2021首都圏中学入試(12)大正自由教育の系譜の城西大城西 充実した体験ベースの理科教育とグローバル教育とキャリアデザイン教育①
★小学校5年生の生徒と保護者と対話しているときに、城西大学附属城西(以降「城西大城西」)の話題がでました。クリエイティビティ、コミュニケーション、コラボレーションという体験をベースにした思考力を身につけるいわば小学生向けPBL型授業に参加しているため、学校選びも、新タイプ入試とPBL型の学びの環境がある学校という志向性を持っています。もちろん、英語も学び、グローバル教育の環境も必須だというのです。
★となれば、城西大城西も選択候補だということになり、それでは、最新の情報を、私の方で同校の入試企画部長の坂本純一先生にインタビューしておきましょうということになりました。fasebookの友達ですから、メッセンジャーで連絡をとると、即快諾していただけました。Zoomで対話となったのです。
★坂本先生によると、同校はもともと大正自由教育で有名な日本のペスタロッチ野口援太郎が創設にかかわっているというのです。野口援太郎は成城学園の創設者で大正自由教育の中心人物澤柳政太郎とも当然親交があったようです。もっとも、野口は当時のクリスチャンですから、相当高邁な精神で立ち臨んだに違いありません。
★このコメニウスールソーペスタロッチーフレーベルの系譜は、デューイの系譜とも違う系譜です。日本女子大附属豊明小学校はこの系譜で、今も実物教育という言葉を大切にして、継承しています。
★ですから、坂本先生にとって、今回の新学習指導要領で注目されたアクティブラーニングはもともと同校のベースで、同校の中では体験学習やプロジェクト学習は普段使いの感覚だったといいます。
★同校の体験として大掛かりなものは、主に3つあります。1つは、地域と学校の絆が薄れている中、同校は自治体と協働して伝統芸能の獅子舞の演技を毎年担っています。
★毎年、椎名町の長崎神社で獅子舞祭が開催されますが、同校からは獅子舞研究部、生徒会役員、高校軟式野球部などが参加するそうです。朝、椎名町を練り歩き、「ふんごみ」で土地を清める手伝いをするのです。生徒が持って歩いた「鈴の尾」は奉納され、長崎神社の鈴を鳴らす帯となるのだそうです。
★さすが、ルソーーペスタロッチの系譜です。J.J.ルソーは演じる側、演戯を見る側と分ける演劇よりも、みんなが参加できるお祭りの重要性を論じているのです。伝統芸能の中にある対話や協働性をルソーは見抜いていたわけだし、それはプロジェクト学習のプロトタイプでもあります。
★この精神が、ふだんの授業の中にも息づいているわけです。
★たとえば、もう一つの重要な体験である、理科の探究論文の作成のプロジェクトもそうです。中1、中2では、教科書の中にある実験を中心に探究の入口の準備をするそうです。まずは模倣ですが、模倣はプロジェクト学習ではなくてはならないまねびという遊びです。好奇心のきっかけづくりに重要なアクティビティです。
★中3になると、模倣から独自性へシフトします。自分のテーマを見つけ、仮説を立てながら検証していく実験をしつつ証明していく骨太の論文を完成させます。
★たとえば、ゲーム脳は本当に学力向上を阻害するのかなどのテーマを自ら実験して確かめていくという探究をしている生徒もいるそうです。来年の3月には発表ということになるわけですが、このような問いのデザイン、検証プロセス、そして問題解決、結論へというポートフォリオを形成する探究活動はまさにPBL(Project besed Learning)です。
★この理科のPBLは、当然理科の領域を越境し教科横断型の新たな問いを発見していく「果てしない物語」になります。
★この果てしない物語の中から、自分の人生をかけて探究していきたい専門領域が見えてくるのが高校段階だそうです。
★キャリアデザインに基づいた専門領域へむけての学びを行っていくプログラム型の学習に移行するのだということです。系列の城西大には薬学研究科がありますから、大学と連携したアドバンスト・プログラムもあるそうです。
★系列大学に薬学研究科があるので、将来医療系・薬学系を目指す生徒は1クラス分/学年いるというのも同校の特色のようです。(つづく)
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