★ここ数カ月、早稲田、慶応、MARCHと総合型選抜対策のためのチュータリングを行ってきましたが、上智の公募推薦のチュータリングで大学入試の方は私の役割は終えます。生徒は満身創痍になりつつもメンタルを奮い立たせ、思考をフル回転し、よく対話を続けました。行く先も決まり始めました。よかったあ。
★今年は、そこの部分は足りないから、そこをカバーする視点や発想、深い思考をと創り上げていったのですが、ないものはしかたがないという感じで、巧く行かなかったときもあるし、要項の条件にそこの足りない部分が求められていない場合は、やはりうまくいくという感じでした。
★上智の公募推薦は、評定平均が4.0以上(学科によって違いますから、必ず自分で確認してください)だったり、英語が英検だと2級以上(これも学科によって違います)だったり基礎要件があります。
★そのうえで、志望理由書というか自己推薦書などがあります。調査書や学校が用意する書類もあります。
★あと、事前にレポートを出すというのがあります。書類選考というのはなく、個別試験と面談までいって、総合的に判断されます。志望理由の段階で、圧倒的な経験がない場合、そこを上回るレポートや小論文、面談の構成と創造が必要になります。
★現在高1・高2の生徒は、この上智大学の公募推薦の入試要項を熟読することをおすすめします。大学受験勉強の見通しが立つというのもありますが、いったい自分はどんなことに目を向けているのか、目を向けていないのかがわかります。一般入試を受けるからいいやあともし思ったら、そういうあなたこそ、総合型選抜にチャレンジしないにしても、一読したほうがよいでしょう。
★大学というのが、どういう学問の素養を求めているかがわかります。たとえば、各学科で出題されているレポート課題をみて、カテゴリー分けを自分でしてみてください。
★たとえば、こんな課題があります。
心理学:「自分にとって心理学を学ぶことの意味」を述べなさい。
哲学:なぜ私は哲学を学ぶのか。
★これは、自分が受ける学科では出題されていないかもしれませんが、そんなことは問題ではなく、どの学科を選択しようとも、まず考えておく必要があるアイデンティティです。これがないと、受験勉強もブレますよね。
★次のような本を読んで、2000字くらいのレポートを書く課題も出題されます。
史学:網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫・2005 年)、羽田正『東インド会社とアジアの海』(講談社学術文庫・2017 年)を読む。レポート提出は不要。面接の際に、課題図書を素材として質問をするので、どちらか 1 冊を熟読しておくこと。
教育:アマルティア・セン、2006 年 『人間の安全保障』 東郷えりか訳、集英社・木村元、2015 年 『学校の戦後史』 岩波新書
経済:ゲルノット・ワグナー、マーティン・ワイツマン著 山形浩生訳『気候変動クライシス』 、東洋経済新報社、2016 年を読む。
★もし、上智を考えているのであれば、試験制度にかかわりなく、上記の本は一通り読んでおいた方がよいでしょう。学科が違うにもかかわらず、ある同質の価値観の本を上智は選択しています。示し合わせているわけではあにのですが、これが大学の文化というやつです。したがって、これは毎年変わりません。この同質の価値観を自覚できなければ、志望理由書もレポートも小論文も面接も、実はうまくいかないのです。
★価値観を合わせる必要はありませんが、相手が何を大切にしているのか理解しなくては、入学してから互いにたいへんです。もちろん、多様性が大事です。が、それを少なくともリスペクトできるグローバルシチズンシップに興味がなければどうしようもありません。
★時事問題を扱うレポート課題もあります。
新聞:最近の時事問題の中から関心をもったテーマを一つ選び、よく調べた上で、それに関する報道のあり方の点も含め、当該テーマについてのあなたの意見を述べなさい。
法律:1.この1年間以内のニュース・事件につき、あなたが関心を持ったものを1つ以上挙げ、それについて法律がどのように関与するか・すべきかに関し、あなたの考えを述べなさい。
2.この1年間以内のニュース・事件につき、あなたが関心を持ったものを1つ以上挙げ、それについて法律家(広く、法についての専門的知識を有する者をいうものとする)がどのように関与するか・すべきかに関し、あなたの考えを述べなさい。
★たんなる課題小論文ではありません。ジャーナリストとしてのリサーチスキルの素養や法律の素養を加えなければなりません。一般的な小論文演習では足りないのです。これは、自分が進もうという他の学科でも同じことが言えます。
★自分の関心をどのくらいふだんから広げ深めているかを問う課題も提示されています。
機能創造理工:これまで自身が興味を持った自然現象、先端技術、環境問題などについて、機械工学、電気・電子工学、現代物理学の複数の視点から、興味を持った理由と自身が貢献したいことを解説しなさい。
看護:①1日看護体験や病院でのボランティア活動に類する体験、または、医療福祉関係者へのインタビュー等に基づいたあなたの考える看護師の役割について、文献を用いながら書きなさい。
②新聞に掲載された医療(看護であれば特に良い)に関連する記事を素材として用い、社会にある医療・看護の問題や課題についてまとめ、あなたの考えを書きなさい。
★趣味の領域からはじまる好きこそものの上手なれという感じです。普段からどう学びに立ち臨んでいるかが決め手になります。
★受験勉強のための学びなんてと思っていた生徒もいるかもしれませんね。でも、こうして総合型選抜や公募推薦の問いをみると、自分の人生を見通したり深めていくのに役立つ大学側からのメッセージを受けとめることであるということも一方で了解できませんか?
★それに、このような深い問題や自分を見つめる問いを考えていくのですから、教科書の中で学んでいるだけでは足りないということもわかるでしょう。とはいえ、評定平均を4.0以上求めてくるのですから、真面目と破天荒の両立を求めるなんて!なかなか厳しいですね。
★そうそう、高度な英語力ももとめられるわけですから、ますます教科書の枠の中だけでは十分ではありません。もちろん教科書から広い世界へ飛んでいく拡張学習をすればそれはそれでよいのですが。いずれにせよ、広い視野と深い思考が必要になります。
★もちろん、経験も大事です。ただ、経験は実体概念をベタに論じているだけではこれもまた応用力・変容能力がないとみなされます。実体概念から構造転換概念にシフトする必要があるのです。これが志望理由書での腕の見せ所です。エッ!何を言っているかわかりませんよ。だから、教えてくださいという生徒は、一度神崎史彦先生の塾に入門してみることです。小手先ではなく、本物の立ち臨み方を望めば、きっと門を開いてくれますよ。
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