« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »

2020年11月

2020年11月30日 (月)

2021首都圏中学入試(03)中学入試における偏差値の意味を相対化して3%の穴をすべての生徒と共有しよう。

★小学校受験がだいたいおちつき、大学の総合型選抜もピークが過ぎ、中学入試の帰国生入試がはじまり、いよいよ沸騰受験列島が近づいています。この時期は、受験生はどうしても自分を他と比較して苦しむのが常です。その比較の基準が偏差値ですね。たしかに、そんなことはよくよく考えると愚かしいけれど、悟るのはなかなか難しいわけです。ですから、自分が苦しんでいる偏差値という位置づけがどうなっているのか相対化すると、少しは新しい道が開けるかもしれません。

Photo_20201130091101

★そもそも偏差値というのは、母集団が前提です。ですから高校入試における偏差値50と大学入試における偏差値50と中学入試における偏差値50は、まったく意味が違います。

★上記の図を見れば、それは明らかですね。ざっくり全国の高校卒業生100万人のうち偏差値50は50万人目前後のポジションです。大学入試は、55万人の真ん中が偏差値50です。首都圏の中高一貫生は4万人くらいですから、その真ん中が偏差値50です。

★こうしてみれば、中学受験生が、偏差値で苦しむのはおかしな話です。むしろ、中学入試の経験ができることに感謝し、そこで自分は何をするのか考えた方が前向きになれるでしょう。

★では、大学受験生や高校から就職する生徒は苦しまないのかというと、やはり苦しみます。学歴社会というのはそういうことです。しかし、AI社会において、その苦しみから解放される道があるのも、多くの人が気づき始めています。しかし、それはまだ3%です。

★この3%の穴は、すべての人に開かれています。偏差値にこだわっていると見えないのですが、こうして偏差値を相対化したりして解放されると見えてきます。

★3%の穴は、クリエイティブ・クラスへの道です。学歴社会はたしかにあって、めんどくさいけれど、3%の穴は、自分で進んでいけます。私立中高一貫校の中には、そこに突き進む学校がたしかにあり、有利かもしれません。

★しかし、どこにいても、3%の穴を突き抜けることはできます。自分次第です。

★もちろん、こうしてネットの中に入り込めば、その道をどうやって見つけ、歩んでいけるのか知ることができます。そして、中学入試が、その3%の穴への気づきの場であることは確かです。ですから、私立学校研究家としては、それを見つけ、それが必ずしも私立中高一貫校に入学しなくても、自分でなんとか通り抜けることができるのだという情報も同時に発信していこうと思います。

|

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ(補説)

★そうそう、秋田先生の授業における「読解」の位置づけですが、U理論とGRITを掛け合わせるとこんな図になると思います。

9_20201130010501

★こうしてみると、今までの日本の教育は、与えられた文章のどこに何が書いてあるかを理解し、その背景にある作者の想いの一部を推理することはできても、生徒がそこからもっと深いかけがえのないものを探究していく深さと広がりをもとめる道を歩むことを授業で展開してこなかったことを反省させられます。今回のリサーチ&ワークショップは、秋田先生の授業の意義や価値が、そこを乗り越える一つの道であることを示唆しています。

Ug

★秋田先生をはじめ、ノートルダム学院小学校の先生方のチャレンジが、生徒の未来のみならず、日本の未来にも光を照らすことになるでしょう。マリアテレジア・ゲルハルディンガーが、ドイツで、アメリカで、日本で、アジアで、子供たちが壁に囲まれ、突破できない困難な状況にいる時、いっしょにそこから脱する道を歩んだように。その道は、教育というエネルギーで開いてきたし、今後も拓いていくでしょう。

|

2020年11月29日 (日)

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ(了)

★今回の秋田先生のPBL授業は、児童がワクワク内側から燃えそして知的好奇心から探究へ踏み込んでいくすてきなデザインがされていました。そのことを参加した先生方と共有していたのは最高でした。

Photo_20201129140601

★最後は、1人ひとりが、今後楽しみたいあるいは心がけたい授業デザインのポイントを分かち合って終了しました。

61cnzou8cel_ac_sl1401_

★そのときに活用したのは、「探究パターン・カード」です。慶応義塾大学の井庭崇教授の研究の成果がカードに可視化されているのです。学校や大学、教育関係者だけではなく、多くの領域で活躍している人々の探究する時、学ぶ時、プレゼンする時、対話をする時などなど達人の言動のパターンを可視化しています。

★ですから、ワークショップに参加している先生以外に、多くの方々がどんなことを思って授業をデザインしているのか、探究をしているのかという知恵や視点につながることができます。

★インターネットという世界中の智慧や世界中の文献に横たわる智慧も結びつけながら、子供たちの未来をつくる環境を多角的多次元的にデザインしていく果てしない物語こそPBLの醍醐味です。

★今回、ある意味私のファシリテートの手の内を公開しました。なぜかというと、今回集まった先生方が学内の教師研修を行う時に、自らファシリテーターを行う機会がおそらくやってくるのではないかとふと思ったからです。

★研修は、理論としてこういうのがあると講義したところであまり効果がないのは、授業と同じです。わかる人はわかるし、わからない人はそのままなのです。

★私は、ファシリテーターとは引き出すあるいは触媒になると言われていますが、何を引き出すか何の触媒になるのかが大切だと思っています。それは先生1人ひとり、子供ひとりひとりが、自分なりに持っている考え方や感じ方、つまり自分なりの理論をもっていますから、それを引き出し、相互に見せ合い、語り合い、強靭で柔軟な理論に自らマスタリーしていく道を開示することだと思っています。それがあるからこそ、なぜが問えます。なぜを問うから価値が生まれてきます。実ははじめになんと理論というHOWがあるのです。

★人の理論を使っているうちは、それこそ自分事にはならないでしょう。だから、なぜだなぜだと最初から問うのです。HOWよりWHYだと理論を構築した人はいいます。その理論を押し付けるので、受けとめる側は、あるいは消費者は、HOWから考える必要はないからですね。もちろん、ピカソもバッハもみな模倣から始まります。なぜこううまくいかないかとなぜだなぜだと問うのです。でも、自分の方法が見つかったとき、なぜその方法なのですかと問われたとき、それは在りてあるからだよと。なぜを考えるのは私ではない。あなただよ。私はもう創ったのだからと。どうやら守破離とか序破急とかいう境地は時代を超えて共通していますね。

★しかし、いきなり模倣はしないのです。自分なりにまずやってみてという経験が先なのです。そこから苦悩の時代が始まります。模倣をします。そして壊していきます。それを何度もやります。プロトタイプーリファインの渦巻きができあがります。その軌跡こそプロジェクトの道ですね。

★秋田先生の授業は、その道を生徒と共に歩んでいくプロジェクトだったのです。

|

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ➄

★秋田先生の授業を分析して、秋田先生の授業が、市民革命や宗教戦争、コレラのパンデミックなどの激動の疾風怒濤の時代に生まれたPBLの系譜であることが私はわかりました。その時代に同時に生まれたアンチPBLのヘルバルト主義と対峙しているのもわかりました。この確認は、私にとっては重要です。というのも、その疾風怒濤、つまりシュトルム・ウント・ドラング時代、残念なことに、ヘーゲルはペストで生涯を閉じたのですが、マザーテレジア・ゲルハルディンガーは大活躍をするのです。

4_20201129123901

★そのマザーテレジア・ゲルハルディンガーこそがノートルダム教育修道女会の創設者です。もちろん彼女の人生そのものがプロジェクトなのは言うまでもありません。秋田先生の授業はまさにゲルハルディンガーの系譜です。その確認こそが世界標準の学習理論に一致すること以上に大切なのです。

★さて、秋田先生の授業に、PBLの種を確認した先生方は、ここでホッとしませんでした。さらに一般化を試みます。ここはリベラルアーツの真骨頂です。具体的な体験や事例から一般論を見出すわけです。しかし、これは科学的というより閃きです。

★このような具体的なケースから一般論を引き出すことを帰納的思考といいますが、しかし、ケースが1つでは一般論として成立するかどうかは保留です。しかし、思い切ってやるのです。この繰り返しがやがてノートルダム学院小学校のPBLのシステムに到る道でしょう。

★だから、たしかに仮説なのです。しかしながら、それは強烈な閃きですからメタ帰納思考というわけです。ミメーシスと言ってもよいでしょう。アブダクションと言い換えてもいいですね。

★1つのケースからメタ帰納で一般化し、こんどはその一般化した方法を共有した参加者が使ってみる。今度は一般化を具体化するわけですから、演繹的な思考様式になります。そして再び、こうやって集まってメタ帰納的に分析して新たな一般化を引き出していきます。上田信行巨樹なら、プロトタイプをつくってはリファインしていくんだよと言うでしょう。

★この繰り返しができるチームこそ<学習する組織>なのです。あのピータ・センゲの理屈ですね。

516rn8xesl_sy346_

★今回のリサーチ&ワーjクショップでチームNEXTが<学習する組織>として動きだしたということも了解ができたのです。すばらしいですね。(つづく)

|

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ④

★クリエイティブ・スクライビングは、ただ図や絵を描くというだけではないのです。描き終わったあと、参加者全員で再現していきます。全貌は秋田先生しか知らないので、みんなで協力して補完し合っていきます。不思議なことに、秋田先生が無意識のうちに行っていたことも指摘されたりして、多くの気づきが秋田先生も含めて相互に生まれます。

Johari_window

(図は、Wikipediaから)

★クリエイティブ・スクライビングは、古典的なジョハリの窓の活用もできてしまうのです。対話が重要だというのは、レビナスも自分の顔は自分で見ることができないからと言っています。大事ですね。

Photo_20201129110601

★クリエイティブ・スクライビングとグルグルのあと、今度は、3色のポストイットを活用して、秋田先生の授業には、どんなアクティビティが使われたのか、それによって生徒はどんな感情を生み出したのか、またどんな行動をとっていったのか、認知と感情と行動の3つの側面の分析をしていきまました。

514r4rrqhl_sx354_bo1204203200_

★この3つの側面を分析するのは、ブルームのタキソノミー(分類)の発想を活用しています。このタキソノミーは、現在、認知の側面しか使われないのですが、新学習指導要領では学力の3要素とかコンテンツからコンピテンシーへというカタチなどで再度読み替えています。

★ブルームの理論は1950年代のものですから、それから多くの学者がアレンジして発展させています。文科省も、いろいろな学者の理論をリサーチしていますが、上記のマルザーノの本もその一つです。

★ただ、ワークショップでは、ブルームのタキソノミーがどうのこうのということはあまり話題にしません。発想が大事なので、ブルームの分類方法という知識は参考程度でよいのです。特に教育や学習の理論は、現場の経験の分析から一般化されたものですから、秋田先生の中には、理論よりも前にすでに理論が展開しているわけです。

★私はファシリテーターですから、それを引き出して、ちゃんと理論とマッチングしているし、それ以上ですよということを確認できればよいのです。ホンマノオト21でこういうメモを書いているのは、そういうわけです。そして、そのことを多くの先生方と共有することも何らかの意味があると思っています。ただ、すべてを描くわけにもいかないので、どうしてもワークショップを経験したメンバーでなければわからないということもあります。そこはお許しください。

★秋田先生の今回の小4の国語の授業は、「プラタナスの木」という教科書に載っている物語を素材にしています。一般には、あらすじや段落ごとの要約、登場人物のキャラクターや心情の変化、そしてこの物語で重要と思われる深い問いを先生が発問して読解していくという授業になりますが、秋田先生の場合は、この物語の魅力を誰かに伝える場合、どうしたらよいのか考えプレゼンする内容を編集するというプロジェクト学習を行っていきます。

★生徒が主体的になるには、人間との関係をどう創っていくのかエージェンシーを発揮できる環境設定をどうするかがカギで、それをPBLのゴールにしているのが秋田先生の授業デザインの本意ですね。

★ですから、もちろん、読解というダウンローディングも行いますが、それ以上のプログラムになっているのです。

★ですから、タキソノミー分析をしていくと、自ずとそういう流れになります。しかも、認知部分の分析しかしないのが従来のやり方ですから、そういう意味ではブルームを超えた分析をしてしまったことになります。すごいですね。

Photo_20201129111501

★出し合ったポストイットをカテゴリー分けしていくと、それが見えてきたのです。知識・技能だけではなく、論理的思考、創造的思考も生徒がフル回転させていることがわかりました。

★新しいプロジェクトに不安になる生徒もいましたが、徐々にのめりこんでいき、ワクワクする気持ちがわきでてきたことも了解できました。

★積極的に話したり、アドバイスし合ったり、シェアしたり、秋田先生が用意したアクティビティだけではなく、生徒自身がアクティビティを生み出すような行動をしていったということもわかりました。

★そして大事なことは、対話したり、考えたり、失敗を恐れないような安心安全な場が土台にあることが共有されました。その土台のうえで、やはりまた不安になる生徒もいますが、すぐに回復できたということにも先生方は気づいたのです。

|

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ③

★さて、ずいぶん前置きが長くなりましたが、いよいよ秋田先生の小4の国語のPBL授業のリサーチ&ワークショップの様子と少し仕掛けをご紹介しましょう。秋田先生は、まず実践した授業のプレゼンとその後の展開の予定をコンパクトに語ります。同時に、先生方が、どこでもシートを壁に複数枚つなぎ合わせて、そこにどんどん秋田先生のプレゼンを転写=スクライビングしていきます。書き方とかは自由です。はじめて行う先生は、どうやってやるの?!っとドキドキ不安になりますが、落書きの感覚でいいのだと了解するとワクワクしてきます。

Photo_20201129090801

★今回は、スムーズに遊び心もあって、すてきなスクライビングになりました。さすがです。実際に秋田先生の授業も見学するなど、経験してきたというのも功を奏していたようです。

★私はクリエイティブ・スクライビングと称していますが、もっと本格的にやると、「ジェネレイティブ・スクライビング」という本が出版されているように、これだけで、創造性を生成するプログラムができてしまいます。この本は、今では翻訳されているので、便利ですね。

1_20201129091201

★この本は、U理論とシンクロしている本ですから、自己変容やメンタルモノデルの開示、創造性への掘り下げによっていきつくプレゼンシング感覚(深堀して閃きが生まれる感覚あるいは視野が急激に開ける感覚)にアート的なセンスで導かれる実践知が描かれています。そこまでいくと、気づきが多いので、創造の竜巻が生まれるのです。

★しかしながら、45分というコンパクトなPBL授業のリサーチ&ワークショップですから、そこへの入口として使い、プレゼンシングは次のステージに移行することで生まれるようにデザインしています。

★次に進むのは、グルグル(眩暈)というアクティビティです。メンバーが輪になって、次々と今行った秋田先生のプレゼンと同時にクリエイティブ・スクライビングを行った意味をアウトプットしていきます。対話ではなく、順番にキーフレーズを語るのです。どんどん語っていきます。グルグル回っていくのです。ルールは、パスはしないことと同じ表現をしないことということです。同じ意味になってもそれは構いません。

★最初参加者はプレッシャーに感じるようですが、進んでいくうちに、いろいろな見方や感じ方があるのだと、参加者の内側が見えてきて、共感や共振が生まれてきます。

★そして、そろそろ溢れてきたなというところで、循環のステージを変えます。今度は、今ここで行っているこのグルグルの意味について同じように語っていきます。

★これは、リベラルアーツで大切にされているミメーシスとかメタファーとか置換という感覚を共有するきっかけづくりになります。

51lo1d5fgl_sy344_bo1204203200_

★これは、ネルソン・グッドマンの「世界制作の方法」にヒントを得たアクティビティです。以前からHonda発見体験学習のファシリテータ研修や聖学院、工学院の先生方と行っていたアクティビティですが、開智国際大学の私のPBL型講義で行ったアクティビティで学生(将来教員を志望している学生が90%)が最も好むアクティビティでした。また、昨年、順天中高のグローバルウィークの「世界の創り方」講座で、高校生8人と理事長も交えて行ったワークショップでも、盛り上がったので、確信を持ついたったのですが、今回も、やはり先生方の開示する勇気と挑戦心があふれていて、すてきでした。

★そして、これは学習する組織を作る際のメタ対話とメタメタ対話を生み出す足場づくりでもあります。インプロマインドセットといっても構いません。

Photo_20201129093701

★メタ対話については、ピータ・センゲの「学習する組織」の実装本であるフィールドブックはとても役に立つのですが、絶版になっているのが悲しいですね。英語版はkindleで手軽にゲットできるのですが、日本語訳はそうなっていません。

★さて、メタ対話とメタメタ対話ができるようになったところで、次のステージに進みます。プレ・システム思考をフル回転するアクティビティになります。システム思考は、ピータ・センゲの親友、ドネラ・メドウズの手法を私は好みますが、学校とビジネスの架け橋に使うのは、ピータ・センゲの方が進化しているかもしれもしれません。

★ドネラは21世紀になるや他界しました。極めて残念ですが、その意志は多くの方々に引き継がれ発展しています。ピータ・センゲもその1人ですね。(つづく)

|

2020年11月28日 (土)

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ②

★今回のリサーチ&ワークショップでは、次の写真にあるセオリーを統合しています。ここにはいれていませんが、レヴィ・ストロースの「野生の思考」的なブリコラージュ手法とハワード・ガードナーの多重知能(MI)理論とベイトソンの学習理論は、私のベースですが、これはまた別の機会にご紹介します。

Photo_20201128231801

★というのも、実践的な手法の影響を受けたというか直接伝授して頂いた上田信行教授の本の中には、それらも織り込み済みの実践知が満載されているので、カバーされているということもあるからです。

8_20201128232001

★それから、ワークショップを行う時に使うツールは、上記の写真にあるものです一斉休校のときには、Zoomで何度か行いましたが、やはり、スクライビングを行うのは、リアルな空間でのワークショップが効果的だなと今回改めて感じました。

★スクライビングは、創造的な感性や思考を生み出すアクションです。上田教授から伝授された手法の中でも最強の手法の1つです。ただし、上田教授のようにアーティスティックなレベルには、まだまだ遠いのですが。

★ポストイットは、大きさの違うものと色の違うものを用意するのは極めて大切です。分解と合成という世界制作方法の1つを自在にできるからです。

★タイマーも大事ですね。時間の制約は創造性を生み出すというインプロ教育を導入することができるからです。

★デジカメは、ポートフォリオとプロセスフォリオの記録のために活用します。写真だけではなく、動画も撮れます。デジカメではなくタブレットでもなんでもよいのですが、ポケットに入れながら使えるので、私はデジカメを活用します。

★授業で先生方が活用すると、モニタリングしながらリアリスティックなリフレクションが生徒とできるので、便利です。でも、ヘルバルト主義だと、ずっと教えていなければならないので、その余裕がないのです。最近の体育の授業では、先生方も子供たちもこのタブレットを活用したモニタリング活動を行っていますね。生徒中心のアクティビティが展開すると、それが可能になります。

★コンパクトに90分(実際には2時間になりました)で行うワークショップでは、このぐらいの簡易な道具立ててかなりのことがリサーチできます。(つづく)

|

ノートルダム学院小学校のPBL授業のリサーチ&ワークショップ①

★先日、ノートルダム学院小学校のPBL授業のリーサーチ&ワークショップを行いました。チームNEXTの活動です。メンバーはその都度参加したい先生方が集まります。教師というのは、どこの学校も忙しいため、定期的に全体の教員研修を行うというのはなかなか難しいのです。そのため、時間の都合に合わせて自由に参加できるチャンスを作っているようです。したがって、少人数の会です。

6_20201128230101

★基本、1人の先生がご自身の授業をプレゼンし、それについて、いろいろな角度から対話していきます。授業分析というスタイルですが、リフレクションとシェアの竜巻になりますから、参加したメンバーも気づきがあり、自分の授業に活かそうということになります。

★Project Based Learningは、今では世界中の幼稚園から大学まで、いろいろなバリエーションもあるし、呼び方もいろいろあります。定義がないというのが世界の常識ですが、日本では何か1つの正解があるとおもわれがちです。

★日本の教育は、明治以来ドイツの保守的な教授法を体系化したヘルバルト主義が広まっています。つまり、20世紀型の一方通行的な講義形式の教授法ですね。日本ばかりか、世界にも広がり、インストラクショニズムの流れを作ったかもしれません。

★これに対し、コメニウス―ルソー―ペスタロッチーフレーゲの流れや、ルソーーヘーゲルーデューイーパトリックの流れや、ルソー―ピアジェーシーモアパパートーレズニックの流れや、ルソーーレヴィ・ストロースーハワード・ガードナーの流れなど、経験や多様な才能を認めるプロジェクト型のPBLの流れがあります。この教育学の流れは、認知心理学やフッサール以降の新しい哲学、文化人類学、量子力学的な対話理論とシンクロしているともいえます。

★大正自由教育などもこの流れで、私立学校の中には、これが連綿と流れ続け、今日の21世紀型教育につながっているところもあります。

★シリコンバレーや世界大学ランキング100位以内(東大や京大はまだまだですが)の大学ではプロジェクトは当たり前です。世界のエスタブリッシュな私立学校も当たり前になっています。

★IB(国際バカロレア)なども経験を重視しますから、自ずとプロジェクト型が中心になります。

★しかし、割合にすると、日本では97%はざっくりいうと未だにヘルバルト主義です。諸説ありますが、教育学者の中には悪しきヘルバルト主義と語る人もいます。

★ただ、これではポストコロナの時代は乗り越えられないという認識が、イノベーティブな企業や学校では広まっています。経産省や文科省も気づき始めました。

★しかし、教師主導の道徳主義中心のヘルバルト主義というパターナリズムは、まだまだジェンダーの問題が先進国でも深刻だといわれているように、なかなか変わるのは難しいと言われています。

★やはり、そこは文科省から相対的に自由な私立学校が道を開かなければならないのかもしれかもしれません。

★今回のパンデミックによるオンライン学習に踏み切ったのは私立学校の方が多かったというのは、その証の1つでしょう。

★ノートルダム学院小学校は、そのファーストペンギンよろしくチャレンジしている学校の1つです。

★今回の秋田先生のロイロノートやグループワーク、ルーブリックを活用したPBL型授業は、ヘルバルト主義を超えた体験とメタ認知を組み合わせたすてきな授業でした。ワークショップを通して気づいたことを紹介していきたいと思います。(つづく)

|

GLICC Weekly EDU(03)SpesDen代表取締役久保山皓平さんと新しい教育テクノロジーと新プラットフォームの価値とビジョンを語る

昨日(2020年11月27日)、第6回GLICC Weekly EDUのゲストは久保山皓平さん。主宰の鈴木さんと教育学的な言説(ジャーゴンとかその領域だけで通じるキーワード)をあまり使わないで、というよりむしろスタートアップ寄りの言葉で教育について対話になりました。

201127a

話の詳細は、ぜひ動画をご覧ください。教育にテクノロジーを持ち込むとどうしても効率化や合理化のベクトルになりがちですが、そうではない領域をテクノロジーが豊かにするという話が新鮮でした。

★さすが、ピーター・ティールが活躍しているカリフォルニア州でリサーチしてきた経験が反映した視点でした。つまり、3%の穴の向こうからの視点は目から鱗だったのです。

★また、話が進んでいくうちに、PBLというシステムは海外では学校のみならず、スタートアップでも社会実装されたアイテムであろうという新たな気づきもありました。

★大学合格のためにPBLは役に立つのかとか、PBLよりも躾ではないかといっていると、子供の未来は閉ざされるということが身に染みてわかった瞬間でもありました。

★スタートアップの意志決定の速さ、ネットワークの拡張性、プレイフルな活力、パートナーシップの大切さ、創造性の爆発、資金調達の柔軟性、でも突き抜けた何かがないとうまくいかないのではないかなど、PBLの種というかエネルギーに通じるものがあったのです。

★教育とスタートアップが米国では親和性があるけれど、日本ではなかなか難しい。それは、根深い文化深層の違いがおそらくあるのでしょう。しかしだからこそ、もしこの両者が融合すれば、シリコンバレーがエンジニアリングの次を渇望しているSomethingが見出せる可能性があるなあと感じもしました。

Dsc06001

(竜巻を生むアクション!ドキドキをワクワクに転換します。)

★久保山さんと仲間たちが新しい竜巻を教育に生み出すイメージが広がりました。

★久保山さん、ありがとうございました。これから共に新たな教育スタートアップをお願いいたします!

|

2020年11月27日 (金)

2021首都圏中学入試(02)今年も高人気の三田国際 11月国際入試激戦に!

★今朝、三田国際の国際生入試に挑む受験生の応援に行ってきました。GLICC代表鈴木さんと一緒でした。私たちのテーマである「3%の穴の向こうにある真実」を追跡しているからです。

Photo_20201127115901

★今年も同入試は激戦です。英検準1級レベルでもなかなか難しいのです。合格すると、インターナショナルコースに入学するのですが、このコースに入ると海外大学への道が開かれているし、英語力と高次思考力を活用して、国内の難関大学に進むことはかなり楽勝です。楽勝というのは、もちろん、6年間の学問的アプローチの研究と挑戦し続ける強い意志が大前提です。

★しかし、大事なことは、難関大学楽勝ということではないのです。その先にある海外大学編入や大学院で留学という道が開かれているということなのです。

★私たちは、これを3%の穴の向こうの世界に尽きぬける道だと考えています。その世界には何が広がっているのでしょう。それについては、今日のGLICC Weekly EDUで、鈴木さんと対話します。ゲストにその3%の穴の向こうに突き抜けた東大卒、元財務官僚で、UCLAでリサーチし、起業した久保山さん(SpesDen)をお招きしています。

★そうそう、GLICCですが、今や三田国際学園の国際生入試受験生の聖地になりつつあります。代表の鈴木さんが応援に行ったのも、自分の生徒たちの応援でもあります。

★2月1日前に、3%の穴の向こうに気づいている生徒の挑戦が始まっているのです。

|

2020年11月26日 (木)

2021首都圏中学入試(01)今年も高人気のかえつ有明 11月国際入試前年対比105%。

★今年も首都圏中学入試が始まりました。コロナ禍にあって、受験生の応募者はどうなるのか、業界ではシミュレーション分析が闊達に行われています。オンライン学習をまっさきに行った私立中高一貫校は注目されましたが、一方で経済のダメージの影響も否めません。

★そんな中、11月22日に、かえつ有明の国際生入試がありました。同校の国際生入試は、12月と2月にもチャンスはありますが、11月が例年最も集まります。さて、どうだったのでしょうか?

1_20201126224001

★同校広報主任の内山先生から今年の11月の応募者数などの情報が各シンクタンクや塾、メディアにリリースされています。2018年からの推移をグラフにすると、今年も伸びていることがわかります。

★401名という数は、一般受験でも多いと感じる人数ですね。

★日本では、まだまだ愚かにも子供の学習権を阻害するようなパターナリズムの方々がたくさんいますが、PBLやアクティブラーニングは、もはや欧米のエスタブリッシュスクールでは当たり前の学び方です。

★国際生がそのような場を求めて受験するのは必然です。

★特にかえつ有明では、すべての教科の授業がアクティブラーニング(ディープラーニングと呼ばれています)で展開されます。要は、自由度が高いし、対話が満ちているし、クリエイティビティを大切にしているということでしょう。

★コロナの影響で、今年はもしかしたら帰国生が、現地に残らずに、帰国してくる数が多いということもあるかもしれません。しばらく様子を見たいとお思いますが、ともあれ、かえつ有明の人気は、今年も健在です。

|

思考コードが世界観を変える(01)首都模試社長山下一さんとの<思考コード新世界観プロジェクト>はじまる。

★コロナ禍にあって、山下一(首都圏模試センター社長)さんとずっとZoom対話で、世の中が劇的に変わっていることについて語ってきました。何が変わったのか?変わるのか?対話してきたわけです。首都圏模試自体、働き方をテレワークに移行したし、模擬試験を自宅と会場の両方で行ったり、保護者会をがんがんオンラインで行ったりして、大きく変わったわけです。

201124

★ロックダウンになったときには、完全テレワークに移行できたし、現状はハイブリッドで行っています。

★私もそうです。ハイブリッド・ライフになりました。

★しかしながら、何が変わったのか、デジタルインフラの変化やZoom体験による意識の変化、経済循環の変化などたくさんありますが、山下さんと私は、もっと根本的な世界観の変化について多くの人と共有することが大切だということになりました。

★人類が宇宙に飛び立って、その宇宙空間から地球を見たときにパラダイム転換が起こりました。人類は1つなのだと。そして、今回のパンデミックでデジタル空間から世界中の人がリアルな空間を見たときに、やはり人類は1つなのだと。

★今回は、宇宙飛行士からの伝聞ではなく、私たち自身が直接体験をしたのです。この体験の意味を、実は思考コードで見ることができます。いや創ることができます。

★そして、対話をしているうちに、思考コードを作成するときに参考にしたブルームのタキソノミーだけでは、この世界観の根本的変化に気づかないのだということに到ったのです。

★いやブルーム自身、認知のタキソノミーだけではなく、感情と精神運動も想定していましたが、それらを統合的に活用できていないまま月日は過ぎ去り今に至っています。

★ところが、コンパクトに思考コードはその3つを統合しているのです。スプートニク・ショックは、ブルームのタキソノミーで乗り越えることができたのですが、今回のパンデミックで生まれた衝撃は、思考コードで乗り越えることができるでしょう。

★現状、この気づきは3%の穴の中に隠されています。その3%の穴を多くの人と通り抜け、広げていくために、山下さんと編集者の市村さんと本間とで<思考コード新世界観プロジェクト>を始めることになったのです。初回は、プロジェクトの聖地首都圏模試センターに集まりました。今後はまたZoomでやりとりもしていくハイブリッド活動になります。

★多くの方々にインタビューをしていくことになりますので、その時は宜しくお願い致します。

|

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(07)すでに30人学級もクリエイティブクラスへの道も開いている最強の「学習する組織」

★聖パウロは、聖なる山高尾に属するパウロの森にある小さな学園。高尾の駅舎はかつて皇室専用駅の面影を残しています。実は、高尾駅には第二次世界大戦の爪痕も残されていて、そういう意味では、静かに未来の平和な世界に知恵を絞る教育が、森の中で行われているのです。未来は、世界が今望んでいるファーストクラスからクリエイティブクラスへとシフトしています。

Photo_20201126102101

★聖パウロは、2012年から21世紀型教育にシフトしました。この教育の眼目は学歴社会や偏差値教育から抜け出て1人ひとりの才能を見出しクリエイティブクラスとして世界を良い循環に変えて欲しいというビジョンがあります。そして、それは聖パウロ学園のmen for others教育(MFO教育)にもマッチします。

1_20201126101001

(八王子はどこの学校も通学にはバスは欠かせません。学校説明会の時には、先生方が受験生をスクールバスまで案内します。)

★それゆえ、聖パウロ学園は、生徒1人ひとりが才能を生かしクリエイティブクラスとしてmen for othersを実現する目標から教育を実践しています。そのための教育の根幹は初めにロゴスありきという聖書に従って、対話です。

★ですから、今騒がれている30人学級というのは、とっくに実践されていて、むしろ1人ひとりとの対話がベースになって、その土台のうえにPBLがなされています。大人数教育だから、PBLでそこを補おうというのとはベクトルが逆なのです。

Photo_20201126101101

(学校説明会は、教師一丸となって機能的に動きます。同時にウェルカムの精神に満ちています。グローバルな学校には欠かせないマインドですが、それはもちろんmen for othersの精神から流れ出ているのです)

★また、クリエイティブクラスは、才能だけではなく、テクノロジーも必要だし、世界の人びとと対話ができなくてはならないのでグローバル教育も充実しています。今回のコロナ禍において、フルスペックのオンライン学習もスムーズに行えました。

★全国の高等学校の卒業生の70%は高等教育に進みます。ざっくり大学へ55%、専門学校へ15%です。聖パウロ学園は偏差値教育はしませんが、高等教育に進む道を開くカリキュラムを開発していますから、この70%に属する生徒が入学してきます。

3_20201126101301

(パウロの森という自然と教育と生徒のかけがえのない存在が好循環しているキャンパスです)

★しかしながら、入学時は、成績的には、70%の真ん中には到底達していません。それが、卒業時には、たったの3年間で、真ん中以上に伸びていきます。それは、高等教育(大学)卒業後、クリエイティブクラスとしてmen for othersを実現するという高邁な志があるからでしょう。

★そして、なんといっても、教師のチームが実に強い「学習すす組織」を結成しているというのが大きな理由でしょう。

|

日本女子大学附属豊明小学校(02)美術教育の拠点 将来芸術を専攻しない生徒の未来にもよき影響を与える

★前回「日本女子大学附属豊明小学校(01)歴史を貫く普遍的な教育を現代化する授業を展開。最先端の本物教育を行っている。」のつづきです。同校を訪れると、キャンパスがすでにギャラリーになっています。したがって、すぐに美術教育を重視している学校であることは了解できます。

51lt14r4jl_sx349_bo1204203200_

★美術教育となると創造性が養われるということもピンときます。そして、図工や絵画という作品を生み出す時間が大切にされているということも。このような体験は小学校時代には大切ですが、同校のように、広大な美術教育の空間がある小学校はそうあるものではありません。

★日本の小学校における美術教育としては圧倒的な質感が広がっています。

★そして、図工や絵画などの作品をつくるだけではなく、たとえば、デンマークの小学校と互いの作品を交換し合う、ある意味美術国際交流も行っているのです。最近では、グローバル教育という言葉が当たり前のように使われる時代です。同校も小学校でありながら英語教育や英語を使って国際交流もしています。

★一般には、グローバル教育は英語が中心です。しかし、同校は英語だけではなく美術も介して国際交流ができているのです。

★日本では、アート市場が開かれていませんから、ピンとこないかもしれませんが、ロンドン、ニューヨーク、香港、シンガポール、台湾などでは、アート市場が拡大していて、そこで開催される芸術祭には、もちろん世界中のアーティストが集まります。

★当然ダイバーシティです。言語は多言語です。英語だけではありません。もちろん、英語やフランス語を話せるアーティストも多いですが、多様性ですから、アジアの多くの言語も飛び交います。それでも国際交流ができるのは、芸術という言語を超えた共通したものがあるからですね。

★思想や感情は、言語のみならず芸術体験を共にすることによっても交換できるのです。

★美術の時間に、子供たちはデンマークの小学校の生活やそこで創られた作品の見方を語り合います。動画や写真を見ながらデンマークの生徒のの使う言葉、彼らの表情、服装が日本とは違うのに驚きます。椅子などのファシリティーズも違うのに豊明小の生徒は目を大きくして見入ります。ランチのお弁当に、有機野菜をまるごともってくる様子に、どれほど驚くかは想像に難くないでしょう。

★ランチ終了後に倫理としてのアニメを見るというのも、日本では考えにくいですね。また、言葉の壁を超えるには、挨拶とニコッとする表情という美学が大切さだということも確認し合います。そう表情とは美学だったのです。

★このように、美術教育とは、図工や絵画作品をつくることだけが目的ではないというのが豊明小の大きな特徴です。

★東大の岡田猛教授らは、芸術を専攻しない学生が、ドローイングなどの芸術講座を受講することの重要性を説いています。欧米やアジア、たとえば、MITやバンドン工科大学では、ちゃんと芸術学部があります。しかし、日本ではまずないでしょう。東工大が美大と連携し始めたのも、そういう世界の常識に気づいたからかもしれませんね。

★東大の岡田猛教授らは、模倣が創造性をいかに生み出すかについて心理学や認知科学的なアプローチで検証を行っています。「探る表現: 東大生のドローイングからみえてくる創造性」(編集者 小澤基弘, 岡田猛出版社 あいり出版, 2014)でも、12名の学生がドローイングを定期的に行い、そのたびに、ファシリテーターがインタビューをして、リフレクションしていくポートフォリオ検証をしています。

★創造性が生まれる過程を共有することで、それぞれの学生の専攻に、その創造力を応用することが可能なのではないかという実験をしているのです。

★アインシュタインにしても、レヴィ・ストロースにしても芸術への造詣が深いばかりではなく、芸術の体験にヒントを得て、物理学や構造主義的文化人類学を組み立てている話は有名です。

★どうやら豊明は新しい美術教育の拠点ですね。豊明での芸術体験で得た多様な視点や創造力は、子供たちが将来芸術を専攻しなくても、それぞれの舞台で創造的な力を発揮することになるでしょう。もちろん、いまここで、教科学習を行うときも響いています。

|

2020年11月25日 (水)

アサンプション国際小学校(03)最強の学習する組織に

★アサンプション国際小学校は、今年も多くの生徒が応募しました。その人気の理由は、グローバルコースだけではなく、アカデミックコースも英語を学び、PBLの授業が浸透しているからです。どういうことかというと、生徒中心主義で、コミュニケーションの竜巻が生まれているからです。

Photo_20201125204401

★この竜巻は、先生方が生徒の成長に対する想いのビジョンを共有し、チームプレイで授業や教育活動を行っているからです。また、柔軟で、コンテンツベースではなく、コンピテンシーが伸びる環境をつくる豊かなシステム思考を先生方が互いに刺激し合っているからでもあります。

★何より、今回もコアファシリテーターが、互いの強みや弱みを対話できるオープンな雰囲気があるのです。それは子どもが成長する基盤を生み出していると了解できます。要するに仲間のメンタルモデルを互いに尊敬しながら弱みを強みに転換する対話ができているのです。

★また、HTHのビデオを自ら入手し、それを共有する対話を広めるなど、互いに自己マスタリーを自由に行ってもいます。

★「教え子が、75歳になった時に、伴侶、子ども、孫たちに囲まれて誕生日を祝ってもらえる人生を目指した授業をしている。」「意識しているのは自分の考えを持つこと、それを発信すること。また、自分以外の意見も受け入れて発見を新たに見つけて行くこと。」「多様性を認め合える授業。自分も含めて子どもも大人も全員がそれぞれの持っているものの良さを見つけて、価値づけできる時間を意識している。」「意識しているのは非認知能力(ソフトスキル)」「社会に出た時に自信を持って活躍できることを念頭において、そのために必要なスキルを身につけるような体験を授業の中でデザインしている」などなど、それぞれが自分の想いを語り、その共通性と違いについて対話を深めていくZoomミーティングになりました。

★学習する組織が自生的にできあがっています。これぞ最強です。人気がでるはずです。

|

Zoom体験がもたらしたコト(03)メタメタ対話への気づきの道

★小林光一先生が主宰の<Self Design Dialog>に参加させていただきました。本日開催、よかったら20時から参加しませんか?とメッセンジャーが響いたので、もちろん!と。とはいえ、その日時でなければ、空いていないかったわけですから、運命です。

Evolution-of-dialogue

★艱難辛苦を乗り越えて、煩悩具足の凡夫の境地に達した多様な舞台で活躍している老若男女とZ世代がZoom体験する場です。Z世代は、自分のキャリアデザインと先輩方の人生を対照しながら、こんな人が世の中では細々生きながらえているのかあ(私です^^;)とか、まだ見ぬ世界と見たこともない熟達したスキルで世界を駆け巡ってきたなんてと憧れたりするわけです。

★先輩との対話を3セッション行ったあとで、Z世代どうしでリフレクションです。このレフレクション対話で、情報交換以上に情熱の交換になるわけですね。

★先輩方もリフレクションします。

★そんなすてきな対話のあと、小林先生から感情と対話についてのメッセージがメッセンジャーで鳴り響いていたので、昨夜から夜中にかけてこれまたZoom対話をしました。

【現代化リベラルアーツ】

Photo_20201125085801

★人間は対話する動物です。対話というつながりがなければ、呼吸ができなくなります。でも、その対話もそう簡単ではなく、思い通りにいかないですよねと。だからこそ対話するわけでと、いろいろな話になりました。

★おそらく「思い通りにかない」という小さな壁と世界の痛みの構造は意外と同じなのかもしれないなあと小林先生の話に耳を傾けながら感じました。

★「思い通りにいかない」にもかかわらず、対話に挑む。そこに感情があふれないわけにはいかないのです。

★なるほど、ピーター・センゲの仲間たちが共編集した「学習する組織のフィールドブック」にあるように、対話がメタ対話(metalogue)に進化する過程をZoom体験は、見える化しているなあと気づきました。

★そして、なぜ小林先生が、自身の目と耳で出会った大人とZ世代の一期一会体験を仕掛けるかも薄っすらわかりました。大人もZ世代も自分の関心領域でメタ対話をすることはできるように進化するのですが、互いに違う関心領域を往来して、共通するメタ対話をする体験を、私たちはふだんしないんですね。そうしなければ、本来は幸せな人間存在や社会が生成されないのかもしれません。

★それを小林先生は仕掛けているのだと思いました。そして、そのメタ対話をメタ対話するというメタメタ対話が何であるのかは、まだ小林先生の頭の中にあります。私は、私なりに、【現代化リベラルアーツ】のイメージが深まりました。以前ご紹介した図の真ん中にある対話の中に、CとAとSの三つの作用を顕在化する図にしました。

★このSomethingは、それぞれに違うでしょう。そこをメタメタ対話できるといいのですが、まだまだ滅茶苦茶対話(汗)から始めなければならないかもしれませんね。

|

2020年11月24日 (火)

Zoom体験がもたらしたコト(02)もしヘッセがZoom体験をしたらどう感じただろう。探究も研究も超えて「道」を提唱したことを正しかったと思ったかもしれない。

★ここのところ、ますますZoomで対話をする機会が増えたし、SNSでの対話も多くなる一方です。私自身は、広く深くなる対話に満足しているのですが、最近、何か物足りない対話になっていると語る方も多くなってきました。おおー!みな「道」をZoom対話の向こうに見出し始めたのです。物理的な時空ではなく、Zoomというデジタル空間が内面の時空に置換えられる瞬間を感じるのでしょう。

516f8p8xbil

★学部時代や大学院時代は、法学部でありまながら、文学棟と哲学棟に入り浸っていました。当時ヘルマン・ヘッセとハイデッガーの第一人者がいたので、その空気を吸いたくて。だからといって、教授と対話したのは、数回です。

★今のように、フラットに話せる雰囲気はなかったからかもしれないし、自分の中でそう思っていたのかもしれません。何より、対話できるだけの自分の想いが明快でなかったということもあります。

★いずれにしても、私のメンタルモデルは、夏目漱石の前期三部作とヘルマン・ヘッセの「デミアン」「シッダールタ」「知と愛」「ガラス玉演技」「詩集」、ヘーゲルの「精神現象学」、トマス・アクィナスの「神学大全」、ニーチェの「権力への意志」「ツァラトゥストラ」、それから「ぼくタマ(地球)」(汗)でできています。もっとも、「ぼくタマ」は日能研時代に生徒から影響を受けたのですが。

★それゆえ、PBLの根底には、ヘルマン・ヘッセの自己の道発想があります。ひたすら自己の道を追究すると世界に到達するんだという発想。マイプロジェクトは友愛のプロジェクトになり最後は十牛図の十番目というのが、ヘッセのストーリーパターンなんです。

★ただし、デミアンのように、そこは平和な対話ではなく、平和をつくるために挑んでいくというパターンもあります。ガラス玉演技では、死という境地に至ります。しかしながら、それは悲しいのではないのです。光の境地なのです。まるで、鬼滅の刃ぽいのですが。

★ともあれ、ヘッセの次の言葉が、探究でもなく研究でもない「道」を示唆していると思うのです。

 自分の直感と感情をたいせつにしなさい。それから、自分の理性も信じなさい。 もちろん友愛もたいせつだし、芸術を観る自分の眼、自分が抱いている理想もたいせつにし なさい。くれぐれも世間の価値観に惑わされないように。多くの人の考えとちがっていても不安になることはありません。あなたはあなたの道を独りで往かなければならない のです。

ヘルマン・ヘッセ. 超訳 ヘッセの言葉 (Kindle の位置No.362-366).

★ヘッセの境地は、シリコンバレーのHTHが求める境地でもあります。

★自己への道が最終的に行き着く先は、時空を超えて共感し合える境地なのでしょう。それこそが、体験を通していきつく「道」の境地でしょう。IBやラウンドスクエアを創設したクルト・ハーンもヘッセとシンクロしていたに違いありません。

★第一次世界大戦前夜と第二次世界大戦を生き延びるという時代の違いこそあれ、凄まじい自己サバイバルと友愛の統合の道を追究した尊敬する人々です。

★学習指導要領に拘束された探究や文科省に揺さぶられる中での研究から独立した「道」です。

★Zoom体験は、この「道」を感じ取っているZ世代もいるし、リアルと何ら変わらない体験をしている人々もいます。その違いは、「道」を見出せる感性があるかないかですね。

★アフターコロナは、この「道」と仕事を一致させることができるかもしれにという希望が輝いています。探究や研究というかりそめの道をすすまなければ生きていけなかった自分が、自分の道を歩くことで生きることもできる。それこそが働き方改革の未来でしょう。結局、モリスのユートピアの実現ですね。

★いずれにしても、いかなる環境にあっても、それぞれ「自己の道」を見出せるように祈っています。とはいえ、安心安全の場から出発できるように社会を再構築しなくてはとおっせかいな自己の道が一方であるわけですが。

|

GLICC Weekly EDU(02)首都圏模試山下社長出演予定 A Great Resetを語る

★今朝、山下一さん(首都圏模試センター社長)と緊急Zoomミーティングをしました。山下さんの問題意識は、「今回のパンデミックで、あらゆる領域が変わっていきます。ダボス会議でザ・グレート・リセットをぶち上げていますが、その通りですね。ただし、<ザ>というのはちょと違いますよね。いろいろなグレート・リセットが起こっていて、それが集合離散し合って、化学反応が起きて、大きなグレート・リセットが起こります。私たちのやろうとしているグレート・リセットもその一つです。もちろん共通するところもあるけれど、違うところもあります」と。

Photo_20201124145101

★それは、20世紀末に未来学者アルビン・トフラーが提唱したパワーシフトに準ずるのではないかというのです。要するに、世の中を動かしてきたパワーは、軍事力→経済力→知力と変遷するのだという流れだと。

★これからは、学びの力で世の中が幸せな循環を創っていくのだという熱い意志がZoom空間に広がりました。

★山下さんはさらにこう語ります。「最初は、本間さんの言うように、3%の穴を掘りあてることかもしれないですね。それは今まさに私たちの想いと創造的な思考とアクションにかかっている」と。

★「では、その方法は?たとえば、開成の今年の社会の3番目の問題なんかは、水の問題ではあるけれど、その背景にSDGsの問題やなんといっても今直面しているGotoキャンペーンによる経済活性化と感染数防止のジレンマを乗り越える問題解決思考のヒントが隠されています」という話にもなりました。

★身近な生活の中に大きな地球上の問題の解決の糸口がある。そういう虫の眼と鳥の眼を持つマインドセットこそが大切だと。

★ブルームのタキソノミーだけでは、このマインドセットができません。そこで、思考コードなのだと。思考コードはたんに入試問題を突破する道しるべだけではなく、その向こうに見える未来をグッドにするかバッドにするかを考えるマインドセットをする場でもあるのですと。

★小さな次元に壮大な次元が隠れていることをみんなで気づきく学びを提供したいのだと。本間さんも語っている3%の穴をくぐりぬけるマインドセットと思考力をいっしょに創りましょうよ!という熱いコミットメントでした。

★ということで、12月のどこかで、GLICC Weekly EDUに登壇していただくことにしました!ご期待!♪ください。

|

2020年11月23日 (月)

Zoom体験がもたらしたコト(01)時間と空間の意味 変換スキルの顕在化

★パンデミックによって世界同時的に多くの人が<Zoom体験>をしています。この体験を通して、<体験>が改めて重要だというコトが身に染みているわけですが、それは、鬼滅の刃のテーマソングの「炎」にあるように、かけがえのない存在の再認識だということでしょう。

Img_0419

★鬼滅の刃が老若男女に大人気なのは、もしかしたら、この<Zoom体験>と共感する何かがあるのかもしれませんね。

★たとえば、私たちは、<Zoom体験>以前は、時間は過去―現在ー未来として進むと思ってきましたが、<炎>にあるようにどうも時間認識はそれだけではないことを、以前から知ってはいたものの、リアルに<Zoom体験>してしまっています。

★空間もそうですね。空間と言えばリアルな五感で認識するものだと思っていましたが、そもそも私たちは遠い人類の誕生の時から、空間はつねに次元を折りたたんで認識し、脳内で多次元に広げていたことを<Zoom体験>でリアルに身に染みたわけです。

★それなのに、教育という世界は、時間も空間も時間割と教室という固定されたモノだと意識してきたし、実践してきたのです。

★ここを、柔軟にシフトできるかどうかが、教育を変えられるかどうかですが、なかなか難しいですね。

★確実に固定された時空という世界に生きる人と自在に写像変換できる時空に生きる人に分かれてしまいました。

★価値観の違いを決める要素の一つに、時空の認識の仕方の違いということがクローズアップされていくのが、ポストコロナ時代の1つの変化ですね。

|

2020年11月22日 (日)

八雲サードインパクト(06) リスクテイカーとしての組織 気概と覚悟

★本日土曜日(2020年11月22日)、八雲学園は中学校説明会を行いました。いつもは、20組サイズの説明会を実施していますが、今日と12月20日は100組サイズの説明会を実施します。サイズにかかわらず、新型コロナ感染を防ぐために、申し込み必須です。

Dsc05710

★ですから、会場は、3密を防ぐための椅子の配置になっていました。毎回、そして今回も申し込みはすぐに埋まりました。オンライン説明会では、やはり学校の雰囲気がわからないので、学校も保護者も互いに気を付けながらの説明会実施です。中学入試も完全にニューノーマル時代に突入していると実感しました。

1_20201122164901

★入り口では、手指消毒と検温も徹底していました。個人相談のブースも八雲特注のアクリル板で飛沫を遮断する対応がなされていました。

2_20201122165201

★舞台やコンサートなど人が集まるところは厳しい感染防止策をとるのがニューノーマルです。中学説明会も同じです。ですから、恒例の多人数の生徒が演じるイングリッシュパフォーマンスは行われませんでした。しかし、リアルな場では、生徒が説明するコトは外せません。そこで、9カ月海外プログラムを体験した生徒が1人、この八雲のグローバル教育の象徴的なプログラムをオールイングリッシュでプレゼンテーションしました。

★最近では、帰国生の高いニーズにこたえて、帰国生入試も行うようになっていますが、小学校の時に英語に力を入れていなくても、つまり、八雲学園ではじめて本格的に英語を学ぶ生徒も、在校生代表のように英語を軽やかに話し、英語で考えるエッセイライティングまでできるようになるのだとうことに、保護者はすぐに気づいたことでしょう。

★高校生がプレゼンした後に、八雲学園の理事長・校長近藤彰郎先生が登壇しました。一般の学校だと校長がまず話すのですが、体験を重視している同校は、在校生のプレゼンテーション体験でイメージをつかんでもらい、先生方の説明をしていこうというPBL型の授業にも通じるデザインになっていました。

★八雲学園の教育は、とにかく破格で、英語もC1を目指すのだと、校長ははっきりとあっさり語ります。海外との連携も、IBを超える海外のエスタブリッシュな私立学校のコミュニティROUND SQUAREの加盟校に認定されています。レジデンスもカリフォルニア州サンタバーバラにつくり、ふだんから自由に海外研修ができるようになっています。

★ICTも、1人1台の環境をつくり、パンデミックで休校になった期間中もフルスペックでオンライン授業を行っていました。

★プレゼンテーションを中心とするPBL授業は英語に限らず、全教科で行っています。

★体験はとにかく一流の場に立つことをモットーにしています。

★この質の高いオールラウンドな体験が、必ず生徒の未来のどこかのタイミングで役立つのだという近藤校長の想いがあります。しかし、これはなんとしてもやるのだという決意がなければできないのですが、この断固たる決意が心の底から必要なのだということを教師も在校生も感じ入ったのが今回のパンデミックへの学園の見事なまでの対応でした。

★近藤校長は、すべて中止して、すべてオンラインにするのは簡単です。うちの先生方も生徒もオンライン授業を乗り越えていますから、そうすることはできないことではないのです。しかし、八雲の教育の根幹は体験なのです。体験の機会をすべてなくすことは、その根幹がブレることを意味します。根幹がブレてしまうと、なるほど八雲のように人間力を形成する教育は支障をきたすでしょう。

★ですから、近藤校長は、あらゆる情報を集め、識者にダイレクトに科学的根拠を聞き、最終的にご自身で判断をして、断固たる決意をもって、サンタバーバラや九州の研修、体育祭などをやりきるわけです。

★業者やエージェントに協力してもらいながらも、丸投げすることはなく、近藤校長自身の目と耳と頭で判断していくわけです。もちろん、学内の先生方と協力して。

★各地域での感染状況の推移、各国の対応や制度、交通の3密状況などなどすべて調べ尽くしたそうです。

★近藤校長は、「それでも感染防止は100%できるというわけではない。しかし、諦めることなく、最善を尽くして大事なものを失わないように知恵を使うのが八雲学園なのだ」と語るのです。

Dsc05742

★説明会終了後、お忙しい中、時間をとっていただき、お話をお聞きしました。教育者たるもの生徒の未来の可能性をできるだけ守るのは当たり前だ。ただし、そのためには、人に頼らずに、徹底的に自分で調べ、専門家の知恵を参考にするものだ。これは何もパンデミックに限ったことではない。震災や戦争がいつなんどき起こるかわからない。予測不能とはそういうことだろう。八雲学園は戦争を乗り越えてきた。パンデミックだからとあきらめるわけにはいかないのだと。熱い思いに感じ入りました。

★また、今後の中学入試の私立学校全体の対応の戦略についても聞くことができました。相当の気概と覚悟が決まっているのに改めて感服。断固たる思いに自分の心が洗われるようでした。

★教育者の勇猛果敢なリスクテイカーとしての気概に感服しました。

Dsc05738

★今回の学校説明会には、日能研の重鎮永井先生も参加していました。昔お世話になっていたので、感謝の意味を込め、ダライ・ラマが同校を訪問したときに座った椅子の前で写真を撮らせていただきました。

★永井先生は、中学入試(学校が主導する)と中学受験(塾が主導する)の両領域のシナジー効果を生み出す架け橋です。今後しばらく日本の経済は低迷するでしょう。20世紀末のバブル崩壊後、リーマンショック後の経済ダメージを乗り越えてきた両者がつくる市場ですが、今回もまた協力し合うことが必要でしょう。両者の共通点は、同じ子供を抱えていることです。つまり、子供たちの未来の可能性を守る想いは共通しているのです。

★そのための本物への断固たる意志。胸を突きさされてしばらく何も考えられない状態に陥っていました。

|

GLICC Weekly EDU(01)鈴木裕之さん 受験の「不都合な真実」を語る!目に見えない不自由が、創造性を生み出さないわけです。

先週金曜日(2020年11月20日)、GLICC Weekly EDU第5回で、主催者の鈴木裕之さん(GLICC代表)が、帰国生入試及び海外大学入試の真実について語りました。この真実は、一般の受験生には全くと言っていいほど知られていません。しかし、そのことを知らないでいると一般の受験生は、目に見えない格差の未来に投げられてしまうかもしれないという真実が、そこには横たわっているのです。

201120glicc

★この格差は、知の格差であり、それは社会で活躍するときのバリューの差になり、端的には賃金格差になります。

★この格差は、日本社会だけの問題ではなく、世界と比べても同じことが言えます。

★つまり、世界の中で日本のGDP、特に一人当たりのGDPは低くなっている不都合な真実がそこにはあったのです。

★明治以来、最も根本的な教科書制度ベースの教育の制度設計は変わっていないのです。明治以来変わっていないのですから、教育の自由というのはかなり制限されています。

★教科書を学ぶことになにも疑問を持たないでしょう。それが目に見えない自由の制限をつくっているのです。自由のないところに創造性は生まれることはなかなか難しいですね。この目に見えない自由の制限を突破する3%の穴を見出すことがとても重要です。

★詳しくは、Youtubeをご覧ください。

★来週は、実際にその3%の穴を掘って向こうの世界に出て帰国してきた未来を創るすてきなゲストをお招きします。3%の穴の価値と抜け方とそこにある未来について、鈴木さんとゲストと私3人で語りたいと思います。

|

2020年11月21日 (土)

日本女子大学附属豊明小学校(01)歴史を貫く普遍的な教育を現代化する授業を展開。最先端の本物教育を行っている。

★日本女子大附属豊明小学校(以降「豊明」)から2年前の12月にメールをいただき、それから5回くらい訪問したでしょうか。なぜ私がメールを頂いたのか今もって不思議です。一般には、私は偉い人といっしょに赴き、先方もこの方の紹介ならしかたがないかあという感じでお付き合いになるというケースがほとんどですが、ストレートにいっしょに研究しましょうよというメールを頂くのは珍しいわけです。

Photo_20201121125101

★何せ「ノーロゴ」の私で、肩書きがありません。「私立学校研究家」という税務上意味のない名称で生きているわけですから。しかも、豊明の場合、現状で何か困っているということもないのです。

★ただ、危機感は学校全体で共有している高い意識の組織です。組織というよりチームと言った方がよいでしょう。世界や未来の情報をお1人おひとりが持っているわけです。初回お会いした校長、教頭、プロジェクトメンバーの先生方と対話した時にそう感じたわけです。

★何の役に立てるのか、まずは学校説明会を見学して、研究するテーマを発見するところから始めましょうということになり、参加したわけです。体育館を埋め尽くした保護者の様子は、中学入試や高校入試のときとは段違いでした。

★私の慣れ親しんでいる市場とはかなり価値意識が違うので、できるだけ、先入観を括弧にいれて、観察しました。

★保護者のために授業の見学会もありました。次々と授業を見ていくのですが、キャンパス内は混みあっていました。さすがに今年は、パンデミックのためオンラインだったようです。

★それはともかく、学校案内と授業見学がセットになっていましたから、キャンパス内も見学できたわけです。

★教室は完全にオープンスペースですから、見学もしやすいのですが、なんと、それがゆえに、キャンパス全体が教室だったのです。ですから、廊下の掲示も、学習活動の制作物で満ちていました。特に美術の作品がギャラリーさながらディスプレイされていて、アーティスティックな感覚に感動しました。

★理科室も他校にはない空間になっていました。理科室で学びながら窓をあけると、そこから先は直接ビオトープさながらの自然が広がっています。しかもスロープになっているので、そこをおりていくと、崖下の植物群が迎え入れてくれます。キャンパス内で、自然観察学習、農園づくりができてしまうのです。なんという贅沢な!

★教室では、1人1台タブレットを活用して授業も展開しているのです。このデジタル空間は、今回のパンデミックで、一気呵成に拡大しました。パンデミック前は、使う教師は使っていたし、単元によって使うということはしていましたが、今ではどこでもいつでも使っています。

★美学の空間、自然の空間、デジタル空間が一体となっています。こんな学校が他にあるでしょうか。

★バラバラにある学校はたくさんあるでしょう。しかし、この3つの空間が交差し循環する理想的な学びの空間は、最近多くの学校関係者や経産省が憧れているシリコンバレーのHTHにもないのです。だから、シリコンバレー自体もHTHも欲しいといっているものが、豊明にはあるのです。

★新しもの好きの政財界人は、自分たちの今があるのは、渋沢栄一や森村市左衛門の世界精神があったからだということを忘れています。近代日本社会を組み立てた彼ら実業私学人の世界精神と日本女子大の創設者成瀬仁蔵の21世紀教育精神を強烈に気概を持って実践しているのは、もはや豊明の教師以外にいないかもしれません。そうそう、彼ら先覚者は、もちろん、新渡戸稲造や江原素六とも対話をしていました。

★エっ!?成瀬仁蔵が21世紀教育精神を持っていたということはどういうこと?と思われるでしょう。起業家精神をフルに発動し、政財界人を巻き込んみながらも、権力に屈せず誠の道を貫く人のことをクリエイブクラスといいます。

★20世紀私学人は世界精神を持っていますが、その表現はファーストクラスです。来春のダボス会議では、ファーストクラスからクリエイティブクラスへという流れを本格的に創ろうという話になります。再び成瀬仁蔵のマインドの出番です。

★つまり、時代がようやく豊明小学校に追いついてきたのです。まだ、ピンとこないと思います。それは、美学の空間と自然の空間とデジタル空間をひとつに結びつけるSomethingについて、まだ語っていないからです。それは、コメニウス―ルソーーペスタロッチーフレーゲー成瀬仁蔵ークリエイティブクラスに流れるマインドを指しますが、そのマインドとは何でしょう?

★そのマインドの現代化の旅が、この一年間だったのです。(つづく)

|

2020年11月19日 (木)

才能力の時代(02)総合型選抜や帰国生入試で合格する才能力とは、ピカソの最後の境地とシンクロか?

★どうも、今年の総合型選抜や帰国生入試、海外大学入試準備でうまくいく生徒の力はピカソの最後の境地とシンクロするかもしれません。もちろん、いきなりそこに到達するのではありません。青の時代→バラ色の時代→分析的セザンヌの時代→ゲルニカの時代→ファイナルという物語とシンクロする学びが必要だということのようです。まるで十牛図なんです。

51fcqedovyl_sx352_bo1204203200_

★ピカソのファイナルは、すべての経験が無化される境地です。

★つまり、体験主義に依存していると必ずしもうまくいかないのです。

★もちろん、いわゆるMARCHぐらいまでは、主体的体験主義であれば、ギリギリいけそうだということも、一方でわかってきました。

|

学校選択を考える(01)偏差値と大学合格実績で考えて問題ない。ただし、学校の雰囲気をお忘れなく。モデルは、かえつ、聖学院、工学院、静岡聖光学院、八雲。

★脱偏差値だあ!大学合格実績ではないんだあ!というのは嘘です。仮にそうだとしても、生徒募集は大切だと思っている学校はありますよね。そうすると、自己矛盾なのです。人気が高くなれば、偏差値は高くなり、大学合格実績も上がってしまうのです。

【学校の雰囲気をつくる9つの要素】

Photo_20201119165601

★ところが、人気が安定していないところは、偏差値や大学合格実績で比較されると、選ばれなくなるので、それもまた自己矛盾に陥ってしまいます。

★そこで、そのような学校は、とにかく共感的コミュニケーションという学内外のコミュニケーション行為の大改革を行います。不思議なことに共感的コミュニケーションは学力も上げてしまうので、大学合格実績も出るし、偏差値もあがるのです。

★その戦略で成功しているのが、かえつ有明です。ですから、かえつ有明は、偏差値や大学合格実績も参考にしていただいてまったく問題ありませんが、私たちは共感的コミュニケーションの学校基盤をつくっているので、そこを見て頂けると嬉しいですと語るのです。

【各要素の4つの広がり】

Photo_20201119170101

★共感的雰囲気は、9つの要素の関係総体によって生まれてきます。そして、各要素は、4つの広がりをもっています。4の9乗通りの学校雰囲気の質があるわけです。

★それにしても262,144通りですから、学校選択は単純ではないことはすぐに了解できるでしょう。

★かえつ有明と同じように共感的コミュニケーションの質を高め、結果的に人気がでてきているところが、聖学院や工学院です。静岡聖光学院は一気呵成に、今年オール4領域を形成しています。

Photo_20201119171101

★八雲学園は、もともと高かったのですが、偏差値と大学合格実績を大切にする塾から人気が高いので、市場では八雲の真の良さを見ようとしてこなかったのです。しかし、今進取の気性に富んだ保護者も気づき始めています。

★開成は、エリートリーダーという指標でいくと最高です。ここで考えているのは、あくまで共感的コミュニケーションをベースにした指標です。だとしても、やはり開成は3%の穴を自らあけていますから、高いクオリティーを有していますね。

★A校とB校は偏差値65以上(首都圏模試センター)の学校ですが、学校雰囲気はそれほど高くありません。体育会系のコミュニケーションという指標でみればかなり高くなると思います。

★要は、雰囲気は、選ぶ側の価値観が反映します。

★私の主観的ものの見方ですが、みなさんがご自身で整理して考えるときのヒントになれば幸いです。

|

2020年11月18日 (水)

工学院インパクト(19)田中歩先生の超<学習する組織>力

★本日は別件で工学院大学附属中高に立ち寄り、立ち去ろうとしたところ、廊下で田中歩先生(教務主任)とばったり。廊下のスペースには、対話空間があるので、お忙しいにもかかわらず、まあまあと誘ってくれました。すると、体育科の安芸先生や柴谷先生、学際的教師の有山先生が、そばを通るたびに語り掛けてくれました。

Dsc05500_20201118185501 

(左から安芸先生、田中歩先生)

★ああ、共感的コミュニケーションが満ちている雰囲気はこれだなあと感じ入りながら、幸せな時間を過ごせました。

★それにしても、このところ他の学校の校長や理事長と多様なデバイスでミーティングが続いています。今日も朝からコロナ禍による市場の意識や価値観の変化について5人の理事長あるいは校長あるいは社長と対話しました。それと2人の学校リーダーとは、これから対話します。田中歩先生も含むともっと多くなるのですが、今日は過密です。

★それから、この時期ならではの最大のテーマは組織改革の話と人材育成の在り方です。私自身の方法論を聞きたいということではなく、ホンマノオト21で紹介しているケースやモデルの話についての対話になります。

★それに経営者やリーダーの立場で眺めているので、市場の変容とダボス会議などのテーマと教育の関係を見据えながらの組織開発や人材開発の話になります。

★共感的コミュニケションや寛容性の組織にもたらす影響力の話がやはり中心になりますね。

★そして、自ずと、田中歩先生のスーパー学習する組織力の話になるのです。さっき会ってきたばかりですけどねと何度も私は口にする今日でした。あっ、もうすぐ始まるミーティングでも、きっと口にすることでしょう^^)。

★私がこういうテーマで話ができるのは、本当に一期一会でお会いした先生方との豊かな対話です。特に田中歩先生とは、もう7年以上も毎月対話する機会を共有できているのです。実に不思議です。そういえば、逆転の発想という共感的コミュニケーションの魔法言語をいつも使って盛り上がります。今日も新しいアイデアが生まれました。またまた今後が楽しみです。

|

工学院インパクト(18)高橋一也先生の研修の意味 授業の達人から教師の達人へ

★今、工学院大学附属中学・高等学校(以降「工学院」)では、3年未満の教師の授業研修が行われています。スーパーバイザーは、教育界のノーベル賞であるグローバルティーチャー賞ファイナリストの高橋一也先生。

Photo_20201118082001

★工学院は、PBL型授業を実施していますが、さらなるレベルをあげるために、また新しく工学院で授業を行っている教師のために、授業研修をしています。

★高橋一也先生は、教育学や認知科学、学習理論を研究しているので、アカデミックなレベルのPBL理想型を示します。そして、PBLを学ぶ前に、あるいは学び直す前に、インストラクショニズムの授業デザインから入っています。ざっくりわけると、インストラクショニズムは教師中心主義、コンストラクショニズムを基礎としているPBLは、生徒中心主義です。

★自分をモニタリングする方法、生徒のニーズを知る方法、適切な授業目標を立てる方法などを順序だてて研修してきました。そして、最終的にはどんな問いをたてるかあるいは投げるか。

Photo_20201118082002

★高橋先生自身は、独創的な授業を実施しています。だからこそ、グローバルティーチャー賞ファイナリストなのです。

★ただ、グローバルティーチャー賞は、授業の達人なだけでは、獲得できません。生徒1人ひとりの才能やなんといっても苦境を自ら解決していける能力を開花し、その才能によって世界の痛みを善なる方向に変える力を生み出す教師の達人でなければなりません。

★高橋先生は、工学院の先生に、授業の達人からこのようなビジョンとミッションと実行力ある教師の達人になってもらうべく研修をしているのでしょう。

★独創性が生まれるには、セオリーを学び、我流で進んでいくとやがてぶつかる壁を乗り越える技術を身につける必要があります。インストラクションとコンストラクションの分断ではなく、両方を往来できる学びのデザイン技術の社会実装を生徒とシェアできる超越者としての教師。

★そんなスーパーティーチャーが工学院からたくさん生まれるのです。

|

2020年11月17日 (火)

才能力の時代(01)品川翔英高校志望者数激増!その理由。

★品川翔英高等学校の志望者数が激増しています。柴田校長によると、「高校募集の来校者11月月間目標600組のところが11月13日時点で1300組に迫る勢いで、今年に入って学内は3度めの変化のウネリが起こっています」ということです。

Photo_20201117232601 

(品川翔英になって初の生徒会が発足、新たな歴史が生まれています)

★1つ目は、校名変更・共学化で生徒募集が増え、2つ目はパンデミックでオンライン授業へチャレンジしました。柴田校長は、昨年の9月に副校長として就任し、じっくり地に足ついた改革を練っていました。そのときお会いした時、同校の先生方の潜在的資質が実にいい。この潜在的可能性をいかにパワフルな実現力へ転化できるかなのだけれどと、ぼそっと語っていたのを思い出します。

★丁寧なコミュニケーションはたしかにできるが、まだまだパワフルでないんだよねと。

★どういうことかというと、つい昨年度まで、少人数の学園だったので、先生方の丁寧さは限定的なもので十分対応できたのです。

★しかし、今春倍増以上生徒が増えたので、今まで対応してこなかった新たな生徒のニーズが生まれます。急にコミュニケーションが複雑になるわけです。そこにパンデミックです。オンライン授業なんて、同校の先生方のみならず世の中未知との遭遇です。

★これを乗り切るには、学内のコミュニケーションはフル回転し、今まで以上の人数の生徒、しかも男子のニーズにも対応しなければなりません。

★生徒1人ひとりの才能を見出すためのコミュニケーションは今まで以上に複眼的多角的になります。しかもオンラインによってテクノロジーを活用せざるを得ない事態に直面したのです。

★学内のコミュニケーションによる共有活動の速度と量が一気に増えたのです。

★複雑な人間関係を豊かに効果的に形成するために、先生方のマインドが急激に変容していったわけです。

★一方で、PBLで1人ひとり才能を開花する必要があるのです。コミュニケーションと学際知と専門知のすべてが必要になります。

★人間力と学力の両方を豊かにし伸長させる必要があります。しかも、生徒たちのニーズは、「生徒第一主義」です。

★品川翔英になって初の生徒会が発足したばかりですが、新生徒会長は「生徒第一主義」をモットーに、私たちが自分たちの学校の歴史をつくっていくのだと燃えています。

★歴史は時間が過ぎれば堆積するわけではないのです。自分たちの独創的な才能が独自の文化を生み出していくのです。

★先生方は、今まで出会ったことがない生徒の才能を伸ばすPBLを工夫しなくてはならないし、一方で専門知を深め、生徒の探究心をマインドセットしなくてはなりません。

★それが、さらに生徒が倍増するというのが第三の波なのです。コミュニケーション力はもはや才能力に大きく転換しなければ、アクロバティックに乗り切れないでしょう。

★つい先日まで対応できていた自分たちのパワーでは、はやくも足りなくなってしまっているのです。覚醒、覚醒、そして覚醒!。柴田校長は、励まし、見守り、手綱を緩めません。

★観音様だと思ったら、不動王明王になります。そうかと思えば、阿修羅のごとく険しい道を進みます。その姿に生徒会がついていきます。先生方も動きます。すべては生徒第一主義のために。

★私もときどき立ち寄りますが、行くたびにパッション、テンションが燃えています。とても生き生きした雰囲気です。

★この雰囲気が多くの受験生を魅了するのでしょう。一年間で、先生方は3度めの脱皮を果たそうとしています。脱皮するたびに、先生方は美しい姿になるのでしょう。魅力が輝き続けるはずです。

|

静岡聖光学院のインパクト(01)多様な革新的動きを引き寄せる教育拠点に。

★先日、静岡聖光学院に立ち寄りました。多様な革新的な世界の動きを引き寄せることで生徒の多彩な才能を開花し、社会を変える人材がたくさん生まれる仕掛けづくりをしている星野校長にお会いするためです。

Photo_20201117141001

★昨年50周年を迎え、キャンパスの大リフォームをし、さらに今回のパンデミックで、遠くにいても同校の授業にオンラインで参加できる完全放送局クラスを創ったのです。

★Zoomなどで全員がオンラインで授業することは今や簡単にできますが、リアルな授業にテレビ放送さながら遠くから1人2人の生徒が参加する環境というのは放送インフラが必要です。同校の場合は寮制学校ですから、遠方に生徒がいるのが前提です。ですから、どうしても「この設備が必要です。クラウド・ファンディングで資金を集め、全教室整備しました。

★こういう動きを仕掛けると、メディアや研究者、企業、自治体、海外の学校など多様な革新的な動きをしている団体とネットワークが結びつきます。興味をもつ人材も魅了されて見学に来ます。

Pbl_20201117142301 

★そのような拠点であることに、在校生はモチベーションを内燃させるし誇りをもち、自信をもちます。+のシナジー効果が膨らみます。

★すごいですね、完璧ですねと言うと、星野校長は、いやまだまだ改革はこれからが本番ですよと語るのです。生徒が未来を作る過程にはさまざまな課題があるし壁がある。それを1つ1つクリアしていくには、一つの学校だけではなきないし、学校だけが力を合わせても達成できません。多様な知恵が自然と集まってくるような仕掛けでないとダメなのです。

★学校は大企業と違って、資金があるわけけではないのです。あるのは知恵だけなのです。ソフトパワーをいかに生み出し発信するか。それには、本格的な教育上のリフォームが必要なんですよと。

★ICTとか哲学とか、そういいうものは当然なのですが、リフォームすべきはもっと新しい教育の仕掛けそのものなのですと。そうすれば優秀な人材も集まってくるのですと。

Garden_20201117142401

★それはいったいなんでしょうか?それは今のところ秘密です。ヒントはシリコンバレーも欲している教育のガーディンニングです。もちろんたとえです。星野先生はまたまた電撃的に動く予定でいます。乞うご期待。

|

2020年11月16日 (月)

新しい教育社会(30)<RCEP>新しい理想の到来か?現代化リベラルアーツ急務。

★日本経済新聞(2020/11/15 19:00)「アジアに巨大経済圏 RCEP、日中韓など15カ国署名」によると、「アジアに世界貿易額の3割を占める経済圏が誕生する。日本など15カ国は15日、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。世界最大級の自由貿易協定(FTA)として早期発効をめざす。自由化に消極的だった中国が初の大型FTAに参加する一方、米国や欧州は国内の混乱で足踏みする。アジア主導で世界の通商戦略が変わる可能性がある」ということです。

51uetghr8wl_sx361_bo1204203200_

★RCEPの動きは、21世紀型教育機構設立の動きとシンクロしています。同機構は、IBのエッセンスには学びながらも、東洋思想が排除されているところを見抜き、独自のグローバル教育を行い、海外との交流を行ってきましたが、東南アジアと環太平洋圏との交流が多くを占めています。

★すでに明治以降岡倉天心は「東洋は1つ」で始まるあまりに有名な「東洋の理想」を書いて、西洋からの近代文明に右顧左眄せず、東洋の美学及び世界宗教の優れたところを自覚せよと提唱しました。それがナショナリズムやファシズムに利用されることもあったのですが、今も価値ある部分があります。

★その価値を、シリコンバレーはマインドフルネスに置き換えて注目しています。

★いずれにしても、欧州、英米、アジアという対等の経済圏ができることはまずはいいことです。

★あとは分断しないで、世界市民として一つの地球人社会を創りたいものです。そしてそれを可能にするのが、東洋的アイデアも含む現代化リベラルアーツへのパラダイム転換です。

|

2020年11月15日 (日)

新しい教育社会(29)現代化リベラルアーツ 教科でもなく探究でもなく、教科でもあり探究でもある。

★人間の才能を耕すには、時期と自然と道具と人間関係と3Dを超える時空の循環の場が必要です。その場は、かつてはリベラルアーツでしたが、専門分化し、学問の分断が起きて、才能も分断され、格差が生まれてしまったわけです。おそらく、今世界でなんとかしようという分断は、知の分断に大きな原因があります。リベラルアーツそのものも、それを持てる者と持たざる者の分断はあったわけです。

1_20201115191201

★この発想を覆してノーベル賞を受賞したのは山中伸弥教授です。自然学、特に細胞学上の革命が起きてしまっているわけですから、学際知のヒントとしてのリベラルアーツも現代化される必要があるのは当然です。

★リベラルアーツの現代化とは、すべての人々が、対話をする際に図にあるように5つの思考を縦横無尽に使えるようにすることです。ある意味、IBのコアの再定義です。

★新学習指導要領の教科学習や探究というのは、このコアに結びつく多様な領域の幾つかです。

★新学習指導要領やそれに基づく大学入試は、今のところ、このリベラルアーツの現代化に対応しきれていません。たとえ、総合型選抜であっても、この現代化リベラルアーツを有無を問う問題は出題されません。

★IBはTOKがあります。イギリスだとAレベルがあります。米国だとAPがあります。この現代化リベラルアーツに近いものですね。

★しかし、いずれも細胞学上の革命を想定していないので、知の階層構造という分断が起きているのです。

★その知の分断を前提にして、政治的あるいは経済的分断をなくそうとしても当然無理があるし、矛盾がはじめからあるわけだから、ジレンマが生まれるのは当然です。

★私はシステム思考が、対話と5つの思考を結びつける基礎だとは思いますから、システム思考ですべてをカバーできてしまうのですが、システム思考ができたからといって、セカオワのようなアーティストになれるわけではありませんし、毀滅の作家になれるわけではないのです。

★システム思考は思考の共通構造で、5つの思考の濃淡が、1人ひとりの才能を決定づけるのだと思います。

★役割分担主義から才能主義へとなるには、現代化リベラルアーツをトレーニングする場が必要です。

★細胞学や遺伝子の発展はコンピュータサイエンスがなければありませんでした。

★教育もようやくコンピュータサイエンスによって、現代化リベラルアーツが完成するのです。

|

品川翔英の進化(10)突き抜ける国語科 物語思考を共有。

★今年度の国語科の研修ワークショップは、第1ステージでは、PBL授業の開発と質のアップデートを目標にし、第2ステージはメンバーの関心ある領域あるいは専門領域をPBLにどのように結びつけるかを目標にしてきました。前回から第2ステージに突入し、平岡先生のICTを駆使したPBL授業のワークショップを行いました。今回は今井先生の物語の構造をいかにPBL授業に結びつけるかというワークショップを実施しました。

Imai

★今井先生の専門は近代文学で、特に芥川龍之介の研究を深めてきました。そこで、金子満さんの提唱する13フェイズ構造を活用して、芥川の「杜子春」のプロット(物語の構造)をメタ分析するプレゼンをしました。物語の読解と言えば、キャラクター分析、心情のフロー曲線、ストーリーのあらすじなどで終わりがちです。

★しかし、今井先生は、それだと生徒は授業でしっかり学んだ物語や小説しか理解が深まらない、主体的に読み進み、なおかつ自ら語る創造的思考を働かせるようになるにはどうしたらよいのかについて考えていたわけです。そこで、金子満さんの13フェイズ構造を活用することにしました。

★というのは、プロットという物語の構造は、実は共通の構造があるという研究が伝統的にあります。ギリシャ時代、源氏物語の時代から洋の東西を問わず人間は語る存在です。ですから語りの謎を解き明かす試みは複眼的になされてきました。

★昔話の構造分析をしたプロップや構造主義的アプローチのロラン・バルト、映画において成功するための共通の構造を提唱したシド・フィールドなど有名ですが、中高生には少し難ししいかもしれません。

★そこで、今井先生は、生徒も親しめる映画やドラマのシナリオヒットメーカーでありプロデューサーである金子満さんの13フェーズ構造を活用することにしたのでしょう。この理論の詳細は、検索していただくとすぐにでてくるので、おまかせします。とにかく、見事に杜子春のプロットを今井先生は分析してしまったのです。国語科のメンバーは、驚嘆し、すぐにも自分も活用してみようと。

★平岡先生のICT活用方法もすぐに使い、今度は物語の構造分析の方法(=メタ分析)を使うことになるとは、国語科のメンバーはどんどん授業技術をアップデートしているのですね。

★しかし、次に宮崎駿さんの作品「千と千尋の神隠し」まで、鮮やかにメタ分析し、13フェーズ構造は、金子満さんが提唱するように、活用できることを検証したのです。国語科メンバーがますます活用しなくてはとモチベーションを内燃させたのはいうまでもありません。

★さらに、今井先生は、分析で終わりませんでした。授業案までプレゼンしました。それは生徒自身が創作活動をするというのですから、まさにPBLそのものです。もうメンバーは、聞いているだけでは満足できなくなりました。いかに物語を創作する授業ができるのかいまここでやってみようということになりました。

Imai2

★そして、物語は必要かというテーマで7分間ロールプレイ(RP)をすることにしました。RPですから、たんなる議論ではありません。4タイプのキャラクターを決めて、それぞれのキャラクターになりきってRPをしていくアクティビティに挑戦しました。そして、その様子をタブレットで録音しました。

★RP終了後、音声を再生しながら、7分間のRPというドラマを13フェース構造で分析していきました。各人が分析してポストイットに書いたものを13フェーズごとに配列していきました。すると、すべて埋まりました。

★なんということでしょう。対話は物語を生成していたのです。もちろん、4人の分析はそれぞれ違いますから、13のフェイズのうち少ない部分があります。たとえば、7分間の創発対話ですから、「対決」「排除」はなかったと感じたメンバーの方が多かったですが、言論の対決と勝利という流れはあったと解釈したメンバーもいました。

★しかし、何がいいわるいではなく、売れ筋シナリオ作成会議では、おそらく、どのフェーズを強調するか軽くするかなど、このようにスクライブしながら行っていくのではないかと、シナリオ作成ミーティングさながらに盛り上がりました。

★実はこのRPは、物語思考養成プログラムでもあります。

★思考力と言っても、世界標準のレベルに対照すると、読解や要約、小論文、大学入試問題の難問を考えるなどのレベルは低次思考と言われています。エっ~!と思われるでしょう。戦時中長崎では、ここから先は登ってはいけないというルールがありました。そこから先は一般国民は登って眺めることができなかったのです。軍のエリートが作成した機密事項が漏れては困るからですね。

★日本の教育は、憲法が変わったのですが、なんと2007年まで、この低次思考以上考えてはいけないというルールがちゃんと削除されていなかったのです。本当はもちろん削除されていたのですが、学校教育法で、高次思考をやるよと条文化しなかったために、低次思考まででよいと勘違いされてきたのですね。学習指導要領がいう思考力は、低次思考力を指していたのです。

★それはたいへんということで、ひっそりと2007年に学校教育法が改正され、高次思考をやるよと文言化されたのです。でも、多くの国民はそれに気づいていません。大学入試改革のねらいはそこだったのですが、うやむやになってしまいました。

★そんなあ~!とお思いでしょうが、それに気づいていた先生や一部の私立学校では、さっさと高次思考をトレーニングしていました。東大でも、一般入試は学習指導要領の縛りがありますから、低次思考の枠の中で難問を作ってきました。しかし、帰国生対象入試問題では、高次思考まで問う問題を出題しているのです。なぜなら、帰国生の体験してきた海外の教育は、高次思考までやっているので、低次思考の問題を出してしまうと差がつかなくなるからです。

★東大にたくさん合格している学校の中には、低次思考までしか行っていない学校が多いのですが、A学校のように、高次思考まで行っているところは、自然と東大に受かっていく生徒が多いわけです。

★合格実績を増やすことが目的ではありませんが、低次思考の枠の中で競争するのと、低次思考を突き抜けた高次思考をトレーニングして、低次思考の問題を解くのとでは、アドバンテージが違いすぎますよね。

★低次思考は暗記の競争です。高次思考は論理的・批判的・創造的思考の競争です。品川翔英は後者をやるのです。前者は辛い抑圧的な学びです。後者は好奇心に満ちた開放的な学びです。

★総合型選抜のような入試は、試験当日に到るまで、志望理由書やレポートなど作成するわけですが、客観的な記述ではなくて、自分の感情と情熱を織り交ぜながら論理的な構造を物語る記述です。ストーリーテリングなわけです。

★採点者をワクワクさせ、感動させ、共に研究していきたいと共感させるような物語を語らなければならないのです。海外大学進学となると、もっとこの力が必要ですね。

★品川翔英の国語科の物語の構造ベースの創作活動は、国語という教科を超えて生徒の人間としての生き様に影響を与える学びを生み出しているのです。私たちの人生は、ドラマ以外の何物でもないでしょうから。

|

新しい教育社会(28)ポストコロナはシステム思考とPBLの時代 和洋九段女子とかえつ有明の12人のZ世代に触発されて。

★従来、学校は、社会に出たときの最小限の資源養成所でした。天然資源と人材資源という考え方が背景にあります。どちらも枯渇したらそれでおしまいです。ですから、パワフルな資源は資本に転じます。資源に固執すると、それが枯渇するとそれで終わりですから、資源と切り離して、資本として集積するように勝ち組組織は機能していきます。

★資源がなくなると、その資源に依存している組織や社会は衰退します。資源があっても資源から切り離された資本がなくなればその資本に依存していた組織や社会は衰退します。

★今回の世界同時的なパンデミックは、まだ天然資源はあるにもかかわらず、資本がなくて衰退する組織が増大しました。そして、その組織で働いていた人々もその資源をいかす場がなくなるわけですから、たいへんな事態になっています。自殺者急増というのはその象徴です。

Photo_20201115093801

★新型コロナウィルスの感染防止と経済の循環のバランスをどうするかは喫緊の課題です。しかし、それは以上のようなパラダイムを変える必要があります。

★資源と資本という一見単純な区別は、実はここにトリックがあったわけです。SDGsで警鐘を鳴らすのは、資源問題と貧困格差です。17のゴールの背景には、資源の配分、つまり正義問題があるのですが、それが資本の再分配という解決策に移行しがちです。

★しかし、今回のパンデミックで、それはみせかけだったということがはっきりしたわけです。SDGsの根本は、資源問題を解決することだと再定義しなくてはならないでしょう。

★そして、その再定義で、資源と資本を分けてはいけないということです。そうしなければ、資本の再分配を重ねても、資源の独占は続くからです。独占とは何か、排除の理論です。ですから、人材を資源とみなすと、排除の理論が貫徹するのです。

★人材は才能とみなす。すると、その資本は才能によって創られる。才能によって創られた資本は資源に含まれます。枯渇する資源が常に回復する資源となります。

★そんなばかな!と言われるかもしれませんが、キャピタリズムからタレンティズムへというダボス会議の動きは根底にはそれがあります。パラダイムシフトの時代の要請です。

★しかし、こうなるかどうかは、ドネラ・メドウズやピーター・センゲのようなシステム思考をするかどうかですね。自己強化プロセスとバランスプロセスの循環ができるかどうかのループ図を使って、思考できるかどうかです。今回のエッセイは、上記の図のようなシンプルなループ図を描きながら記述しました。もちろん、現実は、このループに多くのループがつながるし、結節点の内包的関係が開放系になっていきます。

★ともあれ、このループを考えるプロセスは、先日、和洋九段女子とかえつ有明の12人のZ世代と対話したときに私の中に生まれてきました。この対話はまさにPBL(Project Based Learning)です。

★RとBの循環が持続可能になることが人間の不平等の起源を断ち切ることができるのだと。

★そしてそのためには、システム思考の循環ループを生成するPBLが大切なのだということを実感しました。PBLの環境がある和洋九段女子とかえつ有明の≪Z世代≫との対話によって確信を得たのです。

|

2020年11月14日 (土)

石川一郎先生「人生のプロジェクト」語る!

★昨夜、第4回GLICC Weekly EDUで、主催者の鈴木さんとゲストの石川一郎先生と対話をしました。石川先生の新刊本「学校の大問題」の背景ににある超<大問題>について、石川先生に本音トークをしていただきました。ありがとうございました!

Photo_20201114101601

★パンデミック、大統領選挙を通して、ポスト・トルゥース時代の次について、石川先生の想いが広がっているのだということがだんだんと開示される対話になっていると思います。

★感情のおもいのままにSNSに言葉が広がり、それで物事が決まっていくかのようなイリュージョンが拡大しています。そこを道徳的に制限するパターナリズムの教育ではなく、理論やサイエンスを根拠に教育や授業をデザインしていく流れをつくりたいと。

★その一つのベースとしてブルームのタキソノミーを共有したいのだと。ブルームのタキソノミーは、今年の東大の物理の問題と同じく今年の東大の帰国生対象の入試問題を活用して、ブルームがタキソノミーを制作する際に行ったテスト分析の手法を追体験する形で丁寧に語り合いました。ここまでブルームのタキソノミーについて丁寧に追体験トークは本邦初だと自負しています。

Photo_20201114102301

★いずれにしても、大問題の端緒は、日本の教育が、ブルームのタキソノミーが「記憶」「理解」「応用」でとまり、「分析」「創造」に突き抜けないことにあるということが明らかになる対話になっています。

1_20201114102401

★そして、そこを突き抜けるために、多様なアプローチが生まれていることも紹介しています。そのうちの一つにGIGAスクール構想があります。デジタル・タキソノミーが無意識の内に活用されることへの期待と無意識がゆえにぐちゃぐちゃになる不安の両方について、石川先生は感じ取っているシーンもあります。詳しくは、ぜひ「学校の大問題」をお読みください。

Photo_20201114102601

★無自覚を自覚へ転換すると、ICT活用によって、ブルームの提唱するマスタリーラーニングができるし、3つの評価も有機的につなげていけることについても語り合えました。

★そして、ここにPBLをつなげると日本の教育が変わります。

Photo_20201114103201

★石川先生のこの想いは「人生はプロジェクトだ!」という言葉に込められています。人生をかけて日本の教育を変える覚悟と気概をうけとめました。

★石川先生ありがとうございました!そして、このような機会を創出していただき、鈴木さん感謝です。

3glicc

★次回は、鈴木さんと突き抜ける領域「ドーナツの3%の穴」について対話します。

|

2020年11月13日 (金)

新しい教育社会(27)ユートピア教育リバタリアニズムへの期待。リクルートとGAFAの時代。

★日経新聞(2020/11/9)によると、「リクルートマーケティングパートナーズ(東京・品川)は9日、教職員向けに提供する学習管理サービスで、米グーグルの教育支援サービスと連携したと発表した。日本国内では初めての取り組みで、両社が提供するサービスを同じIDでログインできる。ファイル共有などでも連携する予定だ」ということです。これは、ブルームのタキソノミーに基づいた「完全習得学習(マスタリーラーニング)理論」の実現を示唆しています。

Rg

★ブルームは、診断的評価によって、個別最適化を図り、そののち形成的評価で1人ひとりの学力向上をエンパワーし、1人ひとりの進路先につなぐ総括的評価(従来の偏差値や評定成績に相当)をしていくことを提唱し、タキソノミーの評価視点に合わせて行うこの学習をマスタリーラーニングと称しています。今までは、総括的評価だけが前面にでて、そこにいきつくプロセスである診断的評価や形成的評価は日本では使われてきませんでした。

★ヨーロッパ、とくに北欧では形成的評価が活用されてきましたが、日本やアメリカは人口が多く、特別な教育以外では、総括的評価が主流でした。

★少子高齢化日本社会とはいえ、教育大国フィンランドの総人口と日本の中高生全体の人口は同じくらいです。診断的評価や形成的評価は難しいのです。

★しかし、AI時代は、それが一気呵成に可能になります。それは、今回のパンデミックで明らかになりました。GIGAスクール構想の実現が急激にリアリティを持ち始めました。

★しかし、AIやネットワークの世界は、シノプティコンの世界です。アナログ時代の一望監視装置、すなわちパノプティコンという権力側の一方通行型の監視体制ではなく、市民による相互監視ですね。それがネット上ですでに行われています。ポジティブにもネガティブにも行われています。

★自粛警察とか炎上などという言葉は、ネガティブなシノプティコンになっていますね。でも、多様なハラスメントを暴くポジティブなシノプティコンにもなっています。

★また、ナッジだとかアフォーダンスというマーケティング理論が浸透しています。たしかに自分で選択して購入しているのだけれど、ネットの巧みなアーキテクチャーによって、誘導されてしまているということがあります。アーキテクチャー法は国家法を超える法としてみなされ、GAFAと国家が法廷でしのぎを削っています。

★子供たちの主体性を育むはずのオンライン学習が、実はかなり方向づけされたものになるネガティブなシーンもあります。その一方で、クリティカルシンキングを発動しながら世界の子どもたちが結びついてクリエイティブな活動をするシーンも多発しています。

★しかし、いずれにしても一人一台のデバイスをもって、個人の自由をできるだけ謳歌するような大きなパラダイム転換、すなわち教育リバタリアニズムの時代が到来したのです。

★この動きは止められません。あとは、ユートピア教育リバタリアニズムにするかデストピア教育リバタリアニズムにするか、私事の自己決定という判断力です。どうやらカントの三批判の再定義という時代なのでしょう。なるほど、欧米の若き文化人類学者や哲学者がそこに集中しているはずです。

|

2020年11月12日 (木)

和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(05)12人のZ世代 ルソーの鹿狩りの寓話を読み替える

★SDGsやダボス会議、ソサイエティ5.0、第4次産業革命などの歴史の起点は、概ね産業革命から。3つ目のセッションであり同時にチェックアウトでは、自分の思いを仲間や世界に架け橋(媒介)するマテリアルとして、J.J.ルソーに登場してもらいました。リスボン大地震から近代社会が生まれたとかないとか諸説ありますが、そのとき活躍したのが啓蒙思想家。彼らがそれまで世界をしきっていた神について、激論を戦わせたのです。そのうちの1人ルソーは、神様なんて持ち出すなよ。関係ないだろう、今回の被害は自然災害より人災の方がすごかったぞと。全体をちゃんとみろよと。今でも通用する視点ですね。元祖システム思考の持ち主かもしれません。

★この発想については、ルソーはリスボン大地震が起こる前から論じています。「人間不平等起源論」の中のあの有名な「鹿狩りの寓話」もその一つです。世界の痛みの根本までダイブして語っているルソーの意図を集約した寓話ですね。

Photo_20201112121801

★近代的自我の引き裂かれたトラウマを、シェークスピアと同様暗示しています。300年の時をワープしてルソーと共感し、ルソーを超えたのが12人のZ世代でした。

★12人は利他性や寛容な精神に心を開きながらも、エゴを排除するようなことはありません。エゴへの眼差しこそ12人のZ世代の大事な発想だったと感じています。

★他者か自己かという分け方自体、分断の始まりなのかもしれません。そんな二項対立を超えて、他者について自己についてそれぞれループをつなげ、広げていくシステム思考の知性をふくらませたのでした。

★エゴが奪取したウサギのその後について、ルソーはどう考えたんだろうね。そう語らしめた彼らの着眼点が閉塞状況を開放/解放することになるでしょう。SDGsに代表される私たちの多様な問題は、近代的自我のトラウマの解消にヒントがあるのかもしれないなあと12人のZ世代の発想に触れて感じ入りました。多くの大切な気づきをありがとうございました。

|

和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(04)12人のZ世代が希望なわけ【保存版】

★12人のZ世代のチャンレンジグなシステム思考への旅は、未来への希望の響きを奏でました。シンプルなシステム図にループを付けくわえ少し複雑にしたドネラの思考システムのループ図を使って、先ほどチャットに書き込んだ自分の興味と関心とその発展をシステム思考に置換えるセッションを行いました。

Photo_20201112105401

★ループ図は人によって違っていいのですが、まずはプロトタイプを使ってということなのですが、これはなかなかたいへんなタスクです。自分のアイデアをドネラのシステム思考と重ね合わせる(ミメーシス)のです。詩人はメタファを生み出すのに生みの苦しみを伴いますが、実はそれとおなじくらい大変な作業です。

★12人のうち1人ぐらいがチャレンジしてくれるといいなあと思いました。しばらく無音状態が続きましたが、心配ありません。チェックインのときの4分33秒の音楽で、虚無の時間もありだと確認済みなので焦る必要がありません。ふと、行きますと言って、ファーストペンギンがダイブすると、幾人かのメンバーが続きました。

★ストレスのRとBの関係とBが破れたときのリスク、それをどう回収するか、音楽について、プラスチックごみについて、ジェンダーについて、貧困について・・・。

★そして、ところで、異論反論オブジェクション!というのがでてきました。このループ図以外にもっと違うのはありませんか?ネットで調べればでてきますか?と。ループ図はそれぞれの世界の表現だから、削除挿入はありだし、どう結びつくかも多様です。そういうクリティカルシンキングが発動するくらいのめりこんでドネラと時空を超えて対話しているのだと、感じ入りました。

★ほかのメンバーも諦めずに没入していました。フロー状態というとても大事なマインドフルネスな時が訪れていました。

★一般に、ものごとは良し悪しの二項対立で論を展開しがちです。しかし、12人は、システム思考にすーっと入り込みました。悪戦苦闘しようともです。たとえば、一般的には、少子高齢化などはよいかわるいか即断してから論を展開しがちですが、システム思考では、何通りも状況を考えることができます。ですから、12人は、その選択肢の中で何をどのようなシナリオで解決していくのかを判断しながら考える複雑系の思考にチャンレンジしているということを、今回証明したのです。

★なぜ難しいかというと、図にも示しましたが、あらゆるモノはポジティブバランスとネガティブバランスのループが考えらるし、同時にポジティブ自己強化フィードバックとネガティブ自己強化フィードバックのループが考えられます。出生率と人口と死亡率という3つのモノの関係は、単純計算しても4×4×4通り=64通りものループ図が考えられます。単純にいや安易に2通りだけ抽出して考えていくとどうなるかはもはや言うまでもありませんね。

★まして、12人それぞれが考えているコト(モノどうしが関係し合うコト)はシステム思考で表現するともっと複雑です。1つの社会課題を解決するのに、いろいろな価値観を持った人々、考え方を持った人々がコラボレーションすることが必要なはずです。

Si

★そして、この知のコラボレーションをして無限のループを世界の見識者が集まっているサイトがあります。ストラテジック・インテリジェンスという世界経済フォーラムが主催しているサイトです。それを紹介しました。システム思考はAIとコラボしていく流れがすでに実装されています。Z世代がすでに手に入れている思考様式がすぐそこにきているのです。

★12人の思考様式、すなわち知は世界経済フォーラムの目指す才能主義の知と共鳴し合っているのです。その響きはまだ小さいのですが希望の響きです。間違いありません。

 

|

和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(03)自分の探究のアイデアをドネラ・システム思考に転換する12人のZ世代

前回、12人のZ世代はチェックインのときに、お互いにメンタルモデル(もちろん片鱗ではある)を開示して、安心安全なZoom空間(何せ初めて会うお爺ちゃんがZoom画面越しになぜかいるわけだから^^;)であることを確認したという話をしました。そのとき橋渡し(媒介)のマテリアルをジョン・ケージの「4分33秒」の音楽を活用したわけですが、2つめのセッションではドネラ・メドウズのシステム思考のループ図を使いました。

Photo_20201112092101

★まずは、自分の興味・関心のあることとそれをどう発展させているのか、あるいは問題解決プロセスを考えているのかシンプルにアイデアをチャットに書き込んでもらいました。すると、いっせいにカチャカチャカチャ・・・と。あっという間でした。

★たとえば、世界に溢れるプラスチックの問題について、適切な運動が必要だし、人とのコミュニケーションの機会の提供をどうするか考えている。日本の相対的貧困について問題だと感じているので、趣味の一つの写真を通してより多くの人に相対的貧困について考えてもらうきっかけを作りたい。シンギュラリティ時代におけるAIが人知を超えたときの人間の価値とは何か?人間にしかない能力を見つける、育てる人間とは?AIや機械との共存を図る方法を考えたい。ジェンダー問題について、世界のお姫様における女性について歴史的に考察したい。音楽理論などに興味がある。音楽を学べるような機会を増やしたいし、いろんな人にそれぞれボイシングが異なるので7億人の人に作曲能力があれば面白くなると考えている。児童虐待をなんとかしたい。直接的なSDGsの目標番号を作る運動を起こす。 価値観や優先順位の違いについて、 高校で、生徒一人一人の将来にむけた授業選択制度を提案する。民族や国によって違う思考やイメージの違いという文化人類学的なアプローチに興味を持っていて、性教育、利他性と利己性の間に生まれる葛藤を追究したい。

★すべてを紹介できませんが、こんな感じで、どっとでてきました。そして、このそれぞれの想いやその広がりや解決のプロセスをシステム思考に展開(置換)してみようというインプロセッションをしてみました。

★システム思考とは何かを講義するのではなく、出生率と人口と死亡率の関係を図にしているドネラのループ図を提示して、誰か説明してくれませんか?と投げてみました。すかさず、僕行きますと言って、説明してくれました。すばらしい!初めからシステム思考がわかっていたのではなく、動きながら考えるというインプロ型の思考、レヴィ・ストロースなら「野生の思考」というでしょうが、すばらしい即興思考力を披露してくれたのです。

★これで、システム思考のプロトタイプが即興的にできたのです。この野生の思考を12人のメンバーは懸命に追跡し、自分ならどう説明するか没入しているのが、ミュートの向こうから息遣いが聴こえてきました。

★小さなセッションですが、ここでもまたドネラというSDGsのきっかけを50年前に生み出した女性の科学者のメンタルモデルを時代を超えて共有することができました。ドネラのシステム思考は、死後多くの仲間に受け継がれ、それぞれのシステム思考が生まれています。ドネラの親友であるピータ・センゲのシステム思考は最も知られているかもしれません。

★そのピータ・センゲにニューヨークにまで出かけて薫陶を受けたのが、佐野先生と金井先生です。お二人はそのシステム思考的発想をマインドフルネスに活かしているセンゲのワークショップに参加したということです。そのお二人のマインドフルネスのワークショップに新井先生が参加されて共感したわけですから、ドネラのマインドは時代を超えて継承され影響を広げていますね。そして、何より、このネットワークに12人のZ世代がつながった瞬間だったわけです。

★私はドネラが影響を受けた学者の1人であるグレゴリー・ベイトソンに強く惹かれていて、そこからドネラの世界と出会うことになります。また、ベイトソンは文化人類学や精神科学や生態学などを学際的につなぐ越境知の持ち主で、いろいろな人の世界に導いてくれました。レヴィ・ストロースもそうですが、彼は、私の敬愛するハワード・ガードナー教授が研究していて、そのときピアジェについても研究していて認知革命という本で日本には紹介されていました。

★私は1990年代に、ピアジェのもとで学んでいたシーモア・パパート教授の発想にPBLのデザインの影響を受けたのですが、パパート教授はMITメディアセンターの所長で、MITといえば、当時はピーター・センゲが日本ではトレンドだったので、そこで彼の「学習する組織」を知り、衝撃を受けていたのを思い出します。学習する組織はPBLのチームワークにすぐに応用しました。

★そのような自分の経験が、あっさり一瞬にして≪Z世代≫が受容してしまうのです。個体発生は系統発生を取り込んでしまうということでしょう。お爺ちゃんというものは、長々とここまで来た時代を語りますが、それをシンプルにコンパクトに今の世代はデフォルトモードに切り替えます。

★ノイマンが時間をかけて研究してきたコンピュータサイエンスも、今や年齢を問わず、スマホであっさり活用できるのと同じです。Z世代の傾向でしょうが、すべてのZ世代がそうだというわけではもちろんありません。12人が通っている和洋九段女子とかえつ有明が、ピーター・センゲも参考にして独自の新しい学びの環境をデザインしているからでしょう。

|

聖学院インパクト(08) 「教科学習」が「研究」へパラダイム転換

★聖学院の授業はブレイクスルー!パンデミックによってフルスペックのオンライン授業を行い、学校再開後も、リアル時空とサイバー時空のハイブリッド授業を展開しているわけですが、そのためか、授業の方法論やマテリアル(素材)の扱い方、生徒の主体性などが大きく変わりました。

★そんな卵の殻を破って羽ばたくアプラクサス(ヘルマン・ヘッセ「デミアン」)が目の前を飛んでいました。おそらく、聖学院にとって、パンデミックは授業の脱構築のためのインキュベーターの作用を果たしたのだと思います。

Seig_20201112060001

★何を言っているのかとお思いでしょう。ごめんなさい。あまりのインパクトに、ファクトより驚きを言わなければという気持ちの方が先になってしまいました。とにかく、これで開成の牙城にあいている3%の穴に突入し、牙城を崩すことをまず聖学院が行うのだということがはっきりしたわけです。

★半年ぶり以上行っていなかった「授業デザイン研究会」が再開されました。座長の児浦先生は、新しい授業の孵化期を通してブレイクスルーしたがゆえに、再開しようと決意したのでしょう。

★国語の土屋先生の現代文の授業のシェアをしました。この間の授業がどのように行われたのか、プロセスごとに動画がつくられていて、それを見ながらプレゼンされたので、イメージもしやすかったですね。それに、授業で生徒がどのように学んでいるかプロセスフォリオをきちんとインタビューしながら撮影しているのがすでに革命的です。

★一般に現代文の授業は教科書にあるマテリアル(文章素材)を使います。それを通して、新出の漢字や言葉の意味を調べ、文章の構造を読み取ったり、物語だと心情の変化を読解していきます。そのうえで、自分の意見や感想を書くという段取りになります。そして定期テスト。

★これだと、与えられたマテリアルの理解度を評価することができても、そのマテリアルを通して得たはずの文章の構造などを他の文章に適用することができるかどうかはわかりません。出来る生徒もいれば、出来ない生徒もいます。

★土屋先生は、その従来の授業の手法をひっくり返しました。文章の構造を読み取ったり、自ら書いたり、表現したりするスキルを前面に出したのです。そこを生徒が学ぶことにしたのです。ですから、マテリアルは生徒の興味・関心に任せます。そのマテリアルを自分なりの文章の論理構造を読むスキル、物語の構造を読むスキル、エッセイを書くスキル、物語を創作するスキル、要するに「言語」そのものの機能を適用していくわけです。

★もちろん、最初は自分なりのスキルですから、せっかく見つけたマテリアルも十分に理解したかどうかは、学年によって違うと土屋先生は語ります。しかし、この授業方法をらせん状に実施していけば、自分なりの言語の機能スキルを学問的なスキルに変容できるのだということです。

★どうしてそんなことができるのかというと、これが目から鱗ですが、論文作成というタスクを用意したのです。小論文ではありません。大学で行う研究論文の制作方法をダイレクトに現代文の授業に入れてしまったのです。

★ある意味リサーチスキル(調べ学習ではなく、研究の仕方そのものです)を鍛える授業です。生徒は、漫画、ゲーム、AI、SDGs・・・など自分の興味・関心のある分野やテーマについて、論文を探して読んでいきます。文献リサーチもします。そのとき、自分なりの論理構造で読んでいきますが、初めは当然行き詰まります。そんなときペアワークやグループワークを通して壁を突破していきます。

★論理構造のループが増えるし、余計なものは削除されます。世界を問う論理構造のループがシステマティックに成長していきます。もうマテリアルは、誰か一人の著者の断片的な文章ではありません。それどころか、無限に増えていきます。論文を読めば、そのビブリオから読むべき論文や文献が増えていくのですから。

★しかし、一般に、このような授業は、現状では、「総合学習」とか「探究」で行われるものです。それを「教科学習」の中で実践してしまっているというのは、本来大いに驚くべきことですが、集った先生方はそれが当たり前という顔をしているのです。

★研究会終了後、児浦先生に少しインタビューしたところ、国語だけではなく、社会や理科もそのような流れになっているし、音楽の教師と、音楽と数学は親和性があるという対話をしているぐらいなのですよと。なるほど、すでに「教科学習」=「研究」というのが聖学院の先生方にとって、ニューノーマルだったのです。知らなかったのは私だけだったということです。

★さて、さらに面白かったのは、この流れに、数学と英語はすぐには乗れないというフィードバックも本橋先生や榊原先生からなされていたということです。これはネガティブなフィードバックではないのです。このパラダイム転換がおきたからこそでてくる話です。

★今後の聖学院の学びの構造をどうするかという問いなのです。国語と社会と理科はある程度共通した学びのというか思考の構造がみえてきたわけですが。数学はその構造はストレートに使えないのです。数学は実数の世界よりもガウス平面で考える構造が多いので、次元が違うからです。それをあたかも実数でことたりる日常生活で行っているのが従来の数学の授業です。しかし、それは数学にとっては、フィクションなのす。そこを基盤とすることはなかなかできませんね。他の教科でフィクションだと思われる次元が数学にとってはリアルなのです。

★また英語も、日本語と違い、ことばのデフォルトネットワークが圧倒的に少ないので、そこをどうするのかという言語生成論的な話が必要になってきます。その際、日本語のデフォルトネットワークを転換できることも考慮しなければなりません。どうやって?体験が極めて重要になってきます。フィールドワークという領域をどう結びつけるのか?なのですが、フィールドワークの科学ということですね。

★またまた本間は何を言っているのかといわれますね。しかし、しかたがないのです。開成がそのことの重要性に気づき3%の穴の中でそれをひっそり実現していくことを2013年からはじめています。聖学院も同じ時期から、それを全面展開しようとしてきたわけですが、それがようやく実現されはじめたのです。世の中の97%の人が気づかないことですから、わけがわからないのもしかたがありません。

★もっとも、この世の中というのはここでは日本のことを意味しています。ですが、海外で議論すると盛り上がります。聖学院はそういう局面に進んだということでしょう。

|

2020年11月11日 (水)

和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(02)柔軟で寛容性あるメンタルモデルを顕在化するマテリアル「4分33秒」の音楽

★今回集った和洋九段女子、かえつ有明の12人の高校生は、すでに、それぞれ自分の興味と関心について探究的な道行に入っていて、多様なもの見方や考え方、情報のネットワークを広め深めています。だから、誰かひとりに自分の研究している内容をプレゼンしてもらい、みんなで対話していってもよかったのですが、それだと理性的な入り方になってしまい、感性や感情の領域に蓋がされてしまいます。せっかく集いZoomで互いの表情をシェアしているのだから、共通のマテリアルをそれぞれがどう感じるか考えるかを開示していくところから始めるも良いかなあと。

Photo_20201111144601

★そこで、いろいろ考えめぐらして、Zoomは音声が大切だから、その大切なものを活用してみようと思いました。1950年代に音楽家のジョン・ケージが作曲した「4分33秒」の音楽を、初演されたマーベリック・コンサート・ホールの写真を見ながらみんなで耳を傾けました。森の中にある小さなホールで、夕やみ迫る中ホールの光がなんとも癒さられる時空を広げている写真です。

★しばらくするすると、音が聴こえませんよ、写真共有の時に音をシェアする設定にしていないのではという気配りの声がイヤホーン越しに聴こえてきました。それでも黙っているとイヤホーンからサーッという音だけが聴こえてきました。たぶんみんなミュートで気配を消しているなあと。4分33秒までそのまま放置しておくのもセッションの時間が限られているので、1分ぐらいで演奏はやめて、1人ひとり自分の関心事と4分33秒の音楽との関係などについて語るところからチェックインを始めることにしました。

★この「4分33秒」の音楽は3楽章からなっていますが、音符はありません。ですから、いわゆる旋律は流れないのです。初演以来半世紀以上も経っていますが、いまだにクラシック音楽の世界だけではなくいろいろなジャンルで演奏され続けています。といっても、楽器からは音は流れてこないのですが。

★初演当時は、いうまでもなく、賛否両論でした。しかし、これから何が起こるのだろうという心の動きを感じたり、静かな森からふだん気にもとめない草木が風に揺れる音、水の音、小動物のなき声など心に満たされたなどなど、音楽を聴くという行為とは何かついて聴衆は感じることができたのだと対話が舞起こったわけです。ジョン・ケージによれば、この対話の旋律もまた4分33秒の音楽なのでしょう。

★12人も全く同じ反応でした。いやブーイングはでなかったので、全くというのは違うかもしれません。それに、自分の興味と関心に結びつけて何か感じたことがあればということでしたから、SDGsを達成するために、まず、普段無意識のうちにつくっている心の壁を見つけて崩していく努力をしているのだけれど、そのときと感覚が似ているとか、自分がこだわっているものが崩れた感じだとか、メタ的な感覚もたくさん語られました。

★12人の高校生は、それぞれに世界の意味を生み出していますが、ジョン・ケージの音楽と出会い、新たに意味を変容させたのです。

★12人は、それぞれがどんなことに気づきどんな変容をするのか、どんな反応をするのかを相互にシェアしていきました。変容することへのリスペクトと共感がそこには確かにありました。

★それぞれのアプローチは違いますが、柔軟で変容することに抵抗がないメンタルモデルは共通していることをみな了解しました。ブーイングがあったとしても、12人ならそれを受け入れながら、また新しい関係を見出したでしょう。

★いずれにしても、1人ひとりが自分の内側から気づきを生み出したわけです。探究するとか学ぶとか、ちょっと大げさに言うと生きることの意味をそれぞれに感じ取れるメンタルモデルを持っていることが開示され、感動の輪が静かに広まりました。そして、自分の興味と関心のネットワークはまだまだ広がり深まっていくという実感を共有しました。

★今回、共通のマテリアルをそれぞれが受け入れ、それだけでもケミストリーが爆発するのですが、初めて会うメンバー同士の想いや考え方を知って、さらにケミストリーが連発するという仕掛けを考えてみました。チェックインでの一つ目のマテリアルは、ジョン・ケージの世界と出会うことでしたが、さすがはジョン・ケージです。エンパシーとコンパッションを生み出す魅力的なソフトパワーです。

|

ノートルダム女学院(16)NDの学校見学会 教師と生徒の豊かなチームワークそして経営と教育の相互関係の一貫性②

前回、NDの学校説明会の3部構成のうちの「①最初の40分の学校説明」のパーツについてご紹介しました。今回は「②学校説明後の50分のPBL授業をベースとしたキャンパスツア」について述べます。

Photo_20201111090002

★50分に同時進行されていた授業だったので、すべてを見学することができなかったのが残念ですが、言葉と感覚についてループワークする国語の授業などは、生徒自身の体験からくる言語感覚と文化としての言語感性の関係を語り合うすてきなPBL授業でした。クリエイティビティは、異質なものどうしの結びつきが起こすケミストリーで、モノ作りとしてのクリエイティビティだけではなく、その創造性が生まれる言語技術について学ぶのがNDの国語科の特色なのでしょう。

★また英語の授業は、すでにグループワークを終え、プレゼンする授業でした。SDGsのターゲットでもある「世界の貧困」について、自分たちがどうかかわっていくのかオールイングリッシュの授業でした。ここでもやはり世界の痛みと自分の関係性や結びつきを思考する授業でした。

Photo_20201111090001

★宗教の授業も、トリアジという医療問題にも応用できる命の優先順位をつけることは可能なのかという思考実験問題を行っていました。このトリアジの問題は、今回のコロナ禍において大問題になっていますし、生徒もまさにそのことに痛みを感じないではいられない状況ですから、議論に没頭し、解決策を深く考えていきました。命と人間存在のジレンマを乗り越える人間同士のアンビバレンツな関係性をいかにとくのか。ここでもやはりつながりや関係性について考えるPBL授業でした。

★またもうひとつのディーン先生の英語の授業はストーリーテリングの授業です。どんな物語を創作し語るのか。学年によってテーマが違います。今回は、やはりコロナ禍において家族と暮らすが多く、そこでの葛藤や幸せな状況の悲喜こもごもを、4人一組で家族のメンバーの役割を決めてシナリオを構築していきました。

★“HOME”というテーマは、自分たちの家族の意味でもありますが、地域や社会にも拡大でき、「地球は一つのHOMEだ」というSDGsの理念にまで昇華していく実は小さく始めて大きく育つ人間存在の大テーマだったのです。英語を学ぶだけではなく、そんな人類の関係性をHOMEに収斂させていく哲学のPBL授業でもあったのです。

★キャンパスツアーのレジュメには見学する授業のポイントもシンプルにまとめらていました。さりげなくブルームのタキソノミー(新学習指導要領でも参考にされている深い思考のステージ分類表)は書き込まれ、論理的思考や創造的思考を学ぶ授業であることが明快に謳われていたのです。

★NDの論理的思考や創造的思考は、難問ができればよいという受験勉強的発想ではありません。世界の痛みを自分事として受け入れたとき、今まで関係ないと思っていたモノに関心が生まれ、思考が深くなっていくという人間存在の関係を見出すプロジェクト授業なのです。

★カトリック学校では、愛の反対語は無関心です。関心や関係性を見出すことは愛するということです。今回の学校説明会冒頭で、栗本校長がこの愛されるより愛しなさいという教師の生き様が、生徒が自分たちは愛されているのだと自覚できていることに感謝し、今度は生徒たちが愛する行為に旅立ってほしいという思いを語りました。

★まさにNDのプロジェクトベーストラーニング(PBL)は、関係を見出していくトレーニングです。愛されるから愛するへの転回。希望のプロジェクトです!

|

新しい教育社会(26)教育と経済の価値志向性の関係

「新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。」の記事も非常にアクセスが多く驚いていますが、経済社会の価値志向、つまり生活の価値をベースに座標軸を創っていますから、それぞれの価値を象徴する経済学者を配置してみました。

4value

★2021年以降、どうなるかそれこそ予測不能ですが、SDGsとDAVOSの動きが交差しながら、新しい経済社会の構築、すなわちスマート経済社会の構築に動いていくでしょう。

★しばらく、様子をみるのが、他の価値志向に属する人々です。なぜなら、新しい経済社会に移行するには、時間がかかり、今の生活が急になくなるわけではないからです。

★しかしながら、SDGsは2030年を一つの目標にしているし、DAVOSは2021年から変えようとしています。これは、ケインズの預言にのっとっています。1930年にケインズは、DAVOSテーマである「ザ・グレート・リセット」と同じテーストの見通しをたて、100年後に「経済至福」が訪れるとしています。

★ケインズとエンデが一目置いた経済思想家は、シルビオ・ゲゼルです。彼自身商売で、バブルがはじける経済社会の悲惨さを経験しています。そこから新たな経済社会を目指しているわけです。地域通貨や仮想通貨の発想を持っていました。

★女性が男性に依存しなくても生きていける経済社会の提案もしているようです。ミヒャエル・エンデの「モモ」にも影響を与えたでしょう。

★日本のケインズと言えば、高橋是清です。開成の初代校長でもあります。開成生を東大にたくさん合格させ、内側から、つまり官僚の側から日本の社会を維持していくという理念を持っていたというのですから、それは今も脈々です。総理大臣や大蔵大臣も歴任しています。開成→東大→財務官僚というステップも今でもあると思います。ここは公開されていない部分でもありますが。

3_20201111075101

★実は高橋是清のもう一つのマインドが開成の3%の穴なわけです。この3%から、他の価値意識も生み出し、それぞれの価値志向のドメインで活躍している人材が輩出されています。直接、間接といったほうがよいかもしれません。

★田辺元は、西田幾太郎が京都学派に招いた哲学者です。戦後、第二次世界大戦に若者を駆り立てる正当化理論を語らざるを得なかった自分を悔い改める懺悔道の哲学を執筆しています。西田の理性を優先する哲学を批判しつつ、自分もそれに与していたことを批判したわけです。

★開成の校長で、逗子開成や鎌倉女学院も創設した田辺新之助の長男です。自身は開成出身ではありませんが、開成で英語の教師をしたときもあるようです。

★元総理大臣の橋本龍太郎は、麻布出身ですが、父親が逗子開成出身です。消費税を上げたことはともかく、基本は税率を下げるなど、規制改革や構造改革を目指しました。うまくいったかどうかは別問題ですが。

★さて、田辺元の話に戻りますが、開成から京都大学に行って、京都学派を最初プロデュースした戸坂潤は、西田も田辺も批判します。国家そのものを批判します。開成の同級生の町村金五が警視総監時代に戸坂潤を投獄しました。戸坂潤は戦争終結直前に獄中死します。

★開成というのは、日露戦争時代のヒーロー秋山真之を輩出し、同級生があの正岡子規。

★今は、東大王の伊沢拓司さん、落合陽一さんを輩出。伊沢さんと対比されるのが、松丸亮吾さん。松丸さんは日能研、麻布、東大出身というのを公言しています。落合陽一さんは、隠れ麻布でもあります。。。

★塾の価値志向ドメインの配置も行いましたが、炎上しそうなので、興味と関心がある方は、ご自身で配置してみてください(汗)。

|

ポストコロナの大学入試問題(11)総合型選抜や推薦入試では偏差値より価値志向性の影響大か?高校のありかたが大事。それゆえ、聖学院の新コース。

★11月に入って、ホンマノオト21のアクセス数1位の記事は「ポストコロナの大学入試問題(05)2021年以降の小論文の当然のテーマは「シノプティコン」。しかし難しい。それに真摯に対応できる高校は?SEIGのGIC。」です。コロナ禍によって、小論文のテーマがパラダイム転換することについて書き、それにいちはやく対応できる場は、聖学院の来年新設されるGICというコースだというエッセイです。

Photo_20201111021101

★気になったので、調べてみました。すると、アップされた日から昨日までのアクセス累積数でもトップなのです。このようなニーズが現状あるということでしょう。

★総合型選抜や推薦入試は、大学の価値志向性と生徒の才能や価値意識のマッチングゲームです。偏差値よりもValueの共感性がものをいいます。この価値志向性をメタ分析できる思考力を養うキャリアデザインを実施しているところは現状少ないですね。公立学校だと、学校と家庭の色に影響されます。私立学校だと建学の精神に影響を受けます。そんなこともあって、検索する人がいるわけですね。

★人間は「煩悩具足の凡夫」です。アンビバレンツに悩むハムレット、戦後懺悔道の哲学を歩む田辺元、この言葉を説いた悪人正機説の親鸞自身そうだったでしょう。しかしながら、この考え、つまり生まれながらのトラウマに拘束されていた自己から解放されることが重要なのだという新しい価値観が生まれています。「毀滅の刃」のムーブメントもまさにそこでしょう。それは、多様なそれぞれの価値志向性をモニタリングできるMetaValueCreation=MVCです。モニタリングすると互いに新しい価値を共創造できるビジョンが映し出されます。

★大学もあくまで私の独断と偏見のイメージ、つまり私なりのMVCなのですが、上記のような図にカテゴライズされると思っています。あくまで仮説ですが、このように大学の価値志向を認識し、自分の価値志向に気づき、同じであってもよいし、違ってもよいのですが、ケミストリーを起こせるかというマッチング、つまりMVCができるかということが今後重視されてきます。

★ですから、この記事が、アップされてから昨日までのアクセス数累積でトップだと気づいたとき、はたと時代はやってきたと。特にこのニーズは高校です。中高一貫だと価値志向性が固定されます。高校からスタートするコースや高校だけの学校は、MVCが作動しやすいのです。

★返済重視だったりそれがゆえに一般ペーパー入試優勢の時は。中高一貫校が優位だったのです。それはこれからも変わりませんが、時代の変化に対応するには、高校コースや高校だけの学校が俊敏に動けるでしょう。

|

2020年11月10日 (火)

新しい教育社会(25)ドーナツを穴だけ残して食べる方法で、新しい教育にシフトする。

★石川一郎先生と神崎史彦先生のfacebook上のやりとりにちょこっと参加したら、なんと新たなアイデアが顕れてきました。しかも、3人ともそれに共感。タキソノミーを演繹的(デダクション)論理で適用する方法ともしもその演繹の前提がなかったらとアブダクション的論理で問題を明らかにする方法とミメーシス的な論理で変換する方法がぶつかったとき、新しい関係が見つかったのです。

1_20201110170501

★学校の大問題をドーナツを穴だけ残して食べる方法で解決し、新しい教育にシフトすることが可能なのだと。

★学校の様々な問題は、その問題が生まれざるを得ない大問題というパラダイムがあります。

★大問題というとなんとか解決できそうな感覚なのですが、戦後憲法が変わったにもかかわらず、教育のパラダイムは変わっていません。

★教育制度の枠組みである、つまりパラダイムを切り崩すことは、ほとんどドン・キホーテさながらです。

★さて、どうするのか?

★そもそも、ブルームのタキソノミーは、日本の教育のパラダイムには収まり切れないのです。

★ところが、そのパラダイムには3%の穴が用意されています。

★それと、AIの領域は、日本のパラダイムも受容しなければ、そのパラダイムそのものが持ちません。

★文科省と経産省は、その3%の穴に期待をしています。

★財務省は、パラダイムそのものを大事にしています。

★今回は、そのパラダイムをドーナツの穴とするのか、3%の穴をドーナツの穴とするのか。

★その両方はもしかしたら結局は同じ穴?

★文科省、経産省は動いていますが、財務省は動いていません。それゆえ、3%の穴を文科省、経産省は突破できません。そこに財源を配分してもらえないからです。全集中の呼吸(笑)をどこに注ぐか?

★たぶん、財務省にでしょうか?。つづきは、今週金曜日、GLICC Weekly EDUで!

|

和洋九段女子×かえつ有明 コラボセッション(01)共感的コミュニケーションのマインド空間

昨日夕刻2時間余り、和洋九段女子とかえつ有明の高校生12名と和洋九段女子の新井先生、かえつ有明の佐野先生、金井先生とZoomでコラボセッションする機会をいただきました。ありがとうございました。たまたま、3人の先生とは、PBL型授業とかアクティブラーニングの授業のワークショップなどを行ってきたし、HTHやピーター・センゲなどの思想やダライ・ラマの想いやマインドフルネスなど共通する体験やものの見方を持っていました。

Wkz1

★SDGsをきっかけに、両校には、世界の痛みや人間関係の葛藤をどう解決するか思いを馳せ行動する高校生が拡大しています。ふと環境というところに目が向いているなあと。その目線をたどると、共通する視座は、ドネラ・メドウズのシステム思考ではないかと。ピーター・センゲの友人です。

★和洋九段女子は、女子校としてすでにSDGsの17のゴールの1つジェンダーの問題を体現しています。この持続可能性の発展という言葉もノルウェーの初の女性大統領ブルントラントがかかわってもいます。

★かえつ有明も女子校が共学校にシフトした学校です。そのシフトの段階で、女子校の役割、共学校の役割について多くの議論に時間が費やされています。

★学校での学びや生活は、日常であると同時に世界の問題を共有する文化でもあるというのは、両校とも共有しています。それでいて、当然違いもあります。コラボセッションを通して、ケミストリーが生まれるかもしれないという話になり、日ごろワークショップで対話している新井先生と佐野先生がプロデュース。

★1人ひとりが興味と関心や問題意識を開示しながら、互いにいろいろな想いいろいろなアイデア、いろいろな価値観があることをシェアする共感的コミュニケーションが広がりました。利他性や寛容の心の大切さが響き渡る言語空間がどんどん広がっていくのに驚き感動しました。

★Z世代のエンパシーとコンパッションの力は、確実に明日への希望の架け橋だと感じました。もちろん、Z世代すべてがそうなのではなく、両校の文化が生み出していることは言うまでもありません。(つづく)

|

2020年11月 8日 (日)

新しい教育社会(24)3%作戦 各領域の3%の穴を突き抜ける。

★各領域の牙城には、なぜか3%の穴が開いている。そこをこじ開ければ、各領域はそれぞれ変わります。以前、東大と開成は自ら自分の牙城に3%の穴を開けていると書いきましたが、各領域にもなぜかちゃんと3%の穴が開いています。

★本日5人の方とZoomやメッセジャー、LINEでやり取りして確信しました。

3_20201108184801

★この3%が何かは、それぞれが、まずは考えて実行します。すでにしている方々がいます。3%はこれだあ!とブランディングすると、広がりません。ブランディングとは勝ち組みと負け組を分断する戦略がゆえに、これでは社会は変わらないのです。その組織はもちろん変わりますが。3%作戦というノーロゴ戦略でいくから地球市民が本格的に誕生するのです。

|

ノートルダム女学院(15)NDの学校見学会 教師と生徒の豊かなチームワークそして経営と教育の相互関係の一貫性①

★昨日、ノートルダム女学院高校(以降「ND」)の学校見学会がありました。3部構成で、実施されました。

①最初の40分が学校説明

②次の50分がPBL授業をベースとしたキャンパスツアー

③最後の30分が、在校生と受験生と保護者との対話

すべてに、すばらしいおもてなしのマインドが一貫していました。そのおもてなしの精神とは、愛されるより愛しなさいという隣人愛そのものでした。そして、そのマインドが教師と生徒のチームワーク及び経営と教育の相互関係に注がれて循環していたのです。

Nd1_20201108113001

★このマインドが循環していることを、キリスト教ではぶどうの木として象徴しています。まさに、NDの説明会は、キリスト教精神が循環しているぶどうの木さながら。さすがはカトリック学校です。

★イギリスのエコノミスト誌傘下の研究所エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが世界167ヶ国を対象に毎年発表している各国の民主主義度を評価する指数があります。残念ながら、2019年度のデータでは、日本は24位です。23位が韓国で、25位がアメリカですから、中立的な指標かどうかは一定の距離を置く必要は一方であります。

★しかし、世界の分断が進んでいる中、民主主義国家が、この167カ国の50%行かないということは重要です。今朝のニュースではバイデン大統領が誕生しそうですが、選挙の投票結果は、分断を物語っています。

★分断の根本価値のせめぎあいには、愛されるより愛することを大切にする精神と愛されることのみを基本とする精神が拮抗しているということでしょう。

★NDは、前者を大切にする学校です。子供たちの未来を考えれば、前者の価値が大切にされるようになる可能性が高いですね。それが今回のパンデミックが浮き彫りにしたことだと思います。受験市場の価値意識の中では、割合的には、まだまだ後者が多いでしょう。にもかかわらず、NDは、右顧左眄することなく、真理を貫き通します。

★しかし、それは頑迷固陋とは違います。実は真逆なのです。イエス・キリストがそうだったように、ラディカルなのです。エ~~って思うでしょうね。でも、世界を見れば、民主国家は半分ないのです。自由・平等・博愛というカトリック国フランスから生まれたキーワードは、実はキリスト教の考え方とも共通します。それを象徴しているのが、ニューヨーク国連にあるノーマン・ロックウェルのモザイク画ですね。

121616389_1857693281046740_2400805999636

★このモザイク画には、キリスト教の隣人愛を示すゴールデンルールが刻まれていますが、国連は、見ての通り、すべての民族、宗教、身分などの差を乗り越えて共通する精神であるとして、展示しています。

★そんなわけで、栗本校長先生はこう語ります。「先日本校53期生が講演に来てくれました。彼女は、日本学術振興会の特別研究院として植物ウィルスの研究をしています。京大の理学博士で、本校在学中、科学クラブ部長をしていました。その時代から、数々の出前出張講義を小学校や博物館などで行い、その数は100を超えたという驚異的な経歴の持ち主です。その彼女がこう語ってくれました。NDの先生方には、本当に私たちは愛されて育ちました。そのことをみなさんと分かち合いたかった。それが実現ましたよと。こんな素敵な先輩に出会って、在校生が、好きなことに果敢に追求する人生を歩むことに勇気をもらったことは間違いありません」と。

★そして、この愛されるより愛することを全うする教師は、その精神を今の時代の生徒とシェアするために、時代の最先端の教育イノベーションを生み出すのですと。普遍/不変的な精神は時代の最先端の革新的なスキルや道具を活用することで持続可能になるわけです。NDにとって、伝統と革新は、対峙するものではなく、表裏一体なのです。

★そして、高橋常務理事が、その革新的教育イノベーションの1つPBL授業について語りました。「お手元にある見学案内のレジュメをご覧ください。みなさんに見学していただく授業の一覧があります。すべてPBLの授業です。対話をしながら、議論をしながら、プレゼンテーションをしながら、1人ひとりの想いを広げ考えを深めていく授業です。まさにここに栗本校長の語る愛されるよりも愛するという教師の気概と愛される生徒との関係が生まれるのです。たとえば、宗教の授業がカトリック学校ですからあります。いかがですか?宗教の時間というと聖書の文言を暗唱するというイメージではありませんか?いいえ、違います。ご覧くださればわかっていただけると思いますが、たとえば、今回のパンデミックで、生命の重要性をみな改めて認識し、考えたと思いますが、そういう身近だけれど大事な問題について深く語り合い考える授業が展開しています。」

★また、英語の授業についても、言及しました。「英語を学ぶというよりも、英語で考えたりエッセイを書いたりプレゼンをしたりという授業です。ネイティブの先生方と、もちろんオールイングリッシュで、リサーチし、ディスカッションし、プレゼンしていく流れは宗教と同様です。要するに科目や言語が違っても、PBL型の授業を行っているのです。そして、そのような学びの大切さは、みなさんはもうおわかりですよね。教科書を暗記するだけでは、未来をサバイブも、自分たちでつくっていくこともできないことを今回パンデミックで私たちは学んだのですから」と。思考はなぜ大事なのか。それは愛を持続可能にするからだということでしょう。

★それにしても、その見学のレジュメには、各授業の特徴となんとどこまで深く考える授業なのかが明らかにされているのです。今回のための特別な授業ではなく、いつもの授業なので、単元の流れの中の1つですから、考える深さは、どの流れにあるのか、授業デザインによるわけです。ところが、少なくとも、どの授業も「知識→論理的思考→創造的思考」の中で、論理的思考にまで進んでいます。そして、50%以上が創造的思考にまで到達する授業だと示されていました。やはり、NDの思考性の授業PBLは、愛で満ちているということですね。

★さて、あのオーケストラクラブの顧問であり、広報担当の中先生のコース及び入試要項などの説明に進みましたが、興味深いことに、今回集まった受験生と保護者のニーズに合わせて説明を展開していきました。この気遣いこそ隣人愛の具現化です。

★PBL授業の極意は、学習者ファーストです。生徒がどんなニーズを持って、学びに参加しているのかを、普段の対話、授業に取り組む姿勢や表情、またグーグルフォームによるアンケートなどで把握しながら、生徒のモチベーションの内燃を生み出し、その力を活用しながら学びをデザザインしていきます。

★広報担当の先生にとっては、ある意味学校説明会というイベントもプロジェクトの一環ですから、PBL授業との親和性が高いのです。

★かくして、学校見学会の構成の1つである、学校説明については、3人の先生方の息の合ったチームワークがすてきでした。そして、受験生と保護者が共感する世界を生み出す言葉と行いの実行力には感動したのでした。

|

新しい教育社会(23)予告!石川一郎先生との対話 デジタル・タキソノミー×思考コードでポストコロナ教育を映し出す on GWEDU

★今月13日(金)21時から、GWEDU(GLICC Weekly EDU)で、石川一郎先生と鈴木裕之代表と対話します。石川先生の新著の中にある「デジタル・タキソノミー」が学校の大問題を浮き彫りにし、その解決のヒントになることを語りながら、それに「思考コード」を掛け合わせることで、新しい教育を映し出したいと思います。かなりアクロバティックでスリリングになると思います。ここまで切り込む学校論や教育論は今までにないということになるでしょう。

201113

★というのも、落合陽一さんの語るクリエイティブクラスやSDGs、世界経済フォーラムの「ザ・グレート・リセット」の流れが、デジタル・タキソノミーと思考コードによって結びつくからです。

201113_20201108004401

★そして、現代の魔法使いと呼ばれているメディアアーティスト落合陽一さんの根っこにあるデカルトVSベイトソンにもデジタル・タキソノミーと思考コードの掛け合わせが結びつくことも大いに対話したいと思います。それはまた、なぜ小学生から大人までに「毀滅の刃」がウケるのかについて解明の糸口にもなるし、そのトレンドの理由が新しい教育にも結びついてしまうということになります。そんなことも語り合いたいと思います。大いにご期待ください!

★とにかく、学校や教育というと受験か法現象などネガティブな側面ばかりメディアは取り上げがちです。本来ワクワク、ドキドキ夢のある場であるはずなのに。そんなわけで、サブカルチャー、文化人類学、経済学、哲学、心理学、言語学、コンピュータ・サイエンスなど多角的に学校や教育を語ることを通して、日本の教育マーケットを共に活性化していきましょう!

|

2020年11月 6日 (金)

新しい教育社会(22)東大と開成の牙城に3%の穴がある。そこをこじ開ける流れが押し寄せる。

★昨日、今日と時代の変化のカギを握る方々と別々に対話をしました。ですから、互いに知らない方々なのですが、同じ方向に向かっています。

3_20201106153701

★それは、東大と開成の牙城にある「3%の穴」に流入しようという作戦です。その穴は、東大と開成が自らあけた穴です。

★たとえは、あまりよくないですが、桶狭間の戦いで勝利した織田信長のような作戦です。

★世の中は、その流れが3%の穴に注ぎ込まれ、一挙に牙城が崩れたときにハッとするでしょう。

|

2020年11月 5日 (木)

ノートルダム女学院(14)OGと連携してGIWS(グローバルインテリジェンスワークショップ)を実施!

★ノートルダム女学院中高(以降「ND」)は、関西学院大学と高大連携を実施したばかり。矢継ぎ早に、在校生とOGの連携講座「GIWS(グローバルインテリジェスワークショップ)」を開催しました。簡単に置き換えると「ようこそ先輩!」ワークショップですね。ポストコロナを巡り、世界はSDGsと世界経済フォーラムのストラテジックインテリジェンスの両側面からグローバルな社会課題をどうするかダイナミックに議論され、ザ・グレート・リセットに向かっています。欲望資本主義から才能資本主義へ、あるいはファーストクラスからクリエイティブクラスへとパワーシフトしようとしています。

Photo_20201105124401

★しかしながら、日本の教育では、私立学校で少し気づかれ実践されているぐらいです。これはジェンダーギャップ指数で恐ろしく低い日本の現状を思えば、当然です。女性や子供たちの問題に極端にアンチケアフルなんです。

★しかし、さすがは、NDの先輩です。そこを在校生と語り合おうというのです。これはすごいことです。どのくらいすごいかというと、まず偏差値至上主義の学校では語られない大事な内容だということです。

★こういうSDGsやストラテジックインテリジェンスやマインドフルネスについて興味のある学校は、どのくらいかというと、日本全体の中高では、1%です。京都市では、その1%です。エ~っ!それじゃ0.5校ということではないですか。

★そうです。NDが京都では先に動き始めたのです。本格的には来年以降大きく変容しますから、昨年9月から準備に入っているんですね。そういえば、緊急事態宣言の自粛期間に、京都で真っ先にフルスペックのオンライン授業を実施したのもNDでした。

★今回の在校生とOGの連携も、霜田先生とOG大河内さんが、この準備の過程で立ち上がったNDナレッジcafé(教育をベースにいろいろな対話をするカフェ。マスターは霜田先生。)で出会ったことがきっかけです。

★そして、あれよあれよという間に、実現したのです。大河内さんは、ND卒業後関西学院大学で学び、タイで教師を1年経験し、日本社会の病を外からモニタリングし、現在は、スマート教育とスマート農業を結びつけ、新しいスマートシティへ役に立てないか構想中だそうです。準備段階の1つとしてYoutubeで発信しているクリエイティブクラスです。

Photo_20201105131101

★その大河内さんは、同期に海外で仕事をしていたり経験したりしている友人を知っているからと、その1人塚本さんとジョイントしました。塚本さんは東京外国語大学に進み、グローバルベンチャー企業に進み、若くしてプロジェクトリーダーとしてインドで数年仕事をしていたそうです。やはり、外から見ていると日本社会の病がモニタリングできたそうです。塚本さんもクリエイティブクラスですね。

★そんなわけで、ジェンダーギャップやジェンダーディバイスの問題について、NDの在校生とワークショップを行ったのです。詳しい話はいずれNDサイトで紹介されるでしょう。

★NDは、今高度な英語教育を実施していて、グローバルネットワークも広げています。そして、授業のうち半分はPBL型授業になっています。1人1台端末も活用しています。

★しかし、先輩の知的でワクワクするプレゼンやワークショップのファシリテーターぶりをみると、以前からその文化があったのだということが伝わってきます。いずれ在校生にもインタビューしてみようと思いますが、世界に目を向け深い思考をする経験にどっぷりつかっている日々を楽しんでいるのは間違いないでしょう。憧れの先輩の力はやはりすさまじいですね。

|

新しい教育社会(21)石川一郎先生の新著「学校の大問題」の本当の問題!

★石川一郎先生の新著『学校の大問題 これからの「教育リスク」を考える (SB新書) 2020/11/6』読みました。とはいえ、いつもながらの直観斜め読みですが(汗)。

★そして、学校の大問題をアクロバティックに語っているのに驚きでした。

51zgypr1tl_sx323_bo1204203200_

★ここまで、ブルームのタキソノミーを前面にだして展開している学校論は見たことがありません。私が「思考コード」で社会全体を語ろうとしているのとは真逆です。思考コードを活用している石川先生が、あえてタキソノミーにこだわったのはなぜでしょう。

★新学習指導要領の背景には、ブルームのタキソノミーは確かにあります。学力の三要素の図などはまさにそうですよね。文科省の教育関連分科会の資料などでも、国立教育政策研究所の資料でもそうなっていますが、ただし、ブルームのタキソノミーは、アクティブラーニングを導入した文科省にとっては不具合が生じるので、ブルームのタキソノミーをいろいろな弟子たちが修繕・改修・改善しているものも深く取り入れています。

★それに、観点別評価でブルームのタキソノミーはちょっとなまった使われ方をして、文科省も前面に押しにくいということもあったでしょう。

★石川先生がそのことを知らないはずはないのに、あえてブルームのタキソノミーを前面に押し出してきた。まったくここに学校の大問題があるわけです。ブルームのタキソノミーというのは学びの基準の一つの例です。タキソノミーを使っていない学校の現状を映し出しているわけですね。

★ブルームのタキソノミーを否定するのは勝手だけれど、他の基準はあるの?あるのなら見せてみなさいと石川先生は迫っているのです。

★それと、ブルームのタキソノミーは、もともとは認知科学の流れですから、その源流であるルソーやピアジェ、ヘーゲル、なんといってもデューイに立ち戻れば、ピータ・センゲではないですが、誤謬のロジックから解放されます。

★思考コードはその源流に立ち還っているわけです。首都圏模試センターや21世紀型教育機構の各学校の思考コードはそういう意味では、Beyond Bloomをやっていたわけです。神崎先生や私もそうです。石川先生もかえつ有明当時つくった思考コードはそうでした。IB(国際バカロレア)もブルームは参照しますが、独自のルーブリックに脱構築しています。

★石川先生は、全国の10%の先進例を紹介はしていますが、あえて詳細には述べず、あくまで90%の学校の話をしているわけですね。

★なぜかというと、ここがアクロバティックなところですが、ブルームのタキソノミーは、ICT教育に適合してしまうということなのです。基本ICTの導入事例は、まだまだインストラクショニズムでコンストラクショニズムではありません。つまり要素還元主義なのです。関係総体主義である構成主義的な発想はまだないのです。

★GIGAスクール構想も、経産省の未来の教室も、これからのデジタル庁もユーザー目線ですから、時代の要請には耳を傾けていません。両方が大事なのですが。

★それから、試験文化にピッタリなのです。それはそのはずです。ブルームは、タキソノミーを作る時に、素材としたのが大量の試験問題だったからです。

★つまり、ブルームのタキソノミーを明快に導入すると従来のワンウェエイ授業あるいは、教師と生徒の問答授業(ソクラテスほどではない)に立ち戻ることができるのです。

★石川先生の真意を対談して確かめてみたいのですが、これはまったくすごいアイロニーです。いいよ学校が変わらないのなら、今のままでいいからブルームのタキソノミーを徹底しなさいよということです。そうすれば、大学進学実績はもっとでますよと。

★学歴社会を21世紀型教育で崩すのはまだ時間がかかるから、20世紀型教育に欠如していた授業の基準を明らかにすれば、偏差値に関係なく進学実績が出るから、偏差値ランキングを崩すことができるということでしょう。

★それゆえ、C1英語の話も、実は創造性についてもほとんど中身の話はしていないのです。つまり、クリエイティブクラスの社会学的な話や芸術文化人類学的な話はいっさいしないのです。教科横断型や学際知を標榜している石川先生がです。というのも、世界はクリエティブクラスの方向に動いているけれど、日本は動かない。それは学歴社会が厳然とあるからだ。それなら、今のまま偏差値ランキングを崩す戦術で行こうということだからです。

★そうすれば、結果的に、日本は遅ればせながら動き出す。しかし、この学歴社会は、化粧を変えた江戸時代の封建制度ですから、そう簡単には変わらないわけです。ですから、変えるということはあまり言わない。今のままでいいからブルームのタキソノミーを使いなさいと。

★というビッグ・クエスチョンを投げかけたのが本書だったのではないでしょうか!またまた本間の独断と偏見だと言われるでしょうが、私としては目から鱗でした。なるほど自己変容のシナリオは2通りあるのだと今更ながら気づいたのです。この戦術も導入しながら、つまり二刀流でさらなる新しい挑戦ができるなと感じ入りました。

|

2020年11月 4日 (水)

ポストコロナの大学入試問題(10)東大の不思議。一般入試では否定したはずの大学入試改革の行方を学校推薦型選抜学生募集要項には示している。

★東大の学校推薦型選抜の出願が、6日(金)までに迫っています。今年はチュートリアルをやる生徒に出会いませんでしたが、情報の1つとして要項に目を通しました。

★アドミッションポリシーにはいきなりこうあります。『1877年に創立された我が国最初の国立大学である東京大学は,国内外の様々な分野で指導的役割を果たしうる「世界的視野を持った市民的エリート」(東京大学憲章)を育成することが,社会から負託された自らの使命であると考えています。』

★大日本国憲法でさえ変わったのに、東京大学憲章の根っこは変わらないと言いうことでしょうか。だとするならば、大学入試改革など反対だ。それは真のエリートにのみ開かれていればよいという文化が今もあるというのは納得です。

Photo_20201104201301

★全国の校長会も、そんなの東大受験生に適用してよ。ほとんどの生徒には関係ないんだよというのもわかります。だとすると、民主的な国家とはいえませんなあ。

★だから、私は揶揄されようとも、偏差値に関係なく仲間の学校には、CEFR基準でC1英語(正確ではないけれど英検でいえば1級レベル)の学びの環境をといっています。東大の帰国生入試も推薦型も、C1英語をちゃんと求めているのです。

★それに一般入試では問うことがないクリティカル&クリエイティブシンキングをフル回転させる問いやレポート課題を出題しています。思考コードでいうC軸思考ですね。

★となると、当然PBL授業に耐えられる生徒像を掲げるわけです。こうあります。

『東京大学が求めているのは,本学の教育研究環境を積極的に最大限活用して,自ら主体的に学び,各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生です。何よりもまず大切なのは,上に述べたような本学の使命や教育理念への共感と,本学における学びに対する旺盛な興味や関心,そして,その学びを通じた人間的成長への強い意欲です。そうした意味で,入学試験の得点だけを意識した,視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも,学校の授業の内外で,自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。』

★わるくないのです。PBLをやって地球市民にこの学びが開かれるならば。ところが、これは、世界的視野をもった市民エリートのためだというのです。

★そうやって、PBLは一部私立学校では可能だが、公立はできない。格差ができると東大教育社会学で述べてきたのです。不思議です。

★そういっていても、はじまらないので、偏差値に関係なく、東大をスルーして海外大学もしくはそれに準ずる新しい日本の大学や学部へとエールを送っているのです。PBL環境に親しみ、地球市民として学問できる場に多くの生徒が今進んでいるのです。

★つまり、東大の帰国生入試や推薦型のやっていることは広く地球市民にエンパワー出来ることなのです。

★しかも、実質飛び級までやってしまっているのが東大の帰国生入試です。海外によっては17歳でもIBのDPをとれてしまうところがあります。当然ですよね、海外には飛び級やギフテッドがあるのですから。

★そういうわけで、いつまでも、東大生だから特別な学びができ、一般ピープルはその必要がないなんて、かつて学校なんかいかなくていい、身分の高い家の子が行くもんだという根性と同じことをいうのはやめましょうよ。

★みんなでC1英語を!みんなでPBLを!みんなでICTを!みんなで哲学を!みんなでクリエティカルシンキングを!みんなでクリエイティブシンキングを!

★1人も残さないといっているSDGs推進者の中には、質の高い教育をと叫びながら大学入試改革に反対する方もいます。不思議なぐらい東大と同根の文化を持っています。明治から一度憲法は変わっているんだけれど!

|

2020年11月 3日 (火)

工学院インパクト(17)チームSCTのクリエイティブ・コア・ミッションが私たちの希望。②

★前回、ロジャーズ教授が開発したイノベーター理論を発展させたジェフリー・ムーアの考え方である「コア」と「コンテキスト」を紹介し、工学院がそれをさらに進化させていることを述べました。

2_20201103104801  

★つまり、同校は『「コア」と「コンテキスト」をもう少しわかりやすく「コア」と「ルーチン」と読み替え、「コア」をクリエイティブ・コアミッションとマーケットニーズコアミッションに分けています。もっと簡単に言えば「本質」と「実用」です。』と。

★ムーアは、経済市場が足場ですが、工学院は教育現場が足場ですから、違いがあるのは当然です。市場では、ある一つの商品がころころ変わるわけにはいきません。ところが、教育現場では、変わるのは当然です。日々変わると言っても過言ではありません。もちろん、教授法中心の教師ファーストだと、市場の原理が成り立つのですが、生徒ファーストだと変わるのが当たり前ですね。すなわち、工学院では生徒中心の教育が展開しているということなのです。

★ですから、今回生徒が興味と関心を内側から生み出す仕掛けを授業でどうするかというのが、Zoom対話のテーマだったのです。柳田先生の中学の社会科の5時間続きの授業を疑似的に共体験し、分析しながらそこから興味関心を生み出すあるいは自然と生まれる学びの構造を見える化していきました。

Photo_20201103105701

★柳田先生の授業のテーマは「古墳時代」です。生徒は、その当時、古墳がアジア圏に広がっていたのはなぜか?なんのためにどんな古墳が作られたのかなどをリサーチ―して、まとめていくという作業をしていきました。

★そして、それをピア・シンク・シェアをし、さらに視野を広げ、深めていくという協働作業に進みます。最終的には、スライドにしたり、動画にしてプレゼンするわけですが、チームで優れた作品を選抜するというルーブリック評価(思考コード)もしていきます。

★このPBL授業の過程の中で、生徒がいろいろなところで興味関心を生み出します。それを上記の図ようにチームSCT(スーパークリエイティブティーチャー)が、パターン・ランゲージを自ら創って分析していくのです。ふだん慶応の井庭崇教授の研究成果である多様なパターン・ランゲージを使っているうちに、自分たちも独自で創造しようということになったのです。

★「興味・関心が生まれるパターン」のカードを自分たちで創ったわけですから、授業アップデートのためにそれを使うのはテンションやモチベーションは上がります。それぞれが描いたイラストや絵を、かわいいかわいいといいながら、真剣に対話していくのですから、どんなに盛り上がったかは想像に難くないでしょう。そして、これもまた生徒が興味と関心を生み出す大きなヒントであることをリフレクションもしていました。

★それにしても、このような時間軸に沿って、プロセスごとの生徒の学びの駆動力を分析する方法は、教育工学的な方法でもあり、なるほど工学院だったのだと改めて驚いてしまいました。

★しかも、ハワード・ガードナー教授(ハーバード大学)が言うように、学びのシステムをつくるには、ポートフォリオだけでは不十分で、プロセスフォリオをリサーチする必要があると。ある意味、工学では当たり前ですね。

★おそらく、グーグルフォームでアンケートと試験の記述と分析したストーリーの相関をだして研究していけば、世界初の学習理論がここから生まれるでしょう。さすがは、チームSCTです。

★さらに、今回の授業では、生徒が調べるたびに疑問を生み、疑問を生むから調べ続けていくのですが、その結果最終的にビッグクエスチョンに行き着きます。なぜ人々は殺戮し合うのか?戦争は歴史の大きなテーマの一つですが、これは、社会科を超えた人間存在の問いです。知識集積が社会の学びだと思っている人も多いでしょうが、生徒自身の内側から人間存在の根源に行き着く問いを生み出すとは、柳田先生の授業の奥行きの深さに脱帽です。

★参加者一同、感動の授業を共感した瞬間でもありました。

|

2020年11月 2日 (月)

2021年変わる中学入試(17)11月6日のGLICC Weekly EDUで語る注目の首都圏私立女子校33。

★11月6日(金)GLICC Weekly EDUというYoutube配信チャンネルで、33の首都圏の注目すべき女子校について、当番組の主宰者鈴木さんと対話したいと思います。今まで、学校の4つの価値志向性で語ってきたのですが、女子校に絞ると3つになります。なぜか?

Photo_20201102212101

(聖ドミニコ学園のインターナショナルコースの理科と数学はオールイングリッシュです)

★そのことについて、もう少し熟慮して当日に臨みたいと思います。ジェンダー問題にかかわるなかなか難しい問題もあり、そこはきちんと整理しなければ。そして、それによって、女子校の問題が、かえって、ジェンダー・ギャップ指数の低い日本が起死回生の課題解決の糸口を提示することになると思います。当日話題にする注目の女子校33校は次の通りです。五十音順で並べます。

桜蔭
桐朋女子
鴎友学園女子
大妻中野
学習院女子
カリタス女子
神田女学園
北鎌倉女子
共立女子
共立女子第二
国本女子
恵泉
光塩女子
晃華学園
麹町学園女子
佼成学園女子
相模女子
湘南白百合
昭和女子大学附属昭和
女子学院
女子美術大学付属
聖セシリア
清泉
聖ドミニコ学園
聖和学院
田園調布学園
東洋英和
豊島岡女子
日本大学豊山女子
富士見丘
山脇
横浜女学院
和洋九段女子

|

ポストコロナの大学入試問題(09)上智の公募推薦の要項を熟読しよう。現高1・高2生のために。

★ここ数カ月、早稲田、慶応、MARCHと総合型選抜対策のためのチュータリングを行ってきましたが、上智の公募推薦のチュータリングで大学入試の方は私の役割は終えます。生徒は満身創痍になりつつもメンタルを奮い立たせ、思考をフル回転し、よく対話を続けました。行く先も決まり始めました。よかったあ。

★今年は、そこの部分は足りないから、そこをカバーする視点や発想、深い思考をと創り上げていったのですが、ないものはしかたがないという感じで、巧く行かなかったときもあるし、要項の条件にそこの足りない部分が求められていない場合は、やはりうまくいくという感じでした。

Photo_20201102194301

★上智の公募推薦は、評定平均が4.0以上(学科によって違いますから、必ず自分で確認してください)だったり、英語が英検だと2級以上(これも学科によって違います)だったり基礎要件があります。

★そのうえで、志望理由書というか自己推薦書などがあります。調査書や学校が用意する書類もあります。

★あと、事前にレポートを出すというのがあります。書類選考というのはなく、個別試験と面談までいって、総合的に判断されます。志望理由の段階で、圧倒的な経験がない場合、そこを上回るレポートや小論文、面談の構成と創造が必要になります。

★現在高1・高2の生徒は、この上智大学の公募推薦の入試要項を熟読することをおすすめします。大学受験勉強の見通しが立つというのもありますが、いったい自分はどんなことに目を向けているのか、目を向けていないのかがわかります。一般入試を受けるからいいやあともし思ったら、そういうあなたこそ、総合型選抜にチャレンジしないにしても、一読したほうがよいでしょう。

★大学というのが、どういう学問の素養を求めているかがわかります。たとえば、各学科で出題されているレポート課題をみて、カテゴリー分けを自分でしてみてください。

★たとえば、こんな課題があります。

心理学:「自分にとって心理学を学ぶことの意味」を述べなさい。

哲学:なぜ私は哲学を学ぶのか。

★これは、自分が受ける学科では出題されていないかもしれませんが、そんなことは問題ではなく、どの学科を選択しようとも、まず考えておく必要があるアイデンティティです。これがないと、受験勉強もブレますよね。

★次のような本を読んで、2000字くらいのレポートを書く課題も出題されます。

史学:網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫・2005 年)、羽田正『東インド会社とアジアの海』(講談社学術文庫・2017 年)を読む。レポート提出は不要。面接の際に、課題図書を素材として質問をするので、どちらか 1 冊を熟読しておくこと。

教育:アマルティア・セン、2006 年 『人間の安全保障』 東郷えりか訳、集英社・木村元、2015 年 『学校の戦後史』 岩波新書

経済:ゲルノット・ワグナー、マーティン・ワイツマン著 山形浩生訳『気候変動クライシス』 、東洋経済新報社、2016 年を読む。 

★もし、上智を考えているのであれば、試験制度にかかわりなく、上記の本は一通り読んでおいた方がよいでしょう。学科が違うにもかかわらず、ある同質の価値観の本を上智は選択しています。示し合わせているわけではあにのですが、これが大学の文化というやつです。したがって、これは毎年変わりません。この同質の価値観を自覚できなければ、志望理由書もレポートも小論文も面接も、実はうまくいかないのです。

★価値観を合わせる必要はありませんが、相手が何を大切にしているのか理解しなくては、入学してから互いにたいへんです。もちろん、多様性が大事です。が、それを少なくともリスペクトできるグローバルシチズンシップに興味がなければどうしようもありません。

★時事問題を扱うレポート課題もあります。

新聞:最近の時事問題の中から関心をもったテーマを一つ選び、よく調べた上で、それに関する報道のあり方の点も含め、当該テーマについてのあなたの意見を述べなさい。

法律:1.この1年間以内のニュース・事件につき、あなたが関心を持ったものを1つ以上挙げ、それについて法律がどのように関与するか・すべきかに関し、あなたの考えを述べなさい。
2.この1年間以内のニュース・事件につき、あなたが関心を持ったものを1つ以上挙げ、それについて法律家(広く、法についての専門的知識を有する者をいうものとする)がどのように関与するか・すべきかに関し、あなたの考えを述べなさい。 

★たんなる課題小論文ではありません。ジャーナリストとしてのリサーチスキルの素養や法律の素養を加えなければなりません。一般的な小論文演習では足りないのです。これは、自分が進もうという他の学科でも同じことが言えます。

★自分の関心をどのくらいふだんから広げ深めているかを問う課題も提示されています。

機能創造理工:これまで自身が興味を持った自然現象、先端技術、環境問題などについて、機械工学、電気・電子工学、現代物理学の複数の視点から、興味を持った理由と自身が貢献したいことを解説しなさい。

看護:①1日看護体験や病院でのボランティア活動に類する体験、または、医療福祉関係者へのインタビュー等に基づいたあなたの考える看護師の役割について、文献を用いながら書きなさい。
②新聞に掲載された医療(看護であれば特に良い)に関連する記事を素材として用い、社会にある医療・看護の問題や課題についてまとめ、あなたの考えを書きなさい。 

★趣味の領域からはじまる好きこそものの上手なれという感じです。普段からどう学びに立ち臨んでいるかが決め手になります。

★受験勉強のための学びなんてと思っていた生徒もいるかもしれませんね。でも、こうして総合型選抜や公募推薦の問いをみると、自分の人生を見通したり深めていくのに役立つ大学側からのメッセージを受けとめることであるということも一方で了解できませんか?

★それに、このような深い問題や自分を見つめる問いを考えていくのですから、教科書の中で学んでいるだけでは足りないということもわかるでしょう。とはいえ、評定平均を4.0以上求めてくるのですから、真面目と破天荒の両立を求めるなんて!なかなか厳しいですね。

★そうそう、高度な英語力ももとめられるわけですから、ますます教科書の枠の中だけでは十分ではありません。もちろん教科書から広い世界へ飛んでいく拡張学習をすればそれはそれでよいのですが。いずれにせよ、広い視野と深い思考が必要になります。

★もちろん、経験も大事です。ただ、経験は実体概念をベタに論じているだけではこれもまた応用力・変容能力がないとみなされます。実体概念から構造転換概念にシフトする必要があるのです。これが志望理由書での腕の見せ所です。エッ!何を言っているかわかりませんよ。だから、教えてくださいという生徒は、一度神崎史彦先生の塾に入門してみることです。小手先ではなく、本物の立ち臨み方を望めば、きっと門を開いてくれますよ。

|

新しい教育社会(20)なぜ武蔵野大中が人気なのか!学校の4つの価値志向を「美術」に置換えればわかる。そして、特異点はジョブス。

★前回は、学校の価値志向をヴィヴァルディの「四季」の演奏の種類で考えてみました。今回は「美術」に置換えてみましょう。すると、武蔵野大中学校・高等学校(以降「武蔵野大中」)がなぜ人気があるのかわかります。

4_20201102094301

★一目瞭然ですね。もっとも、この置き換えは私の独断と偏見にすぎませんから、皆さんも自分の好きなもので置換えてみてください。学校の価値志向とご自身の価値志向のマッチングが確率的に高くなるかもしれません。

★クロード・モネのあの「睡蓮」は、私も大好きです。コンサバ型価値志向としたのは、オルセー美術館でみた、たぶんモネの子どもだと思うのですが、窓の向こうに少年が1人立っている絵画を思い出すからです。ブルーの世界で、光がかすかなのです。そこから外を眺めている少年の目には、柔らかい光が映し出す「睡蓮」の光景が見えているのでしょうか。そんなイメージです。

★すなわち、自己沈潜や個人から出発する学びはコンサバ型価値志向かなあと。

★これに比べ、同じ印象派でも、セザンヌは重力感があって、何気ない光景の背景に強い世界を感じます。広尾や三田国際のイメージはそんな感じかなあ。

★N高や武蔵野大中は、やはり世界はエンターテイメントでないとというのが当たり前のようにあります。ワクワクしなはれという日野田校長の声にはそれを感じないわけにはいきません。知のエンタテイメントの拠点ですね。

★DAVOS型価値志向は、やはりピカソですよね。あのオルテガは、絵画はどんどん脳の世界に入っていくと言ったといいます。まさにって感じです。

★で、この座標に加えるガウス平面という特異点には、ピカソの中でも引き算の美学というジョブスが大好きな発想がよいかなあと。

Photo_20201102100301

★このジョブスの発想は、ミニマリズムと言われています。ポスト現代美術ですよね。昨日音楽の分野でご紹介したマックス・リヒターもその流れを独自にとらえていると思います。

★コンパクトに本質を捉えて、そこからアレンジが始まる音楽や絵画。ここまでくると茶室ですよね。日本庭園ですよね。HTHが、エンジニアリングからガーデニングへと言っているのは、このガウス平面に飛びたいということでしょう。

★この特異点にいる麻布生や聖学院思考力入試突破生、開成の海外大学進学生に未来の希望があるわけです。もちろん、独り占めにはしません。iPhoneのように世界市場に拡大するでしょう。

|

新しい教育社会(19)学校の4つの価値志向のうちコンサバ型が安定する理由。ヴィヴァルディの四季の演奏に置換えてみる。

★今、「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が投開票され、反対多数が確実となりました。前回同様僅差でしょうが、否決されたわけです。これによって、何も変わらないかというと、大阪維新の会と自民党の関係が微妙に変わるでしょう。それによって、自民党がさらに強化されてしまうのかもしれませんね。しかしながら、明快に変わることの意識というのははっきりしたわけです。この意識をどのような形で実現していくかは、また別の問題です。つまり、都構想は否決されたけれど、その構想への意識がなくなるわけではないということです。むしろこの意識はさらに強くなるでしょう。

Photo_20201101235201

★学校の4つの価値志向も同じで、コンサバ型価値志向が基本なわけです。しかし、同時に革新的価値意識は、どんどん強くなってもいます。

★これをヴィヴァルディの「四季」の演奏に置換えてみましょう。コンサバ型価値志向は、安定的に人気のある「イ・ムジチ合奏団」の演奏でしょう。まずはこれをみな最初に耳にするでしょうね。

★しかし、ブランディングマーケティング型志向は、カラヤン率いるベルリンフィルとあのアンネ=ゾフィー・ムターという見栄えもする四季の決定版みたいな演奏を好みます。

★一方、GAFA型は、オリジナリティと才能を追究します。普通はいらないし、高級もいらないのです。四季の演奏でいえば、チェリストのルカ・スーリッチによるチェロ版の初演奏版が好みでしょう。

★しかしながら、ここまでは、「四季」そのものの楽譜に刻まれている音符を変えようとはしません。

★ところがDAVOS型は、25%は残すけれど、それ以外は変えてしまう新しい「四季」を演奏するのを好むでしょう。マックス・リヒターのポスト・クラシック的なアプローチの「四季」です。

★さて、前回、麻布生や聖学院の思考力入試突破生、そして開成の海外大学進学生は、特異点に位置するという話をしましたが、このガウス平面で演奏する「四季」はあるのでしょうか?あるのです。マックス・リヒターのもう一つの「四季」は、1%くらいしか残さないけれど、紛れもなく「四季」だという新しい曲をアレンジしています。まさに、この「四季」を彼らは好むでしょう。

★しかし、一般に、「四季」といえば、なんといっても「イ・ムジチ」なのです。

★したがって、コンサバ型から革新へという単純な変化は社会は好まないということです。学校の価値も、4つの価値意識の互いの関係は変わるでしょうが、それぞれの価値意識がなくなるはずはなく、無くなっても困るのです。

★価値は多様であることが大前提だからです。子供たちの価値や才能が多様なのですから、学校の価値も多様でなければ、マッチングが適切にできないからです。

|

2020年11月 1日 (日)

10月アクセス数から考える~ガウス平面を加えるとやはり麻布入学生は特異点。そして、同様に聖学院の思考力入試入学生や開成の海外大学進学生も。

★10月のアクセス数ベスト50位をみると、沸騰受験列島のこの時期らしい業界のニーズが投影されています。総合型選抜の小論文などに関する記事、中学受験の記事、人気校の記事がランクインしています。ホンマノオト21は今1,480の記事が掲載されていますから、50位というのは全体の3%です。ロングテール的には、20%の300位くらいまでみるとよいのでしょう。しかし、本ブログは、60%が首都圏からアクセスしています。

4_20201101064101

★首都圏の私立中高一貫校入学数は、同年齢の3%です。ですから、3%以下に絞っていくほうが、傾向が鮮明に出やすいのです。もっとも、あくまで、ホンマノオト運営上の経験値からの仮説です。ともあれ、ようやく50位が3%になったので、これから記事を積み重ねていきますから、このアクセス数分析というか解釈は、ますます鮮明先鋭になっていくはずです。

★ホンマノオトは、私にとって市場分析の重要なデータ集でもあります。アクセス数とかPV数ではんくて、UU(ユニークユーザー)が17,000人で、11月から3月にかけて、倍になります。私立中高一貫校の情報が多いので、やはり中学入試にかかわる方が圧倒的に多いですね。首都圏中学受験生50,000人と考えればブログという古いSNSですが、それなりの市場の肌感覚は持てると思っています。

★そんなわけで、10月をみると、1位は「新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。」でした。これは、ちょっとショックでした。

★SNSの性格上、また今までの経験からいって、ダイレクトな学校紹介や入試問題の記事が、べき数(急激に増加する曲線をイメージしてくだください。指数関数的な増加のイメージでもよいです)をはじき出すというのはありましたが、このような抽象的な記事がダントツ一位になるとは思っていなかったのです。

★そんなわけで、このシリーズで書いてきたものを、上記の図のようにまとめました。そして、これに基づいて、GLICC Weekly EDUで主宰者の鈴木さんと対話しているのですが、そのとき感じるのは、どうも麻布がこの座標の中に収まり切れないのです。

★それで、入試問題を分析した思考コード(晶文社と首都圏模試センターが共同して発刊している「首都圏中学受験案内」)のデータに基づき、各校の思考のタイプをグラフ化してみました。

4_20201101070201

★確かに、こうして分析すると、麻布はコンサバ型価値志向のドメインに含まれるのですが、どうもそうはならないと感覚的に思うのです。それで、入試問題のマテリアルを他校と比べると、この要素が決定的に異なるということに改めて気づいたのです。4教科どの教科をとっても、他校にはないマテリアルの扱いなのです。あるとしたら、新タイプ入試です。上記の図のDAVOS型とGAFA型は新タイプ入試の思考タイプですから、麻布は、入試問題の問いの形式上はコンサバ型なのですが、マテリアル全体を見渡すと、実はDAVOS型なのです。

★どう考えたらよいのか?上記の座標系は、実数モデルです。しかし、別に実数を計算してつくっているわけではなく、実態を実数表現でたとえているだけです。ですから、実態は実数からはみ出る部分があります。そういうときは、複素数の軸を使うという発想をすればよいのだとふと気づきました。そうすれば、コンサバ型の実数平面に複素数平面が顕れ、そこが特異点になるはずです。

★麻布の入試問題は、読書量がものをいいます。基本読書に抵抗がある生徒は、麻布は難しいというよりも、麻布を避けますから、結果的に読書好きが多いのです。もちろん、漫画も含めて。でも、ただ、読書量だけ多いというのでは、それは実数発想なのです。複素数平面、いや同じことなのですが、麻布の場合はガウス平面と言った方がよいでしょう。

★そのガウス平面に飛躍するには、読書した後、文章の構造、漫画の編集構造を計算する(思考するということ)クリティカルでクリエイティブな思考が必要です。IBの文学やTOKはこれを重視しています。革新学校の新タイプ入試の中にも同じ質の入試(聖学院の思考力入試問題は絶品)があります。しかし、麻布の場合は、DPに進む生徒や新タイプ入試を受験する生徒だけではなく、麻布受験生全員がそのようなクリティカル&クリエイティブシンキングを必要とされるのです。

★「東大王」で大人気の伊沢拓司さんと「ひらめき王子松丸くん」で活躍している松丸亮吾さんを比較すると、イメージしやすいですよね。伊沢さんは開成から東大、松丸さんは麻布から東大です。個人的なキャラの違いかもしれませんが。

★いずれにしても、麻布のポジショニングは、上記座標系にガウス平面を加えることによって、特異点として位置付けることが可能だということになります。そうすると、開成の海外大学進学者や聖学院の思考力入試で入学した生徒は、同様にこのガウス平面上に位置するということになるでしょう。

1:新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡...
2:ポストコロナの大学入試問題(05)2021年以降の小論文の当然のテーマは...
3:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早...
4:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
5:新しい教育社会(06)桐朋女子「ザ・グレート・リセット」時代に活躍する人...
6:ポストコロナの大学入試問題(02)同志社大学のAO入試&公募推薦が内的な...
7:2021年変わる中学入試(02)英語入試広がる。江戸川取手インパクト。実...
8:新しい教育社会(05)総合型選抜で、実はCASが重要。高1・高2のみなさ...
9:新しい教育社会(10)首都圏私立中高一貫校の革新性の3つのベクトルと学習...
10:【速報】三田国際日本一!N高、開成を打ち破る。「Coca-Cola ST...
11:新しい教育社会(11)私立中高の価値志向に対応した革新教師の4タイプ。:...
12:2021年変わる中学入試(13)西武文理 大胆なクラス名称の変更と算数1...
13:ポストコロナ時代の教育(17)開智望小学校・中等教育学校の挑戦。
14:新しい学校の条件(05)新渡戸文化学園 決定的に新しいsomething...
15:2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加...
16:思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs...
17:新しい教育社会(14)私立中高の広報の本当の価値とは?
18:新しい教育社会(15)私立中高の各価値志向に対応する広報戦略タイプとは?...
19:新しい教育社会(07)総合型選抜の質が上がる。思考コードで明らかになる。...
20:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
21:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
22:品川翔英の進化(08)国語科の突き抜けるPBL型授業。①
23:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
24:プロジェクトの作り方(01)神崎先生の方法
25:新しい教育社会(12)私立中高の価値志向に対応した組織の4タイプ。
26:2021年中学入試を読み解く準備(6)基礎情報⑥東京男子校の帰国生入試。...
27:新しい教育社会(03)かえつ有明×和洋九段女子 新しいSDGsへ
28:新しい教育社会(08)クリエイティブシステム思考をどんどん身につける小学...
29:工学院インパクト(15)チームSCT!誕生。興味と関心が生まれるパターン...
30:2021年変わる中学入試(11)新渡戸文化学園のハイブリッド説明会 キラ...
31:新しい教育社会(13)私立中高の各価値志向に対応するオンライン授業のタイ...
32:2021年中学入試を読み解く準備(9)今年も、東洋大学京北中学高等学校の...
33:キャリアガイダンスVol.434 未来という言葉、禁止!?今、目の前に向...
34:新しい教育社会(18)21世紀型教育機構のアクレディテーション ブレイク...
35:2021年変わる中学入試(12)新渡戸文化学園のハイブリッド説明会 キラ...
36:2021年変わる中学入試(15)静岡聖光学院 2025年問題を見据えた男...
37:新しい教育社会(16)サブカルの新たな風は学校広報にも影響する。聖学院が...
38:ポスト・コロナショック時代の私立学校(100)駒場東邦の「学校の様子」の...
39:2021年中学入試を読み解く準備(10)立教女学院の人気の理由 骨太の教...
40:聖学院インパクト(07)サイトが語るソフトパワーの拠点「教科学習」
41:工学院インパクト(16)チームSCTのクリエイティブ・コア・ミッションが...
42:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
43:アサンプション国際中高(01)山根先生のPBL型授業はリフレクションの竜...
44:2021年変わる中学入試(10)保護者の見方・考え方が大きく変わっている...
45:新しい教育社会(01)石川一郎先生と5度目の出会い
46:プロジェクトの作り方(02)神崎先生の探究の方法。思考の内的連関法。①:...
47:GLICC Weekly Edu Youtube限定公開配信 入試文化か...
48:工学院インパクト(14)教務主任田中歩先生の生徒とつくる未来シナリオ: ...
49:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
50:ポスト・コロナショック時代の私立学校(98)海城 4つめのメッセージ 時...

|

« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »