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2020年12月22日 (火)

ノートルダム女学院のPBL授業 マイプロジェクトからワールドプロジェクトへ突き抜ける50分 哲学を学ぶのではなく、哲学する社会実装がポイント。

★本日午前中、ノートルダム女学院の霜田先生はオンラインPBL授業を行いました。「倫理」の授業で扱ったカントとヘーゲルをつかって哲学する授業です。スペシャルバージョンなので、有志が参加。同校はすでに冬休みにはいっていますから、午前中は部活などで時間がなかなか合わなかったのですが、霜田先生は、オンラインは、いつでもできるので、そのとき集まったメンバーでやりましょうというカジュアルな感じでした。

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★高2の生徒が参加していたのですが、彼女たちは、すでに期末試験を終えていて、カントとヘーゲルの哲学はすでに既習事項です。霜田先生の授業はふだんからPBL授業で、対話やディスカッションはあたり前だし、レポートなどのアウトプットの学びも習慣になったいます。すでに、カントとヘーゲルはサイトや動画でプレゼンテーションできるようにプロダクトするまでになっています。

★何気ない動画作成ですが、実は今回のパンデミックで、総合型選抜の提出書類として動画も提出するという大学も増えてきたので、そういうときのための準備としても霜田先生は気遣っているわけです。もちろん、論理的思考や批判的思考、創造的思考の経験をするのが一義的ですが。

★それにしても、カントとヘーゲルの考え方を社会実装する、あるいは実用化してしまう見事な50分PBL授業でした。生徒の皆さんも考えたり対話することを楽しんでいます。その姿をカントが見たら微笑んだことでしょう。なぜなら、あの純粋理性批判の中で、私たちは哲学を学ぶことはできないが、哲学することはできるのだと語っているからです。なるほど、今回の50分は、哲学や倫理を学ぶのではなく、哲学するという行為そのものでした。

★チェックインは、マインドセットや足場づくりからはじまります。今年のコロナ禍を振り返り、身近なところにある世界の痛みを見出しグローバルシチズンのマインドを実感するプログラムですから、まずは自分事ということでしょう。一年の振り返りを漢字1字に込めてそれぞれ語ります。

★それから、Mentimeterで、さらに気になる漢字をどんどん打ち込んでシェアしていきます。主観から相互主観にシフトしていきます。オープンで共感しやすい足場が出来たところで、ヘーゲルの弁証法の三角ループとカントの二律背反ダイヤモンドツールをjumboardなどを使いながら、問いを生み出していきます。期せずして生まれる問いというのが実にいい感じなのです。

★ヘーゲルの弁証法の三角ループとカントの二律背反ダイヤモンドツールは、まさに哲学実装ツールでした。生徒が出してきた経済と環境問題の関係などは二律背反ともとらえられるし、ジレンマとしてもとらえられます。

★その問題解決方法は、カントなら道徳律だし、ヘーゲルだと法哲学的自己変容論です。そのどちらを使うのか、統合して使うのかは生徒に任されています。自分の人生と国やグローバル世界とどう折り合いをつけていくかは、たしかにたいていの場合、カントのようにモラルコードでいくか、ヘーゲルのようにモラルやリーガル、宗教などの文化、テックノロジーなどの多くのコードを統合させながらいくかどちらかでしょう。

★生徒のみなさんが、マイプロジェクトから始まって世界の痛みをどのように解決するかの入口に立てた50分でした。

★私も参加させていただいたので、最後に今年のある難関大学の総合型選抜の小論文課題を提示しました。はじめから予定していたわけではなく、生徒のみなさんの今の議論は、すでにこの問題について解決策を組み合てられる内容だったということを情報提供したかったのです。すでに、相当高次思考を回転させていることに驚いたということを伝えたかったわけです。

★そのあと、学びのパターンについてインタビューしていくと、「まずはやってみよう」から行うとか「まずは小さく始めて大きく育てる」とか「突き抜けようとする」とか返答してくれました。はじめから解答がわかるわけではないから、試行錯誤しながら取り組むことは大切だからとか、身近なところや出来るところからコツコツやっていくと突然全体が見えてくるもだからとか、突き抜けた向こうにある世界をみたいとか、それぞれの学び方がどんどんでてくるのに感動しました。

★もちろん、カントやヘーゲルについて、リサーチして編集して発表するというと学びの経験がすでにあったから、今回50分でできたわけですが、毎回のスモールステップの目標に向かって、同じようなサイクルで霜田先生はPBL授業を行っていきます。

★ですから、今回のサイクルがらせん状につながっていくわけです。ミニPBLであると同時に壮大なPBLのデザインでもあります。自己を見つめ、自己変容の弁証法的過程を経て、世界の痛みを解決するグローバルシチズンとして自己開示していく壮大なプロジェクト。総合の探究の時間とはまた一味違う自己探究プロジェクトが教科で行われているということでしょう。

★霜田先生のPBL授業のロールモデルエフェクトは来年4月からより一層加速していく予定です。霜田先生、生徒の皆さんすてきな年末をありがとうございました。メリークリスマスそしてよいお年を!

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