようにぶつかりました。

★多くの先生方と対話しました。幾人かの経営者・経営陣とも対話しました。小学校3年生から高校生とも対話しました。保護者の方々とも対話しました。そして、誕生してから5カ月の間孫とも対話(前言語段階で対話が出来るということに気づきました。つまりそれが「ことば」でした)しました。

★そして、「持続可能性」の意味が経済的意味だけではなく、生まれるやすべての人が持っている「才能」を削り落とさないことなのだと確信しました。その削り取らないための社会システムの構築こそ「ザ・グレート・リセット」なのだということも確信しました。

★そのことは2015年からうすうす感じていて、それを証明しようと多くの先生方と対話型授業や教育として「ことば」と「数学」をPBL環境の中で学べるシステムを創ってきました。

★しかし、その過程で、すべての人が持って生まれたはずの才能を削ってきた社会システムとそれを推進してしまっていると気づかない方々と闘わなければならない時間も膨大に費やしました。

★私自身がいつの間にか戦闘モード一色であったことに気づいたのは、昨年でした。そのことに気づかせてくれたのは、対話をしていただいた方々がいるからです。本当にありがとうございます。

★それからというもの、対話はセレンデピティを生み出すものだということがわかりました。そして、そのような対話を続けることこそ、すべての人が持っている才能を削り取らず、開花していく「持続可能」な環境を創っていくことだと気づいたのです。つまり、戦争をしない平和の持続可能性社会の追究及び平等を確保する経済の持続可能性社会の追究に、さらに「才能」を削り取らないことを達成する持続可能性社会の追究が明快に意識される時代がやってきたわけです。

★なるほど、21世紀は教育の時代です。

★SDGsにおける、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを目標にするとは、足りないものを補って、平等を確保するという意味もありますが、そもそもすべての人間は足りないものなどなかったのに、それを削り取って足りないものがある人間にしてきた(多様なレッテル貼りとそのカテゴライズで)わけですから、そのような壁をぶちこわし、「才能」を削り取らない社会システムを創ることなのだと思うわけです。

★とはいえ、そのシステムができるまでは、しばらく時間がかかり、リスクマネジメントとして、足りないものを補って平等を確保する戦闘モードも必要です。しかし、それ一色になると、結局、才能を削り取らない社会システム構築への軸が見失われる危うさがあります。

★それゆえ、この新しい軸をきちんと立てて、そこに邁進し、この軸を崩そうとするシステムとは戦闘モードにならざるを得ません。もちろん、あくまで、交渉学的戦闘モードですが。つまり、交渉から対話にシフトできるように活動することです。

★才能を削り取らない社会では、1人ひとりがその才能を開花していくことが成長という概念になります。才能を削りとる社会では、その社会が欲する目標を達成することが成長であり、それが達成できない場合、落ちこぼれるということになりますが、それは自己責任ではなく、落ちこぼれるように才能を削り落としているのですからたまったものではありません。

★セレンディピティの反対語は、ゼンブラニティというそうですが、そういう意味では、ゼンブラニティ社会をセレンディピティ社会にパラダイム転換しようというのが2021年から始まる「ザ・グレート・リセット」なのだと思います。

★セレンディピティ社会システムは、対話から開始することができます。つまり、制度再構築や脱構築する前段階から創ることができます。パンデミックは、まるでパンドラの箱のようです。最後にZoom対話が、新しい社会システムを開く可能性を生み出してくれました。

★このセレンディピティ社会システムを共に創っていこうという友人にも出会いました。輪を広めていきたいと思います。そして、この確信を抱けたのは、6年前にいっしょに始めた先生方と生徒のみなさんが、それを証明したからです。昨年末12月の対話でその証明が次々となされていったのです。

★新年は、証明してくださったみなさんとの対話について語っていきます。

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