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2020年10月 8日 (木)

沖縄から世界を変える(02)沖縄国際学院の数学の豊かさ 中村裕吾先生との対話からの気づき

★前回「沖縄から世界を変える(01)沖縄国際学院 高等専修学校」で、沖縄に新しいコンセプトかつ新しい形態のIBスクールが活躍していることを紹介しました。理事長・校長の知念正人先生は、出会うやすぐに動き、同校の数学科の中村裕吾先生とつないでくれました。なんという俊敏力。ミッション・ビジョン・プランニング(MVP)を現場とつなぐ組織づくりをされています。

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★とはいえ、中村先生はオックスフォード大学で数学を学び、IBスクールでの経験も積み、かつあの憧れのTOKの授業も展開しています。私は何を語ればよいのでしょう。特に仕事というわけではなく、ゆるやかな対話をすればよいのでしょうが、いきなりZoomでとなると、お互いWin-Win(ということばがよいかわかりませんが)あるいは、Give and Takeではなく、Give and Giveという対話ができるのだろうかと思いました。

★同校は、リベラルアーツ・コースというのがありますが、ふとアリストテレスの配分の正義、矯正の正義、交換の正義を想起しました。これが手を変え品を変え、現在の経済システムにつながっているという説があります。一般に貨幣経済は交換の正義がもとになっています。税金徴収や刑罰は矯正の正義です。配分の正義は?実はこれは、貨幣経済の中では、サラリーなのですが、どちらかというと社会学や文化人類学的なアプローチからすれば贈与経済の元型です。愛や徳に基づく慈善・援助などの贈り物を相互に与え合うというノーブレス・オブリージュ的な感覚です。

★今回OISとの出会いは、このノーブレス・オブリージュ的な繋がりになるわけですが、それには私なりのソフトパワーがなければなりません。ソフトパワー同士のシェアという新しい社会のプロトタイプづくりでもあります。

★この<新しい学びの経験>=<新しい社会>の構想に<新しい教育>という位置づけが知念理事長にはあるでしょう。見た目は現状貨幣経済のフローの流れですが、基本は愛と徳に基づいた寄付と教育の贈与経済社会圏の構想です。もともと私立学校は寄付行為で成立していますから、これを本気で貫き通せば、新たな道が開けるのですが、助成金という縛りがありますから、難しいところがあります。

★その点、高等専修学校であったり、インターナショナルスクールは株式立だったりするOISは、はやくも新しい道を歩んでいるわけです。

★中村先生の数学は、分配法則の計算をただ計算の順番を覚えるというのではなく、ギリシア時代の数学の発見の世界に生徒を導き、図形に変換して論理的に納得し証明していきます。当然ディスカッションしながら、手を使いながら、考えていきます。

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(奇しくも2つの似た図が出会いました。OISのリベラルアーツコースのコンセプトと私のPBL授業デザインの8つの視点が共振しそうな予感がします。)

★やがて、平面から立体にシフトする生徒もでてきます。目の前の図形の現象を今度は式にシフトしていくというのです。

★数学史的な話を独立してただエピソードとして話すのではなく、実際の問題に関係づけて展開していくのです。数学を発見した古代エジプトやギリシアの哲学者に生徒はなりきるわけです。IBらしいし、ある意味TOK的でもあります。分配法則がやがて数学的な世界制作につながっていくその可能性を授業の中で生徒は体験してしまうのですから。

★IBの高次思考をフルに生かす授業には「デンジャラスマス」という領域があります。たとえば、無限の世界に没入する数学者たちの天才的でクレージーな(良い意味で)世界を旅する領域です。ゲーデルの話なども中村先生は語ります。

★その先生の話を、私の方では8つのアプローチで分析して全体像を統合していきます。もちろん、中村先生との対話を経ながらです。中村先生は柔軟でかつリベラルアーツの根源と結びつきつけながら対話をされます。

★ともあれ、IBのプログラムの具体的な展開の時に、教師が壁にぶつかるところを今回の対話で突破できそうだという具体的な対話ができたのです。なんとか私のソフトパワーは役に立ちそうだと安心しました。

★8つの切り口がありますが、結局は

1)次元

2)行動

3)時間によるナッジ

4)メンタルモデル

5)マインドを燃やす思考スキルと記憶術

★に集約されるわけですが、4)と5)は、日本の教育現場では、授業の中で展開するのは難しい点でもあります。しかし、IBのTOKやリベラルアーツを実践している中村先生とは、そこにグッと入り込んで対話ができたのです。

★IBのTOKやリベラルアーツのベースが世界の教育ではあるのに、日本の教育にないのが、実は問題であるということが今回私の中で明快になりました。

★いずれにしても、新しい教育社会のプロトタイプが沖縄で広がりそうだと感じ入りました。沖縄プロジェクトというミッションが生まれる予感がします。

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