才能力の時代(04)PBL型授業は問いの生成のデザイン
★「問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション– 2020/6/4」安斎 勇樹 (著), 塩瀬 隆之 (著)は、とても参考になります。著者は自らを社会構成主義的なファシリテーターであることをわざわざ明言しています。これは、インストラクショニズムや個人主義的なファシリテーターも存在するからのようです。
★この考え方は慧眼です。PBL型授業やアクティブラーニングといったいわばミニワークショップ挿入型の授業がなかなか流行らない理由がわかります。プロジェクト・メソッドを生み出したデューイやキルパトリックの時代からずっとヘルバルト主義との相克だったのですが、ヘルバルト主義だって、ファシリテーターはできるのだという話が続いて、手を変え品を変え今に至っているのです。
★本書では、ワークショップにおけるファシリテーターの位置づけを座標軸や広義―狭義、社会構成主義ー個人主義などの比較によっていろいろあるということを明快に論じています。
★同書の扱うワークショップにおける問いのデザインは、50分の毎回の教科のPBL型授業にも参考になります。
★もちろん、同書は50分単位のワークショップを想定しているわけではありませんから、そのまま置き換え得ることはできません。変換する必要があります。どうやって変換したらよいのか。
★それは、社会構成主義的なファシリテーターとしてPBL型授業をデザインするとき、問いのデザインをする前に、生徒自身が問いの生成をデザインできる対話をデザインするということで可能でしょう。
★同書では、とにかくわかりやすさ、明瞭さを求めますので、このような物言いはわかりにくいので、わかりやすく置換えなければなりません。そのスキルは、同書が行う座標軸やカテゴリー表に象徴されるように比較や分類するスキルですね。このスキルは授業デザインや生徒自身の思考スキルにおいても共通する基本スキルです。
★それはともあれ、ワークショップにおけるデザインの意味を分類しておくとよいわけです。
①教師の問いのデザイン
②生徒の問いのデザイン
③対話のデザイン
④学びの時空などアフォーダンスのデザイン
➄思考スキルのデザイン
⑥リフレクションのデザイン
★これでわかりやすいかどうかはわかりませんが、こんな感じで、PBL型授業をデザインするとは、いくつかの局面があるということです。
★こうして分類すると、文科省のいう「主体的・対話的で深い学び」の意味も見えてきます。主体的といったとき、生徒が自ら問いを生成するということだし、深いとは、生成する問いのレベルを深めるために思考スキルを生徒がどう組み合わせるかということだということがわかります。そして、対話的とは、リフレクションのデザインで決まるということがわかります。
★同書ではリフレーミングという目に見えるフォームが提供されていて、リフレクションのフローは、さらにわかりやすくなっています。
★このような見識が本になったり、Youtube(お二人は同書のプロモーション動画も発信しています)で配信されるようになっているのは、実にすばらしいことです。ぜひ教師の方々だけではなく、生徒のみなさんも、同書を手に取ったり、動画を見たりしてほしいです。
★啓蒙書というより問いの生成のデザインを実装できるプラグマティックな本だと思います。自己変容と同時に社会変容に役に立つ本です。
★もちろん、問いの生成のデザインは、思考コードでも可能です。こちらは、コンパクトなので、使いだすと時間短縮できますが、コンパクト過ぎてピンと来るのに時間がかかります。そういう意味でも、同書「問いのデザイン」は、思考コードの理解にも役に立ちます。問いの創り方は、世界の創り方に通じるからです。世界の創り方のマトリクスが思考コードでもあるわけです。
★そうそう、コンストラクショニズムとインストラクショニズムの違いは、同書が「質問」「発問」「問い」の違いをカテゴリー表にしているところを読めば明快に理解できます。これは、思考コードの縦軸に相似しています。詳しくは同書をお読みください。
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