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2020年10月21日 (水)

聖パウロ学園 イノベーティブエデュケーター(06)工藤先生のクリエイティブなパワーイングリッシュ授業

★聖パウロ学園は不思議かつ魅力的な学校です。いわゆる入学時の偏差値でいえば、48~50くらいでしょうか。学力面で自信をもって入学してくるというより、自己肯定感は少し低い感じではいってくる生徒が多いでしょう。でも、野球とか馬術とかスーパータレントを持っている生徒も入ってきます。グローバルコースに入ってくる帰国生もいます。

★1学年80名ですから、めちゃくちゃスモールサイズです。それゆえ、生徒1人ひとりに対して何人もの教師と対話できる機会があふれている学園です。1つにはこれが奏を効して、誰もが自信を回復していきます。自分がやりたいことを見出していきます。それからもう一つはハイブリッドPBLですね。パンデミックによる自粛期間は、もちろんリモート授業を行いましたが、学校再開後もリアルな授業にサイバー空間を併用するハイブリッドPBLを実施しています。

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★すでに理科、国語、英語、社会、数学、保健体育などのケースを紹介しています。ここでは、もう一人の英語の工藤先生のケースを紹介しましょう。工藤先生ご自身、スーパー英語教師で、IELTSも8.0以上だし、英検でいえば軽く1級をクリアする実力です。CEFRで言えばC1は当然クリアしています。そして、ICTも様々な方法で創意工夫しています。

★あるときは、電子黒板をボードゲームのように活用し、チーム戦をして盛り上がりますが、高1の授業では、ちょうど映画について、ジャンル分けや作品についてヒントになるフレーズや絵を投げかけて生徒がチームで話し合って回答していくというアクティビティを行っていました。

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★映画は、ロマンスあり、アクションあり、ミステリーあり、SFファンタジーあり、アドベンチャーあり、ミュージカルありで、英単語を覚えるというよりは、好奇心を刺激する授業です。思考タスクでは、ラテラルシンキングという手法を採用しています。

★英語の学びなんだけれど、自分の好きな事柄や興味のあることをリフレクションするアクティビティです。こうして、生徒は英語を学びながら柔らかい思考をトレーニングし、自分を見つけていくというマイプロジェクトが授業で稼働しているのです。

★しかも、このマイプロジェクトを立ち上げるということは勇気のいることで、挫折もあるでしょうが、教師や仲間と対話し回復していくリジリアンス体験を積み重ねていきます。

★それから、自分のやりたいことを見つけ、探究していくのですが、それを実現するにはスキルが必要です。大学に進むにしてもっその後社会に進むにしても、主体的にアウトプットすることは必要です。企画提案やイベント運営やクライアントとの対話など、複眼思考とコミュニケーションスキルが必要です。もちろん寛容なケアマインドも。

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★リーディング、スピーチ、リスニング、ライティングの4技能に関して、工藤先生は、テキストであるUncoverのライティングスキルを巧みに活用すると英語科主任の大久保先生がお墨付きをつけていました。クリエイティブでパワーイングリッシュ授業を展開していますよと。

★テキストを拝見すると、思考スキルのチャートがふんだんに活用され、リフレクションによるスキル視点も明快です。このスキルを、工藤先生はライティングだけではなく、4技能すべてに活用していくのでしょう。

★また、テキスト以外の様々なマテリアルを用意しています。インターネットの情報を工藤先生はフルに活用していきます。思考を深める時、マテリアルの深さも必要だし、スキルを磨き上げていくこともポイントです。

★さらにおもしろいのは、国語科との連携もあるのです。実は国語科は独自の思考コードと思考スキルをすでに見える化しています。

★英語科の活用するCEFRのメタルーブリックと国語科の思考コードは親和性があります。また思考スキルはほぼ重なります。工藤先生のエッセイライティングの指導は定評があります。

★また国語科の小論文指導も生徒には人気です。両方とも、今後の総合型選抜や早稲田の政経のような総合型一般入試には必要だとされているスキルを育成するということを生徒は了解しているのです。

★これらが、探究の活動で合流します。探究は各教科のPBLでみつけたマイプロジェクトをワールドプロジェクトにできるかどうかの挑戦でしょう。

★こうして自己肯定感があまり高くない自分から自己の際の才能を見つけ、その自己実現のために仲間と教師と取り組んで、自己変容していけるのが聖パウロ学園です。偏差値に囚われていた自己が、そのくびきを自ら解くことになる瞬間瞬間を体験できるのです。一般の進学校は、このくびきをますます強固なものにし、人と比較してランキングを競う人生に迷い込んでしまいがちですが、聖パウロ学園はその逆をいくのです。

★英語と国語というバイリンガル思考スキルが明快になっている学校はそうは在りませんから。

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