工学院インパクト(13)生徒がいまここで未来への新しい価値を見出す 生徒会の挑戦
★工学院大学附属(以降「工学院」)は、まるで2カ月で細胞が全部入れ替わりながらもアイデンティティは変わらない人間の新陳代謝のように、あらゆるものやことを再定義していきます。ある意味独特の組織開発の動きです。グローバル教育の再定義、授業の再定義、部活の再定義、テクノロジーの再定義、進路指導の再定義、カリキュラムの再定義、入試の再定義・・・。これは今後も続くわけですが、その一つの中に生徒会の活動もあります。
(写真は工学院の生徒会のブログから)
★生徒会というと、みなさんは、どんなイメージを抱くでしょう。戦時中の軍政府の統括の末端組織というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、連合国においては、生徒が自治を行使し、学校生活を一つのコミュニティやシティとみなす活動だったでしょう。各学校の連合はユースコミュニティを形成し、民主主義を活性化する重要な役割を果たしたりもしています。
★2022年、18歳成年が動き出します。民主国家や市民社会のメンバーとして、国や社会を形成する思考や行為、義務、責任が発生します。日本の学校は古いパターナリズムの文化を根っこで維持しているところも多く、生徒会の役割の新しい価値をどうするかは、実はあまり議論されていません。
★大学入試改革と同じで、動きたくないというのが根底にあるのでしょう。だから、1989年ベルリンの壁が崩壊した時を同じくして、子供の権利条約が採択されても、それに対照して生徒会の役割を再定義することをそれほど活発にしてこなかったのでしょう。
★一方、だからこそなのでしょうが、生徒会の新しい価値を創ろうというウネリもあります。そういう団体に積極的に参加して、自ら生徒会の新しい役割を創り出そうとしている1つが工学院の生徒会のメンバーです。
★同校の生徒会は、現状の国や企業が有している組織上の問題と実は学校や生徒会などの活動も同質のものがあるという根源的な問題に気づき、風通しよくするために、PR活動をしなくてはならないと動いています。情報公開、情報共有の動きをしているわけですね。
★しかし、この作業は果てしなく細かい作業が必要で、相当気合を入れなければできません。お金が潤沢にあるわけではありませんから、SNSなどのテクノロジーを使う必要があります。一方で部活や勉強もあります。それに、工学院の場合は様々なプロジェクトがあり、それにも参加しなければなりません。また2年間かけて自分のテーマをとことん追究する探究論文も作成する必要があります。
★その中で、やらなければそれでスルーできる生徒会の新しい価値を見出し、共有していくGRITな活動をしているのです。
★その活動が認められて、昨年の生徒会長の高校3年生仲野想太郎さんが、一般社団法人生徒会活動支援協会が実施した、日本生徒会大賞2020の個人の部で優秀賞を受賞しました。
★また、生徒会通信によると(「『生徒会通信』No.4~報告:松下政経塾オンラインリーダー研修に参加して~」)、他校の生徒会のメンバーとリーダー研修に参加し、海外とのコンパラティブスタディなどを通して、未来を拓くリーダーとは何か、何をするのか考える機会を得たようです。そして、私たちが普段忘れている何か重要なコトを感じたようです。
★このような活動をしている生徒会のメンバーが50人参加したそうです。50人もなのか50人しかなのか。各学校複数参加しているでようですから、実際には50校参加はしていないわけです。かりに50校参加したとしても、全国の高校の1%です。
★参加したくても都合でできなかったところもあるでしょうが、ここに集った生徒会のメンバーは相当意識が高いということを示唆しています。
★ラウンドスクエアに参加している日本の学校は工学院を含めて5校くらいです。日本の高校の0.1%です。
★つまり、工学院の行っていることは、学内ではあまりに日常化していますが、実は外から見ると尖り過ぎていて、見えないのです。
★出すぎているので、出る杭は打たれるということもありません。杭の先がどこにあるのか見えないのですから。
★星の王子様ではないですが、大切なものは目に見えないのです。でも隠しているわけではないのです。オープンにしているのです。見る側の問題なのです。
★でも、生徒会は、だからこそ情報共有するPRの手立てを駆使し始めているのです。わかってくれる人がわかってくれればよいという諦念はないのです。その気概に敬服です。
★新しい価値は、最初は世の中の人には目えないものです。でも見えるようにしようというアクションが生まれたとき、世界は変わります。工学院の生徒会の活動は、そんな大きな目標に向かっているのでしょう。
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