和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(03)自分の探究のアイデアをドネラ・システム思考に転換する12人のZ世代
★前回、12人のZ世代はチェックインのときに、お互いにメンタルモデル(もちろん片鱗ではある)を開示して、安心安全なZoom空間(何せ初めて会うお爺ちゃんがZoom画面越しになぜかいるわけだから^^;)であることを確認したという話をしました。そのとき橋渡し(媒介)のマテリアルをジョン・ケージの「4分33秒」の音楽を活用したわけですが、2つめのセッションではドネラ・メドウズのシステム思考のループ図を使いました。
★まずは、自分の興味・関心のあることとそれをどう発展させているのか、あるいは問題解決プロセスを考えているのかシンプルにアイデアをチャットに書き込んでもらいました。すると、いっせいにカチャカチャカチャ・・・と。あっという間でした。
★たとえば、世界に溢れるプラスチックの問題について、適切な運動が必要だし、人とのコミュニケーションの機会の提供をどうするか考えている。日本の相対的貧困について問題だと感じているので、趣味の一つの写真を通してより多くの人に相対的貧困について考えてもらうきっかけを作りたい。シンギュラリティ時代におけるAIが人知を超えたときの人間の価値とは何か?人間にしかない能力を見つける、育てる人間とは?AIや機械との共存を図る方法を考えたい。ジェンダー問題について、世界のお姫様における女性について歴史的に考察したい。音楽理論などに興味がある。音楽を学べるような機会を増やしたいし、いろんな人にそれぞれボイシングが異なるので7億人の人に作曲能力があれば面白くなると考えている。児童虐待をなんとかしたい。直接的なSDGsの目標番号を作る運動を起こす。 価値観や優先順位の違いについて、 高校で、生徒一人一人の将来にむけた授業選択制度を提案する。民族や国によって違う思考やイメージの違いという文化人類学的なアプローチに興味を持っていて、性教育、利他性と利己性の間に生まれる葛藤を追究したい。
★すべてを紹介できませんが、こんな感じで、どっとでてきました。そして、このそれぞれの想いやその広がりや解決のプロセスをシステム思考に展開(置換)してみようというインプロセッションをしてみました。
★システム思考とは何かを講義するのではなく、出生率と人口と死亡率の関係を図にしているドネラのループ図を提示して、誰か説明してくれませんか?と投げてみました。すかさず、僕行きますと言って、説明してくれました。すばらしい!初めからシステム思考がわかっていたのではなく、動きながら考えるというインプロ型の思考、レヴィ・ストロースなら「野生の思考」というでしょうが、すばらしい即興思考力を披露してくれたのです。
★これで、システム思考のプロトタイプが即興的にできたのです。この野生の思考を12人のメンバーは懸命に追跡し、自分ならどう説明するか没入しているのが、ミュートの向こうから息遣いが聴こえてきました。
★小さなセッションですが、ここでもまたドネラというSDGsのきっかけを50年前に生み出した女性の科学者のメンタルモデルを時代を超えて共有することができました。ドネラのシステム思考は、死後多くの仲間に受け継がれ、それぞれのシステム思考が生まれています。ドネラの親友であるピータ・センゲのシステム思考は最も知られているかもしれません。
★そのピータ・センゲにニューヨークにまで出かけて薫陶を受けたのが、佐野先生と金井先生です。お二人はそのシステム思考的発想をマインドフルネスに活かしているセンゲのワークショップに参加したということです。そのお二人のマインドフルネスのワークショップに新井先生が参加されて共感したわけですから、ドネラのマインドは時代を超えて継承され影響を広げていますね。そして、何より、このネットワークに12人のZ世代がつながった瞬間だったわけです。
★私はドネラが影響を受けた学者の1人であるグレゴリー・ベイトソンに強く惹かれていて、そこからドネラの世界と出会うことになります。また、ベイトソンは文化人類学や精神科学や生態学などを学際的につなぐ越境知の持ち主で、いろいろな人の世界に導いてくれました。レヴィ・ストロースもそうですが、彼は、私の敬愛するハワード・ガードナー教授が研究していて、そのときピアジェについても研究していて認知革命という本で日本には紹介されていました。
★私は1990年代に、ピアジェのもとで学んでいたシーモア・パパート教授の発想にPBLのデザインの影響を受けたのですが、パパート教授はMITメディアセンターの所長で、MITといえば、当時はピーター・センゲが日本ではトレンドだったので、そこで彼の「学習する組織」を知り、衝撃を受けていたのを思い出します。学習する組織はPBLのチームワークにすぐに応用しました。
★そのような自分の経験が、あっさり一瞬にして≪Z世代≫が受容してしまうのです。個体発生は系統発生を取り込んでしまうということでしょう。お爺ちゃんというものは、長々とここまで来た時代を語りますが、それをシンプルにコンパクトに今の世代はデフォルトモードに切り替えます。
★ノイマンが時間をかけて研究してきたコンピュータサイエンスも、今や年齢を問わず、スマホであっさり活用できるのと同じです。Z世代の傾向でしょうが、すべてのZ世代がそうだというわけではもちろんありません。12人が通っている和洋九段女子とかえつ有明が、ピーター・センゲも参考にして独自の新しい学びの環境をデザインしているからでしょう。
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