アサンプション国際小学校(02)問いの対話というアソビがある小学校 学びの竜巻が生まれている。
★今回のアサンプション国際小学校との対話は、森本先生チームと西先生チームの先生方。この両チームは、1人ひとりが共通のテーマでPBLのアイデアを持ち寄り、それぞれはそのアイデアを通して生まれてきた問いを私に投げかけるスタイル。投げかけられた私は、自分の経験から答えると同時にそれが教育学や学習理論ではどのように捉えられているか簡単に説明。それから新たな問いを投げかける。そんな問いの出し合いゲームというアソビができるチームです。
★今回は、「3枚の数字のカードを組み合わせて、最大の数がでてくる筆算をつくろう」というPBL型授業は可能か?というテーマでした。先生方は小学校3年生に対し実際に授業を行ったり、学年が違っても行ったと仮定して、こんなPBL型授業のアイデアなんだけれど、そのときこういう疑問が湧いてくるのですがと問いかけてくれます。
★1つの流れは、「プロトタイプ→疑問→私からの解答」となります。いろいろな疑問が投げかけれました。生徒の純粋な疑問から出発したらよいのか、それとも問いは教師が用意をし生徒が考えていくというスタイルがよいのか?前者はPBL的で、後者はインストラクション的だけれど、アクティブラーニングには持ち込めると私はこたえました。
★すると、PBLかアクティブラーニングというより、生徒が考える仕掛けをデザインすることが重要ということですね。そういう考え方もある。つまり、先生方は因果関係に縛られるのではなく、いろいろな関係性をつなげる視点をすでに持っているということですね。
★そういうアソビ、ハンドルのアソビトいう意味のアソビ、あるいはモーツアルトのピアノ協奏曲やジャズセッションでアドリブを入れることができるのだけれど、その部分を許容できるかどうかですよね。
★すると、ということは、インストラクションというかアクティブラーニングとPBLの間はグラデーションだということですよね。目の前の生徒の状況にマッチングするように、そこはデザインするということでしょうか。
★このような流れが2つめの流れです。私は、そういう柔軟な考え方をもてるということは、すでにPBL型授業を行っているということですよと付け加えます。
★また、ゴールとは何か?という問いもでました。目標と目的とわけて、答えました。PBL自体の目標、myプロジェクト→ourプロジェクト→worldプロジェクトというはてしない物語(ミヒャエル・エンデ)なんだとか、算数の数の世界の目標というのもあるよね、そしてまず計算の仕方の定着とか自分で法則を見出す体験をするとかいうのは目的とかマイルストーンとか、オブジェクティブとかいうのだろうけれどとブルームのタキソノミーの考え方を紹介したりしました。そして、私からも問いを投げます。「ところで、なぜ5は4より大きいの?」と。それを生徒が考える時間をつくることは可能ですか?と。
(慶応義塾大学SFC井庭崇教授のサイト“Learning Ptterns”から)
★対話が続くかどうかは、アソビ心があるかです。柔軟かどうかです。こういう問いを投げかけて、わかりません。それは授業デザインから外れていませんかという対応になる場合も当然あります。因果関係、しかも自分の設定した決定論的な因果関係を変えるつもりがなければ対話は成立しません。アサンプション国際小学校の先生方は、そういう呪縛から完全に解放されています。すてきです。
★このアソビは、実は自分たちが用意したアイデアどうしを掛け合わせていくと、それまで気づかなかったあらたな隠れたピースを発見できるという面白さがあります。慶応義塾大学のSFC井庭崇教授の「ラーニング・パターン」のカードにある「隠れた関係性から学ぶ」という学びのパタンを私は大切にしています。
★対話をしてこの隠れたピースを発見できた瞬間から、学びの竜巻は生まれます。盛り上がります。今回は、ルビンの壺でその話を置き換えました。すると、すぐに掲示板からこれですね!と。トリックアート的感覚は、やはり先生方は日常の中ですでに持っているんですね。
★つまり、すでに先生方の中に潜在的にあるから、そういう本質的な問いがでてくるわけで、私はそれを映し出す鏡なだけなのだと、すべては先生方の内側にあるのだと。そうはっきり言いきれる能力を持っている先生方ばかりだと確認しました。
★この隠れたピースの発見やトリックアートは、実はランディ・パウシュ教授の「最後の授業」の話と交差します。彼は癌で余命いくばくもないのに、いやないからこそ最後の授業をユーモアたっぷりに行いました。感動というより、動画を見るたびに涙がとまりません。彼は偉大なコンピュータサイエンスの教授です。今日のICT環境に大きく貢献しています。
★しかし、子供の頃はフットボール選手になってNFLに出場することが夢でした。大真面目で語るので、会場からは、ランディ・パウシュ教授の巧んだ通り、笑いが溢れます。当然、その夢はかなわなかったのだかれど、チームワーク、スポーツマン精神、粘り強さを学べた。これは私の今の電子工学技術の研究のときに役に立っているのだと。このような学びを「間接的学び」というのだと。そして、この学びにこう名付けました。「ヘッド・フェイク」と。
★隠れたピースを発見する対話、トリックアートをデザインするような対話、ヘッド・フェイクという創造的対話などアソビがあること。これはPBL型授業の極意であると、私はランディ・パウシュ教授の「最後の授業」から学びました。
★森本先生は、このヘッド・フェイクを持ちえていて、PBL型授業で行うアクティビティ「グループワーク」のチーム人数の問いへの私の解答を、非認知能力の話だと置き換えていました。
★今回は、このランディ・パウシュ教授の話はしませんでしたが、「置換」=「模倣」=「メタファー」=「ミメーシス」=「遊び」というアソビの話はしました。
★先生方の授業や仕事の合間でみつけた貴重な1時間。それゆえ、シンプルなスタイルの対話を森本先生と西先生は選択したのでしょう。それがかえって問いの竜巻を生み出しました。この竜巻こそ、アサンプション国際小学校の先生方のエネルギーの顕在化です。ありがとうございました。
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