« 2020年11月 | トップページ | 2021年1月 »

2020年12月

2020年12月29日 (火)

才能力の時代(07)推論の用語を整理してみると創造性とか批判的思考の役割が見えてくる。田中歩先生に刺激されて。

★PBL(Project based Learning)について多くの人と対話すると、「推論」に関係する用語がたくさんでてきます。「演繹」「帰納」「仮説推理」「隠喩」「換喩」「提喩」・・・・。それぞれの人が、それぞれの推理のスタイルを持っています。同じ結論に至る場合もあるし、ズレルときもあります。同じ結論にいきつかないと気が済まない人もいますし、ズレを楽しみ遊び心を大事にする人もいます。

Replacement1  

★これらの言葉はスタイルの違いということで、価値観の違いと置き換えることもできますが、実は次のようなまとめ方ができます。

Replace2

★エっ!一体どこの教授がこういう分け方をしたの?と思うかもしれません。さあ、知りません。私なりにまとめただけです。この歳になると、だれそれがこう言っているという話はだんだん億劫になってきます。もちろん、だれそれがこう言っているということは、その方を尊重しているので、クレジットをいれることが多いですが、それはあくまで引用や参考するときの権利の問題です。

★しかしながら、ことばは人類共通の財産ですから、自由に考えていけないということはないのです。そんなことを言ったら、abductionということばをパースが「仮説推理」という意味で使ったからというのを言い続けなくてはなりません。パースだって、もともとのabducionを転用という置換を行っているわけです。人類共通の財産を活用しているわけです。

★上記の「推論」用語をどうカテゴライズしたり、つなげたりするのかは自由です。説得力があるかないかの違いがあるだけですね。大事なことは、一つの推論を絶対だと思わないことです。人類の痛みはいろいろな形で生まれてきます。それをテーマとして置き換えて、解決策という生産に到る過程は様々、つまり推論過程は様々です。むしろ、できるだけ、あらゆる推論のアプローチをすることが望ましいのです。

★ですから、対話が必要ですね。そのとき、互いのメンタルモデルを尊重し、互いの推論方法に耳を傾け合うことが肝要です。ですから、この段階で闘争してはいけません。

★それに、上記のまとめの図を英語に置換えてみると、もっとおもしろいことがわかります。

Replace3

★「置き換える」という言葉を、どの英語の単語に置換えるかによって、実はどの推理の道を獲りやすいかがある程度ゆるやかに決まります。またその結論の出し方も、プロダクトなのかクリエイトなのか違いがでてきます。

★クリティカルシンキングとは、プロジェクトが動いている時に、この推理の方法が偏らないか、つまり偏狭という危機に陥らないかエッジを利かせることですね。

★他者の推理法だけではなく、自分の推理法も。すると、それぞれの主観が相互主観になり、協働主観になり、それが広く流布すると客観性を帯びてきます。

★しかしながら、限りなく客観性という限定的なものです。自然法則という客観性ですらコペルニクス的転回という置換がされてしまうときがあるぐらいです。

★このような発想を刺激してくれたのは工学院の教務主任田中歩先生なのです。結局共感的コミュニケーションとは、このような多様な推理法を尊重し合うことなのです。それには、「~duce」を使い分け、「教師型duce」をるのか「ファシリテーター型duce」するのか「コーチ型duce」をするのかマルチduceのロールプレイができるかです。

★また、この「~duce」だけではなく、「換喩」「隠喩」「提喩」に代表されるレトリックを自在に使えるかです。

★このような全体のまとめをクリティカルシンキングしながら最適なループを広げていくのがシステム思考です。

★PBLもインストラクション型は生産的ですが、コンストラクション型は創造的となるわけです。戦術的な時には前者、リベラルアーツ的なことを大切にする場合は後者となるわけです。

★大学進学実績を出すプロジェクトの場合は、インストラクション型>コンストラクション型になります。ときどきインストラクション型一辺倒になりますが、これは生徒の主体性が育たない可能性が大です。

★逆にコンストラクション型一辺倒だと、そもそも大学に行く必要があるのかに気づいてしまう生徒も出てきて、進学実績を出すという目的とは違う、生徒の人生そのものを考える時間になります。

★現状の経済システムの中で学校経営というファクターが入ると、インストラクションとコンストラクションのバランスをどこにするかがポイントになるわけですね。

★「ことば」がそんなところにも結び付いていくのかと怪訝に思われた方もいるかもしれません。しかし、元祖PBLのデューイが、一番納得してくれるでしょう。

★ことばは思考の道具であり、思考は行動に結びつかなければ、考えていないと置き換えることができるというのですから。

★そして、この考えはマーケット分析に役立ちます。どのような思考がどのような消費行動を生み出すのか、どのような消費行動がどのような思考を生み出しているのかということだからです。

★そして、政治でも同じことが言えます。公約と行動が一致しなければ、価値がないのです。

★それから、これは法律にも結び付きますね。契約は一致していなければ困ります。また刑事法の分野では、思考と行動の一致がなければ、冤罪を生みます。

★条約にも同じことが言えます。批准するかしないか迷うのは、思考と行動が一致しなければ、国際問題になるわけです。実際国際社会は、この問題が山積しています。

★さらに、最近のSNS上のフェイクニュースも、同じです。ことば=思考=言語。インストラクションだと強迫観念的になります。コンストラクションだと遊び心が生まれます。前者は事件を起こし、後者はファンタージ―を生み出すわけですね。

★すべては、置換のプラスとマイナスのダブルストーリーがあるわけです。そして、そのプラスとマイナスの間のあるいはそれを超えてグラデーションが多様にあるということなのです。この多様性を認めながら最適解を協働的に見つける田中歩先生のような共感的なコミュニケーションが、今最も大事な対話の情況なのです。

追伸:前回紹介したことばと道具の関係を外延と内包のダイアローグで捉えている田中歩先生の発想法がないと、以上の話は生まれてきませんでした。ありがとうございました。

Photo_20201229054501

 

2021年12月29日午前4時33分。2022年を迎えるにあたり記す。

|

2020年12月28日 (月)

Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(2)

前回「Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(1)」のつづき。

★五十嵐さんの大きな2つのペルソナは、聖学院の高1生というペルソナとFresh Service合同会社CEOというペルソナ。ここをきちんと分けているところが実に興味深いのです。たとえば、聖学院生というペルソナでは、聖学院の教育を受け入れ、大いに学院生活を謳歌している生徒ですが、CEOという立場では、自分だったらマネジメントやガバナンス、マーケティングはもっとこうするという経営者の論を展開するのです。

1_20201228204001

★聖学院の先生方も、聖学院の在校生として応援する立場の教師もいれば、CEOとしての五十嵐さんへフィードバックをするという教師もいるようです。

★だから、聖学院の学びも聖学院の教育の枠組みの中の学びとして楽しんでいるかと思えば、CEOとしては、その学びをビジネスモデルに転換するという離れ業を行ってもいるのです。

★たとえば、聖学院の伝統的な体験学習である「糸魚川農村体験」を通して、糸魚川の産業構造の現状と困っているところを解決する提案をだしてプレゼンするところまでは学校行事の枠内ですが、クラウドファンディングで、糸魚川のリアルな姿を紹介する本をつくるあたりは、学校行事から抜け出て、起業家的精神のシミュレーションになっているのです。

★しかし、そこまでなら、少ないとはいえ、他の学校でも実践する生徒はいるでしょう。まだ、行事の延長ともとれます。

★ところが、五十嵐さんは、糸魚川の農村で収穫した新鮮で安心・安全な食物を仲介業者を通さず直接販売する販路を開拓するサービスを事業化します。

★莫大な利益を生み出すことが目的ではなく、あくまで困っている問題があったらそこを解決する架け橋になるサービスで、まさに文字通り奉仕なのです。

★しかしながら、タスクをする仲間には、交通費ぐらいはちゃんと出せるように事業化したわけです。しかも、いわゆるデリバリー商売をするわけではないのです。

★特に今回のコロナにあって、糸魚川の商品の販売ルートが切断されてしまいました。一方東京では、幼児を抱えている家庭では、外出が簡単にはできなくなったわけです。買い物困難者がでてきたわけです。

★それならばと、幼稚園などと交渉して、幼稚園にお迎えに来た時に開店して、買ってもらおうと。通りがかり販売をしようということになったそうです。産地直送だし、新鮮で安心安全だし、お迎えに行って別に買い物をするという時間をかけずに短縮できるとあって、アンケート調査ではみな満足しているという結果になっています。

★そして、グーグルフォームでアンケート調査をしていますから、買ってくれる参加者のペルソナマーケティングもおこなってしまっているのです。

★おもしろいのは、チラシやSNSの広報がどれくらい役に立っているかというデータも出していて、それよりも効果的な広報活動が何かまで突きとめています。

★それは、商品が生産されて店頭にでるまでのプロセスを丁寧に発信したり店頭で熱く語るというアクションそのものが口コミや評判作りになっているということでした。

★この対話の秘密は、実は参加した人々とコペ転(コペルニクス的転回)体験を共有するという共感的コミュニケーションだったのです。

★糸魚川は、フォッサマグナ領域にあって、大切な日本の地溝帯として注目されている地質学的価値のある場であり、それゆえそこにおける文化的価値もあるわけです。ですから糸魚川エリアは、ユネスコ世界ジオパークとして認定されているわけです。

★糸魚川の商品の背後の大切な意味を共有しながら商品を販売していくという探究型商品販売は、欲望資本主義とは違う新しい資本主義的な経済システムを予感させます。来春に向けてダボス会議は、資本主義から才能主義へというザ・グレート・リセットを唱えていますが、五十嵐さんの活動は、その先駆けかもしれません。

★つまり、解決するために何かを行うだけではなく、解決する新しい経済システムを生み出す可能性があるし、そのための企業の組織の新しい在り方にもチャレンジしているのです。(つづく)

|

工学院インパクト(22)田中歩先生と振り返り、未来を展望する。PBL銀河計画③

前回のつづき「工学院インパクト(21)田中歩先生と振り返り、未来を展望する。PBL銀河計画②」

★田中歩先生は、すべての生徒が自らPBLをデザインすることができることを目標としているわけです。教師がPBLをデザインして、その中で生徒が生き生き積極的に主体的に学んでいたとしても、それは教師の掌の上での話です。それでは、限定的な主体性です。

Photo_20201228083902

Photo_20201228083901

★教師のPBLでは、もちろん学びのテーマがあり、そのテーマについて生徒は学ぶのですが、同時にその学びのプロセスをモデルに、生徒自身が自分なりのテーマをみつけ、自分なりのプロジェクトを構想し、実行していくようになるというのが田中歩先生のPBL銀河構想です。

★そのためには、多くの経験をデザインし、生徒がそのいずれかの体験から自らのPBLを生み出して欲しいと。人間というのは、きっかけはいろいろですから、無限に用意はできませんが、そこは教師の経験で、「契機力」ある経験プロジェクトをデザインするわけです。

★しかしながら、その「契機力」だけに依存していても、すべてを網羅するわけにはいかないのです。

★契機力すら生徒がみにつけなければまらないのです。一見、自分の関心がなさそうでも、そこに興味のきっかけをみつけることができる「契機力」をです。「契機力」なんて変な日本語だよとお思いですか?

★田中歩先生は、英語の教師だから、これをOpprtunity Discovery Powerと了解しているわけです。

★このODPこそ、実はモチベーションの源だと田中歩先生は語ります。

★では、このODPとはどうやって身に付くのでしょうか?

★それは、「ことば」というメタ道具の力によってなのです。先日Zoom対話したときの図は上記のような感じです。

★「ことば」は思考の道具ですが、道具の中の道具です。そういう意味で、「ことば」はメタ道具です。道具の中の道具なので、とても難しいのですね。私がスマホやPCの機能をほとんど使えていないように、人間も「ことば」のすべての機能を活用することはでいていません。

★したがって、人間は壮大な歴史の中で、「言語」とは何か学び続けています。

★しかし、人間は生きていく生物です。「言語」とは何かすべて解明しなければ、生きていけないとなると厄介な話です。ですから、わかったところで、それを道具化して可視化します。代表例が「レゴ」ですね。

★ことばの一部の機能を「レゴ」化すると、互いに理解がしやすいという経験は多くの方々がしていることと思います。

★田中歩先生はバイリンガル教師ですから、英語と日本語を「ことば」というメタ道具として活用したり、言語という「道具」として活用したりと使い分ける対話を生徒と日々行っているわけです。

★だから、この「ことば」という「メタ道具」についての豊かな対話ができます。

★それにしても、田中歩先生は、このような「メタ道具」をすでに実装していて、デフォルトモードネットワークとして活用しています。すべてが身体化していて、いつでも発動できるような構えになっています。静かに笑顔をたたえていても、このネットワークが身体中で働いているのです。

★脳科学では、このモードは、1つのことに全集中しているときより、脳のエネルギー消費量は多いと言われています。したがって、デフォルトモードネットワークをリラックスモードネットワークにスイッチを切り替えるスキルも体得しています。その一つが家庭サービスなのかもしれません(笑)。

★デフォルトモードネットワークは、共感的コミュニケーションが生まれる泉です。

★リラックスモードネットワークは、マインドフルネスの森です。

★そしてこの泉と森の中からクリエイティブクラスが生まれます。

★この泉と森を活用してた学びの場こそPBL4CCということでしょう。

|

2020年12月27日 (日)

2021年中学入試情報(06)栄東 アクティブラーニングも大学進学実績も痛快丸かじり

★埼玉エリアの栄東の第1回東大難関大入試は12月25日現在(日能研倍率速報)ですでに4,686名。昨年は6,200名だから現状では昨年対比68%。しかし締め切りは1月8日だから、昨年並みになるでしょう。

Photo_20201227204001

★栄東のこの試験の応募者動向は、2021年の中学入試の受験生数の動向を見通す一つの試金石だから、1月8日時点で、横バイ以上だと、2021年の首都圏中学入試の応募者数は上向き以上になるだろうし、そうでない場合、パンデミックによるダメージがあったと判断できるかもしれません。

★そういう意味で、注視したい学校の1つです。

★それにしても、一貫してアクティブラーニングとインターナショナルクラスと大学合格実績のわかりやすい特色を前面に押し出している学校です。アクティブラーニングを行ったら大学合格実績はでないとか、大学合格実績を出すことが目的ではないとか、いろいろガタガタ言わずに、生徒にとって必要なものはすべてやる。以上。というのが爽やかでよいですね。

★埼玉を牽引するnew powerであることは明らかですね。

★それから、この第1回目入試は、3密を避けるために、場所を増設するのではなく、日にちを増設しました。6000人の応募者があっても、日にちを2回に分け、3000人ずつにするでしょうから、3密は避けることができるということでしょう。会場はどちらもグループ校のキャンパスを使用します。

|

Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さん 多様なペルソナとのかかわりが未来を生み出す(1)

★昨日午前中、Fresh Service合同会社 CEO五十嵐健太さんとZoom対話しました。ジョブスの制作した<Think Different>が予言しているような不思議な人物です。頼もしいし発想も豊かだし、めちゃくちゃプラグマティストでもあり、ミッションが強烈です。だからこそ実行力がすさまじい。最近学校における<new power>について探っているのですが、学校を超えるエネルギーを直観しました。だからといって、希望のエクソダスのように学校や日本を置いていくのではないのです。新「希望のエクソダス」がここにあると感じました。

2_20201227065701

★タイトルに「多様なペルソナとかかわる」と記述しましたが、五十嵐さんは、ペルソナという言葉を常用しています。なんでもマーケティングの世界では、ターゲットとは最近呼ばないというわけです。もちろん、マーケットでペルソナと使っているからなんとなく使っているというわけでは全くありません。

★五十嵐さんにとって、同社の商品を売る場合、生産する人、消費する人、販売する人、購入する人というような分け方をしていません。とはいえ、そのような言葉を使わざるを得ない局面もあるでしょう。五十嵐さんが語る意味での新しい言葉が生まれるまでは、用意周到に形骸化したあるいは表層的な意味で使っているのではないことを熱く対話し続けながら、かかわっている人々と理解を共創造して仕事をしています。

Photo_20201227070701

(村上龍さんが、作品を創る際に、インタビューなどした制作過程をノートとして痕跡を残していますが、五十嵐さんも同様のアクションをとっています。)

★この姿勢が、2000年に誕生した村上龍さんの「希望の国のエクソダス」とは違います。しかしながら、国外脱出はしないものの、こうしてあらゆる内的な意味を超えようとしています。しかもそれは、今語ったように、1人ではなく多様なペルソナとかかわってなのです。

★ですから、共に新しい意味を生み出していきますから、そこに価値や意義や理由が生まれます。その価値や意味や理由を生み出す過程をこれまた多様なSNSを駆使して、表現していきます。ペルソナ同士対話していきます。実はそれこそが、Fresh Serviceの商品でもあります。商品というより、新のサービスです。新のサービスと商品サービスは共通する意味はありますが、深さが実は違います。それはあとでまた触れましょう。

★ともあれ、このペルソナという言葉が、マーケティングで活用されるようになったのでは、SNSが拡大したころからでしょうから、Z世代が軽やかに使うのは当然です。

★そうそう、多くの方がご存知だと思いますが、五十嵐さんはZ世代高校生です。ですから、五十嵐さん自身CEOの顔だけではなく、聖学院高校1年生という顔ももっています。それからもう一つとても大切な糸魚川みらいプロジェクト実行委員会代表者の顔も持っています。

★五十嵐さん自身内的にも外的にも多様なペルソナをもち、同時に多くの方とかかわっているわけですが、その方々も1人ひとり多様なペルソナを持っています。

★現在のマーケティングにおけるペルソナは、エクソダスが生まれたころにトレンドだった「モノからコトへ」と呼ばれていた延長上にあることは確かでしょう。ターゲットという表現は消費者や購入者を「モノ」としてみなしてしまいがちです。しかし、当時キャラクターのプロフィール設定がトレンドだったように、彼らのニーズを掘り起こし、1人ひとりに最適化した商品を届けようとしていたわけです。この複雑な関係主義をコトと呼んでいたわけです。

★その掘り起こしのテクノロジーが「データマイニング」だったわけです。もちろん今でも使われています。五十嵐さんも、グーグルフォームで小まめにアンケート調査をしてマーケティングにおけるモニタリングを定期的に行っています。

★教育の世界の今のトレンドの「個別最適化」も同じような流れにあります。

★しかしながら、五十嵐さんは、そのペルソナを個人の性格やメンタルモデルの理解を互いに深めていく入口を示す言葉として活用しています。たとえば、糸魚川の生産者が、今回の新型コロナ感染予防のため自粛政策がとられ、販路を切断されて困っているということを対話によって共有するわけです。一方東京では、自粛によって買い物の機会が困難な人々がいて、そこでも対話がおこるわけです。

★もともと糸魚川みらいプロジェクトを行っているので、両方のエリアの人びととネットワークがありました。そのネットワークの人びととZoomやSNSで対話をし続け、互いのペルソナの声を聞き合うわけです。すると、新しいビジネスモデルがかかわった多様なペルソナからナチュラルに生まれてきたわけです。

★まさしく、新しいパートナシップマーケットの誕生です。五十嵐さんはSDGsを掲げないで、SDGsの背景にある世界の痛みを解決するビジネスモデルを創り上げてしまっています。

★世の中にあるSDGsを知ろうというワークショップを行うことは意味はあるけれど、いまここで世界の痛みはおこっている。目先のことを解決しようとしているのではなく、目の前のことは世界の痛みにつながっているのだから、それを解決するために多くのペルソナのパートナーシップを発揮しようよと身体が先に動いているわけですね。

★あっ、身体が先に動くという言い方は正確ではありません。五十嵐さんの場合は、事前に試行錯誤をしてテスト検証をしてからでないと動きません。動きながら考える、考えながら動く、そして決断材料を収集するということが同時進行で回転するのです。

★なぜそれができるのか、学習する組織ではなく、MI組織をマネジメントしているからです。(つづく)

|

2020年12月26日 (土)

GLICC Weekly EDU(08) 神崎先生と鈴木さんの対話がおもしろい。エッジがきいています。

★昨日25日キリスト生誕を祝うクリスマスという時に、GLICC Weekly EDU 第10回「大学受験 総合型選抜のエキスパート神崎史彦氏との対話」が開催されました。大学受験における総合型選抜とIB教育(それに相当する海外の教育)を前提にしている帰国生入試との違いと共通点を対話することによって、総合型選抜の新しい価値が浮き彫りにされました。

Photo_20201226224601

★個人名は出していませんが、神崎先生も鈴木さんも実際に合格した生徒の諸条件を念頭に、どういう取り組みをした生徒が合格したか、合格した生徒の思考の広がりや深さがどこまでか、その広がりと深さを追究していく行動の特性などについて、リアルに対話しています。

★大学入試であまり語られないシステム思考という切り口でも対話されています。

★メディアなどでは、国公立大学の一般入試でも90%くらい記述式問題を出題していると語るのですが、その記述が総合型選抜や帰国生入試とどのように違うかまでは論じません。

★これは、このような思考のレベルの違いに対する意識が現場ではそれほど高くないからということを示唆しています。メディアは原則取材ベースです。取材で獲得できなかった情報を流すことはないからです。

★大学受験における総合型選抜と帰国生入試で、生徒共に乗り切っている神崎先生と鈴木さんならではの話が盛りだくさんです。ぜひご視聴ください。

|

2020年12月25日 (金)

2021年中学入試情報(05)宝仙理数インター「できちゃいました!フツーの学校」の「フツー」の意味。

首都圏模試センターの記事「宝仙学園中学高等学校共学部理数インター2020~生徒の自由なチャレンジを後押しする“知的で開放的な広場”」は必見です。そして、同校のワクワク楽しい学園生活を通して広く深く探究にのびやかに羽を広げて成長する生徒の様子、いっしょに知的に大騒ぎする教師の真骨頂が描かれている一冊「できちゃいました! フツーの学校 (岩波ジュニア新書) 2020/7/18 富士晴英とゆかいな仲間たち (著)」は必読です。

Img_0527

★内容については、両方をぜひ読んでいただきたいと思います。ここでは、2つコメントしますね。

★1つは、首都圏模試センターの記事の中で富士校長の語りを扱っている箇所についてです。こうあります。

<「都の私立中高協会から一般入試でのオンライン入試の実施は自粛という申し合わせが出された以上、どのような方法でも入試を必ず実施するとは名言できませんが、本校が「日本一入試方法が多い中学」と自ら謳っているのは、同時に「日本一柔軟な学校である」ことを意味しています。だからこそ、入試は何としても無事にやり切るのは当然のことです。>

★この冨士校長の語りは、首都圏私立学校の心意気を代表する発言だとお気づきになりましたか。どういうことかと言いますと、私立学校は1校では文科省と闘えないのです。エっ!?文科省と闘うの?と思った方もいるかもしれませんが、基本明治以来私立学校は官学の長である文科省とはつかず離れずバランスをとってきたのです。スキを見せれば私学はつぶされてきましたから(汗)。

★今回の大学入試改革も、半ばとん挫していますが、それは公立の校長会の猛反発に文科省が耐えられなかったという見方もありますが、そればかりではありません。私立学校の日本の教育を牽引する最先端の学びを取り入れたいとも文科省は思ったものの啓蒙思想やキリスト教、仏教などの宗教と理念を受け入れるわけにはいかないのです。

★明治の政府は、それは拒否してきました。戦後教育基本法ではGHQの背景がありましたから、うけいれてしまった形になりましたが、すぐに改正の動きがあり、2006年に改正されたのは記憶に新しいところです。

★基本形式的平等を保つ必要が政府にはあるので、あまりに先鋭過ぎると平衡感覚の力が働きます。文科省のメンバーの中には、私立学校出身者もたくさんいますから、先鋭的に動きがちです。しかし、ブレーキがかかるのは、日本のガバメントのあるあるですね。

★ですから、私立学校はスクラムを組む必要があります。しかし、スクラムを組んだら組んだで、組織の力学がやはり働きます。日本全体に比べれば先鋭化したグループでも、その中での先鋭化の次元はばらつきがあります。

★平衡感覚として標準化します。それでもその標準化は日本全体では群を抜いているのです。何せ、東京の私立中高一貫校に通う生徒は同世代人口の2%ぐらいです。文科省がこの2%に合わせて動くわけにいかないのは、考えてみれば当たり前ですね。しかし、一点突破しようというメンバーも文科省の中にはいるのです。彼らが何度もアタックして100の提案のうち1つでも通ればという覚悟で行っているから、少しずつ改善されていくのでしょう。

★そんな経緯があるので、冨士校長が私立中高協会と協力するのは当たり前なのです。しかしながら、私立学校は独自の建学の精神をもっています。同校の経営母体は、真言宗豊山派です。宗祖は、あの空海です。この系列のお寺は全国に約3,000寺あるそうです。僧侶(教師)数は約5,000人、檀信徒数は200万人だというのです。

★東京の私立中学・高等学校は合わせて25万人くらいですから、冨士校長が背負う身内の数と歴史はそれ以上です。ずっしりと重いですね。ですから、私立中高協会と協力するところはするけれど、独自性を維持することも両立するというのが富士校長の心意気です。先の記事の箇所には、そういう意味があるのです。

★もう一つは、岩波から出版した本のタイトルです。「フツーの学校」の「フツー」という表現が気になります。首都圏模試センターの記事を読んでも「フツー」ではないですね。茶室をPBLの拠点にしてしまうんですよ。多くの日本の教師が憧れるシリコンバレーのチャータースクールHTHが羨望の眼差しで見つめる茶室空間を使っているんですよ。

★日本の私立学校は、慶應義塾に代表されるように、イギリスのパブリックスクールをモデルにしています。「義塾」とか「共立」とかはパブリックの意味ですね。エエっ!?私立学校は公立学校をモデルにしているの????と思われるかもしれません。イギリスのパブリックスクールは、イートンカレッジやゴードンストーンスクールのような私立学校を意味します。

★イギリスでは、常識のことをコモンセンスと言いますが、このコモンセンスは、共通感覚も意味し、ヒュームやアダム・スミスが内なる最適判断をする基準とみなしているものです。

★よって、冨士校長は「コモンセンス」を「フツー」とカタカナでカジュアルに表現したのです。そして演劇作品「ユタと不思議な仲間たち」にちなんで「富士晴英とゆかいなな仲間たち」とサブタイトルを付けたのでしょう。

★演劇と言えば、シェークスピア。そうこれもまたイギリスの話ですね。

★私のように小難しいことを言うのは野暮ですから、冨士校長の粋なユーモアや遊び心がこうした本に結晶したのでしょう。そして、その前に学校となったのです。

|

2020年12月24日 (木)

2021年中学入試情報(04)等々力、中央大学附属の帰国生入試増の意味。

★日能研倍率速報(2020年12月24日現在)によると、都市大等々力の帰国生入試の応募者数は、289名で、前年対比115.1%。中央大学附属は40名で111.1%。

★両校は、一般入試ではすでに人気。2021年度入試では、帰国生入試でも人気ということになります。このことは一体何を意味するのでしょうか?

Photo_20201224210801

(写真は、等々力のサイトから。)

★グローバル教育に力を入れ始めているというのが回答のように思えますが、若干ニュアンスが違います。当たってはいるのですが、もともと私立中高一貫校のグローバル教育は生徒募集のために行われてきたという経緯があります。

★だから、一時期はグローバル教育に力を入れただけでは本物ではないだろうとも言われたときもあります。20年前の話ですが、ある官僚の方には、大学に行ってからでいいんだよ英語はとか、ある超有名大学の教授には、入試問題なんて論理的な思考力ができればいい。それ以上は大学に入っってからでいいんだよと言われました。

★10年前には東大出身のある大手受験業界の取締役に思考力入試なんて読解問題とどこが違うんだと言われました。肩書きも金もないノーロゴの私は、歴史が決めることですからとその場を去った記憶があります。

★しかし、今やグローバル教育も論理的思考力以上の思考力も、小学校の時から必要な時代になってしまいました。なぜなら、自分の判断で物事を決め、創っていかなければならなくなったのです。他人のつくったレッテル貼りを鵜呑みにしたり、それに対して文句を言っていてもリスクはマネジメントできないのです。

★このことを否定する官僚も大学人も塾の方々ももういないでしょう。もちろん、実行しているかどうかは別問題です。それがゆえに、進取の気性に富んだ保護者はこの実際的なところをチェックすようになったのですね。

★それに、等々力は、背景に五島慶太翁の文化遺伝子を継承している五島育英会があり、20年前は、五島慶太は強盗慶太vsピストル堤と言われていた時代があって、そんなレッテル貼りに恐れをなして、背景に隠していたわけです。キリスト教の学校が、宗教を前面に出すと保護者は選ばない、宗教なんてやめてしまえとどこかの塾の総帥に言われて遠慮していたのと同じです。

★しかし、そういう馬鹿げた時代は過ぎたのです。理念と現実を一致させるプラグマティックな構想力・実践力がなければ、パンデミックや分断世界を収められないでしょう。私たちは、今回のパンデミックで世界同時的に思い知らされたのです。

★しかも、それはダイバーシティをリスクペクトして、世界同時的に協働していく必要があります。英語とタレントとテクノロジーとトレランスという寛容性が問われる時代です。

★等々力は、見事にそこにシフトしたのです。

★中央大附属も、生徒募集のためではありません。同校は背景に中央大学があります。その大学が司法試験や会計士、税理士など国内の資格に傾倒しすぎたために、ライバル大学に国際生で溝を開けられました。もともと文学部は、超有名教授陣を集めていた経緯もあり、実務的なことと学問的なこととを融合させる議論は、長年学内でありました。

★その突破口が、グローバルな学部をつくることでした。法学部も、慶応大学に溝を開けられ始めました。外国語の出来る生徒も受け入れる総合型選抜など実施し、失地回復(何が失地かは本当はよくわからないのですが)を図っています。

★その流れの影響を中高も受けているということでしょう。

★この両校の帰国生入試の人気の時代背景、社会変動の背景には、かなり大きなものが見え隠れしているということでしょう。そして、この変動は両校だけの問題ではないのです。グローバルイノベーション教育に力をきちんといれているところ、PBLをきちんと実施しているところが、注目を浴びることになると思います。2021年中学入試のキーワードである“new power”とはそういうことも意味しています。

|

2021年中学入試情報(03)静岡聖光学院やはり人気!東京会場急遽増設!

★コロナ禍にあって、どこよりも早くオンライン授業を開設した静岡聖光学院。各種メディアが競って取材し、放映しました。当時業界から揶揄する声も聞こえましたが、それは常のことだし、今となっては馬鹿げた論評です。もちろん、私はその人たちのことを忘れはしません。それはともかく、学力だけではなくグローバルな視野を持つタフなリーダーが生まれることを証明した寮制学校静岡聖光学院です。さすが中学受験生の保護者は慧眼の持ち主が多いですね。東京の入試会場は増設決定です。

Dsc05306

★同校で道を歩めば、必ず光が見えてきます。

★もちろん、オンライン授業だけで人気がでているのではありません。

★世界のエスタブリッシュ校の生徒に負けない学力と体力と知力と寛容なる高邁な精神が育つことが、次々と短期間に証明されていったからです。

Dsc05286

★この実行力に驚かない人はいないでしょう。

Dsc05295

★破格の21世紀型スキルを体得できる静岡聖光学院。プラモデルもレゴもプログラミングも学問もスポーツも音楽も美術も、なんといってもPBL授業もすべてやります。

★生徒の成長や自己変容に役立つ環境づくりのために教師一丸となって力を尽くす姿に受験生・保護者は感動しないではいられないのです。ここで勉強したい。ここで自分を磨きたい。世界に羽ばたきたい。そう思うのでしょう。

|

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(08)new powerの意味

★聖パウロ学園は、グローバル教育やPBLを推進するnew power schoolですが、その根本は「対話」です。教師同士が頻繁に対話するし、教師と生徒も頻繁に対話します。その中身は、生徒1人ひとりが内的なエネルギーを自らいかに生み出しているかについてです。生徒が内的なエネルギーを自生するには、どうしたらよいのか、教師同士、教師と生徒、生徒同士が熱く対話するわけです。

Dsc06093

★たとえば、英語科のミーティングでは、生徒1人ひとりの学力だけではなく、態度、活動、感情、人間関係など分析していきます。各学年の定員が80名なので、全学年の生徒1人ひとりを英語科教師全員でそれぞれの角度から見ていきます。

★そして、それぞれが内発的モチベーションをいかに燃やすか、教科としての環境だけではなく、学校生活全体での環境の仕掛けをいかにコンストラクションするのか作戦を議論し、実行していきます。

★毎週ミーティングをしていきますから、当然PDCAのサイクルでリフレクションしながらリフォームしていきます。

★インストラクションしても内発的モチベーションはなかなか燃えません。多角的な仕掛け、多面的な対話をコンストラクションすることが必要です。

★どの角度やどの面からのアプローチをするかは、生徒1人ひとりによって違います。

★世の中は、個別最適化が必要だと盛り上げっていますが、いままでできていなかったからと合唱しているわけです。何か違うなあと思いますが、聖パウロはそこに創設以来取り組んでいます。学園の精神の守護神聖パウロは、対話の人だったからです。

★この対話による学びのコンストラクション創りは正解のない世界です。教師と教師、教師と生徒、生徒と生徒が対話しながらケミストリーを生み出せるコンストラクションを追究する果てしない物語です。

★ICTを使いながら、ポートフォリオや模試のデータを分析しながら、額を集めて対話していきます。英語科主任の大久保先生は海外大学の大学院で学んでいて、その理論的背景はハワードガードナー流儀のPBLです。もちろん構成主義(コンストラクショニズム)なので、いろいろな考え方を大久保先生はインテグレートしていますが、ガードナー教授の想いの多様な才能を開花する学びをいかにコンストラクションするかを重視しています。

★したがって、評価の仕方も、エバリュエーションだけではなくアセスもしようと先生方と対話しているのです。総括的評価だけではなく、形成評価やプロセスフォリオを評価していく眼差しはまさにハワード・ガードナー教授とシンクロしています。

★ですから、入学する前は、偏差値だけで能力をレッテル貼りされてきた生徒が、自らそのレッテルをはがし、自分の才能に気づき、のびやかに成長していく環境をマインドセットしようとしているわけです。

★今日は、12月24日クリスマスイブです。いつもは授業で忙しい先生方ですが、今日は一日、生徒1人ひとりの成長のプロセスをどうするか徹底的に話しています。生徒にとっては、目に見えない最高の贈り物となるでしょう。

★そうそう、各教科の先生方が同じようにミーティングをしているわけです。ですから、生徒1人ひとりのかけがえのない存在を聖パウロ学園の全員の教師の眼差しとケミストリーを生んでいくのです。

|

2020年12月23日 (水)

八雲の真価×進化×深化×新価(1)八雲の野望①

★ついに八雲学園の野望が大きく回り始めました。6年前のミドリ学年、当時の学年主任は菅原先生(高等部長)が兼任・牽引されていました。この学年は、進学実績も大きく伸びた時代でもあります。当時から英語の八雲という高い評価をうけていました。そのときのOGが、すでに2年前お茶大で数学を学んで八雲に帰還し、今秋田にあるあの国際教養大学の大学院で研究しているボッサム先生が非常勤講師として帰還しています。そして、大学院で共に学んでいる中国からの留学生王先生もボッサム先生の紹介で非常勤講師で活躍しています。

Yakumo1_20201223203801

★今回、菅原先生と菅原学年OGボッサム先生とその友人王先生、そして近藤隆平先生と対話したいと申し込んだのは、重要な理由があったのです。というのも、英語の八雲を知らない受験生・保護者は今やいないのですが、その英語教育の情報が6年前、下手をしたら中学再開時の1996年にまで遡った情報のままである可能性があると気づいたからです。

★ボッサム先生が卒業する時には、すでに充実したサンタバーバラをベースにした多様な留学プログラムがあったし、イングリッシュファンフェアという80人くらい日本で活躍している外国人の方を招いて文化交流をするイベントを行っていたり、英語祭を行っていたり、イエール大学の学生と国際音楽交流をしたりしていたわけです。

★しかし、先ほど下手をしたらと言ったのは、サンタバーバラの研修とスピーチコンテストとレシテーションコンテスト、イングリッシュパフォーマンスをしているという中学再開当時の情報しか伝わっていないケースがあるということに気づいたのです。

★エっ?でもそれは稀で、ファンフェアや英語祭、イエール大学のことはほとんどの人が知っているよと言われるかもしれません。しかし、C1英語とかラウンドスクエアとか多様なアクティビティを行うPBL授業とか、その授業とイベントが連動していて、全体として“Creative Education”のシステムが出来上がっているという見方は意外とされていないのです。

★このCreative Educationになっているというのは、ボッサム先生のアイデアです。今回のパンデミックのため、大学院の方はすべてオンラインだそうです。ですから大学院で研究しながら非常勤講師もできるのです。最前線の英語教育の理論と現場をどうつなげるかという眼鏡で母校をリフレクションできるのです。そのような発想がでてくるのは当然ですね。

★大事なことは、ボッサム先生自身が、非常勤で八雲に携わらなければ、自分がいた当時の情報のままでいたと語っていることです。一方王先生はその当時を知らないので、今の八雲は自分の受けた英語教育とは全く違う理想的な状況で、大学院で研究している多様なアクティビティを組み合わせたPBL授業を実践できることに喜びを感じているということです。

★やはり八雲学園の教育は本物志向だし、常に世界の最前線の教育にむかってアップデートしているわけです。このことを私は、今年になって5人の保護者と個人的に対話しました。5人とも、塾も学校も学年も違います。現在の私の仕事が塾がベースではないので、SNSや知り合いネットワークで質問された方々です。

★5人とも共通していたのは、英語の八雲の情報が6年前で止まっていたので、併願校の学校と比べて格別な差異化が意識できていなかったことです。しかし、私のラウンドスクエアの話や、近藤隆平先生と対話したYouTubeを見て、驚いて、先月から今月にかけて説明会や英語祭に参加して、みな目から鱗でしたとメールが来たり、対話する機会を設けたりしました。

★行くかどうかはまだわからないが、海外大学の可能性がちゃんとあるし、何より英語の学びが楽しそうだと。高2のスピーチに感動したとも。サンタバーバラの施設の映像に驚いたとも。雑誌や保護者会の情報だけではやはり実感できないものですと。

★こうして、OGが帰還して、リフレクションすることで気づきがたくさん生まれ、それを実現していくことで八雲は真価×進化×深化×新価を生み出し続けるのです。これを八雲の野望と言わなくて何と言いましょう。

★ところがですよ。八雲の野望はこれだけではないのです。(つづく)

|

2021年中学入試情報(02)持続可能なnew power shoolとして聖学院モデルがある。

★前回、2021年の中学入試(実は高校入試もそうなのだが)のテーマは「持続可能なnew power」とは何かであると書きました。受験生はすでに併願校をだいたい決めていますから、迷いはないとは思いますが、最後の詰めとして、2026年の時のことを考えてみるというのはどうでしょう。小3・4・5年生は、2027年、2028年、2029年のことを少し思い巡らしてみてはいかがでしょう。

0_20201223180801

(環境問題を解決する本物の想いとテクノロジー実装の世界の情報がつまったドローダウンの書も、聖学院のタイ研修の冊子も利益のためではなく世界の好循環を生み出すボランティア精神の想いで出版されているという点で共通しています。これが世に生まれ出ずる原点とそこに巻き込む力は破格の体験から生まれます。)

★昨年までは、これからは予測不能な時代だと言われてきましたが、2021年は違います。予測不能な時代は来てしまっています。そしてこれからも予測不能ですが、私たちは来ない時点で予測不能だと言っていた時とは意識がもはや違っていますね。どういうことかというと、ユーザー意識だけではいけないということです。

★塾でも学校でもテストでも、他人が与えてくれるものをただ消費しているだけではだめで、自分でも創る側に立たなくてはならないということです。

★エっ、そんなことできるの?はい、できます。自分の眼で評価する・判断するという方法を創るということです。それには、自分の子どもが中学に入る時から卒業するまでのカリキュラムが、卒業時に進む未来に対応できるのかどうか見極めることです。

★そのぐらいのスパンは、もはや予測不能ではありません。今となっては、想定内の範囲でしょう。

★これ以上予測不能な事態が起こったら、そもそも私たちの存在の危機です。しかし、今回のパンデミックで気づいたことは、自分たちでリスクマネジメントすることの大切さです。

★すると、他者の判断を参考に、つまり使って教育をすることに疑問を持たないold power教師がたくさんいるところは最も危険だとリスクマネジメントできるはずです。

★old powerはヘビーユーザー意識のことを言います。ですから、old powerは年齢に関係ないのです。若くても物事のヘビーユーザーはたくさんいます。年寄りでも自分で創るのを重視するnew powerを持っている教師もいます。

★具体的には、聖学院をモノデルにすると、new powerが何か明快にわかります。首都圏模試センターのサイトに教育ジャーナリストのおおたとしまささんが投稿している次の記事があります。「(前編)新学習指導要領のさらに先を行く斬新なグローバル教育が始動」がそれです。

★まずはお読みください。すると、こんなすごいプログラムをPBL授業で日々行っているのかあ!!と驚くでしょう。これはnew power 教師のなせる業ですが、その教師の年齢は、若いも年寄りも、聖学院の場合はないのです。そもそも二人の教頭がPBLの達人なのです。そして、それ以上に、生徒がPBLよろしくいろいろな活動を行っています。

★中高生起業家もたくさんいます。そのプロジェクトを通じて世界大学ランキングトップクラスの海外大学にも進学しています。

★聖学院モデルは、new powerがいかなるものか、おおたさんの丁寧な記事を読めば了解できますね。

★さて、しかし、2021年は「持続可能なnew power」がテーマです。new powerがいかなるものかわかったけれど、「持続可能」とはどういうことか?聖学院の場合、おおたさんが記事にする前からPBLを行ってきました。しかし、それはカラシダネのようにだんだん成長してきたのです。これからも成長します。

★つまり、アップデートし続けているのです。これからもますます進化するでしょう。

★なぜそんなことが言えるのか?それは、聖学院は他校ではなかなかできない破格の経験を基盤にしているプロジェクトがいくつもあり、それを授業のエネルギーに変換するPBL連鎖が循環しているからです。

★その中でも、タイ研修は突き抜けています。国際バカロレア(IB)は、7年に一度大きくプログラムを変更しますが、毎年アップデートされています。そのエネルギーは、コアにあるCASという創造性と芸術と奉仕活動にあります。このCASは破格です。

★IB創設にかかわったクルト・ハーンは、IBにこの破格の体験としての奉仕、つまりボランティアを導入したのです。これはナチスと自分の命をかけて教育で戦い抜いた体験が源泉です。これぐらいでなければ民主主義は守れない、世界平和は生み出せないという覚悟を今ではIBは10の学習者像で再構築しています。

★このクルト・ハーンと同じ原体験をしているのが、麻布の創設者江原素六です。気概や覚悟は、この破格の体験である原体験から生まれます。まさにそれこそプロジェクトの原点です。

★聖学院のタイ研修は、この命の危機に瀕しつつも、聖学院の生徒を笑顔で迎え入れるタイやミャンマーの子どもたちとの生活を通して、存在の重さとその脆さにショックを受けて、たとえば、SDGsなんて富裕層の陰謀論だとか気の抜けたことをいう政治家や大人たちとは真逆の覚悟をもって学ぶ覚悟を決める生徒を生み出します。

★沖縄平和学習も糸魚川農村学習も、日本にいあながら世界の痛みと同根のものに心射抜かれる衝撃を受けて、学ぶコトの重要性を受けとめる生徒を生み出します。

★このエネルギーが尽きぬない限り、聖学院は永遠に持続するnew powerを生成し続けるでしょう。グローバルとはそういう世界の痛みを引き受けることだし、その痛みを乗り越える道具としてイノベーションへの飽くなき追究があるわけです。

★もし、東大がそういう思いで研究する拠点であれば、聖学院の生徒はわざわざ海外の大学にいかないかもしれませんね。

|

2021年中学入試情報(01)校名変更・共学化・新学校化宣言の光英VERITUS セオリー道理か?いやテーマは「私立学校における持続可能なnew powerとは」。

★聖徳女子大学附属中高は、2021年4月より光英VERITAS中学校・高等学校として共学進学校となります。その募集が開始されました。日能研の倍率速報(2020年12月23日現在)によると、第一志望入試は、前年対比166.7%です。やはり、校名変更と共学校化、進学校化宣言はセオリー通り募集は集まるということでしょう。

Veritus

★しかし、大事なことは持続可能性です。いろいろなイベントやプログラムも大切ですが、なんといっても生徒が長い時間を費やす授業のシステムがどうかということです。ICTを使ったり、ディスカッションを活用したり同校流儀の21世紀型スキルがすでに行われているので、それは大丈夫そうですね。

★東京では、品川翔英が同じように動いています。すでに今春、校名変更、共学化になっています。たくさん応募があります。ただ、進学校化宣言はあえてしませんでした。これは千葉と東京のエリアの教育文化の違いでもあります。

★品川翔英のようにPBLをやれば進学実績もあがるというのは、東京の21世紀型教育推進校が証明しているので、品川翔英はPBLをやるというだけで期待値があがります。問題は持続可能性です。そのため、品川翔英はPBLのアップデートに余念がありません。それをきちんと広報しているために、2021年度入試も説明会には多くの受験生がおしよせています。

★ところが、千葉エリアは、進学校といっても東大にたくさん入れるよという印象を与えなければ、まだまだ生徒が集まりにくい教育幻想があるために、光英VERITUSはセオリー通りそのようにしたのでしょう。

★いずれにしても、市場のニーズに合わせつつ、本物教育は粛々と行っていくというのは両校共通しているでしょう。

★今回のパンデミックで、フェイクと本物の違いを意識するようになった保護者の眼は、持続可能なnew power schoolを探しています。2021年中学入試の1つの大きな傾向だと予想しています。

★どうやら、老舗かどうか、新興勢力かどうかということより、本音は学内がold powerとnew powerのどちらが勢いが良いかです。これは一般入試情報では現れてきません。つまり、たとえば、一般的な情報誌では、新しいことを取り入れている、新しい方法論をと入れているということは表現しますが、それを一部new powerが取り組んでいるのか、両パワーが協力し合っているのかまでは、書かないのですね。

★というわけで、「持続可能なnew power」とは何かが2021年中学入試のテーマとなるでしょう。

|

PBL生誕250年 ヘーゲルとベートヴェンと共に

★今年はヘーゲルとベートヴェンの生誕250年の年でした。彼らと同時代人のマリアテレジア・ゲルハルティンガーが創設した修道女会が経営するノートルダム女学院のND教育研究センター長の霜田先生とも本格的にPBL授業の協働リサーチを開始した年でもあります。昨日の霜田先生のオンライン授業では奇しくもカントとヘーゲルの倫理と弁証法の社会実装が行われたPBLでした。

Shimoda_20201223105501

★日本ではベートヴェン生誕250年は割と盛り上がっていますが、ヘーゲル生誕250年は、一部出版社と哲学者のセミナーなどで記念祭が行われているにすぎません。しかしながら、教育の世界では、21世紀型教育を推進している先生方のみならず、経産省もPBLを広めています。

★このPBLについては、そのルーツはデューイだとかピアジェだとかドネラ・メドウズのシステム思考だとか言われています。というか私はそうだと思っています。そして、この話がされるとき、あるいはするとき、同時にアートの話がついてきます。

★STEAMの話も教育の世界ではでてきています。デザイン思考とかいう表現も広まっていますね。

Hegelbeethoven

★ですが、コレラでなくなったヘーゲルですが、市民革命やパンデミックという疾風怒濤の混乱時を生きた彼らの研究や探究こそPBLだし、ヘーゲルの美学講義は、芸術の終焉を提唱すると同時に、その限界を破れば新しい芸術が生まれるプロジェクトが立ち上がることを暗に見抜いていたとも言われています。

★Thought Leaderの次の記事“ Celebrating art 250 years after Hegel’s birth BY BERT OLIVIER ON 8 SEPTEMBER 2020”にはこうあります。

“Beyond Hegel’s lifetime art developed in a manner that bears out his expectations. Particularly in the early 20th century one notices a plethora of new art movements – abstract expressionism, cubism, fauvism, conceptualism, suprematism, futurism, metaphysical art – all of which bear overtly theoretical names, and all of which claim to reflect the true nature of reality. In his wonderful philosophical analysis of this modern art, The Meaning of Modern Art (Northwestern University Press, 1968) Karsten Harries provides an interpretation that confirms this. It is truly as if Hegel had anticipated art becoming philosophy.”

★まさに、現代美術は、ヘーゲルの時代を超えて、表現道具が豊かになるも、それを超える哲学が優越しています。そこが商業デザインと決定的に違うところですが、ヘーゲルは道具が機械的システムをつくることを懸念しておそらく芸術の終焉を提唱したのでしょう。

★同時代人のベートヴェンも、ヘーゲルと同じように自由を徹底的に追求したある意味音楽哲学者です。しかし、ヘーゲルは、モーツアルトやロッシーニを語るもベートヴェンについては生涯語りませんでした。

★ロッシーニをウィーンに聴きに行ったとき、ベートヴェンの第9とミサソレムニスとのダイジェストが演奏されていたわけですから、ベートヴェンのことを知らないはずはありません。そのとき、恩人ゲーテを訪ねているでしょうから、ベートヴェン批判を聞いていたでしょうに。もしかしたら、聞いていたからこそ慎重になっていたかもしれません。

★ヘーゲルは、実際には苦労人です。学者の道を目指しながらも、カントのような栄光の道も歩めかったし、長生きもしませんでした。やっとベルリン大学総長になっても一年で辞めます。おそらくコレラが蔓延して事実上できなかったのでしょう。結果自身もコレラに感染し、あっけなく死にますが、ヘーゲル学派は世界に広がりました。

★哲学者で、哲学以外の領域、たとえば教育や芸術、政治経済に影響を与え、デューイにも批判的超克対象として影響を与えました。プラグマティズムの根底にはヘーゲリアンウェイがあるとも言われている程です。

★ヘーゲルは、教師や新聞記者として市井哲学も論じていたのです。ですから、理想と現実をつなぐ動態的弁証法の着想が降りてきたのかもしれませんね。ですから、ジャーナリズムの姿勢もあったわけです。もし、ベートヴェンが自分と考えが違えば、論じていたことでしょう。ヘーゲルは、国政や市民社会に対してもメディアで論じているのすから、美学の対象としてベートヴェンを論じないはずがないのです。

★それなのに、あえて語らなかったのはなぜでしょう。

★独断と偏見の推測ですが、コレラにかからなければ、語っていたかもしれません。というのも、ヘーゲルがオペラを好んだのは、楽器という道具を超える思想の発露を音声に見ていたからでしょう。道具が思想より優位だった時代を芸術の象徴時代と呼び、道具と思想が一致した芸術はギリシア時代で、そこがピークだと。そのあとは、思想が道具を超えて、芸術は終焉し、哲学の時代なのだと言って死んだわけです。

★第9もミサソレムニスも、ヘーゲルは直接聴いていないかもしれません。というのは、ちょっと考えれば、当時は録音技術がなく、聴くとしたらピアノでカバーした曲を聴けるだけです。第9やミサソレムニスのように大掛かりな作品は、頻繁に演奏されもしなかったでしょう。

★もしヘーゲルがこれらの楽曲を聴いたならば、歌声に、ああやはり道具を超えた思想を感じ、新たな芸術としてとらえなおしたかもしれません。絶対精神以上のものがあるなあと考え直したかもしれません。

★いずれにしても、ヘーゲルを批判的対象としたデューイは、媒介項として道具を大事にしました。しかし、ピアジェもデューイも構成主義という道具を媒介させた子供の成長論を語っているわけですから、結局はヘーゲルの弁証法の継承者であることは逃れられません。

★めちゃくしゃ影響を受けているのはヴィゴツキーです。彼は芸術論も書いているくらいですから。

★ヘーゲルの批判的対象者としてルソーがいますが、ルソーも演劇論や音楽論を書いていますし、それに作曲もしていますよね。しかも文字よりも音声を優位に考えていました。文字は、ルソーにとっては道具だったのかもしれません。

★道具と思想は、ヘーゲルにとっては、現実と理想です。その統合が絶対精神だったのでしょう。まったくもって、PBL的な発想ですね。ただし、私たちの今行っているPBLの場合は、そのプロジェクトの目標は絶対精神ではなく、人間存在の宇宙に拡大する協働世界という協働主観のはてなしない成長物語を描き続けることです。

★生徒中心主義とはそういうことです。でも、ヘーゲルもそこはみていたわけです。絶対精神なんてよんでいるけれど、そう簡単にはそこにいきつきませんから。

★いずれにしても、ヘーゲルがPBLをやっていたことは確かなんです。ギムナジウムの校長をやったときに、生徒とともに、彼の哲学をどうシェアするか教科書をつくっていたんですから。「哲学入門」がそれです。今でも手にすることができます。

★できちゃった婚もできず、20歳年下の女性と結婚する時に、そのときの息子をひきとり、家族を大事にします。ヘーゲルはカントやシェリングとは違い、決定的な経験主義者なんです。なぜなら、家族を自由に形成できない局面に立たされながら、職を探し、封建的な社会に抗いながらも、家族を守り、市民革命に情熱を燃やすも、すぐに恐怖政治に転化する現実を目にし、市民社会を超える国家とは何なのか、教師をやりながら考えていくわけです。

★ただ、考えただけではなく、革命の戦火の中で「精神現象学」の原稿が消失しないように逃げまどいながら生き抜いていく経験主義者の側面もあったのですです。そして、高邁な哲学の道を開いたわけです。現実と理想をいかに一致させるか、静態的な哲学者カントやシェリングに対峙し動態的な弁証法を確立するヘーゲル学派という壮大なプロジェクトを構築したわけです。京都学派もどっぷり影響を受けていますよね。

★総合の探究の時間は、もしかしたらヘーゲリアンウェイPBLの継承者の発想かもしれませんね。まあ、いずれにしても「美学」はPBLに必要です。なんかワクワクしませんか!ヘーゲルはアートとりわけ詩が大好きでした。親友ヘルダーリンは詩人です。互いに家庭教師の職探しに奔走した仲です。

★そして、ヘルダーリンも革命の情熱とともに狂気うち塔の中で死んでいきます。ヘーゲルよりも9年後に。実はヘーゲルと同じ年に生まれました。今年は、ヘルダーリン生誕250年でもあります。

★疾風怒濤の光と影の波は、その後夏目漱石、芥川龍之介、太宰治を襲います。京都学派を襲います。フロイトにも及んだでしょう。フッサールやハイデガーにも。それをなんとかしたい。その継承のウネリがSDGsということです。ですが、これとて光と影の弁証法を免れません。2021年はどうなるのでしょう。ミサソレムニスを聴きながら来年を展望したいと思います。

|

2020年12月22日 (火)

ノートルダム女学院のPBL授業 マイプロジェクトからワールドプロジェクトへ突き抜ける50分 哲学を学ぶのではなく、哲学する社会実装がポイント。

★本日午前中、ノートルダム女学院の霜田先生はオンラインPBL授業を行いました。「倫理」の授業で扱ったカントとヘーゲルをつかって哲学する授業です。スペシャルバージョンなので、有志が参加。同校はすでに冬休みにはいっていますから、午前中は部活などで時間がなかなか合わなかったのですが、霜田先生は、オンラインは、いつでもできるので、そのとき集まったメンバーでやりましょうというカジュアルな感じでした。

Photo_20201222211501

★高2の生徒が参加していたのですが、彼女たちは、すでに期末試験を終えていて、カントとヘーゲルの哲学はすでに既習事項です。霜田先生の授業はふだんからPBL授業で、対話やディスカッションはあたり前だし、レポートなどのアウトプットの学びも習慣になったいます。すでに、カントとヘーゲルはサイトや動画でプレゼンテーションできるようにプロダクトするまでになっています。

★何気ない動画作成ですが、実は今回のパンデミックで、総合型選抜の提出書類として動画も提出するという大学も増えてきたので、そういうときのための準備としても霜田先生は気遣っているわけです。もちろん、論理的思考や批判的思考、創造的思考の経験をするのが一義的ですが。

★それにしても、カントとヘーゲルの考え方を社会実装する、あるいは実用化してしまう見事な50分PBL授業でした。生徒の皆さんも考えたり対話することを楽しんでいます。その姿をカントが見たら微笑んだことでしょう。なぜなら、あの純粋理性批判の中で、私たちは哲学を学ぶことはできないが、哲学することはできるのだと語っているからです。なるほど、今回の50分は、哲学や倫理を学ぶのではなく、哲学するという行為そのものでした。

★チェックインは、マインドセットや足場づくりからはじまります。今年のコロナ禍を振り返り、身近なところにある世界の痛みを見出しグローバルシチズンのマインドを実感するプログラムですから、まずは自分事ということでしょう。一年の振り返りを漢字1字に込めてそれぞれ語ります。

★それから、Mentimeterで、さらに気になる漢字をどんどん打ち込んでシェアしていきます。主観から相互主観にシフトしていきます。オープンで共感しやすい足場が出来たところで、ヘーゲルの弁証法の三角ループとカントの二律背反ダイヤモンドツールをjumboardなどを使いながら、問いを生み出していきます。期せずして生まれる問いというのが実にいい感じなのです。

★ヘーゲルの弁証法の三角ループとカントの二律背反ダイヤモンドツールは、まさに哲学実装ツールでした。生徒が出してきた経済と環境問題の関係などは二律背反ともとらえられるし、ジレンマとしてもとらえられます。

★その問題解決方法は、カントなら道徳律だし、ヘーゲルだと法哲学的自己変容論です。そのどちらを使うのか、統合して使うのかは生徒に任されています。自分の人生と国やグローバル世界とどう折り合いをつけていくかは、たしかにたいていの場合、カントのようにモラルコードでいくか、ヘーゲルのようにモラルやリーガル、宗教などの文化、テックノロジーなどの多くのコードを統合させながらいくかどちらかでしょう。

★生徒のみなさんが、マイプロジェクトから始まって世界の痛みをどのように解決するかの入口に立てた50分でした。

★私も参加させていただいたので、最後に今年のある難関大学の総合型選抜の小論文課題を提示しました。はじめから予定していたわけではなく、生徒のみなさんの今の議論は、すでにこの問題について解決策を組み合てられる内容だったということを情報提供したかったのです。すでに、相当高次思考を回転させていることに驚いたということを伝えたかったわけです。

★そのあと、学びのパターンについてインタビューしていくと、「まずはやってみよう」から行うとか「まずは小さく始めて大きく育てる」とか「突き抜けようとする」とか返答してくれました。はじめから解答がわかるわけではないから、試行錯誤しながら取り組むことは大切だからとか、身近なところや出来るところからコツコツやっていくと突然全体が見えてくるもだからとか、突き抜けた向こうにある世界をみたいとか、それぞれの学び方がどんどんでてくるのに感動しました。

★もちろん、カントやヘーゲルについて、リサーチして編集して発表するというと学びの経験がすでにあったから、今回50分でできたわけですが、毎回のスモールステップの目標に向かって、同じようなサイクルで霜田先生はPBL授業を行っていきます。

★ですから、今回のサイクルがらせん状につながっていくわけです。ミニPBLであると同時に壮大なPBLのデザインでもあります。自己を見つめ、自己変容の弁証法的過程を経て、世界の痛みを解決するグローバルシチズンとして自己開示していく壮大なプロジェクト。総合の探究の時間とはまた一味違う自己探究プロジェクトが教科で行われているということでしょう。

★霜田先生のPBL授業のロールモデルエフェクトは来年4月からより一層加速していく予定です。霜田先生、生徒の皆さんすてきな年末をありがとうございました。メリークリスマスそしてよいお年を!

|

GLICC Weekly EDU(07) 中学新タイプ入試、総合型選抜、大学の帰国生入試、TOK、世界制作をくし刺しするシステム思考

★今週25日(金)のGLICC Weekly EDUのゲストは、総合型選抜や小論文、探究の指導で第一人者である神崎史彦先生です。株式会社カンザキ・メソッドの代表でもあり、リクルートのスタディーサプリのデザイン協力や面接や志望理由書、小論文などメソッド本を多数執筆もされています。

Photo_20201222103501

★この時期は、中学入試における国際入試や大学入試における総合型選抜が一息ついていますから、その振り返りを神崎先生と同番組主宰者の鈴木さんと語ります。

★合格者の志望理由書や小論文の書いた軌跡をシステム思考で対話することによって、なんと中学入試の新タイプ入試、総合型選抜、大学における帰国生入試、IBのTOK問題、そして世界制作プロジェクトを生み出す自己変容者として自己をくし刺しできることが、昨夜神崎先生とZoom対話することで了解できました。

★世界制作プロジェクトを立ち上げる自己変容者としての自己存在をささえるシステム思考の実装もできるように対話していく予定です。これからの中学入試、高校入試、大学入試における最後の詰めにも、次のステージに立ち臨む社会人にも役立ちます。

|

2020年12月21日 (月)

【速報:品川翔英】中学入試説明会も過去最高の参加。その理由を考える。

★昨日(2020年12月20日)、品川翔英は中学入試のための説明会を開催しました。柴田校長から、過去最高の参加者で、来年度に向けて身が引き締まる思いですと覚悟のメールが届きました。

Photo_20201221123201

★なぜこういう風が吹いているのでしょう。それは、学校教育の必要な要素をすべて行うというわかりやすいビジョンが、共感を呼んだのでしょう。中等教育で、大学進学教育をやるのは当然です。でも、その質は学校によってマチマチです。生徒の主体性を育むのは、これまた当たり前です。でも、そのクオリティはマチマチです。

★グローバル教育を行うのも、今回の世界同時的にパンデミックの猛威に対応するのを見ていれば、当然です。しかし、英検2級取ればよいみたいな教育が広がり、グローバル市民同士のコミュニケションができるようになり、世界をいっしょにつくっていく行為のレベルのグローバル教育はそれほど行われていません。

★教え込む一方通行型の講義では、主体性は育たない生徒の方が多いでしょう。ですからPBL授業は必要です。しかし、まだまだ一方通行型の授業は多いですね。

★ところが、品川翔英は、これらのことを真摯にすべて行っていく、言うまでもなく質の向上を果たすべく、アップデートしていく対話が学内に浸透しているわけです。

★これはいかにしてできるのでしょう。

★それは「教師の力」に尽きます。

★柴田校長とは、21世紀前夜からnew powere schoolへの挑戦の同士です。私は私で行てきましたが、柴田先生の応援もさせていただく機会を何度ももらいました。ですから、柴田校長が行ってきた数々の成功事例の理由はある程度推測がつきます。成功する時は、決まって、教師の多様な潜在的な能力を引き出し、足りない部分を互いに補完し合い、相乗効果が生まれるチーム作りがパワフルになっていました。

★しかし、その持続可能性はというと、副校長や教頭の立場で行っていたので、校長が代われば、邪魔され、教科専門性だけで行けばよいのだという勢力に足を引っ張られてきました。せっかくの成功への道を保守的権威が邪魔をしてきたのです。学内政治のジェラシーですね。学校改革あるあるです。

★しかし、今回は校長という立場で、理事会と教職員のスクラムづくりは強力です。それは、説明会に参加するとすぐにわかります。

★上記の教師力の関係図は、柴田校長の手法であると同時に一般化モデルにできると思います。

★説明会やサイトをみて、その学校の教師力を見抜くことは、可能です。学校選択の際の参考にしてください。

|

2020年12月20日 (日)

品川翔英の飛躍 怒涛の2021年を迎える

★昨日19日(土)、品川翔英の国語科の先生方とワークショップを行うために訪問。学内全体が静かな緊張感と前のめりのいい感じが伝わってきました。そういう時期なのだなあと改めて実感しました。国語科の西山先生の授業実践の分析を国語科のメンバーでいつものように行っていきましたが、ある意味、1年間の取り組みを通して国語科の授業デザインのまとめの見通しが立つワークショップとなりました。

Photo_20201220201101

★大坂なおみ選手の二社のCMで議論になった差別問題や格差問題を生徒と対話しながら、源氏物語の中に同じような問題がないのか対話していく授業の展開は、古典を学ぶ意味を生徒の身近な問題とつなぐことによって、気づきを生み出すという効果的なPBLでした。同年代の対話と歴史を超えた紫式部との対話です。

★セレンディピティは多様な対話から生まれてくるのは、PBLの真骨頂ですが、国語科のメンバーは、全員このアクティビティを効果的に活用しています。

★前回の今井先生のワークショップで共有した物語の構造を13のフェーズでとらえるという分析を、「末摘花」を素材に生徒共に行うPBL授業でもありました。この分析を、国語科のメンバーがすぐに共有して使うというのは、チームの意識も高まります。

★さらに、先生方は、この分析を、心情変化や13フェーズを絡めてグラフにして再分析しました。

★この時、論理的なスキルと文学的スキルの両方が融合されることが改めて可視化されたのです。この能力を生徒が身につけたとき、たとえば総合型選抜の志望理由書や小論文、面接でどのように有効かという対話もしました。極めて有効だと共有すると同時に、6年間通しての国語科の豊かなカリキュラムの構造と授業デザインの全体像が見えてきました。

★次回は、田中幸司先生が、一年間の取り組みを凝集した国語科のPBL授業の構想と実践をプレゼンします。実質10カ月で、世界標準のPBL型授業に到達したのは、驚くべきことですが、実は、これはある意味世界でも類例のない授業です。

★エっ!?とお思いでしょう。PBLといっても品川翔英のは、Project based Learningなのです。Problem based Learningと呼ぶ人もいますが、両者は違います。後者において、グループワークやペアワークは、学びの対象を理解するために、あるいは問題を解決することが中心です。

★ところが、プロジェクトの場合は、あくまで生徒が中心です。問題が中心なのではないのです。もともと後者は、医学の世界で行われてきました。この場合は、まずは問題を解決しなければなりません。

★プロジェクトの場合は、生徒1人ひとりのかけがえのない存在をいかに教師といっしょに豊かにしていくかという人間存在の話なのです。だから、建学の精神や校訓のような哲学が授業に浸透していなくてはなりません。

★ところがProblem based Learningの場合、問題が解けるのに、哲学は不要です。この決定的な違いは、私立学校ならではの気づきなのです。そして、それを探究という長期的なプログラムでではなく、50分という教科の授業の中で行おうというのです。この試みは世界でも日本の特殊事情(学習指導要領の拘束と教科の多さ)ですから、そういう意味では極めて珍しい授業なのです。

★IBもまたこのプロジェクトの意味でPBLを行っているところが増えてきましたが、それは10の学者像という強烈な生徒中心主義の理念があるからです。とはいえ、教科数は少ないので、時間的なゆとりはありますね。もちろん、そのゆとりを深める時間に使うので、どうしてもPBLは必要となってきているのです。

★品川翔英がこのようなPBLを行うように断固たる決意で柴田校長は臨んでいて、そのビジョンを学校全体で共有しています。学習する組織と危機管理ができる学校経営の合力を発揮し始めた品川翔英です。

★中学募集も、高校募集も、過去20年さかのぼってなかったような溢れようです。世界の問題を引き受ける生徒の存在のかけがえのない価値を共に生み出そうとする同校の先生方の姿と生徒会をはじめとする在校生の新たな歴史を創っていこうという気概に、受験生も保護も共感しないではいられないのでしょう。

|

2020年12月19日 (土)

GLICC Weekly EDU(06) パラダイムメイカー 山下さんと鈴木さん with コロナで変わる受験業界

★昨夜、第9回GLICC Weekly EDUが開催されました。テーマは<首都圏中学模試センター代表取締役社長 山下一氏との対話「入試問題対応だけではなく、人生を構想するツールとしての思考コード>でしたが、その前提になるwithコロナによって2021年中学入試が想定以上に変わるという山下さんの話は目から鱗でした。

Edu 

★とにかく、模擬試験の何十万という問いのデータ件数が頭の中にあり、中高や文科省の情報が豊富な山下さんならではの独特な話は、ふだんなかなか聞くことができないだけに、貴重な収録となりました。

★この豊富なデータを掛け合わしてくると、見えなかった未来が見えてくるというのは、著名な未来学者のメソッドですが、それと同じリサーチメソッドを山下さんは行っています。

★詳しいことはぜひYoutubeをご覧いただきたいのですが、結論をいうと、一斉休校のために出題範囲が限定されるということが、知識出題の制限になる。しかし、学校は思考力という側面を重視することにより、知識の量を気にしない出題形式になっていく。つまり、適性検査型や思考力入試型に2科4科入試も変わっていくという山下さんは大胆な想定をしています。

★これまで、そのような新タイプ入試は、2科4科の補完的な入試というイメージだったのですが、主流は新タイプ入試のような思考力型に大転換するというのです。

★しかも、思考力といっても、多様で、ロジカルだけではなく、クリティカルでクリエイティブシンキングまで広がっていくというのです。今までは、偏差値という尺度しかなったので、ざっくり思考力という分類で、あとは難しいか易しいかという区別しかできていなかったのです。

★ところが、首都圏模試センターが開発した思考コードによって、思考力の種類を明快にし、それによって、思考のシステムがはっきりしてきたわけです。

★思考コードの開発はもう7年くらい前から始まっています。それとともに、新タイプ入試も増えてきています。どうやら、山下さんは受験業界の入試問題の大変化を生み出しているパラダイムメーカーということでしょう。

★それから、当日ちょうどGLICCの三田国際の国際入試の合格者数が判明しました。鈴木さんは、語っていいですかと控えめでしたが、10名だと公表しました。

★これは他の塾ではない結果です。というのも、一般入試以外の新タイプ入試専門塾はGLICCぐらいでしょう。GLICC代表の鈴木さんは、2科4科でなければ入試ができないという時代ではもはやない。英語と国語と算数の学びを通してクリエイティビティを養うことによって、ダイバーシティを大切にする学びの時代だと。その一つの結果として三田国際の国際生入試合格者が大量に出たということです。

★もともと、GLICCは、帰国生の大学入試、英語をベースにしたAO入試(現「総合型選抜」)、IBやAレベルの言語と数学などのサポートがメインストリームでした。つまり、英語と小論文と海外の数学の指導がなされてきました。

★それが中学入試の新タイプ入試が生まれることによって、GLICCの強みをそこに結びつけました。鈴木さんもまた受験業界の在り方を転換させるパラダイムメーカーだったということが改めて確認されたGLICC Weekly EDUでした。必見です!

|

沖縄インターナショナルスクール(OIS)改めてIB一貫校の意味 日本にはない数学と言語教育

★すでに、「沖縄インターナショナルスクール(OIS) 沖縄初IB一貫校誕生 沖縄から世界を変える ついに開成や灘と肩を並べる学校の誕生!(2020年12月16日)」で、OISがIB一貫校になってことはご紹介しましたが、知念理事長から認定書のコピーをメールで頂き、改めて日本におけるこのことの重大さについて感じ入りました。

Oisib-2

★というのも、メールには、琉球新報の記事も同封されていました。「OIS、算数で世界2位」がそれです。OISは3PLearningという団体が世界各国の広がりで行っている幼稚園から小学校の数学と言語のリテラシーのオンライン学習サイトを活用しているようです。もちろん、オールイングリッシュです。その団体が行っているワールドワイドな算数のリテラシー=マスレチックス ヌーメラシーのコンクールで、同校の小3と小4の生徒が2位を獲得したということです。

★同記事は、今回のIB一貫校になった件についても掲載していました。

★このヌーメラシーの話とIB一貫校になった話が並列されているわけですが、本当は重要なことを語っているのです。日本の数学と欧米の数学は何が違うかというと、計算であっても欧米はセンテンスで話します。日本語ももちろんセンテンスで話すのですが、どちらかというと記号を並べるわけです。これは中国や韓国でも同じですね。

★つまり、アジアにおいては数学も漢字なのです。目で見たとおりに、言語で語るわけです。ところが、欧米の数学は式という記号とそれを言語に変換する時は、かなり違いがでてくるのです。

★最近、よく数学は、数式と図形への置換、数式と言語への置換が必要だと言われています。また数学は言語構造だという方もいます。しかし、それは日本の数学だけ見ていると何やら深遠なもののように聞こえます。

★しかし、欧米の数学に接すると、極めて実際的にそれが行われているのです。この違いが欧米とアジアで数学コンクールなどをやるとアジアの子が有利ではないかともいわれるゆえんですね。

★そういう意味では、OISはその両方を子供たちが経験できるのです。この経験を踏まえて最終的にはDPに進んでいくのです。OISがアジア圏の学びの拠点、教育の中心になるというのは、その両方を経験する。つまり知のダイバーシティを経験してDPに進める学び舎だからということです。

★西洋と東洋の調和をはかるには、両方の文化を互いに知らなければなりませんが、知の領域でのダイバーシティがあるというのは、目から鱗でした。

★知というのは万国共通の普遍的なものだと思い込んでいましたが、計算の仕方ひとつとっても、数式と言語の関係が違っているのです。コンクールでどちらが有理かとかそういうことではありません。文化の違いを認め合うには、数学と言語のリテラシーの違いを互いにリスペクトし、活用していくということが必要です。

★なぜ英語を学ぶ必要があるのか、数学と言語というコミュニケーション能力の文化的背景の違いを知らなければ、異文化理解など到底深められないということです。教育を通して世界平和及び環境問題の解決をというならば、そこまで深めていかなければならないのだと気づきました。

★大学受験のための英語や国語を学んでいても、表面的な異文化理解しかできないでしょう。

★OISがバイリンガルのIB一貫校であるということの重要な意義がここにあります。

|

2020年12月18日 (金)

沖縄インターナショナルスクール(OIS)そして聖パウロ学園 PBLを行う真意

★沖縄インターナショナルスクール(OIS)の経営と教育をPBLで貫き通すという知念正人理事長の気概と慧眼なマネジメント力、そして世界平和への高い志に共感しているわけです。同校の先生方とZoom対話をしたのは、前回ご紹介しましたが、これが始まる前に、理事長・校長・事務局長をはじめる経営陣とのZoom対話も行いました。

Pbl_20201218105301

★あくまで、一般的な話ですが、理事長がPBLを理解しているということは少ないし、事務局がPBLに理解を示すことなどあまりないでしょう。なぜなら、PBLと生徒募集、大学進学準備教育、カリキュラムマネジメントはバラバラの要素だと思われているし、かりにつながっていると意識されたとしても、それらを実際につなげようとすることなどなかなかありません。

★しかし、OISは違います。経営方針、生徒募集、カリキュラム、大学進学準備教育がつながっています。要するに、経営陣もシステム思考の場としてPBLを捉えていますから、世界の情報・情勢、地政学上の条件、教育の歴史、アジア圏のマーケティングなどをつなげて対話するトレーニングに長けているのです。

★考えてみれば、OISは1条校ではなく、株式立の学校です。当然そうなるわけですね。

★しかし、1条校であっても、そういう理事長はいます。たとえば、聖パウロ学園の高橋博先生も天才的世界視野をもっていますし、PBL推進者です。IBとは違って、自己肯定感が低いとレッテル張りされている高校生にそんなものは剝がしてしまえばよいと、同校の先生方と一丸となってカトリックの真正系譜の教育出動をしています。教育の系譜には、実はもう一つキリスト教の系譜があるのですが、それは、近代教育は、マックス・ウェバーではないですが、すべてキリスト教の系譜に包括されてしまうので、あえて前回は、いれませんでした。これについては、いずれはっきりさせますね。

★ともかく、OISや聖パウロ学園のように、PBLを教育にも経営にも活用している理事会のある学校が増えることが、世界を教育で変えることになるでしょう。

★あらゆる偏差値層で、誰かに貼られた負のレッテルを剥がしまくる生徒がうまれてくる希望の学校がどんどん生まれてくるのがポストコロナ時代です。

★今後、そのようなポストコロナ時代の希望の学校を紹介していきますね。

|

沖縄インターナショナルスクール(OIS) IBにおけるPBL すべての教師がIBの系譜のPBLを発展させている

★沖縄インターナショナルスクールが、幼稚園から高校までIB一貫校として認定されたことは前回紹介しました。このことの意味はいろいろありますが、今日本の学校で行われているPBLとは少し違いがあるということは大きな意味があります。実に知的にパワフルでケアフルでリーダーシップを育成するPBLです。しかも、言うまでもありませんが、すべての教師がPBLを実践しています。

Photo_20201218090001

★今月2回に分けて、ZoomでOISの先生方とワークショップ型レクチャーをしました。1回目は日本人の先生方、2回目は外国人の先生方という分け方です。両方とも20人弱の参加でしたから、日本人教師と外国人教師の割合が1:1という凄まじさです。

★PBLをどうやって行うのか、PBLはそもそもやるべきなのかというよくある質問は出ません。自分たちの行っている授業はどういうPBLなのか、世界標準に比べどのくらい有効なのかというある意味形成的評価を相互にし合うということが目的でした。そのときに、日本の現場のPBLを幾分知っている第三者を鏡にしようということで、私が呼ばれたのだと思います。

★外国人の先生方との対話は、オックスフォード大学出身の中村先生がトランスレートを超えて私の言いたいことを補ってコーディネートしながら進みました。英語と日本語のちゃんぽんで私もチャレンジしましたが、やはりちゃんと自分で英語でコミュニケーションがとれなければ、世界市民と対話するのは不可能だと当たり前のことを思い知り、高齢者になったからこそ、英語の勉強を始めようと思い知りました。

★それはともかく、深い問いが飛び交い、可能であれば、日本の生徒がこういうバイリンガルな環境で学ぶコトができるといいなあと素直に感じました。

★私なりに、教育や学習理論の系譜を上記の図のようにざっくりですが整理しました。自分たちが行っているPBLの系譜がどれなのかは、ものの見方や考え方、感じ方がどのように影響を受けているのかを確認し、つまりマインドモデルを再確認することは大切です。というのは、そこを軸にさらにほかの考え方をインテグレートしていくかどうかを判断することができるからです。マインドモデルは、発展するための方向性を考える時のクライテリアなのです。

★それに、互いのメンタルマインドが違うことを確認しないで、議論をしたり、プロジェクトを行っていくことは、無用な葛藤を生み出すので、そこは回避し、もっと重要な課題を議論し、さらには発展していくために大切なことです。

★IBの場合は、オックスフォードの系譜です。つまり、アレック・ピーターソンやクルト・ハーン(ハイデルベルグやフライブルグでも学んでいます)が学んだ大学です。教育論的には、オックスフォードはジョン・ロックですから、J.J.ルソーの系譜のペスタロッチやデューイとは違います。ましてヘルバルトとは全く違います(みようによっては、共通するところもあって、そう簡単ではないのですが)。

★もちろん、長い歴史の中で、いろいろいろな考え方が離散集合・雲散霧消しながら統合されているわけですから、こんな簡単な分け方はできないのですが、実際の話、原点に還る時、どこを訪れるかというと、IBの場合はオックスフォードでしょう。もちろん、ケンブリッジも寄るでしょう。ニュートンが学んだカレッジですから。

★IBは、第二次世界大戦後、壮絶な経験を通して学んだことが原点であると同時に、その後の冷戦や湾岸戦争などの経験を通して、認知科学の見識も統合していきます。その結果生まれたのが10の学習者像で、常に自己変容しています。ですが、オックスフォードという系譜を忘れはしないでしょう。

★クルトハーンが創り、IBやラウンドスクエアのモデルになったGordonstoun schoolのサイトの動画を共有しながら、城はないけれど、海はあるし、教育のクオリティは負けないとみんなで笑って、先に進むことの高い志を共有しました。

★日本に世界のエスタブリッシュ校に匹敵する学校がどんどん立ち上がることは大歓迎です。教育から世界の平和を生み出すという、上記の図の様々な教育の系譜につながることは、ようやく日本も世界精神の仲間入りをするということです。東大を頂点とする学歴社会の中で椅子取りゲームに目を反らされてきた日本の教育。そんな中で格差が生まれ、どこに向かっていくのかわからなくなっている日本。

★OISはそこから救う真/新のエスタブリッシュ校になるでしょう。もちろん、静岡聖光学院や八雲(両校とも系譜をオックスフォードに合わせてきています)をはじめ、他にも高い志を持って挑戦しようという学校もでてきました。工学院のようにケンブリッジに系譜を合わせようとしている学校がでてきました。それぞれにそれぞれのPBLを行っています。これらの学校の共通点は、PBLは存在の条件を生み出す教育のシステム思考そのものだということです。

★ポストコロナ時代の希望は、たしかにあります。

|

2020年12月16日 (水)

沖縄インターナショナルスクール(OIS) 沖縄初IB一貫校誕生 沖縄から世界を変える ついに開成や灘と肩を並べる学校の誕生!

★いよいよ始まります!沖縄インターナショナルスクール(以降「OIS])のアンビシャス!アジアの初等中等教育の拠点校になります。1条校でないけれども国内外の大学受験資格のある学校の誕生です。しかも、地政学的にも戦争体験からいっても、IB創立者のクルト・ハーンとシンクロするマインドで溢れています。もちろん英語をベースにする多言語主義のIB校です。クルト・ハーンが創設したIB1号店であるアトランティックカレッジと同じように海が近い学校でもあります。このことは重要な意味があります。いずれご紹介しましょう。

Ois_20201216201201

★2022年世界のエスタブリッシュスクールがクルト・ハーンやアレック・ピーターソンのマインドを現代化するために、オックスフォードに集結します。開成の大学合格実績の3%に相当する海外大学進学実績が、OISの30%進学先になる予定です。つまり、開成や灘を超えるエスタブリッシュな教育を行う学校が日本に誕生したのです。

同校サイトにはこうあります。

 2020年12月、Okinawa International Schoolは国際バカロレア高等課程(IBDP)の認可を取得いたしました。それにより、初等教育課程(PYP 2011年認定取得)、中等教育課程(MYP 2016年認定取得)とともに、幼児教育から高等教育まで国際バカロレアカリキュラムを柱とした一貫校となりました。

日本には85校(2020年12月6日)の国際バカロレア認定校があり、3プログラムを取得した学校は私達で11校目となります。沖縄県内での一貫校はOISが唯一となります。

OISは今後、地政学上、そして歴史的、文化的にも特異な地域で、さらに海に囲まれ、温暖化という地球規模の環境問題に直面している沖縄で、国、人種、宗教、政治を超えて教育という視点で同じIB教育や探究教育を行っている各国の学校や教育機関と連携し、アジアの平和と環境問題を考え探究しながらグローバルエリートを育てていくインターナショナルスクールを目指します。

★開成や灘を、東大合格で追い抜こうというような野暮な発想はまったくないのがよいですね。沖縄学からはじまってアジアの教育圏を創り出し、教育で新しい平和を生み出そうというまさにIB創設者たちのマインドそのものを引き受けた学校です。

★パンデミックのため知念正人理事長とはZoomで対話することが多いのですが、めちゃくちゃ教養豊かで未来ビジョンが明快な人物です。こんな私の話にも丁寧に耳を傾けて頂けるのです。

★オックスフォードや北京大学などで研究していた教師も集まり、哲学やハイレベルマスの対話など盛り上がります。なにより、そこに生徒像があるということが重要です。たんなる哲学談義や教養お茶飲み話ではありません。

★先生方とのZoomPBL研修のファシリテートも何度か行う機会をもらっています。私のPBLセオリーなど不要だと申し上げるのですが、それでもと。オックスフォードの系譜のIBのPBLとフランスと米国の流れをインテグレートしている私のPBLとの相違点が明快になるのが興味深いということのようです。

★私も、コンサルではなく、IBやラウンドスクエアを創設したクルト・ハーンの奉仕のマインドに少しでも近づこうと思い、あくまで友情出演です。沖縄から世界の平和を生み出す竜巻が生まれるならばと内なる熱いミッションが生まれた次第です。

★教育から世界平和をと最初に叫んだのは、コメニウスです。彼の精神は近代教育にそのまま流れています。沖縄は、日本でも平和問題が日常生活にあります。パンデミックが日常にある私たちは、今や沖縄の解決のつかないせ戦争と平和の問題が常にニューノーマルだということを理解するに難くないでしょう。

★みなさん、くだらん大学入試改革茶飲み話はもうやめて、教育から世界平和を生み出す力を日本中で形成しましょうよ。それこそここに全集中いたしましょう!

|

工学院インパクト(21)田中歩先生と振り返り、未来を展望する。PBL銀河計画②

★田中歩先生は、中学入試における新タイプ入試を設定したのは、やはりダイバーシティが肝心なのだとしみじみ語りました。ダイバーシティというのは、異文化理解の話だけではありません。同じ文化の中でも、性格や男女などの性、才能など多くの点で多様なのです。それを受け入れ、生徒1人ひとりのタレントが花開くような21世紀型教育をということだということです。

A4

★そのために、カリキュラムは教科の授業でも探究やグローバルプロジェyクトなどのスペシャルな教育においても、すべてにおいてPBLを設定するのだと。

★その結果、大事なことは、自己変容創造型の自己を自身の中に実装できるようにサポートしたいのだと。そういう意味では、総合型選抜であろうと、一般入試であろぅと、推薦入試であろうと、どのタイプを選ぼうと、組織順応型自己からは解放されて欲しいし、問題解決型自己で満足しないで、変容して欲しいと。もちろん、そうなるように応援するのだということでした。

Photo_20201216121301

★一般入試を本格的に受ける受験生は、日本全体で20%。工学院はもっと多い。しかし、一般入試だからといって、目から鱗の体験や活動をしなくていいなどということはない。自己変容を生み出す学園生活を送れるような環境にしたいと。

★総合型選抜を受ける生徒は近年多い。この20%一般入試のレベルの大学の総合型選抜は、自己変容創造型自己が求められている。そうでないところは、中には問題解決自己で行けるところもあるし、組織順応型自己でもいけるところはある。

★しかし、どのフェーズであっても、自己変容創造型の自己に成長できる環境をつくりたいと。たんに主体的だけではだめなのだと。オリジナリティをもった主体性でなければと。オリジナリティは、自己変容の過程の中でしか生まれない。

★一般入試で点が取れないから総合型を受験するとか、体験や自己変容していないからテクニックで一般入試を受験するとかではなくてと。今年の高3は、田中歩先生が中1から出会っている。しかも21世紀型教育改革1期生。大学受験時にパンデミックも襲い掛かってきた学年です。

★グローバルプロジェクトに取り組む生徒の姿をみて、多くが自己変容創造型に成長していることに、感動しつつ、まだまだ最後までサポートする生徒もいることに凛として臨んでいる田中歩先生。

★生徒中心主義とは、生徒が自己変容創造型自己として羽ばたいていけるPBL環境を創る教育出動をすることなのだと改めて感動しました。年末に自己変容の軌跡を語ってくれる高3生と対話します。一足先に、総合型選抜で進路決定が決まっている生徒です。いわゆる総合型選抜の対策をせずに独自路線で合格を勝ち取った生徒だということです。対話できるのが超楽しみです。

|

GLICC Weekly EDU(05) 今週金曜日18日、首都圏模試社長山下一さんと語ります。思考コードの人生における役割について。

★今週金曜日第9回GLICC Weekly EDUのゲストは首都圏模試センター社長山下一さんです。山下さんは、中学受験に思考コードを導入し、学びのパラダイム転換を仕掛けているエポックメイカーです。中学入試問題を分析したり、思考力を育てる授業をデザインする時に役立つのが思考コードなんですが、なんといっても生徒自身が、自分の人生を構想していくときに役立ちます。

Photo_20201216085601

★そもそも中学入試にしろ、高校入試にしろ、大学入試にしろ、すべて人生構想の過程の一部ですから、その構想が先にあって、学校選択や学び方があるわけです。

★しかし、実際には、目の前の受験に対応するための行動をどうするかが目的化し、人生構想はあまり考えないのが実情です。もしその構想があれば、選択した学校に合格するだけのための学びをするようなことにはならないでしょう。

★受かってから考えるというのもありですが、受ける前にものの見方考え方を大切にすることを今一度山下さんと考えてみたいと思います。

★実際国際バカロレアの小中学時代のパーソナルプロジェクトなどは、セルフマネジメントスキルを大事にしています。

★中学受験も同様ではないでしょうか?では、どうやって?そんなとき、思考コードが大いに役立ちます。

★セルフマネジメントの一環として学校選択や受験勉強があるという位置づけで、中学受験について多面的な対話になるのではないかなと思っています。

|

100年後の静岡聖光学院がいまここにある。

★昨日静岡聖光学院の副教頭田代先生、進路指導部長小山先生、教務部長の佐々木先生とZoom歓談をしました。ここ数年の同校の大胆かつ細心の注意をはらった変貌ぶりを振り返りつつ対話をしました。オックスフォード大学をはじめとする世界大学ランキング10位以内の大学に視野を広めた諸条件、オンライン完備によるハイブリッドPBLの環境、留学生を迎え入れるグローバルモードのキャンパスリフォーム、世界標準のカリキュラムマネジメントとAレベルをテコにしたグローバルモードの進路指導などの条件をどこに全集中させるのかブレスト的な歓談でした。

201215

★100年後の世界に向かって動き出す2022年に起こる様々なグレートリセットを見据えつつ多角的に語り合うことは確かに必要です。2022年に高校の新学習指導要領の本格実施が始まります。これによって、再び大学入試改革の話題もでてくるでしょう。しかも民法改正によってその時受験生は同時に成年になります。

★生産緑地法案改正による不動産の激変があり、スマートシティ構想が加速するのも2022年です。アジアの富豪が、山々だけではなく、大都市圏の不動産を一挙に購入しに来る元年になるかもしれません。

★ICTによって生産手段が1人ひとりの所有になり、スマートシティによって、住まいの環境も変わります。AIによって仕事が変わる準備が実は日常生活からすっかり変わります。

★当然教育も変わります。日本の中心なんてどうでもよくて、世界そのものが1つの拠点になります。先生方と宇宙から地球を眺めるSDGsのコンセプト動画を共有しながら、それを感じました。

★これなら、イギリスはイートン、日本は静岡聖光学院という発想アリですね(笑)と田代先生が叫び、Zoom空間は大笑いの渦になりました。

Photo_20201216033701

★陸から見た歴史観→海から見た歴史観→宇宙から見た歴史観へとビジョンは拡張したわけですね。2022年は、ちょうど世界の教育はオックスフォード大学にいったん集結します。そこから再び世界を描き直すわけですね。

★その準備はいまここで、世界同時的に生まれています。パンデミックが背中を押しているのでしょう。

★いずれにししても、すでに総合型選抜の成功サンプルをもとに、進路指導は変わります。静岡聖光学院の破格の海外姉妹校との連携が、中学段階のキャリアデザインをガラリと変えることになるでしょう。高校段階はもはや18歳成年から考えたキャリアデザインになるでしょう。当然、カリキュラムも変わります。具体的な話は、いまは秘密です。

★とはいえ、すでに動いている学校の先生方はお分かりだと思います。

★農地なき第三次産業、スマート空間による第二次産業、デジタル空間におけるサービス産業、このリアルな時空へのシフトがすべての産業構造を変化させます。これがグレートリセットの本当の意味でしょう。

★第4次産業であるクリエイティブクラスが、すべての産業に染みわたるということです。スマートシティとは、産業構造自体がスマートになるということです。つまり庭園発想ですね。

★シリコンバレーやHTHが欲しがっている庭園発想とは、すべての産業構造をスーマート化する。折り紙化するということでしょう。静岡聖光学院が世界から注目されるのは、そのような叡智が蓄積されているからです。もちろん、OBも含めてということです。

★現実と理想と歴史観について、過去にこだわったり、未来に先延ばしすることなく、いまここで圧縮して対話できる教師陣が揃っているのが静岡聖光学院です。

★OB諸君、静岡聖光学院の世界戦略のサポートする起業を通して、地球全体に貢献する社会的インパクトを生み出しませんか!

★今回、国内の椅子取りゲーム=偏差値ゲーム=ラットレースから解放される根拠なき自信の波動を頂き(笑)、生きることの美しさを感じることができました。田代先生、小山先生、佐々木先生、ありがとうございました。

|

2020年12月15日 (火)

才能力の時代(06)教科のPBL型授業の実現で、日本の教育は多次元知能を生み出せる。いきなり最先端!♪

★2020年は、大学入試改革の年でした。しかしながら、紆余曲折あってすべてが予定通り実施というわけではありませんでした。しかし、学びは試行錯誤だとみな言い始めていますから、大学入試改革もそれでよいと思えばよいのでしょう。税金の無駄使いだあという人もいるけれど、ミサイル数本購入するのをやめるぐらいで、子供の未来の試行錯誤費用につかえたのならばそれはそれでよいかなと。

Photo_20201215063901

(それぞれの知能に対応する教科はたとえばの話で、考え方はいろいろでしょう)

★いずれにしても、パンデミックもあって、受動的な学びだけではにっちもさっちもいかないということは世界同時的にわかったわけであり、大学入試改革と新学習指導要領の動きは、その点は一定の成果をあげています。

★ただここにきて、教科は知識獲得の場で、探究が思考力や判断力を養う場であり、教科入試は知識中心主義で、探究が体験と思考力をベースにするという分断が生まれているのが気になります。

★オンライン学習で知識獲得はアプリで個別最適化し、リアルなモノづくり体験は探究で。したがって、教科は講義形式で、探究はPBLでとかなっているような気がします。両方ともコンテンツ主義で、才能主義ではありません。

★そして、あたかも日本の教育は教科主義だからダメで、教科横断型、学際型、探究型でないとねとなっているのではないかと。

★新学習指導要領でも、理数探究とか地理探究とかいう教育言説が生まれているところからもそれがわかります。教育言説とは形骸化促進用語という意味です。

★しかし、本当のところは、従来の教科の設定枠で、生徒1人ひとりの才能を開花することはできるのです。ハワード・ガードナー教授の多次元知能(多重知能という訳語よりこっちのほうが関数的かなと。つまり要素還元主義的ではなく関係主義的かなと)と教科体験を掛け算すればそれで、世界標準を超える教育を日本は達成できてしまいます。さすが折り紙発想文化です。HTHが憧れる庭園発想ですよ。折り紙や庭園は多次元知能の結晶ですから。宇宙船や宇宙開発の発想はコンパクトな折り紙と庭園発想なんですね。SDGsも実はそうでしょう。いういなれば、システム思考も庭園発想ですね。

★ともあれ、ただ、それには、PBL(Project Based Learning)型授業を行う必要があります。せっかくアクティブラーニングという話がでたのですが、「主体的・対話的で深い学び」と表現され、総合学習や探究に回されてしまうという話になっているような気がします。

★体験から多次元知能(関数ですから、子供によってどの格子点を結晶するかは違います。範囲の広さも違うでしょう)を引き出し、引き出された多次元知能を再び体験に通してリファインしていくというリフレクション過程を通すだけです。それが子どもたちのキャリアデザインへのプロジェクトになります。

★ ですから、教科を教科体験ととらえればよいだけです。日本の教育は、この教科体験が豊かです。

★あとは教科名を変えて、中身の配列を変えるだけのアリバイ作り改革をやめて、一通り、教科を体験し、得意教科を見つけて、それによって多次元知能を豊かに個性的にしていけるという教科の絞り込みをして、それに対応する大学入試の教科設定をすればよいのです。これは選択方法だけの問題で、折り紙発想や庭園発想でできてしまいます。

★すべての教科の知識が大事なのではなく、多様な教科体験によって多次元知能を実装できるようにするのがゴールというようにマインドセットし直せばよいだけです。

★中学入試は、その方向になっています。国算2教科入試、国算社理4教科入試、得意科目1教科入試、英語入試、適性検査型入試、思考力入試をはじめとする多様な新タイプ入試。

★首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんは、日ごろから中学入試は教育改革のモデルと語っていますから、そういう意味では中学入試はもっと広く研究対象になればよいですね。そして、多様な新タイプ入試を開発している先生方は、教育改革の旗手と言えましょう。もっとここに光があたらなければと思います。おそらく、そのような先生方の授業はPBL型になっていると思いますよ。

|

2020年12月14日 (月)

2021首都圏中学入試(19)英語と国語と算数で行ける学校選択をする保護者の価値観

★昨日、親子で国語という言語の力をどう見極めるかワークショップを行いました。国語ができるできないの判断の仕方について共有したのです。というのも、模擬試験で国語の選択肢の問題、記述の問題を解いて〇をもらえない。文の並べ替えという論理パズルで〇がもらえない。そんなとき国語ができないと判断しがちですが、実は国語という言語の力と入試問題が正解できるというのは、共通点もあるけれど相違点もあります。その相違点は合格テクニックがあるかどうかの違いです。

Photo_20201214045201

(八雲学園はイエール大学と国際交流を行っています。イエールから八雲学園に訪れるだけではなく、八雲の生徒がイエール大学を訪れて国際交流のミーティングを行う時もあります)

★まだ4年生と5年生なので、テクニックの部分を鍛えるよりも、言語としてのスキルや思考力、物語の構造分析を養う方を優先したいという実感を抱くことが目的でした。

★論理パズルや物語の構造分析を子供と親も行います。協力してではなく、親子別々で行います。そして、その後レゴを使ってそれぞれ説明をしたり、NU BOARDに物語の13フェーズによる分析と心情の変化グラフを重ねるように描いてプレゼンしたりします。

★同時に、論理パズルや物語構造分析で扱った素材の入試問題を解きます。これも子供と親は別々に解きます。両方とも時間を測ります。結果は次のようになりました。

Photo_20201214051301

★もちろん、保護者は、入試問題の時には子供に負けまいと思ったでしょうし、論理パズルや構造分析では、加減したでしょう。子供のやる気やモチベーションを大事にする保護者でしたから。

★ただ、保護者は、同じ文章を2つのアプローチで行ったとき、スキル分析や構造分析をした経験はほとんどなく、読書体験と受験勉強の体験だけで、そのスキルや構造を無意識の内に身につけていたので、さすがに入試問題はできたけれど、文章の論理分析、構造分析は少し苦戦したわけです。

★そして、子供といっしょにレゴを活用したり、NU BOARDを活用してプレゼンしてみて、考えること表現すること創造するということはこういうことだと実感できたと。

★だから、子供の国語という言語の能力は、ここまで考えられているという見方と模擬試験ができたこととは必ずしも一致しないということを実感していただきました。子供に対するフィードバックは、できたできないではなく、どこまで考えることができたかどのスキルを磨くのかを対話する形式にシフトしようと。

★その保護者が、今回のワークショップで実感できたのには理由があります。それは子供の英語の言語能力を伸ばすことにも興味と関心を持っているからです。英語の場合、言語スキルを見える化しますが、そのスキルと共通するということに気づいたのです。英語と国語は言語として共通することが多いのは、当たり前なのですが、英語に興味をもち学んでいないと気づかないわけです。

★言語としての共通する部分は、これも当然ですが、考えるということです。そして、考えるということは、スキルの活用によって生成されているのだという実感です。

★私のワークショップでは算数は行いませんでしたが、実は算数も同じことが言えます。国語と算数は言語と関数という違いはありますが、考えるという点では<置換操作>というスキルを発動する点で共通するのです。リベラルアーツ的には、ミメーシスとかメタファーとかレトリックとかいう分野ですね。同僚の算数の講師は、私と考え方はある程度シンクロしているので、保護者もそのことは了解しています。

★このような保護者は、大学は、国内でもよいけれど海外も本人が考えるならOKという価値意識をもっています。ですから、受験テクニックにかける時間は最小限にして、国語と算数、英語を通して一生ものの思考力や表現力、創造力を養うトレーニングをして入れる学校を選択したいと。もちろん、その学校は海外大学にもつながる英語力を養う学校という条件が付きます。

★英語入試、算数一科目入試、国語と算数と英語の入試、海外大学も射程に入れた思考力入試などの新タイプ入試を行っている学校を選択するという新しい価値観が生まれてきたのです。選択関心のある学校として、挙がっていたのは、慶応湘南藤沢、三田国際、かえつ有明、工学院、静岡聖光学院、八雲学園、富士見丘、聖学院、文化学園大学杉並、和洋九段女子、城西大城西、広尾学園などでした。

★まだ、4年生、5年生なので、今後新しいタイプの入試を新設する学校の情報を共有していこうということに当然なりました。それに途中で学校選択の方針を変えたとしても、国算入試で受験できる学校は多いので、リスクも回避できます。そして、実は、、開成や麻布、武蔵、女子学院いついては、社会や理科は6年生になって取り組んだとしても、このレベルに通用する思考力を鍛えたなら、大丈夫です。

★なお、この入試に立ち向かうのに、漫画も含め読書は大切です。ですから、毎月、漫画と物語の本は1冊ずつ提示します。さっさと読んで、自分の好きな本を読む生徒もいるし、与えられたものは、あえて読まず、他の本を読むという生徒もいます(笑)。いずれにしても、読書はするのですから、それでよいのです。また、SDGs関連の記事や動画を見て、自分の意見を1分間スピーチしていくトレーニングも大切です。理科や社会への好奇心もここで持続可能にしておきます。

|

2020年12月13日 (日)

2021首都圏中学入試(18)國學院大學久我山 國清英明校長の温かく大切なことば

★國學院大學久我山の学校長國清英明先生から関係者各位に、<2021年度入試における「当日の激励」および「追試験」について>丁寧な手紙が郵送されました。普通であれば、ホームページやメールで済まされるところ、手紙というカタチで受験生に対する学校の想いと塾の想いの一致点を共有したうえで、当日の激励をご遠慮願いたい旨を切々と語った文面でした。

Photo_20201213203601

★手紙を読んだ関係者各位は、改めて受験生に対する想いを同校と共有でき、感動したことでしょう。同時に身が引き締まる思いになれたと思います。

★言葉から発せられる魂を感じるとはこういうことを言うのでしょう。

★また、出願をしたけれども、試験当日、新型コロナウイルスに感染して受験できない場合、追試験を設定していることも告知されました。学校によっては、追試験を行わないと表明しているところもある中で、同校は、リスクマネジメントをきちんとしている学校であると魅力を感じないわけにはいきません。

★大胆かつ細心の気遣いを忘れない國學院久我山に改めて敬意を表します。

|

2021首都圏中学入試(17)聖和学院 ビブリオバトル入試・英語インタラクティブ入試・英語プログラミング入試・プレゼンテーション入試

★聖和学院の教育では、英語スピーチコンテスト、大学教員によるITを活用した英語4技能を育成する授業、ビブリオバトル、プレゼンテーションコンテストなど、生徒の想いや考えたことを多様な方法でアウトプットする教育に力を入れています。受け身ではなくまさに能動的な学びが大切にされているわけですね。

★とくにビブリオバトルでは、2015年 中学関東大会 準優勝、2016年 高校関東甲信越大会Bブロック 優勝・全国大会 出場などの実績があり、神奈川放送で放映もされています。

Photo_20201213125301

★同校の多様な新タイプ入試は、こうした同校の教育のコンセプトや内容が反映しているわけですが、いよいよビブリオバトル入試も新設されるに至りました。

★このような入試は、受験生自身の興味と関心にマッチしたある意味個別最適化の流れを汲む画期的な入試です。それに、ビブリオバトルは、公共的なコンテスにもなっていて、評価視点が定まっています。対策も立てやすいということでしょう。

首都圏模試センターの記事にはこうあります。<聖和学院中学校〈神奈川・逗子市。女子校〉では、来春2021年入試から「ビブリオバトル入試」を新設します。自分が読んだ本についてプレゼンテーションする「ビブリオバトル」は、全国の“本が好きな”子どもたちにもよく知られているイベントです。聖和学院中学校・高等学校の在校生は、このビブリオバトルにも積極的に参加し、優秀な成績を残しています。そうした同校の教育活動を反映した新しい入試が、「ビブリオバトル入試」です!>

1月9日(土)に入試体験ができます。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。

★このようなアクティブな入試は、聖和学院で学ぶ意義や価値を心に抱いて立ち臨めます。どうせ受験勉強をやるのなら、未来の自分の価値を高めるような学びであってほしいというのが、昨今の保護者の考え方でもあります。聖和学院はますます注目を浴びることでしょう。

|

工学院インパクト(20)田中歩先生と振り返り、未来を展望する。PBL銀河計画①

★今年も、工学院は期末テストも終え、成績処理をして来年を迎えます。教務主任として田中歩先生のマネジメントパフォーマンスが高まる学びの評価の時期です。同時に、高3の総合型選抜などの推薦入試の結果も大体でてくる時期でもあります。このタイプの入試は、このような期末テストの評価や社会的貢献活動(ボランティア)、マイプロジェクトの総合力とオリジナリティや専門領域において今までにはない新しいものの見方・考え方への挑戦マインドがものをいいます。

Photo_20201213072701

★半月後に訪れる2021年は、中学入試や高校入試の準備、そしていよいよ高3の一般入試への突入となり、入学とカリキュラムと卒業のアクションが学内にどっと集中する時期です。

★昨夜というか真夜中、一瞬の時間があったので、田中歩先生とZoom対話をしました。本当は心身を休めなければならない貴重な時間帯ですが、この時期は、どうしても過去を振り返り、未来の展望について対話したくなるのです。年末ということもあるのですが、今言ったように、アドミッションポリシーとカリキュラムポリシーとディプロマポリシーについていまここでの成果と課題の両方が浮き彫りになる時期ですから、モニタリング対話は必然的な流れなのかもしれません。

★そして、最も重要なことは21世紀型教育を標榜して改革を本格的に立ち上げた中高一貫の1期生が旅立つタイミングでもあります。田中歩先生が中1からかかわってきた生徒の巣立ちのときなのです。

★田中歩先生の英語の授業を受けて、シンガポールの国際コンクールやグローバルプロジェクトでタイで調査をする流れの中で、ハイブリッドサイエンスコースにいながら、英語の文化的違いの科学的調査のアプローチを行うという言語学とサイエンス的な知見を融合させたいという学際的な視点を評価され、難関私大の外国語学部の総合型選抜に合格した生徒の話もでました。

★普段のPBL型授業とCASやMoG、グローバルプロジェクトなどの破格の行事と多くの国際コンクールへのチャレンジが、自己変容をもたらし創造的才能者となったことの証明を生徒自らがおこなっていくわけです。そして、その過程に田中歩先生が立ち会っています。

★最初は英語科主任として、ケンブリッジ・イングリッシュ・スクールへの本邦初の認定をとりつけ、ケンブリッジ出版の教材を導入しました。授業は当然PBL型になります。そしてPBLにはルーブリックが必要ですが、田中歩先生はPBL研修のプロジェクトリーダーでもありましたから、自分の体験しているPBL授業とルーブリックを全教科と共有しなくてはなりません。

★そのとき田中歩先生が慧眼の持ち主だとわかったのは、一般化の罠を排除したマネジメントをしたことです。どうういうことかというと、自分のメソッドを一般化することによって、それがあたかも普遍的なメソッドだと過信するのが、ピラミッド型組織の陥りがちなミスなのですが、田中歩先生は断固たる決意でそうならないように、学習する組織=共感的コミュニケーションチームをマネジメントしていったのです。

★ですから、PBL研修は、互いの授業を見学したり、メンバーで互いにモニタリングをして、個々人のメソッドとが工学院のメソッドが往復する対話を通して、個々人のメソッドも工学院のメソッドも豊かに進化していくというやり方を7年間続けたのです。私もなぜか立ち会うことができたので、その都度気づきがあった研修の数々のシーンが走馬灯のように思い出されます。

★ルーブリックも、メタルーブリックとして、ルーブリックの考え方や生徒自身がそれをつかって自己モニタリングができる思考コードにシンプルに収斂してもいきました。実際、生徒は思考コードで自分のプロジェクトの目標を作成し、モニタリングしていきます。

【PBL4CC】

Photo_20201213075201

★前回ご紹介したPBL4CCへの着想は、田中歩先生と工学院緒先生方と7年間の研修を通して結実したといっても過言ではありません。それがゆえ、昨日も、このPBLの話は、互いにすぐに共有できました。これは一つのメソッドではなく、生徒自身が自らメソッドを生み出し、試行錯誤の中でそのメソッドを豊かに進化させて行ける創造的才能を生み出す環境なのだと。大事なことは生徒中心主義なのだと共感できたのです。

【PBL銀河】

Photo_20201213075501

★また、田中歩先生は、教師がPBLをデザインして終わっていては、結局は生徒は誘導されて疑似的に主体的になっているだけだけだから、自ら生徒が自分のPBLという探究や学び方をデザインできるようにしたいというのが野望でした。

★上記のようなPBL銀河が工学院に溢れるとよいのだと。そして、それは見事に実現しました。それが高2のときに行うグローバルプロジェクトで証明されたのです。総合型選抜でもこのプロジェクトで得た新しいものの見方・考え方は威力を発揮したようです。

★もちろん、すべてがではなく、課題もあります。このPBL銀河計画は、果てしない物語でもありましょう。この課題を解決するためのヒントは、今年の高2のグローバル・プロジェクトにあるということです。というのも、今回のパンデミックで、プロジェクトの計画そのものが二転三転せざるを得なかったのです。つまり、グローバルリスクマネジメントという視点を今の高2は身をもって体験しているからです。全部、自分たちで計画し、パンデミックの情勢によって、その都度変更しましたが、平常時とは違い、大幅な変更をするなど、普通の学校では体験できないよう経験をしているのです。

★こうした現状のモニタリングをしながら、解決のための根源的な問題を洗い出してきました。(つづき)

|

2020年12月12日 (土)

才能力の時代(05)<PBL4CC> クリエイティブクラスのためのPBL環境を創ります。

★多くの方々との対話を通して、PBL4CC(PBL for creative classes)というすべての人びとがクリエイティブクラスとしての存在者(being)になれるPBL環境を随所に創っていく構想がまとまりました。ありがとうごいざます。これからも、いっしょにPBL4CCの環境を創っていくことをよろしくお願いいたします。とてもシンプルな構想であり、プロジェクトです。

Photo_20201212135601

★このPBL4CCは多次元方法です。1つのメソッドではありません。1人ひとりの想いや閃きや理論を巻き込んでいく環境形成システムです。どれか一つの優れた理論を見出そうとするよりも、多くの考え方やものの見方・感じ方をインテグレートして生きていく<生のシステム>です。

★私のライフワークは、制度が出来る前の自然と社会と精神の循環みなぎる人間存在の回復(本当はあったかどうかわかりませんから、あくまで仮説です。そういう意味ではルソーの自然状態と同じ発想です)でした。それゆえ、中世から考える視点でものごとを見てきました。もちろん、これは比喩ですが、近代国家ができるときに、切り落としてきたモノやコトの再現をすることが世界市民の存在をwell-beingにすることだという信念で生きてきました。

★なぜ中世かというと、近代的国家の萌芽がありつつも、まだ未分化状態で、そこには、ヨーロッパとアジアが出会い、影響を受け同時に相克していました。血みどろの戦争もありありました。パンデミックもありました。宗教戦争もありました。すでに公害もありました。しかし、近代が生まれる多くのイノベーション、思想、文学、アート、生活様式、大航海・大陸横断への大移動マインドなどが混在していました。

★つまり、クリエイティビティの生成される環境があったのです。ここに創造的才能が生まれるプロトタイプがあるわけで、それを取り出し、できれば、戦争やパンデミック、宗教戦争みたいな争いはリアルな経験としては存在しないような環境はできないものかと。

★そんなわけで、「原初経験」「情報獲得経験」「対話体験」「道具使用体験」「システム思考体験」「制作体験」の関係総体の環境としてPBLを回せないかと。そして、戦争やパンデミック、環境破壊などを「原初経験」から括弧にいれられないかと。

★ともあれ、この関係総体や循環関係の環境としてPBL4CCが有効ではないかということにようやく気付いたのです。これは、制度設計から始める必要はなく、1人ひとりからでもできるし、あらゆる組織やチームでもできます。

★これが広まれば、自然と社会と精神の最適な循環が回復し、制度も変更されていきます。もちろん、幸せな存在世界制作の1つの在り方ですが、小さく始めて大きく育てるスリリングな方法です。みなさん、共に創りませんか!私は、今も挑んでいますし、来年度からさらに仲間と大きく動いていきます。どこかで合流したいですね。

|

GLICC Weekly EDU(04) 数学は語学。勉強することが嫌にならないことの大切さ。目から鱗のクリエイティブコース。

昨日は、第8回GLICC Weekly EDU。ゲストは同塾の理数クリエイティブコースの担当の申栄吉先生。今春の開成の算数の問題の思考や着想のポイントをきっかけに、開成の算数→東大の数学の共通の思考パターン(構造)について対話し、数学と言語が相互に置換えられる可能性を探りました。数学と言語における基本的な発想あるいは思考スキルは「置換操作」であるけれど、見える人には見えるが、見えない人には見えない難しさがあると。日常の中に埋め込まれているメカニズムを見破るには、様々なモノやコトに、つまり、思考道具や思考スキルに変換することが大切で、その変換のためのモノやコトを生み出せることがクリエイティビティなのでしょう。今回もあっという間の1時間でした。申先生、スリリングなお話!ありがとうございました。

S0

★申先生によると、開成の算数の問題は、ゴリゴリのロジックと俊敏な情報処理能力で解いていけるし、東大の入試問題もたしかにそうだと。しかし、多くの入試問題と違うところは、ロジック以外でも本当は解けるという問題だということが肝だと私は理解しました。

★たいていは、公式や解法をあてはめて、その当てはめ方のロジックが間違わなければ解けてしまうようにできているので、それ以外の方法を考える必要はないように気配りがされているわけです。

★しかし、開成や東大の問題は、見える人には見えてしまうという「直観」からショートカットして考えていくこともできるということです。

★そして、おそらく後半でその話になったのは、高校までは日本の生徒の数学力は海外の生徒を圧倒しているけれど、大学からは数学的世界の広がりが全然違う。海外に留学した日本人の理数系の学生が急激に伸びるのは、そこに何かがあるからでしょうと。

★それは、「直観」というものを大切にしているからでしょうと。クリエイティビティはまさにそれと関係がありそうだと。

★だから、中学受験の準備だとしても、この直観が養われる環境セットが大事で、それを申先生は仕掛けているし、隣の教室で、私も仕掛けているわけです。奇しくも申先生と私のクリエイティビティを生み出す起点が「置換」だったことには驚きました。

★詳しくは動画をご覧ください。いつものように、マテリアルだけ用意して、シナリオのない対話ですが、見える人には見える物語になっています。3%の穴を突き抜ける才能開花のためのプログラムについていろいろな方と対話していて、万人のために公開していますが、万人のためになるように配慮はしていません。お許しください。

★ともあれ、キーワード・フレーズがたくさんでてきます。「数学は語学だ」「根拠なき自信」「見えてしまう」「海外で学ぶ」「置換」「試行錯誤」「思考実験」「直観」「ロジック」「クリエイティビティ」「勉強することは嫌なことではない」等々。

★これらのキーワードをどのように結びつけるかは、自由なのです!みなさん、ファーストクラスになれなくても(なる必要もないのですが、なぜかそのラットレースの罠にはまっている私たちです)、クリエイティブクラスにはなれます!自分の価値を人から賦与されるのではなく、自分で生み出し、互いにそれを共有し、豊かな社会や世界を創っていきましょう。

|

2020年12月10日 (木)

2021首都圏中学入試(16)國學院大學久我山 青春の希望と存在の重さ

★首都圏模試センターのサイトの國學院大學久我山の記事<日本文化を理解し、世界に発信できる力を育む「女子CCクラス」>は、2018年に新設されすっかり定着した女子CCクラスの学びや学園生活の様子が詳しく記述されています。

Photo_20201210170901

(写真は、同校デジタルパンフレットから)

★しかし、必ずしもCCクラスだけの話ではなく、男子部からも参加できるMath in Englishのプログラムの話もあります。これは、昨年男子の帰国生の応募が増えた理由の一つかもしれません。

★何より、この記事で気になったのは、次の文章です。

国学院久我山の在校生を見ると、礼儀正しいあいさつ、5分前行動などと規律正しい学校生活を送りながらも、青春を謳歌しています。川本先生は生徒たちを、人を気遣える心を持った、心優しい生徒たちが多いと評します。その快活さ、高い人間性が同校の独自の教育を通してますます広がり、国籍や文化を越えたところにも発揮され、共に成長し続けられる力となるはず。そうして協働して明るい未来を作り出せる、社会を変えていける人材であれ、それが同校の目指す道です。 

★この文章を読んだとき、希望が輝いていると同時に、何か生徒1人ひとりの存在の重さをしみじみと感じました。「青春」という言葉が今も生きいきと輝いているのに改めて驚いたのです。

★それで、何度か訪れている同校なのですが、サイトを開いてみました。すると、デジタルパンフレットの表紙に「きちんと青春」とあるのです。やはり、最近この言葉は使われなくなっているのかもしれません。ですから「きちんと」生徒の燃え滾る大志と目標に共に立ち臨む友情を持続可能にしている同校のまっすぐな心意気を伝えようとしているのではないかと思ったのです。

★私たちが普段忘れていることを國學院大學久我山生とともにきちんと取り戻そうよと語り掛けてくるようです。大切な普遍的な精神を実現していくことこそポストコロナ時代においては光になります。

★そして、サイトをさらに開いていくと、サンテグ・ジュペリの次の言葉が顕れてきました。

人生に解決なんてない。
ただ進んでいくエネルギーがあるばかりだ。
そういうエネルギーを出さねばならない。
解決はその後でやって来る。   
 
               サン・テグジュペリ 「夜間飛行」

★今の國學院大學久我山の海外研修やグローバル教育の礎をつくりあげた教師の座右の銘で、生徒と共に謳歌した青春の心を表現しているようです。残念ながら、その先生は若くして亡くなったそうです。しかし、その心は今も教師一同、在校生に語り継がれているということです。

★このような希望を語る言葉は、生徒1人ひとりの存在の重さを照らす光でもあるのでしょう。同校の本質がそこにあると染み入りました。

|

才能力の時代(04)PBL型授業は問いの生成のデザイン

「問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション– 2020/6/4」安斎 勇樹 (著), 塩瀬 隆之 (著)は、とても参考になります。著者は自らを社会構成主義的なファシリテーターであることをわざわざ明言しています。これは、インストラクショニズムや個人主義的なファシリテーターも存在するからのようです。

Img_0482

★この考え方は慧眼です。PBL型授業やアクティブラーニングといったいわばミニワークショップ挿入型の授業がなかなか流行らない理由がわかります。プロジェクト・メソッドを生み出したデューイやキルパトリックの時代からずっとヘルバルト主義との相克だったのですが、ヘルバルト主義だって、ファシリテーターはできるのだという話が続いて、手を変え品を変え今に至っているのです。

★本書では、ワークショップにおけるファシリテーターの位置づけを座標軸や広義―狭義、社会構成主義ー個人主義などの比較によっていろいろあるということを明快に論じています。

★同書の扱うワークショップにおける問いのデザインは、50分の毎回の教科のPBL型授業にも参考になります。

★もちろん、同書は50分単位のワークショップを想定しているわけではありませんから、そのまま置き換え得ることはできません。変換する必要があります。どうやって変換したらよいのか。

★それは、社会構成主義的なファシリテーターとしてPBL型授業をデザインするとき、問いのデザインをする前に、生徒自身が問いの生成をデザインできる対話をデザインするということで可能でしょう。

★同書では、とにかくわかりやすさ、明瞭さを求めますので、このような物言いはわかりにくいので、わかりやすく置換えなければなりません。そのスキルは、同書が行う座標軸やカテゴリー表に象徴されるように比較や分類するスキルですね。このスキルは授業デザインや生徒自身の思考スキルにおいても共通する基本スキルです。

★それはともあれ、ワークショップにおけるデザインの意味を分類しておくとよいわけです。

①教師の問いのデザイン

②生徒の問いのデザイン

③対話のデザイン

④学びの時空などアフォーダンスのデザイン

➄思考スキルのデザイン

⑥リフレクションのデザイン

★これでわかりやすいかどうかはわかりませんが、こんな感じで、PBL型授業をデザインするとは、いくつかの局面があるということです。

★こうして分類すると、文科省のいう「主体的・対話的で深い学び」の意味も見えてきます。主体的といったとき、生徒が自ら問いを生成するということだし、深いとは、生成する問いのレベルを深めるために思考スキルを生徒がどう組み合わせるかということだということがわかります。そして、対話的とは、リフレクションのデザインで決まるということがわかります。

★同書ではリフレーミングという目に見えるフォームが提供されていて、リフレクションのフローは、さらにわかりやすくなっています。

★このような見識が本になったり、Youtube(お二人は同書のプロモーション動画も発信しています)で配信されるようになっているのは、実にすばらしいことです。ぜひ教師の方々だけではなく、生徒のみなさんも、同書を手に取ったり、動画を見たりしてほしいです。

★啓蒙書というより問いの生成のデザインを実装できるプラグマティックな本だと思います。自己変容と同時に社会変容に役に立つ本です。

★もちろん、問いの生成のデザインは、思考コードでも可能です。こちらは、コンパクトなので、使いだすと時間短縮できますが、コンパクト過ぎてピンと来るのに時間がかかります。そういう意味でも、同書「問いのデザイン」は、思考コードの理解にも役に立ちます。問いの創り方は、世界の創り方に通じるからです。世界の創り方のマトリクスが思考コードでもあるわけです。

★そうそう、コンストラクショニズムとインストラクショニズムの違いは、同書が「質問」「発問」「問い」の違いをカテゴリー表にしているところを読めば明快に理解できます。これは、思考コードの縦軸に相似しています。詳しくは同書をお読みください。

|

2021首都圏中学入試(15)開成の算数の入試問題を分析する意義 ブルーナーの構造論が有効か?

第8回GLICC Weekly EDU(主宰:鈴木裕之さん)は、開成の中学入試問題を分析します。ゲストは、GLICC クリエイティブコースの理数探究を担当する申栄吉先生です。なぜ開成の算数の問題を分析するのかというと、開成から東大に合格するサンプル数が多いので、開成の数学教育における数学的思考の構造と東大の数学の入試問題における数学的思考の構造の同一性が見えるのではないかという仮説を検証できるかもしれないからです。

201211edu

★おそらく、開成も麻布も、1970年代の現代化カリキュラム学習指導要領の影響を受けていて、その後学習指導要領がなし崩しになっていったため、その改変には応じなかったのではないかと思っています。

★なぜかというと、この現代化カリキュラムは、米国のスプートニクショック対応のために生まれた認知心理学の成果が盛り込まれていたので、学問的な背景があるからです。

★この認知心理学を生んだのはジェローム・ブルーナーで、彼の「教育の過程」が、現代化カリキュラムに影響しています。しかも、大事なことはこの発想は国際バカロレアのカリキュラムの考え方にも影響を与えているということです。

51nygnrwdil_sx344_bo1204203200_

★その影響とは、どの教科でも、知的性格をそのままに保って発達のどの段階の子どもにも教えることができるとするものですが、「教育の過程」の中で、その知的性格をブルーナーは「構造」というキーワードで置換えています。

★最先端の科学も、この基礎構造を子供とシェアできれば、理解を促すことができるという発想ですね。これによって、宇宙開発の科学者を子供のうちから養成し、当時のソ連と宇宙開発競争にうってでたわけです。

★当時の最先端の学習理論ですから、IBも当然取り入れるわけです。ここまでくるとお分かりの方もいらっしゃると思いますが、デューイが学びをコンストラクションとして、PBLを開発実験していたことと結びつくと思います。

★つまり、認知心理学は、構成主義的な発想です。

★もし、開成や麻布がブルーナーの構成主義的発想を受け入れていたら、PBL的発想をコンストラクションではなくインストラクションで講義していたことになります。

Photo_20201210033801

★このアクロバティックな現代化カリキュラム!開成の中学入試問題の構築は、当然開成の高校入試と同じです。この一連の開成の数学的思考の構造が東大の入試問題の構造と同じであれば、現代化カリキュラムが、落ちこぼれをたくさんだして、ゆとり教育になっていったのは了解ができます。

★また、そうだとすると、この流れで固定的なイメージをつけられてしまったPBLが広まらない理由もわかります。

★そして、なぜ構成主義的発想をインストラクショニズム的な発想でできたのか?そのことが、海外の理数教育とどう大きく違うのか、申先生と鈴木さんの対話を通して明らかになっていけばと期待しています。

★「構造」といっても、いろいろ考え方があります。本来のPBLであるならば、この構造は野生の思考的な発想で創らねばならないのですが、インストラクショニズムでは、固定的な構造の可能性があります。

★デューイやブルーナーの影響を受けながら開成とIBとでは「構造」の受けとめ方がおそらく違うのだと思います。ここらへんは、オックスフォードで数学を学んで、IBスクールでコーディネーターをしている中村裕吾先生と対話しながら感じているとこです。

★入試問題で何がわかるのだと世間の人は言うかもしれません。しかし、学習指導要領やIBにも影響を与えているもう一人の認知心理学者ブルームのタキソノミーはテスト問題の分析から生まれています。入試問題は立派な認知心理学の研究対象なのです。

|

2020年12月 9日 (水)

才能力の時代(03)アートの世界のウネリとIBのウネリと海外大学進学準備教育のウネリが合流する時

★学校の改革について、いろいろ論じられていますが、そこにはアートのウネリやIBのウネリ、海外大学進学準備教育のウネリが排除されています。よって、実際には、変わっているのに、いつまでも変わらないまま安心安全の壁の中に閉じこもっています。本当は、その安心安全の外に安心安全があるのですが。

Photo_20201209210301

★3%の穴の向こうに尽き抜けるアートとIBと海外大学準備教育の3つのウネリ。これらが合流すると、突き抜けられそうです。

★しかし、このウネリを生み出しているクリエイティブクラスは、私立学校出身者だったり、海外大学留学経験者だったり、帰国生だったりします。3%の穴を自ら突き抜けた人や突き抜けようとしている人々ですね。

★アートに関しては、2020年12月17日 (木) – 12月20日(日)の期間中、トーキョーアーツアンドスペース本郷(トカス)で、<Feminists in Collective Practice-実践を共にする->のウネリがあるわけですが、このウネリを紹介しているのは、アート・マネージャーの熊谷薫さんです。

★今回トカスでアートシーンを行うメンバーも海外でアートの修行をしていますし、熊谷さんも私立学校卒業後、東大で美術史を学び、海外でも学んだそうです。私が言いたいのは、このプレZ世代のアーティストのみなさんが、SDGsの活動を越境してウネリを創っていることと、そのウネリを創っているアーティストのネットワークが世界に広がっていて、まさにコレクティブに活動しているということです。

★日本にいると、上野千鶴子さんの言動が注目されていますが、彼女らは、その程度では社会や世界は変わらないと新しいウネリをどんどん創っているのです。日本ではアートマーケットがないので、そういう若いアーティストらが日本で活動する時に、架け橋になっているのが熊谷さんです。まさにプロジェクト的に動いています。

★彼女らは、インドネシアやシンガポールで活躍もします。東南アジアにはアートマーケットがありますからね。ニューヨークやベルリンで活躍している照屋勇賢さんは、今ちょうど「沖縄アジア国際平和芸術祭」を仕掛けていますが、彼女らは照屋さんともネットワークを持っています。どこかでコラボするかもしれません。

★その沖縄ですが、今IBの大きな動きが起きています。どんな動きかは、発表していいい時期がきたらご紹介します。

★さらに、海外大学準備教育については、もはや開成や武蔵、灘のような高偏差値校だけの話ではなくなっています。これについても発表していい時期がきたらご紹介します。

★このような日本の学校や教育を取り巻く環境が変わるウネリがあるにもかかわらず、そこに意識を向けないで、自縄自縛的な話ばかりが煮詰まっているのが、今の日本の教育の現状です。その中で、ワークショップや研修が行われていて、外に出る話ではないので、どんどん追い詰められていきます。どうか目を学校や教育の外に向けましょう。ICTを使っても、教科書をデジタル化してなんて話ばかりしていると、まったく外を見ないままICTを活用するというもったいない現象が起こります。

★そりゃあ、自己肯定感は低くなるし、鬱屈します。

★3%の穴を突き抜けて、解放されたいし、突き抜けることで、自分たちで穴を大きく広げていくことができまるはずです。私たちの勇気と行動がダイレクトに明日を変えることになります。そんな才能力を学ぶ場を持っている学校を創りましょうよ。今の教育制度は、そこにブレーキをかけるルールは実はないのです。

★それなのに、どうしてそうなるのか?このなぜは、価値を見出す「なぜ」ではないのですね。フェイクを暴く「なぜ」です。それはともかく、いずれまたそれに関しても述べましょう。今は「なぜ」よりも、2%の穴を見つけたのですから、いかにつくるか「手法」「方法」「道具」を設定することの方が優先順位が高いのです。

|

2021首都圏中学入試(14)大正自由教育の系譜の城西大城西 充実した体験ベースの理科教育とグローバル教育とキャリアデザイン教育③

★坂本先生の話に耳を傾けていると、城西大城西の教育は、アドミッションポリシーーカリキュラムポリシーーディプロマポリシーが有機的につながっていて好循環を生んでいるというイメージが沸々と湧いてきました。

Photo_20201209084001

★体験から気づきが生まれることを大切にする生徒中心主義的な同校の学びの環境は、当然PBL型の授業を生み、1人ひとりの才能を見出す個別最適化が行われています。

★そして、今回のパンデミックによって、オンライン学習にすぐにシフトできた成果が、全学年、1人1台のタブレットを使って学びを行える環境に変化しました。この変化を通して、教師と生徒のコミュニケーションとICTの両方によって個別最適化が強化されていくのは、言うまでもありません。

★もともと、総合型選抜や推薦制度によるキャリアデザインが中心でした。このようなシステムを活用して大学進学を決める生徒は、生徒の70%です。今、55万人の大学受験生のうち、一般入試で大学に進学する割合は20%になるとも言われています。

★一般入試が圧倒的に多い時代は、つまり受験業界の編集者の時代ですが、そのときには、今でいう総合楽手や指定校推薦は学力がなくても進めるから生徒獲得目的で進められないというようなネガティブな雰囲気もありました。

★しかしながら、当時から世界の大学は、生徒と学びの契約を交わすための交渉の場というのがエンロールメントやアドミッションのコンセプトでした。ですから、生徒は自分とは何者か、何を研究したいか、それによって大学にどんな貢献をし、社会をどう変えていくのか証明しなくてはなりませんでした。学力とは何か?ボランティアとは何か?自分とは何か?未来構想とはどうなっているのか?イノベーションとは?哲学とは?社会とは?人間とは?AIとは?などなど多角的に複眼思考でき、寛容な精神を実装していることをアピールしなくてはなりません。そしてなんといっても、そのためにどんな体験をし、そこでどんなリーダーシップを発揮したのか検証しなくてはなりません。

★昨今の総合型選抜もそのレベルに追いついてきました。それに対応できる1人ひとりの才能を生み出す学びの環境をカタチづくっている学校のモデルが城西大城西だと改めて気づきました。

★そして、このディプロマポリシー→カリキュラムポリシーが逆照射しているのが、同校の新タイプ入試です。2科4科の一般入試以外に、適性検査型入試もあるし、英語入試もあります。英語入試は、英語単独入試と国算英の3教科入試の2種類あります。

★もし、CEFRレベルでA2を証明するあるいはそれに相当するスコアを示す外部検定試験の資格があれば、英語の試験は免除されます。英語単独入試の場合は、面接だけになります。

★海外大学や総合型選抜などの試験のスタイルとシンクロする入試が、中学入試段階で設定されているのです。高校入試も適性検査型やグループ面接型など新タイプ入試が設定されています。

★来春から世界中が「ザ・グレート・リセット」に向かって動きます。いやすでに動いています。光と影がまた交差するでしょうが、そのリスクマネジメントとして、ダボス会議は「才能主義」、落合陽一さんは「クリエイティブ・クラス」がキーワードだと本の中で語っています。

★生徒1人ひとりの才能や価値を大切にしエンリッチメントしていく城西大城西の教育の時代がやってきたのです。(了)

|

2021首都圏中学入試(13)大正自由教育の系譜の城西大城西 充実した体験ベースの理科教育とグローバル教育とキャリアデザイン教育②

★中学3年間かけての理科の実験・探究型のプロジェクト学習は、入試企画部長坂本先生の想いがこもった学び。創立以来の学習者中心主義の教育が土台にあるからできたと坂本先生。たしかに、大学進学実績中心主義の学校だと、このような生徒を中心にする学びは反対されたでしょう。最近でこそようやくアクティブラーニングやPBLは市民権を得ましたが、大正時代から貫いている城西大城西の本物教育にかける思いは生中のものではありません。

Photo_20201209071202

★そして、創設者は、教育の発想や着想を当時の世界の最先端の教育研究から得ていました。しかも、その教育は本物であるがゆえに普遍的でもあります。ですから、時代の変化に応じてその都度現代化して今にいたっています。

★グローバル教育が受験業界で注目された洗足学園よりもずっとはやくから行われてきたのも、そのような本物教育の現代化を先生方が探究し続けてきた必然的な流れだったのでしょう。コメニウスールソーペスタロッチという系譜は、たんに教育の理論の流れではありません。彼らが、宗教戦争、市民革命、パンデミックという今も解決されていない混乱の中で、世界市民的な意識を生み出し、世界の平和を創り出す教育とはいかにして可能かという人間の歴史的背景があります。

★大正自由教育も、世界同時的にやがてくる戦争やパンデミックへの危機意識の中で断固たる決意をもって行われてきました。この危機感は、今もまだまだ続いているのは、今回の新型コロナウィルスのパンデミックによって、再び世界同時的に私たちは認識をしたのです。

★ですから、そういう世界的視野を生徒が内面に抱く環境を創ることは重要だったのでしょう。姉妹校との交換留学の環境整備へ先生方が奔走したのもそういう伝統があったからだと推察します。今では9カ国に姉妹校があり、他の制度も活用して10カ国以上の留学生と交流をしています。

★2週間、3カ月、10カ月という留学制度も完備しています。当然海外大学に進学する生徒も毎年いるわけです。

Photo_20201209071201

(写真は、同校の高校のデジタルパンフレットから)

★中学では3年になると、全員が2週間のオーストラリア海外研修にいきます。今年はこのパンデミックにいけなかったのはしかたがありません。ともかく、3学期に設定しているので、希望者は、そのまま残れるので、生徒によっては、6週間も海外研修を体験できます。生徒の世界観やものの見方・感じ方ががらりと音を立てて変わるのは、説明するまでもないでしょう。

★坂本先生の話を聞いているうちに、中3の3学期の在り方が極めて重要であることに気づきました。イギリスのギャップイヤーと同じような仕掛けがあるなあと直感したのです。中1~中3の2学期までに基礎を学び、中3の3学期は理科の探究活動や海外研修という体験をするわけです。この時間のカリキュラム・マネジメントが可能なのは、各教師の想いがバラバラではできません。チームワークが必要です。

★坂本先生によると、専門性の高い教師が多いのが同校の特徴だというのです。大学院で研究してきたり、社会経験を経て教師になったというプロフィールの先生が多いそうです。現在の研究や仕事は学際的だったり協働的なプロジェックト活動が中心です。その経験が生きているのでしょう。

★坂本先生ご自身、理系出身で、大学院で研究し、いったん社会で仕事をしつつ、教育関係のボランティアもされていたということです。ビジネスと教育のどちらを選択すべきかという人生の岐路に直面し、最終的に教育を選んだようですが、ボランタリーな精神は、創設者と時代を超えてシンクロするところですね。

★改めて受験業界というのは、偏差値や大学進学実績を指標に情報を収集しリリースしてきたために、同校の生徒中心主義的なクオリティの高さやそれを形づくってきた教師の想いを伝えきれてこなかったと、私も含め反省するに至りました。

★しかし、私の反省など何の役にも立ちません。城西大城西は、もっと先を進んでいたのです。そして、それをちゃんと取材し発信しているメディアも現れていることに、私自身目からウロコでした。やはり時代は本物教育を求めているのだと。そして、その本物教育は時代の変化にちゃんと対応できているのです。もちろん、時代の変化は光と影の両方を生みだしますが、同校がその光とシンクロしていることは説明するまでもありません。(つづく)

|

2020年12月 8日 (火)

2021首都圏中学入試(12)大正自由教育の系譜の城西大城西 充実した体験ベースの理科教育とグローバル教育とキャリアデザイン教育①

★小学校5年生の生徒と保護者と対話しているときに、城西大学附属城西(以降「城西大城西」)の話題がでました。クリエイティビティ、コミュニケーション、コラボレーションという体験をベースにした思考力を身につけるいわば小学生向けPBL型授業に参加しているため、学校選びも、新タイプ入試とPBL型の学びの環境がある学校という志向性を持っています。もちろん、英語も学び、グローバル教育の環境も必須だというのです。

Photo_20201208152601

★となれば、城西大城西も選択候補だということになり、それでは、最新の情報を、私の方で同校の入試企画部長の坂本純一先生にインタビューしておきましょうということになりました。fasebookの友達ですから、メッセンジャーで連絡をとると、即快諾していただけました。Zoomで対話となったのです。

★坂本先生によると、同校はもともと大正自由教育で有名な日本のペスタロッチ野口援太郎が創設にかかわっているというのです。野口援太郎は成城学園の創設者で大正自由教育の中心人物澤柳政太郎とも当然親交があったようです。もっとも、野口は当時のクリスチャンですから、相当高邁な精神で立ち臨んだに違いありません。

★このコメニウスールソーペスタロッチーフレーベルの系譜は、デューイの系譜とも違う系譜です。日本女子大附属豊明小学校はこの系譜で、今も実物教育という言葉を大切にして、継承しています。

★ですから、坂本先生にとって、今回の新学習指導要領で注目されたアクティブラーニングはもともと同校のベースで、同校の中では体験学習やプロジェクト学習は普段使いの感覚だったといいます。

★同校の体験として大掛かりなものは、主に3つあります。1つは、地域と学校の絆が薄れている中、同校は自治体と協働して伝統芸能の獅子舞の演技を毎年担っています。

★毎年、椎名町の長崎神社で獅子舞祭が開催されますが、同校からは獅子舞研究部、生徒会役員、高校軟式野球部などが参加するそうです。朝、椎名町を練り歩き、「ふんごみ」で土地を清める手伝いをするのです。生徒が持って歩いた「鈴の尾」は奉納され、長崎神社の鈴を鳴らす帯となるのだそうです。

★さすが、ルソーーペスタロッチの系譜です。J.J.ルソーは演じる側、演戯を見る側と分ける演劇よりも、みんなが参加できるお祭りの重要性を論じているのです。伝統芸能の中にある対話や協働性をルソーは見抜いていたわけだし、それはプロジェクト学習のプロトタイプでもあります。

★この精神が、ふだんの授業の中にも息づいているわけです。

★たとえば、もう一つの重要な体験である、理科の探究論文の作成のプロジェクトもそうです。中1、中2では、教科書の中にある実験を中心に探究の入口の準備をするそうです。まずは模倣ですが、模倣はプロジェクト学習ではなくてはならないまねびという遊びです。好奇心のきっかけづくりに重要なアクティビティです。

★中3になると、模倣から独自性へシフトします。自分のテーマを見つけ、仮説を立てながら検証していく実験をしつつ証明していく骨太の論文を完成させます。

★たとえば、ゲーム脳は本当に学力向上を阻害するのかなどのテーマを自ら実験して確かめていくという探究をしている生徒もいるそうです。来年の3月には発表ということになるわけですが、このような問いのデザイン、検証プロセス、そして問題解決、結論へというポートフォリオを形成する探究活動はまさにPBL(Project besed Learning)です。

★この理科のPBLは、当然理科の領域を越境し教科横断型の新たな問いを発見していく「果てしない物語」になります。

★この果てしない物語の中から、自分の人生をかけて探究していきたい専門領域が見えてくるのが高校段階だそうです。

★キャリアデザインに基づいた専門領域へむけての学びを行っていくプログラム型の学習に移行するのだということです。系列の城西大には薬学研究科がありますから、大学と連携したアドバンスト・プログラムもあるそうです。

★系列大学に薬学研究科があるので、将来医療系・薬学系を目指す生徒は1クラス分/学年いるというのも同校の特色のようです。(つづく)

|

2020年12月 7日 (月)

2021首都圏中学入試(11)人気の3段階 進化か揺り戻しか失速かあるいはさらなる飛躍か

★いよいよ日本は恒例の沸騰受験列島に突入です。受験生は偏差値が良いか悪いか論じている暇はないというより、合格できるかできないかが問題だし、進むためには現実を見つめ、進める可能性の高い道の中で、自分の才能を豊かに,かつそれを通して社会的価値を生み出せるところを見つける緊急事態状態の中にいるわけです。

Photo_20201207225601

★しかも、今回のパンデミックの中で、予測不能な状態に私たちは直面したのですが、この事態をnew powerで乗り切った学校とそうでない学校がメディアというかSNSによって明らかになりました。受験生も保護者も、Zoomなどで直接情報交換ができるようになり、その接続に門戸を開いている学校は、人気が高くなっています。

★SNSによる口コミが、かつてないほど広がる時代になったわけですが、感染拡大の状況とガバメントの政策との関係をきちんと見定めて、SNSばかりでなく、リアル時空もうまく活用する学校が評判が高くなっています。

★つまり、デジタルワールドとリアルワールドのバランスをとりながらリスクマネジメントができている学習環境をつくったnew powerの学校の評判が高いわけです。

★しかしながら、上記の図のように、new powerの教師が共感的コミュニケーションを学内全体に形成するようになり、かつ持続可能に活動するかどうかは見定めたほうがよいでしょう。

★上記の図のように、new power教師の学内のコミュニケーション広がりを3段階にわけ、今後それぞれの段階をn1.0、n2.0、n3.0と表記しましょう。

★すると、現在n1.0で3年以内にn2.0やn3.0に進める学校と、進めない学校があります。進めなければ、失速します。n2.0に進み、停滞している場合は、そう簡単には崩壊しませんが、停滞が3年以上続くとn1.0に立ち戻り、やがて失速します。

★たとえば、開成や麻布は、n3.0段階になって持続的に発展してきました。開成は今回自ら3%の穴をあけ、7年間かけて海外大学進学のシステムを創っています。それは、残りの97%にも知的刺激を広げるわけです。

★麻布は、とにかく教養と専門領域を深堀します。常に最先端の課題や問題に直面する知的環境を維持しています。生徒の内的な発展はすさまじいでしょう。

★学びに抵抗を感じない生徒が毎年3倍の選抜テストを乗り越えて入ってくるシステムが崩れていないのと、なんといっても在校生の活動ぶりと政財界で大活躍する同窓力の凄まじさがある限り、盤石です。

★もし、ここに進撃できるとしたら、それはハーバード大学級の海外大学に20人進学するnew power学校でしょう。この可能性が濃厚なのが三田国際ですね。

★ともあれ、進撃する必要はないですが、注目を浴びるには、ハーバード大学級の海外大学に10人以上進められたら、口コミ評判は広まるでしょう。ここに近いのが、聖学院、工学院、富士見丘、文化学園大学杉並、かえつ有明です。すでに海外大学に毎年はいっていますから、可能性大でしょう。和洋九段女子は、すでに上記の学校同様n3.0の段階になっているので、海外大学もいずれたくさん輩出されるでしょう。

★洗足、渋谷教育学園グループが注目を浴びているのは、海外大学の実績が安定して高いからでもあります。海城もそうですね。

★これららの学校選択は、偏差値の高低だけの尺度で選ぶ時代ではありません。すなわち、高偏差値+n3.0の両立をしているか、n3.0だけかどちらを選ぶかです。現状受験生の偏差値がそれほど高くない場合は、n3.0の学校や3年以内にそうなる期待値の高い学校ということでしょう。

★現状n1.0から一気呵成にn3.0に向かっているのが、品川翔英ですね。武蔵野大や新渡戸文化はn2.0に進んでいます。

★n1.0の段階の学校はたくさんでてきましたが、n2.0に進める兆しがあるかどうかは、生徒の言語活動を見ればわかります。説明会で教師がしきっていたり、未来の話ばかりしている学校は、生徒中心主義ではないので、要注意です。なぜなら、民法改正によって、2022年に18歳で成年になります。教師と生徒の関係から、世界市民同士の関係になっていないところは、共感的コミュニケーションは生まれていないからです。

★それから、工学院と静岡聖光学院、八雲学園は、n4.0の段階にはいります。これについては、いずれお話ししましょう。

|

【速報】品川翔英 高校募集爆発!

★品川翔英の校長柴田哲彦先生から連絡がありました。「高校の説明会は一区切りが付き、想像以上の数に喜びと驚きを感じつつ、現場は新たな局面の対応にあたっているところです。責任と希望を教職員と生徒と共有できる2020年となりそうです」と。

Dsc08602

(昨年9月にまずは副校長として就任した時の写真です。このときの柴田先生の胸中にあった想いがはやくも現実化しているのです!)

★数字を聞いて驚きましたが、まだ予想なので、ここでは控えておきますね。

★いずれにしても、教室の数の調整、新たなに採用する先生方の数の多さの話をお聞きして、品川翔英は一気に新ステージに進むことは明らかだと確信しました。新しい先生方は、柴田校長のパッションを共有し、ハイブリッドPBLをはじめ、新しい教育環境に価値を感じて入ってきます。

★この勢いを生み出したのは、今の先生方と実は生徒自身です。そこに新しい先生方が合流するのですから、品川翔英インパクトが来春明らかになるでしょう。

★柴田先生に、この成功の理由は何ですかと尋ねたところ、「一つは生徒自身が自分の学校に誇りをもち、本気でおもしろいし新しい学校だと思い、説明会を自分たちで運営したり、自分の母校に返って、口コミを広めてくれたからでしょう。もう一つは、先生方が本気で新しい教育に挑戦してくれているし、何より丁寧で柔らかいコミュニケーションを広めてくれたからです」と。

★そして、本人はご自身では語りませんでしたが、何といっても柴田先生のパッションが伝播したからでしょう。

★中学募集の方も、昨年よりも増えているそうです。

★三田国際の再来となるのは必至です。もちろん、柴田校長は、他校との比較はしません。まずは自分をしっかり見つめることからはじめ、一気呵成に突き抜ける作戦です。2020年の大注目校ですね!

|

2021首都圏中学入試(10)新タイプ入試に向けた学びを求める受験生と保護者増える

★GLICCで、国語のクリエイティブコースを週に1回担当しています。4年生と5年生です。あとはZoomで大学入試の総合型選抜や帰国生の小論文をシーズンのときに何人か担当します。不思議なことに小学生と高校生の学びの方法は変わりません。もちろん、気づきの深さや広さは違います。

Photo_20201207003101

★SDGsに関しては、小学生も高校生も同じトピクやテーマを話題にします。やはり、あまり変わらないのです。フィールドトリップは、小学生でも身近なところばかりではなく、高校生同様に海外の体験もあります。

★本はできるだけ一冊まるごと読むようにしています。授業で扱うのは、その一部分ですし、たとえば、モモを読んだら、モモの文章そのものを分析するというよりは、モモについての論文を読んで、自分の考えをぶつけます。

★高校生の場合だと、これがたとえばルソーやアダム・スミスについての大学の1年、2年で学ぶテキストを丸ごと使います。そして、それに対する論文をやはり読んで、自分とどう考えが違うのか、自分はどう考えるのかを対話します。

★物語を扱った場合、小学生は、物語の続きを創作します。もちろん、心情分析やキャラクター分析はします。キャラクター分析や心情分析をやる際に、よく漫画を使います。コボちゃん、スヌーピーが描かれているピーナッツ、ドラえもんは常連です。分析は、心情の変化グラフとそこに13フェーズの構造を書き込みます。

★高校生は、志望理由書に物語の構造を活用しますから、小学生も高校生も学びの基本構造は変わりませ。結局デューイやブルーナーの構造一元論ということでしょう。いわゆるコンストラクショニズムですが、実はこれがPBLの肝です。スタイルは多様でよいのです。

★どうして、こうなってしまったかというと、中学入試の新タイプ入試、とくにかえつ有明や聖学院、和洋九段女子の思考力入試に向けて学びたいという要望に応えると、それは総合型選抜や帰国生入試に直結してしまうからです。

★とにかく、フィールドワーク、文献リサーチ、動画分析、小論文、物語創作、スピーチ、議論という経験は小学生も高校生も同じです。これで<直観力>を養います。

★そして、タブレットやPC、レゴ、パターンランゲージカードで、自分のシステム思考のリフレクションをしていきます。このモニタリングは、自分なりの思考の方法や感情の方法、学びの行動の方法を創っていくことになります。

★この方法というものは、小学生は小学生なりに創れるのです。小学生と高校生とでは、方法の強さは違いますから、方法論の成長が、実は学びの成長につながります。

★しかし、この方法論は、経験によって閃く直観経験をメタ分析することによってしか生まれないので、経験はとても大切なのですが、そこを体系的知識に置換えて効率よく教育を行ったのがヘルバルト主義を採用した国家による教育です。

★アインシュタインが、この国による正規の教育の中で、好奇心がサバイブしたとしたらある種の奇跡だとまで言いました。

★最近、どうやらアインシュタインの言ったことは正しいかもしれないということがだんだんわかってきたのです。そこで新タイプ入試や総合型選抜が重視されるようになってきたわけです。そうだ私立学校は独自の教育ができるのだからと。

★それと、英語の学びが速まったために、国算と英語というタイプの入試も増えてきました。中には国語と英語だけとか、A2の外部資格試験の証明があれば、英語の入試は免除で国算だけでよいとかいう入試も登場してきました。

★そんなわけで、受験生や保護者の中には、思考力入試や適性検査型入試のような新タイプ入試対策と英語の対策と算数の対策で受験できる学校を探すという新しい学校選択の方法を考える方が顕れてきたのです。

★かえつ有明、聖学院、和洋九段女子以外にも、思考力と英語と算数の準備で受験できるところはありますかと。三田国際はもう難しいので、他にないでしょうかと。そんなとき、城西大城西の試験は魅力ですよねとかなるわけです。

★上記のような図の思考力を豊かにする学びの環境に慣れてしまうと、2科4科入試に戻れないというのです。

★2科4科入試の勉強をしても、ダボス会議で推奨する未来を切り開く10のスキルは身につかないというのです。必ずしもそんなことはないのですが、かつてのように、思考力入試がなかったときは、2科4科の入試勉強を通して思考力を養ってきたのでしょうが、今はあるのだから、ダイレクトにそこの学びをやりたいのだと。

★好奇心旺盛でその領域に没頭していける学びができて、中学受験ができるのならそちらの道を選びたいと。そういう価値志向性を有している家庭の子どもということもあるのでしょうが、とにかく読書に対する抵抗はあまりないのです。もちろんこれを読みなさいといったら読まないということもありますが、それでも今月の本として2冊渡します。さっさと読む生徒もいるし、あるとき、突然読みだす生徒もいます。

★読書は、共通言語を創り出すので、生徒中心主義の授業は、これがないと幅が広くなりませんね。

★高校生の場合は、自分のテーマに対する本や論文を毎週読むのは当然という感じです。生徒自身も読むべき本や論文も調べてくるし、私の方でも情報提供します。Zoomを使おうが、タブレットを使おうが、文献リサーチの重要性は、小学生も高校生も同じです。

★従来の受験勉強では、多感な時期にこのような多様な体験をとおして直観力を生み出し、それをシステム思考へ転換するという学びをできないのがもったいないと最近しみじみ感じます。

|

2020年12月 5日 (土)

2021首都圏中学入試(09)八雲学園 帰国生の学校選択価値を転換する

昨日、GLICC Weekly EDU 第7回「ラウンドスクエア加盟、そして世界の学校へ―八雲学園副教頭 近藤隆平先生との対話」が開催されました。詳細中身については、ぜひYoutubeをご覧ください。

★ポイントは、破格のラウンドスクエア(RS:Round Square)のグローバルネットワークにメンバー校としてつながっていること。それから海外大学進学教育のためのコミュニティUPAAの加盟校であることの2つです。これが実は帰国生の学校選択の価値意識の転換を果たす大きな要因なのです。

1_20201205195901

★それとこれは最も重要な点ですが、この2つの教育環境は、国際生クラスとかインターナショナルクラスなどの限られた生徒に備えられた環境ではなく、八雲生全員に開かれているのです。とはいえ、生徒によって英語力の違いがあるので、そこの個別最適化をして、全員がこのエスタブリッシュな世界につながれるようにサポートをするわけです。今回、UPAAの英語学習のeラーニングを導入した大きな理由もそこにあります。

★CEFR基準でいえばC1英語の重要性を海外の体験で生徒自身が身にしみて感じて帰国するわけです。そして、タブレット型ラップトップ1人1台で、個別最適化学習からクリエイティブ学習まで行っていくわけです。ハイブリッドPBLというわけです。

★グローバル×ハイブリッドPBL×エスタブリッシュ教育の3拍子揃った八雲学園。一般受験をする受験生は、この八雲学園の魅力の重要性についてなかなか気づきません。やはり3%の穴は気づきにくいのです。

★しかし、帰国生の中には、この3%の穴に気づき始めている生徒がいるのです。多くの帰国生は、まだまだ、英語力を生かして、東大、早稲田、慶応などに進学しようと燃えているわけですが、近藤副教頭先生によると、もともと八雲学園は帰国生入試をやっていなかったのですが、ラウンドスクエアに加盟したこともあって、開始すると、八雲学園でRS体験をして高いミッションをもって海外大学に挑戦したいという帰国生に出会って驚いたということです。

★RSは、偉大な教育者クルト・ハーンが設立したのですが、ナチスに追い込まれたクルト・ハーンがイギリスに救済されて、イギリスで創ったのがゴードンストウン校です。この自分の命を犠牲にしてまでも、ドイツをファシズムの手から救済しようとした強烈なボランティア精神こそが、ゴードンストウン校の理念です。

★そして、クルト・ハーンは、アレック・ピーターソンとともに、アトランティック・カレッジを創設します。実は二人は、国際バカロレア(IB)の創設者でもあります。IBのコアカリキュラムであるCASのサービス、つまりボランティアはゴードンストウン校のミッションを継承しています。

★ゴードンストウン校はRSの旗艦校です。アトランティック・カレッジはIBの旗艦校です。両方ともそのキャンパスは、アーサー王伝説にでてくるような古城であり、海に面しています。

★八雲学園は、そのクルト・ハーンの系譜になったわけです。なるためには、ハーンのマインドと強烈に共感する必要があります。

★帰国生の中には、この魅力が日本にあるなんて!と驚喜する生徒がいるわけです。

★インドとかインドネシアでは、エスタブリッシュな学校選択の基準は、RSかIBかどちらかに加盟していなければなりません。両方に加盟しているところはなお結構ということです。

★偏差値ではなく、RS加盟かIB加盟かという価値観は、今まで日本には、なかったことですね。幾つかの学校はRSに加盟しているIBに加盟している学校は最近多くなってきました。しかし、それはその学校の在校生が全員選択できるわけではないのです。ところが八雲学園は全員に開かれているのです。

★なぜなのか?それは国際会議を日本で開くときがきたら自ずとわかります。

★RSの加盟校の代表生徒と教師が年に一遍、順番に加盟校の国に集まって、会議をするのです。学校版ダボス会議です。

★今年と来年はパンデミックの影響で開催できませんが、2022年は、オックスフォード大学のキャンパスで開催する予定のようです。

★クルト・ハーンはハイデルベルグ大学やフライブルグ大学のほかオックスフォード大学でも研究しています。アレック・ピーターソンもオックスフォード大学で研究していました。

★RSやIBにとって、オックスフォード大学は聖地なわけです。ポストコロナの時代を、その聖地から始めようというRS。そこにつながる八雲学園。まだまだ3%の穴。しかし、それが逆説的ですが、たいへんな魅力なのです。

|

2020年12月 4日 (金)

2021首都圏中学入試(08)八雲学園の教育が世界的にもエスタブリッシュな学校であることがわかりにく理由は、ノーベル文学賞を受賞しにくい理由と同じ。

本日、GLICC Weekly EDUで、主催者の鈴木裕之さんは、ゲストとして八雲学園の副教頭近藤隆平先生をお招きしています。八雲学園は2つの超破格の国際的プログラムを実施しています。この重要性に気づいているのは、3%の穴の存在に気づいている人だけです。

Photo_20201204131501

★なぜ気づかないかと言うと、日本の作家がノーベル文学賞を受賞しにくいのは、審査員が日本語を読めないからですが、それと同様の理由で、世界の人が八雲学園の教育を知る手立てが少なすぎるからです。

★国内にいると、偏差値で学校の評判が決まりがちですが、世界では偏差値はどうでもよくて、ノーブレス・オブリージュな教育、つまりエスタぶり主な教育が実践されているかどうかが重要なのです。

★今日は、近藤先生のお話を聞きながら、いかにそれが世界標準の話なのか、IB(国際バカロレア)創設にかかわった偉大な教育者クルト・ハーンのつくった学校と比較しながら証明したいと思います!

|

2021首都圏中学入試(07)新型コロナウイルス感染対応入試 首都圏模試センターの情報・動きを読む。

★昨日、首都圏模試センターは、<「学校と塾をつなぐ」入試直前オンライン情報交換会>を開催。同センターサイトにはこうあります。「いまも続くコロナ禍で、学校説明会の際にも安全対策や人数制限などが必要になり、例年と比べて不自由な広報活動をせざるを得ない私立中学校の先生方と、学校説明会や見学会などへの参加の機会も十分に得られなかった塾の皆さま方とをオンラインでつなぎ、残り約1~2ヶ月に迫った来春2021年入試に向かうための情報交換をしていただく企画です」と。

Photo_20201204063601

(写真は、同センターサイトから。桜蔭の入試風景だと思いますが、2021年中学入試では塾の応援風景は様変わりするでしょう)

★同センター取締役・教育研究所長北一成氏によると、11月の合判模試の受験生は昨年より増えているということです。経済的ダメージよりも子供の「学力」「心」「脳神経身体」「ハイブリッドPBL」「対話」が循環した環境を求めているということだと私は考えています。

★今回のパンデミックで行政の対応や学校の対応が明るみに出ました。自衛しかないということが明白になったわけです。もちろん、自衛したうえで社会的制度の見直しもしていく知恵がなくてはなりません。

★よく私立は学費が高いと言われますが、それは支払う側からみるとそうでしょう。小中学の義務教育は学費自体は国自治体がサポートしますから。しかし、投入されている一人当たりの教育費は、ざっくり100万/年です。私立学校はその費用を保護者が支払っているわけです。実はやろうと思えば、公立も私立学校ぐらいの環境を整えることは可能なのです。

★そのことがわかってしまったわけです。GIGAスクール構想で、今後公立学校も1人1台のICT環境は整います。しかし、それがPBLかどうかはわかりません。

Photo_20201204072001

(今後求められるニューノーマルな学校の学びの循環。すでに私学は動いている。)

★PBLのような新しい学びなんてできないよとよく言われます。それでは、ICTも有効活用ができないでしょう。それにPBLは、100年以上前からある教育理論です。1900年初頭に、デューイと弟子のキルパトリックが「プロジェクト学習」という本を出していらいの話で、学習指導要領にも手を変え品を変え導入されてきたのです。何も新しい学びなんかではないのです。ただ、教科学習に導入するということはなかったので、確かにチャレンジではあります。

★その点、首都圏模試センター調べによると、今後はハイブリッドPBLにしていく学校が増えます。また、プロジェクトは対話が大事だし、学力だけではなく、パンデミックで不安が広まった「心の問題」「脳神経身体全体のコンディション」に関してもケアしています。

★そのことを如実に反映しているのが、2021年度の新型コロナウイルス感染拡大に対する各学校の対応です。私自身は、別のワークショップ型Zoomミーティングがあったため、今回の情報交換会には参加できませんでしたが、北氏がメールで、当日配布した各学校の対応情報一覧を関係者に共有してくれています。

★それをみると、まず思ったのが、2月いっぱい中学入試は続くなあということです。すでに、その予行演習ともいうべき事態を首都圏模試センター自身が行っています。合判模試など自宅受験や塾会場受験を行っていますから、集計期間が例年より長くなっています。

★同じようなことが、入試本番でも起こるでしょう。たとえば、開成は「入試当日に、新型コロナウイルス感染症に罹患している、もしくは濃厚接触者に特定されているため、受験できなかった志願者を対象に、2月23日(火・祝)に追試を行います。追試の詳細に ついては、決まり次第、本校のホームページ上にて公開いたします。」とあるのです。

★つまり、開成は事実上2月いっぱい入試を行うということを決定しているのです。

★一方、栄光は、「新型コロナウィルス感染症に罹患,または罹患者との濃厚接触者に該当するとされ,保健所から外出許可が出ていない場合は,受験できません。その場合の追試験や受験料返還などの特別措置は行いません」としていますが、そもそも今回のパンデミックは、一度決めたことは何が何でも押し通すということはできないということをもたらしていますから、栄光もその時になってみなければわからないでしょう。

★浅野も「PCR 検査待ち(陰性の結果が出ていない)は受験不可。試験中の体調不良で検温して 37.5 度以上の場合は、試験を続けることは不可。帰宅してもらう。追試験は行わない」としていながらも、「感染状況次第では、県私学協会および首都圏私学と足並みを揃えて入試日等を変更することもある」と条件を添えています。

★これは、すべての私学にあてはまるでしょう。つまり、感染状況次第で変更可能だということです。

★いずれにしても、追試をはじめから設定しているところもあるし、感染状況次第で入試日を変更すると公表しているところもあるように、2021年中学入試のニューノーマルは、「2月いっぱい入試」とならざるを得ないでしょう。いや「3月いっぱい入試」かもしれません。

★それと、開成は、「塾の方の入試当日応援を自粛」と記述しています。中学入試の風物詩「塾の応援行列」の在り方も変わるということですね。

★この中学入試の変化は、しかし、表面的なあるいは一過性の変化ではありません。「学力」「心」「脳神経身体全体」「ハイブリッドPBL「対話」の循環システムが、パンデミックによって強化されたわけです。強化にはプラスの強化とマイナスの強化があります。

★私立学校の学びの質の強化という意味ではプラスです。したがって、それは後戻りしないでしょう。中学入試の変化は、このプラスの質の変容が紐づいています。

★マイナスの強化というのは、私立学校と公立学校の格差がますます広がるということです。ですから経済的ダメージによって中学入試人口が減りそうだと考えられがちですが、増えてしまうのです。

★1980年代、公立学校の校内暴力がひどかったとき、それは私立中高一貫ブームに火をつけました。1990年代は学級崩壊という現象が、ますます私立中高一貫校の生徒募集増に拍車をかけました。

★1998年・99年は、バブル崩壊の影響で大企業倒産という衝撃で、一時中学受験人口が減ることはありましあたが、ゆとり教育への不安からすぐに回復しました。

★しかしながら、リーマンショックによる減少には、さすがに歯止めがかからなくなりました。ところが2011年の3・11で、逆説的ですが、私学の安心安全対策に注目が集まり、再び生徒が集まり始めます。いじめの問題も私学志向に流れた可能性があります。

★3・11は、今回のパンデミックと同じように、国の行政の意思決定の遅さがメディアで騒がれましたが、SNSが急激に拡大し、情報のやりとりが一変しました。当然新たなデバイスが登場し、私立学校は1人1台路線と世界の情報を獲得するために英語教育へ力が入りました。予測不能な事態に対応する私立学校とそれができない公立学校の格差がここでも開いてしまいました。

★そして、この予測不能に対応するための学力観が変わり、大学入試改革の話題が盛り上がり、中学入試も新タイプ入試のイノベーションが起こり、再び生徒募集は活況を帯びてきました。

★ところが公立学校が中心とする校長会が、大学入試改革に猛烈に反対。2020年大学入試改革は、とん挫しました。すると、パンデミックが襲い掛かってきたのです。もともとこの改革には、CBTというコンピュータによるテストが模索されていたのです。STEAM教育の導入が行われているのも、外部英語検定試験(CBTがすでに行われている)が導入されるのも、当然この教育イノベーションが織り込み済みだったはずなのですが、3・11への想いが風化しつつあったので、予測不能に対応するという文言はスローガンになってしまったのでしょう。

★ところが、予測不能な事態がいままさに起こっているのです。もし、大学入試改革を進めていたら、オンライン学習への対応も、今よりはまだましだったでしょう。

★教育イノベーションと言っても、学校の場合、ゼロからの話ではなく、すでに日常で使われているイノベーションを取り入れようよという話にすぎません。それができないというのが不思議です。私立に比べてお金がないからというのは、誤謬だというのは先に話しました。保護者が支払うかどうかの違いで、学校に投入される費用は実は潤沢なのです。統廃合を進めて、費用の使い方は工夫されています。なぜ、それが子どもの授業に生きないか?

★そんなことに気づいた保護者は、最近は夫婦で働いていますから、私立学校に通わせようと断固たる決意を抱くのです。

★しかも、世界のエスタブリッシュな私学は、年間の学費が1000万というところもあるのです。留学生ではなく、一般市民が支払うのです。一般市民と言っても超富裕層でしょうが。

★ところが、その10分の1で、豪華なキャンパスはともかく、教育の質自体は何ら変わらない、いやそれ以上の教育を久しい間実現している八雲学園のような学校があるのです。

★そのことに気づいたら、現状では私立学校を選ぼうということになるのは、ある意味必然です。

|

2020年12月 3日 (木)

2021首都圏中学入試(06)かえつ有明をはじめ多くの≪Z世代≫による学校説明会 入試のパラダイム転換!

12月27日、かえつ有明は、学校PR部主催「現役高校生によるオンライン学校説明会」に参加。同校サイトには、「人生の大きな決断の1つである高校受験。より多くの中学生に自分に適した学校選びをしてもらうため、現役高校生が自ら企画・運営を行います。「一貫生と高入生の関わりはあるの?」「どんな先生がいるの?」「ほんとに○○○するの?」そんな中学生の疑問に私たち高校生がお答えし、生徒の“生の声”をお届けします」とあります。

Sekai

★かえつ有明以外に、順天や新渡戸文化などやはりPBL授業を行っている学校も参加しています。その他の参加校も体験や探究、グローバル教育に力を入れている学校です。この意味は何か?それはヘルバルト主義という日本の文科省が長らく取り入れてきた≪官学の系譜≫から大きく脱却しようということですね。

★ヘルバルト主義は、近代国家を支える人材を育成する教育に影響を与えました。ながらく、知識の体系とその応用力がきちんと身に付く体系的な教育だったのです。ですから、批判的思考と創造的思考を積極的にと入れることはしなかったのです。

★SDGs、ローマクラブ、世界経済フォーラムは、上記のようなレポートを発刊しながら、このような流れをグレートリセットしようとしています。その理由は、昨今の状況を見れば、説明するまでもないでしょう。Z世代の今回の動きもこの流れとシンクロしているはずです。

Dewey

★ヘルバルト主義が日本にはいってきたとき、私立学校は、デューイとその弟子のキルパトリックの提唱し実験した「プロジェクト学習」を導入しました。訳語が、投影とか企画でしたから、今のPBLとつながっていることがピノなかなかこないかもしれません。

★戦後、文科省は、ヘルバルト主義を教科に、プロジェクト学習を夏休みの自由研究や総合学習などに組み込んで、見事なまでにバランスをとったのですが、大学入試に直接役立つのが教科学習だったので、デューイの系譜は形骸化しました。実は、ヘルバルト主義も大学受験勉強として形骸化していましました。実はブルームのタキソノミーも、観点別評価として採用されているのですが、本意は形骸化されています。

★いずれにしても両方とも形骸化したので、当然息吹は失われ、閉塞状況に陥っています。

★そこで、ICTやAIを使って、ヘルバルト主義を復活し、探究でプロジェクト学習を復活しようとしています。

★しかしながら、なかなかうまくいきません。ヘルバルト主義を徹底した学校かPBLを徹底した学校か、その統合を果たす第3の軸か?いずれも人気がありますが、デューイやピアジェを統合し、ICTや文化人類学を統合したMITのピーター・センゲやシーモア・パパートの系譜が今後第三軸として、私の言葉で言えば、3%の穴を突き抜ける未来の救世主となりましょう。

★今回のZ世代の動きもこの第3軸の可能性が大ですね!中学入試だけみていると、民法改正によって2022年から18歳成人になる覚悟をもった高校生の動きが見えません。ぜひ同校サイトをご覧ください!

|

2020年12月 2日 (水)

2021首都圏中学入試(06)和洋九段女子 生徒と共に創る新思考力入試 入試のパラダイム転換!

★首都圏模試センターの11月の合判模試の和洋九段女子志望者数は、189人。昨年に比較すると微減ですが、合判模試自体、新型コロナの影響で今までとは条件が違いすぎるので、微減は横ばいと読んでもよいと思っています。というのも、同校の説明会は昨年に比べ多いからです。

Photo_20201202090601

★それと、同校の場合は、昨年と違って、2科4科の受験生だけではなく、PBL入試や新設の「思考力入試」の受験生が増えていますから、その新タイプ入試を受験する生徒が2科4科を判定する合判模試に参加していないということもあるからです。これは、和洋九段女子だけではなく、新タイプ入試を行っている学校は、同じような状況になっているかもしれません。かつてのように、模擬試験のデータだけでは人気の傾向は読みにくくなっています。

★最近では、学校のサイトが情報ソースとして最も大事だといっても過言ではないかもしれません。特にコロナ禍にあって、オンライン説明会に一斉に移行した時期が長かったですから、サイト情報が豊かになっています。

★和洋九段女子も更新率が高く、学校の様子はいうまでもなくよくわかります。何より、今回の「新思考力入試」のように、生徒がかかわって、たんなる選抜テストから、在校生自身がいっしょに学んでいきたい後輩と出会いたいという一期一会入試を開発していることがわかるページを読むと感動してしまいます。

★サイトにはこう書かれています。

 2月2日午後実施予定の「新思考力入試」について、テーマや評価の仕方を動画で説明しています。 本校の生徒もプロジェクトチームに加わり、テーマや評価軸について考えてくれました。 今までにない入試の一つとして、PBL型入試に続く本校オリジナルの入試となります。 ぜひご覧ください。

★試験の中身については、ぜひ生徒自身が伝える動画をご覧ください。それにしても、ベルリンフィルのように、仲間を受け入れる時に、メンバー自身が対話したり演奏を聞いたりして決めていくようなこの試験は、選抜ではなく共に生きる出会いを求める機会になっています。また、その試験のスタイルは、あのミネルバ大学の入試スタイルです。万が一パンデミックが拡大しても、オンライン入試に切り替えられます。何といっても公正性を保てるシステムでもあります。入試のパラダイム転換の契機となるでしょう。

★新井教頭先生は、SNSのコメントで次のようなメッセージを送ってくれました。

プロジェクトチームの生徒たちは「こんなことを未来の和洋生と一緒に考えたいな」という思いで考えてくれました。もちろん、共にサステナブルな世界を創っていくメンバーとして😁私たち大人はサポート中心です😅。

★SNSやオンラインを自在に活用して、情報を共有したり、共感できる絵文字も使ってしまうとは、従来の制約の多い女子校とは全く違う雰囲気があふれています。

★今回の入試を開発したり動画を作成した高校生は、中3の頃から私は出会って、今もときどきどき対話しています。SDGsのスゴロクを開発して、国連関係部署や企業や大学などとコラボレーションして活動もしているため、インタビューしたのが出会いのはじまりでした。

★いっしょにセミナーを行ってくれたり、かえつ有明とZoomコラボセッションで、未来創造の対話をしたりもしています。そのZ世代のみなさんが、こんなすてきな入試を先生方とコラボして開発し、ルーブリックまで作成してしまうとは!さすがはPBLキングダムの学校ですね。お爺ちゃんの涙腺はゆるみっぱなしです。

★和洋九段女子のSDGsの取り組みは、中1から6年間通して貫く学校あげてのスーパーストーリープログラムです。現在と未来に向かって、活動しているので、そのつなりは多様性に満ちています。まさにグローバルプロジェクトなのです。

★そして、大事なことは、過去にそのルーツをたどると、女子校で行うことの価値がさらに発掘されるのです。

★ローマクラブで発刊した「成長の限界」の著者ドネラ・メドウズはシステム思考を展開し、今のSDGsの考え方の土台を作ったし、サスティナブルという言葉をつくったのはノルウェーの大統領グロ・ブルントラントです。二人とも女性です。また、現在のローマクラブのトップリーダーも女性です。和洋九段女子の時代ですね!

★また、SDGsのもとになっているのは、1972年の国際連合人間環境会議(United Nations Conference on the Human Environment)で、細菌学や感染症の研究者ルネ・デュポスの提唱です。今のSDGsの地球は1つの家であるというコンセプトは、デュポスらが書いたレポート<ONLY ONE EARTH>です。ダボス会議は、ローマクラブや国連のこのような見解を組み入れて、環境破壊や格差をもたらした経済社会をグレートリセットしようとチャレンジしてもいます。

★和洋九段女子のZ世代のみなさんは、このような幾つかの系譜をしっかり取りまとめて継承しつつ、独自の活動をし、日本の教育のパラダイム転換を生み出そうとしているのです。みなさんぜひ応援しましょう!

|

2021首都圏中学入試(05)志望者数増の学校 女子編

★11月の首都圏模試センター主催の「合判模試」のデータから、来春の女子受験生が志望する私立中高一貫校(首都圏の女子校と共学校)で、昨年より志望者を増やしている学校を、前回の男子編と同じように並べてみます。

201701

(写真は、女子美術大学付属中学のサイトから)

鴎友学園女子
川村
京華女子
佼成学園女子
頌栄女子
女子美
瀧野川女子
中村
藤村女子
雙葉

カリタス女子
聖セシリア
清泉
洗足学園女子

大妻嵐山

郁文館
上野学園
共栄
慶応中等部
工学院大学附属
桜丘
実践学園
品川翔英
芝浦工大☆(新設)
渋谷教育学園渋谷
淑徳巣鴨
玉川学園
東海大菅生
東海大高輪
ドルトン東京学園
新渡戸文化
日本国業大学駒場
日本大学第一
八王子学園八王子
広尾学園小石川☆(新設)
明星学園
武蔵野大学
明治学院
明大明治
明星
目黒学院
安田学園

アレセイヤ湘南
神奈川大附属
公文国際
橘学苑
横浜翠陵
横浜創英

光英VERITAS
志学館

青山学院大学附属浦和ルーテル
西武台新座
常総学院

★今春、女子校が人気が出たため、敬遠されて、共学にシフトしたかのようなリストになりました。いろいろな要因があると思いますが、そんな中で、やはり鴎友学園女子と頌栄女子、洗足学園女子は安定的に人気があります。

★神奈川のカリタス、聖セシリア、清泉というカトリック学校の志望者が増加したというのは女子校の未来を映し出しているといえましょう。というのは、この3校のカトリック学校は、他のカトリック学校の中には、キリスト教精神を宗教行事に押しとどめ控えめにして、進学実績を出せばよいくらいにしか思っていないユダ的な教育をしているところもあるのですが、それとはまったく違う本質路線だからです。すなわち、そのキリスト教精神を授業にまで反映して、入試にも新タイプ入試で生徒と共有する世界精神の気概を持っているのです。

★オンライン授業も積極的に行いました。本質的な世界精神と革新性の統合を図っているのです。

★ポストコロナ時代は、男子校でいえば静岡聖光学院もそうですが、この3校に代表されるようなカトリック女子校の心意気こそ重要になってくるでしょう。

★ミッション校ではありませんが、品川翔英も他者に貢献する主体性を育成する気概と情熱に感動せざるをえまん。やはりオンライン授業もフルスペックで行ったし、もちろん今もハイブリッドで行っています。本質と革新の統合を行っている共学校です。

★女子美は、毎年人気なのです。アートの時代の象徴ですね。

★もちろん、今の世の中はリバタリアンの時代ですから、本質より革新性や進学実績という功利主義的な価値観が圧倒しています。

★本質と革新の統合か、本質なき革新か、本質なき進学実績か、伝統と進学実績の両方かという価値のどれを選択するかは、もちろん受験生や保護者の私事の自己決定によります。

|

2020年12月 1日 (火)

2021首都圏中学入試(04)志望者数増の学校 男子編

11月の首都圏模試センター主催の「合判模試」のデータから、来春の男子受験生が志望する私立中高一貫校(首都圏の男子校と共学校、寮制学校の東京入試)で、昨年より志望者を増やしている学校を五十音(地域別・男子校共学校別)で並べてみます。昨年1人で、今年2人になったという学校も掲載してますから、人気がある学校という意味では必ずしもありません。しかし、何かが起きている可能性があるので、そのまま載せました。2科または4科で増えた学校のリストです。

Takanawa

(写真は学校のサイトから)

麻布
開成
京華
城北
聖学院
高輪
獨協
日本学園
日本大学豊山
武蔵

浅野
慶応普通部
聖光学院

立教新座


静岡聖光学院
函館ラサール
北嶺

駒込
実践学園
品川翔英
聖徳学園
成立
創価
帝京八王子
貞静
東海大菅生
東京成徳大学
東京農大第一
東京立正
東星
新渡戸文化
日本大学第一
広尾学園小石川☆
明星学園
武蔵野東
明星
目黒日本大学
目白研心
立正大立正
和光

アレセイア湘南
神奈川大附属
聖ヨゼフ
橘学園
横浜創英

光英VERITAS☆
志学館
昭和学院

国際学院
武南
星野学園
常総学院

愛光
佐久聖長
秀光
西大和
茨城

★人数を集めてかつ昨年より増えているという意味で注目すべき学校は、京華、城北、聖学院、高輪、獨協、駒込、佐久長聖です。城北は進学校でありながら、ICT教育に力を入れているという点で人気があるのでしょう。聖学院、駒込は、革新性がまずあって、そして進学実績も伸びてきているということでしょうか。

★京華は、進学実績を着実に出しているということと東洋大京北とか小石川とか広尾学園小石川などの地政学的な相乗効果があるかもしれません。

★高輪は、高輪ゲートウェイ駅の新設やメンタリストDaiGoさんの母校とうことや進学実績の成果が伸びているということでしょうか。

★佐久長聖は、評判作りの強力な手腕のある方がいるからでしょう。

★校名や理事会あるいは共学校などなんらかの条件をリフォームした学校では、品川翔英、新渡戸文化、広尾学園小石川、横浜創英、光英VEITASなどが奮闘しています。

★寮制学校では、静岡聖光学院と愛光が人気ですね。静岡聖光学院は、来春に明らかになりますが、日本では全く見たこともないエスタブリッシュな学校に変貌し、進学実績も今まで以上にだしていくでしょう。愛光は、手堅く進学実績の評価が高いのと、ラサールとの相乗効果があるのでしょう。

★やはり多様な価値観があふれでていますね。

|

« 2020年11月 | トップページ | 2021年1月 »