2021首都圏中学入試(15)開成の算数の入試問題を分析する意義 ブルーナーの構造論が有効か?
★第8回GLICC Weekly EDU(主宰:鈴木裕之さん)は、開成の中学入試問題を分析します。ゲストは、GLICC クリエイティブコースの理数探究を担当する申栄吉先生です。なぜ開成の算数の問題を分析するのかというと、開成から東大に合格するサンプル数が多いので、開成の数学教育における数学的思考の構造と東大の数学の入試問題における数学的思考の構造の同一性が見えるのではないかという仮説を検証できるかもしれないからです。
★おそらく、開成も麻布も、1970年代の現代化カリキュラム学習指導要領の影響を受けていて、その後学習指導要領がなし崩しになっていったため、その改変には応じなかったのではないかと思っています。
★なぜかというと、この現代化カリキュラムは、米国のスプートニクショック対応のために生まれた認知心理学の成果が盛り込まれていたので、学問的な背景があるからです。
★この認知心理学を生んだのはジェローム・ブルーナーで、彼の「教育の過程」が、現代化カリキュラムに影響しています。しかも、大事なことはこの発想は国際バカロレアのカリキュラムの考え方にも影響を与えているということです。
★その影響とは、どの教科でも、知的性格をそのままに保って発達のどの段階の子どもにも教えることができるとするものですが、「教育の過程」の中で、その知的性格をブルーナーは「構造」というキーワードで置換えています。
★最先端の科学も、この基礎構造を子供とシェアできれば、理解を促すことができるという発想ですね。これによって、宇宙開発の科学者を子供のうちから養成し、当時のソ連と宇宙開発競争にうってでたわけです。
★当時の最先端の学習理論ですから、IBも当然取り入れるわけです。ここまでくるとお分かりの方もいらっしゃると思いますが、デューイが学びをコンストラクションとして、PBLを開発実験していたことと結びつくと思います。
★つまり、認知心理学は、構成主義的な発想です。
★もし、開成や麻布がブルーナーの構成主義的発想を受け入れていたら、PBL的発想をコンストラクションではなくインストラクションで講義していたことになります。
★このアクロバティックな現代化カリキュラム!開成の中学入試問題の構築は、当然開成の高校入試と同じです。この一連の開成の数学的思考の構造が東大の入試問題の構造と同じであれば、現代化カリキュラムが、落ちこぼれをたくさんだして、ゆとり教育になっていったのは了解ができます。
★また、そうだとすると、この流れで固定的なイメージをつけられてしまったPBLが広まらない理由もわかります。
★そして、なぜ構成主義的発想をインストラクショニズム的な発想でできたのか?そのことが、海外の理数教育とどう大きく違うのか、申先生と鈴木さんの対話を通して明らかになっていけばと期待しています。
★「構造」といっても、いろいろ考え方があります。本来のPBLであるならば、この構造は野生の思考的な発想で創らねばならないのですが、インストラクショニズムでは、固定的な構造の可能性があります。
★デューイやブルーナーの影響を受けながら開成とIBとでは「構造」の受けとめ方がおそらく違うのだと思います。ここらへんは、オックスフォードで数学を学んで、IBスクールでコーディネーターをしている中村裕吾先生と対話しながら感じているとこです。
★入試問題で何がわかるのだと世間の人は言うかもしれません。しかし、学習指導要領やIBにも影響を与えているもう一人の認知心理学者ブルームのタキソノミーはテスト問題の分析から生まれています。入試問題は立派な認知心理学の研究対象なのです。
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