ノートルダム女学院(16)NDの学校見学会 教師と生徒の豊かなチームワークそして経営と教育の相互関係の一貫性②
★前回、NDの学校説明会の3部構成のうちの「①最初の40分の学校説明」のパーツについてご紹介しました。今回は「②学校説明後の50分のPBL授業をベースとしたキャンパスツア」について述べます。
★50分に同時進行されていた授業だったので、すべてを見学することができなかったのが残念ですが、言葉と感覚についてループワークする国語の授業などは、生徒自身の体験からくる言語感覚と文化としての言語感性の関係を語り合うすてきなPBL授業でした。クリエイティビティは、異質なものどうしの結びつきが起こすケミストリーで、モノ作りとしてのクリエイティビティだけではなく、その創造性が生まれる言語技術について学ぶのがNDの国語科の特色なのでしょう。
★また英語の授業は、すでにグループワークを終え、プレゼンする授業でした。SDGsのターゲットでもある「世界の貧困」について、自分たちがどうかかわっていくのかオールイングリッシュの授業でした。ここでもやはり世界の痛みと自分の関係性や結びつきを思考する授業でした。
★宗教の授業も、トリアジという医療問題にも応用できる命の優先順位をつけることは可能なのかという思考実験問題を行っていました。このトリアジの問題は、今回のコロナ禍において大問題になっていますし、生徒もまさにそのことに痛みを感じないではいられない状況ですから、議論に没頭し、解決策を深く考えていきました。命と人間存在のジレンマを乗り越える人間同士のアンビバレンツな関係性をいかにとくのか。ここでもやはりつながりや関係性について考えるPBL授業でした。
★またもうひとつのディーン先生の英語の授業はストーリーテリングの授業です。どんな物語を創作し語るのか。学年によってテーマが違います。今回は、やはりコロナ禍において家族と暮らすが多く、そこでの葛藤や幸せな状況の悲喜こもごもを、4人一組で家族のメンバーの役割を決めてシナリオを構築していきました。
★“HOME”というテーマは、自分たちの家族の意味でもありますが、地域や社会にも拡大でき、「地球は一つのHOMEだ」というSDGsの理念にまで昇華していく実は小さく始めて大きく育つ人間存在の大テーマだったのです。英語を学ぶだけではなく、そんな人類の関係性をHOMEに収斂させていく哲学のPBL授業でもあったのです。
★キャンパスツアーのレジュメには見学する授業のポイントもシンプルにまとめらていました。さりげなくブルームのタキソノミー(新学習指導要領でも参考にされている深い思考のステージ分類表)は書き込まれ、論理的思考や創造的思考を学ぶ授業であることが明快に謳われていたのです。
★NDの論理的思考や創造的思考は、難問ができればよいという受験勉強的発想ではありません。世界の痛みを自分事として受け入れたとき、今まで関係ないと思っていたモノに関心が生まれ、思考が深くなっていくという人間存在の関係を見出すプロジェクト授業なのです。
★カトリック学校では、愛の反対語は無関心です。関心や関係性を見出すことは愛するということです。今回の学校説明会冒頭で、栗本校長がこの愛されるより愛しなさいという教師の生き様が、生徒が自分たちは愛されているのだと自覚できていることに感謝し、今度は生徒たちが愛する行為に旅立ってほしいという思いを語りました。
★まさにNDのプロジェクトベーストラーニング(PBL)は、関係を見出していくトレーニングです。愛されるから愛するへの転回。希望のプロジェクトです!
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