工学院インパクト(16)チームSCTのクリエイティブ・コア・ミッションが私たちの希望。①
★工学院大学附属中高のチームSCT(スーパー・クリエイティブ・ティーチャー)のクリエイティブ・コア・ミッションがすてきです。学校もイノベーションを生み出す時代はとっくにきていますが、なかなか進んでいないように見えます。それはなぜでしょう。クリエイティブ・コアミッションがないからです。ところが、工学院ではそれが誕生し、根付き始めました。
★イノベーションが広まる「イノベーター理論(1962年)」で親しまれているスタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)の理論は有名です。しかし、産業構造が20世紀末には変わってしまったので、ジェフリー・ムーアは、キャズム論を加えて塗り替えました。
★ロジャーズ教授は社会学者です。ムーアはコンサルタントで、経済的視点で展開しています。したがって、私立学校の教育イノベーションを語る時、ジェフリー・ムーアの考え方が採用されることが多かったのです。
★しかしながら、多くの学校シンクタンクや教育コンサルタントは、時系列の普及カテゴリー(イノベーター→アーリ―アダプター→キャズム→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)のシェアに注目するだけで、その先を論じません。あるいは企業秘密にしているのかもしれません。三田国際のようにこの理論も参考にしながら、急激に教育イノベーションを果たし、生徒獲得戦略に大成功を収めているところは、この普及カテゴリーの先をしっかり学内で共有しています。
★それは、ジェフリー・ムーアの「コア」と「コンテキスト」のマトリクスです。この理論は、ムーア自身の本で展開されていることですから、セオリーをきちんと理解しているわけですね。
★工学院も同じスタンスですが、「コア」と「コンテキスト」をもう少しわかりやすく「コア」と「ルーチン」と読み替え、「コア」をクリエイティブ・コアミッションとマーケットニーズコアミッションに分けています。もっと簡単に言えば「本質」と「実用」です。
★三田国際は、このコアの部分は完全に自前です。「コンテキスト」つまり「ルーチン」の部分は外部ネットワークと連携します。丸投げアウトソーシングはしません。工学院も、ルーチンの部分は三田国際と同じです。しかし、コアの部分は少し違います。
★三田国際はコアの構成要素である「本質」と「実用」を明快には分けていません。三田国際の場合は、「本質」=「実用」=「学問」ですからその必要がないのです。立ち上がり当初は、一部連携もしていましたが、改革2年目からは完全内製化にシフトしました。
★工学院は、「本質」と「実用」は分けています。というのも、「実用」のコアミッション部分はやがて「ルーチン」に転換していきます。ですから、このコアミッションの「実用」の部分は、はじめから連携によって運営していきます。
★しかし、「本質」つまりクリエイティブコアミッションのところは、完全内製化です。ソフトパワーを生み出す拠点を自前で確保しているのです。ここは「TTP(徹底的にパクる)」をしないところです。
★おもしろいのは、クリエイティブ・コアミッションの最大の拠点は、高2のグローバルプロジェクトです。他校にない学年全体で取り組むプロジェクトで、運営には外部ネットワークと連携しますが、企画そのものを生み出す部分は教師と生徒ががっちり協働します。
★ケンブリッジインイングリッシュスクールやラウンドスクエア、UPAAなどのコアミッションの連携もしますが、これらを統合するグローバルインテリジェンスは、完全自前です。教務主任とカリキュラムマネージャーなどが知を創出しています。
★それから普段のPBL授業の部分は、田中歩教務主任が若手教師のプロジェクトチームSCTを自然な感じで生成し、自主活動をしています。田中歩先生との長い付き合いの成り行きで、私もSCTのコアミッションの実用部分までは立ち会いますが、クリエイティブ・コアミッションは、完全にSCTチームが内製します。
★田中歩先生が英語科主任時代に、やはり当時のチームメンバーと創出したのが、「思考コード」で、今では中学入試でも別のカタチで広まっていますね。そこも、私は立ち会う機会を頂いたのですが、クリエイティブ部分は、完全に先生方が創出していきました。
★そして、今はSCTチームメンバーが、「興味関心を生み出すパターンカード」を創ってしまいました。昨日、この自作のカードを使って、柳田先生の中1の社会の授業を分析して、実用性を検証していきました。ワクワクしますね。
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