2021首都圏中学入試(07)新型コロナウイルス感染対応入試 首都圏模試センターの情報・動きを読む。
★昨日、首都圏模試センターは、<「学校と塾をつなぐ」入試直前オンライン情報交換会>を開催。同センターサイトにはこうあります。「いまも続くコロナ禍で、学校説明会の際にも安全対策や人数制限などが必要になり、例年と比べて不自由な広報活動をせざるを得ない私立中学校の先生方と、学校説明会や見学会などへの参加の機会も十分に得られなかった塾の皆さま方とをオンラインでつなぎ、残り約1~2ヶ月に迫った来春2021年入試に向かうための情報交換をしていただく企画です」と。
(写真は、同センターサイトから。桜蔭の入試風景だと思いますが、2021年中学入試では塾の応援風景は様変わりするでしょう)
★同センター取締役・教育研究所長北一成氏によると、11月の合判模試の受験生は昨年より増えているということです。経済的ダメージよりも子供の「学力」「心」「脳神経身体」「ハイブリッドPBL」「対話」が循環した環境を求めているということだと私は考えています。
★今回のパンデミックで行政の対応や学校の対応が明るみに出ました。自衛しかないということが明白になったわけです。もちろん、自衛したうえで社会的制度の見直しもしていく知恵がなくてはなりません。
★よく私立は学費が高いと言われますが、それは支払う側からみるとそうでしょう。小中学の義務教育は学費自体は国自治体がサポートしますから。しかし、投入されている一人当たりの教育費は、ざっくり100万/年です。私立学校はその費用を保護者が支払っているわけです。実はやろうと思えば、公立も私立学校ぐらいの環境を整えることは可能なのです。
★そのことがわかってしまったわけです。GIGAスクール構想で、今後公立学校も1人1台のICT環境は整います。しかし、それがPBLかどうかはわかりません。
(今後求められるニューノーマルな学校の学びの循環。すでに私学は動いている。)
★PBLのような新しい学びなんてできないよとよく言われます。それでは、ICTも有効活用ができないでしょう。それにPBLは、100年以上前からある教育理論です。1900年初頭に、デューイと弟子のキルパトリックが「プロジェクト学習」という本を出していらいの話で、学習指導要領にも手を変え品を変え導入されてきたのです。何も新しい学びなんかではないのです。ただ、教科学習に導入するということはなかったので、確かにチャレンジではあります。
★その点、首都圏模試センター調べによると、今後はハイブリッドPBLにしていく学校が増えます。また、プロジェクトは対話が大事だし、学力だけではなく、パンデミックで不安が広まった「心の問題」「脳神経身体全体のコンディション」に関してもケアしています。
★そのことを如実に反映しているのが、2021年度の新型コロナウイルス感染拡大に対する各学校の対応です。私自身は、別のワークショップ型Zoomミーティングがあったため、今回の情報交換会には参加できませんでしたが、北氏がメールで、当日配布した各学校の対応情報一覧を関係者に共有してくれています。
★それをみると、まず思ったのが、2月いっぱい中学入試は続くなあということです。すでに、その予行演習ともいうべき事態を首都圏模試センター自身が行っています。合判模試など自宅受験や塾会場受験を行っていますから、集計期間が例年より長くなっています。
★同じようなことが、入試本番でも起こるでしょう。たとえば、開成は「入試当日に、新型コロナウイルス感染症に罹患している、もしくは濃厚接触者に特定されているため、受験できなかった志願者を対象に、2月23日(火・祝)に追試を行います。追試の詳細に ついては、決まり次第、本校のホームページ上にて公開いたします。」とあるのです。
★つまり、開成は事実上2月いっぱい入試を行うということを決定しているのです。
★一方、栄光は、「新型コロナウィルス感染症に罹患,または罹患者との濃厚接触者に該当するとされ,保健所から外出許可が出ていない場合は,受験できません。その場合の追試験や受験料返還などの特別措置は行いません」としていますが、そもそも今回のパンデミックは、一度決めたことは何が何でも押し通すということはできないということをもたらしていますから、栄光もその時になってみなければわからないでしょう。
★浅野も「PCR 検査待ち(陰性の結果が出ていない)は受験不可。試験中の体調不良で検温して 37.5 度以上の場合は、試験を続けることは不可。帰宅してもらう。追試験は行わない」としていながらも、「感染状況次第では、県私学協会および首都圏私学と足並みを揃えて入試日等を変更することもある」と条件を添えています。
★これは、すべての私学にあてはまるでしょう。つまり、感染状況次第で変更可能だということです。
★いずれにしても、追試をはじめから設定しているところもあるし、感染状況次第で入試日を変更すると公表しているところもあるように、2021年中学入試のニューノーマルは、「2月いっぱい入試」とならざるを得ないでしょう。いや「3月いっぱい入試」かもしれません。
★それと、開成は、「塾の方の入試当日応援を自粛」と記述しています。中学入試の風物詩「塾の応援行列」の在り方も変わるということですね。
★この中学入試の変化は、しかし、表面的なあるいは一過性の変化ではありません。「学力」「心」「脳神経身体全体」「ハイブリッドPBL「対話」の循環システムが、パンデミックによって強化されたわけです。強化にはプラスの強化とマイナスの強化があります。
★私立学校の学びの質の強化という意味ではプラスです。したがって、それは後戻りしないでしょう。中学入試の変化は、このプラスの質の変容が紐づいています。
★マイナスの強化というのは、私立学校と公立学校の格差がますます広がるということです。ですから経済的ダメージによって中学入試人口が減りそうだと考えられがちですが、増えてしまうのです。
★1980年代、公立学校の校内暴力がひどかったとき、それは私立中高一貫ブームに火をつけました。1990年代は学級崩壊という現象が、ますます私立中高一貫校の生徒募集増に拍車をかけました。
★1998年・99年は、バブル崩壊の影響で大企業倒産という衝撃で、一時中学受験人口が減ることはありましあたが、ゆとり教育への不安からすぐに回復しました。
★しかしながら、リーマンショックによる減少には、さすがに歯止めがかからなくなりました。ところが2011年の3・11で、逆説的ですが、私学の安心安全対策に注目が集まり、再び生徒が集まり始めます。いじめの問題も私学志向に流れた可能性があります。
★3・11は、今回のパンデミックと同じように、国の行政の意思決定の遅さがメディアで騒がれましたが、SNSが急激に拡大し、情報のやりとりが一変しました。当然新たなデバイスが登場し、私立学校は1人1台路線と世界の情報を獲得するために英語教育へ力が入りました。予測不能な事態に対応する私立学校とそれができない公立学校の格差がここでも開いてしまいました。
★そして、この予測不能に対応するための学力観が変わり、大学入試改革の話題が盛り上がり、中学入試も新タイプ入試のイノベーションが起こり、再び生徒募集は活況を帯びてきました。
★ところが公立学校が中心とする校長会が、大学入試改革に猛烈に反対。2020年大学入試改革は、とん挫しました。すると、パンデミックが襲い掛かってきたのです。もともとこの改革には、CBTというコンピュータによるテストが模索されていたのです。STEAM教育の導入が行われているのも、外部英語検定試験(CBTがすでに行われている)が導入されるのも、当然この教育イノベーションが織り込み済みだったはずなのですが、3・11への想いが風化しつつあったので、予測不能に対応するという文言はスローガンになってしまったのでしょう。
★ところが、予測不能な事態がいままさに起こっているのです。もし、大学入試改革を進めていたら、オンライン学習への対応も、今よりはまだましだったでしょう。
★教育イノベーションと言っても、学校の場合、ゼロからの話ではなく、すでに日常で使われているイノベーションを取り入れようよという話にすぎません。それができないというのが不思議です。私立に比べてお金がないからというのは、誤謬だというのは先に話しました。保護者が支払うかどうかの違いで、学校に投入される費用は実は潤沢なのです。統廃合を進めて、費用の使い方は工夫されています。なぜ、それが子どもの授業に生きないか?
★そんなことに気づいた保護者は、最近は夫婦で働いていますから、私立学校に通わせようと断固たる決意を抱くのです。
★しかも、世界のエスタブリッシュな私学は、年間の学費が1000万というところもあるのです。留学生ではなく、一般市民が支払うのです。一般市民と言っても超富裕層でしょうが。
★ところが、その10分の1で、豪華なキャンパスはともかく、教育の質自体は何ら変わらない、いやそれ以上の教育を久しい間実現している八雲学園のような学校があるのです。
★そのことに気づいたら、現状では私立学校を選ぼうということになるのは、ある意味必然です。
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