日本女子大学附属豊明小学校(01)歴史を貫く普遍的な教育を現代化する授業を展開。最先端の本物教育を行っている。
★日本女子大附属豊明小学校(以降「豊明」)から2年前の12月にメールをいただき、それから5回くらい訪問したでしょうか。なぜ私がメールを頂いたのか今もって不思議です。一般には、私は偉い人といっしょに赴き、先方もこの方の紹介ならしかたがないかあという感じでお付き合いになるというケースがほとんどですが、ストレートにいっしょに研究しましょうよというメールを頂くのは珍しいわけです。
★何せ「ノーロゴ」の私で、肩書きがありません。「私立学校研究家」という税務上意味のない名称で生きているわけですから。しかも、豊明の場合、現状で何か困っているということもないのです。
★ただ、危機感は学校全体で共有している高い意識の組織です。組織というよりチームと言った方がよいでしょう。世界や未来の情報をお1人おひとりが持っているわけです。初回お会いした校長、教頭、プロジェクトメンバーの先生方と対話した時にそう感じたわけです。
★何の役に立てるのか、まずは学校説明会を見学して、研究するテーマを発見するところから始めましょうということになり、参加したわけです。体育館を埋め尽くした保護者の様子は、中学入試や高校入試のときとは段違いでした。
★私の慣れ親しんでいる市場とはかなり価値意識が違うので、できるだけ、先入観を括弧にいれて、観察しました。
★保護者のために授業の見学会もありました。次々と授業を見ていくのですが、キャンパス内は混みあっていました。さすがに今年は、パンデミックのためオンラインだったようです。
★それはともかく、学校案内と授業見学がセットになっていましたから、キャンパス内も見学できたわけです。
★教室は完全にオープンスペースですから、見学もしやすいのですが、なんと、それがゆえに、キャンパス全体が教室だったのです。ですから、廊下の掲示も、学習活動の制作物で満ちていました。特に美術の作品がギャラリーさながらディスプレイされていて、アーティスティックな感覚に感動しました。
★理科室も他校にはない空間になっていました。理科室で学びながら窓をあけると、そこから先は直接ビオトープさながらの自然が広がっています。しかもスロープになっているので、そこをおりていくと、崖下の植物群が迎え入れてくれます。キャンパス内で、自然観察学習、農園づくりができてしまうのです。なんという贅沢な!
★教室では、1人1台タブレットを活用して授業も展開しているのです。このデジタル空間は、今回のパンデミックで、一気呵成に拡大しました。パンデミック前は、使う教師は使っていたし、単元によって使うということはしていましたが、今ではどこでもいつでも使っています。
★美学の空間、自然の空間、デジタル空間が一体となっています。こんな学校が他にあるでしょうか。
★バラバラにある学校はたくさんあるでしょう。しかし、この3つの空間が交差し循環する理想的な学びの空間は、最近多くの学校関係者や経産省が憧れているシリコンバレーのHTHにもないのです。だから、シリコンバレー自体もHTHも欲しいといっているものが、豊明にはあるのです。
★新しもの好きの政財界人は、自分たちの今があるのは、渋沢栄一や森村市左衛門の世界精神があったからだということを忘れています。近代日本社会を組み立てた彼ら実業私学人の世界精神と日本女子大の創設者成瀬仁蔵の21世紀教育精神を強烈に気概を持って実践しているのは、もはや豊明の教師以外にいないかもしれません。そうそう、彼ら先覚者は、もちろん、新渡戸稲造や江原素六とも対話をしていました。
★エっ!?成瀬仁蔵が21世紀教育精神を持っていたということはどういうこと?と思われるでしょう。起業家精神をフルに発動し、政財界人を巻き込んみながらも、権力に屈せず誠の道を貫く人のことをクリエイブクラスといいます。
★20世紀私学人は世界精神を持っていますが、その表現はファーストクラスです。来春のダボス会議では、ファーストクラスからクリエイティブクラスへという流れを本格的に創ろうという話になります。再び成瀬仁蔵のマインドの出番です。
★つまり、時代がようやく豊明小学校に追いついてきたのです。まだ、ピンとこないと思います。それは、美学の空間と自然の空間とデジタル空間をひとつに結びつけるSomethingについて、まだ語っていないからです。それは、コメニウス―ルソーーペスタロッチーフレーゲー成瀬仁蔵ークリエイティブクラスに流れるマインドを指しますが、そのマインドとは何でしょう?
★そのマインドの現代化の旅が、この一年間だったのです。(つづく)
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