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2020年11月 5日 (木)

新しい教育社会(21)石川一郎先生の新著「学校の大問題」の本当の問題!

★石川一郎先生の新著『学校の大問題 これからの「教育リスク」を考える (SB新書) 2020/11/6』読みました。とはいえ、いつもながらの直観斜め読みですが(汗)。

★そして、学校の大問題をアクロバティックに語っているのに驚きでした。

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★ここまで、ブルームのタキソノミーを前面にだして展開している学校論は見たことがありません。私が「思考コード」で社会全体を語ろうとしているのとは真逆です。思考コードを活用している石川先生が、あえてタキソノミーにこだわったのはなぜでしょう。

★新学習指導要領の背景には、ブルームのタキソノミーは確かにあります。学力の三要素の図などはまさにそうですよね。文科省の教育関連分科会の資料などでも、国立教育政策研究所の資料でもそうなっていますが、ただし、ブルームのタキソノミーは、アクティブラーニングを導入した文科省にとっては不具合が生じるので、ブルームのタキソノミーをいろいろな弟子たちが修繕・改修・改善しているものも深く取り入れています。

★それに、観点別評価でブルームのタキソノミーはちょっとなまった使われ方をして、文科省も前面に押しにくいということもあったでしょう。

★石川先生がそのことを知らないはずはないのに、あえてブルームのタキソノミーを前面に押し出してきた。まったくここに学校の大問題があるわけです。ブルームのタキソノミーというのは学びの基準の一つの例です。タキソノミーを使っていない学校の現状を映し出しているわけですね。

★ブルームのタキソノミーを否定するのは勝手だけれど、他の基準はあるの?あるのなら見せてみなさいと石川先生は迫っているのです。

★それと、ブルームのタキソノミーは、もともとは認知科学の流れですから、その源流であるルソーやピアジェ、ヘーゲル、なんといってもデューイに立ち戻れば、ピータ・センゲではないですが、誤謬のロジックから解放されます。

★思考コードはその源流に立ち還っているわけです。首都圏模試センターや21世紀型教育機構の各学校の思考コードはそういう意味では、Beyond Bloomをやっていたわけです。神崎先生や私もそうです。石川先生もかえつ有明当時つくった思考コードはそうでした。IB(国際バカロレア)もブルームは参照しますが、独自のルーブリックに脱構築しています。

★石川先生は、全国の10%の先進例を紹介はしていますが、あえて詳細には述べず、あくまで90%の学校の話をしているわけですね。

★なぜかというと、ここがアクロバティックなところですが、ブルームのタキソノミーは、ICT教育に適合してしまうということなのです。基本ICTの導入事例は、まだまだインストラクショニズムでコンストラクショニズムではありません。つまり要素還元主義なのです。関係総体主義である構成主義的な発想はまだないのです。

★GIGAスクール構想も、経産省の未来の教室も、これからのデジタル庁もユーザー目線ですから、時代の要請には耳を傾けていません。両方が大事なのですが。

★それから、試験文化にピッタリなのです。それはそのはずです。ブルームは、タキソノミーを作る時に、素材としたのが大量の試験問題だったからです。

★つまり、ブルームのタキソノミーを明快に導入すると従来のワンウェエイ授業あるいは、教師と生徒の問答授業(ソクラテスほどではない)に立ち戻ることができるのです。

★石川先生の真意を対談して確かめてみたいのですが、これはまったくすごいアイロニーです。いいよ学校が変わらないのなら、今のままでいいからブルームのタキソノミーを徹底しなさいよということです。そうすれば、大学進学実績はもっとでますよと。

★学歴社会を21世紀型教育で崩すのはまだ時間がかかるから、20世紀型教育に欠如していた授業の基準を明らかにすれば、偏差値に関係なく進学実績が出るから、偏差値ランキングを崩すことができるということでしょう。

★それゆえ、C1英語の話も、実は創造性についてもほとんど中身の話はしていないのです。つまり、クリエイティブクラスの社会学的な話や芸術文化人類学的な話はいっさいしないのです。教科横断型や学際知を標榜している石川先生がです。というのも、世界はクリエティブクラスの方向に動いているけれど、日本は動かない。それは学歴社会が厳然とあるからだ。それなら、今のまま偏差値ランキングを崩す戦術で行こうということだからです。

★そうすれば、結果的に、日本は遅ればせながら動き出す。しかし、この学歴社会は、化粧を変えた江戸時代の封建制度ですから、そう簡単には変わらないわけです。ですから、変えるということはあまり言わない。今のままでいいからブルームのタキソノミーを使いなさいと。

★というビッグ・クエスチョンを投げかけたのが本書だったのではないでしょうか!またまた本間の独断と偏見だと言われるでしょうが、私としては目から鱗でした。なるほど自己変容のシナリオは2通りあるのだと今更ながら気づいたのです。この戦術も導入しながら、つまり二刀流でさらなる新しい挑戦ができるなと感じ入りました。

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