ノートルダム女学院(11)中村拓先生の数学はニュートンのプリンキピアの探究だった。
★先日ノートルダム女学院(ND)で、ナレッジカフェが開催されました。ND教育開発センター長の霜田先生が主催する学内外の先生方の対話の場です。ウェビナーではなく、参加したメンバー全員が対話する空間です。今回は、NDの数学科主任の中村拓先生の「数学における基礎学力」についてでした。
★中1から京大の数学まで、「幾何」をきっかけに中村拓先生からプレゼンテーションがあり、同僚の数学の先生、英語、理科、社会、保険体育の先生方がそれぞれご自身の基礎学力観を語り合うという場となっていました。
★基礎学力とは、一般には知識の定着のように思われますが、この場に集まった先生方はそういう志向性はありませんでした。「構造」「置換」「変換」「知識の拡張性」「身体化」「五感」「モチベーション」「面白さと興味の違い」とかを手掛かり足掛かりに語っていました。
★中村拓先生の2次元の図形を3次元の立体に変換したり、3次元の立体を2次元に置き換えたりするときに、まずは生徒が実際に手を使って図形を組み立てる体験を設定するわけです。4面体の2次元の図は、実は説明がなければ四角形です。
★それが立体に見えるのは、脳神経系の錯覚という復元力、つまりイマジネーションの作用ですが、この作用を第二の脳(セカンドブレイン)である手による図形づくりの体験によって身体化されていきます。
★その図形づくりの際に、生徒は、投影図をイメージしたり、分解してまた組み立てるという、数学的思考(分解・統合・発想)のまさに基礎を第二の脳で体験します。その後、紙上で、今度は多様な図形を描き、その構造に痕跡をいれていきます。
★今年の京都大学のベクトルの問題は、提示されているのは数式だけですから、解き明かしていくには、数式を図形に変換する必要があります。球と三角面と座標軸を組み合わせた図形を描くに至る道のりは中1から始まっているということでした。
★NDでは、各教科PBL型授業のアップデートのための研究もおこなわれています。ND法人のリサーチャーとして私も協力しているのですが、すでに行っている先生方のPBLが世界標準のPBLであることをシェアしているわけです。日本の国内のPBL達人の先生方のセミナーは、今やあちこちでオンラインで行われています。そういう自己マスタリー(学習する組織の一つの柱)も、どんどん行うように霜田先生のほうで情報を共有しています。
★自分のPBLを世界標準のPBLや他校の先生や外部のPBLと対照してリフレクションするというのがねらいです。
★そして、もう一つ今そのリフレクションリサーチを行いながら、各教科を結びつけるものは何かについても対話をするようになっています。ちょうどそのタイミングで、中村拓先生のプレゼンを聴けたので、あるインスピレーションが降りてきました。
★その各教科の関係づける何かこそ基礎学力で、その基礎学力は知識定着ではなく、ものの見方・考え方だということです。それを思考スキルで先生方と対話しているのですが、ここは当たり前すぎる話になりがちです。
★しかし、この当たり前すぎる思考スキル(ロイロノートでは図式化されています)はツールではなく、哲学だったのです。哲学といっても多様ですが、言語哲学と数理哲学、脳神経哲学という領域なのだと気づきました。これって、リベラルアーツの自由7科を集約したものです。
★今回、中村拓先生のプレゼンは、京大の数学の問題に至ったところで、はっきりしたのは、2次元と3次元どうしの変換と幾何と代数の変換という二重の変換が行われていましたから、これはニュートンがプリンキピアで行った微積分を数式を使わないで幾何で証明していったり、活用して見せた数学の基礎哲学そのものだったということです。
★中村拓先生の数学は、生徒といっしょにニュートン体験をしているのだとピンときたのです。これは、国際バカロレアのハイレベルマスと親和性があります。
★いろいろな気づきをいただき、先生方ありがとうございました。
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